説明

多孔質シリコン複合体粒子及びその製造方法

【課題】<1>高容量と良好なサイクル特性を実現する、<2>多孔質体内部でシリコン化合物による導電パスの確保としたリチウムイオン電池用の負極材料に好適な多孔質シリコン複合体粒子を得る。
【解決手段】シリコン微粒子3とシリコン化合物粒子5が接合してなる多孔質シリコン複合体粒子1であって、前記シリコン化合物粒子は、シリコンと、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素との化合物を含み、前記多孔質シリコン複合体粒子の平均粒径が、0.1μm〜1000μmであり、多孔質シリコン複合体粒子が、連続した空隙からなる三次元網目構造を有することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用の負極などに用いられる多孔質シリコン複合体粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、負極活物質として天然黒鉛、人造黒鉛、無定形炭素、メソフェーズ炭素等の各種炭素系材料やチタン酸リチウム、スズ合金等を用いたリチウムイオン電池が実用化されている。また、負極活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、樹脂の結着剤とを混練してスラリーを調製し、銅箔上に塗布・乾燥して、負極を形成することが行われている。
【0003】
一方、高容量化を目指し、リチウム化合物として理論容量の大きな金属や合金、特にシリコンおよびその合金を負極活物質として用いるリチウムイオン電池用の負極が開発されている。しかし、リチウムイオンを吸蔵したシリコンは、吸蔵前のシリコンに対して約4倍まで体積が膨張するため、シリコンを負極活物質として用いた負極は、充放電サイクル時に膨張と収縮を繰り返す。そのため、負極活物質の剥離などが発生し、従来の炭素系活物質からなる負極と比較して、寿命が極めて短いという問題があった。
【0004】
シリコンを使用した負極の従来の製造方法としては、シリコンを機械的に数マイクロメートルサイズに粉砕し、それに導電性材料を塗布することでリチウム電池用負極材料して使用する技術(例えば、特許文献1を参照)が知られている。
他に、シリコンを使用した負極の従来の製造方法としては、シリコン基板に陽極酸化を施してスリットなどの溝を形成する方法、リボン状のバルク金属中に微細なシリコンを晶出させる方法(例えば、特許文献2を参照)などがある。
他に、導電性基板上にポリスチレンやPMMAなどの高分子の粒子を堆積し、これにリチウムと合金化する金属を鍍金により施した後、高分子の粒子を取り除くことにより金属の多孔体(多孔質体)を作製する技術(例えば、特許文献3を参照)も知られている。
更に、本発明の中間工程物であるSi中間合金に相当するものを、リチウム電池用負極材料として使用する技術(例えば、特許文献4、5を参照)が知られている。
また、これを熱処理してリチウム電池用負極材料して使用する技術(例えば、特許文献6を参照)が知られている。
また、この技術に関連して、急冷凝固技術を応用して作製したSiと元素MのSi合金から、元素Mを酸またはアルカリによって完全に溶出除去する技術(例えば、特許文献7を参照)が知られている。
更に、メタリック・シリコンをフッ酸、硝酸でエッチングする技術(例えば、特許文献8、9)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−135364号公報
【特許文献2】特許4172443号公報
【特許文献3】特開2006−260886号公報
【特許文献4】特開2000−149937号公報
【特許文献5】特開2004−362895号公報
【特許文献6】特開2009−032644号公報
【特許文献7】特許第3827642号公報
【特許文献8】米国出願公開第2006/0251561号明細書
【特許文献9】米国出願公開第2009/0186267号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、負極活物質と導電助剤と結着剤とのスラリーを塗布・乾燥して、負極を形成する。このような従来の負極は、負極活物質と集電体とを導電性の低い樹脂の結着剤で結着しており、樹脂の使用量は内部抵抗が大きくならないように最小限に抑える必要があり、結合力が弱い。シリコンは、充放電時の体積変化が大きいため、特許文献1の技術では、負極活物質は、充放電時に、負極活物質の微粉化と負極活物質の剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下などが発生して容量が低下する。それゆえ、サイクル特性が悪く、二次電池の寿命が短いという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2の技術は、単結晶シリコンを粉砕して得られる数マイクロメーター・サイズの単結晶で、シリコンの原子が層状あるいは3次元網目構造を有している板もしくは粉末を負極用活物質として使用するものである。更に、導電性を付与させる為に、シリコン化合物(硅素炭化物、硅素シアン化物、硅素窒化物、硅素酸化物、硅素ホウ化物、硅素ホウ酸化物、硅素ホウ窒化物、硅素オキシナイトライド、硅素アルカリ金属合金、硅素アルカリ土類金属合金、硅素遷移金属合金からなる硅素化合物群のうちの一種以上)を使用するものである。しかし、シリコンは、充放電時の体積変化が大きいため、特許文献2に記載の負極活物質は、充放電時に、負極活物質の微粉化と負極活物質の剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下などが発生して容量が低下する。それゆえ、サイクル特性が悪く、二次電池の寿命が短いという問題点があった。特に、負極材料としての実用化が期待されているシリコンは、充放電時の体積変化が大きいため、割れが発生しやすく、充放電サイクル特性が悪いという問題点があった。
【0008】
また、特許文献3の技術は、導電性基板上にポリスチレンやPMMAなどの高分子の粒子を堆積し、これにリチウムと合金化する金属を鍍金により施した後、高分子の粒子を取り除くことにより金属の多孔体(多孔質体)を作製することができる。しかし、Siのポーラス体を作製する上では、ポリスチレンやPMMAなどの高分子の粒子にSiをめっきすることは極めて困難であり、工業的に適応できないという問題点があった。
【0009】
また、特許文献4の技術は、合金粒子を構成する原料の溶融物を凝固速度が100℃/秒以上となるように冷却して凝固させて、Si相粒とこれを少なくとも部分的に包囲するSi含有固溶体又は金属間化合物の相とを含む合金を形成する工程、を含むことを特徴とする、非水電解質二次電池用負極材料の製造する方法である。しかし、この方法ではLiが反応する上で、包括するSi含有固溶体内を拡散移動することが必要であり反応性に乏しく、更に充放電に寄与できるSiの含有量が少ないという点から実用化には至っていない。
【0010】
また、特許文献5の技術は、ケイ素(ケイ素の含有率は、22質量%以上60質量%以下)と、銅,ニッケルおよびコバルトのいずれか1種または2種以上の金属元素とを含有するケイ素合金粉末により構成されている。これを単ロール法またはアトマイズ法により合成することで、リチウムイオンなどの吸蔵・放出による体積変化に基づく微粉化を抑制するものである。しかし、この方法ではLiが反応する上で、包括するSi含有固溶体内を拡散移動することが必要であり反応性に乏しく、更に充放電に寄与できるSiの含有量が少ないという点から実用化には至っていない。
【0011】
また、特許文献6の技術は、Siと、Co、Ni、Ag、Sn、Al、Fe、Zr、Cr、Cu、P、Bi、V、Mn、Nb、Mo、Inおよび希土類元素から選択される1種または2種以上の元素とを含む合金溶湯を急冷し、Si基アモルファス合金を得る工程と、得られたSi基アモルファス合金を熱処理する工程を含む。Si基アモルファス合金を熱処理することにより、数十nm〜300nm程度の微細な結晶性のSi核を析出させるものである。しかし、この方法ではLiが反応する上で、包括するSi含有固溶体内を拡散移動することが必要であり反応性に乏しく、更に充放電に寄与できるSiの含有量が少ないという点から実用化には至っていない。
【0012】
また、特許文献7の技術は、非晶質リボンや微粉末などを製造する際に適応するものであり、冷却速度は専ら10K/秒以上で凝固させるものである。一般的な合金の凝固においては、1次デンドライトが成長しながら2次デンドライトが成長する樹枝状結晶をとる。特殊な合金系(Cu−Mg系、Ni−Ti系など)では、10K/秒以上で非晶質金属を形成させることができるが、その他の系(例えばSi−Ni系)では冷却速度は専ら10K/秒以上で凝固させても非晶質金属を得ることができず、結晶相が形成される。この結晶相が形成される場合の結晶のサイズは、冷却速度(R:K/秒)とデンドライト・アーム・スペーシング(DAS:μm)の関係に順ずる。
DAS=A×R (一般に、A:40〜100、B:−0.3〜−0.4)
そのために、結晶相を有する場合、例えばA:60、B:−0.35の場合に、R:10K/秒でDASは1μmとなる。結晶相もこのサイズに準ずるもので、10nmなどの微細な結晶相を得ることはできない。これらの理由から、Si−Ni系などの材料では、この急冷凝固技術単独で微細な結晶相からなる多孔質を得ることができない。
【0013】
