説明

外部負荷に放電(給電)可能な蓄電部を備えた車両、同車両と電力ケーブルとを含む放電システム、同蓄電部の放電制御方法、及び、同放電システムに用いられる車両外部の装置。

【課題】車両蓄電装置と外部電源、外部負荷との充放電
が適切に制御されるシステムを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る車両10は充放電システムCDSに適用される。充放電システムは、車両10、電力ケーブル20、充電スタンド30、HEMS40及び商用電源50を含む。車両10のインレット13に電力ケーブル20のコネクタ21が接続された状態にて、車両蓄電装置11から外部負荷(例えば、外部の蓄電装置41)に給電(放電)される。更に、車両蓄電装置11は電力ケーブル20により外部電源50から充電され得る。車両10の制御装置12は、車両蓄電装置11の外部負荷への放電を開始する前にコネクタ21のCPLT端子を介して送信される特定信号(コントロールパイロット信号)に基づいて電力ケーブル20の許容電流値を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルを介して接続された外部負荷に放電(給電)可能な蓄電部を備えた車両、同車両と電力ケーブルとを含む放電システム、及び、同蓄電部の放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された蓄電装置を車両外部の電源により充電することができ、更に、車両に搭載された蓄電装置から車両外部の負荷(車両外部の蓄電装置等を含む。)に給電することができる充放電システムが知られている。車両に搭載された蓄電装置からの車両外部の負荷への給電は、車両に搭載された蓄電装置にとっては放電である。従って、本明細書において、車両外部の負荷への給電は「車両外部の負荷への放電」とも表現される。更に、車両に搭載された蓄電装置は「車両蓄電装置」とも称呼され、車両外部の蓄電装置は「外部蓄電装置」とも称呼される。更に、車両外部の電源は単に「外部電源」とも称呼され、車両外部の負荷は単に「外部負荷」とも称呼される。外部蓄電装置は外部負荷装置にもなり得るし、外部電源にもなり得る。
【0003】
一方、住宅(外部電源)から車両蓄電装置を充電することができる電気自動車の規格として、アメリカ合衆国において「エスエーイー・エレクトリック・ビークル・コンダクティブ・チャージ・カプラ(非特許文献1)」が制定されており、日本国においては「電気自動車コンダクティブ充電システム一般要求事項(非特許文献2)」が制定されている。
【0004】
これらの規格においては、一例として、コントロールパイロットに関する規格が定められている。コントロールパイロットは、構内配線から車両へ電力を供給するEVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)の制御回路と車両の接地部とを車両側の制御回路を介して接続する制御線と定義されている。この制御線を介して通信される信号は、コントロールパイロット信号、CPLT信号、又は、単に「CPLT」と称呼される。このコントロールパイロット信号は、充電ケーブルの接続状態、外部電源から車両への電力供給の可否、及び、EVSEの定格電流等を車両側の制御回路(車両に搭載された制御装置)が判定・認識するために使用される。
【0005】
他方、上記充放電システムにおいては、車両側の制御回路が、外部電源からの電力による車両蓄電装置の充電と、車両蓄電装置から外部負荷への放電と、を制御する。従って、車両側の制御回路は、外部電源からの電力により車両蓄電装置を充電すべきであるのか(即ち、充電要求があるのか)、車両蓄電装置から外部負荷に放電をすべきであるのか(即ち、放電要求があるのか)、を認識しなければならない。
【0006】
係る課題に対処する公知技術の一つは、充電用ケーブルと放電用ケーブルとを相違させるとともに、上記コントロールパイロット信号を充電用ケーブルと放電用ケーブルとで相違させている。そして、車両側の制御回路は、電力ケーブルが車両に接続されたとき、接続された電力ケーブルが充電用ケーブルであるのか放電用ケーブルであるのかをコントロールパイロット信号に基づいて識別し、その識別結果に基づいて充電要求があるのか放電要求があるのかを判断するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−35277号公報(段落0072等)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「エスエーイー・エレクトリック・ビークル・コンダクティブ・チャージ・カプラ(SAE Electric Vehicle Conductive Charge Coupler)」、(アメリカ合衆国)、エスエーイー規格(SAE Standards)、エスエーイー インターナショナル(SAEInternational)、2001年11月
【非特許文献2】「電気自動車用コンダクティブ充電システム一般要求事項」、日本電動車両協会規格(日本電動車両規格)、2001年3月29日
【発明の概要】
【0009】
ところで、外部電源から充電ケーブルを介して供給される電力により車両蓄電装置を充電する場合、充電ケーブルの許容電流値が車両側の制御回路に通知され、その制御回路は通知された許容電流値を用いて充電を制御する(例えば、上記非特許文献1:アメリカ合衆国規格SAEJ1722、国際規格IEC61851)。しかしながら、車両蓄電装置から外部負荷へ放電を行う場合、放電電流についての制約を考慮した技術は存在せず、更に、放電に使用される電力ケーブルの許容電流値を車両側の制御回路へどのように通知するかについても検討されていない。
【0010】
本発明の車両は、上述した課題に対処するためになされたものである。
より具体的に述べると、本発明の車両は、
電力ケーブルに設けられたコネクタが接続されるインレットと、
外部負荷に前記電力ケーブルを介して放電可能な蓄電部と、
前記コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御する制御装置と、
を備える車両である。
【0011】
更に、本発明の車両において、前記制御装置は、前記放電を開始する前に前記電力ケーブルからの特定信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得するように構成される。
【0012】
前記蓄電部は、「車両に搭載され且つ外部電源から供給される電力により充電される車両蓄電装置」及び「車両に搭載され且つ車両蓄電装置を充電するための電力を電気以外のエネルギーに基づいて発生する発電機(電力発生装置)」を含んでいてもよく、車両蓄電装置のみを含んでいてもよい。
【0013】
これによれば、電力ケーブルから制御装置に電力ケーブルの電流許容値(定格電流)を表す特定信号が提供され、制御装置は放電を開始する前にこの提供された特定信号に基づいて電力ケーブルの許容電流値を取得することができる。従って、制御装置は、この電力ケーブルの許容電流値に基づいて車両に搭載された蓄電部の放電を制御することができる。なお、「放電を制御すること」は、蓄電部からの外部負荷への放電に係る車両側の制御であれば如何なる制御をも含み、例えば、放電電流の制御及び放電の停止等の何れかであってもよい。更に、前記「放電を開始する前に」とは、電力ケーブルのコネクタがインレットに非接続の状態から接続された状態へと変更された時点、又は、前記制御装置が放電要求があることを認識した時点から、車両蓄電部から外部負荷に対する放電を実際に開始する時点までの期間であることができる。
【0014】
本発明の一態様において、前記制御装置は、前記放電を実行している期間において前記電力ケーブルを流れる放電電流が前記取得された電力ケーブルの許容電流値を超える場合、前記放電を停止するように構成される。
【0015】
これによれば、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に電力ケーブルをより確実に保護することができる。
【0016】
本発明の一態様において、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルを介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記インレットは、前記電力ケーブルのコネクタが接続されている状態において、前記電力ケーブルのコネクタが備える端子であって前記蓄電部の充電を行う場合に前記電力ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子、に電気的に接続されて前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記電力ケーブルのコネクタが前記インレットに接続されている状態において、前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得し、更に、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成される。
【0017】
これによれば、既知の規格に従った充電ケーブルを用いて外部電源による蓄電部の充電を行うことも可能となる。換言すれば、既知の規格を大きく変更することなく、外部負荷への放電を行う場合に使用される電力ケーブルの許容電流値を制御装置に通知することができる。
【0018】
この場合(即ち、前記制御装置が、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成されている場合)、
前記コントロールパイロット信号は、前記蓄電部の充電を行う場合の前記電力ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比を有する信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記蓄電部から前記外部負荷への放電を行う場合の前記電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比を有する信号であることが好ましい。
