説明

多孔性シリコンからなる光線力学的療法用製剤及びそれから発生する活性酸素の定量的測定方法

【課題】多孔性シリコンからなる光線力学的療法用製剤及びそれから発生する活性酸素の定量的測定方法を提供する。
【解決手段】多孔性シリコン(PSi)が熱または爆発によって癌細胞を殺す新しいPDTでのナノ爆弾剤に使用される場合、活性酸素の放出がほとんどないのに十分な熱を発生させて癌細胞を殺すことができる安全で信頼性ある新しい癌治療剤としてPSiを提案することで、副作用がない癌治療法の開発に寄与する。また、本発明は、その時に発生する微量の活性酸素をX線回折分析で定量して、信頼性及び再現性ある活性酸素発生量の測定技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性シリコンからなる光線力学的療法用製剤及びそれから発生する活性酸素の定量的測定方法に関するものである。特に、本発明は活性酸素の放出がほとんどないのに十分な熱を発生させて癌細胞を殺すことができる多孔性シリコンからなる光線力学的療法用製剤、及びそれから発生する微量の活性酸素をX線回折分析で定量する活性酸素の定量的測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の癌治療法の多く(例えば、放射能療法及び化学療法)は、急速に増殖する細胞を攻撃する役割をしている。残念ながら、このような攻撃は癌細胞のみを破壊するのに止まらずに一部の正常細胞も破壊するようになる。その結果、このような治療法は時々、生命に脅威を与え得る深刻な副作用を伴うだけではなく、このような療法は実際に天然の抗−腫瘍防御基剤を低下させることがある。例えば、放射能及び化学療法は、急速に分割される免疫系の細胞に被害を与え、抗−腫瘍及び抗−感染応答を抑圧する。
【0003】
このような副作用を生成させる以外にも、現在使用されている療法は、癌細胞のみを特定して攻撃する効率が低いため、たいてい目的とする効果度を達成することができない。結果的に、化学療法または放射能療法、またはこれらの組合わせでは癌を効果的に治癒することができない。したがって、癌の主な治療法は現在、癌細胞を外科的に除去するのである。この方法は、よく補助的に放射能療法及び化学療法と併用して行われていて、治療のためにはすべての癌細胞を破壊するため、患者の身体を外科的に切断して毒性が高い治療法を使用しなければならないのが実情である。
【0004】
このような癌治療の弊害を最小化して全体的な効能を増進させるための努力の一環として、光線力学的療法(Photodynamic therapy;PDT)が開発された。光線力学的療法は、癌細胞に局所化(localization)させるための光感応物質(photosensitizer)を人体に投与して、続いて光感応物質を含む癌細胞に特異的で適切な波長の光を照射することによりなされる。したがって、PDTは適切な波長の活性化光を部位特異的に適用することができるので、光感応物質と部位特異的な光照射を併用して癌のような特定組織で治療的反応を生成させることができる。
【0005】
従来のPDTは、癌細胞を破壊するにあたって光感応物質に光が照射される時に生成された活性酸素(reactive oxygen species;ROS)を使用して癌細胞を破壊する方法で、PDTの光感応物質が備えなければならない条件は下記のとおりである。
【0006】
第一、ROSを生産する量子数比が高くて、
第二、吸収する光の波長が長くなければならず、
第三、照射しない状態で毒性が低くなければならないというのである。
【0007】
したがって、芳香族分子または染料分子がROSを生成させる能力を有していて、ここ数十年間医療界で光感応物質に使用されてきて、最近では二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、金(Au)、炭素ナノチューブ(carbon nanotube;CNT)、多孔性シリコン(porous silicon;PSi)及びフラーレン(fullerene)などのナノ物質が、ROSを生成させることができる新しいPDT光感応物質として報告されている。
【0008】
しかし、ROSは単一酸素()、O及び・OHなどの不安定な化学種を示し、これらは光生物学的活動を通じて細胞に取り返せない損傷を与え得る。また、ROSが人体に及ぼす副作用に対する多くの報告がなされていて、その副作用を下記に示す。
【0009】
第一に、短期的に人体が光に露出する時に肌が腫れたり赤い斑点ができて痛みを感じたりする。また、食欲が落ちたり唾をのむと喉が痛いなどの副作用が、6週間以上持続する。
【0010】
第二に、長期的にはROSが人体のDNA、タンパク質及び脂肪質のような生物学的分子と反応して組織及び機能に損傷を与える。
【0011】
第三に、前記形態で体内に蓄積された酸化性損傷は、遂には心臓病または癌などの成人病を誘発し得る。
【0012】
特に、最近単一壁炭素ナノチューブ(single−wall carbon nanotube:SWCNT)を癌治療剤に使用する新しいPDT技術が発表され、多くの関心を集めている。この新しいPDTに使用されるCNTは、波長範囲700〜800nmの近赤外線を吸収して熱を放出して、この熱で癌細胞を効果的に破壊することができる。すなわち、葉酸や抗体を塗ったCNTを細胞異物吸収法などのテクニックで細胞内に投入すると、癌細胞は抗体受容体をたくさん含有しているので注入されたCNTが癌細胞を捜して癌細胞がある所に移動するようになる。ここで、人体外部から近赤外線を照射すると、CNTが近赤外線を吸収するようになる。この吸収された近赤外線のエネルギーによってCNT内部に存在する励起されて(excited)いた電子が、価電子帯に下りながら熱を放出するようになる。この熱が周辺の癌細胞を破壊することで癌治療を可能にする。従来のPDTは、可視光線を照射することで光感応物質から放出されるROSを使用して癌細胞を殺す一方、本発明の新しいPDTは近赤外線を照射することで光感応物質から放出される熱を使用して癌細胞を破壊するという差がある。可視光線は、人体表面から数mmしか侵透することができないので、従来のPDTでは皮膚近くに存在する癌細胞のみを破壊することができる一方、近赤外線は人体をよく通過するので、新しいPDTでは体内深く位置した癌細胞もよく除去することができる。この新しいPDTでは熱放出効率は高いほど良いが、近赤外線照射時の副作用を起こすだけで癌治療になんらの必要がないROSの放出量は少ないほど良い。
【0013】
とにかく、従来のPDTと新しいPDTのどちらであっても光感応物質に対するROS放出効率を正確に知ることが重要である。
【0014】
ところで最近、ヤマコシ(Yamakoshi)等の報告によると、光感応物質に光を照射する時、だけでなくO及び・OHなどの不安定な化学種も一緒に生成されて、これらも細胞を破壊する役割をするという。だから、O、・OHを含むすべてのROSの放出効率を測定しなければならない。ここ十数年間、ROS測定のための様々なテクニックが開発されたが、このテクニックでは大部分の生成に対する量子数のみを測定することができる(非特許文献1〜8参照)。
【0015】
本発明は、このような要求に答えて光照射時に光感応物質から放出されるすべての種類のROS量を一度に測定することができる分析テクニックに関するものである。
【0016】
一方、X線回折分析(X−ray diffraction;XRD)テクニックによってROSを効率的に測定することができる理論的背景を、下記に示す。
X線回折器で単一形状粉末試片の強度に対する正確な表現は、下記数式1で表わされる。
【0017】
数式1:
【0018】
【数1】