また、特許文献8、9の技術は、金属シリコンをフッ酸や硝酸を用いてエッチングして表面に微細な空孔を作製するものである。しかし、BET比表面積が140〜400m/gにも係わらす、エッチングにより形成された空孔が均一分散しておらず、粒子表面から中心まで空孔が均一に存在しない。そのため、充放電時の体積膨張収縮に伴い、粒子内部で微粉化が進み、寿命が短いという問題点があった。
【0014】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、<1>高容量と良好なサイクル特性を実現する、<2>多孔質体内部でシリコン化合物による導電パスの確保としたリチウムイオン電池用の負極材料などに好適な多孔質シリコン複合体粒子を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、シリコン合金のスピノーダル分解(シリコン合金からの溶湯内でのシリコンの析出)と、脱成分腐食(dealloying)により、微細な多孔質なシリコンが得られることを見出した。シリコン合金からの溶湯内でのシリコンの析出は、高温の溶融金属中で行うため、脱成分腐食(dealloying)により得た多孔質シリコン粒子の表層部と内部とで一次粒子径や空隙率に大きな分布が発生しにくい。一方、例えば、酸によるエッチングでは、粒子内部は脱成分元素の濃度拡散に制約が生じるため、粒子表層部の気孔率は大きくなり、粒子内部の気孔率は小さくなる。条件によっては、粒子中心部に気孔のないSiの芯が残留し、この中心部の粗大なSiがLiとの反応時に微粉化が生じ、サイクル特性が劣る。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
【0016】
すなわち、以下の発明を提供するものである。
(1)シリコン微粒子とシリコン化合物粒子が接合してなる多孔質シリコン複合体粒子であって、前記シリコン化合物粒子は、シリコンと、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素との化合物を含み、前記多孔質シリコン複合体粒子の平均粒径が、0.1μm〜1000μmであり、多孔質シリコン複合体粒子が、連続した空隙からなる三次元網目構造を有することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子。
(2)前記シリコン微粒子の平均粒径または平均支柱径が、2nm〜2μmであり、前記シリコン微粒子が、酸素を除く元素の比率でシリコンを80原子%以上含む中実なシリコン微粒子であることを特徴とする(1)に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
(3)前記シリコン化合物粒子の平均粒径が50nm〜50μmであり、前記シリコン化合物粒子が、酸素を除く元素の比率で、50〜90原子%のシリコンを含むことを特徴とする中実なシリコン化合物の粒子であることを特徴とする(1)または(2)に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
(4)前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以上の表面近傍領域の前記シリコン微粒子の平均粒径Dsと、前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以内の粒子内部領域の前記シリコン微粒子の平均粒径Diの比であるDs/Diが、0.5〜1.5であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子。
(5)前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以上の表面近傍領域の空隙率Xsと、前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以内の粒子内部領域の空隙率Xiの比であるXs/Xiが、0.5〜1.5であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子。
(6)シリコンと、1つ以上の表1に記載の中間合金元素と、1つ以上の下記表1に記載の複合体元素との合金であり、前記複合体元素の割合が前記シリコンの1〜33原子%であり、多孔質シリコン複合体の前記シリコンの割合が10原子%以上であり、含有する前記中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量の値以下であるシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記中間合金元素に対応する表1記載の1つ以上の溶湯元素の溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記中間合金元素と前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成されることを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(7)前記工程(a)において、シリコン(X原子%)と中間合金元素(Y原子%)と1つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)が、以下の式を満足する組成を有するシリコン中間合金を作製することを特徴とする(6)に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
10≦X<[Si最大含有量] 式(1)
10≦a÷(a+Y)×100≦[Si最大含有量] 式(2)
但し、a=X−1.5×(Z+Z+Z、・・・・)
[Si最大含有量]は、含有する中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量である。
(8)シリコンと、表1に記載の一つ以上の中間合金元素との合金であり、シリコンの割合が全体の10原子%以上であり、含有する前記中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量の中で最も高い値以下であるシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記中間合金元素に対応する表1記載の1つ以上の溶湯元素の溶湯であって、前記中間合金元素に対応する表1記載の1つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下含む合金浴に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記中間合金元素と前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成されることを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(9)前記工程(a)において、前記シリコン中間合金が、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状、箔片状または線状であるか、粒径10μm〜50mmの粉末状、粒状または塊状であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(10)前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(11)前記工程(a)が、前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、単ロール鋳造機もしくは双ロール鋳造機によりリボン状もしくは薄板状のシリコン中間合金を製造する工程であることを特徴とする(6)〜(10)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(12)前記工程(a)が、前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、アトマイズ法を用いて粉末状のシリコン中間合金を製造する工程であることを特徴とする(6)〜(10)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(13)前記工程(a)が、前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、鋳型内にて冷却して塊状のシリコン中間合金を製造する工程を含むことを特徴とする(6)〜(10)のいずれかに記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(14)Cu(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜30原子%(X原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を(7)の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Cuと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(15)Cu(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜30原子%(X原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Cuと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(16)Mg(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜50原子%(X原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を(7)の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Mgと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(17)Mg(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜50原子%(X原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Mgと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(18)Ni(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜55原子%(Y原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を(7)の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Niと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(19)Ni(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜55原子%(Y原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Niと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(20)Ti(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜80原子%(Y原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を(7)の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Tiと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
(21)Ti(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜80原子%(Y原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、前記第2相が、前記Tiと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、<1>高容量と良好なサイクル特性を実現する、<2>多孔質体内部でシリコン化合物による導電パスの確保としたリチウムイオン電池用の負極材料などに好適な多孔質シリコン複合体粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明にかかる多孔質シリコン複合体粒子1を示す図、(b)多孔質シリコン複合体粒子1の表面近傍領域Sと粒子内部領域Iを示す図。
【図2】(a)〜(c)多孔質シリコン複合体粒子1の第1の製造方法の概略を示す図。
【図3】本発明に係るリボン状シリコン中間合金19の製造工程を説明する図。
【図4】本発明に係るリボン状シリコン中間合金19の溶湯23への浸漬工程を説明する図。
【図5】(a)本発明に係るガスアトマイズ装置31を示す図、(b)本発明にかかる回転円盤アトマイズ装置41を示す図。
【図6】(a)〜(c)塊状シリコン中間合金57の製造工程を説明する図。
【図7】(a)、(b)本発明にかかる溶湯浸漬装置61、71を示す図。
【図8】(a)〜(c)多孔質シリコン複合体粒子1の第2の製造方法の概略を示す図。
【図9】実施例1に係る多孔質シリコン複合体粒子の表面のSEM写真。
【図10】実施例1に係る多孔質シリコン複合体粒子内部の断面のSEM写真。
【図11】実施例1に係る多孔質シリコン複合体粒子の表面のSEM写真。
【図12】実施例1に係る多孔質シリコン複合体粒子のシリコン微粒子のX線回折格子像。
【図13】実施例1に係る多孔質シリコン複合体粒子のシリコン微粒子のTEM写真、制限視野電子線回折像(左上)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(多孔質シリコン複合体粒子)
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子を、図1を参照して説明する。図1(a)に示すように、本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子1は、シリコン微粒子3とシリコン化合物粒子5が接合してなり、多孔質シリコン複合体粒子1の平均粒径が0.1μm〜1000μmであり、多孔質シリコン複合体粒子1の平均空隙率が15〜93%であり、連続した空隙からなる三次元網目構造を有する。
【0020】
本発明での三次元網目構造は、スピノーダル分解過程で生じる共連続構造やスポンジ構造のような、空孔が互いに連接している構造を意味する。多孔質シリコン複合体粒子が有する空孔は、空孔径が0.1〜300nm程度である。
【0021】
多孔質シリコン複合体粒子1において、半径方向で50%以上の表面近傍領域の空隙率Xsと、半径方向で50%以内の粒子内部領域の空隙率Xiの比であるXs/Xiが、0.5〜1.5である。
つまり、本発明にかかる多孔質シリコン複合体粒子は、表面近傍領域と粒子内部領域とで、同様の細孔構造を有しており、粒子全体がほぼ均一な細孔構造を有する。
空隙率Xsは、多孔質シリコン複合体粒子1の表面をSEM観察して求めることができ、空隙率Xiは、多孔質シリコン複合体粒子1の断面の粒子内部領域に該当する箇所をSEM観察して求めることができる。
【0022】
シリコン微粒子3は、平均粒径または平均支柱径が2nm〜2μmであり、好ましくは10〜500nm、より好ましくは、20〜300nmである。また、平均空隙率は、15〜93%であり、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは60〜70%である。そして、一つ一つのシリコン微粒子3の結晶構造は、結晶性を有する単結晶である。また、シリコン微粒子3は、酸素を除く元素の比率でシリコンを80原子%以上含み、残りは後述する中間合金元素、溶湯元素、その他の不可避な不純物が含まれる中実な微粒子である。
【0023】
また、図1(b)に示すように、多孔質シリコン複合体粒子1を、半径方向で50%以上の表面近傍領域Sと、半径方向で50%以下の粒子内部領域Iとに分け、多孔質シリコン複合体粒子の表面近傍領域を構成するシリコン微粒子の平均粒径をDsとし、多孔質シリコン複合体粒子の粒子内部領域を構成するシリコン微粒子の平均粒径をDiとするとき、Ds/Diが0.5〜1.5である。
平均粒径Dsは、多孔質シリコン複合体粒子1の表面をSEM観察して求めることができ、平均粒径Diは、多孔質シリコン複合体粒子1の粒子内部領域に該当する箇所の断面をSEM観察して求めることができる。
【0024】
シリコン化合物粒子5は、平均粒径が50nm〜50μmであり、好ましくは100nm〜20μm、より好ましくは、200nm〜10μmである。また、組成的には、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素と、50〜90原子%のシリコンと後述する中間合金元素、溶湯元素、その他の不可避な不純物から構成されている中実な結晶性を有する粒子である。また、通常は、シリコン化合物粒子5は、シリコン微粒子3よりも大きい。
【0025】
また多孔質シリコン複合体粒子1の表面、すなわちシリコン微粒子3またはシリコン化合物粒子5には、厚さ20nm以下、またはそれぞれのシリコン微粒子3またはシリコン化合物粒子5の粒径比で10%以下の酸化物層が形成されていても特性上問題はない。
多孔質シリコン複合体粒子1の表面の酸化物層は、第2相を除去した後に0.0001〜0.1Nの硝酸に浸漬することで形成することが出来る。もしくは、第2相を除去した後に、0.00000001〜0.02MPaの酸素分圧下で保持することでも形成することができる。このシリコンなどの酸化物層が形成されると、多孔質シリコン複合体粒子1は、大気中でも極めて安定になり、グローブボックス等の中で取り扱われる必要がなくなる。
【0026】
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子は通常は凝集して存在しているので、粒子の平均粒径は、ここでは一次粒子の平均粒径を指す。粒径の計測は、電子顕微鏡(SEM)の画像情報と動的光散乱光度計(DLS)の体積基準メディアン径を併用する。平均粒径は、SEM画像によりあらかじめ粒子形状を確認し、画像解析ソフトウェア(例えば、旭化成エンジニアリング製「A像くん」(登録商標))で粒径を求めたり、粒子を溶媒に分散してDLS(例えば、大塚電子製DLS−8000)により測定したりすることが可能である。DLS測定時に粒子が十分に分散しており、凝集していなければ、SEMとDLSでほぼ同じ測定結果が得られる。
また、多孔質シリコン複合体粒子を構成するシリコン微粒子とシリコン化合物粒子は、互いに接合しているため、主に表面走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて平均粒径を求める。
