説明

多価鳥インフルエンザウイルス

鳥インフルエンザウイルス感染を予防または軽減するのに有効なワクチン組成物および方法が、本明細書中に記載される。このワクチンは、少なくとも2つの鳥インフルエンザ不活性株を含み、ここで合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は、このワクチン組成物1用量当たり少なくとも約256HAであり、そしてこの株の各々は、少なくとも約128HA/用量を提示し、さらにこの株のうちの1つはチャレンジウイルスのHAサブタイプと同じHAサブタイプを有し、かつこの株のうちの少なくとも1つは、このチャレンジウイルスのNAサブタイプとは異なるNAサブタイプを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、疾患の発生に直面しているワクチン接種感受性の鳥に予防接種するのに有用な、新規の多価鳥インフルエンザワクチンに関する。本発明はまた、家禽における鳥インフルエンザウイルス疾患を予防または軽減するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
鳥インフルエンザ(「AI」とも呼ばれる)は、鳥および他の家禽の急性かつ高度に接触伝染性のウイルス感染である。インフルエンザウイルスのように、鳥インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA;Hと略されることもある)分子およびノイラミニダーゼ(NA;Nと略されることもある)分子における抗原の差異に基づくサブタイプで分類される。これらの分子は、季節ごとに「再集合」または「変異」する。鳥インフルエンザウイルスは絶えず変異するので、どの株が次の季節に再び現れるのかを予測できないことに起因して、ワクチンの調製は困難である。ワクチン調製のために使用される株は、製造条件下では非常に速い速度ではほとんど複製せず、その結果、特定の株の出現を待ち、次いでその株に対して保護する適切なワクチンを製造することは、実行可能な選択肢ではない。代表的には、特定の株の流行は、数ヶ月間続き、次いでおそらく数年間消失する。
【0003】
根絶が、鳥における疾患を制御するための原則的な方法であるが、明らかな経済的不利を伴う。しかしながら、免疫の開始が早いワクチンが産生され得るならば、そのような製品は群れ全体の集団虐殺に対する実行可能な代替法を提供する。
【0004】
インフルエンザウイルスは、そのウイルスが有する抗原基に従って、種々のA、B、Cトポロジーに分類されることが公知である。A、B、C型のインフルエンザウイルスは、ウイルスのヌクレオカプシド(NP)およびマトリックス(M)タンパク質において見出され得る抗原の差異に基づいて、互いに区別され得る。特に、A型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA)分子およびノイラミニダーゼ(NA)分子における抗原の差異に基づいて、サブタイプに分類され得る。NA1〜NA9と命名された9個のノイラミニダーゼNAタンパク質のサブタイプ、およびHA1〜HA15と命名された血清ヘマグルチニンHAタンパク質の15個の異なるサブタイプが、現在同定されている。鳥においては、HA(またはH)およびNA(またはN)サブタイプのいずれかを有するウイルスが、単離されている。
【0005】
HAは、約560アミノ酸を含むウイルス表面糖タンパク質であり、総ウイルスタンパク質の25%を占める。HAは、感染の初期段階における、ウイルス粒子への宿主への接着および宿主へのウイルスの侵入を主に担う。ウイルスタンパク質の中でヘマグルチニンは、翻訳後再配列に最も供されるもののうちの1つである。その合成が完了した後、その分子は宿主細胞の細胞外放出経路に従い、その過程においてHAはフォールディングされ、三量体にアセンブルされ、そしてグリコシル化される。最終的に、HAは、H1およびH2の2つのサブユニットに切断される。この切断が、分子の活性化およびビリオンによる感染能の獲得における重要な段階である。
【0006】
実際、塩基性アミノ酸残基に関して切断部位の異なる組成物は、能力のある鳥インフルエンザウイスルに翻訳され、局所的、または症候的感染(逆もまた同様)、多くの鳥種に対して致死的な結果を有する汎化した感染を生じる。それゆえ、この事実は、ウイルスの器官指向性、宿主特異性、ならびに病原性に影響し得ることが示唆されている。ウイルスの病原性に関しては、マルチベース部位(multibase−site)のHAを有する株には、HO分子を切断するプロテアーゼが見出され、それによっていくつかの細胞型におけるH1およびH2活性型において25種の感染性ウイルス粒子の大規模産生を伴う多数の感染サイクルが生じ、そして短い期間において全ての地区において感染の汎化を引き起こす(HPAI株)。この感染は、結果的に、死亡率が非常に高い急性−超急性過程を生じる。
【0007】
ノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザAウイルスの第二の膜糖タンパク質である。413アミノ酸ペプチドをコードする1413ヌクレオチド長の遺伝子(ウイルスRNAのセグメント6)によってコードされる。このタンパク質は、少なくとも2つの重要な10種の機能を有する:シアル酸分子とヘマグルチニン自身との間を切断することによるウイルスヘマグルチニンのための細胞レセプターの破壊。この様式において、新しく形成されたウイルス粒子が細胞膜に蓄積するのを防ぐこと、および粘膜表面上に存在する粘液を通るウイルスの輸送を促進することによって、ウイルス子孫の解放がおそらく容易になると考えられている。NAはさらに、抗原性変動に供される重要な抗原決定基に相当する。
【0008】
感染した群れの根絶に対する有用な代替法を提供する、鳥インフルエンザワクチンの必要性が、現在当該分野に存在する。そのようなワクチンは、ワクチン接種された鳥において迅速な免疫応答を惹起する必要があり、そして好ましくは、ワクチン接種された鳥を、感染した鳥から分別させることができる。二価または多価インフルエンザワクチンは、いわゆる「DIVA」法において利用可能になると主張されている。ここで、感染した鳥からワクチン接種された鳥を分別する手段を提供するように、ワクチン接種される株とは異なるNを有するワクチンが投与される。特許文献1(この開示は、その全体が参考として援用される)は、DNA技術およびその方法において利用可能ないくつかの代表的なワクチンについて記載している。
【0009】
組み合わせたワクチンまたは多価ワクチンは、一価のワクチンに対して、多数の明白な利点を提供する。多価ワクチンの1つの利点は、より少ないワクチン接種しか必要とされないことである。単一の調製物が、1回の接種において投与され得、かつ複数の疾患または単一疾患の複数の株に対して有効である。製剤的なウイルス株の範囲が増えるにつれて、接種回数を最小限にするために、ワクチンの組み合わせがさらにより必須になる。ワクチンが組み合わされたときに必要とされる接種の回数が減ることは、ワクチン接種スケジュールの遵守の向上につながる。これは次いで、ワクチン範囲の増加という結果につながり、このことは最終的によりよい疾患の制御につながる。
【0010】
組み合わせたワクチンの予想外の問題は、ワクチン組み合わせにおいてあるワクチンが別のワクチンについて有し得る、最近同定された負の影響(いわゆる、「抗原干渉」効果)である。2つの既存のワクチンが単純に混合されるとき、一方または両方がその能力を失うことがあることが発見されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0011】
