説明

多孔質材料、多孔質炭素材料及びそれらを用いた吸着材、ガス処理装置

【課題】耐熱性や吸着・脱離連続処理能力に優れ、かつ、水分の存在する大気に触れる環境でも水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能に優れた多孔質材料、前記多孔質材料を熱処理した多孔質炭素材料、及び、それらを用いた吸着材やガス処理装置を提供する。
【解決手段】Si原子と、一般式(1)、(2)及び(3)からなる群より選択される1種以上の有機化合物との共有結合によって形成された三次元的多孔質構造を有する多孔質材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分の存在する大気に触れる環境でも、水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能が影響されない多孔質材料、又は前記多孔質材料を熱処理した多孔質炭素材料及びそれらを用いた吸着材、ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着・脱離連続処理能力(吸着と脱離を連続的に繰り返し処理した際の除去性能)に優れた吸着・脱離材料としてゼオライトを使用することが提案されている。しかしながら、ゼオライトの体積当たりの吸着量を上げるために、ゼオライトを成型して吸着材とした場合においても、その吸着量の向上には限界があった。
【0003】
一方、体積当たりの吸着量を上げるために、非特許文献1では、金属と配位高分子からなり、高比表面積を有する配位高分子金属錯体が提案されており、近年注目されている。しかしながら、配位高分子金属錯体は、大気に触れる環境では、大気成分である水を優先的に吸着し、水以外の吸着物に対する吸着能が消滅するという問題があった。また、配位高分子金属錯体は、大気に触れる環境での耐熱性が低く、吸着と脱離を連続的に繰り返す処理が困難であるという問題もあった。
【0004】
非特許文献2では、上記のような大気に触れる環境下での、水以外の吸着物に対する吸着能、及び、耐熱性という問題を解決すべく、高比表面積を有する疎水性多孔質材料が提案されている。
しかしながら、かかる発明は大気に触れる環境下での、水以外の吸着物に対する吸着能、耐熱性といった点は改良されたが、イソプロピルアルコールやメタノール等の比較的極性の高い物質の吸着能が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 15844-15851
【非特許文献2】Chem. Commun., 2008, 2462-2464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、水分の存在する大気に触れる環境でも水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能、耐熱性、吸着・脱離連続処理能力に優れた多孔質材料、多孔質炭素材料及びそれらを用いた吸着材、ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示すような多孔質材料であれば、水分の存在する大気に触れる環境でも水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能、耐熱性に優れ、かつ、吸着物質を加熱により脱離可能なことから吸着・脱離連続処理能力にも優れた多孔質材料を得られること、またさらに、それを熱処理した多孔質炭素材料は上記性能に加え、導電性、耐久性を向上できることを見出し、本発明の完成に至った。
1.Si原子と、下記一般式(1)、(2)及び(3)からなる群より選択される1種以上の化合物との共有結合によって形成された三次元的多孔質構造を有する多孔質材料。
【化1】

(式中、nは0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、メトキシメチル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。Xは、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。ただし、n=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、Xが炭素原子である場合を除く。)
【化2】

(式中、l、mはそれぞれ0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X、Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xb、Xcはそれぞれ同一芳香環内である限りにおいてその位置は問わない。ただし、l=4、かつ、m=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、X、Xが炭素原子である場合を除く。)
【化3】

(式中、o、qはそれぞれ0〜4、pは0〜6の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X〜Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
2.空気雰囲気下での熱分解温度が180℃以上である前記1.に記載の多孔質材料。
3.30℃、20RH%空気雰囲気下でのイソプロピルアルコール500ppmの吸着率が10wt%以上である前記1.又は2.に記載の多孔質材料。
4.前記1〜3.のいずれかに記載の多孔質材料を400〜2000℃で熱処理して得られる多孔質炭素材料。
5.前記1〜4.のいずれかに記載の多孔質材料又は多孔質炭素材料を含む吸着材。
6.前記1〜4.のいずれかに記載の多孔質材料又は多孔質炭素材料を含む吸着材を用いたガス処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性や吸着・脱離連続処理能力に優れ、かつ、水分の存在する大気に触れる環境でも水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能に優れた多孔質材料、前記多孔質材料を熱処理した多孔質炭素材料、及び、それらを用いた吸着材やガス処理装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の多孔質材料の三次元構造の模式図を示す。
【図2】溶剤蒸気吸着性能試験装置の模式図を示す。
【図3】ガス処理装置の模式図を示す。
【図4】ハニカムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の多孔質材料について説明する。
【0011】
本発明の多孔質材料は、Si原子と下記一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)からなる群より選択される1種以上の化合物との共有結合によって形成された三次元的多孔質構造を有する多孔質材料である。
【0012】
【化1】