【0019】
これによれば、外部電源による蓄電部の充電時に使用される規格と同じ規格を用いて、蓄電部の外部負荷への放電時に使用される電力ケーブルの許容電流値を制御装置に通知することができる。
【0020】
本発明の一態様において、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルとは相違する、充電用コネクタを含む充電用ケーブル、を介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記インレットは、前記充電用ケーブルの充電用コネクタが接続されている状態において、前記充電用コネクタが備える端子であって前記蓄電部の充電を行う場合に前記充電用ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子、に電気的に接続されて前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記充電用コネクタが前記インレットに接続されている状態において、前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記充電用ケーブルの許容電流値を取得し、更に、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成される。
【0021】
これによっても、既知の規格に従った充電ケーブルを用いて外部電源による蓄電部の充電を行うことも可能となる。換言すれば、既知の規格を大きく変更することなく、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に使用される電力ケーブルの許容電流値を制御装置に通知することができる。
【0022】
この場合(即ち、前記制御装置が、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成されている場合)、
前記コントロールパイロット信号は、前記充電ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比を有する信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比を有する信号であることが好ましい。
【0023】
これによっても、外部電源による蓄電部の充電時に使用される規格と同じ規格を用いて、蓄電部の外部負荷への放電時に使用される電力ケーブルの許容電流値を制御装置に通知することができる。
【0024】
近年、HEMS(ホームエネルギー管理システム)及びBEMS(ビルエネルギー管理システム)等、車両の外部の固定基地(家屋及びマンション等)に設けられたエネルギー管理システムを用いて「外部電源による蓄電部の充電」を行うことが検討されている。これらのシステム(但し、これらのシステムに限定されるものではない。)によれば、「より効果的に、安価に、或いは、再生可能なエネルギーを出来るだけ使用して、外部電源による蓄電部の充電を行うことができる。
【0025】
一般に、このようなシステムは車両の制御装置とエネルギー管理システムとの間で、双方向通信技術(例えば、PLC:パワーラインコミュニケーション)を用いて情報を交換させる。
【0026】
そこで、車両の制御装置が前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含む場合、その通信を用いて放電要求(放電開始要求信号)を車両の制御装置に与えることができる。この場合、第1通信ユニットと第2通信ユニット間において蓄電部の外部負荷への放電時に使用される電力ケーブルの許容電流値を制御装置に通知することができる。しかしながら、電力ケーブルが交換された場合等のように、第1通信ユニットの通信内容を決定する装置は「蓄電部の外部負荷への放電時に使用される電力ケーブルの許容電流値」を常に正確に把握しているとは限らない。
【0027】
その一方、「外部電源による蓄電部の充電」を行う場合、コントロールパイロット信号を所定のデューティ比を有するデューティ信号に設定することが知られている(規格により定められている。)。これは、蓄電部の充電を行うケーブルにそのデューティ信号を発生する回路を付加しておけば、どのようなケーブルが用いられてもそのケーブルの許容電流値を確実に車両の制御装置に通知することができるからである。
【0028】
係る観点から、仮に、車両の制御装置が前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含む場合であっても、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に使用される電力ケーブルの許容電流値を、第1通信ユニットと第2通信ユニットとの通信のみに依るのではなく、CPLT端子に蓄電部の充電時と同様なデューティ信号等を前記特定信号として送ることにより、車両の制御装置に通知することが望ましい。これによれば、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に使用される電力ケーブルの許容電流値を、正確に制御装置に通知することができる。
【0029】
そこで、本発明の一態様において、
前記制御装置は、前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含むとともに、前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る放電要求に従って前記放電を開始するように構成され、且つ、前記特定信号を前記第2通信ユニットを用いることなく取得するように構成される。
【0030】
更に、
前記制御装置は、
前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含むとともに、
前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る許容電流値と前記特定信号に基づいて取得された前記電力ケーブルの許容電流値とのうちの小さい値に基づいて前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御するように構成され、且つ、前記特定信号を前記第2通信ユニットを用いることなく取得するように構成されることが好適である。
【0031】
これによれば、第1通信装置から第2通信装置に向けて通信により送出すべき情報を取得する装置(例えば、HEMS40のコンピュータ)が「蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に使用される電力ケーブルの許容電流値」を「実際値よりも大きい値」として誤認識している場合であっても、放電の制御が「前記特定信号に基づいて取得された前記電力ケーブルの許容電流値」に基づいてなされ得る。よって、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に電力ケーブルをより確実に保護することが可能となる。
【0032】
更に、前記放電を実行している期間において前記電力ケーブルを流れる放電電流が、前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る許容電流値と前記特定信号に基づいて取得された前記電力ケーブルの許容電流値とのうちの小さい値を超える場合、前記放電を停止するように構成されることが望ましい。
【0033】
これによれば、蓄電部から外部負荷への放電を行う場合に電力ケーブルをより確実に保護することができる。なお、本発明は、このように構成された車両の蓄電部の放電制御方法、及び、同車両と前記電力ケーブルとを含む放電システムにも及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る充放電システムの概略図である。
【図2】図1に示した充放電システムの概略回路図である。
【図3】図2に示した車両が有する制御装置及びインレットの拡大概略回路図である。
【図4】図2に示した電力ケーブル及び充電スタンドの拡大概略回路図である。
【図5】図2に示したHEMS及び外部電源の拡大概略回路図である。
【図6】図2に示した充放電システムの放電時における作動工程図である。
【図7】図2に示した第1電子制御ユニットのCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図2に示した充放電システムの放電時における作動工程図である。
【図9】図2に示した充放電システムの充電時における作動工程図である。
【図10】図2に示した充放電システムの充電時における作動工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態に係る車両について図面を参照しながら説明する。この車両は放電システムに適用される。この放電システムとは、車両蓄電部から外部負荷(外部蓄電装置を含んでもよい。)へ電力を供給するシステムである。この放電システムは、以下に述べるように、「外部電源(外部蓄電装置を含んでもよい。)からの電力により車両蓄電部を充電することができる充電システム」の機能を兼ね備えているので、「充放電システム」とも称呼され得る。更に、車両蓄電部は、「車両に搭載され且つ外部電源(及び車両に搭載された発電機)から供給される電力により充電され得る車両蓄電装置」及び「車両に搭載され且つ車両蓄電装置を充電するための電力を発生する発電機(電力発生装置)」を含んでいてもよく、車両蓄電装置のみであってもよい。
【0036】
(概略構成)
図1に示したように、充放電システムCDSは、車両10、電力ケーブル20、充電スタンド30、HEMS40及び商用電源50を含んで構成される。
【0037】
車両10は、蓄電装置11、制御装置12及びインレット13を含んでいる。