不幸なことに、個々のワクチン成分がその能力を維持するか否かは、研究室における現在確立された能力試験の使用によって、常に予想することができるわけではない。例えば、いくつかの独立した研究が、Hibワクチンが全細胞百日咳ワクチンと組み合わされた場合には、その2つのワクチン間では干渉は存在しないが、Hibワクチンが無細胞百日咳ワクチンと組み合わされた場合、Hib免疫原性に実質的な損失が存在することを報告した。HibがDTaPと組み合わされた場合、別個の部位に与えられたときはその免疫原性を維持する一方で、そのワクチンが同じ部位に組み合わせて投与される場合は、その免疫原性は5〜15倍低下することが示された。この予想外の結果により、2つの既存のワクチンを組み合わせることは、単純なプロセスでも日常的なプロセスでもなく、そのような組み合わせは、しばしば、初期研究の間には検出されない非常に予測できない結果を与えることが確認される。非干渉を実証するのに必要とされる研究は、非干渉および使用適合性を実証するためのさらなる数ヶ月または数年間の研究をしばしば加える。
【特許文献1】国際公開第03/086453号パンフレット
【非特許文献1】Andre,F.E.,「Development of Combined Vaccines:Manufacturers’ Viewpoint」、Biologicals(1994)22:317−321
【非特許文献2】Hadler,S.C.,「Cost benefit of combining antigens」、Biologicals(1994)22:415−418
【非特許文献3】Goldenthal.K,L.ら、「Overview−Combination Vaccines and Simultaneous Administration.Past,Present,and Future.」In:Combined Vaccines and Simultaneous Administration,Current Issues and Perspectives(Williams,J.C.ら編)The New York Academy of Sciences,New York,(1995)pp.1 XI−XV
【非特許文献4】Clemens,J.ら、「Interactions between PRP−T Vaccine against Hemophilus influenzae Type b and Conventional Infant Vaccines Lessons for Future Studies of Simultaneous Immunization and Combined Vaccines.」、Combined Vaccines and Simultaneous Administration.Current Issues and Perspectives(Williams,J.C.ら編)、The New York Academy of Sciences,New York,(1995)pp.255−266
【非特許文献5】Insel,R.A.、「Potential Alterations in Immunogenicity by Combining or Simultaneously Administering Vaccine Component,」、Combined Vaccines and Simultaneous Administration.Current Issues and Perspectives(Williams.J.C.ら編)、The New York Academy of Sciences,New York,(1995)pp.35−47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二価の鳥インフルエンザワクチン(例えば、Merialによって市販されている、Fluvac(登録商標)として公知のワクチン)は、市場において入手可能である。しかしながら、迅速な免疫応答およびより高い力価応答を惹起し、それゆえ発生に直面している鳥を迅速に保護するのに使用され得る、改善された二価または多価鳥インフルエンザウイルスに対する必要性が、なお存在している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
一局面において、本発明は、鳥インフルエンザの予防または軽減において効果的であり、かつDIVA技術において使用され得、そして免疫応答の迅速な発生を提供するという利点をさらに有する、ワクチン組成物に関する。このワクチン組成物は、約200HA/用量より多いHA/用量比率を含み、より好ましくは、少なくとも約256HA/用量を含み、そして最も好ましくは、250〜300HA/用量の範囲にあり、そしてなおより望ましくは、約256〜300HA/用量である。本発明のワクチン組成物において、少なくとも300HA/用量を有することもまた、企図される。
【0014】
したがって、本発明は、少なくとも2つの鳥インフルエンザ株を含むワクチン組成物を提供し、合わせたHA/用量は約200HA/用量よりも大きく、より好ましくは、約256HA/用量であり、そして好ましくは約250〜300HA/用量であり、より好ましくは256〜300HA/用量である。各鳥インフルエンザ株のHA/用量の量は変動し得るが、代表的には少なくとも約75HA/用量であり、そして最も好ましくは、約128HA/用量よりも多い。
【0015】
本発明の二価または多価ワクチンのために選択される具体的な鳥インフルエンザ株は、そのワクチンが投与される領域における具体的な株の流行に依存する。最も好ましくは、その株のうちの1つが、流行株またはチャレンジ株のHAサブタイプと同一のHAサブタイプ、および異なるN成分を有し、それによってDIVA技術の使用が可能になる。さらなる株は、処置される領域における出現を有する他のHAサブタイプから選択され得、ここでも異なるNサブタイプが好ましい。
【0016】
本発明のさらなる部分として、鳥インフルエンザウイルス感染を予防または軽減するのに有効なワクチン組成物が提供される。このワクチン組成物は、鳥インフルエンザウイルスの少なくとも2つの不活性化株を含み、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は、そのワクチン組成物1用量当たり少なくとも約200HAであり、好ましくは少なくとも約256HA/用量であり、そしてこの株の各々は、少なくとも約128HA/用量を提示し、そしてさらにここで、この株のうちの1つは、チャレンジウイルスのHAサブタイプと同じサブタイプを有し、その株のうちの少なくとも1つは、そのチャレンジウイルスのNAサブタイプとは異なるNAサブタイプを有する。
【0017】
鳥インフルエンザウイルス感染の発生を予防または軽減する方法もまた、本明細書中で提供される。この方法は、家禽メンバーに、少なくとも2つの不活性化鳥インフルエンザ株を含むワクチン組成物を投与する工程を包含する。ここで、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は、そのワクチン組成物1用量当たり少なくとも約200HAであり、好ましくは少なくとも約256HA/用量であり、そしてその株の各々は、少なくとも約128HA/用量を提示し、そしてさらに、その株のうちの1つは、チャレンジウイルスのHAサブタイプと同じHAサブタイプを有し、かつその株のうちの少なくとも1つは、そのチャレンジウイルスとは異なるNAサブタイプを有する。
【0018】
