説明

多光軸光電スイッチ、コントローラ及び印刷システム

【課題】印刷機内に保護エリアを形成するものであり、その保護エリアに対するミューティングの設定にかかる処理を簡易とし制御負荷を軽減することのできる多光軸光電スイッチ及びそれを用いた印刷システムを提供する。
【解決手段】コントローラ17は、第1工程の動作で操作される第1操作スイッチ18aからの第1ミューティング信号に基づいて排紙部7の最下部に位置する投光器13及び受光器16からなる単光軸光電センサをミューティングさせる。また、コントローラ17は、第2工程の動作で操作される第2操作スイッチ18bからの第2ミューティング信号に基づいて排紙部7の最上部に位置する投光器11及び受光器14からなる単光軸光電センサをミューティングさせる。更に、コントローラ17は、第3工程の動作で印刷機からの印刷終了信号に基づいて各投光器11〜13及び各受光器14〜16の全てをミューティングさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多光軸光電スイッチ、そのコントローラ及び多光軸光電スイッチを用いた印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば枚葉印刷機において、印刷された紙(以下、印刷紙という)が排紙される排紙部に印刷紙以外の物の侵入を防止するため、該排紙部に多光軸光電スイッチ(ライトカーテン)が設けられている。この多光軸光電スイッチは、排紙部の印刷紙が積層されるエリアの外側に設けられ、一列に複数個の投光素子を配置した投光ユニットと、投光素子と同じ数の受光素子を一列に配置した受光ユニットとから構成され、これらの投受光ユニットで保護エリアを形成している。多光軸光電スイッチは、この保護エリアに遮光物が侵入すると異常であると検知して、例えば印刷機や警告装置等に対してその検知信号を出力する。この信号を各装置で受けることにより、印刷機の駆動停止や警告装置の音による警告等が行われる。
【0003】
ところで、上記のような印刷機等では、印刷紙が排紙部に設けられたトレーに積載されていく。このトレーは例えば5000枚毎に作業者によって交換が必要であるため、交換の間は保護バリア内に遮光物が侵入しても遮光と認識しないように多光軸光電スイッチの保護バリアの検出を一時的に無効化させるミューティングを行わなければならない。また、印刷開始時においても、試し刷りの確認を行うべくミューティングを行う必要がある。特に、印刷機においては、可能な限り連続的に稼働させることが好ましく、前述したミューティングもその作業領域(トレーの交換箇所若しくは試し刷りの確認箇所)のみに限定して行う必要がある。
【0004】
そこで、前述のミューティングを行うことができる多光軸光電スイッチとして、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1の多光軸光電スイッチは、ミューティングを部分的に行いたい場合に先ず使用者が多光軸光電スイッチのどの投光素子及び受光素子をミューティング(無効化)させるのか決める。印刷機においては、例えばトレーを排紙部の最下部に設置する場合に最下部の投光素子及び受光素子をミューティングするという情報をメモリに記憶している。その他、試し刷りの確認を行う為に排紙部の最上部の投光素子及び受光素子をミューティングするための情報をメモリに記憶し、トレーが満載になった場合にトレーを取り出すために排紙部内に設けられた全ての投光素子及び受光素子(多光軸光電スイッチ)をミューティングするという情報をメモリに記憶している。それらの情報はメモリ切り替えを例えば多光軸光電スイッチを作業者が制御するコントローラに設けられたスイッチを切り替えることで前述の3種類のミューティングを選択することができる。
【特許文献1】特開2003−218679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の多光軸光電スイッチは、別途設けられた検出センサ(ミューティングセンサ)で遮光物を検出且つ前述のスイッチの切り替え選択された場合のみミューティングが行われるようになっている。即ち、検出センサによる遮光物の検出時の検出信号と使用者がスイッチを選択した時に発生する信号との2種の信号を受けたコントローラにてミューティングが行われる。
【0006】
しかしながら、コントローラは2種の信号を処理しなければならず、多光軸光電スイッチのシステム全体の制御負荷が増大し、より低負荷のシステム構成とする多光軸光電スイッチが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、印刷機内に保護エリアを形成するものであり、その保護エリアに対するミューティングの設定にかかる処理を簡易とし制御負荷を軽減することのできる多光軸光電スイッチ及びそれを用いた印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙室にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機に設置されるものであり、前記印刷機の印刷物排紙室の出入口両側