【0038】
蓄電装置11は、充電及び放電が可能(充放電可能)な電力貯蔵要素である。従って、蓄電装置11は、外部電源から供給される電力により充電可能である。蓄電装置11は、放電することにより外部負荷に電力を供給(給電)可能である。蓄電装置11は、本例において、リチウムイオン電池である。蓄電装置11は、ニッケル水素電池及び鉛蓄電池等のリチウムイオン電池以外の二次電池であってもよく、他の充放電可能な蓄電素子であってもよい。蓄電装置11は、車両外部の蓄電装置と区別するために「車両蓄電装置11」と称呼されることがある。
【0039】
制御装置12は、後に詳述するように、それぞれがマイクロコンピュータを含む複数の電子制御ユニット(ECU)と、各種センサと、DC/ACインバータと、AC/DCコンバータと、リレーと等を含む電気回路である。制御装置12は、「外部電源から供給される電力による蓄電装置11の充電、及び、外部負荷への電力の供給による蓄電装置11の放電(即ち、蓄電装置11の充電及び放電)」を制御する。充電及び放電の制御とは、充電の開始及び停止、放電の開始及び停止、充電電流が過大である場合の充電の禁止、及び、放電電流が過大である場合の放電の禁止等、蓄電装置11の充放電に関わる電力等の制御を意味する。制御装置12は、車両外部の制御装置と区別するために「車両制御装置12」と称呼されることがある。
【0040】
インレット13は、電力ケーブルの20の一端に設けられたコネクタ21が接続可能となるように構成されている。インレット13及びコネクタ21の形状及び端子配列などの構成は上記非特許文献1及び上記非特許文献2等において規定された規格に準拠している。但し、非特許文献1及び非特許文献2は、外部電源による蓄電装置11の充電を行う場合についての規格である。一方、本実施形態の充放電システムは充電のみでなく放電をも行うが、インレット13及びコネクタ21の形状及び端子配列などの構成は上記規格に準拠している。従って、インレット13は、上記既知の規格に準拠した従来のコネクタ(充電用コネクタ)を有する充電用ケーブル(図示省略)とも接続可能である。
【0041】
なお、本例において、車両10は「内燃機関及び発電電動機を車両動力源として備えたハイブリッド車両」である。但し、車両10は、蓄電装置11からの電力によって走行可能な車両であればよく、その構成は特に限定されない。従って、車両10は、蓄電装置11を搭載し且つ内燃機関のみを車両駆動源として備える車両、燃料電池車両及び電気自動車であってもよい。
【0042】
電力ケーブル20は、その一端に操作部22を備える。操作部22の先端には前述したコネクタ21が設けられている。電力ケーブル20の他端は充電スタンド30に接続されている。電力ケーブル20は、蓄電装置11の充電時及び放電時の何れにも使用される。
【0043】
充電スタンド30は、家屋Hの近傍に配設されている。後に詳述するように、充電スタンド30は通信ユニット、充電ライン(充電用の電力線)と放電ライン(放電用の電力線)との何れかを選択するリレー及びCPLT回路(CPLT信号発生回路)等を含んでいる。充電スタンド30は、充電ライン及び放電ラインからなる電力線及び信号線を介してHEMS40に接続されている。
【0044】
HEMS40は、ホームエネルギーマネジメントシステムである。本例のHEMS40は、後に詳述するように、車両外部の蓄電装置(以下、「外部蓄電装置」と称呼する。)41及びコンピュータ45の他、AC/DCコンバータ42、DC/ACインバータ43及び短絡保護回路44等を含んでいる(図5を参照。)。
【0045】
外部蓄電装置41は充放電可能に構成されている。外部蓄電装置41は本例において鉛電池であるが、充放電可能な蓄電要素であれば他の二次電池等であってもよい。外部蓄電装置41は充電スタンド30に電力線を介して接続されている。外部蓄電装置41は車両蓄電装置11から供給される電力により充電されるようになっている。外部蓄電装置41は、更に、家屋Hにおいて家庭用電力として使用される電力の供給源でもある。
【0046】
商用電源50は、送電線51を介して発電所等から送電される高電圧(例えば、6600V)の電力を低電圧(例えば、100V又は200V)の電力に変換するトランス52を含む。商用電源50から供給される電力は、家屋Hにて家庭用電力として使用されるとともに、HEMS40に接続されて外部蓄電装置41に供給され、外部蓄電装置41を充電することができる。
【0047】
なお、本例において、家屋Hには太陽電池パネルPVを含む太陽光発電システムが備えられている。太陽光発電システムにより発生された電力は、商用電源50からの電力と同様、家庭用電力として使用されるとともに外部蓄電装置41を充電するために使用されることができる。
【0048】
このように構成された充放電システムにおいては、電力ケーブル20のコネクタ21を車両10のインレット13に接続した状態において、車両蓄電装置11を外部電源を用いて充電することができ、且つ、車両蓄電装置11から外部負荷に給電することができる。なお、外部電源は、外部蓄電装置41、商用電源50及び太陽光発電システム等を含む。外部負荷は、外部蓄電装置41及び家屋Hにて使用される家庭電化製品等を含む。
【0049】
次に、充放電システムの詳細について説明する。なお、以下の説明において既に説明した構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付す。
【0050】
全体図である図2及び拡大図である図3に示したように、車両10は上述した「車両蓄電装置11、制御装置12及びインレット13」を含んでいる。更に、車両10は、図3において太い実線により示した一対の充放電共用電力線PWk、二重の実線により示した一対の充電用電力線PWj及び二重の破線により示した放電用電力線PWhを含んでいる。
【0051】
制御装置12は、充電部121、放電部122、PLCユニット123及び車両制御部124を含んでいる。
【0052】
充電部121は、充電器121a、充電リレー121b及び第1電気制御ユニット121cを含んでいる。
【0053】
充電器121aは、充放電共用電力線PWk及び充電用電力線PWjを介してインレット13の一対の交流入出力端子ACIH,ACICに接続されている。充電器121aは、図示しない「昇圧回路及びAC/DCコンバータ」を含んでいて、交流入出力端子ACIH,ACIC間の交流の電力を直流の電力へと変換し、変換した直流の電力を充電リレー121bの各入力端子に出力するようになっている。
【0054】
充電器121aは、電圧センサ121d及び電流・電圧センサ121eを含んでいる。電圧センサ121dは、充電器121aに入力される交流の電力の電圧VACを測定し、その電圧VACを第1電子制御ユニット121cに出力するようになっている。電流・電圧センサ121eは充電リレー121bの各入力端子間に出力される直流電力の電流ICHG及び電圧VCHGを測定し、それらを第1電子制御ユニット121cに出力するようになっている。充電器121aは第1電子制御ユニット121cから制御信号を受信し、この制御信号に基づいて交流の電力を車両蓄電装置11に供給されるべき直流の電力へと変換する。
【0055】
充電リレー121bは、充電器121aと車両蓄電装置11との間において充電用電力線PWjに介装されている。充電リレー121bは、第1電子制御ユニット121cからの制御信号CHRBに基づいてリレー接点を開放し、第1電子制御ユニット121cからの制御信号CHRGに基づいてリレー接点を短絡する。充電リレー121bの接点が開放されると車両蓄電装置11の充電(車両蓄電装置11への給電)は停止し、充電リレー121bの接点が短絡されると車両蓄電装置11は充電される。
【0056】
第1電子制御ユニット(第1ECU)121cは、インレット13のPISW端子と接続線Pにより接続されている。なお、接続線Pには定電圧V5が印加されている。接続線Pは抵抗R1を介して車両接地点と接続されたGND端子に接続されている。第1電子制御ユニット121cは、インレット13のCPLT端子と接続線Cを介して接続されている。接続線Cには図示しない抵抗が接続されていて、コネクタ21がインレット13に接続されたときCPLT端子の電圧をV1からV2へと低下させるようになっている。第1電子制御ユニット121cはCAN(コントロールエリアネットワーク)の通信線を介してPLCユニット123及び第2電子制御ユニット124aと接続されている。
【0057】
第1電子制御ユニット121cは後述する放電部122のDC/ACインバータ122aに制御信号SWを送出するようになっている。更に、第1電子制御ユニット121cは後述する放電部122の放電リレー122bに制御信号ACR1,ACR2を送出するようになっている。
【0058】
放電部122は、DC/ACインバータ122a、放電リレー122b及びヒューズ122cを含んでいる。
【0059】
DC/ACインバータ122aは、放電用電力線PWhを介して車両蓄電装置11の陽極及び負極に接続されている。DC/ACインバータ122aは、入力された車両蓄電装置11の陽極と負極との間の直流の電力を交流の電力(例えば、AC100V又はAC200V)へと変換し、変換した交流の電力を放電リレー122bの各入力端子間に出力するようになっている。DC/ACインバータ122aと車両蓄電装置11の陽極との間の放電用電力線PWhにはヒューズ122cが介装されている。
【0060】
放電リレー122bは、共用電力線PWkとDC/ACインバータ122aの出力端子とを接続している放電用電力線PWhに直列に介装されている。放電リレー122bは、第1電子制御ユニット121cからの制御信号ACR1に基づいてリレー接点を開放し、第1電子制御ユニット121cからの制御信号ACR2に基づいてリレー接点を短絡する。放電リレー122bの接点が開放されると車両蓄電装置11の放電(外部負荷への給電)は停止し、放電リレー122bの接点が短絡されると車両蓄電装置11の放電が行われる。
【0061】