また、平均支柱径とは、アスペクト比が5以上の棒状(柱状)のシリコン粒子において、その柱の直径を支柱径と定義する。この支柱径の平均値を平均支柱径とする。この支柱径は、おもに粒子のSEM観察を行って求める。
【0027】
平均空隙率は、粒子中の空隙の割合をいう。サブミクロン以下の細孔は窒素ガス吸着法によっても測定可能であるが、細孔サイズが広範囲に渡る場合には、電子顕微鏡観察や、水銀圧入法(JIS R 1655「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布測定方法」、空隙内へ水銀を侵入させた際の圧力と水銀体積の関係から導出)、等により測定が可能である。
【0028】
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子1は、Si中間合金のSi濃度やその中間合金製造時の冷却速度により0.1μm〜1000μmの粒径となる。なお、Si濃度を低くする、もしくは冷却速度を早くすることで粒径は小さくなる。負極用活物質として使用する上では、その平均粒径が0.1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜30μm、更に5〜20μmであることが好ましい。その為に、多孔質シリコン複合体粒子が小さい場合には凝集体または造粒体として使用される。また、多孔質シリコン複合体粒子が大きい場合には、この多孔質シリコン複合体粒子を粗に粉砕して使用しても何ら問題は無い。
【0029】
(多孔質シリコン複合体粒子の第1の製造方法の概略)
図2を用いて、多孔質シリコン複合体粒子1の製造方法の概略を説明する。
まず、図2(a)に示すように、シリコンと、中間合金元素と複合体元素とを、加熱・溶融させ、シリコン中間合金7を作製する。この際、シリコンと複合体元素と中間合金元素を溶融、凝固すると、シリコンと複合体元素と中間合金元素の中間合金7及び、シリコンと複合体元素からなるシリコン化合物粒子が形成される。
【0030】
その後、シリコン中間合金7を溶湯元素の溶湯に浸漬させる。シリコン中間合金7を溶融金属浴中に浸漬させると、溶湯元素がシリコン中間合金7中に浸透する。この際、中間合金元素は溶湯元素と合金固相を形成しながら、更に溶湯元素が浸透してくることで液相を形成する。この液相領域内にシリコン原子と複合体元素が残される。このシリコン原子や複合体元素が、拡散した状態から凝集する際に、シリコン微粒子3が析出し、シリコン原子と複合体元素の合金のネットワークができ、三次元網目構造が形成される。つまり、図2(b)に示すように、シリコン中間合金7の中間合金元素が、溶湯中に溶出するなどして、第2相9を形成し、シリコンがシリコン微粒子3として析出する。第2相9は、中間合金元素と溶湯元素の合金であるか、中間合金元素と置換した溶湯元素で構成される。また、シリコン化合物粒子5は、溶湯元素の溶湯には影響されずにそのまま残る。これらのシリコン微粒子3、シリコン化合粒粒子5は、互いに接合し、三次元網目構造を形成する。
【0031】
なお、溶融金属浴への浸漬工程では、シリコン単独のシリコン初晶や、シリコンと複合体元素との化合物は、溶湯元素が浸透してきても、シリコン原子や複合体元素の再凝集を起こさず、シリコン初晶や複合体元素の化合物がそのまま残る。その為に、シリコン中間合金7の作製時の冷却速度を高めて、これらの粒径制御をすることが好ましい。
【0032】
その後、図2(c)に示すように、酸やアルカリなどを用いた脱成分腐食などの方法により、第2相9を除去すると、シリコン微粒子3とシリコン化合物粒子5が接合した多孔質シリコン複合体粒子1が得られる。
【0033】
以上の工程より、中間合金元素と複合体元素と溶湯元素には、以下の条件が必要となる。
・条件1:シリコンの融点より、溶湯元素の融点が50K以上低いこと。
仮に溶湯元素の融点とシリコンの融点が近いと、シリコン中間合金を溶湯元素の溶湯に浸漬する際、シリコンが溶湯中に溶解してしまうため、条件1が必要である。
・条件2:シリコンと中間合金元素を凝固させた際にSi初晶が発生しないこと。
シリコンと中間合金元素の合金を形成する際に、シリコン濃度が増加する場合に過共晶領域になると粗大なシリコン初晶が形成される。このシリコン初晶は浸漬工程中での、シリコン原子の拡散・再凝集が生じず、三次元網目構造を形成しない。
・条件3:溶湯元素へのシリコンの溶解度が5原子%よりも低いこと。
中間合金元素と溶湯元素が第2相を形成する際、シリコンを第2相に含まないようにする必要があるためである。
・条件4:中間合金元素と溶湯元素とが2相に分離しないこと。
中間合金元素と溶湯元素が2相に分離してしまう場合、シリコン中間合金より中間合金元素が分離されず、シリコン原子の拡散・再凝集が生じない。さらには、酸による処理を行っても、シリコン粒子中に中間合金元素が残ってしまう。
【0034】
・条件5:シリコンと複合体元素とが、2相に分離しないこと。
シリコンと複合体元素が2相に分離しやすい場合、最終的にシリコンと複合体元素の合金からなるシリコン化合物粒子が得られない。
・条件6:溶湯元素に対応する中間合金元素は、選択可能な元素に複合体元素を含まないこと。
複合体元素が、中間合金元素として選択可能な元素であり、前述のような中間合金元素の特徴を備える場合、溶湯元素と複合体元素が第2相を形成し、酸による処理を行う際に複合体元素が除去されてしまう。
【0035】
以上の条件1〜6を考慮すると、多孔質シリコン複合体を製造するために使用可能な中間合金元素と、複合体元素と、溶湯元素の組み合わせ及び得られた多孔質シリコン複合体の空隙率は、以下のようになる。また、複合体元素の割合がシリコンの1〜33原子%である。さらに、シリコンの割合は、シリコンと中間合金元素と前記複合体元素の和に対して10原子%以上であり、中間合金元素に対応する下記表1中のSi最大含有量の値(複数の中間合金元素を含む場合は、それぞれの中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量を、中間合金元素の割合に応じて案分した値)以下である。また、中間合金元素が複数含まれる場合には、それぞれの中間合金元素に共通して使用可能な複合体元素と溶湯元素を用いる。
【0036】
【表1】

【0037】
シリコン中間合金7を形成する工程において、シリコン(X原子%)と中間合金元素(Y原子%)と1つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)が、以下の式を満足する組成を有するシリコン中間合金を作製することが好ましい。なお、[Si最大含有量]は、中間合金元素に対応する前記表1中のSi最大含有量の値であり、中間合金元素が複数ある場合は、各中間合金元素のSi最大含有量を各中間合金元素の割合で案分した値である。また、中間合金元素が複数ある倍は、Y原子%は、複数の中間合金元素の割合の和である。
10≦X<[Si最大含有量] (1)
10≦a÷(a+Y)×100≦[Si最大含有量] (2)
但し、a=X−1.5×(Z+Z+Z、・・・・)
【0038】
(多孔質シリコン複合体粒子の第1の製造方法)
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子の製造方法について説明する。
まず、シリコンと、表1に記載のCo,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Ni,P,Ti,Zrからなる群より選ばれた1以上の中間合金元素と、中間合金元素に対応する表1に記載の一つ以上の複合体元素を用い、シリコン、中間合金元素、複合体元素を配合した混合物を真空炉などで加熱し、溶解する。この際、シリコンと中間合金元素の合金と、シリコンと複合体元素の化合物が形成される。
その後、例えば、図3に示すような単ロール鋳造機11などを用いて、溶融したシリコン合金13を、るつぼ15より滴下し、回転する鋼製ロール17に接しながら凝固させリボン状シリコン中間合金19もしくは線状シリコン中間合金を製造する。シリコン中間合金の凝固時の冷却速度は10K/s以上、好ましくは100K/s以上、より好ましくは200K/s以上である。この冷却速度の高速化は、ミクロ組織的に凝固初期に生成するシリコン化合物粒子を小さくすることに寄与するものである。シリコン化合物粒子の大きさを細かくすることは、次工程での熱処理時間を短縮することに寄与するものである。リボン状シリコン中間合金19もしくは線状のシリコン中間合金の厚さは0.1μm〜2mmであり、好ましくは0.1〜500μmであり、更に0.1〜50μmであることが好ましい。または、シリコン中間合金を、線状やリボン状とは異なり、一定の長さを持つ箔片状としてもよい。
【0039】
次に、シリコン中間合金を、表1に記載の中間合金元素に対応するAg、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znの少なくとも1つ以上から選択された溶湯元素の金属浴に浸漬させ、Siをスピノーダル分解させ、中間合金元素と溶湯元素の合金である第2相もしくは中間合金元素と置換した前記溶湯元素で構成される第2相を形成させる。浸漬工程は、例えば、図4に示すような溶湯浸漬装置21を用い、リボン状シリコン中間合金19もしくは線状シリコン中間合金を、溶湯元素の溶湯23に浸漬する。その後、シンクロール25やサポートロール27を介して巻き取られる。溶湯23は、溶湯元素の液相線温度より10K以上高い温度に加熱してある。溶湯23への浸漬は、溶湯温度にもよるが、5秒以上10000秒以下であることが好ましい。10000秒以上浸漬を施すと粗大Si粒が生成するためである。浸漬後のリボン状シリコン中間合金19を非酸化性雰囲気下で冷却し、シリコン微粒子3、シリコン化合物粒子5、第2相9の複合体を得る。