において上下方向に複数設置される光電センサと、複数の前記光電センサを順次投受光動作させて前記印刷物排紙室の出入口の侵入異常を検出する保護エリアを形成する制御を行う制御手段とを備えてなる多光軸光電スイッチであって、前記制御手段は、前記第1工程の動作で操作される第1操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最下部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第2工程の動作で操作される第2操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最上部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第3工程の動作で前記印刷機からの印刷終了信号に基づく前記光電センサの全てをミューティングさせることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、制御手段は、第1工程の動作で操作される第1操作スイッチからの操作信号に基づいて印刷物排紙室の最下部に位置する光電センサをミューティングさせる。また、制御手段は、第2工程の動作で操作される第2操作スイッチからの操作信号に基づいて印刷物排紙室の最上部に位置する光電センサをミューティングさせる。更に、制御手段は、第3工程の動作で印刷機からの印刷終了信号に基づいて光電センサの全てをミューティングさせる。これにより、制御手段は、一つの制御信号によりミューティングを行うことが可能となるため、ミューティングの設定にかかる処理を簡易とし制御手段に与える制御負荷を軽減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多光軸光電スイッチにおいて、前記制御手段は、ミューティングを解除する解除スイッチの操作に基づいて前記第1操作スイッチまたは前記第2操作スイッチの操作に基づくミューティングを解除することをその要旨とする。
【0011】
この発明では、制御手段は、ミューティングを解除する解除スイッチの操作に基づいて第1操作スイッチまたは第2操作スイッチの操作に基づくミューティングを解除するようにしたことにより、例えば作業者が不注意で第1操作スイッチまたは第2操作スイッチを操作してミューティングが行われても、解除スイッチによりミューティングの解除を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の多光軸光電スイッチにおいて、前記光電センサは、投光器と該投光器からの光を受光する受光器とからなることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、光電センサは、投光器とその投光器からの光を受光する受光器から構成したことで、例えば投光器及び受光器のいずれか一方が故障等のトラブルを起こしても交換が容易であるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチにおいて、前記制御手段は、前記光電センサにて前記侵入異常を検出した場合に報知手段による報知を行わせることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、制御手段は、前記単光電センサにて侵入異常を検出した場合に報知手段による報知を行わせたことにより、作業者に対してミューティング箇所以外が遮光されたことを報知できるため、作業者はそれを知ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチにおいて、前記制御手段は、複数の前記光電センサの直列接続数を検出し、その接続位置の一端を前記第1工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定し、その接続位置の他端を前記第2工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定することをその要旨とする。
【0017】
この発明では、制御手段は、複数の光電センサの直列接続数を検出し、その接続位置の一端を第1工程でミューティングさせる光電センサとして設定し、その接続位置の他端を第2工程でミューティングさせる光電センサとして設定する。これにより、例えば光電センサの数を変更した場合でも制御手段にて第1工程でミューティングさせる光電センサと第2工程でミューティングさせる光電センサとが自動で設定される。このため、作業者による設定の手間を減らすことができ、設定の誤りを防止できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙室にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機に設置されるものであり、前記印刷機の印刷物排紙室の出入口両側において上下方向に複数設置される光電センサに対して、複数の前記光電センサを順次投受光動作させて前記印刷物排紙室の出入口の侵入異常を検出する保護エリアを形成する制御を行うコントローラであって、前記第1工程の動作で操作される第1操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最下部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第2工程の動作で操作される第2操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最上部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第3工程の動作で前記印刷機からの印刷終了信号に基づく前記光電センサの全てをミューティングさせることをその要旨とする。