PLCユニット123は、パワーラインコミュニケーションを行うユニットである。即ち、PLCユニット123は電力線を通して伝送される通信信号により情報交換を行うユニットである。PLCユニット123は、便宜上、「第2通信ユニット123」又は「車両搭載通信ユニット123」とも称呼される。PLCユニット123はトランス(変圧器)123aを介してインレット13の一対の交流入出力端子ACIH,ACICに接続されている。これにより、PLCユニット123は一対の交流入出力端子ACIH,ACICに伝達され来た通信信号を受信することができる。PLCユニット123は、受信した通信信号を第1電子制御ユニット121cに送信するようになっている。更に、PLCユニット123は第1電子制御ユニット121cからの指示に基づいて、所定の情報を伝達する通信信号を一対の交流入出力端子ACIH,ACICに送出することができる。
【0062】
車両制御部124は、第2電子制御ユニット124a、エンジンアクチュエータ、昇圧コンバータ、第1発電電動機用インバータ及び第2発電電動機用インバータを含んでいる。第2電子制御ユニット(第2ECU)124aは、例えば、燃料噴射弁及びスロットル弁アクチュエータ等のエンジンアクチュエータを制御することにより図示しない内燃機関の発生出力を変更することができる。第2電子制御ユニット124aは、昇圧コンバータ及び第1発電電動機用インバータ及び第2発電電動機用インバータを制御することにより、図示しない「第1発電電動機及び第2発電電動機」の発生トルク及び回転速度を制御することができる。そして、第2電子制御ユニット124aは、内燃機関を最も効率良く運転しながら、内燃機関及び第2発電電動機から車両10の駆動力を発生させることができる。更に、第2電子制御ユニット124aは、第1発電電動機等をエンジンにより駆動して車両蓄電装置11を充電することもできる。これらの制御の詳細は、例えば、特開2009−126450号公報(米国公開特許番号 US2010/0241297)、及び、特開平9−308012号公報(米国出願日1997年3月10日の米国特許第6,131,680号)等に詳細に記載されている。これらは、参照することにより本願明細書に組み込まれる。更に、第2電子制御ユニット124aは、車両10が停止している場合においても、第1電子制御ユニット121cからのCANを介しての信号(発電要求信号)等に基づいて第1発電電動機等によって発電し、この発電された電力を放電部122及びインレット13等を介して外部負荷に供給することもできる。
【0063】
インレット13は、車両10の側面等に配置され、上述したように、電力ケーブル20のコネクタ21が接続される形状を有し、且つ、PISW端子(受信側PISW端子、インレット側PISW端子)、CPLT端子(受信側CPLT端子、インレット側CPLT端子)、ACIH端子(インレット側ACIH端子)、ACIC端子(インレット側ACIC端子)及びGND端子(インレット側GND端子)を有している。
【0064】
電力ケーブル20は、全体図である図2及び拡大図である図4に示したように、コネクタ21、コントロールパイロット線(CPLT線)23、一対の電力線24,25及び接地線26を含んでいる。
【0065】
コネクタ21は、コントロールパイロット線23、一対の電力線24,25及び接地線26(即ち、電力ケーブル20)の一端部に接続されている。コネクタ21は、PISW端子(送信側PISW端子、ケーブル側PISW端子)、CPLT端子(送信側CPLT端子、ケーブル側CPLT端子)、ACIH端子(ケーブル側ACIH端子)、ACIC端子(ケーブル側ACIC端子)及びGND端子(ケーブル側GND端子)を有している。
【0066】
コネクタ21がインレット13に物理的に接続された場合、コネクタ21の送信側PISW端子はインレット13の受信側PISW端子に物理的及び電気的に接続され、コネクタ21の送信側CPLT端子はインレット13の受信側CPLT端子に物理的及び電気的に接続され、コネクタ21のケーブル側ACIH端子はインレット13のインレット側ACIH端子に物理的及び電気的に接続され、コネクタ21のケーブル側ACIC端子はインレット13のインレット側ACIC端子に物理的及び電気的に接続され、コネクタ21のケーブル側GND端子はインレット13のインレット側GND端子に物理的及び電気的に接続されるようになっている。
【0067】
コネクタ21の送信側PISW端子と送信側(ケーブル側)GND端子との間は、互いに直列接続された抵抗R2及び抵抗R3からなる抵抗回路により接続されている。
【0068】
コネクタ21は、更に、スイッチSW1を有している。スイッチSW1は、コネクタ21が備えるロック機構の凸部がインレット13の対応する凹部に嵌合する動作に連動し、コネクタ21とインレット13との嵌合状態に応じて開閉するように構成されている。より具体的に述べると、スイッチSW1は、コネクタ21とインレット13とが未だ嵌合されていない未嵌合状態においては閉じるように構成されている。スイッチSW1は、コネクタ21とインレット13とが不完全に嵌合され、コネクタ21の上記各端子とインレット13の上記各端子とは電気的に接続されているものの、コネクタ21とインレット13とが完全には嵌合されていない半嵌合状態においては開くように構成されている。更に、スイッチSW1は、コネクタ21とインレット13とが完全に嵌合され、且つ、コネクタ21の上記各端子とインレット13の上記各端子とが電気的に接続されている完全嵌合状態においては再び閉じるように構成されている。
【0069】
CPLT端子(送信側CPLT端子)にはコントロールパイロット線23が接続されている。
ACIH端子(ケーブル側ACIH端子)には電力線24が接続されている。
ACIC端子(ケーブル側ACIC端子)には電力線25が接続されている。
GND端子(ケーブル側GND端子)には接地線26が接続されている。
【0070】
充電スタンド30は、電力線31,32、PLCユニット33、分岐電力線31a,32a、充放電切替リレー34及びCPLT回路35を含んでいる。
【0071】
電力線31は、電力ケーブル20の電力線24と、充放電切替リレー34が備える一対の放電用リレーのうちの一つと、に接続されている。
電力線32は、電力ケーブル20の電力線25と、充放電切替リレー34が備える一対の放電用リレーのうちの他の一つと、に接続されている。
【0072】
PLCユニット33は、PLCユニット123と同様、パワーラインコミュニケーションを行うユニットである。PLCユニット33は、電力線31及び電力線32に(電力線31及び電力線32に通信信号を送出可能に)介装されている。PLCユニット33は、HEMS40の後述するコンピュータ45(図5を参照。)と通信可能となっている。そして、PLCユニット33は、HEMS40のコンピュータ45からの指示に応じて、所定の情報を伝達する通信信号を電力線31,24及び電力線32,25を介してコネクタ21のACIH端子(ケーブル側ACIH端子)及びACIC端子(ケーブル側ACIC端子)に送出することができる。また、前述したように、車両10のPLCユニット123は所定の情報を伝達する通信信号を一対の交流入出力端子ACIH,ACICに送出することができる。従って、PLCユニット33とPLCユニット123とは、所定のプロトコルに従う通信信号により情報を交換することができる。なお、PLCユニット33は、便宜上、「第1通信ユニット33」又は「車両外部通信ユニット33」とも称呼される。
【0073】
PLCユニット33と充放電切替リレー34との間において電力線31は分岐しており、その分岐した電力線31aは充放電切替リレー34が備える一対の充電用リレーのうちの一つに接続されている。
PLCユニット33と充放電切替リレー34との間において電力線32は分岐しており、その分岐した電力線32aは充放電切替リレー34が備える一対の充電用リレーのうちの他の一つに接続されている。
【0074】
充放電切替リレー34の一対の放電用リレーは、後述するように、HEMS40に接続されている一対の放電用電力線Phに接続されている。
充放電切替リレー34の一対の充電用リレーは、後述するように、HEMS40に接続されている一対の充電用電力線Pjに接続されている。
【0075】
充放電切替リレー34はHEMS40のコンピュータ45から送出される切替信号に応答して動作する。このとき、充放電切替リレー34の一対の放電用リレーがその接点を短絡すると充放電切替リレー34の一対の充電用リレーはその接点を開放する。逆に、充放電切替リレー34の一対の放電用リレーがその接点を開放すると充放電切替リレー34の一対の充電用リレーはその接点を短絡する。更に、充放電切替リレー34は、放電も充電も行わない場合、その接点の総てが開放された状態に維持される。
【0076】
CPLT回路35は、一定電圧の又は後述するデューティ比を有するコントロールパイロット信号を、コントロールパイロット線23を介して、コネクタ21のCPLT端子(送信側CPLT端子)に提供できるようになっている。なお、CPLT回路35の発生する電圧はV1(例えば、12V)である。従って、CPLT回路35の発生するデューティ信号のパルスの電圧もV1である。CPLT回路35はHEMS40の後述するコンピュータ45と通信可能となっていて、例えば、電力ケーブル20の許容電流値(定格電流)をHEMS40のコンピュータに送信することができる。
【0077】
全体図である図2及び拡大図である図5に示したように、HEMS40は、外部蓄電装置41、AC/DCコンバータ42、DC/ACインバータ43、短絡保護回路(NFB)44、コンピュータ45及び入力装置46を含んでいる。
【0078】
外部蓄電装置41は、前述したように、商用電源50から供給される電力及び車両蓄電装置11から供給される電力により充電可能な二次電池(本例において、鉛電池)である。
【0079】
AC/DCコンバータ42は、充電スタンド30の充放電切替リレー34に接続された一対の放電用電力線Phに接続されている。
DC/ACインバータ43は、AC/DCコンバータ42と電力線Pdを介して接続されている。
