説明

多孔質電極基材の製造方法

【課題】樹脂の広がりすぎによる空孔閉塞や急激な硬化収縮による亀裂発生を抑制し透気度の高い多孔質炭素電極基材を提供する。
【解決手段】炭素短繊維が二次元平面内においてランダムに分散した炭素短繊維紙に熱硬化性樹脂組成物を含浸し樹脂含浸紙を得た後、以下の方法で決定した温度で前記樹脂含浸紙を加熱プレスした後、プレス圧力を解放し、不活性ガス雰囲気中で熱硬化性樹脂組成物を硬化・炭化する。熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物を用いてもよい。さらには、加熱プレス温度範囲が100〜125℃としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体高分子型燃料電池に用いられる多孔質電極基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス供給に重要な透気度の高い多孔質電極基材を得る方法としては、例えば特許第4051714号公報(特許文献1)に開示されるように、炭素繊維紙に低残炭率樹脂を含浸し、急速硬化する温度で加熱硬化後に焼成することで低残炭率成分の分解を促して空孔を形成する方法が知られている。低残炭率成分を含む抄造体を得る方法としては、他に特開2006−190518号公報(特許文献2)に開示されるように低残炭率繊維を炭素繊維に混抄してからフェノール樹脂を含浸する、特開平8−2979号公報(特許文献3)に開示されるように炭素繊維と低残炭率粒子を混抄してからフェノール樹脂を含浸する、などの方法が知られている。ところが、透気度を高くしながら基材の機械強度を維持するには、通常よりも多くの樹脂を含浸する必要があり、コスト高となる。また、急速硬化のため樹脂に亀裂が入りやすいという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特許第4051714号公報
【特許文献2】特開2006−190518号公報
【特許文献3】特開平8−2979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂の広がりすぎによる空孔閉塞や、急激な硬化収縮による亀裂発生を抑制し、透気度の高い多孔質炭素電極基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、下記の構成からなる。
(1)炭素短繊維が二次元平面内においてランダムに分散した炭素短繊維紙に熱硬化性樹脂組成物を含浸し樹脂含浸紙を得た後、以下の方法で決定した温度で前記樹脂含浸紙を加熱プレスした後、プレス圧力を解放し、不活性ガス雰囲気中で熱硬化性樹脂組成物を硬化・炭化する多孔質電極基材の製造方法。
[加熱プレス温度の決定方法]
熱機械分析装置の加熱炉内に直径3mmのプローブ針を取り付け、プローブ針の真下に直径9mmの試料台を取り付け、直径3〜10mm大に切り出した樹脂含浸紙片を試料台に置き、加熱炉内を2℃/minで昇温しながら樹脂含浸紙片に0.01Hz、±1.5Nの振動荷重をかけ、室温から250℃までのプローブ針の変位を記録し、記録された変位から非振動成分を抽出することにより、低温側から高温側に向かって(a)変位が急減する部分、(b)変位が漸減する部分、(c)変位が再び急減する部分、(d)変位が漸増する部分、からなるグラフを得て、前記(b)の部分の温度を加熱プレス温度とする。
(2)炭素短繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維である前記(1)に記載の多孔質電極基材の製造方法。
(3)熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いる前記(1)または(2)に記載の多孔質電極基材の製造方法。
(4)熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物を用いる前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。
(5)加熱プレス温度範囲が100〜125℃である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。
(6)嵩密度が0.14〜0.16g/cmであって厚み方向の透気度が1900〜2100mL/cm/hr/Paである前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、樹脂の広がりすぎによる空孔閉塞や急激な硬化収縮による亀裂発生が抑制された、透気度の高い多孔質炭素電極基材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔炭素短繊維〕
本発明で使用する炭素短繊維の平均直径は特に限定されないが、例えば、表面平滑性、導電性の付与のためには3〜30μm程度が好ましく、4〜20μmがより好ましく、4〜8μmがさらに好ましい。また、異なる平均直径の炭素短繊維を2種類以上用いることも、表面平滑性、導電性の両立のために好ましい。炭素短繊維の長さは特に限定されないが、抄紙時の分散性、及び機械的強度を高めるために、3mm以上12mm以下が好ましく、3mm以上9mm以下がより好ましい。
炭素繊維の種類は特に限定されるものでなく、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、フェノール樹脂系炭素繊維、再生セルロース系炭素繊維、セルロース系炭素繊維等を使用することができる。これらの炭素繊維を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。特に、圧縮強度や引張強度が高いことから、PAN系炭素繊維が好ましい。