【0019】
前記式で、Iは回折線の単位長さ当りの積分強度、Iは入射ビームの強度、Aは入射ビームの断面積、λは入射ビームの波長、rは回折器円の半径、μは4π×10−7 m kg C−2、eは電子の電荷(C)、mは電子の質量(kg)、vは定義単位体積(m)、Fは構造因子、pは多重度因子、θはブラッグ角、e−2Mは温度因子及びμは吸収因子1/2μに入って行く直線的吸収係数である。
【0020】
数式2:
【0021】
【数2】

【0022】
数式3:
【0023】
【数3】

【0024】
数式4:
【0025】
【数4】

【0026】
KとRを各々前記数式2及び3のように定めると、回折強度は前記数式4のように与えられる。前記数式4で、XRDテスト条件が一定ならKは定数で、Rは回折される物質の種類及び結晶学的背向性に依存し、μは回折する物質の吸収係数である。
【0027】
多くの元素で構成されている多成分系のi番目元素に対して、数式4を次のように示すことができる。
【0028】
数式5:
【0029】
【数5】

【0030】
前記数式5で、Ciはi番目元素の体積分率、μmは多成分系の吸収係数を示す。吸収は原子スケールで起こる現象なので、多成分系はその成分の数ほど多くの純粋な元素各々からなるスラブすなわち、多層系であると考えられる。数式4の表現と類似に、多層系のi番目層に対して数式3を次のように示すことができる。
【0031】
数式6:
【0032】
【数6】