短絡保護回路(NFB)44は、DC/ACインバータ43と、外部電源50から分電盤61を介して供給される交流電力を送信する電力ラインACLと、の間に挿入されている。
コンピュータ45は、AC/DCコンバータ42、DC/ACインバータ43及び短絡保護回路(NFB)44にも接続され、これらに指示信号を送出し又はこれらの作動状態を監視するようになっている。
コンピュータ45は更に入力装置46を介してユーザにより入力される情報を格納することができるようになっている。
【0080】
家屋Hは、電力ラインACL上の電力を、例えば、漏電保護回路(漏電遮断器、ELB)71及び短絡保護回路(NFB)72を介することによってAC200Vの電力を家電製品73に供給したり、漏電保護回路71及び短絡保護回路74を介することによってAC100Vの電力を家電製品75に供給したりできるようになっている。
【0081】
分電盤61は、トランス52を介して商用電源50から供給される低圧の電力を電力ラインACL上に出力することができる。更に、分電盤61は、トランス52を介して商用電源50から供給される低圧の電力を充放電切替リレー34に接続された充電用電力線Pjに供給することができる。
【0082】
次に、上記のように構成された充放電システムCDSの作動(充電シーケンス及び放電シーケンス)について説明する。なお、以下において、HEMS40が行う作動は実際にはコンピュータ45が所定の処理を実行することにより行われ、車両10が行う作動は実際には第1電子制御ユニット121cのCPUが所定の処理を実行することにより行われる。
【0083】
<通信による放電シーケンス>
HEMS40を用いて行う放電シーケンスについて図6乃至図8を参照しながら説明する。HEMS40は通信ユニットであるPLCユニット33と車両10の通信ユニットであるPLCユニットとの間の通信(通信信号)を用いて蓄電装置11の放電を行う。このような放電は、以下、「通信による放電」とも称呼される。
【0084】
先ず、ユーザが電力ケーブル20のコネクタ21を車両10のインレット13に接続する。前述したように、スイッチSW1は、コネクタ21とインレット13とが未だ嵌合されていないとき(即ち、未嵌合状態において)閉じ、コネクタ21とインレット13とが不完全に嵌合されているとき(即ち、半嵌合状態において)開き、更に、コネクタ21とインレット13とが完全に嵌合されたとき(即ち、完全嵌合状態において)再び閉じる。
【0085】
抵抗R1、R2、及びR3の抵抗値をそれぞれR1、R2、及びR3[Ω]であるとすると、PISW端子とGND端子との間の抵抗値は、未嵌合状態においてRn=R1[Ω]、半嵌合状態においてRh=R1×(R2+R3)/(R1+R2+R3)[Ω]、完全嵌合状態においてRf=R1×R3/(R1+R3)[Ω]となる。このとき、R1〜R3が適切に選ばれていれば、コネクタ21とインレット13との嵌合状態が、未嵌合状態→半嵌合状態→完全嵌合状態と進むに連れて、PISW端子とGND端子との間の抵抗値はRn→Rh→Rfと、段階的に低下する。従って、コネクタ21とインレット13とが完全に嵌合されたとき、抵抗値は最も小さいRfとなる。
【0086】
ところで、コネクタ21とインレット13とが接続されていないとき、CPLT回路35は一定電圧V1(非発振)(例えば、V1=12V)を発生している。即ち、コントロールパイロット信号(CPLT信号)はV1で一定である。コネクタ21とインレット13とが完全に嵌合されるように接続されると、インレット13内に設けられた図示しない抵抗により受信側CPLT端子の電圧はV1よりも小さいV2(例えば、9V)に低下する(図6のステップS1を参照。)。
【0087】
なお、このCPLT信号の電圧をV1からV2へと低下させる動作はスリープ状態にある第1電子制御ユニット121cにより行われてもよい。更に、制御部12は、第1電子制御ユニット121cとは別個に設けられ常に蓄電装置11からの電力供給を受けている回路により、上記PISW端子とGND端子との間の抵抗値の変化の検出及びコントロールパイロット信号(CPLT信号)のV1からV2への電圧低下を行ってもよい。
【0088】
HEMS40は、図6のステップH1にてCPLT線23の電位がV2になったことを確認すると、ステップH2にてCPLT信号をデューティ比5%にて発振させる。CPLT信号のデューティ比を5%にすることは「PLC通信開始要求及び車両(第1電子制御ユニット)起動要求」を車両10へ送信していることになる。なお、CPLT信号のデューティ比が10%〜96%であるとき、そのデューティ比は「HEMS40等の通信による充放電ではなく、通信を用いない通常の充電要求であること」を意味するとともに、そのデューティ比が「インレット13に接続されている充電ケーブルの許容電流値」を示すことが規格により定められている。即ち、CPLT信号のデューティ比が10%〜96%である場合においては、そのデューティ比は充電ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するように規格により定められている。
【0089】
車両10はステップS2にて、第1電子制御ユニット121cを起動し且つCPLT信号のデューティ比を計測する。なお、第1電子制御ユニット121c(そのCPU)は、所定のデューティ比にて発振しているCPLT信号の立ち上がりエッヂにて割り込み処理が起動されることによって、起動する。この時点での処理が図7のステップ200に相当している。図7は、車両10(第1電子制御ユニット121cのCPU)が実行する処理手順を示したフローチャートである。車両10はデューティ比の計測を終了すると図7のステップ205に進み、計測したCPLT信号のデューティ比が5%であるか否かを判定する。現時点において、HEMS40からデューティ比が5%のCPLT信号が送出されている。従って、車両10はステップ205にて「Yes」と判定してステップ210に進み、PLC接続(パワーラインコミュニケーションを用いた通信が可能になるようにする準備作業)を行う(図6のステップS3)。即ち、車両は、車両10のPLCユニット(第2通信ユニット)123と充電スタンド30のPLCユニット(第1通信ユニット)33との間での通信可能状態を確立させる。
【0090】
なお、車両10が図7のステップ205の処理を行った際、CPLT信号のデューティ比が5%でない場合、車両10はステップ205にて「No」と判定してステップ215に進み、CPLT信号のデューティ比が10〜96%の範囲内であるか否かを判定する。即ち、車両10は、規格に従った通常の充電要求(即ち、通信を用いない充電の要求)が発生しているか否かを判定する。
【0091】
このとき、CPLT信号のデューティ比が10〜96%の範囲内であれば、車両10はステップ215にて「Yes」と判定してステップ220に進み、通常の充電要求に基づく充電処理を開始する。この場合、車両10は、CPLT信号のデューティ比に基づいてインレット13に接続されている充電ケーブルの許容電流値を(既知の規格に則って)取得し、ステップ220での通常の充電要求に基づく充電の制御に「取得した充電ケーブルの許容電流値」を使用する。
【0092】
更に、車両10が図7のステップ215の処理を行った際、CPLT信号のデューティ比が10〜96%の範囲内でなければ、車両10はステップ295に進んで処理を終了する。
【0093】
ところで、車両が図7のステップ210に進んだとき、即ち、車両が図6のステップS3に進んだとき、図6のステップH3に示したように、HEMS40もPLC接続を開始する。そして、HEMS40はステップH4にてPLC通信が確立したことを検知する。同様に、車両10は図6のステップS4にてPLC通信が確立したことを検知する。この処理は、図7のステップ225での「Yes」との判定に相当する。
【0094】
例えば、車両10がPLC通信の確立を所定時間以内に確認できない場合、車両10は図7のステップ225にて「No」と判定してステップ295に進み、処理を一旦終了する。この場合、CLPT信号の発振は停止させられる。
【0095】
車両10及びHEMS40の双方がPLC通信の確立を検知できた場合、車両10は図6のステップS5にて車両情報をPLC通信にてHEMS40に通知する。例えば、車両10は、車両蓄電装置11の残容量(SOC)、その車両10を特定する車両ID番号等を車両情報としてHEMS40に通知する。
【0096】
HEMS40はステップH5にて車両10からPLC通信により送られてきた車両情報を検知(取得)する。
【0097】
次に、HEMS40はステップH6にてHEMS情報を車両10にPLC通信にて通知する。例えば、HEMS40は、HEMS40が「充電スタンド30のCPLT回路から取得し認識している電力ケーブル20の許容電流値(定格電流)及びHEMS40の定格電圧」を車両10に通知する。車両10はステップS6にてHEMS40からPLC通信により送られてきたHEMS情報を検知(取得)する。
【0098】
続いて、HEMS40はステップH7にてCPLT信号を用いて電力ケーブル20の許容電流値を通知する。より具体的に述べると、HEMS40はCPLT回路35によってCPLT信号をデューティ比10%〜96%の範囲のデューティ比であって、電力ケーブル20の許容電流値に応じたデューティ比にて発振させる。このときのCPLT信号は、電力ケーブル20から車両10(実際には、インレット13のCPLT端子)に与えられ且つ電力ケーブル20の許容電流値を車両10に通知するための「特定信号」である。
【0099】
更に、この場合の「デューティ比と許容電流値との関係」は、前述した通信に依らない「通常の充電要求に基づく充電時」においてCPLT回路35が使用するデューティ比と許容電流値との関係と同じ関係である。換言すると、通信を使用しない通常の充電要求時において充電ケーブルの許容電流値を車両10にCPLT信号により伝達する場合の規格を、この通信による放電要求に基づく放電時においても使用する。なお、この時点でのCPLT信号の電圧(デューティ信号におけるパルス電圧)はV2=9Vである。