【0008】
〔二次元平面内においてランダムに分散した炭素短繊維紙〕
本発明において、二次元平面内においてランダムに分散した炭素短繊維紙は、特定の厚みや大きさに限定されず、炭素短繊維を主要構成要素とする不織布、抄紙体、フェルト、クロス等を包含する。また、それらの製造方法は特に限定されず、例えば、ウォータージェット処理やスチームジェット処理などによって繊維を交絡してもよい。特に、複数本の炭素短繊維が集合してなる抄紙体が好ましく、表面平滑性が高く、電気的接触が良好で、かつ高分子電解質膜への突き刺さりによる短絡が低減される複数本の炭素短繊維が集合してなる抄紙体がより好ましい。
【0009】
〔熱硬化性樹脂組成物〕
熱硬化性樹脂組成物は、炭化した段階で炭素短繊維を結着し、かつ導電性物質として残存しやすい公知の樹脂から適宜選ぶことができ、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、コプナ樹脂、ピッチ等が好ましく、レゾール型フェノール樹脂が特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物には熱硬化性樹脂の他に熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。そのような熱可塑性樹脂は、炭化した段階で導電性物質として残存しやすいという観点から、ノボラック型フェノール樹脂、PAN系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の配合比率は、熱硬化性樹脂組成物の流動性を制御するために適宜設定することができるが、熱硬化性樹脂100質量部に対して熱可塑性樹脂30〜300質量部の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂100質量部に対する熱可塑性樹脂の配合量を30質量部以上とすることで、熱成形時に硬化が確実に進行するため精度良く厚みを制御でき、300質量部以下とすることで、残炭率が低くならず力学的強度や導電性を維持できる。より好ましくは、熱硬化性樹脂100質量部に対して熱可塑性樹脂100〜300質量部の範囲である。
【0010】
〔樹脂含浸〕
炭素繊維紙に熱硬化性樹脂組成物を含浸する方法としては、例えばコーターを用いて炭素繊維紙表面に樹脂を均一にコートする方法、絞り装置を用いるdip−nip方法、もしくは炭素繊維紙と樹脂フィルムを重ねて樹脂フィルムを炭素繊維紙に転写する方法などが知られているが、炭素繊維紙に熱硬化性樹脂組成物を均一に含浸する方法であればよく、本発明により特に限定されるものではない。
【0011】
〔加熱プレス温度の決定方法と加熱プレス〕
加熱プレス温度の決定に用いる測定装置および方法は、雰囲気の温度を上昇させながら樹脂の変形量や弾性率変化を検出・記録し、樹脂の軟化に相当する温度と硬化に相当する温度を定義できる方法であれば特に限定されないが、樹脂含浸紙をそのままの形態で測定できる点で熱機械分析(TMA)の針入モード測定が好ましい。
図1は、本発明の実施に用いるTMAの針入モード測定方法を示す概略断面図である。まずTMAの試料室1の内部にあるプローブ2の先端に、直径3mmの円筒状プローブ針3を固定ネジ4により取り付け、試料室1の底部に直径9mmの試料台5を固定ネジ4により取り付ける。次いで試料台5の上に直径3〜10mm大に切り出した樹脂含浸紙片6を置き、プローブ針3を樹脂含浸紙片6に接触させてから、一定の昇温速度と振動荷重のもとで測定を行う。
昇温速度は、温度変化に伴う樹脂のわずかな変形を検知するために1℃〜5℃/minの範囲が好ましい。樹脂含浸紙片に与える振動の周期と荷重は樹脂の粘弾性に合わせて適切な値を設定できるが、本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物の場合には0.05〜0.1Hz、±1〜1.5Nの振動荷重が好ましい。
以下、TMAの針入モード測定における基本概念を説明する。樹脂含浸紙片にかかる振動荷重σ*は(1)式で表記される。ここで|σ|は振動荷重の非振動成分、δは振動荷重の位相、tは時間、iは虚数単位である。一方、振動荷重に対する応答としての振動変位ΔL*は(2)式で表記される。ここで|ΔL|は振動変位の非振動成分、δは振動変位の位相である。(1)式および(2)式から(3)式で表記される位相差δの情報を得ることにより、(4)式で表記される貯蔵弾性率および(5)式で表記される損失弾性率が得られる。この基本概念に基づいて作られた粘弾性解析ソフトウエアを用いて、測定で得られた振動変位ΔL*から非振動変位|ΔL|と貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”を抽出すると、非振動変位|ΔL|の温度変化は図2に示すような温度―変位曲線となる。
【0012】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【0013】
非振動変位の温度変化のグラフは低温側から高温側に向かって、(a)変位が急減する部分、(b)変位が漸減する部分、(c)変位が再び急減する部分、(d)変位が漸増する部分、からなる。(a)と(b)の境界温度、より具体的には(a)および(b)の外挿線の交点に相当する温度をTとすると、Tは損失弾性率E”のピーク温度に一致することから、樹脂が十分に軟化する温度に相当すると考えられる。また(b)と(c)の境界温度、より具体的には(b)および(c)の外挿線の交点に相当する温度をTとすると、Tは貯蔵弾性率E’が急増する温度に一致することから、樹脂が硬化し始める温度に相当すると考えられる。樹脂含浸紙片中の樹脂は、TからTの温度範囲において流動性を有し、かつ急速硬化もしないため、同温度範囲内の温度で加熱プレス後に圧力を解放すれば、応力緩和により樹脂がプレス面に垂直な方向に流動しやすくなる。そのため、厚み方向および面内方向の透気度が高くなることが期待される。加えて、従来法に比べ低温での加熱プレスのため、ユーティリティコストを低減できることが期待される。