鳥インフルエンザ感染を予防または軽減するのに有効なワクチン組成物もまた提供される。このワクチン組成物は、少なくとも2つの不活性化鳥インフルエンザ株を含む。ここで、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は、そのワクチン組成物1用量当たり少なくとも約250HAであり、その株の各々は少なくとも約150HA/用量を提示し、そしてさらに、その株のうちの1つは、チャレンジウイルスのHAサブタイプと同じHAサブタイプを有し、その株のうちの少なくとも1つはこのチャレンジウイルスとは異なるNAサブタイプを有し、この組成物はまた、オレイン酸ソルビタンエステルから本質的になる2つの界面活性剤を含有する。
【0019】
本発明のこれらおよび他の実施形態、特徴および利点は、以下の本明細書に記載される詳細な説明および添付の特許請求項の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
一局面において、本発明は、約200HA/用量より多い総HA含量を有する、新規の多価鳥インフルエンザワクチンに関し、少なくとも約256HA/用量、好ましくは約256〜300HA/用量の範囲にある。
【0021】
本発明のワクチンに有用な鳥インフルエンザ単離体は、当該分野で利用可能な技術を使用して単離され得る。例えば、感染した鳥由来の組織または血清が、市販のブロイラーの群れから得られ得る。次いで、ウイルスは、マスター種ウイルスを確立するのに適した組織または他の適した媒体において継代され得る。当業者によるさらなる特徴付けもまた、利用可能な方法を使用して実行され得る。このウイルスは、例えば熱処理および化学的処理のような、利用可能な方法を使用して不活性化され得る。
【0022】
本明細書中のさらなる局面において、本発明はまた、少なくとも2つの鳥インフルエンザ株を含有するワクチン組成物も包含する。
【0023】
本発明のワクチン組成物は、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアと一緒に、利用可能な技術を使用して処方され得る。例えば、一実施形態において、水性処方物が企図される。そのような処方物は、水、生理食塩水もしくはホスフェートまたは他の適した緩衝液を使用する。なお別の実施形態において、このワクチン組成物は、好ましくは、油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョンである。しばしば水中油中水エマルジョンとして特徴付けられる両面エマルジョンもまた企図される。この油は、上記処方物を安定化するのを助け得、そしてさらにアジュバントまたはエンハンサーとして機能し得る。適した油としては、ホワイトオイル、Drakeoil、スクアランまたはスクアレン、ならびに天然由来であろうと合成由来であろうと、他の動物性、植物性または鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
さらに、上記ワクチン組成物は、当該分野で利用可能な他の適したアジュバントも含有し得る。これらとしては、例えば水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、ならびに他の適した金属塩が挙げられる。
【0025】
さらなる賦形剤(例えば、界面活性剤または他の湿潤剤または製剤化補助剤)もまた、上記ワクチン組成物中に含まれ得る。界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタンエステル(TWEEN(登録商標)シリーズ)、ならびにエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(PLURONIC(登録商標)シリーズ)、ならびに当該分野で利用可能な他のものが挙げられる。安定剤または保存剤として認識されている他の化合物もまた、そのワクチン中に含まれ得る。これらの化合物としては、例えば、ソルビトールのような炭水化物、マンニトール、スターチ、スクロース、デキストリンまたはグルコースなど、ならびに保存用ホルマリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
上記ワクチン組成物はまた、外部の水を実質的に含まない乾燥粉末として処方され得、これは次いで、投与前に最終使用者によって再構築され得る。
【0027】
上記ワクチン組成物は、最も好ましくは、殺されたかまたは不活性化されたウイルスを使用して処方される。約200、そして好ましくは約256、そしてより好ましくは少なくとも約300を超える総HA含量を提供するような、必須レベルで必要とされるHAタンパク質を発現する組み換えワクチンもまた、本明細書中における使用が企図される。
【0028】
本発明のワクチン組成物は、好ましくは、そのインフルエンザウイルス成分由来の最低合計約200HAを含有する。本発明の一実施形態において、このワクチンは、各株由来の約128HA/用量を含有し、そしてなおより好ましくは各株由来の約192HA/用量を含有する。
【0029】
他の疾患に対する他の家禽抗原もまた、本発明のワクチン組成物に含まれ得、そして本発明のワクチン組成物と一緒に投与され得る。例えば、鳥ヘルペスウイルス、鳥貧血ウイルス(CAV)、ニューカッスル病ウイルスおよび伝染性気管支炎(IB)ウイルスに対するワクチン抗原、ならびにレオウイルス抗原が、本発明のワクチン組成物の一部として含まれ得る。1つ以上のレオウイルス抗原が、本発明のワクチン組成物の一部として特に好ましくあり得る。
【0030】
本発明はまた、鳥インフルエンザウイルスからの感染に対する保護を誘導するための方法にも関する。この方法は、家禽動物に、少なくとも2つの鳥インフルエンザ株を含有するワクチン組成物を投与する工程を包含する。このワクチン組成物は、合わせたHA含量が、約200HA/用量よりも大きく、より好ましくは少なくとも約256HA/用量よりも大きく、250〜300HA/用量が特に好ましく、そして約256〜300がなおより好ましい。この方法はさらに、さらなる実施形態において、少なくとも約300HA/用量を投与する工程を包含する。
【0031】
投与方法は、当業者によって選択され得る。例えば、上記ワクチン組成物は、飲料水、スプレーまたは点眼剤によって、孵化後の若い(数日齢〜数週齢)鳥に投与され得る。卵投与(ovo administration)が、本明細書中で企図される。例えば、胚に、通常約18〜19日において、接種し得る。本発明のワクチン組成物が非経口的に、皮下に、腹膜に、経口的に、鼻腔内に、または他の利用可能な手段で(好ましくは非経口的に、より好ましくは筋肉内に)、スケジュールに従う有効量で投与される他の方法もまた、本発明の範囲内にある。このスケジュールは、疾患を引き起こす鳥インフルエンザウイルスのキャリアへの予想される潜在的な曝露時期に従って決定され得る。
【0032】
用量は、代表的に、家禽動物1匹当たり、約0.25mL〜約2.0mLの範囲内にあり、より好ましくは、動物1匹当たり約0.5mL〜約1.0mLである。従って、1用量、2用量またはそれより多い用量が本明細書中で企図され、可能な限り少ないのが特に好ましい。
【0033】
上述のように、本発明は、新規の鳥インフルエンザワクチン、およびその家禽における使用のための方法に関する。用語「家禽」とは、全ての商業的に飼育された家禽動物(鶏(chicken)、アヒル、ガチョウ、七面鳥、クジャク、チャボ、鶏(fowl)などが挙げられる)を包含することを意図するが、これらに限定されない。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は、本発明の種々の好ましい局面を例示するが、決して本発明の全範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0035】
(実施例1)
【0036】
【化1】