【0100】
車両10は、ステップS7にてCPLT信号線23を通して送られてきたCPLT信号のデューティ比を前述した規格に従って「電力ケーブル20の許容電流値」へと変換し、その許容電流値を検知・取得する。車両10は、このステップS7にて取得した「CPLT信号のデューティ比に基づく電力ケーブル20の許容電流値」と、ステップS6にて「HEMS40からPLC通信により送られてきたHEMS情報に含まれる電力ケーブル20の許容電流値」とが相違する場合、何れか小さい方(IMIN)を以降の放電制御に使用する。なお、車両10は、ステップS7にて取得した「CPLT信号のデューティ比に基づく電力ケーブル20の許容電流値」と、ステップS6にて「HEMS40からPLC通信により送られてきたHEMS情報に含まれる電力ケーブル20の許容電流値」とが相違する場合、「CPLT信号のデューティ比に基づく電力ケーブル20の許容電流値」を以降の放電制御に優先的に使用してもよい。
【0101】
次に、HEMS40はステップH8にて、車両10に対して放電要求をPLC通信によって通知する。車両10はステップS8にて、このPLC通信により通信されてきた放電要求を検知する。なお、この処理は、図7の「充電要求があったか否かを判定するステップ230」での「No」との判定、及び、図7の「放電要求があったか否かを判定するステップ240」での「Yes」との判定に相当する。その後、車両10は図7のステップ245に進み、通信による放電要求に応じた処理を行う。
【0102】
即ち、車両10は図6のステップS9にて、HEMS40に放電能力をPLC通信にて通知する。より具体的には、車両10は、現時点において放電できるか否か(放電可否)、放電する電力は直流であるのか交流であるのか、放電する電力の放電電圧・放電電流・周波数・単相か三相かの区別及び放電可能エネルギー等を、放電能力としてHEMS40に通知する。
【0103】
次に、HEMS40はステップH9にて車両10から通信により送られて来た放電能力についての情報に基づいて、放電要求の詳細内容を決定する。その後、HEMS40はステップH10にて車両10に放電要求の詳細をPLC通信により通知する。放電要求の詳細は、例えば、放電を要求する電力は直流であるのか交流であるのか、その電圧、電流、周波数及び単相か三相かの区別等である。
【0104】
車両10はステップS10にて、HEMS40から通信により送られてきた放電要求を検知・取得し、続くステップS11にて「その放電要求(放電要求の詳細)」を満たすことができるか否かを判定し、その判定結果をPLC通信により通知する。
HEMS40はステップH11にて、車両10から送られてきた判定結果を検知・取得する。
【0105】
この判定結果がHEMS40からの放電要求を受け入れることができる旨を示している場合、車両10は図8のステップS12にて、HEMS40に「車両10は放電準備を完了した」旨をCPLT線23を用いて通知する。実際には、第1電子制御ユニット121cが図示しないスイッチング素子をオンすることにより、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2よりも小さいV3(例えば、6V)に低下させる。
【0106】
HEMS40は、CPLT線23を介して車両10が放電準備を完了したことを検知すると、ステップH12にて充電スタンド30の充放電切替リレー34の放電側接点を短絡させ、電力線31,32と放電用電力線Phとを接続する。
次に、HEMS40はステップH13にて、HEMS40のAC/DCコンバータ42から出力を発生させ始める。
【0107】
一方、車両10は、ステップS13にて車両10の放電リレー122bを短絡させ、ステップS14にてDC/ACインバータ122aから出力を発生させ始める。以上の処理により、車両蓄電装置11から外部負荷に相当する外部蓄電装置41(及び/又は家電製品等)へと給電が開始される。即ち、車両蓄電装置11が放電を開始する。
【0108】
車両蓄電装置11から外部負荷への給電中(放電中)において、HEMS40と車両10は出力条件の情報交換をPLC通信により行う(図8のステップH14及びステップS15)。なお、車両10(実際には第1電子制御ユニット121c)は、放電を実行している期間において電力ケーブル20を流れる放電電流が「取得された電力ケーブルの許容電流値(IMIN)」を超える場合、DC/ACインバータ122aを停止し、その後、必要に応じて放電リレー122bを開放し、放電を停止するように構成されている。
【0109】
その後、HEMS40は放電要求が終了したことを判定すると(ステップH15)、ステップH16にて車両10に放電停止要求をCPLT線23を用いて通知する。より具体的には、HEMS40はCPLT回路35にCPLT信号の発振を停止させる。この時点においては、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧はV3(例えば、6V)である。
【0110】
車両10は、ステップS16にてHEMS40からの放電停止要求を検知すると、ステップS17にて放電終了処理状態に移行すべく、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2(例えば、9V)へと引き上げる。なお、車両10からも放電を終了することができる。この場合、車両10はインレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2(例えば、9V)へと引き上げればよい。次に、車両10はステップS18にてDC/ACインバータ122aの作動を停止させる。
【0111】
次に、車両10は、ステップS19及びステップS20にて放電リレー122bの溶着の有無を確認する。具体的には、DC/ACインバータ122aの作動を停止させてから、DC/ACインバータ122aの出力電圧が規定値以下にまで低下するまで待ち、その出力電圧が規定値以下となったときに放電リレー122bの一方を短絡させ他方を開放させるとともにDC/ACインバータ122aを作動させる。このとき充電器121aの電圧センサ121dの出力が上昇すれば、車両10は、開放させている側のリレー接点が溶着していると判定する。
【0112】
その後、車両10はステップS21にて放電リレー122bを開放させ、ステップS22にてPLCユニット123にPLCユニット33との通信を終了させる処理を行わせる。最後に、車両10はステップS23にて第1電子制御ユニット121cを停止させる(スリープ状態にする。)。なお、第1電子制御ユニット121cがスリープ状態にある場合に、CPLT信号が発振すると(即ち、デューティ信号に変化すると)、第1電子制御ユニット121cは再び起動する。
【0113】
HEMS40は、図8のステップH16にて放電停止要求を車両10に通知した後、H17にてHEMS40のAC/DCコンバータ42の作動を停止し、ステップH18にて放電回路電圧(AC/DCコンバータ42の出力電圧)が既定値以下に低下するのを待ち、ステップH19にて充放電切替リレー34の放電側接点を開放させる。その後、HEMS40はステップH20にてPLCユニット33にPLCユニット123との通信を終了させる処理を行わせる。以上が、通信による放電時の作動である。
【0114】
<通信による充電シーケンス>
次に、HEMS40を用いて行う充電シーケンスについて図9及び図10を参照しながら簡単に説明する。HEMS40はPLCユニット33と車両10のPLCユニット123との間の通信(通信信号)を用いて蓄電装置11の充電を行う。このような充電は、以下、「通信による充電」とも称呼される。なお、前述したように、通信に依らない蓄電装置11の外部電源による充電は通常の通電と称呼される。以下において、放電シーケンスの説明において既に説明した処理については記載を簡素化するか省略する。
【0115】
先ず、ユーザが電力ケーブル20のコネクタ21を車両10のインレットに接続する。コネクタ21が完全嵌合状態になったことの検知手法は充電の場合と同じである。
【0116】
HEMS40は図9のステップJ1にて受信側CPLT端子の電圧がV1からV2(例えば、9V)に低下したことを検知するとコネクタ21が接続されたと判定し、ステップJ2にてCPLT信号をデューティ比5%にて発振させ、CLPT信号線23を用いて「PLC通信開始要求及び車両(第1電子制御ユニット)起動要求」を車両10へ送信する。
【0117】
車両は図9のステップT1にて第1電子制御ユニット121cを起動し且つCPLT信号のデューティ比を計測する。この場合、CPLT信号のデューティ比が規格に定められている「通常の充電を示す10%〜96%」ではなく「通信による充放電を示す5%」であるから、車両10はステップT2にてPLC接続を開始する。同時にHEMS40はステップT3にてPLC接続を開始する。ステップJ4及びステップT3にて、HEMS40及び車両10の双方がPLC接続が確立したことを検知すると、車両10はステップT4にて、図6のステップS5と同様に車両情報をPLC通信にてHEMS40に通知する。HEMS40はステップJ5にてその車両情報を検知する。
【0118】
HEMS40はステップJ6にてHEMS情報を車両10にPLC通信にて通知する。このとき、HEMS情報には「電力ケーブル20の許容電流値に関する情報」は含まれない。但し、必要に応じ、PLCにて通知するHEMS情報の中に「電力ケーブル20の許容電流値に関する情報」が含まれてもよい。車両10はステップT5にて、そのHEMS情報を検知する。
【0119】
次に、HEMS40はステップJ7にて、CPLT信号を用いて電力ケーブル20の許容電流値を通知する。この場合においても、HEMS40はCPLT回路35によってCPLT信号を「デューティ比10%〜96%の範囲のデューティ比であって、電力ケーブル20の許容電流値に対して規格により定められるデューティ比」にて発振させる。換言すると、通信に依らない通常の充電要求時において充電ケーブルの許容電流値を車両10にCPLT信号により伝達する場合の規格を、この通信による充電要求に基づく充電時においても使用する。
