説明

多孔質触媒を含むディーゼルパティキュレートフィルタ

【課題】触媒と粒子状物質(PM)との接触率を高めて、粒子状物質(PM)を効率的に燃焼させることができる、ディーゼルパティキュレートフィルタを提供すること
【解決手段】複数の気孔を有する多孔質担体と、前記多孔質担体の前記気孔内に担持された多孔質触媒とを含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、前記多孔質触媒が、平均気孔径0.1〜100μmと気孔率70体積%以上とを有することを特徴とする、ディーゼルパティキュレートフィルタを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる微粒子状物質(PM)を除去するための耐熱性繊維フェルトに関する。より具体的には、本発明は、当該耐熱性繊維フェルトの繊維間に存在する気孔(空隙)に、多孔質の触媒を充填した耐熱性繊維フェルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル車は、燃費及び耐久性に優れ、日本ではトラックを中心に幅広く使用されている。欧州では、ガソリン車に比べ燃費が2〜3割も良く、地球温暖化ガスCO2の発生量も少ない事から、乗用自動車にも多く利用されている。
一方で、ディーゼルエンジンからは、多量の有害な粒子状物質(PM)及び窒素酸化物(NOx)が排出される。PMは、主に炭素からなる固体塊状物質であり、大気汚染、粉塵公害の原因となるといわれている。PMは、肺や気管などに沈着して呼吸器に悪い影響を与えるほか、発ガン性のおそれが指摘されている。従って、ディーゼルエンジン排ガスからのPMの十分な除去が求められている。
これら粒子状物質(PM)を捕集し、除去する方法として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、Diesel Particulate Filter)をディーゼルエンジンの排ガス側に設ける方法が知られている。特に最近は、ディーゼルパティキュレートフィルタとして、ハニカム構造のフィルターや(特許文献1及び2)、繊維と、該繊維表面に酸化触媒を担持した繊維フィルタが開発されている(特許文献3及び4)。しかし、ここで使用される触媒は、ハニカム構造のフィルタの壁面や繊維フィルタの表面上に担持されているのみであったため、触媒に接触できない粒子状物質(PM)も多く存在していた。また、使用されるPMと触媒は、ともに多孔質ではない粒子形状(球形)であるため、PMと触媒とは1点でしか接触することができず、接触面積が非常に小さかった。
【0003】
【特許文献1】特開平2004−19498号公報
【特許文献2】特開平2004−105792号公報
【特許文献3】特開平2002−97929号公報
【特許文献4】特開平2006−68730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第一の目的は、コージライト製ハニカム、SiC製ハニカム、耐熱繊維フェルト等に担持した触媒によって粒子状物質(PM)を効率的に燃焼し、粒子状物質(PM)をディーゼル機関の排ガスから除去できるディーゼルパティキュレートフィルタを提供することにある。
本発明の第二の目的は、触媒と粒子状物質(PM)との接触率を高めて、粒子状物質(PM)を効率的に燃焼させることができる、ディーゼルパティキュレートフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ディーゼル機関から排出された直後の粒子状物質(PM)は、平均粒径0.02〜0.2μmの粒体(一次粒子)であるが、PMは粘着性があるため、ディーゼル機関から離れる(50cm程度)にしたがって造粒し、平均粒径0.1〜100μm、通常1〜50μmの二次粒子を形成していることに着目した。すなわち、ディーゼルパティキュレートフィルタで除去すべきPMは、上記一次粒子のように粒径の小さなものではなく、平均粒径0.1〜100μmのような粒径の大きな二次粒子である。本発明者らは、このような大きさの二次粒子を捕集するのに適した孔径を有する多孔質担体と多孔質触媒との組み合わせを用いることによって、触媒とPMとの接触率を高め、ひいてはPMを効率的に燃焼させることができることを見いだした。
【0006】
本発明は、
1.複数の気孔を有する多孔質担体と、前記多孔質担体の前記気孔内に担持された多孔質触媒とを含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、前記多孔質触媒が、平均気孔径0.1〜100μmを有することを特徴とする、ディーゼルパティキュレートフィルタに関する。
2.前記多孔質触媒が、白金、銀、酸化セリウム、ペロブスカイト型複合酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタに関する。
3.前記多孔質担体が、耐熱性繊維フェルトであり、前記耐熱性繊維フェルトが気孔率80〜99体積%を有し、前記多孔質触媒が、前記耐熱性繊維フェルトの気孔の50〜95体積%に担持されている、1又は2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタに関する。