【0019】
この発明では、請求項1に記載の発明の効果と同様の効果を奏するコントローラを提供することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のコントローラにおいて、前記光電センサの接続順を検出し、その接続順に基づいて前記各工程でミューティングさせる前記光電センサを認識すること
この発明では、請求項5に記載の発明の効果と同様の効果を奏するコントローラを提供することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙部にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチとを備えたことをその要旨とする。
【0021】
この発明では、請求項1〜5に記載の発明の効果と同様の効果を奏することができる印刷システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
従って、上記記載の発明によれば、印刷機内に保護エリアを形成するものであり、その保護エリアに対するミューティングの設定にかかる処理を簡易とし制御負荷を軽減することのできる多光軸光電スイッチ及びそれを用いた印刷システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施の形態の印刷機1には、印刷制御装置2の制御に基づいて作動する搬送装置3が設けられている。この搬送装置3には搬送ベルト4が設けられるとともに、この搬送ベルト4には等間隔に複数のグリップ5が設けられ、このグリップ5に咥えられて搬送ベルト4の搬送終端部4aまで印刷紙6が次々と搬送される。搬送終端部4aの下方には、印刷紙6が積層される印刷物排紙部としての排紙部7が設けられており、この排紙部7には、印刷紙6を積載して排紙部7の上部から自動的に下降する排紙トレー8が着脱可能に設けられている。尚、図1では、排紙トレー8に印刷紙6が排紙エリア7aを埋め尽くした満載の状態を示しており、印刷紙6が無い場合は、排紙トレー8は排紙部7の上部(搬送終端部4a側)に位置するようになっている。
【0024】
排紙部7には、排紙エリア(保護エリア)7aと重ならない位置に単光軸光電センサ(投光器及び受光器)からなる多光軸光電スイッチ10が設けられている。この多光軸光電スイッチ10は3つの投光器11〜13と、3つの受光器14〜16と、これら対向する各投光器11〜13及び各受光器14〜16間に形成される各光軸L1〜L3が遮光状態にあるか判定する制御手段としてのコントローラ17から構成されている。投光器11〜13は、排紙部7の左側フレーム7bに設けられ、受光器14〜16は排紙部7の右側フレーム7cに設けられている。投光器11と受光器14、投光器12と受光器15、投光器13と受光器16とは、それぞれの光軸L1〜L3を一致させて対向配置されている。投光器11と受光器14との光軸L1の高さは、排紙トレー8に積層される最上部の印刷紙6より若干高い位置となるように設けられている。投光器13と受光器16との光軸L3の高さは、排紙トレー8が最下部に位置した時の高さと略同じ高さとなるように設けられている。投光器12と受光器15との光軸L2の高さは、前記投光器11と前記受光器14の光軸L1の高さと前記投光器13と前記受光器16の光軸L3の高さの高さ方向中間位置となるように設けられている。
【0025】
各投光器11〜13と各受光器14〜16は、コントローラ17と接続されている。コントローラ17は、各投光器11〜13に対して順々に投光信号を出力し、各投光器11〜13はその投光信号に基づいて各投光器11〜13は順々に発光駆動する。各受光器14〜16は、各投光器11〜13の発光を検出(受光)し、コントローラ17に受光信号を出力する。そして、コントローラ17は、この入力される受光信号に基づいて対向する各投光器11〜13及び各受光器14〜16間に形成される各光軸L1〜L3が遮光状態にあるか否かを判定する。
【0026】
各投光器11〜13及び各受光器14〜16には、コントローラ17により、このコントローラ17からの最短の接続経路から順にアドレスが自動で割り振られるとともに、コントローラ17はそのアドレスの数をカウントすることでコントローラ17に接続されている投光器11〜13及び受光器14〜16の接続数(接続ペア数)を判別している。
【0027】