(式中、nは0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、メトキシメチル基、炭素数1〜20のアルキル基、6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。Xは、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。ただし、n=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、Xが炭素原子である場合を除く。)
【0013】
【化2】

(式中、l、mはそれぞれ0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X、Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xb、Xcはそれぞれ同一芳香環内である限りにおいてその位置は問わない。ただし、l=4、かつ、m=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、X、Xが炭素原子である場合を除く。)
【0014】
【化3】

(式中、o、qはそれぞれ0〜4、pは0〜6の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X〜Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0015】
上記一般式(1)で表される化学構造としては具体的には、例えば下記のものが好ましい。これらは、1種類であっても、2種以上を組み合わせても構わない。
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
上記一般式(2)で表される化学構造としては具体的には、例えば下記のものが好ましい。これらは、1種類であっても、2種以上を組み合わせても構わない。
【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
上記一般式(3)で表される化学構造としては具体的には、例えば下記のものが好ましい。これらは、1種類であっても、2種以上を組み合わせても構わない。
【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
本発明の多孔質材料の三次元構造の模式図を図1に示す。図1は、一般式(1)、具体的にはアニリンが4個が、Si原子を中心に共有結合により結合し、3次元多孔質構造を形成している様子を示した模式図である。本発明の多孔質材料の細孔径は、一般式(1)、(2)や(3)の分子構造サイズにより決定され構造上一定であり、一般式(1)、(2)や(3)とSi原子が作り出す微空間にガスが吸着されるものと考えられる。
【0025】
例えば、一般式(1)を選択すれば、一般式(2)や(3)を選択した場合よりも、細孔径の小さいものを得ることができ、多孔質材料の比表面積を大きくすることができる。その結果吸着能を高くすることができるため、特に一般式(1)が好ましい。また、一般式(1)、(2)、(3)において、含窒素化合物が極性物質の吸着能向上の点から好ましい。また、アミンやスルホン酸基といった官能基が分子中に存在することが極性物質の吸着能向上の点から好ましい。
【0026】
多孔質材料の製造方法について説明する。
本発明の多孔質材料は、以下のようにして得ることができる。すなわち、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)それぞれの分子両末端がハロゲン原子で置換された有機化合物、Si化合物を触媒存在下溶液中で反応させ、ろ過、乾燥させることにより得ることができる。なお、目的物の生成確認は、例えば赤外測定等により確認することができる。
分子両末端がハロゲン原子で置換された有機化合物におけるハロゲン原子としては、高収率で多孔質材料を得るために、特にBrが好ましい。
本発明の多孔質材料を合成する際に用いるSi化合物とは、例えば、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、ビニルトリメチルシラン、トリメチルシリルメタノール、トリメチルシリルシアニド、オルトけい酸テトラエチル、オルトけい酸テトラメチル等がある。
反応に使用する触媒としては、n−ブチルリチウムが特に好ましい。
反応に使用する溶液は、特に制限されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ジオキサン、エーテル、メタノール等が好ましく、脱水して用いることが好ましい。
各原料の混合比は、特に制限されないが、例えば、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)のそれぞれの分子両末端がハロゲン原子で置換された有機化合物に対し、n−ブチルリチウムを1.5〜3倍モル、Si化合物を0.1〜1倍モル、溶液を30〜100質量部とすることが好ましい。前記混合比以外でも、多孔質材料は得られるが、収率、吸着能が低下する恐れがある。