4.(a)触媒、造孔剤、溶媒を含む混合溶液を調製する工程;
(b) 前記混合溶液に多孔質担体を浸漬する工程;及び
(c)前記多孔質担体上の前記混合溶液を焼成して造孔剤および溶媒を除去し、前記多孔質担体上に多孔質触媒を担持する工程;
を含む、1〜3の何れか1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタの調製方法に関する。
5.前記造孔剤が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコン樹脂、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、及びこれらのポリマーの重合に用いられるモノマー2種以上を重合して得られる共重合体から選択される、4に記載の方法に関する。
6.前記多孔質担体が気孔率80〜99体積%を有する耐熱性繊維フェルトである、4又は5に記載の方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多孔質触媒は、捕集すべき造粒した二次粒子形態の粒子状物質(PM)の平均粒径0.1〜100μmと同様の0.1〜100μmの平均気孔径を有する。従って、二次粒子形態のPMは、多孔質触媒の気孔に当接して気孔手前にとどまるか、あるいはPMが有する粘着性のため、多孔質触媒の気孔を通過できずに気孔内またはその付近にとどまる。特にディーゼルパティキュレートフィルタ内は排ガスが通過しているので、PMは多孔質触媒の気孔に圧接された状態となる。気孔内またはその付近にとどまったPMは、多孔質触媒と十分に接触した状態を保ちつつ、一定条件下で燃焼し、二酸化炭素(気体)となってディーゼルパティキュレートフィルタから放出・除去される。このように、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、PMと触媒との接触性を向上し、PMの燃焼をすみやかに行うことができる。また、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタを使用することにより、PMと多孔質触媒との十分な接触を達成できるので、PM燃焼開始温度およびPMの燃焼ピーク温度を有意に低下することができる。
さらに、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタを使用することにより、三次元的に触媒とPM粒子が接触し、触媒とPM粒子との接触点が増えることにより、反応点が増えて反応速度即ち燃焼効率が向上する。
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、コージライト製ハニカム、SiC製ハニカム、耐熱性繊維フェルト等の多孔質担体に担持することができる。また、この多孔質担体を補強用の骨格部分として利用し、この多孔質担体の気孔に、所定の多孔質触媒を充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
(1)ディーゼルパティキュレートフィルタ
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、多孔質触媒と、該多孔質触媒を担持したコージライト製ハニカム、SiC製ハニカム、耐熱性繊維フェルト等の多孔質担体とを含む。
【0009】
(1-1)多孔質触媒
本発明で使用される多孔質触媒は、PMの主成分である炭素(C)と、ディーゼル機関から排出される排ガス中に含まれるNO及びNO2等のNOxとの反応を触媒するために使用される。具体的には、本発明で使用される多孔質触媒上において、NOxは、N2に還元される。同時に、PMからのCと、排ガスからのNOx中のOとが酸化反応し、CO2となる。
NO2+C→CO2+N2
(但し、係数は省略)
このような作用を有する触媒としては、例えば、金属触媒が好ましい。金属としては、遷移金属、貴金属等が挙げられる。具体的には、金属元素、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属水酸化物が挙げられる。特に好ましくは、白金、銀、酸化セリウム(セリア)、白金/セリア、銀/セリア、ペロブスカイト型複合酸化物、およびこれらの組み合わせである。
【0010】
ここでペロブスカイト型複合酸化物とは、基本組成ABO3で表され、BO6八面体が立方単位格子の各隅を占めた構造を取るものである。具体的には、本発明のペロブスカイト型複合酸化物触媒は、下記式(I):
pA'1-P13 (I)
(式中、A及びA’は、それぞれ独立して、K、Ni、Sr、La、Cu、V、Cs、Ba、Ce、Li、Pdからなる群から選択され;
Bは、Co、Mn、Feからなる群から選択され、
pは、0.5<p<1.0、好ましくは、0.75≦p≦0.95である)で表すことができる。より好ましくは、La0.9K0.1CoO3、La0.8Sr0.2CoO3又はLa0.75K0.25MnO3である。
【0011】