詳述すると、図2に示すように、投光器13及び受光器16には、コントローラ17により第1のセンサアドレス(図2中、マル1)が割り振られる。投光器12及び受光器15には、コントローラ17により第2のセンサアドレス(図2中、マル2)が割り振られる。投光器11及び受光器14にはコントローラ17により第3のセンサアドレス(図2中、マル3)が割り振られる。これらセンサアドレスの個数をコントローラ17によりカウントすることで接続数を判別する。最初にアドレスが割り振られた、つまり第1のセンサアドレスが割り振られた投光器13及び受光器16が最下部に設置されたと認識される。最後にアドレスが割り振られた、つまり第3のセンサアドレスが割り振られた投光器11及び受光器14が最上部に設置されたと認識される。第2のセンサアドレスが割り振られた投光器12が投光器11及び投光器13間の中間部に設置されたと認識され、第2センサアドレスが割り振られた受光器15が受光器14及び受光器16間の中間部に設置されたと認識される。
【0028】
また、コントローラ17は、印刷制御装置2と接続されるとともに、お互いが制御を行うことが可能となっている。
この他、コントローラ17には、投光器13及び受光器16のミューティングを行うための第1操作スイッチ18aと、投光器11及び受光器14のミューティングを行うための第2操作スイッチ18bと、上記ミューティングを解除するための解除スイッチ18cとが接続されている。
【0029】
これら各スイッチ18a〜18cは、作業者が作業工程に応じてミューティングを行うべく使用するものである。第1操作スイッチ18aは、排紙トレー8を設置する第1工程で使用する。また、第2操作スイッチ18bは、印刷紙6の印刷状態を確認、即ち試し刷りを確認する第2工程で使用する。解除スイッチ18cは、特に前記第1,第2工程の終了時に作業者が使用するスイッチであり、ミューティングの解除を行うために用いるものである。
【0030】
次に、本実施の形態の印刷機1の印刷システムについて図1〜図3を用いて説明する。
本実施の形態の印刷システムは、多光軸光電スイッチ10の光軸L1〜L3により排紙部7の排紙エリア7aに印刷紙6以外の侵入を検知する構成になっている。
【0031】
先ず、作業者が排紙部7の下部に排紙トレー8を設置するため、作業者により第1操作スイッチ18aが押されるとともに、この第1操作スイッチ18aから出力される操作信号(第1ミューティング信号)を受けることで、コントローラ17は多光軸光電スイッチ10の投光器13及び受光器16のミューティングを行う。排紙トレー8の設置が完了すると、作業者により解除スイッチ18cが押されて、その解除スイッチ18cから出力されるミューティング解除信号を受けることで、コントローラ17は多光軸光電スイッチ10の投光器13及び受光器16のミューティングを解除する。そして、設置された排紙トレー8は、排紙部7の上部まで自動的に移動される。その後、印刷機1は通常通り印刷を行う。
【0032】
印刷が通常通り開始された時に、作業者が印刷紙6の印刷状況を確認、即ち試し刷り確認するため、作業者により第2操作スイッチ18bが押されて、この第2操作スイッチ18bから出力される操作信号(第2ミューティング信号)を受けることで、コントローラ17は多光軸光電スイッチ10の投光器11及び受光器14のミューティングを行う。試し刷り確認が完了すると、作業者により解除スイッチ18cが押されて、その解除スイッチ18cから出力されるミューティング解除信号を受けることでコントローラ17は多光軸光電スイッチ10の投光器11及び受光器14のミューティングを解除する。
【0033】
そして、印刷機1に設けられた印刷制御装置2により排紙トレー8が満載になったと判断された場合、その印刷制御装置2からコントローラ17に対して印刷終了信号が出力される。コントローラ17は、その信号を受けて、各投光器11〜13及び各受光器14〜16のミューティングを行う。これにより、印刷紙6で満載になった排紙トレー8を取り出すことができるようになる(第3工程)。
【0034】
尚、図2及び図3に示すA,B,Cは、それぞれ第1工程,第2工程,第3工程を示す、つまりAは第1操作スイッチ18aの操作によるミューティング,Bは第2操作スイッチ18bの操作によるミューティング,Cは各投光器11〜13及び各受光器14〜16のミューティングを示している。
【0035】
上述のミューティング動作以外で、各投光器11〜13及び各受光器14〜16間を遮光した場合、コントローラ17は、印刷機1の印刷制御装置2に対して侵入異常が生じた旨の信号を出力し、その信号を受けた印刷制御装置2は、印刷機1の駆動及び搬送ベルト4の駆動を停止させて印刷動作が停止されるようになっている。
【0036】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)コントローラ17は、第1工程の動作で操作される第1操作スイッチ18aからの第1ミューティング信号に基づいて排紙部7の最下部に位置する投光器13及び受光器16からなる単光軸光電センサをミューティングさせる。また、コントローラ17は、第2工程の動作で操作される第2操作スイッチ18bからの第2ミューティング信号に基づいて排紙部7の最上部に位置する投光器11及び受光器14からなる単光軸光電センサをミューティングさせる。更に、コントローラ17は、第3工程の動作で印刷機からの印刷終了信号に基づいて各投光器11〜13及び各受光器14〜16の全てをミューティングさせる。これにより、制御手段は、一つの制御信号によりミューティングを行うことが可能となるため、ミューティングの設定にかかる処理を簡易とし制御手段に与える制御負荷を軽減することができる。