(薬剤の開発)
(POULVAC(登録商標)i−AI H5N9、H7N1に含まれる株)
POULVAC(登録商標)i−AI H5N9、H7N1のための鳥インフルエンザウイルスH5N9および鳥インフルエンザウイルスH7N1株を、地域の流行に基づいて選択した。いずれの株も、Instituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie(IZS),Italyから供給された。その有効性を、鶏のセロコンバージョンによって実証した。
【0037】
(POULVAC(登録商標)i−AI H5N9、H7N1に含まれるアジュバント)
アジュバントは、油中水(W/O)エマルジョンとして処方された、鉱油エマルジョンの十分に確立された免疫刺激効果に基づいて選択した。薬学グレードの軽油(NF)Drakeoil 5を、その処方物において使用する。
【0038】
安定な油中水エマルジョン(W/O)を達成するために、界面活性剤を使用することが必要である。界面活性剤のセスキオレイン酸ソルビタン(植物性)(疎水性界面活性剤)およびPolysorbate80(植物性)(親水性界面活性剤)を、その乳化特性のために選択した。これらの界面活性剤の組み合わせの使用は、安定なエマルジョンをもたらすことが現在示されている。
Arlacel 83V=セスキオレイン酸ソルビタン、モノエステルとジエステルとの等モル混合物;
CAS数=8007−43−9。これは、クリーム、エマルジョンおよび軟膏の調製において使用される。
Tween 80V=Polysorbate80=ポリオキシエチレン20モノオレイン酸ソルビタン;
CAS数=9005−65−6。これは、安定な水中油エマルジョンの調製において使用される。
【0039】
ソルビタンエステル様Arlacel 83Vは、安定なW/Oエマルジョンを産生するが、しばしば、種々の割合のポリソルベート様Tween80V5と組み合わせて使用され、W/Oエマルジョンを産生する。
【0040】
この製品を処方するのに使用されるArlacel 83VおよびTween 80Vは両方、植物性由来である。
【0041】
(用量およびワクチン接種スケジュール)
0.5mlの用量が、家禽産業における使用のためには一般的である。
【0042】
(POULVAC i−AI H5N9、H7N1)
(血清学研究に基づいた有効性)
(1.予備的な用量応答研究)
予備的な用量滴定研究を、種々の抗原HAレベルに対する抗体応答を決定するために実施した。256、128、64または32HA単位の抗原濃度を含有する4つの実験的ワクチンを調製し、各々1つを使用して、2週齢および4週齢において10羽のSPF鶏に筋肉内ワクチン接種した。10羽の似ている鶏の群を、コントロールとしてワクチン接種しないままにした。各ワクチン接種前、ならびに二回目のワクチン接種から2週間後、6週間後および10週間後に血液サンプルを採取し、血清学をモニタリングした。血清のサンプルを、屋内でヘマグルチニン阻害(HI試験)を使用して評価し、そしてHI試験によってIstituto Zooprofilattico Sperimentale(IZS)においてもまた評価した。
【0043】
血清学的データは、全ての鳥がワクチン接種前に上記2つの鳥インフルエンザ株に対して血清反応陰性であったこと、および全てのワクチン接種されていない鳥が研究を通して血清反応陰性であったことを示した。
【0044】
(H5N9血清学的結果)
研究室において得た結果は、IZSにおける結果よりも一般的に高かったが、2〜4倍希釈内であった(以下の表1を参照のこと)。128HA単位または256HA単位を含有する1回目のワクチン接種の2週間後、10羽全てのワクチン接種体は、少なくとも16HI単位(Fort Dodgeデータ)および4HI単位(IZS)を有した。ワクチンの2回目の投薬は、全ての鶏においてH5N9に対する強力な既往応答を誘導し、そして2週間後、少なくとも64HI単位の力価が、より高い力価のワクチンを投与した全ての鶏において見られた。
【0045】
(H7N1血清学的結果)
研究室において得られた結果は、また、IZSにおいて得られた結果よりも一般的に高かったが、差異は3〜8倍であり、H5N9についてよりも大きかった。いずれにしても、IZSの結果からより慎重な力価を考慮して、1回目のワクチン接種から2週間後、128HA単位または256HA単位を投与された全ての鶏は、少なくとも8HI単位の力価を有したことは明らかである。ワクチンの2回目の投与は、全ての鶏においてH7N1に対する非常に強力な既往応答を誘導し、2週間後、少なくとも512HI単位の力価が、より高い力価のワクチンを投与された全ての鳥において見られた。
【0046】
これらの結果は、POULVAC i−AI H5N9、H7N1が、European Council(Council Directive 92/40/EEC)によって保護性であるとみなされる1:16のレベル以上に、H5N9およびH7N1に対する力価を誘導し得ることを示す。
【0047】
(表1.Fort Dodge Veterinaria S.A.(FD)とIstituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie(IZSV)との間のHI力価の比較の概要)
HI幾何平均力価
【0048】
【表1−1】