反応温度は、特に制限されないが、−78〜10℃が好ましく、より好ましくは−68〜0℃、更に好ましくは−60〜−10℃である。反応温度が−78℃未満では反応時間が長くなる傾向にあり、10℃を超える場合は、多孔質材料の収率が低くなったり、吸着能が低くなる恐れがある。
反応時間は、1分〜96時間が好ましく、より好ましくは5分〜72時間、更に好ましくは10分〜48時間である。反応時間が1分未満では多孔質材料の収率が低くなる傾向にあり、96時間を越えると、多孔質材料の分解が起こる恐れがある。
反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましく、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴン、窒素、アンモニア、アセトニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種類の雰囲気下で反応させることが好ましい。活性雰囲気で反応させると、多孔質材料の収率が低くなる恐れがある。反応後の多孔質材料の乾燥は、特に制限されないが、多孔質材料の熱分解温度未満の温度で行う必要があり、例えば、100〜180℃が好ましく、より好ましくは110〜150℃の下、30〜180分真空下で加熱乾燥させることが好ましい。
【0027】
本発明の多孔質材料を合成する際に使用する上述の両末端がBrで置換された有機化合物について説明する。一般式(1)や一般式(2)の分子両末端がBrで置換された有機化合物としては、具体的には、化学式(4),(5)、(6)、(7)で示した有機化合物の分子構造の両末端がBrで置換されたものが例示される。 例えば、1,4−ジブロモテトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモ−2−メトキシ−3−ニトロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ビス−メトキシメチルベンゼン、9,10−ジブロモ−2−メチル−アントラセン、1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラメトキシベンゼン、2,5−ジブロモニトロベンゼン、4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、2,5−ジブロモベンゾトリフルオライド、2,5−ジブロモアニリン、1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼン、2,5−ジブロモヒドロキノン、2,5−ジブロモピリジン、2,5−ジブロモ−3−メチルピリジン、3,6−ジブロモ−2−メチルピリジン、1,4−ジブロモ−2,5−ジメトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン、4,4′−ジブロモ−2−ビフェニルアミン、4,4′−ジブロモオクタフルオロビフェニル4,4′−ジブロモ−3−フェニルピリジン等を好ましく用いることができる。これらは市販品を用いることができる。
【0028】
一般式(3)の分子両末端がBrで置換された有機化合物としては、具体的には、化学式(8)、(9)で示した有機化合物の分子構造の両末端がBrで置換されたものが例示される。
市販品を用いることもできるが、以下のようにして得ることができる。例えば、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴン、窒素、アンモニア、アセトニトリルのような不活性雰囲気下で、116%のポリリン酸に芳香族ジアミン誘導体とブロモ安息香酸誘導体を加え、80〜150℃で、1〜35時間撹拌した後、この反応液を水へ再沈、ろ過、乾燥させることで得ることができる。反応温度が80℃未満では反応時間が長くなる傾向にあり、150℃を超える場合は、分子両末端がBrで置換された有機化合物の熱分解が起こる恐れがある。反応時間が1時間未満では未反応物の割合が高くなり、収率が低くなる傾向にある。反応時間が35時間を越えると、分子両末端がBrで置換された有機化合物の分解が起こる恐れがある。
各原料の混合比は、例えば、芳香族ジアミン誘導体に対し、ブロモ安息香酸誘導体を1.5〜3倍モル、116%のポリリン酸を10〜100質量部の割合で混合することが好ましい。前記混合比以外でも、一般式(3)の分子両末端がBrで置換された有機化合物は得られるが、収率が低くなったり、コストが高くなる恐れがある。
前記芳香族ジアミン誘導体としては、芳香族ジアミンのアミド基に対してオルト位が−OH基、−NH基、−SH基で置換された化合物であり、例えば下記式(10)で表される化合物を用いることができる。これらは市販品を用いることができる。
【0029】
【化10】

【0030】
前記ブロモ安息香酸誘導体は、例えば、下記式(11)で表される化合物を用いることができる。これらは市販品を用いることができる。
【0031】
【化11】