【0040】
その後、中間合金元素と溶湯元素の合金である第2相9もしくは中間合金元素と置換した前記溶湯元素で構成される第2相9を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくとも1つ以上で溶解してその第2相9のみを取り除き洗浄・乾燥する。酸としては、中間合金元素と溶湯元素を溶解させ、シリコンを溶解しない酸であればよく、硝酸、塩酸、硫酸などが挙げられる。もしくはこの第2相9を昇温減圧してその第2相のみを蒸発除去することで除去する。
【0041】
なお、第2相9を除去した後は、多孔質シリコン複合体粒子1の粗大な凝集体が得られるので、ボールミルなどで粉砕し、凝集体の平均粒径が0.1μm〜20μmになるようにする。
【0042】
(多孔質シリコン複合体粒子1の第1の製造方法の他の例)
多孔質シリコン複合体粒子1の第1の製造方法の他の例として、線状やリボン状シリコン中間合金19に代えて、粉末状、粒状、塊状のシリコン中間合金を用いても良い。
まず、シリコンと、表1に記載のCo,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Ni,P,Ti,Zrからなる群より選ばれた1以上の中間合金元素と、中間合金元素に対応する表1に記載の1つ以上の複合体元素を用い、シリコン、中間合金元素、複合体元素を配合した混合物を真空炉などで加熱し、溶解する。
その後、図5(a)、(b)に示すようなアトマイズ法で略球状の粒・粉状のシリコン中間合金を製造する方法や、図6に示すインゴット製造法で塊状の鋳塊を得て、必要に応じて更に機械的な粉砕を行う方法で粉末状、粒状または塊状のシリコン中間合金を製造する。
【0043】
図5(a)は、ガスアトマイズ法により粉末状シリコン中間合金39を製造可能なガスアトマイズ装置31を示す。るつぼ33中には、誘導加熱などにより溶解したシリコンと中間合金元素と複合体元素のシリコン合金13があり、このシリコン合金13をノズル35から滴下すると同時に、不活性ガスや空気などの噴出ガス36が供給されたガス噴射機37からのガスジェット流38を吹き付けて、シリコン合金13の溶湯を粉砕して、液滴として凝固させて粉末状シリコン中間合金39を形成する。
【0044】
図5(b)は、回転円盤アトマイズ法により粉末状シリコン中間合金51を製造可能な回転円盤アトマイズ装置41を示す。るつぼ43中には、溶解したシリコンと中間合金元素と複合体元素のシリコン合金13があり、このシリコン合金をノズル45から滴下させ、シリコン合金13の溶湯を高速で回転する回転円盤49上に落下させて、接線方向に剪断力を加えて破砕して粉末状シリコン中間合金51を形成する。
【0045】
図6は、インゴット製造法により塊状シリコン中間合金57を形成する工程を説明する図である。まず、シリコン合金13の溶湯をるつぼ53から鋳型55に入れる。その後、鋳型55内でシリコン合金13が冷却され、固まった後に鋳型55を除去して塊状シリコン中間合金57が得られる。塊状シリコン中間合金57をそのまま用いても良いし、または必要に応じて粉砕して、粒状シリコン中間合金として用いても良い。
【0046】
粉末状、粒状または塊状のシリコン中間合金の粒径は10μm〜50mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10mmであり、更に1〜5mmであることが好ましい。シリコン合金の凝固時の冷却速度は0.1K/s以上である。なお、シリコン中間合金の厚みが50mm以上に厚くなると、熱処理時間が長くなることから多孔質シリコン複合体粒子の粒径が成長し、粗大化することから好ましくない。その場合は、このシリコン中間合金に機械式粉砕を施し、厚みを50mm以下にすることで対応できる。
【0047】
次に、シリコン中間合金を、使用した中間合金元素に対応する表1に記載の溶湯元素の溶湯に浸漬させ、シリコンのスピノーダル分解と中間合金元素と溶湯元素の合金である第2相を形成させる。なお、この溶湯中の酸素は予め100ppm以下、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは2ppm以下に低減しておくことが望ましい。これは溶湯中の溶存酸素とシリコンが反応してシリカを形成し、これを核としてシリコンがファセット状に成長し、粗大化する為である。その対策として、木炭・黒鉛などの固体還元材や非酸化性ガスにより還元することができるし、また酸素との親和力が強い元素を予め添加することでも良い。この浸漬工程で初めてシリコン微粒子が形成される。
【0048】
浸漬工程は、図7(a)に示すような溶湯浸漬装置61を用い、粒状シリコン中間合金63を浸漬用籠65に入れ、溶湯元素の溶湯69に浸漬する。その際に、図7(a)に示すように、押し付けシリンダー67を上下させて、シリコン中間合金もしくは溶湯へ機械式の振動を与えることや、超音波による振動を付与させること、図7(b)に示す機械式撹拌機81を用いた機械攪拌、ガス吹き込みプラグ83を用いたガスインジェクションや電磁力を用いて溶湯を攪拌することで、短時間に反応を進めることができる。その後、非酸化性雰囲気下に引き上げられて冷却される。溶湯69または79は、溶湯元素の液相線温度より10K以上高い温度に加熱してある。溶湯への浸漬は、溶湯温度にもよるが、5秒以上10000秒以下であることが好ましい。10000秒以上浸漬を施すと粗大Si粒が生成するためである。なお、シリコン中間合金の前述の粉末状、粒状、塊状という形状は、アスペクト比の小さい形状(アスペクト比5以下)のシリコン中間合金を、大きさにより、粉末、粒、塊と呼んでいるだけで、厳密に定義するわけではない。また、粒状シリコン中間合金63,73,93については、前述の粉末状、粒状、塊状シリコン中間合金を代表して粒状シリコン中間合金と表記している。
【0049】
その後、第1の製造方法と同様に、第2相を除去し、多孔質シリコン複合体粒子を得る。
【0050】
(多孔質シリコン複合体粒子の第2の製造方法)
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子の第2の製造方法について説明する。第2の製造方法では、図8(a)に示すように、シリコンと中間合金元素からなるシリコン中間合金111を形成する。その後、溶湯元素に複合体元素を加えた溶湯に浸漬させることで、図8(b)に示すように、シリコン微粒子3とシリコン化合物粒子5と第2相9を形成する。その後、図8(c)に示すように、第2相9を除去して多孔質シリコン複合体粒子1を得る。
【0051】
以下、第2の製造方法を具体的に説明する。
まず、シリコンの粉末と、表1に記載のCo,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Ni,P,Ti,Zrからなる群より選ばれた1以上の中間合金元素の粉末とを、シリコン(X原子%)、中間合金元素(Y原子%)を式(3)を満足するように溶解する。
X÷(X+Y)×100≦[Si最大含有量] (3)
【0052】
その後、第1の製造方法と同様に、図3に示すような単ロール鋳造機11などを用いて、シリコンと中間合金元素の合金である、リボン状シリコン中間合金19もしくは線状シリコン中間合金を製造する。もしくは、図5(a)、(b)に示すようなアトマイズ法によって粉末状シリコン中間合金を製造する。また、図6に示すようにシリコン中間合金をインゴット鋳造し、これを機械的に粉砕して粒状にしてもよい。
【0053】
次に、シリコン中間合金を、表1に記載の中間合金元素に対応するAg、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znの少なくとも1つ以上の溶湯元素に、表1に記載の中間合金元素に対応する一つ以上の複合体元素を各々10原子%以下、合計で20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させ、Siのスピノーダル分解と、Siと複合体元素との化合物の形成と、中間合金元素と溶湯元素の合金である第2相及び/または中間合金元素と置換した前記溶湯元素で構成される第2相を形成させる。浸漬工程は、図4に示すような溶湯浸漬装置21を用い、リボン状シリコン中間合金19もしくは線状シリコン中間合金を、溶湯元素の溶湯23に浸漬するか、図7に示すような溶湯浸漬装置または溶湯処理装置を用い、粒状シリコン中間合金を、溶湯元素の溶湯に浸漬する。溶湯23は、溶湯元素の液相線温度より10K以上高い温度に加熱してある。溶湯23への浸漬は、溶湯温度にもよるが、5秒以上10000秒以下であることが好ましい。10000秒以上浸漬を施すと粗大Si粒が生成するためである。これを非酸化性雰囲気下で冷却し、シリコン微粒子3、シリコン化合物粒子5、第2相9の複合体を得る。
【0054】
なお、このシリコン中間合金を、中間合金元素に対応する表1に記載の溶湯元素の浴に浸漬させた後に、中間合金元素に対応する表1に記載の溶湯元素に、中間合金元素に対応する表1に記載の複合体元素からなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴に浸漬させてもよい。
【0055】
その後、第1の製造方法と同様に第2相9のみを除去して、多孔質シリコン複合体粒子1を得る。
【0056】
(多孔質シリコン複合体粒子の効果)
本発明によれば、従来にない3次元網目状構造を有する多孔質シリコン複合体粒子を得ることができる。
【0057】