【0049】
【表1−2】

FD:Fort Dodge Veterinaria S.A.によって得られたHI力価
IZSV:Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezieによって得られたHI力価
2w:1回目のワクチン接種および採血における年齢
4w:2回目のワクチン接種および採血における年齢
6w:2回目のワクチン接種および採血後、2週間、6週間、10週間または14週間
PR:未決定の結果
計算のために、血清が力価を有さなかった場合、その血清は力価1であるとみなした。
【0050】
(2.有効性の研究)
鶏におけるPOULVAC i−AI H5N9、H7N1の有効性を、以下の手順によって評価した。
【0051】
(110−A1−E−14−04)
20匹のSPF鶏を、両抗原について最小の力価(128HA単位)で処方した0.5mlの単回用量で、2週齢において筋肉内にワクチン接種した。ワクチンの2回目の投薬を、3週間後、その鶏が5週齢のときに与えた。20匹の類似の鶏を、比較のためにワクチン接種をしないコントロールとして飼った。血液サンプルを各ワクチン接種前および2回目のワクチン接種の3週間後に採取し、血清学をモニタリングした。血清サンプルを、屋内でのヘマグリチニン阻害(HI試験)を使用して評価し、HI試験によってIstituto Zooprofilattico Sperimentale(IZS)においても評価した。
【0052】
血清学データは、全ての鳥がワクチン接種前には上記2つの鳥インフルエンザ株に対して血清反応陰性であったこと、および全てのワクチン接種されていない鳥が、研究を通して血清反応陰性のままであったことを示した。
【0053】
(H5N9血清学的結果)
研究室において得られた結果は、IZSにおける結果よりも一般的に高かったが、2〜4倍希釈の範囲内であった(以下の表2を参照のこと)。1回目のワクチン接種から3週間後、20匹全てのワクチン接種体は、少なくとも128HA単位(Fort Dodgeデータ)および64HA単位(IZS)を有した。このことは、POULVAC i−AI H5N9、H7N1の単回用量が、European Council(Council Directive 92/40/EEC)によって保護性であるとみなされる1:16のレベル以上に、H5N9に対する力価を誘導し得ることを示す。
【0054】
ワクチンの2回目の投与は、全ての鶏においてH5N9に対する強力な既往応答を誘導し、良好な保護がチャレンジに対して見られたことを再度示した。
【0055】
(H7N1血清学的結果)
研究室において得られた結果は、またIZSにおいて得られた結果よりも高かったが、3〜8倍の差異は、H5N9のものよりも大きかった。なぜ試験においてこの差異がこれほど広範なのかについては、まだ分かっていない。いずれにしても、IZSの結果からより慎重な力価を考慮して、1回目のワクチン接種から3週間後に20匹全てのワクチン接種体が少なくとも128HA単位の力価を有したことは明らかである。このことは、POULVAC i−AI H5N9、H7N1の単回用量が、European Council(Council Directive 92/40/EEC)によって保護性であるとみなされる1:16のレベル以上に、H7N1に対する力価を誘導し得ることを示す。
【0056】
ワクチンの2回目の投与は、全ての鶏においてH7N1に対する非常に強力な既往応答を誘導し、良好な保護がチャレンジに対して見られたことを再度示した。
【0057】
(表2.Fort Dodge Veterinaria S.A.(FD)とIstituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie(IZSV)との間のHI力価の比較の概要)
幾何平均力価として表現されたHI
【0058】
【表2】

