説明

多官能性カチオンを含む重合性イオン性液体及び静電気防止コーティング

アニオンと、それぞれが二価の非アルキル連結基を介してカチオン性基に結合している少なくとも2つのエチレン性不飽和重合性基を有するカチオン性基と、を含む、多官能性重合性イオン性液体が記載される。多官能性連結基は、独立して、酸素又は窒素等のヘテロ原子を含む。連結基は、独立して、アミド、尿素、又はエーテル結合、より典型的にはウレタン又はエーテル結合等の1つ以上の結合を含んでもよい。エチレン性不飽和重合性基は、典型的に、(メタ)アクリレート基である。また、コーティング及びコーティングされた物品も記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イオン性液体(IL)は、カチオンとアニオンとがそれほど配位していない塩である。イオン性成分の少なくとも1つは有機であり、イオンのうちの1つは、非局在化電荷を有する。これは、安定な結晶格子の形成を妨げ、大抵は室温で、定義によれば少なくとも100℃未満で液体として存在するこのような材料を生じさせる。例えば、典型的なイオン性塩である塩化ナトリウムは、約800℃の融点を有するが、一方、イオン性液体である塩化N−メチルイミダゾリウムは、約75℃の融点を有する。
【0002】
イオン性液体は、典型的に、無機アニオンと結合した置換アンモニウム等の有機カチオン又は置換イミダゾリウム等の窒素含有複素環を含む。しかし、カチオン及びアニオンが有機である種も記載されている。イオン性液体が少なくとも1つの重合性基を含む場合、このようなイオン性液体は、重合性イオン性液体(「PIL」)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な重合性イオン性液体が記載されているが、産業界は、新規の多官能性重合性イオン性液体における利点を見出そうとしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態では、アニオンと、それぞれが二価の非アルキル連結基を介してカチオン性基に結合している少なくとも2つのエチレン性不飽和重合性基を有するカチオン性基と、を含む、多官能性重合性イオン性液体が記載される。多官能性連結基は、独立して、酸素又は窒素等のヘテロ原子を含む。連結基は、独立して、アミド、尿素、又はエーテル結合、より典型的にはウレタン又はエーテル結合等の1つ以上の結合を含んでもよい。エチレン性不飽和重合性基は、典型的に、(メタ)アクリレート基である。
【0005】
別の実施形態では、本明細書に記載される多官能性重合性イオン性液体のいずれかを単独で、又は一官能性(例えば、モノ(メタ)アクリレート)重合性イオン性液体等の他の(メタ)アクリレート成分と組み合わせて含む(例えば、静電気防止)コーティングが記載される。
【0006】
更に別の実施形態では、(例えば、フィルム)基材と、この基材の表面上で硬化される本明細書に記載のコーティングと、を含む、コーティングされた基材が記載される。
【0007】
更に別の実施形態では、少なくとも0.70の窒素に対する空気の硬化発熱比率を有する、反応開始剤を含む多官能性重合性イオン性液体が記載される。重合性イオン性液体は、二価非アルキル連結基を介してカチオン性基に結合している少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。多官能性重合性イオン性液体の窒素に対する空気の硬化発熱比率が十分に高いとき、重合性イオン性液体は、窒素の存在下において硬化させる等、酸素の不在下で硬化させる必要はなく、空気中で硬化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
それほど配位していないカチオン及びアニオンを含む重合性イオン性液体が本明細書に記載される。このような重合性イオン性液体は、約100℃未満の融点(T)を有する。これら化合物の融点は、コーティング製剤中の溶媒担体の助けを借りて又は借りずに、(例えば、静電気防止)コーティング等の様々な重合性組成物中での使用を簡単にするために、より好ましくは約60℃未満、50℃未満、40℃未満、又は30℃未満であり、最も好ましくは約25℃未満である。25℃未満の融点を有する重合性イオン性液体は、周囲温度で液体である。
【0009】
好適なカチオン性基は、オニウム塩としても知られており、置換アンモニウム塩、置換ホスホニウム塩、及び置換イミダゾリウム塩が挙げられる。このようなオニウム塩のカチオンの構造は、以下のように表される。
【0010】
【化1】