本発明で使用する多孔質触媒は、複数の気孔を有する。二次粒子形態の粒子状物質(PM)の平均粒径が、0.1〜100μm、通常1〜50μmであることを考慮すると、本発明で使用する多孔質触媒の平均気孔径は、0.1〜100μm、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは20〜30μmである。この気孔に二次粒子形態の粒子状物質(PM)がとどまり、多孔質触媒と粒子状物質(PM)との接触が十分に確保された状態で燃焼反応が進行することになる。平均気孔径が、0.1μm以下であると、二次粒子形態の粒子状物質(PM)がパティキュレートフィルター内部に入って行かず、フィルターの表層に捕集し積層されるので好ましくない。また、100μm以下であれば、二次粒子形態の粒子状物質(PM)を多孔質触媒の気孔で捕捉することができ、かつ、捕捉したPM粒子と触媒との接触が1点ではなく三次元となり、PM粒子と触媒がタイトに接触するので好ましい。なお、上記平均気孔径は、多孔質触媒を製造する際に用いられる造孔剤の平均粒径に等しい。従って、造孔剤の平均粒径をもって多孔質触媒の平均気孔径とみなすことができる。具体的には、造孔剤の粒径は、例えば、造孔剤をイソプロピルアルコール(IPA)に分散させ、レーザー回折式粒度測定器にて測定することができる。造孔剤の平均粒径は、上記のようにして50〜500個、好ましくは100個の造孔剤の粒径の測定し、その平均値を採用する。
加えて、例えば、走査型電子顕微鏡にて写真撮影を行い、画像解析処理により多孔質触媒の平均気孔径を測定することができる。具体的には、例えば、走査型電子顕微鏡等を用いて多孔質触媒の写真を撮影する(例えば、図1)。同写真を画像解析処理を行い、1個の気孔の気孔径を測定する。このとき、多孔質触媒の気孔は、楕円であると仮定して気孔の長軸の長さと短軸の長さを測定し、その平均をもって1個の気孔の径とする。そして、多孔質触媒の平均気孔径は、50〜500個、好ましくは、100個の気孔の径を測定し、これを平均したものを採用することが適当である。
【0012】
本発明で使用する多孔質触媒の気孔率(気孔(空隙)が占める割合)は、気孔を含めた多孔質触媒全体の体積を100体積%とした場合、例えば、70体積%以上、好ましくは、80〜98体積%、より好ましくは、90〜95体積%である。気孔率が70体積%以上であれば、パティキュレートフィルターの通気度が低下することもなく、圧力損失が低く抑えられるので好ましく、98体積%以下であれば、多孔質を形成するのに十分な気孔壁強度を維持でき、多孔質形状の維持ができるので好ましい。
【0013】
(1-2)多孔質担体
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタに使用される多孔質担体は、触媒を担持するのに適した多孔質体であればよいが、例えば、コージライト製ハニカム、SiC製ハニカム、耐熱性繊維フェルト等が挙げられる。多孔質触媒は、強度が弱く、多孔質触媒のみでは形状安定性に劣る。従って、所定の強度と所定の気孔を有する耐熱性繊維フェルト等の多孔質担体を用い、該多孔質担体に多孔質触媒を充填・担持させることによって、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタの強度を保持することができる。
ここで、ハニカムとは、蜂の巣状に多数の気孔(空隙)が貫通している構造体を意味する。蜂の巣状の気孔の形状は、断面が円形でも5〜8角形等の多角形であってもよい。通常、ハニカムを構成する壁の厚さ(壁厚)は、0.01〜1mm、好ましくは、0.15〜0.5mm、より好ましくは、0.25〜0.4mmである。また、気孔の大きさは、例えば水銀圧入法で測定した場合、平均気孔径8〜23μm、好ましくは5〜50μmであることが適当である。
また、フェルトとは、織布および不織布を含む、繊維から製造される布を意味する。本発明で使用される耐熱性繊維フェルトは、繊維と繊維の間に気孔(空隙)を有する。
【0014】
この多孔質担体の空隙の体積(気孔率)は、この気孔(空隙)と担体の構造体部分との双方を含む多孔質担体全体の体積を100体積%とした場合、80〜98体積%、好ましくは、90〜98体積%、より好ましくは、95〜98体積%であることが適当である。ここで、多孔質担体の気孔とは、(気孔も含め)多孔質担体全体が占める体積からハニカムや耐熱性繊維フェルト等の担体の構造体の部分の体積を除いた部分を意味する。従って、多孔質担体の気孔率は以下の式から求められる。

[気孔率](%)=([多孔質担体全体の体積]−[多孔質担体の構造体部分の体積])/[多孔質担体全体の体積]×100

気孔率が80体積%以上あれば、通気度が低下せず、圧力損失が低く抑えられるので好ましく、また98体積%以下であれば、多孔質担体の補強効果が十分に得られるので好ましい。ここで、多孔質担体として耐熱性繊維フェルトを使用する場合、耐熱性繊維フェルトの気孔率は、定荷重時(例えば、200g/cm2荷重時)のフェルト面積と厚み及びフェルト質量を測定し、耐熱性繊維フェルトの体積と同フェルトの耐熱性繊維のみの体積を計算し、
[気孔率](%)=([耐熱性繊維フェルト全体の体積]−[耐熱性繊維の体積])/[耐熱性繊維フェルト全体の体積]×100
からも算出できる。
【0015】