【0033】
前記数式6で、Ciはi番目層の体積分率、μは多層試片の全体吸収係数を示す。
【0034】
前記式及びXRD測定値を使用して、光感応物質が近赤外線領域の光に露出する時に発生するROSの放出量を効率的に測定することができる。
【0035】
以上のことに鑑みて、本発明者等は多くの副作用を誘発する活性酸素の発生が抑制された光感応物質を研究中、多孔性シリコン(PSi)が近赤外線領域の光に露出する時に活性酸素の放出が抑制されることを確認し、また、X線回折分析を使用してPSiまたはCNTから放出された活性酸素の量を間接的に測定する信頼性及び再現性が優れた方法を開発することにより本発明を完成した。
【非特許文献1】Carre,C.等.,J.Chim.Phys.Phys−Chim.Biol.,1987年,第84巻,577−85頁
【非特許文献2】Darmanyan.A.P.,Chem.Physics.Lett.,1982年,第91巻,391−400頁
【非特許文献3】Chattopadhyay,S.K.等.,J.Photochem.,1984年,第24巻,1−9頁
【非特許文献4】Olmsted,J.,III,J.Am.Chem.Soc.,1980年,第102巻,66−71頁
【非特許文献5】ROSsbroich,G.等.,J.Photochem.,1985年,第31巻,37−48頁
【非特許文献6】Heihoff,K.等.,Photochem.Photobiol.,1990年,第51巻,634−41頁;
【非特許文献7】Chattopadhyay.S.K.等.,J.Photochem.,1984年,第24巻,1−9頁
【非特許文献8】Garner,A.等.,Singlet Oxygen,Reactions with Orgnic Compounds and Polymers.B.Ranby and J.F.Rabek(eds.),John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1976年,48−53頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の目的は、副作用をもたらす活性酸素を発生させないで癌細胞を殺す新しいPDTに光感応物質に使用することができる、癌治療用光線力学的療法用製剤を提供することにある。
【0037】
本発明の他の目的は、光感応物質が近赤外線領域の光に露出する時に発生する活性酸素を測定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
前記技術的課題を達成するために、本発明は多孔性シリコン(PSi)からなる光線力学的療法(PDT)用製剤を提供する。
【0039】
また、本発明は、光感応物質が近赤外線領域の光に露出する時に発生する活性酸素をX線回折分析を使用して測定する方法を提供する。
【0040】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、多孔性シリコン(PSi)からなる光線力学的療法(PDT)用製剤を提供する。
【0041】
具体的に、本発明は癌治療用光線力学的療法において癌細胞を殺すことができる治療物質に、活性酸素を発生させない光感応物質(photosensitizer)である多孔性シリコン(PSi)からなる光線力学的療法用製剤を提供する。
【0042】
多孔性シリコン(PSi)は、量子閉じ込め効果によって1.12eV〜2.5eVに至る有効バンドギャップエネルギーを有する光を放出する特性を持っていて、その大きさと模様が多様な多数の気孔を含んでいる。
【0043】
PSiは近赤外線に露出した時に熱を放出するようになり、この熱で癌細胞を破壊することができる。ここで、近赤外線の照射時に発生する熱量と活性酸素の量は、PSiでの気孔率(porosity)、気孔の大きさ(pore size)及び多孔性Si層の厚さによって変わり、またこのようなPSiの構造的特性はその製造工程条件に大きく依存している。
【0044】
前記PSiは、シリコンウエハーを例えば、電気化学的なエッチング(陽極酸化)をさせることで易しく製造することができる(図1参照)。陽極酸化工程は、陽極周囲で電解質と陽極との間に起きる酸化反応を利用する工程で、処理をしようとする部品を陽極に連結させ、溶液を陰極に連結させて成り立つ。この工程は、酸化処理後に使用した溶液の種類によって耐食性、耐久性、接着性が向上するが、主にアルミニウム合金の表面処理技術に多く使用されている。大部分の場合、陽極酸化処理をすると表面がデコボコした状態になり、このような状態を多孔性表面という。一般的に陽極酸化処理によって形成された多孔性表面(図2の(a)及び(b))は、処理する前より表面積が増加して高い反応性を示す。
【0045】
また、陽極酸化工程によって形成されたPSiの気孔率、気孔の大きさ及び多孔性Si層厚などの構造的特性は、陽極酸化工程条件に大きく依存する。陽極酸化工程での工程媒介変数には、電流密度、HF濃度、エッチング時間、Si基板内での不純物のドーピング濃度、エッチング中の照明使用有無などがあるが、一般的にHF濃度が増加するにつれて気孔率が低くなって、気孔の大きさも減少する傾向を示す。また、電流密度が増加するにつれて気孔の大きさが増加して、PSi層の厚さも増加する傾向を示す。同時に、エッチング時間が増加するにつれてPSi層の厚さは増加するが、電解質の化学的作用によって層の深さが不均一になる。また、HFを希釈するためにエチルアルコールを使用することができるが、ここでエチルアルコールは、陽極酸化時の水素気泡の生成を最小化して、均一な気孔を形成するのに寄与する。
【0046】
一般的に気孔率、気孔の大きさ及び多孔性Si層の厚さが増加するほど、近赤外線の照射時に発生する熱量と活性酸素の量は増加する。しかし、発生する熱量は概して高いほうが良いが、癌細胞破壊において、PSiの温度は70℃以上の水準が好ましく、活性酸素の発生量は少ないほど良いので、陽極酸化工程条件を最適化する必要がある。
【0047】
したがって、本発明のPSiは、気孔率が重要であるが、全体シリコン物質体積中の気孔の割合が60〜80%であることが好ましい。気孔率が60〜80%の場合、酸素と接することができる大きな内部表面積を提供し、近赤外線照射時の癌細胞破壊に必要な十分な熱を放出することができる。前記気孔率が60%未満の場合、癌細胞破壊に必要な熱を充分に発生させることができず、80%を超過する場合はあまりにも多い熱を放出して正常組織を破壊したり多量のROSを放出するようになって、それによる副作用を招来し得る。また、気孔の大きさは、図2に示したように、100nm以下が好ましいが、多様な大きさの気孔を有することができる。
【0048】
前記PSiは、生体に適用可能な特性によって人体内での薬物輸送媒体として使用することができる。PSiは、従来のPDTに使用される炭素ナノチューブ(CNT)と非常に類似の原子及び電子構造を有しているだけではなく、光を放出する能力を有しているので、CNTのように高い温度に早く加熱することができるので、前記PSiは癌細胞を殺す光感応剤またはナノ爆弾剤として使用することができる。
【0049】
本発明のPSiは、近赤外線照射時に適切な熱量(近赤外線を2分間照射時に約70℃まで加熱される)とCNTに比べてずっと少ない量(CNTの10%程度)の活性酸素を発生させる適切な構造的特性を有している。
【0050】