計算のために、血清が力価を有さなかった場合、その血清は力価1を有するものと考慮した。
【0059】
(比較実施例2)
この実施例のために、2つの公開されたテキストに対する参照がなされる:参考文献1:Capua et al.,Developments of a DIVA(Differentiating Infected from Vaccinated Animals)Strategy Using a Vaccine Containing a Herterologous Neuraminidase for the Control of Avian Influenza;Avian Pathology 32,47−55(2003);および参考文献2:Ellis et al.,Vacination of Chickens Against H5N1 Avian Influenza in the Face of an Outbreak Interrupts Virus Transmission。参考文献1は、競合者のワクチンH7N3の二回用量で、2週および4週にてワクチン接種された鳥が、6週にて、HIによって測定したところ45の幾何平均力価で血清を有し、13匹の鳥のうちの11匹が、1:16HI(保護性であるとみなされる)より大きい力価を達成したことを記している。3週齢において1回ワクチン接種し、6週において血清を採取した鳥は、HIによって測定したところ、19の幾何力価を示した。この場合において、13匹の鳥のうち8匹のみが、1:16より大きいHI力価を達成した。対照的に、本明細書中に記載されるH7N1画分の結果は、この結果よりも、単回用量プログラムおよび二回用量両方に対して顕著に高かった。参考文献2は、56日齢〜99日齢の範囲の鳥における、別の競合者のインフルエンザワクチンの単回用量でワクチン接種された鳥について記している。ワクチン接種から15日後、幾何平均力価は、HIによって測定したところ、60匹の鳥のうち32匹が、1:16以上のHI力価を示した。ワクチン接種から22日後、HIによって測定したところ、この幾何平均力価は33.9であり、60匹の鳥のうち49匹が1:16以上のHI力価を示した。しかしながら、本明細書中で得られた結果は、より卓越した有効性を実証しているようである。
【0060】
(実施例3)
(七面鳥における予防的ワクチン接種についてのPoulvac XXX有効性治験)
(結果の概要)
・この治験は、OIEであり、そしてAIおよびNDについてのNational Reference Laboratoryである、Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Padova, Italyにおいて実施した。
・治験は、以前の研究に基づいていたが、以下に対する予防的ワクチン接種のためのツールとしてPoulvac XXXの有効性を試験するために開発した:
−高度に適合したウイルス(A/Ty/Italy/8000/H7N3/2002)の再出現;
−国内の宿主に対する適合の程度が低い新規の株(A/ty/Italy/H5N2/1980)の導入;
−この治験を、感染性の用量を変えて、鶏および七面鳥において実施した。
【0061】
(実験的治験)
・七面鳥を、8日齢、34日齢、60日齢において、Poulvac XXX、0.5ml/scでワクチン接種した。
・4つの実験群(2つのワクチン接種群および2つの非ワクチン接種群)があり、100ul/鼻腔内において10EID/50で、3回目のワクチン接種後21日にチャレンジした。
LPAI A/ty/Italy/8000/2002/H7N3
LPAI A/ty/Italy/H5N2/1980
・ワクチン接種されていないコントロールの群が1つ存在した。
・排出物(shedding)(気管および総排泄管スワブを、3日、5日、7日、10日、14日、20日にて収集)、血清学および臨床的徴候を評価した。
【0062】
(方法)
・EU指令92/40/ECにしたがって、ウイルスの単離を行った。
・EU指令92/40/ECにしたがって、ヘマグルチニン阻害試験を行った。
・Cattoli et al.,(2004),Avian Pathology,33(4),pp.432−437にしたがって、リアルタイムRT−PCRを行った。
・Capua et al.,(2003)Avian Pathology 32(1),47−55にしたがって、抗N抗体検出試験「DIVA」を行った。
【0063】
(定義および統計的試験)
・感染:RRT−PCR(気管または総排泄管)によるウイルス学陽性、ならびに「DIVA」試験に対するセロコンバージョンおよび陽性の組み合わせ。
・セロコンバージョン:少なくとも4logの増加(チャレンジ前およびチャレンジ後の力価)。
・ワクチン接種群と非ワクチン接種群との間の排出物の比較:Fisherの正確確率検定P値。
・チャレンジ前およびチャレンジ後の力価の比較:ノンパラメトリックサイン検定(同じ群内にチャレンジ前−後)およびWilcoxon(Mann−Whitney)2標本検定(異なる群の間の力価における増加の比較、すなわち、チャレンジ後のワクチン接種群と非ワクチン接種群との間の力価における増加の差異があるか否かを証明するため)。
【0064】
(結果)
七面鳥のH5N2 10EID/50チャレンジ
1.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥の間の感染の達成の指標間の比較。
Fisherの正確確率検定P値=0.0005(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥において感染が達成された鳥の数の間に、統計的に有意な差異が存在する。
【0065】
【化2】

2.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における排出物レベル(気管および総排泄間スワブ)の比較
Fisherの正確確率検定P値=0.0005(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥において、排出物レベルは、ワクチン接種されていない鳥よりも有意に低かった。
【0066】
【化3】

3.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における、チャレンジ前およびチャレンジ後のHI力価間の比較。
ノンパラメトリックサイン検定:
非ワクチン接種:H5N2:P=0.0039(<0.01);H5N9:P=0.0039(<0.01)
ワクチン接種:H5N2:P=0.1797(>0.05);H5N9:P=0.0039(<0.01)。
有意性:ワクチン接種された鳥では、ウイルスのチャレンジに対する血清学的力価における上昇は、有意ではなかった。代わりにワクチン接種されていない鳥では、力価において有意な上昇が存在した。
【0067】
【化4】