本発明によれば、粒子の全体がほぼ均一な細孔構造を有する多孔質シリコン複合体粒子を得ることができる。これは、溶湯内でのシリコン中間合金からのシリコン微粒子の析出は、高温の溶湯金属中で行うため、粒子内部まで溶湯金属が浸透するためである。
【0058】
本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子は、リチウムイオン電池の負極活物質として使用すれば、高容量で長寿命の負極を得ることができる。特に、複合体元素は、シリコンに比べてリチウムを吸蔵しにくい元素であるため、リチウムイオンの吸蔵時に複合体元素は膨張し難いため、シリコンの膨張が抑制され、より長寿命の負極を得ることができる。また、シリコンと複合体元素との化合物であるシリコン化合物粒子は、シリコンに比べて導電性が高いため、本発明に係る多孔質シリコン複合体粒子は、通常のシリコン粒子に比べて急速な充放電に対応できる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
Si:Fe:Mg=25:5:70(原子%)の割合でシリコン粉末(塊状 純度95.0%以上)と鉄粉末(粒状:2mm、純度:99.999%以上)とマグネシウム粉末(粉末 純度:98.0%以上)を配合し、これをアルゴン雰囲気中にて1120℃で溶解した。その後、単ロール鋳造機を用いて冷却速度:800K/sで急冷し板厚40μmのシリコン合金製リボンを作製した。これを500℃のビスマス溶湯に1分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この処理により、シリコン微粒子と、Si−Fe合金からなるシリコン化合物粒子と、Mg−Bi合金またはBiからなる第2相の複合体が得られた。この複合体を硝酸20%水溶液中に5分浸漬させ、多孔質シリコン複合体粒子を得た。
【0060】
[実施例2〜8、10、11]
各実施例、比較例の製造条件を、表2にまとめた。実施例2〜8、10、11は、表2に示す中間合金元素、複合体元素、各元素の配合比率、などの製造条件にて、他は実施例1の方法と同様にして多孔質シリコン複合体を得た。なお、実施例4においては、連続したリボン状のシリコン合金を形成できず、1〜2cmで切れてしまったため、箔片状のシリコン合金となった。実施例5の線状シリコン中間合金でのφ100μmとは、線状の中間合金の直径が100μmであることを意味する。実施例8でも同様である。
【0061】
[実施例9]
Si:V:P=40:1:59(原子%)の割合でシリコン粉末とバナジウム粉末とリン粉末を配合し、これをアルゴン雰囲気中にて1439℃で溶解した。その後、ガスアトマイズ装置を用いて冷却速度:800K/sで急冷し平均粒径40μmの粒状のシリコン合金を作製した。これを750℃のカドミウム溶湯に1分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この処理により、シリコン微粒子と、SiとVの合金からなるシリコン化合物粒子と、P−Cd合金またはCdからなる第2相の複合体が得られた。この複合体を硝酸20%水溶液中に5分浸漬させ、多孔質シリコン複合体粒子を得た。また、粒状中間合金でのφ40μmとは、粒状中間合金の平均粒径が40μmであることを意味する。
【0062】
[実施例12]
Si:Mg=31:69(原子%)の割合でシリコンとマグネシウムを配合し、これをアルゴン雰囲気中にて溶解した。その後、鋳型内で冷却し、5mm角の大きさのシリコン合金製インゴットを作製した。これを1原子%のヒ素を含むビスマス溶湯に1分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この処理により、シリコン微粒子と、Si−As合金からなるシリコン化合物粒子と、Mg−Bi合金またはBiからなる第2相の複合体が得られた。この複合体を硝酸20%水溶液中に50分浸漬させ、多孔質シリコン複合体粒子を得た。
【0063】
[実施例13〜16]
実施例13〜16は、表2に示す中間合金元素、各元素の配合比率、などの製造条件にて、他は実施例12の方法と同様にして多孔質シリコン複合体粒子を得た。なお、実施例13,15,16は、水冷式ブロックを用いて冷却速度を高めている。
【0064】
【表2】

【0065】
[比較例1]
Si:Fe:Mg=55:1:44(原子%)の割合でシリコン粉末と鉄粉末とマグネシウム粉末を配合し、これを真空炉中にて1195℃で溶解した。その後、銅ブロックを用いて鋳造し、冷却速度:1K/sで5mm角のシリコン合金製ブロックを作製した。これを500℃のビスマス溶湯に10分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この2相複合体を硝酸20%水溶液中に50分浸漬させた。本比較例は、式(2)のa÷(a+Y)×100≦[Si最大含有量]を満足しない。
[比較例2]
Si:Fe:Mg=25:11:64(原子%)の割合でシリコン粉末と鉄粉末とマグネシウム粉末を配合し、これを真空炉中にて1105℃で溶解した。その後、銅ブロックを用いて鋳造し、冷却速度:1K/sで5mm角のシリコン合金製ブロックを作製した。これを500℃のビスマス溶湯に10分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この2相複合体を硝酸20%水溶液中に50分浸漬させた。本比較例は、式(2)の10≦a÷(a+Y)×100を満足しない。
[比較例3]
Si:Mg=24:76(原子%)の割合でシリコン粉末とマグネシウム粉末を配合し、これを真空炉中にて1095℃で溶解した。その後、水冷銅ブロックを用いて鋳造し、冷却速度:41K/sで5mm角のシリコン合金製ブロックを作製した。これを500℃のビスマス85原子%とニッケル15原子%の合金浴に10分浸漬させた後に、直ちにアルゴンガスにて急冷した。この2相複合体を硝酸20%水溶液中に50分浸漬させた。本比較例は、合金浴中の単独の複合体元素の濃度が10原子%を超えている。
【0066】
[比較例4]
Si:Fe=90:10(原子%)の割合でシリコン粉末と鉄粉末を配合し、これを真空炉中にて1390℃で溶解した。その後、単ロール鋳造機を用いて冷却速度:110K/sで急冷しシリコン合金製箔片を作製した。これをフッ硝酸に10分浸漬させた後に、水洗した。
[比較例5]
Si:Fe=66:34(原子%)の割合でシリコン粉末と鉄粉末を配合し、これを真空炉中にて1250℃で溶解した。その後、ガスアトマイズ装置で急冷凝固を行い、FeSi金属間化合物を作製した。これを篩に掛けて粒径分布1〜10μmの粒子を回収した。この粒子と平均粒径5μmのシリコン粒子(SIE23PB、高純度化学研究所製)を2:1で混合し、結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)を用いて造粒した。
【0067】
[評価]
多孔質シリコン複合体粒子の粒子形状の観察を、走査透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM 3100FEF)を用いて行った。図9に、実施例1に係る粒子の表面のSEM写真を示し、図10に、実施例1に係る粒子内部の断面のSEM写真を示し、図11に、実施例1に係る粒子の表面のSEM写真を示す。図9、図10には、粒径20nm〜50nmのシリコン微粒子が互いに接合して多数集まり、多孔質シリコン複合体粒子を形成していることが観察される。また、図9と図10で、空隙率やシリコン微粒子の粒径に大きな差がないことが観察される。図11には、大きなシリサイドの粒子に、小さなシリコン粒子が接合している様子が観察される。
【0068】
図12は、シリコン複合体粒子を構成するシリコン微粒子のX線回折格子像である。シリコンの結晶由来のスポットが観察され、シリコン微粒子が単結晶である事がわかる。
【0069】
図13は、シリコン複合体粒子を構成するシリコン微粒子のTEM写真であり、左上はTEMでの観察領域での制限視野電子線回折像である。TEM写真において、一つのシリコン微粒子内に粒界がなく、単結晶であることが分かる。また、制限視野電子線回折像において、シリコンの結晶由来のスポットが観察され、やはりシリコン微粒子が単結晶である事がわかる。
【0070】
シリコン微粒子とシリコン化合物粒子の平均粒径は、電子顕微鏡(SEM)の画像情報により測定した。多孔質シリコン複合体粒子を、半径方向で50%以上の表面近傍領域と、半径方向で50%以内の粒子内部領域に分け、それぞれのSEM写真から、それぞれの平均粒径DsとDiを求め、これらの比を計算した。Ds/Diの値は、実施例においては、いずれも0.5〜1.5の間であったが、エッチング法により得た比較例4においては、粒子内部領域に比べて、表面近傍領域の微粒子の平均粒径が小さく、Ds/Diの値が小さくなった。多孔質シリコン複合体粒子の平均粒径は、前述の、SEMの観察とDLSを併用する方法を用いた。
【0071】
シリコン微粒子のSi濃度と、多孔質シリコン複合体粒子のSiと複合体元素の濃度などはICP発光分光分析計により測定した。何れの実施例においても、シリコン微粒子はシリコンを80原子%以上含む。
【0072】
多孔質シリコン複合体粒子の平均空隙率は、水銀圧入法(JIS R 1655)により15mLセルを用いて測定した。
【0073】
また、多孔質シリコン複合体粒子を、半径方向で50%以上の表面近傍領域と、半径方向で50%以内の粒子内部領域に分け、それぞれの領域内の任意の箇所を表面走査型電子顕微鏡で観察し、それぞれの平均空隙率であるXsとXiを求め、XsとXiの比を計算した。実施例においてはXs/Xiの値は、0.5〜1.5の間にあるが、エッチング法により得た比較例4においては、粒子内部領域に比べて、表面近傍領域の細孔構造が発達しているため、Xs/Xiが大きくなった。