【0037】
(2)多光軸光電スイッチ10を単光軸光電センサ(投光器11〜13及び受光器14〜16)により構成したことで、一つの単光軸光電センサが故障等のトラブルを起こしても交換が容易であるため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0038】
(3)コントローラ17は、ミューティングを解除する解除スイッチ18cの操作に基づいて第1操作スイッチ18aまたは第2操作スイッチ18bの操作に基づくミューティングを解除するようにしたことにより、例えば作業者が不注意で第1操作スイッチ18aまたは第2操作スイッチ18bを操作してミューティングが行われても、解除スイッチ18cによりミューティングの解除を行うことができる。
【0039】
(4)単光軸光電センサは、投光器11〜13と投光器からの光を受光する受光器14〜16により構成したことで、例えば投光器11〜13及び受光器14〜16のいずれかが故障等のトラブルを起こしても交換が容易であるため、更にメンテナンス性を向上させることができる。
【0040】
(5)コントローラ17は、複数の単光軸光電センサ(投光器11〜13及び受光器14〜16)の直列接続数を検出し、その接続位置の一端である排紙部7最下部の投光器13及び受光器16を第1工程でミューティングさせるセンサとして設定し、その接続位置の他端である排紙部7最上部の投光器11及び受光器14を第2工程でミューティングさせるセンサとして設定するようにした。単光軸光電センサ(投光器11〜13及び受光器14〜16)のセンサの数を変更した場合でもコントローラ17にて第1工程でミューティングさせる単光軸光電センサと第2工程でミューティングさせる単光軸光電センサとが自動で選択される。このため、従来では複雑であったセンサにミューティング設定作業を簡略ができ、作業者による設定の手間を減らすことができ、また設定の誤りも防止できる。
【0041】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、それぞれ3つの投光器11〜13及び受光器14〜16からなる単光軸光電センサを用いて多光軸光電スイッチ10を構成したが、投光器及び受光器の数はこれに限らない。例えば、図4に示すように、投光器11,12a,12b,13及び受光器14,15a,15b.16を用いて多光軸光電スイッチ10を構成してもよい。また、対をなす投光器11〜13及び受光器14〜16よりなる単光軸光電センサを使用して多光軸光電スイッチ10を構成しているが、これに限らず、光軸を複数持つ多光軸光電センサを複数用いて多光軸光電スイッチ10を構成してもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、侵入異常が生じた場合に印刷機1の駆動及び搬送ベルト4の駆動を停止させるようにしたがこれに限らず、図1に破線で示すように、コントローラ17に報知手段としての報知装置20を接続して、侵入異常が生じた場合に音や発光等による報知をおこなってもよい。これにより、作業者に対して侵入異常が生じたということを知らせることができる。
【0043】
・上記実施の形態では、各スイッチ18a〜18cを印刷機1側に設けたが、多光軸光電スイッチ10側に設けてもよい。
・上記実施の形態では、投光器11〜13,受光器14〜16というように分離型の単光軸光電センサであるが、例えば投光器の対向位置にミラーを設けるとともに、投光器からミラーに光を当て、その反射光を投光器と一体形成した受光器で構成された単光軸光電センサ、所謂一体型の単光軸光電センサであってもよい。
【0044】
・上記実施の形態では、印刷機1では印刷紙6を扱っているが、紙以外の印刷物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施の形態における印刷機及びそれに用いる単光軸光電スイッチの概略構成図である。
【図2】同上におけるミューティング設定を説明するための説明図である。
【図3】同上におけるミューティング設定を説明するための説明図である。
【図4】別例におけるミューティング設定を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1…印刷機、6…印刷紙(印刷物)、7…排紙部(印刷物排紙室)、7a…排紙エリア(保護エリア)、8…排紙トレー(印刷物受けトレー)、10…多光軸光電スイッチ、11,12,13…投光器、14,15,16…受光器、18a…第1操作スイッチ、18b…第2操作スイッチ、18c…解除スイッチ、20…報知装置(報知手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙室にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機に設置されるものであり、