【0032】
次に本発明の多孔質炭素材料について説明する。
本発明の多孔質炭素材料は、前述の多孔質材料を熱処理することにより得ることができる。例えば、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴン、窒素、アンモニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の雰囲気で、好ましくは400〜2000℃、より好ましくは500〜1700℃、さらに好ましくは600〜1500℃で熱処理する。熱処理時間は30分〜4時間が好ましく、より好ましくは1〜3時間、さらにより好ましくは1〜2時間熱処理を行う。熱処理を行うことにより、多孔質材料は炭化され、導電性や耐久性が向上される。熱処理温度が400℃より低い場合や30分より短時間の場合は、導電性や耐久性の向上が不十分であり、2000℃より高い場合や4時間より長時間の場合は、吸着能の低下が起こる可能性がある。多孔質材料にマイクロ波を照射することで、熱処理を行うこともできる。マイクロ波照射について格別の制限はないが、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴン、窒素、アンモニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の雰囲気、又は、減圧条件下で行うことが好ましい。使用するマイクロ波の波長は0.1〜100cmの範囲が好ましく、周波数は300MHz〜30GHzの範囲が好ましい。波長が100cmより大きい場合又は周波数が300MHz未満の場合は、炭化が不十分となる傾向にあり、波長が0.1cm未満又は30GHzより大きい場合は、吸着能の低下が起こる恐れがある。
【0033】
また、本発明の多孔質炭素材料は、熱処理後、酸処理、又は塩基処理することで、金属を除き、比表面積を増大させることも可能である。酸は特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、過酸化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の酸であり、塩基は特に制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ヒドロキシルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の塩基である。処理方法は、例えば、前記酸水溶液、又は前記塩基水溶液に多孔質炭素材料を1〜72時間浸漬することで、金属を除くことができる。
【0034】
本発明の多孔質材料、又は、多孔質炭素材料は、内部に細孔構造を有する多孔質体であるので、吸着材として用いることができる。本発明の多孔質材料、又は多孔質炭素材料は、細孔径が分子レベルで定まっており構造上一定であるため、吸着したガスが脱離しにくいといった問題が少なく、吸着・脱離連続処理能力に優れる。
本発明の多孔質材料料、又は、前記多孔質炭素材料は、例えば、吸着の対象となるガスと接触させることにより、ガスを吸着させることができる。また、加圧条件下で、前記多孔質材料へのガスの吸着処理を行い、加熱、及び/又は、減圧処理することにより、吸着したガスを脱離させてもかまわない。
前記多孔質材料料、多孔質炭素材料は、空気雰囲気下での熱分解温度が180℃以上であることが好ましい。多孔質材料に吸着したガスを脱離させる際、例えば、空気雰囲気下、180℃以上で加熱することにより、吸着したガスを脱離させることができ、吸着と脱離を連続的に繰り返す処理が可能である。空気雰囲気下での熱分解温度が180℃未満では、ガスを脱離させる際、多孔質材料の熱分解が起こり吸着能の低下が起こる恐れがあるため好ましくない。
ここで熱分解温度が180℃以上有するとは、具体的には、例えば市販の熱重量分析装置により空気気流下、10℃/分の昇温速度により熱分解温度の分析を行い、空気雰囲気下での試料重量が5重量%低下した時点の温度が180℃以上有するものを言う。
【0035】
吸着の対象となる物質は、比較的極性の高い物質、比較的極性の低い物質いずれでも良い。前記物質は、例えば、アルデヒド、ケトン、エステル等のカルボニル化合物、オレフィン、アルコール化合物等であり、後記物質は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、1−ブタノール、1−ヘキサノール、キシレン、パラジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニリン、クロロベンゼン、酢酸、ジエチルエーテル、1−4ジオキサン、フレオン、プロピレン、ベンゼン、メチルアミン、アニソール、ニトロベンゼン等が挙げられる。
【0036】
本発明の多孔質材料、多孔質炭素材料は比較的極性の高い物質に対する吸着能に優れる点に特徴を有する。30℃、20RH%空気雰囲気下でのイソプロピルアルコール500ppmの吸着率は10wt%以上が好ましく、より好ましくは15wt%以上、更に好ましくは20wt%以上である。30℃、20RH%空気雰囲気下での多孔質材料のイソプロピルアルコール吸着率は、高いほど好ましく、10wt%未満の場合、吸着材としての性能が低く、ガスを吸着除去する際の多孔質材料の使用量を多くしなければならない。
ここでイソプロピルアルコールの吸着率qは、JIS−K1474に準じて測定することができ、例えば以下のようにして評価することができる。吸着試験用U字管Dに多孔質材料、又は多孔質炭素材料0.5gを入れ、30℃±0.5℃に調整された恒温槽又は恒温水槽Nを有する溶剤蒸気吸着性能試験装置(図2)に設置し、20RH%空気雰囲気下、イソプロピルアルコール500ppmの混合空気を流し、60分間吸着させ、多孔質材料、又は多孔質炭素材料の重量増加を測定することができる。すなわち、吸着率qは下式(1)より算出することができる。
【0037】
〔数1〕
q(%)=P/S×100 (1)
P:多孔質材料、又は多孔質炭素材料の増量(g)
S:多孔質材料、又は多孔質炭素材料の質量(g)
【0038】
吸着材は、前記多孔質材料や多孔質炭素材料を粉末のまま使用しても良いし、あるいは必要によりバインダーや担体などを併用してペレット状や顆粒状に加工し、場合によっては押し出し法などでハニカム状に成形して使用することも可能である。
【0039】