本発明で使用する耐熱性繊維フェルトは、50〜1000g/m2、好ましくは、100〜500g/m2、より好ましくは、150〜400g/m2の目付を有することが適当である。当該目付が、50g/m2以上であれば、繊維が均一に分散し厚さが一定となり、1000g/m2以下であれば、折り曲げ易いなど形状の自由度があるので好ましい。なお、目付は、例えばJIS-L-1096に沿って測定される。
本発明で使用する耐熱性繊維フェルトは、0.01〜0.5g/cm3、好ましくは、0.03〜0.3g/cm3、より好ましくは、0.05〜0.1g/cm3のかさ密度を有することが適当である。当該かさ密度が、0.01g/cm3以上であれば、フェルトとしての形状を十分保持することができ、0.5g/cm3以下であれば、触媒を保持する気孔を十分に確保できるので好ましい。
【0016】
耐熱性繊維フェルトに用いられる繊維は、3〜40μm、好ましくは、6〜30μm、より好ましくは10〜20μmの平均繊維径を有することが適当である。当該平均繊維径が、3μm以上であれば、多孔質触媒の層を耐熱性繊維の気孔に形成する際、触媒を多孔質とするための造孔剤が該繊維の気孔に充填可能な繊維間隙を確保出来、40μm以下であれば、繊維間に形成された多孔質触媒を十分に補強・維持出来るので好ましい。ここで、平均繊維径は、任意の繊維の直径を顕微鏡を用いて100回実測した平均値である。各繊維径は、例えば、耐熱性繊維の直径を光学顕微鏡(オリンパス製)を用いて撮影し、繊維の画像をパソコンに取り込み、Win ROOF(Windows(登録商標)用汎用画像処理パッケージ、三谷商事株式会社製)を用いて測定することができる。
本発明の耐熱性繊維は、1000℃まで、好ましくは、1500℃までの耐熱性を有する繊維である。
本発明の耐熱性繊維は、無機系繊維であることが適当である。ここで、無機系繊維としては、珪素を主体とした珪素繊維、炭化珪素(SiC)繊維、アルミナ繊維が挙げられる。より好ましくは、耐アルカリ性能を上げるため、上記炭化珪素繊維は、Ti、Zr、Ca及び/又はAl等の成分を含んでいてもよい。これらの成分は、繊維全体に対して1〜40質量%含まれていることが適当である。
【0017】
このような無機系の耐熱性繊維としては、例えば、炭化珪素繊維として、ニカロン繊維(Si−O−C 組成比57.2:32.7:10、日本カーボン株式会社製)、チラノ繊維(登録商標)耐熱グレードZMI(Si−C−O−Zr 組成比56:34:9:1)、チラノ繊維(登録商標)耐熱グレードS(Si−O−C−Ti 組成比50:30:18:2)チラノ繊維(登録商標)耐熱グレードSA(Si−O−C−Al 組成比67:31:1:2)(チラノ繊維(登録商標)は、全て、宇部興産株式会社製)が好ましい。
本発明の耐熱性繊維の繊維長は、平均で、例えば、10〜100mm、好ましくは、30〜60mmであることが適当である。
本発明の耐熱性繊維の引張強さは、ASTM D-638で測定して、例えば、1〜5GPa好ましくは、2〜4GPaであることが適当である。
本発明の耐熱性繊維フェルトは、上述のような性質を有するフィルタを少なくとも1層、好ましくは、性質の異なる耐熱性繊維フェルトを2種以上積層した積層体としてもよい。本発明の耐熱性繊維フェルトの厚さが、0.1〜40mm、好ましくは1〜30mmであることが適当である。
【0018】
(1-3)ディーゼルパティキュレートフィルタの調製方法
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、多孔質触媒を調製するための公知の方法を用いることができるが、好ましくは、触媒と造孔剤とを含む混合溶液を利用して、以下の工程を含む方法で調製される。
(a)触媒、造孔剤、溶媒を含む混合溶液を調製する工程;
(b)前記混合溶液に多孔質担体を浸漬する工程;および
(c)前記多孔質担体上の前記混合溶液を焼成して造孔剤および溶媒を除去し、前記多孔質担体上に多孔質触媒を担持する工程。
以下、具体的に説明する。
【0019】
(a)触媒、造孔剤、溶媒を含む混合溶液を調製する工程;
まず、触媒を溶媒に溶解又は分散して混合溶液を調製する。
ここで、触媒は、触媒又は触媒前駆体であってよい。触媒前駆体とは、最終的に高温焼成(例えば、900℃)することにより初めて水に不溶性の触媒となる物質を言う。触媒前駆体としては、ランタン、ストロンチウム、コバルト、セリウム、セシウム、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、白金、銀等の金属の塩を用いることができる。塩としては特に制限されず、塩化物,硝酸塩,硫酸塩,水酸化物等が挙げられる。具体的に好ましい触媒前駆体としては、硝酸ランタン6水和物、硝酸ストロンチウム、硝酸コバルト6水和物等が挙げられる。
最終的な触媒としては、上述した多孔質触媒に使用される触媒が挙げられる。例えば、金属触媒が好ましい。金属としては、遷移金属、貴金属等が挙げられる。具体的には、金属元素、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属水酸化物が挙げられる。特に好ましくは、白金、銀、酸化セリウム(セリア)、白金/セリア、銀/セリア、ペロブスカイト型複合酸化物、およびこれらの組み合わせである。
【0020】