前記印刷機の印刷物排紙室の出入口両側において上下方向に複数設置される光電センサと、複数の前記光電センサを順次投受光動作させて前記印刷物排紙室の出入口の侵入異常を検出する保護エリアを形成する制御を行う制御手段とを備えてなる多光軸光電スイッチであって、
前記制御手段は、前記第1工程の動作で操作される第1操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最下部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第2工程の動作で操作される第2操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最上部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第3工程の動作で前記印刷機からの印刷終了信号に基づく前記光電センサの全てをミューティングさせることを特徴とする多光軸光電スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の多光軸光電スイッチにおいて、
前記制御手段は、ミューティングを解除する解除スイッチの操作に基づいて前記第1操作スイッチまたは前記第2操作スイッチの操作に基づくミューティングを解除することを特徴とする多光軸光電スイッチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多光軸光電スイッチにおいて、
前記光電センサは、投光器と該投光器からの光を受光する受光器とからなることを特徴とする多光軸光電スイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチにおいて、
前記制御手段は、前記光電センサにて前記侵入異常を検出した場合に報知手段による報知を行わせることを特徴とする多光軸光電スイッチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチにおいて、
前記制御手段は、複数の前記光電センサの直列接続数を検出し、その接続位置の一端を前記第1工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定し、その接続位置の他端を前記第2工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定することを特徴とする多光軸光電スイッチ。
【請求項6】
印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙室にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機に設置されるものであり、
前記印刷機の印刷物排紙室の出入口両側において上下方向に複数設置される光電センサに対して、複数の前記光電センサを順次投受光動作させて前記印刷物排紙室の出入口の侵入異常を検出する保護エリアを形成する制御を行うコントローラであって、
前記第1工程の動作で操作される第1操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最下部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第2工程の動作で操作される第2操作スイッチからの操作信号に基づいて前記印刷物排紙室の最上部に位置する前記光電センサをミューティングさせ、前記第3工程の動作で前記印刷機からの印刷終了信号に基づく前記光電センサの全てをミューティングさせることを特徴とするコントローラ。
【請求項7】
請求項6に記載のコントローラにおいて、
複数の前記光電センサの直列接続数を検出し、その接続位置の一端を前記第1工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定し、その接続位置の他端を前記第2工程でミューティングさせる前記光電センサとして設定することを特徴とするコントローラ。
【請求項8】
印刷済みの印刷物が積層される印刷物受けトレーを印刷物排紙室にセットする第1工程と、前記印刷物への印刷状態を確認するための第2工程と、前記印刷物受けトレーを引き出して該印刷物受けトレー上の前記印刷物を取り出す第3工程とから構成される稼働サイクルを有する印刷機と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の多光軸光電スイッチと
を備えたことを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−135841(P2009−135841A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311743(P2007−311743)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】