【0011】
アニオンは、有機であっても無機であってもよく、典型的には一価のアニオンであり、すなわち、−1の電荷を有する。
【0012】
本明細書に記載される重合性イオン性液体は、少なくとも2つの重合性基を含み、したがって、1つの重合性基を有する一官能性重合性イオン性液体ではなく、多官能性重合性イオン性液体として記載される。重合性イオン性液体は、典型的に、2つ又は3つの重合性基を含む。重合性基は、(メタ)アクリルアミド(HC=CHCON−及びHC=CH(CH)CON−)並びに(メタ)アクリレート(CHCHCOO−及びCHC(CH)COO−)等の(メタ)アクリルを含むエチレン性不飽和末端重合性基である。他のエチレン性不飽和重合性基としては、ビニルエーテル(HC=CHOCH−)を含むビニル(HC=C−)が挙げられる。
【0013】
重合性イオン性液体は、反応性モノマーとして機能し、したがって、硬化性組成物を(例えば、フィルム)基材に適用するとき、硬化性(例えば、静電気防止)コーティング組成物において実質的に重合していない。硬化性組成物は、多官能性重合性イオン性液体のエチレン性不飽和基の重合を介する硬化時に固化する。
【0014】
本明細書に記載される多官能性重合性イオン性液体は、多官能性カチオンを有し、それぞれが二価の非アルキル連結基を介して同じカチオン性基に結合する2つ以上の重合性基を有することを特徴とすることができる。本明細書で使用するとき、連結基は、(例えば、1つの)カチオンとエチレン性不飽和末端基との間の原子の鎖の全体を指す。連結基は、低級アルキルセグメント、例えば、炭素数1〜4のアルキルセグメントを含んでもよく、また含むことが多いが、連結基は、炭素主鎖及び/又は(例えば、炭素)主鎖から分岐している他の基内に他の原子を更に含む。最も一般的には、連結基は、硫黄、酸素、又は窒素等のヘテロ原子、更に一般的には酸素又は窒素を含む。連結基は、アミド(−CONR−)、尿素(−RNCONR−)、又はエーテル(−COC−)結合、より一般的にはウレタン(−ROCONR−)又はエステル結合(−COOR)−等の結合を含んでもよく、式中、Rは、炭素数1〜4の低級アルキルである。
【0015】
カチオンがアンモニウム又はホスホニウムである実施形態の場合、重合性イオン性液体は、以下の一般式を有し得る。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、
Qは、窒素又はリンであり、
は、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はこれらの組み合わせであり、
は、独立して、エチレン性不飽和基であり、
は、独立して、連結基であるが、但し前記連結基のうちの少なくとも2つはアルキル連結基ではなく、
mは、2〜4の整数であり、
nは0〜2の整数であり、
m+n=4であり、
Xは、アニオンである。
【0018】
連結基Lのうちの少なくとも2つは、好ましくは、窒素、酸素、又は硫黄等の1つ以上のヘテロ原子を含む連結基である。好ましい実施形態では、連結基Lのうちの少なくとも2つは、アミド、尿素、エーテル、ウレタン、又はエステル結合を含む連結基のように、窒素又は酸素ヘテロ原子を含む。連結基は、このような結合のうちの1超を含んでもよい。
【0019】
各連結基に結合する各末端エチレン性不飽和基Rは、異なるエチレン性不飽和基を含んでもよいが、この末端エチレン性不飽和基Rは、典型的に、同じビニル、(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリレート基等の、同じエチレン性不飽和重合性基である。
【0020】
幾つかの実施形態では、mは3であり、したがって、重合性イオン性液体は、三官能性(例えば、トリ(メタ)アクリレート)重合性イオン性液体である。他の実施形態では、mは2であり、したがって、重合性イオン性液体は、二官能性(例えば、ジ(メタ)アクリレート)重合性イオン性液体である。
【0021】
幾つかの実施形態では、nは少なくとも1である。Rは、典型的に、水素又は炭素数1〜4の直鎖低級アルキルである。しかし、Rは、所望により、分岐鎖であってもよく、又は環状構造を含んでもよい。Rは、所望により、リン、ハロゲン、又は窒素、酸素、若しくは硫黄等の1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。
【0022】
本明細書で有用なアニオンの具体例としては、様々な有機アニオン、例えば、カルボキシレート(CHCO、CCO、ArCO)、サルフェート(HSO、CHSO)、スルホネート(CHSO)、トシラート、及び有機フッ化物(CFSO、(CFSO、(CSO、(CSO)(CFSO)N、CFCO、CFSO、CHSO、ホウ酸テトラキス(ペンタフルオロフェニル))が挙げられる。あるいは、アニオンは、無機アニオン、例えば、ClO、無機フッ化物(PF、BF、AsF、SbF)、及びハロゲン化物(Br、I、Cl)であってもよい。幾つかの実施形態では、アニオンは、好ましくはスルホネートである。このような例示的なアニオンは、エチレン性不飽和基を有さず、したがって、非重合性アニオンである。
【0023】
カチオンがアンモニウムである好ましい重合性イオン性種としては、以下が挙げられる。
【0024】
【化3】