溶媒としては、触媒である金属等を分散し、又は、触媒前駆体である金属塩を溶解するものであれば特に制限されないが、水、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、四塩化炭素、クロロメタン、2−メトキシエタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
溶媒中の触媒前駆体である金属塩の濃度は、例えば、0.1〜3.0M、好ましくは0.3〜2.0Mが適当である。
【0021】
さらに上記触媒前駆体溶液に造孔剤を加え、混合溶液を得る。造孔剤は、上記溶媒中に分散される。造孔剤を含む上記混合溶液を最終的に焼成して造孔剤を除去すると、造孔剤の部分が空孔となって多孔質の触媒を与えることになる。従って、造孔剤は溶媒に非溶解性であることが好ましい。
造孔剤としては、熱により分解除去されるものであれば特に制限されないが、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、シリコン樹脂、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル及びこれらのポリマーの重合に用いられるモノマー2種以上を重合して得られる共重合体、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−シリコン共重合体等が挙げられる。
造孔剤の平均粒径は、例えば、1〜100μm、好ましくは、10〜50μm、より好ましくは20〜30μmである。この造孔剤が除去された部分が多孔質触媒の気孔となるので、この造孔剤の粒径は、多孔質触媒の平均気孔径に等しい。造孔剤の粒径は、上述したように、造孔剤をイソプロピルアルコール(IPA)に分散させ、レーザー回折式粒度測定器にて測定することができる。造孔剤の平均粒径は、上記のようにして50〜500個、好ましくは100個の造孔剤の粒径の測定し、その平均値を採用する。
造孔剤は、触媒前駆体溶液100ml中で、10g/100ml〜70g/100mlの量で存在することが適当である。
触媒と造孔剤との体積比は、例えば、1:3〜1:50であり、好ましくは1:4〜1:40、より好ましくは1:10〜1:30である。
【0022】
(b)前記混合溶液に多孔質担体を浸漬する工程
上述の触媒又は触媒前駆体、造孔剤および溶媒を含む混合溶液は、造孔剤が均一に分散するように、30分〜3時間程度撹拌し、および/または、1〜60分間超音波に暴露しておく。これとは別に、上述した多孔質担体を準備する。上記撹拌等した混合溶液に上記多孔質担体を、多孔質担体が完全に浸かるように浸漬する。浸漬される多孔質担体の量は、担体の種類や材質にもよるが、例えば、耐熱性繊維フェルトの場合、混合溶液1Lに対し、例えば、0.5〜20g、好ましくは、1〜10gであることが適当である。
【0023】
(c)前記多孔質担体上の前記混合溶液を焼成して造孔剤および溶媒を除去し、前記多孔質担体上に多孔質触媒を担持する工程
上述のように多孔質担体を混合溶液に浸漬した後、例えば、真空ポンプ、アスピレーター、ブロアー等を使用して吸引し、溶媒を極力除去する。その後、30〜200℃、好ましくは、50〜150℃で0.2〜10時間、好ましくは、0.5〜5時間加熱・乾燥し、多孔質触媒の形状を固定化した。さらに500〜1200℃、好ましくは、600〜900℃で1〜10時間、好ましくは、3〜6時間焼成して触媒を焼結するとともに造孔剤を除去し、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタを得る。
【0024】
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、多孔質担体の気孔(空隙)の体積(100%)中、70〜100%、好ましくは、85〜100%、より好ましくは、90〜100%の気孔に多孔質触媒が充填された構造を有する(触媒充填率)。多孔質担体の気孔の70体積%以上に多孔質触媒が充填されていれば、多孔化している多孔質触媒層の何れかの気孔部でPM粒子を捕捉することが出来る。
得られるディーゼルパティキュレートフィルタは、多孔質担体として耐熱性繊維フェルトを用いた場合、耐熱性繊維フェルトの質量(100質量%)に対して、多孔質触媒を、例えば、30〜250質量%、好ましくは、50〜200質量%、より好ましくは、50〜150質量%含むことが適当である(触媒付着率)。触媒付着率が、30質量%以上であれば、多孔質触媒を形成する気孔の壁面の厚みが構造を維持出来るだけの強度を有する厚みとなるので好ましく、250質量%以下であれば、気孔が連通化し、適度な通気度となるので好ましい。
【実施例】
【0025】
(多孔質触媒)
以下に説明する本発明の実施例および比較例において使用した触媒前駆体は、硝酸塩(和光純薬(株))である。
(耐熱性繊維フェルト)