【0074】
(粒子を負極に用いた際のサイクル特性の評価)
(i)負極スラリーの調製
シリコン粒子を微粒子化粉砕処理で粗な粒子へ粉砕し、それを造粒することで1〜20μmのポーラス体を成形した。実施例や比較例に係る粒子65質量部とアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)20質量部の比率でミキサーに投入した。さらに結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)5質量%のエマルジョン(日本ゼオン(株)製、BM400B)を固形分換算で5質量部、スラリーの粘度を調整する増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製)1質量%溶液を固形分換算で10質量部の割合で混合してスラリーを作製した。
(ii)負極の作製
調製したスラリーを自動塗工装置を用いて、厚さ10μmの集電体用電解銅箔(古河電気工業(株)製、NC−WS)上に10μmの厚みで塗布し、70℃で乾燥させた後、プレスによる調厚工程を経て、リチウムイオン電池用負極を製造した。
(iii)特性評価
リチウムイオン電池用負極をφ20mmに切り抜き、対極と参照極に金属Liを用い、1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液からなる電解液を中益し、電気化学試験セルを構成した。なお、電気化学試験セルの組み立ては、露点−60℃以下のグローブボックス内で行った。充放電特性の評価は、初回の放電容量及び50サイクルの充電・放電後の放電容量を測定し、放電容量の維持率を算出することによって行った。放電容量は、シリサイドと、リチウムの吸蔵・放出に有効な活物質Siの総重量を基準として算出した。まず、25℃環境下において、電流値を0.1Cの定電流条件で充電を行い、電圧値が0.02V(参照極Li/Li+の酸化還元電位を0V基準とする、以下同じ)まで低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.1Cの条件で、参照極に対する電圧が1.5Vとなるまで放電を行い、0.1C初期放電容量を測定した。なお、0.1Cとは、10時間で満充電できる電流値である。次いで、0.1Cでの充放電速度で上記充放電を50サイクル繰り返した。初期放電容量に対する、充放電を50サイクル繰り返したときの放電容量の割合を百分率で求め、50サイクル後放電容量維持率とした。
【0075】
評価結果を表3にまとめた。なお、実施例13から16、比較例3は、シリコン粒子が大きいことから、乳鉢で粉砕して小さくした粒子を用いて特性評価を行った。例えば、実施例13の多孔質シリコン複合体粒子の平均粒径の130⇒33は、平均粒径130μmであった多孔質シリコン複合体粒子を粉砕して平均粒径33μmの多孔質シリコン複合体粒子を得たということを意味する。
【0076】
【表3】

【0077】
表に示すとおり、各実施例は、各比較例よりも、50サイクル後容量維持率が高く、充放電の繰り返しによる放電容量の低下の割合が小さいので、電池の寿命が長いことが予想される。
各実施例においては、負極活物質が、三次元網目構造を持つ多孔質シリコン複合体粒子であるため、充放電時のLiとSiの合金化・脱合金化による膨張・収縮の体積変化が生じても、シリコン複合体粒子の割れや微粉化を生じず、放電容量維持率が高い。
【0078】
更に詳細に比較すると比較例1では、中間合金作製時に初晶として純Siが晶出し、更に凝固末期に共晶組織(SiとMgSi)が生成した。この初晶Siは10μm程度と粗大なものであった。これは、ビスマス溶湯へ浸漬させても微細化せず、エッチング工程を経てもそのままの形で残存した。その為に、Liの侵入・放出を繰返す際に、粗大SiをはじめとするSi単体が充放電=LiとSiの合金化・脱合金化による膨張・収縮の体積変化に追従できずに、割れや崩壊を起こり、集電パスや電極機能が失われた割合が多くなり、電池の寿命が短くなったと考えられる。
【0079】
比較例2では、シリコンに比べて複合体元素である鉄の量が多く、ほとんどのシリコンがシリサイドを形成してしまったため、放電容量が小さかった。
【0080】
比較例3では、浸漬した溶湯に添加した複合体元素であるNiの量が多く、ほとんどのシリコンがシリサイドを形成してしまったため、放電容量が小さかった。
【0081】
比較例4では、フッ酸や硝酸によるエッチングにより細孔構造を形成したため、粒子中心部に細孔が形成されない箇所が形成された。この芯の部分が、充放電による体積変化に追従できず、サイクル特性が悪いと考えられる。
【0082】
比較例5では、細孔構造を持たない単なる粒子であるため、充放電による体積変化に追従できず、サイクル特性が悪いと考えられる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明にかかる多孔質シリコン複合体粒子は、リチウムイオン電池の負極に用いられるだけでなく、リチウム・イオン・キャパシタの負極、太陽電池、発光材料、フィルター用素材としても用いられることができる。
【符号の説明】
【0085】
1………多孔質シリコン複合体粒子
3………シリコン微粒子
5………シリコン化合物粒子
S………表面近傍領域
I………粒子内部領域
7………シリコン中間合金
9………第2相
11………単ロール鋳造機
13………シリコン合金
15………るつぼ
17………鋼製ロール
19………リボン状シリコン中間合金
21………溶湯装置
23………溶湯
25………シンクロール
27………サポートロール
31………ガスアトマイズ装置
33………るつぼ
35………ノズル
36………噴出ガス
37………ガス噴射機
38………ガスジェット流
39………粉末状シリコン中間合金
41………回転円盤アトマイズ装置
43………るつぼ
45………ノズル
49………回転円盤
51………粉末状シリコン合金
53………るつぼ
55………鋳型
57………塊状シリコン中間合金
61………溶湯浸漬装置
63………粒状シリコン中間合金
65………浸漬用籠
67………押付けシリンダー
69………溶湯
71………溶湯浸漬装置
73………粒状シリコン中間合金
75………浸漬用籠
79………溶湯
81………機械式撹拌機
83………ガス吹き込みプラグ
111………シリコン中間合金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン微粒子とシリコン化合物粒子が接合してなる多孔質シリコン複合体粒子であって、
前記シリコン化合物粒子は、シリコンと、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素との化合物を含み、
前記多孔質シリコン複合体粒子の平均粒径が、0.1μm〜1000μmであり、
多孔質シリコン複合体粒子が、連続した空隙からなる三次元網目構造を有する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子。
【請求項2】
前記シリコン微粒子の平均粒径または平均支柱径が、2nm〜2μmであり、
前記シリコン微粒子が、酸素を除く元素の比率でシリコンを80原子%以上含む中実なシリコン微粒子である
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
【請求項3】
前記シリコン化合物粒子の平均粒径が50nm〜50μmであり、
前記シリコン化合物粒子が、酸素を除く元素の比率で、50〜90原子%のシリコンを含むことを特徴とする中実なシリコン化合物の粒子である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
【請求項4】
前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以上の表面近傍領域の前記シリコン微粒子の平均粒径Dsと、前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以内の粒子内部領域の前記シリコン微粒子の平均粒径Diの比であるDs/Diが、0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
【請求項5】
前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以上の表面近傍領域の空隙率Xsと、前記多孔質シリコン複合体粒子の半径方向で50%以内の粒子内部領域の空隙率Xiの比であるXs/Xiが、0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子。
【請求項6】
シリコンと、1つ以上の下記表1に記載の中間合金元素と、1つ以上の下記表1に記載の複合体元素との合金であり、前記複合体元素の割合が前記シリコンの1〜33原子%であり、多孔質シリコン複合体の前記シリコンの割合が10原子%以上であり、含有する前記中間合金元素に対応する下記表1中のSi最大含有量の値以下であるシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記中間合金元素に対応する下記表1記載の1つ以上の溶湯元素の溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記中間合金元素と前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成される
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【表1】