【0025】
上記これらの種は、有機フッ化物アニオン等の様々な他のアニオンを含んでもよい。
【0026】
カチオンがイミダゾリウムである実施形態の場合、重合性イオン性液体は、以下の一般式を有し得る。
【0027】
【化4】

【0028】
式中、
X、R、L、及びRは、既に記載した通りであり、
dは、0〜3の整数である。
【0029】
重合性基は、イミダゾリウムカチオンの窒素原子に連結基を介して結合していると表されるが、一方又は両方の重合性基は、所望により、イミダゾリウム環の他の位置で連結基Lを介して結合してもよい。
【0030】
カチオンがイミダゾリウムである好ましい重合性イオン性種としては、以下が挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
好ましい多官能性重合性イオン性液体は、実施例に記載されている試験方法に従ってフォトDSCによって測定することができる場合、窒素に対する空気の高い硬化発熱比率を示す。窒素に対する空気の硬化発熱比率は、典型的に、少なくとも0.70又は0.75である。好ましい実施形態では、窒素に対する空気の硬化発熱比率は、典型的に、少なくとも0.80、0.85、0.90、又は0.95である。例示された組成物は、窒素の存在下で硬化されたが、窒素に対する空気の硬化比率が十分に高いとき、重合性イオン性液体は、有利なことに、酸素の非存在下における硬化を必要とせず、空気中(すなわち、酸素に富んだ環境)で実質的に完全に硬化され得ることがわかっている。
【0033】
組成物が空気中で硬化され、多官能性重合性イオン性液体が、窒素に対する空気の硬化発熱比率が高い一官能性重合性イオン性液体等の様々な、例えば(メタ)アクリレートと組み合わせられる実施形態では、本明細書に記載される多官能性重合性イオン性液体の酸素に対する空気の硬化発熱比率は、0.70未満である場合さえある。多官能性重合性イオン性液体と組み合わせることができる1つの好適な一官能性重合性イオン性液体は、窒素に対する空気の硬化発熱比率が約0.98である(アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)である。
【0034】
完全に硬化した(すなわち、固化した)重合性イオン性液体は、25℃で固体であり、未硬化の重合性イオン性液体を実質的に含まない。未硬化の重合性イオン性液体が存在するとき、典型的に、「濡れた」外観を示す表面残留物として生じる。表面阻害を最小化すると、より完全に硬化させるだけでなく、それほど硬化されていない酸素で阻害された表面層の形成も最小化される。硬化の程度は、当該技術分野において公知である様々な方法によって決定することができる。1つの一般的な方法は、溶媒抽出によって未硬化の材料の量を決定することである。好ましい実施形態では、未硬化の抽出可能な重合性イオン性液体の量は、硬化した組成物の10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0035】
本明細書に記載される重合性イオン性液体は、幾つかの方法によって作製することができる。1つの方法としては、以下の反応スキームによって示されるような、ヒドロキシル官能性イオン性前駆体と重合性イソシアネートとの反応が挙げられる。
【0036】
【化6】

【0037】
市販の出発物質としては、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムメチルサルフェート(BASFから入手可能(BASIONIC FS01))、ジエタノールアミンヒドロクロリド、2−アミノ−1,3−プロパンジオールヒドロクロリド、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンヒドロクロリドが挙げられる。イオン性製品は、更に反応させて、「Ionic Liquids」、Meindersma,G.W.、Maase,M.及びDe Haan,A.B.、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2007に記載のように、アニオンメタセシスを用いてアニオンを交換してもよい。
【0038】
別の方法としては、以下の反応スキームによって示されるような、ヒドロキシル官能性アミン前駆体と重合性イソシアネートとの反応後、アルキル化又は酸性化させる方法が挙げられる。
【0039】
【化7】

【0040】
市販の出発物質としては、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノ]−2−プロパノール、トリイソプロパノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジプロピルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジイソプロピルアミノ)1,2,−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3,−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3,−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、N,N’ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、N−N−N’−N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)−メチルアミノ]プロパン、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、及び1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジンが挙げられる。
【0041】
有用なアルキル化剤としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化メチル、臭化エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、及びメチルホスホン酸ジメチル等のアルキルハロゲン化物、硫酸塩、及びホスホン酸エステルが挙げられる。有用な酸性化剤としては、カルボン酸、有機スルホン酸、及び有機ホスホン酸、並びに塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0042】
別の方法としては、以下の反応スキームによって示されるように、アミンとアクリレート化合物とを反応させて、重合性アミン前駆体を得た後、アルキル化又は酸性化させる方法が挙げられる。
【0043】
【化8】