【0014】
〔熱硬化性樹脂組成物の硬化・炭化〕
熱硬化性樹脂組成物の硬化・炭化方法は、加熱プレス時に未硬化のまま残った熱硬化性樹脂組成物が、室温からの連続昇温により完全に硬化し、さらに続けて炭化するような方法であればよく、本発明により特に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。実施例中の各物性等は以下の方法で測定した。
(1)熱機械分析
樹脂含浸炭素繊維紙の熱機械分析(TMA)には、TMA/SS6100(商品名、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用し、直径3mmの円筒状プローブ針による針入モード測定を行った。データ解析には、TMA粘弾性データ変換計算ソフトTMA_Rheo(商品名、セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用した。
(2)厚み
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ7321(商品名、ミツトヨ製)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。
(3)厚み方向の透気度
多孔質電極基材の厚み方向の透気度は、JIS−P8117に準拠し、ガーレー式デンソメーター(熊谷理機社製)を使用し、ガス流通部の径が2mmφの冶具(圧縮部面積0.0314cm)を200mLの気体(空気)が通過する時間を測定して算出した。
(4)面内方向の透気度
加圧部の外径が30mmφ、ガス流通部の径が10mmφの円筒状の圧縮冶具(圧縮部面積6.28cm)に、36mmφに切り出した多孔質電極基材を挟み1MPaの圧力を加え、円筒の上方から200mL/minの流速でガスを流したときの基材内側と基材外側の圧力差を測定して算出した。
【0016】
〔実施例1〕
平均繊維径が7μmのポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維の繊維束を切断し、平均繊維長が3mmの短繊維を得た。次にこの短繊維束100質量部を水中で解繊し、十分に分散したところにバインダーであるポリビニルアルコール(PVA)の短繊維25質量部を均一に分散させ、標準角形シートマシンを用いて抄紙を行った。得られた炭素繊維紙は単位面積当たりの質量が28g/mであった。
次に、熱硬化性樹脂組成物としてレゾール型フェノール樹脂A(商品名:PL−2211、群栄化学工業株式会社製)をメタノールで希釈し、樹脂固形分8質量%としたメタノール溶液を前記炭素繊維紙に含浸し、室温でメタノールを十分に乾燥し、樹脂Aの不揮発分を78質量部付着させた樹脂含浸紙を得た。
続いて、前記樹脂含浸紙を直径9mm大に切り出してTMAの試料台に置き、加熱炉内を2℃/minで昇温しながら樹脂含浸紙片に0.01Hz、±1.5Nの振動荷重をかけ、室温から250℃までのプローブ針の変位を記録した。得られた温度―変位曲線からTを78℃、Tを115℃と決定した。
次に、前記樹脂含浸紙を2枚重ねて離型紙に挟み、バッチプレス装置にて100℃、10MPaの条件下に3分間置いた後、プレス圧を解放して室温まで自然冷却して中間基材を得た。
続いて、上記中間基材を、窒素ガス雰囲気中バッチ炭素化炉にて2000℃で1時間加熱し、炭化することで多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材の走査型電子顕微鏡による表面観察写真を図4に示す。
〔比較例1〕(加熱プレス温度がTより高い比較例)
加熱プレス温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材の走査型電子顕微鏡による表面観察写真を図5に示す。
【0017】
〔実施例2〕
熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂Aの固形分100質量部に対してノボラック型フェノール樹脂B(商品名:レヂトップPSF−2803、群栄化学工業株式会社製)を同質量部混合した熱硬化性樹脂組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂含浸紙を得て、樹脂含浸紙のTMA測定からTを84℃、Tを130℃と決定した。続いて、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。
【0018】
〔比較例2〕(加熱プレス温度がTより高い比較例)
加熱プレス温度を180℃とした以外は、実施例2と同様にして多孔質電極基材を得た。
【0019】
〔実施例3〕
熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂C(商品名:フェノライトJ−325、DIC社製)の固形分100質量部に対してノボラック型フェノール樹脂D(商品名:レヂトップP−Nov、群栄化学工業株式会社製)を300質量部混合した熱硬化性樹脂組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂含浸紙を得て、樹脂含浸紙のTMA測定からTを54℃、Tを128℃と決定した。続いて、加熱プレス温度を125℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。