(七面鳥のH7N3 10EID/50チャレンジ)
1.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥の間の感染の達成の指標間の比較。
Fisherの正確確率検定P値=0.001(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における感染の達成の間に、統計的に有意な差異が存在する。
【0068】
【化5】

2.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における排出物レベル(気管および総排泄間スワブ)の比較
Fisherの正確確率検定P値=0.0000(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥において、排出物レベルは、ワクチン接種されていない鳥よりも有意に低かった。
【0069】
【化6】

3.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における、チャレンジ前およびチャレンジ後のHI力価間の比較。
ノンパラメトリックサイン検定:
非ワクチン接種:H7N1:P=0.0039(<0.01);H7N3:P=0.0039(<0.01)
ワクチン接種:H7N1:P=0.0020(<0.01);H7N3:P=0.0215(<0.05)。
有意性:ワクチン接種された鳥では、ウイルスのチャレンジに対する血清学的力価における上昇は、有意ではなかった。代わりにワクチン接種されていない鳥では、力価において有意な上昇が存在した。
非有意性:ワクチン接種された鳥において、ワクチン接種されていない鳥において観察されたものに匹敵する、チャレンジウイルスに対する血清学的力価における有意な上昇が存在した。
【0070】
【化7】

°H7N1ウイルスでのより高い血清学的活性は、ウイルスの特定の株に起因するものである。有意性を評価するために、そのチャレンジウイルスの力価が考慮されなければならない。
【0071】
(結論−七面鳥)
・3回投与(shot)プログラムにおけるPoulvac XXXは、以下のことが可能である:
・イタリアの七面鳥群に固有のH7N3株の10EID/50チャレンジにより感染する鳥の数、排出物および臨床的徴候を有意に低減する;
・新規の導入を模倣するために選択されたH5N2株の10EID/50チャレンジにより感染する鳥の数および排出物を有意に低減する。
・七面鳥における予防的ワクチン接種は、実験的な感染に対する群の感受性を低下させ、排出物レベルを有意に低下させた。
【0072】
(実施例4 鶏における予防的ワクチン接種のためのPoulvac XXX有効性治験)
(結果の概要)
一般情報
・OIEであり、AIおよびNDのためのNational Reference Laboratoryである、Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie,Padova,Italyにおいて実施した。
【0073】
−高度に適合したウイルス(A/Ty/Italy/8000/H7N3/2002)の再出現;
−国内の宿主に対する適合の程度が低い新規の株(A/ty/Italy/H5N2/1980)の導入;
−この治験を、感染性の用量を変えて、鶏および七面鳥において実施した。
【0074】
(実験的治験)
・鶏を、2週齢および5週齢において、Poulvac XXX、0.5ml/scでワクチン接種した。
・4つの実験群(2つのワクチン接種群および2つの非ワクチン接種群)があり、100ul/鼻腔内において10EID/50で、2回目のワクチン接種後21日にチャレンジした。
LPAI A/ty/Italy/8000/2002/H7N3
LPAI A/ty/Italy/H5N2/1980
・ワクチン接種されていないコントロールの群が1つ存在した。
・排出物(shedding)(気管および総排泄管スワブを、3日、5日、7日、10日、14日、20日にて収集)、血清学および臨床的徴候を評価した。
【0075】
(方法)
・EU指令92/40/ECにしたがって、ウイルスの単離を行った。
・EU指令92/40/ECにしたがって、ヘマグルチニン阻害試験を行った。
・Cattoli et al.,(2004),Avian Pathology,33(4),pp.432−437にしたがって、リアルタイムRT−PCRを行った。
・Capua et al.,(2003)Avian Pathology 32(1),47−55にしたがって、抗N抗体検出試験「DIVA」を行った。
【0076】
(定義および統計的試験)
・感染:RRT−PCR(気管または総排泄管)によるウイルス学陽性、ならびに「DIVA」試験に対するセロコンバージョンおよび陽性の組み合わせ。
・セロコンバージョン:少なくとも4logの増加(チャレンジ前およびチャレンジ後の力価)。
・ワクチン接種群と非ワクチン接種群との間の排出物の比較:Fisherの正確確率検定P値。
・チャレンジ前およびチャレンジ後の力価の比較:ノンパラメトリックサイン検定(同じ群内にチャレンジ前−後)およびWilcoxon(Mann−Whitney)2標本検定(異なる群の間の力価における増加の比較、すなわち、チャレンジ後のワクチン接種群と非ワクチン接種群との間の力価における増加の差異があるか否かを証明するため)。
【0077】
(結果)
鶏のH5N2 10EID/50チャレンジ
1.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥の間の感染の達成の指標間の比較。
Fisherの正確確率検定P値=0.0433(<0.05)
有意性:ワクチン接種された鳥において、感染は達成されなかった。
【0078】
【化8】

2.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における排出物レベル(気管および総排泄間スワブ)の比較
Fisherの正確確率検定P値=0.0008(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥において、排出物レベルは、ワクチン接種されていない鳥よりも有意に低かった(感染が達成されなかったため)。
【0079】
【化9】

3.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における、チャレンジ前およびチャレンジ後のHI力価間の比較。
ノンパラメトリックサイン検定:
非ワクチン接種:H5N2:P=0.0078(<0.01);H5N9:P=0.0078(<0.01)
ワクチン接種:H5N2:P=0.4531(>0.05);H5N9:P=0.6875(>0.05)。
有意性:ワクチン接種された鳥では、ウイルスのチャレンジに対する血清学的力価における上昇は、有意ではなかった(感染が達成されなかったため)。代わりにワクチン接種されていない鳥では、力価において有意な上昇が存在した。
【0080】
【化10】