したがって、前記本発明の新しいPDTは、光感応物質が近赤外線領域の光に露出した時に光感応物質から発生した熱または爆発で癌細胞を局所的に殺すことができる癌治療療法で、癌細胞を破壊するにおいて光感応物質によって生成された活性酸素(reactive oxygen species;ROS)を使用する従来のPDTとは異なる。
【0051】
本発明において、前記製剤は、800ないし1000nm範囲の近赤外線(NIR)を照射することが好ましい。前記多孔性シリコン(PSi)は、前記範囲の光に露出する時に熱放出または爆発を起こし、その時に発生した熱または爆発によって癌細胞を破壊する。
【0052】
また、本発明は、光線力学的療法用光感応物質として多孔性シリコン(PSi)を有効成分として含む癌治療剤を含む。
【0053】
前記癌治療剤は、癌細胞への選択的接着性を示す光感応物質で、前記多孔性シリコン及びその薬理学的に許容可能な塩を投与して、前記光線力学的療法を実施することにより癌を治療することができる。
【0054】
ここで、前記多孔性シリコン(PSi)は、光線力学的療法用光感応物質として、リン酸緩衝塩(PBS)溶液とよく混合したPSiは、光線力学的療法用ナノ爆弾剤に使用することができ、前記治療剤は、800ないし1000nm範囲の近赤外線領域で活性熱を放出したり爆発を起こして癌細胞を破壊する。
【0055】
本発明の前記PSiから発生した熱は、従来の炭素ナノチューブ(CNT)が近赤外線光に露出した時に発生する熱と同一水準である一方(図5参照)、熱とともに発生されるROSの量は大きな差を示す(表1参照)。したがって、本発明のPSiは、人体に適用されて近赤外線が照射される時に発生するROSの発生量を減らして、ROSによる被害を最大限に防ぐことができるので、ROS放出による後遺症を予防することができる安全で信頼性ある新しい癌治療剤として使用することができる。
【0056】
さらに、本発明は、X線回折分析を使用して活性酸素(reactive oxygen species;ROS)を定量的に測定する方法を提供する。
【0057】
具体的に、本発明はシリコン基板上に光感応物質を蒸着して前記光感応物質上に有機物薄膜がコーティングされた光感応物質試片とシリコン基板上に被酸化剤薄膜が蒸着された被酸化剤薄膜試片を準備する工程(工程1);前記工程1で得た二つの試片を一つのパックに真空包装する工程(工程2);前記工程1の光感応物質とは異なる種類の光感応物質が蒸着された光感応物質試片と工程1の被酸化剤薄膜試片を準備して、これら二つの試片を別途のパックに真空包装する工程(工程3);前記工程2及び3の真空パックに800〜1000nmの近赤外線を照射して活性酸素を発生させる工程(工程4);及び前記お互いに異なる光感応物質試片から発生した活性酸素によって酸化されたそれぞれの被酸化剤薄膜試片に対して、X線回折分析を遂行する工程(工程5)を含んでなる、X線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法を提供する。
【0058】
本発明による工程1は、シリコン基板上に光感応物質を蒸着して前記光感応物質上に有機物薄膜がコーティングされた光感応物質試片とシリコン基板上に被酸化剤薄膜が蒸着された被酸化剤薄膜試片を準備する工程である。
【0059】
前記光感応物質は、光に露出した時に活性酸素を放出する物質で、本発明の多孔性シリコン(PSi)だけではなく、炭素ナノチューブ(CNT)、金(Au)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)などが使用できる。
【0060】
前記有機物薄膜は、人体に適用時の体細胞の代わりをするものとして使用されるもので、ワセリンなどを使用することができる。
【0061】
前記被酸化剤薄膜は、鉄(Fe)、銅(Cu)などの金属薄膜を使用することができ、鉄薄膜がより好ましい。前記金属薄膜は、光感応物質から発生した活性酸素によって酸化される唯一の物質で、前記被酸化剤薄膜が単一酸素()、O及びOHなどのROSに露出すると酸化されてその表面に酸化膜層を形成するようになる。例えば、鉄薄膜の場合、酸化鉄であるFeO、Fe、Feなどからなる酸化被膜層がその表面に形成される。
【0062】
本発明による光感応物質試片は、2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片の上に光感応物質を蒸着して、前記蒸着が完了した光感応物質試片表面にワセリンをコーティングして得ることができる。
【0063】
本発明による被酸化剤薄膜試片は、まず前記薄膜をr.f.マグネトロンスパッタリング法を使用して1μmの厚さに製作して、製作した薄膜を2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片の上に蒸着して得ることができる。ここで、前記薄膜が発生したROSによって酸化される唯一の物質になるためには、薄膜表面に存在するすでに形成されている自然酸化膜が完全に除去されなければならない。前記自然酸化膜の除去は、薄いHF溶液(脱イオン水:HF=50:1、v/v)を使用した蝕刻過程でなされ、前記HF溶液に5分間浸けて表面の自然酸化膜を除去することができる。
【0064】
本発明による工程2は、前記工程1で得た二つの試片を一つのパックに真空包装する工程である。
【0065】
前記工程1で製造された光感応物質試片と被酸化剤薄膜試片を一緒にプラスチックパックに入れて、内部空気を抜いて完全な真空状態にして真空包装されたパックを製造することが好ましい(図3参照)。ここで、前記真空包装は、パック内部の空気によって被酸化剤薄膜が酸化されることを防ぐためのものである。
【0066】
本発明による工程3は、工程1の光感応物質とは異なる種類の光感応物質が蒸着された光感応物質試片と工程1の被酸化剤薄膜試片を準備して、これら二つの試片を別個のパックに真空包装する工程である。
【0067】
前記別途のパックを製造する方法は、前記工程2で言及したのと同じである。
【0068】
本発明による工程4は、工程2及び3の真空パックに800〜1000nmの近赤外線を照射して活性酸素を発生させる工程である。
【0069】
ここで、前記光は、光感応物質から癌細胞破壊に必要な十分な熱を放出させるためのもので、800ないし1000nm波長範囲の近赤外線が好ましい。前記近赤外線の光を前記それぞれの二つの光感応物質試片に照射すると、熱が放出されると同時にROSも一緒に発生するようになる。
【0070】
本発明による工程5は、前記お互いに異なる光感応物質試片から発生した活性酸素によって酸化されたそれぞれの被酸化剤薄膜試片に対して、X線回折分析を行う工程である。
【0071】
前記工程4で光感応物質から発生したROSによって被酸化剤薄膜が酸化されてその表面に酸化膜(例えば、鉄薄膜の場合は、FeO、Fe、Fe等の酸化膜)を形成するようになる。
【0072】
ここで、前記酸化膜の厚さから、X線回折分析を使用して被酸化剤薄膜の酸化された程度を確認することができる。前記ROS放出量は、被酸化剤薄膜が酸化される程度によって決定することができる。
【0073】
前記活性酸素放出量は、相違した光感応物質から発生する活性酸素によって酸化される程度が異なるそれぞれの被酸化剤薄膜層の厚さの差から、X線回折強度の差によって決定されるのである。
【0074】
前記それぞれの被酸化剤薄膜層の厚さ比は、X線回折分析を使用した下記のような計算によってなされる。
【0075】
前記被酸化剤が鉄(Fe)の場合、前記被酸化剤薄膜層厚比は下記のようになる。
【0076】
数式7:
【0077】
【数7】