次に本発明のガス処理装置について説明する。本発明のガス処理装置は、特に制限されないが、前記多孔質材料又は多孔質炭素材料を充填、又は、成形したものを、例えば図3に示す模式図のようにライン上の部位Cに配置して用いることができる。
【0040】
本発明のガス処理装置は、図3に特に制限されるものではないが、多孔質材料、又は、多孔質炭素材料を充填、又は、成形したものを図3に示す模式図のようにライン上の部位Cに入れ、吸着工程では、弁Aを開け、弁Bを閉め、吸着させたい物質を通気して吸着除去する操作と、一方で、脱離工程では、弁Bを開け、弁Aを閉め、少量の加熱空気を通気し、吸着された物質を脱離する操作を連続的に繰り返して吸着物を除去することが好ましい。また、脱離された物質は、例えば、燃焼装置により酸化分解処理してもかまわない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、熱分解温度、イソプロピルアルコールの吸着率、イソプロピルアルコール除去率の評価はそれぞれ以下のようにして測定した。
【0042】
[吸着性能の測定(イソプロピルアルコール吸着率qの測定):(JIS−K1474に準ずる)]
吸着試験用U字管Dに多孔質材料、又は多孔質炭素材料0.5gを入れ、30℃±0.5℃に調整された恒温槽又は恒温水槽Nを有する溶剤蒸気吸着性能試験装置(図2)に設置し、500ppmで20RH%のイソプロピルアルコール混合空気を流し、60分間吸着させ、多孔質材料、又は多孔質炭素材料の重量増加を測定した。吸着率qは下式(1)より算出した。
【0043】
〔数1〕
q(%)=P/S×100 (1)
P:多孔質材料、又は多孔質炭素材料の増量(g)
S:多孔質材料、又は多孔質炭素材料の質量(g)
【0044】
[熱分解温度の評価]
市販の熱重量分析装置(TAインスツルメント、TGA2950)により空気気流下、10℃/分の昇温速度により熱分解温度の分析を行い、空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。表中の○は、空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上、×は、空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃未満を示す。
【0045】
[吸着・脱離連続処理の評価:イソプロピルアルコール除去率(η)の測定]
ガス処理装置(図3)を用いて、イソプロピルアルコール除去率(η)の測定を行った。除去率は下式(2)より算出した。また、測定に使用する吸着素子Cには、多孔質材料、又は多孔質炭素材料を70wt%の含有重量で保有した、波長(P)3.1mm、波高(H)2.1mmのハニカム(図4)を25cm×25cm×45cmとなるように積層したものを使用した。
【0046】
吸着・脱離操作は弁Aと弁Bの切り替えで行い、吸着操作では、弁Aを開(弁Bは閉)にして処理ガスであるイソプロピルアルコールを吸着素子Cに一定の時間導入して、処理ガス中のイソプロピルアルコールを吸着除去する。脱離操作では、弁Bを開(弁Aを閉)にして加熱空気を吸着素子Cに一定の時間導入し、吸着したイソプロピルアルコールを脱離して吸着素子の再生を行う。この吸着操作と脱離操作を連続的に行いイソプロピルアルコールを処理する。処理ガス濃度および処理ガス出口濃度の測定は、装置運転開始から1時間毎に、吸着と脱離操作が十分に繰り返されイソプロピルアルコール出口濃度が一定の濃度を示し変化しなくなる、すなわちイソプロピルアルコール出口濃度が安定するまで行った。
【0047】
また、処理ガス条件や装置の運転条件は、
処理ガス イソプロピルアルコール
処理ガス濃度 300(ppm)
吸着風速 1.5(m/s)
吸着風量/脱着風量 7(−)
脱着温度 180(℃)
吸着時間 9〜54(min)
脱着時間 1〜6(min)
【0048】
〔数2〕
η(%)=(I−O)/I×100 (2)
I:処理ガス濃度(ppm)
O:処理ガス出口濃度(ppm)
【0049】
(実施例1)
2,5−ジブロモアニリン3.8gにアルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン300mLを加え、−10℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−10℃で30分間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−10℃で15分間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水3Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、テトラヒドロフラン、エタノールで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0050】
(実施例2)
実施例1で得た多孔質材料を窒素雰囲気、5℃/分で600℃まで加熱し、600℃で1時間熱処理した。その後室温まで放冷し、多孔質炭素材料を得た。
上記多孔質炭素材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質炭素材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質炭素材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0051】
(実施例3)
4,4−ジブロモ−2−ビフェニルアミン4.9gに窒素雰囲気下、エーテル300mLを加え、−60℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−60℃で30分間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−60℃で60分間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水3Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、エーテル、エタノールで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0052】
(実施例4)
実施例3で得た多孔質材料を窒素雰囲気、5℃/分で800℃まで加熱し、800℃で2時間熱処理した。その後室温まで放冷し、多孔質炭素材料を得た。