【0020】
〔比較例3〕(加熱プレス温度がTより高い比較例)
加熱プレス温度を180℃とした以外は、実施例3と同様にして多孔質電極基材を得た。
【0021】
〔比較例4〕(加熱プレス圧力を一旦解放せずに連続して炭化した比較例)
平均繊維径が7μmで平均繊維長が3mmのPAN系炭素繊維と炭素繊維比15質量%のPVA短繊維からなる炭素短繊維紙(幅350mm、厚み0.5mm)を、レゾール型フェノール樹脂C(商品名:フェノライトJ−325、DIC社製)の樹脂固形分12質量%メタノール溶液に浸漬し、炭素短繊維紙100重量部に対し樹脂固形分が120重量部付着した樹脂含浸紙を得た。
次に、例えば特許第3699447号に開示されている、搬送路を挟んで上下に2組の回転ベルトが設置され、かつ2本1対の加熱加圧ロールが6対、搬送方向に一定の間隔で設置された連続加熱加圧装置を用いて、前記樹脂含浸紙を以下の条件で搬送することにより、レゾール型フェノール樹脂Cを硬化させた。
前記加熱加圧ロールは全て直径が160mmであり、加熱加圧ロール対のピッチはシート状物の搬送方向に220mm とした。前記加熱加圧ロールは、温度が300℃で5×10N/mのニップ圧力条件とし、1番目の加熱加圧ロール対から6番目の加熱加圧ロール対までの滞在時間を2分とし、処理速度0.66m/分で連続的に硬化処理し、中間基材を得た。続いて、前記中間基材を窒素ガス雰囲気中バッチ炭素化炉にて2000℃で1時間加熱し、炭化することで多孔質電極基材を得た。
【0022】
以上の樹脂含浸紙および多孔質電極基材の物性を表1に示す。
【表1】

【0023】
表1に示すように、実施例1〜3で得られた多孔質電極基材の透気度は、厚み方向と面内方向のいずれも比較例1〜3の場合に比べて著しく高い。また、比較例4に示すように、プレス圧力を一旦解放することなく連続して炭化した場合にも透気度は低くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る多孔質電極基材は、特に燃料電池のガス拡散体として好適であるが、これに限らず、各種電池の電極基材などにも応用することができ、さらに、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は熱機械分析装置の概略断面図である。
【図2】図2はTおよびTの決定に用いる温度―変位曲線である。
【図3】図3は実施例1〜3で得られた温度―変位曲線である。
【図4】図4は実施例1で得られた多孔質電極基材の走査型電子顕微鏡による表面観察写真である。
【図5】図5は、比較例1で得られた多孔質電極基材の走査型電子顕微鏡による表面観察写真である。
【符号の説明】
【0026】
1:試料室
2:プローブ
3:プローブ針
4:固定ネジ
5:試料台
6:樹脂含浸紙
7:熱電対
(a):変位が急減する部分
(b):変位が漸減する部分
(c):変位が急減する部分
(d):変位が漸増する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素短繊維が二次元平面内においてランダムに分散した炭素短繊維紙に熱硬化性樹脂組成物を含浸し樹脂含浸紙を得た後、以下の方法で決定した温度で前記樹脂含浸紙を加熱プレスした後、プレス圧力を解放し、不活性ガス雰囲気中で熱硬化性樹脂組成物を硬化・炭化する多孔質電極基材の製造方法。
[加熱プレス温度の決定方法]
熱機械分析装置の加熱炉内に直径3mmのプローブ針を取り付け、プローブ針の真下に直径9mmの試料台を取り付け、直径3〜10mm大に切り出した樹脂含浸紙片を試料台に置き、加熱炉内を2℃/minで昇温しながら樹脂含浸紙片に0.01Hz、±1.5Nの振動荷重をかけ、室温から250℃までのプローブ針の変位を記録し、記録された変位から非振動成分を抽出することにより、低温側から高温側に向かって(a)変位が急減する部分、(b)変位が漸減する部分、(c)変位が再び急減する部分、(d)変位が漸増する部分、からなるグラフを得て、前記(b)の部分の温度を加熱プレス温度とする。
【請求項2】
炭素短繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維である請求項1に記載の多孔質電極基材の製造方法。
【請求項3】
熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いる請求項1または2に記載の多孔質電極基材の製造方法。
【請求項4】
熱硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物を用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。
【請求項5】
加熱プレス温度範囲が100〜125℃である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。
【請求項6】
嵩密度が0.14〜0.16g/cmであって厚み方向の透気度が1900〜2100mL/cm/hr/Paである請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質電極基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37145(P2010−37145A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202093(P2008−202093)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】