【0078】
または、数式8:
【0079】
【数8】

【0080】
から測定することができ、前記2種の値の平均値で測定することが好ましい。
【0081】
前記式中、
【0082】
【数9】

【0083】
は、CNTが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(104)回折に対する回折強度を示し、
【0084】
【数10】

【0085】
は、PSiが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(104)回折に対する回折強度を示し、
【0086】
【数11】

【0087】
は、CNTが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(440)回折に対する回折強度を示し、
【0088】
【数12】

【0089】
は、PSiが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(440)回折に対する回折強度を示し、
【0090】
【数13】

【0091】

【0092】
【数14】

【0093】
は、多孔性Si試片での基板Siに対する(400)回折強度とCNT試片での基板Siに対する(400)回折強度を示し、
【0094】
【数15】

【0095】
は、CNTから発生される活性酸素によって鉄薄膜に形成された酸化膜の厚さを示し、
【0096】
【数16】

【0097】
は、PSiから発生される活性酸素によって鉄薄膜に形成された酸化膜の厚さを示す。
【0098】
鉄薄膜が蒸着されたSi試片であるFe/Si(100)試片の場合、近赤外線が照射されるとFe層の上部がFeとFeにすでに変化したのでFe/Fe/Si(100)で示すことができる。Fe/Fe/Si(100)試片内のFe、Fe及びSi基板の断面積はすべて同じなので、体積分率は厚さ分率に置き換えることができる。すなわち、数式6のCiの代わりにt/tを使うと、Fe/Fe/Si(100)試片のFeとSi(400)回折に対する下記数式9は下記のようになる。
【0099】
数式9:
【0100】
【数17】

【0101】
数式10:
【0102】
【数18】

【0103】
前記数式9及び10で、tは試片の厚さ、μは吸収係数及び添え字Tは、Fe/Fe/Si(100)試片全体を示す。前記数式9を数式10で割ると数式11になる。
【0104】
数式11:
【0105】
【数19】

【0106】
前記数式11で、近赤外線が照射された多孔性シリコンが蒸着したSi試片であるPSi/Si(100)、及び鉄薄膜が蒸着しれたSi試片であるFe/Si(100)試片からなる真空パックから取り出したFe/Si(100)試片をFe(PSi)で、炭素ナノチューブが蒸着されたSi試片であるCNT/Si(100)及び鉄薄膜が蒸着されたSi試片であるFe/Si(100)試片からなる真空パックから取り出したFe/Si(100)試片をFe(CNT)で、またFe(CNT)とFe(PSi)試片上に形成されたFe層をそれぞれ下付き文字Fe(CNT)とFe(PSi)で示すと、それぞれの回折に関する式を次のように表現することができる。
【0107】
数式12:
【0108】
【数20】