【0044】
市販の出発物質としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、1−メチルブチルアミン、1−エチプロピルアミン、2−メチルブチルアミン、イソアミルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、1−メチルヘプチルアミン(1-methylheptyamine)、2−エチルヘキシルアミン、1,5−ジメチルヘキシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、2−アミノノルボルナン、1−アダマンタンアミン、アリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3−フェニル−1−プロピルアミン、1−アミノインダン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、及びヘキサメチレンジアミン等のアミン類が挙げられる。
【0045】
エーテル連結基を含有する重合性イオン性液体を提供する別の方法としては、以下の反応スキームによって示されるような、ヒドロキシル官能性前駆体と官能化(メタ)アクリレート分子との反応が挙げられる。
【0046】
【化9】

【0047】
アミド連結基を含有する重合性イオン性液体を提供する別の方法としては、以下の反応スキームによって示されるような、アミン官能性前駆体と官能化(メタ)アクリレート分子との反応が挙げられる。
【0048】
【化10】

【0049】
尿素連結基を含有する重合性イオン性液体を提供する別の例示的な方法は、以下の反応スキームによって示される。
【0050】
【化11】

【0051】
多官能性カチオン(すなわち、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するカチオン)を有する、本明細書に記載の重合性イオン性液体は、光学フィルムの静電気防止層を作製するのに有用な静電気防止コーティング等の様々な重合性組成物で利用することができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、静電気防止コーティングは、任意の他のエチレン性不飽和重合性(例えば、(メタ)アクリレート)成分の非存在下で、本明細書に記載されるような多官能性カチオンを有する重合性イオン性液体から構成される。
【0053】
他の実施形態では、静電気防止層は、少なくとも1つの単官能性(例えば、モノ(メタクリレート))重合性イオン性液体と本明細書に記載される多官能性カチオンを有する少なくとも1つの重合性イオン性液体との組み合わせを含む。更に他の実施形態では、静電気防止層は、少なくとも1つの重合性シリコーンモノマー、オリゴマー、又はポリマーを更に含む。重合性イオン性液体は、1〜99.95%、10〜60%、又は30〜50%の重量パーセントで静電気防止層中に存在し得る。アクリレート官能性オニウム塩は、より速くより高度の硬化を呈するため、メタクリレートオニウム塩よりも好ましい。
【0054】
いずれの実施形態でも、反応開始剤は、典型的に、本明細書に記載されるように、多官能性重合性イオン性液体、又は少なくとも1つの多官能性重合性イオン性液体を含む重合性成分の混合物に加えられる。反応開始剤は、重合性組成物において容易に溶解する(及び重合性組成物からの分離を阻止する)ために、樹脂系と十分に混和性がある。重合性イオン性液体のアニオンは、重合性イオン性液体の、特に反応開始剤系との溶解度に影響を与え得ると理解される。重合性イオン性液体が有機フッ化物アニオンを含むとき、反応開始剤の適切な部類及び濃度の選択に注意する。
【0055】
典型的に、反応開始剤は、組成物中に、組成物の総重量に基づいて約0.1重量%〜約5.0重量%等の有効な量で存在する。
【0056】
幾つかの実施形態では、多官能性重合性イオン性液体又はそれを含む組成物は、光重合性であり、この組成物は、化学線の照射時に組成物の重合(又は固化)を開始させる光反応開始剤(すなわち、光反応開始剤系)を含有する。こうした光重合性組成物は、フリーラジカル重合性であることができる。光反応開始剤は、典型的に、約250nm〜約800nmの機能波長範囲を有する。
【0057】
フリーラジカル光重合性組成物を重合するのに好適な光反応開始剤(すなわち、1つ以上の化合物を含む光反応開始剤系)には、二要素系、三要素系が挙げられる。典型的な三要素系光反応開始剤は、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されているように、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物を含む。ヨードニウム塩としては、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。幾つかの好ましい光増感剤としては、約300nm〜約800nm(好ましくは、約400nm〜約500nm)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトン及びジケトン(例えば、αジケトン)が挙げられ、例えば、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、及びその他の環状αケトン等である。これらの中でも、典型的に、カンファーキノンが好ましい。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートが挙げられる。
【0058】
フリーラジカル光重合性組成物を重合するための好適な他の光反応開始剤としては、典型的に約380nm〜約1200nmの範囲の機能波長を有するホスフィンオキシドの部類が挙げられる。約380nm〜約450nmの機能波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル反応開始剤は、アシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0059】