上記多孔質炭素材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質炭素材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質炭素材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0053】
(実施例5)
実施例4で得た多孔質炭素材料を3M塩酸水溶液中、60℃で24時間撹拌し、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水で十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させた。
上記多孔質炭素材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質炭素材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質炭素材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0054】
(実施例6)
116%のポリリン酸59.3gに窒素雰囲気下、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン四塩酸塩8.5gと5−ブロモ−2−ピリジン安息香酸12.3gを加え、120℃で、21時間撹拌した後、反応液を水1L中へ再沈して、析出してきた粉末を吸引ろ過より取り出した。得られた粉末を水で十分に洗浄した後、90℃で真空乾燥し、ジブロモビスベンゾイミダゾール誘導体を得た。
前記ジブロモビスベンゾイミダゾール誘導体7.0gに窒素雰囲気下、メタノール500mLを加え、−10℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−10℃で2時間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−10℃で12時間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水5Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、メタノールで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0055】
(実施例7)
116%のポリリン酸59.3gに窒素雰囲気下、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩7.4gと4−ブロモ安息香酸12.3gを加え、80℃で、35時間撹拌した後、反応液を水1L中へ再沈して、析出してきた粉末を吸引ろ過より取り出した。得られた粉末を水で十分に洗浄した後、90℃で真空乾燥し、ジブロモビスベンゾチアゾール誘導体を得た。
前記ジブロモビスベンゾチアゾール誘導体7.5gにアルゴン雰囲気下、1,4−ジオキサン500mLを加え、−10℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−10℃で5時間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−10℃で24時間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水5Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、1,4−ジオキサンで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0056】
(実施例8)
116%のポリリン酸59.3gに窒素雰囲気下、4,6−ジアミノレソルシノール二塩酸塩6.4gと6−ブロモニコチン酸12.1gを加え、150℃で、1時間撹拌した後、反応液を水1L中へ再沈して、析出してきた粉末を吸引ろ過より取り出した。得られた粉末を水で十分に洗浄した後、90℃で真空乾燥し、ジブロモビスベンゾオキサゾール誘導体を得た。
前記ジブロモビスベンゾオキサゾール誘導体7.5gにアルゴン雰囲気下、1,4−ジオキサン500mLを加え、−10℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−10℃で12時間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−10℃で24時間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水5Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、1,4−ジオキサンで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0057】
(実施例9)
実施例8で得た多孔質材料をアルゴン雰囲気、5℃/分で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間熱処理した。その後室温まで放冷し、多孔質炭素材料を得た。
上記多孔質炭素材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質炭素材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質炭素材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0058】
(比較例1)
塩化ニッケル(II)六水和物4.8gにメタノール160mLを加え、室温で15分間撹拌した後、N,N−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン3.3g、p−キシレンジアミン1.4g、37%ホルムアルデヒド水溶液7.2gを加えて、室温で30分間撹拌した。当該混合溶液を5日間リフラックスした後、室温まで冷却し、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末をメタノールで十分に洗浄した後、60℃で真空乾燥させ、ニッケル錯体誘導体を得た。