(鶏のH7N3 10EID/50チャレンジ)
1.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥の間の感染の達成の指標間の比較。
Fisherの正確確率検定P値=0.0015(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥において、感染は達成されなかった。
【0081】
【化11】

2.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における排出物レベル(気管および総排泄間スワブ)の比較
Fisherの正確確率検定P値=0.0000(<0.01)
有意性:ワクチン接種された鳥において、排出物レベルは、ワクチン接種されていない鳥よりも有意に低かった(感染が達成されなかったため)。
【0082】
【化12】

3.ワクチン接種された鳥対ワクチン接種されていない鳥における、チャレンジ前およびチャレンジ後のHI力価間の比較。
ノンパラメトリックサイン検定:
非ワクチン接種:H7N1:P=0.0020(<0.01);H7N3:P=0.0020(<0.01)
ワクチン接種:H7N1:P=0.0020(<0.01);H7N3:P=1.000(>0.05)。
有意性:ワクチン接種された鳥では、ウイルスのチャレンジに対する血清学的力価における有意な上昇は存在しなかった(感染が達成されなかったため)。代わりにワクチン接種されていない鳥では、力価において有意な上昇が存在した。
【0083】
【化13】

°H7N1ウイルスでのより高い血清学的活性は、ウイルスの特定の株に起因するものである。有意性を評価するために、そのチャレンジウイルスの力価が考慮されなければならない。
【0084】
(結論−鶏)
・2回投与(shot)プログラムにおけるPoulvac XXXは、以下のことが可能である:
・イタリアの七面鳥群に固有のH7N3株の10EID/50チャレンジにより感染する鳥の数、排出物および臨床的徴候を有意に低減する;
・新規の導入を模倣するために選択されたH5N2株の10EID/50チャレンジにより感染する鳥の数および排出物を有意に低減する。
・鶏における予防的ワクチン接種は、鶏における活性な感染の確率を予防した。
【0085】
本発明がその種々の実施形態の各々において記載されているが、上述の説明において記載され、そして添付の特許請求の範囲において具現化されるように、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対する特定の改変が当業者によって計画および実行され得ることが予測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥インフルエンザ感染を予防または軽減するためのワクチン組成物であって、該組成物は、少なくとも2つの鳥インフルエンザウイルス不活性化株を含み、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は該ワクチン組成物1用量当たり少なくとも約256HAであり、該株の各々は少なくとも約128HA/用量を提示し、さらにここで、該株のうちの1つはチャレンジウイルスのHAと同じHAサブタイプを有し、かつ該株のうちの少なくとも1つは、該チャレンジウイルスのNAサブタイプとは異なるNAサブタイプを有する、ワクチン組成物。
【請求項2】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのさらなる家禽抗原をさらに含む、請求項1または2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記キャリアは、水性キャリアおよびエマルジョンからなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項2または3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記キャリアは、油中水エマルジョンである、請求項2、3または4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記エマルジョンは少なくとも2つの界面活性剤を含む、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤は、オレイン酸ソルビタンエステルおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項6に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記エマルジョンは、少なくとも2つのオレイン酸ソルビタンエステルを含む、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記エステルは、TWEEN(登録商標)80およびセスキオレイン酸ソルビタンエステルである、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記抗原は、水浴中で不活性化されたウイルス抗原からなる群より選択される請求項1〜9のいずれか1つまたはそれより多い請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
鳥インフルエンザの発生を予防または軽減する方法であって、該方法は、家禽メンバーに、少なくとも2つの鳥インフルエンザ不活性化株を含むワクチン組成物を投与する工程を包含し、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は該ワクチン組成物1用量当たり少なくとも約256HAであり、該株の各々は少なくとも約128HA/用量を提示し、さらにここで、該株のうちの1つはチャレンジウイルスのHAサブタイプと同じHAサブタイプを有し、かつ該株のうちの少なくとも1つは該チャレンジウイルスのNAサブタイプとは異なるNAサブタイプを有する、方法。
【請求項12】
前記ワクチン組成物は、水を飲むことまたは噴霧することによって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記用量は、家禽メンバー当たり、約0.25mL〜2.0mLの範囲内にある、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ワクチンは、ただ1用量だけ投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鳥インフルエンザウイルス感染を予防または軽減するのに有効なワクチン組成物であって、該組成物は、少なくとも2つの鳥インフルエンザ不活性化株を含み、合わせたヘマグルチニン(HA)の合計は、該ワクチン組成物1用量当たり少なくとも約300HAであり、該株の各々は1用量当たり少なくとも約150HAを提示し、さらにここで、該株のうちの1つはチャレンジウイルスのHAサブタイプと同じHAサブタイプを有し、該株のうちの少なくとも1つは該チャレンジウイルスのNAサブタイプとは異なるサブタイプを有し、該組成物は本質的にオレイン酸ソルビタンエステルからなる2つの界面活性剤を含有する、組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤は、TWEEN(登録商標)80およびセスキオレイン酸ソルビタンである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記株の各々が、約192HA/用量を提示する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、接種の約22日後において約33.9以上の幾何平均力価をもたらし、60匹の家禽メンバーのうち約49匹以上が少なくとも約1:16のHI力価を有する、請求項15、16または17のいずれか1項またはそれより多くの請求項に記載の組成物。
【請求項19】
前記株は、それぞれH5N9およびH7N1と同定される、請求項15〜18のいずれか1項またはそれより多くの請求項に記載の組成物。
【請求項20】
前記合計HA/用量が少なくとも約300である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記合計HA/用量が約256〜300の範囲内にある、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−515906(P2008−515906A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535798(P2007−535798)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035925
【国際公開番号】WO2006/041978
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】