多孔質担体として耐熱性繊維フェルトを使用した。耐熱性繊維フェルトを構成する耐熱性繊維としては、炭化珪素繊維(チラノ繊維(登録商標)耐熱グレードZMI(Si−C−O−Zrの組成比56:34:9:1))を用いた。使用した各炭化珪素繊維は、14μmの繊維径であった。この炭化珪素繊維を、特開2000-199160「無機短繊維フェルトの製造方法及び装置」に記載の方法により本発明の耐熱性繊維フィルタ層用の不織布とした。具体的には、各炭化珪素繊維を約40mmの長さに切断し、直径1m×高さ2mの円筒中に入れて空気を流し、結束した繊維を解繊した。解繊した繊維をはかり取り、必要に応じて複数種の繊維を混合した。その後、繊維を空気流中に導入し、繊維を3mの高さから基板上に自然落下させて積層し、不織布を得た。得られた不織布は、繊維がランダム方向に交絡した構造を有していた。
本発明の実施例および比較例において使用した耐熱性繊維フェルトは、上述のようにして製造した、以下の性質を有する炭化珪素(SiC)製不織布(トスコ株式会社製、耐熱性セラミックフェルト)である。
【0026】
表1


*1)
[気孔率](%)=([耐熱性繊維フェルト全体の体積]−[耐熱性繊維の体積]/[耐熱性繊維フェルト全体の体積]×100

ここで、[耐熱性繊維フェルト全体の体積]=縦100(cm)×横100(cm)×厚0.3(cm)=3000cm3
[耐熱性繊維の体積]=[耐熱性繊維の質量](g)/[耐熱性繊維の比重](g/cm3)=230(g)/2.48(g/cm3)=92.74(cm3)
但し、[耐熱性繊維の質量](g)=(耐熱性繊維フェルト3000cm3を秤量)=230(g)
[耐熱性繊維の比重](g/cm3)=2.48(g/cm3)
【0027】
*2)
[かさ密度](g/cm3)=[耐熱性繊維フェルトの質量](g)/[耐熱性繊維フェルトの体積](cm3) (耐熱性繊維フェルト3000cm3を秤量して求めた)
【0028】
*3)光学顕微鏡による計測
耐熱性繊維の繊維断面が真円であると仮定し、耐熱性繊維の直径を光学顕微鏡(オリンパス製)を用いて撮影し、繊維の画像をパソコンに取り込み、Win ROOF(Windows(登録商標)用汎用画像処理パッケージ、三谷商事株式会社製)を用いて繊維径を測定した。同様にして耐熱性繊維の繊維径を位置を変えて100回測定し、平均した値を平均繊維とした。
【0029】
(造孔剤)
以下に説明する本発明の実施例において使用した造孔剤は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(綜研化学(株))である。このPMMA粒子は、該粒子をイソプロピルアルコール(IPA)に加え、超音波を5分間かけて分散し、レーザー回折式粒度測定器(堀場製作所製LA−500)で100個の造孔剤の粒径を測定した場合、30μmの平均粒径を有する。
【0030】
(実施例1)
触媒前駆体として硝酸ランタン6水和物8.66g、硝酸ストロンチウム1.06g、硝酸コバルト6水和物7.28gを準備し、これらを100mlの水に溶解して2時間撹拌した前駆体溶液(0.5M La0.8Sr0.2CoO3前駆体溶液)100mlに、PMMA粒子である上記造孔剤を60gを添加して混合溶液を調製した。この混合溶液を、造孔剤が均一に分散するように、60分間超音波に暴露した。得られた混合溶液に上記炭化珪素(SiC)製不織布0.3gを浸漬した後、溶媒である水を吸引速度5m/秒のブロアーを利用して吸引脱液した。その後、得られた物質を、120℃で1時間乾燥・熱処理し、更に900℃で2時間焼成して、PMMA粒子を除去するとともに、触媒を上記SiC製不織布に焼結させ、ディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
【0031】
(実施例2)
触媒前駆体として硝酸ランタン6水和物17.32g、硝酸ストロンチウム2.12g、硝酸コバルト6水和物14.55gを準備し、これらを100mlの水に溶解した前駆体溶液(1.0MLa0.8Sr0.2CoO3前駆体溶液)を用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、ディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
【0032】
(実施例3)
触媒前駆体として硝酸ランタン6水和物22.52g、硝酸ストロンチウム2.75g、硝酸コバルト6水和物18.92gを準備し、これらを100mlの水に溶解した前駆体溶液(1.3MLa0.8Sr0.2CoO3前駆体溶液)を用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、ディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
(実施例4)
触媒前駆体として0.6Mの硝酸セリウムと、0.6Mの硝酸セリウムから生成されるCeO2に対してAgとして10%の質量比となるように硝酸銀を準備し、更に同CeO2の質量に対してAl2O3として3%となるように硝酸アルミニウムを準備し、これらを100mlの水に溶解した前駆体溶液を用いた以外は実施例1と同じ処理を行い、ディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
【0033】
(比較例1)