【0120】
車両10はステップT6にて、CPLT信号線23を通して送られてきたCPLT信号のデューティ比を前述した規格に従って電力ケーブル20の許容電流値へと変換し、その許容電流値を検知・取得する。その後、HEMS40はステップJ8にて、車両10に対して充電要求をPLC通信によって通知する。車両10はステップT7にて、PLC通信により通信されてきた充電要求を検知する。なお、この処理は、図7のステップ230での「Yes」との判定に相当する。その後、車両10は図7のステップ235に進み、通信による充電要求に応じた処理を行う。
【0121】
即ち、車両10は図10のステップT8にてHEMS40に「車両10は充電準備を完了した」旨をCPLT線23を用いて通知する。実際には、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2よりも小さいV3(例えば、6V)に低下させる。その後、車両10はステップT9にて車両10の充電リレー121bを短絡させる。
【0122】
HEMS40は、車両10が充電準備を完了したことを検知すると、図10のステップJ9にて充電スタンド30の充放電切替リレー34の充電側接点を短絡させ、電力線31a,32aと充電用電力線Pjとを接続する。これにより蓄電装置11の外部電源による充電が開始する。車両蓄電装置11の外部電源による充電中において、HEMS40と車両10は出力条件の情報交換をPLC通信により行う(図10のステップJ10及びステップT10)。
【0123】
その後、HEMS40は充電要求が終了したことを判定すると(ステップJ11)、ステップJ12にて車両10に充電停止要求をCPLT線23を用いて通知する。より具体的には、HEMS40はCPLT回路35にCPLT信号の発振を停止させる。この時点においては、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧はV3(例えば、6V)である。
【0124】
車両10は、ステップT11にてHEMS40からの充電停止要求を検知すると、ステップT12にて充電終了処理状態に移行すべく、インレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2(例えば、9V)へと引き上げる。なお、車両10からも充電を終了することができる。この場合、車両10はインレット13のCPLT端子(即ち、接続線C)の電圧をV2(例えば、9V)へと引き上げればよい。次に、車両10はステップT13にて車両10の充電リレー121bを開放させ、ステップT14にてPLCユニット123にPLCユニット33との通信を終了させる処理を行わせる。最後に、車両10はステップT15にて第1電子制御ユニット121cを停止させる(スリープ状態に移行させる。)。
【0125】
HEMS40は、ステップJ12にて放電停止要求を車両10に通知した後、ステップJ13にて充放電切替リレー34の充電側接点を開放させる。その後、HEMS40はJ14にてPLCユニット33にPLCユニット123との通信を終了させる処理を行わせる。以上が、通信による充電時の作動である。
【0126】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る車両10は、
電力ケーブル(20)に設けられたコネクタが接続されるインレット(13)と、
外部負荷に前記電力ケーブルを介して放電可能な蓄電部(11、124)と、
前記コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御する制御装置(12、121c)と、
を備える車両において、
前記制御装置(12、121c)は、前記放電を開始する前に前記電力ケーブルからの特定信号(コントロールパイロット信号)に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得するように構成されている(図6のステップH7、図8のステップH11及びステップS12乃至ステップS14を参照。)。
【0127】
更に、前記蓄電部(蓄電装置11等)は、電力ケーブル(20)を介して外部電源(50及び41等)から供給される電力により充電可能であり、
インレット(13)は、電力ケーブル(20)のコネクタ(21)が接続されている状態において、前記電力ケーブルのコネクタが備える端子であって前記蓄電部の充電を行う場合に前記電力ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子、に電気的に接続されて前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
制御装置(12、121c)は、電力ケーブル(20)のコネクタ(21)が前記インレット(13)に接続されている状態において、前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得し(図6のステップH7、図8のステップH12及びステップS12乃至ステップS14を参照。)、更に、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号(CPLT信号)を受信するように構成されている(図6のステップH7)。
【0128】
更に、前記制御装置(12、121c)は、前記電力ケーブル20を介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニット(33)と通信可能な第2通信ユニット(123)を含むとともに、前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る放電要求に従って前記放電を開始するように構成され(図7のステップ240及びステップ245、図6のステップH8乃至ステップH11、図8のステップS12乃至ステップS14を参照。)、且つ、前記特定信号(CPLT信号)を前記第2通信ユニットを用いることなく取得するように構成されている(図6のステップH7)。
【0129】
従って、従来の規格を大きく変更することなく、電力ケーブル20の許容電流値の正確な値に基づいて、通信による車両蓄電装置11の放電を実施することができる。
【0130】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、HEMS40と車両10との通信はPLCを用いて行われていたが、CPLT線23のコントロールパイロット信号に更に通信信号を重畳させることにより、HEMS40と車両10との所定の通信プロトコルに従う通信を行ってもよい。
【0131】
更に、車両蓄電装置11からの放電及び充電は交流電力により行われていたが、直流電力により行われてもよい。加えて、充電スタンド30は、その機能をHEMS40が備える限りにおいてHEMS40内に取り込まれてもよい。更に、充放電切替リレー34がHEMS40内に配置されてもよい。また、図6のステップH6は省略することもできる。
【符号の説明】
【0132】
10…車両、11…車両蓄電装置、12…制御部(車両制御部)、13…インレット、20…電力ケーブル、21…コネクタ、22…操作部、23…コントロールパイロット線CPLT信号線)、24,25…電力線、26…接地線、30…充電スタンド、31,32…電力線、31a,32a…分岐電力線、33…通信ユニット(第1通信ユニット、車両外部通信ユニット)、34…充放電切替リレー、41…外部蓄電装置、45…コンピュータ、50…商用電源(外部電源)、52…トランス、121…充電部、121a…充電器、121b…充電リレー、121c…電気制御ユニット、122…放電部、122a…DC/ACインバータ、122b…放電リレー、123…通信ユニット(第2通信ユニット、車両搭載通信ユニット)、124…車両制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルに設けられたコネクタが接続されるインレットと、
外部負荷に前記電力ケーブルを介して放電可能な蓄電部と、
前記コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御する制御装置と、
を備える車両において、
前記制御装置は、前記放電を開始する前に前記電力ケーブルからの特定信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得するように構成された、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記制御装置は、前記放電を実行している期間において前記電力ケーブルを流れる放電電流が前記取得された電力ケーブルの許容電流値を超える場合、前記放電を停止するように構成された車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両において、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルを介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記インレットは、前記電力ケーブルのコネクタが接続されている状態において、前記電力ケーブルのコネクタが備える端子であって前記蓄電部の充電を行う場合に前記電力ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子、に電気的に接続されて前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記電力ケーブルのコネクタが前記インレットに接続されている状態において、前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得し、更に、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成された、