前記ニッケル錯体誘導体0.6gに水7mLを加え、室温で30分間撹拌し、トリメシン酸0.4gと水酸化ナトリウム0.2gを溶解した水溶液5mLを室温で30分間撹拌して、滴下した。さらに、ジメチルスルホキシド6.6mLとピリジン3.3mLを加え、110℃で30分間加熱した。当該反応液を加熱したろ過装置で吸引ろ過した後、ろ液を室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過より取り出した。前記固体をエタノールで洗浄した後、60℃で真空乾燥させ、配位高分子金属錯体を得た。
上記配位高分子金属錯体の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記配位高分子金属錯体の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0059】
(比較例2)
4,4’−ジブロビフェニル4.7gにアルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン300mLを加え、−10℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウム18.8mLを滴下した。その後、−10℃で30分間撹拌した後、オルトけい酸テトラエチル1.6gを滴下し、−10℃で15分間撹拌した後、冷却を止めて室温となるまで撹拌した。反応液を水3Lに注ぎ、粉末を吸引ろ過より取り出した。当該粉末を水、テトラヒドロフラン、エタノールで十分に洗浄した後、110℃で真空乾燥させ、多孔質材料を得た。
上記多孔質材料の空気雰囲気下での5重量%熱分解温度が180℃以上であるか評価した。また、上記多孔質材料の加湿下でのイソプロピルアルコール吸着率評価を実施した。その結果を表1に示す。
次に、上記多孔質材料をガス処理装置(図3)に適応して、ライン上の部位Cに入れ、吸着操作ではイソプロピルアルコール300ppmの40℃、60RH%のガスを通気して、イソプロピルアルコールを吸着除去する操作と、一方で、脱離操作では、吸着操作に通気する風量に対して、1/7の風量の180℃の加熱空気を通気し、イソプロピルアルコールを脱離する操作を連続的に行い、イソプロピルアルコール除去率を測定した。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、耐熱性や吸脱着といった吸着・脱離連続処理能力に優れ、かつ、水分の存在する大気に触れる環境でも水以外の比較的極性の高い物質に対する吸着能に優れた多孔質材料、前記多孔質材料を熱処理した多孔質炭素材料を容易に得ることができる。本発明の多孔質材料、多孔質炭素材料は、上記のように吸着材として好適に使用できる他、触媒、貯蔵材、分離材、セパレーター、バイオリアクター、分離濃縮等のためのフィルターとしても用いることができる。これらは加圧成型によりペレット化して用いてもかまわない。また、本発明の多孔質材料、多孔質炭素材料は、担体としても用いることができる。例えば、触媒を担持することにより、種々の悪臭成分、揮発性有機化合物(VOC)等を吸着・分解除去することができる。また、電極材としても使用できるなど、上記のような様々な分野において、幅広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si原子と、下記一般式(1)、(2)及び(3)からなる群より選択される1種以上の化合物との共有結合によって形成された三次元的多孔質構造を有する多孔質材料。
【化1】

(式中、nは0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、メトキシメチル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。Xは、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。ただし、n=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、Xが炭素原子である場合を除く。)
【化2】

(式中、l、mはそれぞれ0〜4の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X、Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xb、Xcはそれぞれ同一芳香環内である限りにおいてその位置は問わない。ただし、l=4、かつ、m=4で、Rがすべて水素原子をとり、かつ、X、Xが炭素原子である場合を除く。)
【化3】

(式中、o、qはそれぞれ0〜4、pは0〜6の任意の数を取り、Rは、同一又は相異なる、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数6〜20のフルオロアリール基、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基を表す。Rにおいて、結合位置が隣接する基はそれぞれ任意に結合して環を形成していても良い。X〜Xは、同一又は相異なり、窒素原子、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【請求項2】
空気雰囲気下での熱分解温度が180℃以上である請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
30℃、20RH%空気雰囲気下でのイソプロピルアルコール500ppmの吸着率が10wt%以上である請求項1又は2に記載の多孔質材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質材料を400〜2000℃で熱処理して得られる多孔質炭素材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質材料又は多孔質炭素材料を含む吸着材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質材料又は多孔質炭素材料を含む吸着材を用いたガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−12176(P2011−12176A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157711(P2009−157711)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】