【0109】
数式13:
【0110】
【数21】

【0111】
Fe/Fe/Si(100)試片の場合、本発明に使用された材料(FeとSi)、Fe層の結晶学的方位及びSi基板の厚さがすべて固定されているので、RFxOy、RSi(400)及びtSiはいつも常数である。したがって前記数式12を数式11で割ると数式14が得られる。
【0112】
数式14:
【0113】
【数22】

【0114】
Fe層は、FeとFe相からなっていて、Fe層の主な回折線は、Fe(104)とFe(440)回折で、Fe(104)回折に対して表現すると、上記数式7のように表現でき、Fe(440)回折に対して表現すると、上記数式8のようになる。
【0115】
酸化鉄(Fe)層内に存在するFe相に対するFe相の比率が常に一定であるという仮定の下で数式7と8から
【0116】
【数23】

【0117】
の値を求めることができる。
【0118】
本発明による実施例1から得たXRD結果(表1参照)を前記誘導された数式14に代入して、PSiの場合にCNTより約1/3倍厚さの酸化膜が形成され、この結果からPSiの場合がFeを酸化し得る物質、すなわち活性酸素がより少なく発生することが確認された。
【0119】
したがって、X線回折分析を使用して活性酸素の定量的測定が可能であることが分かる。
【発明の効果】
【0120】
多孔性シリコン(PSi)が熱または爆発によって癌細胞を殺す新しいPDTでのナノ爆弾剤に使用する場合、活性酸素をほとんど放出せずに十分な熱を発生させて癌細胞を殺すことができ、副作用がない癌治療法の開発に寄与することができる。また、その時に発生する微量の活性酸素をX線回折分析で定量して、信頼性がありかつ再現性ある活性酸素発生量の測定技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0121】
以下、本発明を実施例及び添付した図面を参照してより詳細に説明する。但し、下記実施例及び図面は、本発明の理解を助けるために提供するものとであり、本発明の内容が下記の図面の一実施例によって制限されたり限定されたりしないことは勿論である。
【0122】
<実施例1>NIR照射時のPSi及びCNTによって生成されたROSの量測定
工程1:PSi/Si(100)及びFe/Si(100)試片の製造
【0123】
1.PSiの製造
陽極酸化に先立ってシリコンウエハーをアセトン:メタノール(3:1、v/v)混合溶液に10分間浸けた後、脱イオン水で充分に濯いだ後、窒素ガス下で乾燥させてシリコン基板上の自然酸化膜を除去した。自然酸化膜を除去したシリコンウエハーを使用してエチルアルコール:HF(1:1、v/v)混合溶液を含んだ電解質内で電気化学的反応(陽極酸化)を通じて多孔性シリコン(PSi)を製造した。
【0124】
陽極酸化装置を、図1に示す。反応器は、HFに強いテプロンを使用して製作し、電極には白金を使用した。ここで、陽極の電極は、シリコンウエハー裏面にスパッタリング法を使用して先に白金薄膜を10nm厚さに蒸着したものである。電解質には、95%エチルアルコールで希釈させた46%のHF溶液(エチルアルコール:HF=1:1、v/v)を使用した。シリコンウエハーの両面は、オーリング(O−ring)によって分離させ、表面はHF溶液と接触するようにし、ウエハーの裏面はシリコンウエハーの比抵抗が低いのでオーミック接触のための別途の金属電極材料の蒸着工程なしに電解液であるKClを使用して電流が流れるようにした。ここで使用した電流密度は、50mA/cm、エッチング時間は10分にし、エッチング工程中に照明は別個に使用しなかった。この工程を通じて気孔率が73%、多孔性Si層厚が55μmであるPSiを得た。したがって、陽極酸化エッチングによってPSiに変わったSi、すなわち、PSi層の体積は1.73×10−4cm(1cm×1cm×3.14×55×10−4cm)で、Siの密度が2.33g/cmであるので、その質量は40.3mgだった。
【0125】
2.PSi/Si(100)試片の製造
前記過程1で製造したPSi(10.9mg、PSiの密度がバルクSi密度の27%と仮定すると、使用したPSiの重さは、40.3mg×0.27である)を2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片上に蒸着した。PSiが蒸着されたSi試片表面に体細胞代用としてワセリンを使用して有機物薄膜をコーティングしてPSi/Si(100)試片を得た。
【0126】
3.鉄薄膜試片(Fe/Si(100)試片)の製造
ROSを感知するのに使用されるFe薄膜をr.f.マグネトロンスパッタリング法で製作した。1μm厚さのFe薄膜を、2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片上に蒸着した。続いて真空包装に先立って、Feが蒸着されたSi試片を薄いHF溶液(脱イオン水:HCl=50:1)に5分間浸けてFe表面の自然酸化膜を除去して、X線回折分析用のFe/Si(100)試片を得た。
【0127】
工程2.PSi/Si(100)及びFe/Si(100)試片の真空包装
図3に示したように、前記過程2で得たPSi/Si(100)試片及び過程3で得たFe/Si(100)試片を一緒に真空包装して真空プラスチックパックを作った。
【0128】
工程3.CNT/Si(100)及びFe/Si(100)試片の製造
1.CNT/Si(100)試片の製造
イルジンナノテック社から購入したCNT(11mg、商品名:ASP−100F、直径が1〜1.2nm、長さが5〜20μmであるワイヤ形態のSWCNT)を2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片の上に蒸着した。CNTが蒸着されたSi試片表面に体細胞代用としてワセリンを使用して有機物薄膜をコーティングしてCNT/Si(100)試片を得た。
【0129】
2.鉄薄膜試片(Fe/Si(100)試片)の製造
ROSを感知するのに使用されるFe薄膜をr.f.マグネトロンスパッタリング法で製作した。1μm厚さのFe薄膜を2.5cm×2.5cm×0.05cmのP型Si(100)小片の上に蒸着した。続いて真空包装に先立ってFeが蒸着されたSi試片を薄いHF溶液(脱イオン水:HCl=50:1)に5分間浸けてFe表面の自然酸化膜を除去 し、X線回折分析用のFe/Si(100)試片を得た。
【0130】
3.CNT/Si(100)及びFe/Si(100)試片を真空包装
図3に示したように、前記過程2で得たCNT/Si(100)試片及び過程3で得たFe/Si(100)試片を一緒に真空包装して、また他の真空プラスチックパックを作った。
【0131】
工程4.近赤外線の照射
照射強度3.5W/cmの一つの近赤外線照射装置を使用して、前記工程2及び工程3で得た二つの異なる真空プラスチックパックを20分間同時に照射した。
【0132】
工程5.X線回折分析
前記工程4で近赤外線を照射した二つの真空プラスチックパックから取り出した二つのFe/Si(100)試片に対して、Cu−Kα特性曲線を使用してX線回折分析(X−ray diffraction;XRD、薄膜型ゴニオメーターが付着したヒィリップスX’pert回折器使用)を実施した。X線回折分析は、近赤外線照射時に生成されたROSによってFe膜が酸化された程度を知るために使用される。前記測定結果を図4に示した。また、前記のX線回折分析から得たFeの(104)及びFeの(440)回折線に対する強度比の計算結果を表1に示した。再現性確認のための反復実験の結果を一緒に示した。
【0133】
【表1】