前駆体溶液として、アセトン100質量部に対し、非結晶性エポキシ樹脂(東洋紡(株)製)1質量部を加え、2時間撹拌した。さらに、水不溶性の触媒粉末(La0.8Sr0.2CoO3 入手先セイミケミカル(株)、LSC)を6質量部を加えて、60分間超音波に暴露して混合溶液を得た。得られた混合溶液を上記炭化珪素(SiC)製不織布に含浸させた後、該混合溶液を含浸させた上記不織布を60°に傾けた状態で10分間放置し、液体分を除去した。その後、120℃で乾燥し、更に800℃で2時間処理して、触媒を上記SiC製不織布に焼結させ、ディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
(比較例2)
上記炭化珪素(SiC)製不織布を、触媒を担持せずにディーゼルパーティキュレートフィルタとしてそのまま使用した。
【0034】
(ディーゼルパティキュレートフィルタの物性評価)
実施例1〜3および比較例1で製造したディーゼルパティキュレートフィルタの物性を以下のようにして測定した。
【0035】
(触媒充填率)
触媒充填率は、多孔質担体の気孔の体積に占める該気孔に充填された多孔質触媒の体積の割合を意味する。本実施例等では、ディーゼルパティキュレートフィルタをスライスして切片を作成し、該切片に現れた耐熱性繊維フェルトの気孔の面積と多孔質触媒が占める面積の割合から求めた。
まず、ディーゼルパティキュレートフィルタを10×10mm、厚さ1mmにスライスして切片を作成し、走査型電子顕微鏡で倍率30倍にて写真撮影を行う。顕微鏡写真に現れた耐熱性繊維フェルトの気孔のうち、多孔質触媒層が形成されていない部分の面積をデジタイザーで読み取り、耐熱性繊維フェルトの気孔の面積に対する該気孔に充填された多孔質触媒の面積の比率から触媒充填率を算出する。
【0036】
(触媒付着率)
触媒付着率は、耐熱性繊維フェルトの質量(100質量%)に対する多孔質触媒の質量から求めた。
即ち、多孔質触媒付着前の耐熱性繊維フェルト質量、及び、多孔質触媒付着後の耐熱性繊維フェルト質量を測定し、以下の式;
[触媒付着率](%)=([多孔質触媒付着後の質量]−[多孔質触媒付着前の質量])/[多孔質触媒付着前の質量]
により算出する。
【0037】
(気孔率)
気孔率は、多孔質触媒全体の体積に対し、多孔質触媒の気孔の体積が占める割合である。気孔率は以下のようにして求める。
多孔質触媒付着前の耐熱性繊維フェルトの質量(Aとする)を測定する。触媒(触媒前駆体)、溶媒、及び造孔剤を含む混合溶液に耐熱性繊維フェルトを含浸し、乾燥後、焼成前の多孔質触媒と造孔剤とを含む耐熱性繊維フェルトの質量(Bとする)を測定する。さらに、焼成後の多孔質触媒を含む耐熱性繊維フェルトの質量(Cとする)を測定する。
ここで(B−A)は、造孔剤と焼成前触媒の質量を意味する。(C−A)は、焼成後の多孔質触媒の質量を意味する。
多孔質触媒と造孔剤とを含む耐熱性繊維フェルトの焼成により消失し、空間(気孔)となった造孔剤の質量は、(B−A)−(C−A)=B−Cであり、焼成前後での触媒空間の体積は変化しないため、造孔剤が消失した空間が触媒の気孔となる。従って、形成された空間(気孔)の体積=造孔剤部分が占めていた体積=(B−C)/(造孔剤の比重(ρ2[g/cm3]))となる。また、触媒自体が占めている体積は、(C−A)/(触媒の比重(ρ1[g/cm3]))と表すことができる。さらに、多孔質触媒全体の体積は、上記[触媒自体が占めている体積]+[形成された空間(気孔)の体積]=(C−A)/ρ1+(B−C)/ρ2である。よって、触媒気孔率(%)は、
触媒気孔率(%)=[形成された空間(気孔)の体積]/[多孔質触媒全体の体積]×100
=[形成された空間(気孔)の体積]/([触媒自体が占めている体積]+[形成された空間(気孔)の体積])×100
=[(B−C)/ρ2]/[(C−A)/ρ1+(B−C)/ρ2]×100
から求めることができる。
具体的には、実施例及び比較例の触媒気孔率は、以下の表2の値から求めた。求めた気孔率の値は、以下の表3に示す。






























【0038】




【0039】

なお、ディーゼルパーティキュレートフィルタに含まれる耐熱性繊維フェルトの気孔率は、上記表1の値と変化していなかった。
また、気孔率は、使用したPMMA粒子の平均粒子径の値を使用した。
【0040】
(PM除去試験)
上記実施例1〜4および比較例1及び2で製造したディーゼルパティキュレートフィルタをカラムに充填し、排ガスを通してPMの除去試験を行った。具体的には、まず、上記実施例1〜3および比較例1及び2で製造したディーゼルパティキュレートフィルタをφ35mm、厚さ3mmの円盤型にカットし、これを5枚積層してφ35mm長さ(高さ)15mmの円筒形の積層体を得た。この積層体を、外径φ37mm内径φ31mm(長さ約60mm)の円筒形カラム内に、上記積層体の側面と円筒形カラムの内面とが接するように配置した。これにより、排ガスは、円筒形カラム内に配置した5枚のディーゼルパティキュレートフィルタを、該フィルタの厚さ方向に通過していくことになる。
試験には、エンジン、円筒形カラム、マフラーを、この順序で直列につないだ試験装置を用いた。エンジンとしては、2.2Lターボチャージドコモンレール式ディーゼルエンジン(本田技研工業(株)製)を用いた。このエンジンを2500rpmかつ110N・mのトルク値で作動させて粒子状物質(PM)を発生させ、上記円筒形カラムに配置したディーゼルパティキュレートフィルタに42分間捕集した。ディーゼルパーティキュレートフィルタを通過する排ガスは25L/分であった。