【請求項7】
前記工程(a)において、
シリコン(X原子%)と中間合金元素(Y原子%)と1つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)が、以下の式を満足する組成を有するシリコン中間合金を作製することを特徴とする請求項6に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
10≦X<[Si最大含有量] 式(1)
10≦a÷(a+Y)×100≦[Si最大含有量] 式(2)
但し、a=X−1.5×(Z+Z+Z、・・・・)
[Si最大含有量]は、含有する中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量である。
【請求項8】
シリコンと、表1に記載の一つ以上の中間合金元素との合金であり、シリコンの割合が全体の10原子%以上であり、含有する前記中間合金元素に対応する表1中のSi最大含有量の中で最も高い値以下であるシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記中間合金元素に対応する表1記載の1つ以上の溶湯元素の溶湯であって、前記中間合金元素に対応する表1記載の1つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下含む合金浴に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、
を具備し、
前記第2相が、前記中間合金元素と前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成される
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a)において、
前記シリコン中間合金が、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状、箔片状または線状であるか、粒径10μm〜50mmの粉末状、粒状または塊状であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記工程(c)が、
前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、
または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項11】
前記工程(a)が、
前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、単ロール鋳造機もしくは双ロール鋳造機によりリボン状もしくは薄板状のシリコン中間合金を製造する工程であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項12】
前記工程(a)が、
前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、アトマイズ法を用いて粉末状のシリコン中間合金を製造する工程であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記工程(a)が、
前記シリコンと前記中間合金元素と前記複合体元素の溶湯を、鋳型内にて冷却して塊状のシリコン中間合金を製造する工程を含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。

【請求項14】
Cu(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜30原子%(X原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を請求項7の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Cuと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項15】
Cu(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜30原子%(X原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Cuと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項16】
Mg(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜50原子%(X原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を請求項7の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Mgと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項17】
Mg(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜50原子%(X原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Tl、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Mgと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項18】
Ni(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜55原子%(Y原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を請求項7の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Niと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項19】
Ni(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜55原子%(Y原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Al、Be、Cd、Ga、In、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Mn、Mo、Nb、Nd、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Ti、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Niと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項20】
Ti(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜80原子%(Y原子%)で、As、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素(Z、Z、Z、・・・・原子%)を請求項7の式(1)、(2)を満足するように配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粉末状・粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯に浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Tiと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。
【請求項21】
Ti(Y原子%)に、シリコンの割合が全体に対して10〜80原子%(Y原子%)を配合し、厚さ0.1μm〜2mmのリボン状・箔片状・線状、または粒径10μm〜50mmの粒状・塊状のシリコン中間合金を作製する工程(a)と、
前記シリコン中間合金を、Ag、Al、Au、Be、Bi、Cd、Ga、In、Pb、Sb、Sn、Znからなる群より選ばれる1以上の溶湯元素を主成分とした溶湯にAs、Ba、Ca、Ce、Cr、Co、Er、Fe、Gd、Hf、Lu、Mg、Mn、Mo、Nb、Nd、Ni、Os、Pr、Pt、Pu、Re、Rh、Ru、Sc、Sm、Sr、Ta、Te、Th、Tm、U、V、W、Y、Yb、Zrからなる群より選ばれた一つ以上の複合体元素を各10原子%以下、合計20原子%以下添加し作製された合金浴へ浸漬させて、シリコン微粒子と、シリコンと前記複合体元素のシリコン化合物粒子と、第2相と、に分離させる工程(b)と、
前記第2相を取り除く工程(c)と、を具備し、
前記第2相が、前記Tiと前記溶湯元素の合金及び/又は前記溶湯元素で構成され、
前記工程(c)が、前記第2相を、酸、アルカリ、有機溶剤の少なくても1つ以上で溶解して除去する工程、または、昇温減圧して前記第2相のみを蒸発して除去する工程を具備する
ことを特徴とする多孔質シリコン複合体粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−82126(P2012−82126A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195751(P2011−195751)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】