【0134】
図4に示したように、Fe(Si)試片のFeの(104)及びFeの(440)回折強度ピークは、Fe(CNT)試片の該当の回折強度ピークよりずっと低く現れた。
【0135】
具体的な数値として、表1に示したように、Feの(104)及びFeの(440)回折線に対する平均ピーク強度比は各々2.9±0.6と2.8±0.5で、この強度比は前記誘導された数式7及び8を通じて試片のFeの酸化膜(Fe及びFe)の厚さで表現することができる。これは、近赤外線の照射中にPSiがCNTよりずっと少ない量のROSを発生させることを確認させるものである。前記結果から、Fe(PSi)試片内の酸化鉄層の厚さが、Fe(CNT)試片内の酸化鉄層厚さの約1/3であることが分かる。
【0136】
したがって、ROSの体積が生成される酸化鉄層の体積に比例すると仮定する時、NIR光照射中にPSiは、CNTによって放出されるROS量の約1/3のROSのみを放出するということが分かる。万一、前記実験に使用されたPSi及びCNT量がそれぞれ10.9mgと11mgであることを勘案すると、CNTによって生成されるROSに対する、同じ量のPSiによって生成されるROSの体積は約0.6%に過ぎない。
【0137】
<実験例1>NIR照射時のPSiとCNTの表面温度測定
NIR照射時に放出される熱を測定するために近赤外線を照射する間のPSi及びCNTの表面温度を測定した。
【0138】
まず、実施例と同一な構成を有するようにPSi(10.9mg)及びCNT(11mg)のための各々の真空プラスチックパックを製造した。そして、1.7、2.5及び3.5W/cmの照射強度を有する近赤外線照射装置を使用して、それぞれの真空プラスチックパックに近赤外線を240秒間同時に照射して、時間の経過による試片の表面温度を測定した。前記表面温度測定結果を図5に示した。
【0139】
図5は、三種類の異なる近赤外線照射強度に対して近赤外線照射時間によるPSi/Si(100)及びCNT/Si(100)試片表面温度の変化を示したものである。図5に示したように、近赤外線照射時のPSiの熱生成挙動が、CNTの熱生成挙動と非常に類似していることが分かった。近赤外線照射時間が増加するにつれて、PSiの温度もCNTの温度程度に高くかつ早く上がり、240秒照射後の二つのナノ材料の温度は、類似していた。PSi及びCNT試片すべて近赤外線照射時間が増加するにつれて放物線的に増加することを示した。近赤外線照射強度が高いほど、PSi及びCNTの温度はさらに高くなり、近赤外線照射後の照射強度1.7と3.5W/cmに対する温度差は、PSi及びCNT両方とも5℃程度に過ぎなかった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上で詳しくみたように、本発明によると、多孔性シリコン(PSi)が熱または爆発によって癌細胞を殺す新しいPDTでのナノ爆弾剤に使用される場合、活性酸素の放出をほとんどせずに十分な熱を発生させて癌細胞を殺すことができる、安全で信頼性ある新しい癌治療剤としてPSiを提案することにより、副作用がない癌治療法の開発に寄与することができる。また、本発明は、その時に発生する微量の活性酸素をX線回折分析で定量して、信頼性がありかつ再現性ある活性酸素発生量の測定技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の一実施例による多孔性シリコン(PSi)製造方法の概路図である。
【図2】本発明の一実施例による多孔性シリコン(PSi)の走査電子顕微鏡(SEM)写真で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】NIRに露出する間のPSiまたはCNTによって生成された活性酸素の量を測定するための真空プラスチックパックの模型図である。
【図4】NIRに20分間露出したFe(PSi)、Fe(CNT)及びFe試片のX線回折(X−ray diffraction;XRD)分析結果を示した図である。
【図5】NIR(Near Infrared Ray)に20秒間露出した多孔性シリコン(PSi)及び炭素ナノチューブ(CNT)の表面温度変化を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性シリコン(PSi)からなる光線力学的療法(PDT)用製剤。
【請求項2】
前記多孔性シリコンの気孔率が、60〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の光線力学的療法用製剤。
【請求項3】
前記製剤が、800ないし1000nm範囲の近赤外線領域で活性熱を放出したり爆発を起こしたりするものである、請求項1に記載の光線力学的療法用製剤。
【請求項4】
光線力学的療法用光感応物質として多孔性シリコン(PSi)を有効成分として含む癌治療剤。
【請求項5】
前記癌治療剤は、癌細胞への選択的接着性を示す光感応物質として前記多孔性シリコン及びその薬理学的に許容される塩を投与し、前記光線力学的療法を実施することによって癌を治療するのに使用される請求項4に記載の癌治療剤。
【請求項6】
前記多孔性シリコン(PSi)が、光線力学的療法用ナノ爆弾剤に使用される請求項5に記載の癌治療剤。
【請求項7】
前記治療剤が、800ないし1000nm範囲の近赤外線領域で熱を放出したり爆発を起こしたりするものである請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の癌治療剤。
【請求項8】
シリコン基板上に光感応物質を蒸着して前記光感応物質上に有機物薄膜がコーティングされた光感応物質試片と、シリコン基板上に被酸化剤薄膜が蒸着された被酸化剤薄膜試片を準備する工程(工程1);
前記工程1で得た二つの試片を一つのパックに真空包装する工程(工程2);
前記工程1の光感応物質とは異なる種類の光感応物質が蒸着された光感応物質試片と工程1の被酸化剤薄膜試片を準備してこれら二つの試片を別途のパックに真空包装する工程(工程3);
前記工程2及び3の真空パックに800〜1000nmの近赤外線を照射して活性酸素を発生させる工程(工程4);及び
前記お互いに異なる光感応物質試片から発生した活性酸素によって酸化された各々の被酸化剤薄膜試片に対して、X線回折分析を行う工程(工程5)を含むことを特徴とするX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項9】
前記光感応物質が、多孔性シリコン(PSi)、炭素ナノチューブ(CNT)、金(Au)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項8に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項10】
前記被酸化剤が、鉄または銅であることを特徴とする請求項8に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項11】
前記被酸化剤が、鉄であることを特徴とする請求項8に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項12】
前記有機物薄膜が、体細胞代用としてワセリンを使用することを特徴とする請求項8に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項13】
前記活性酸素放出量が相異した光感応物質から発生する活性酸素によって酸化される程度が異なる各々の被酸化剤薄膜層厚差から、X線回折強度の差によって決定されることを特徴とする請求項8に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
【請求項14】
前記の被酸化剤薄膜層厚の比が、前記被酸化剤が鉄(Fe)の場合、
【数1】