【0041】
(評価)
上記試験装置から捕集した粒子状物質(PM)を含むカラムを分離した。カラムを昇温しながら、カラム内に反応ガス(酸素10体積%+窒素90体積%)を12.8L/分の速度で流した。昇温は、カラムに取り付けた赤外線炉にて20℃/分の割合で行い、温度はディーゼルパティキュレートフィルタの上流付近で測定し、二酸化炭素が発生し始める温度を「PM燃焼開始温度」とし、二酸化炭素の濃度が最大となる温度を「PM燃焼ピーク温度」とした。試験は、上記ディーゼルパティキュレートフィルタの積層体の中心部の温度が600℃となった時点での二酸化炭素(CO2)の量を堀場製作所製MEXA-7500Dを用いて測定した。結果を以下の表4に示す。








表4

【0042】
表4の実施例1と比較例1とを比較すると、PM燃焼開始温度が100℃(550℃→450℃)低温化していた。また、PM燃焼ピーク温度が10℃(670℃→660℃)低温化していた。これにより、触媒の担持構造を多孔質形状とすることにより触媒とPM粒子が十分に接触し、触媒が効果的に機能していることがわかった。さらに、600℃におけるCO2の発生量が80ppm(260ppm→180ppm)増加していた。これにより、触媒とPM粒子との接触点が増えて、燃焼効率が良くなっていることがわかった。
また、実施例3の顕微鏡写真を図1(500倍)および図2(30倍)に示す。この写真に示されているとおり、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、耐熱性繊維フェルトの気孔の約90体積%が多孔質触媒で充填されている構造を有する。
表4の実施例4と比較例2とを比較すると、PM燃焼開始温度が150℃(550℃→400℃)低温化していた。PM燃焼ピーク温度が115℃(680℃→565℃)低温化していた。これにより、触媒の担持構造を多孔質形状とすることにより触媒とPM粒子が十分に接触し、触媒が効果的に機能していることがわかった。さらに、600℃におけるCO2の発生量が573ppm(753ppm→180ppm)増加していた。これにより、触媒とPM粒子との接触点が増えて、燃焼効率が良くなっていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例3のディーゼルパティキュレートフィルタの顕微鏡写真(500倍)である。
【図2】実施例3のディーゼルパティキュレートフィルタの顕微鏡写真(30倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気孔を有する多孔質担体と、前記多孔質担体の前記気孔内に担持された多孔質触媒とを含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、前記多孔質触媒が、平均気孔径0.1〜100μmを有することを特徴とする、ディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
前記多孔質触媒が、白金、銀、酸化セリウム、ペロブスカイト型複合酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
前記多孔質担体が、耐熱性繊維フェルトであり、前記耐熱性繊維フェルトが気孔率80〜99体積%を有し、前記多孔質触媒が、前記耐熱性繊維フェルトの気孔の50〜95体積%に担持されている、請求項1又は2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
(a) 触媒、造孔剤、溶媒を含む混合溶液を調製する工程;
(b) 前記混合溶液に多孔質担体を浸漬する工程;及び
(c)前記多孔質担体上の前記混合溶液を焼成して造孔剤および溶媒を除去し、前記多孔質担体上に多孔質触媒を担持する工程;
を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタの調製方法。
【請求項5】
前記造孔剤が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコン樹脂、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、及びこれらのポリマーの重合に用いられるモノマー2種以上を重合して得られる共重合体から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質担体が気孔率80〜99体積%を有する耐熱性繊維フェルトである、請求項4又は5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−72693(P2009−72693A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243942(P2007−243942)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000110170)トスコ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】