車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記コントロールパイロット信号は、前記蓄電部の充電を行う場合の前記電力ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比を有する信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記蓄電部から前記外部負荷への放電を行う場合の前記電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比を有する信号である車両。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車両において、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルとは相違する、充電用コネクタを含む充電用ケーブル、を介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記インレットは、前記充電用ケーブルの充電用コネクタが接続されている状態において、前記充電用コネクタが備える端子であって前記蓄電部の充電を行う場合に前記充電用ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子、に電気的に接続されて前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記充電用コネクタが前記インレットに接続されている状態において、前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記充電用ケーブルの許容電流値を取得し、更に、前記受信側CPLT端子を介して前記特定信号を受信するように構成された、
車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記コントロールパイロット信号は、前記充電ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比を有する信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比を有する信号である車両。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6に記載の車両において、
前記制御装置は、前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含むとともに、前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る放電要求に従って前記放電を開始するように構成され、且つ、前記特定信号を前記第2通信ユニットを用いることなく取得するように構成された車両。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6に記載の車両において、
前記制御装置は、
前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含むとともに、
前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る許容電流値と前記特定信号に基づいて取得された前記電力ケーブルの許容電流値とのうちの小さい値に基づいて前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御するように構成され、且つ、前記特定信号を前記第2通信ユニットを用いることなく取得するように構成された車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両において、
前記放電を実行している期間において前記電力ケーブルを流れる放電電流が、前記第1通信ユニットから前記第2通信ユニットに通信されて来る許容電流値と前記特定信号に基づいて取得された前記電力ケーブルの許容電流値とのうちの小さい値を超える場合、前記放電を停止するように構成された車両。
【請求項10】
コネクタを含む電力ケーブルと、
外部負荷に前記電力ケーブルを介して放電可能な蓄電部、前記コネクタと接続されるインレット、及び、前記コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御する制御装置、を搭載した車両と、
を含む放電システムにおいて、
前記電力ケーブルは、前記制御装置に対して前記電力ケーブルの許容電流値を表す特定信号を提供可能に構成され、
前記制御装置は、前記放電を開始する前に前記電力ケーブルからの前記特定信号に基づいて前記許容電流値を取得するように構成された、
放電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の放電システムにおいて、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルを介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記電力ケーブルのコネクタは、前記蓄電部の充電を行う場合に前記電力ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子を備え、
前記インレットは、前記電力ケーブルのコネクタが接続されている状態において前記送信側CPLT端子に接続され且つ前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記電力ケーブルのコネクタが前記インレットに接続されている状態において前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を制御するとともに同蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記電力ケーブルの許容電流値を取得するように構成され、
更に、
前記電力ケーブルのコネクタは、前記送信側CPLT端子を介して前記特定信号を提供するように構成され、
且つ、
前記コントロールパイロット信号は、前記蓄電部の充電を行う際に接続される電力ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比のデューティ信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記蓄電部の放電を行う際に接続される電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比のデューティ信号である放電システム。
【請求項12】
請求項10に記載の放電システムにおいて、
前記蓄電部は、前記電力ケーブルとは相違する、充電用コネクタを含む充電用ケーブル、を介して外部電源から供給される電力により充電可能であり、
前記充電用コネクタは、前記インレットと接続可能に構成されるとともに、前記蓄電部の充電を行う場合に前記充電用ケーブルの許容電流値を表すコントロールパイロット信号を提供するための送信側CPLT端子を備え、
前記インレットは、前記充電用コネクタが接続されたときに前記送信側CPLT端子に接続され且つ前記コントロールパイロット信号を受信する受信側CPLT端子を含み、
前記制御装置は、前記充電用コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を制御するとともに同蓄電部の充電を開始する前に前記コントロールパイロット信号に基づいて前記充電用ケーブルの許容電流値を取得するように構成され、
更に、
前記電力ケーブルのコネクタは、前記インレットに接続されている状態において、前記受信側CPLT端子に接続可能に構成されるとともに前記特定信号を提供するための送出端子を備え、
且つ、
前記コントロールパイロット信号は、前記充電用ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比のデューティ信号であり、
前記受信側CPLT端子を介して受信される前記特定信号は、前記電力ケーブルの許容電流値と前記所定の関係を有するデューティ比のデューティ信号である放電システム。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12の何れか一項に記載の放電システムにおいて、
前記制御装置は、
前記電力ケーブルを介して前記車両の外部に設けられた第1通信ユニットと通信可能な第2通信ユニットを含む放電システム。
【請求項14】
電力ケーブルに設けられたコネクタが接続されるインレットと、
外部負荷に前記電力ケーブルを介して放電可能な蓄電部と、
前記コネクタが前記インレットに接続されている状態において前記蓄電部から前記外部負荷への放電を制御する制御装置と、
を備える車両の蓄電部の放電制御方法において、
前記放電を開始する前に前記電力ケーブルが備えるコントロールパイロット線に同電力ケーブルの許容電流値と所定の関係を有するデューティ比のデューティ信号を供給する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の放電制御方法において、
前記所定の関係は、充電用ケーブルを介して外部電源から供給される電力による前記蓄電部の充電を開始する際に前記充電用ケーブルの許容電流値と前記コントロールパイロット線に供給されるデューティ信号のデューティ比との関係、と一致している方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99078(P2013−99078A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239020(P2011−239020)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】