または
【数2】

から測定されることを特徴とする、請求項13に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。
(式中、
【数3】

は、CNTが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(104)回折に対する回折強度を示し、
【数4】

は、PSiが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(104)回折に対する回折強度を示し、
【数5】

は、CNTが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(440)回折に対する回折強度を示し、
【数6】

は、PSiが蒸着されたSi(100)試片と鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片からなる真空パックから取り出したFe層が形成された鉄薄膜が蒸着されたSi(100)試片のFe(440)回折に対する回折強度を示し、
【数7】


【数8】

は、多孔性Si試片での基板Siに対する(400)回折強度とCNT試片での基板Siに対する(400)回折強度を示し、
【数9】

は、CNTから発生される活性酸素によって鉄薄膜に形成された酸化膜の厚さを示し、
【数10】

は、PSiから発生される活性酸素によって鉄薄膜に形成された酸化膜の厚さを示す。)
【請求項15】
前記の厚さ比が、
【数11】

、及び
【数12】

の平均値で測定されることを特徴とする請求項14に記載のX線回折分析を使用した活性酸素の定量的測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−229335(P2008−229335A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63939(P2008−63939)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(505224569)インハ インダストリー パートナーシップ インスティテュート (17)
【氏名又は名称原語表記】Inha−Industry Partnership Institute
【Fターム(参考)】