約380nm〜約450nm超の波長範囲で照射されたときフリーラジカル反応開始可能な市販のホスフィンオキシド光反応開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819,Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,N.Y.)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシル−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量比25:75の混合物(IRGACURE 1700,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量比1:1の混合物(DAROCUR 4265,Ciba Specialty Chemicals)、及びエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR8893X,BASF Corp.,Charlotte,N.C.)が挙げられる。
【0060】
三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明で有用な三級アミンの具体例としては、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。アミン還元剤は、存在する場合、光重合性組成物中に、組成物の総重量を基準として約0.1重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0061】
幾つかの実施形態では、硬化性歯科組成物は、紫外線(UV)で照射されてもよい。この実施形態では、好適な光反応開始剤としては、Ciba Speciality Chemical Corp.,Tarrytown,N.Y.からIRGACURE及びDAROCURの商品名で入手可能なものが挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCUR 1173)が挙げられる。
【0062】
光重合性組成物は、典型的に、組成物の様々な成分を混合することによって調製される。光重合性組成物が空気の存在下で硬化されない実施形態では、光反応開始剤は、「安全な光」条件下(すなわち、組成物の早期硬化を引き起こさない条件下)で合わせられる。混合物を調製するとき、必要に応じて、好適な不活性溶媒を用いてもよい。好適な溶媒の例としては、アセトン及びジクロロメタンが挙げられる。
【0063】
固化は、線源、好ましくは可視光源に組成物を曝露することによって起こる。石英ハロゲン電球、タングステンハロゲン電球、水銀アーク、炭素アーク、低、中、及び高圧水銀電球、プラズマアーク、発光ダイオード、並びにレーザ等の250nm〜800nmの化学線(特に、380nm〜520nmの波長の青色光)を発する光源を使用するのが便利である。一般に、有用な光源は、0.200〜1000W/cmの範囲の強度を有する。このような組成物を固化させるための様々な従来の光を用いることができる。
【0064】
曝露は、幾つかの方法で行うことができる。例えば、重合性組成物は、固化プロセス全体を通して(例えば、約2秒間〜約60秒間)放射線に絶え間なく曝露してもよい。また、組成物を単一線量の放射線に曝露し、次いで、線源を取り除き、それによって重合を生じさせることも可能である。場合によっては、低強度から高強度まで上がる光源に材料を曝してもよい。二重曝露を用いる場合、各線量の強度は同じであっても異なっていてもよい。同様に、各曝露の総エネルギーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
多官能性重合性イオン性液体又はそれを含む組成物は、化学的に固化可能であってもよく、すなわち、この組成物は、化学線の照射に依存することなく組成物を重合、硬化、又は他の方法で固化させることができる化学反応開始剤(すなわち、反応開始剤系)を含有する。このような化学的に固化可能な(例えば、重合性又は硬化性)組成物は、時に「自己硬化」組成物とも呼ばれ、レドックス硬化系、熱硬化系、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。更に、重合性組成物は、異なる反応開始剤の組み合わせであって、そのうちの少なくとも1つがフリーラジカル重合の開始に好適である組み合わせを含んでもよい。
【0066】
化学的固化性組成物は、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和重合性成分)、並びに酸化剤及び還元剤を含む酸化還元剤などの、レドックス硬化系を含んでもよい。
【0067】
樹脂系(例えば、エチレン性不飽和成分)の重合を開始させることができるフリーラジカルを生成するために、還元剤及び酸化剤は、互いに反応するか、又は別の方法で協働する。この種類の硬化は、暗反応であり、すなわち、光の存在に依存せず、光が存在しない状態下で進行可能である。還元剤及び酸化剤は、好ましくは十分に貯蔵安定性であり、望ましくない着色がなく、典型的な条件での保存及び使用を可能にする。
【0068】
有用な還元剤には、米国特許第5,501,727号(Wangら)に記載のような、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯化アスコルビン酸化合物;アミン、特に4−t−ブチルジメチルアニリンのような三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩のような芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素のようなチオ尿素;並びにこれらの混合物が挙げられる。他の二次還元剤は、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸塩又は亜硫酸アニオン塩、及びこれらの混合物を含み得る。還元剤はアミンであることが好ましい。
【0069】
好適な酸化剤も当業者には周知であり、過硫酸及びその塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。更なる酸化剤としては、ベンゾイルペルオキシドのようなペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド、並びに塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄のような遷移金属塩、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
1超の酸化剤又は1超過の還元剤を使用することが望ましい場合がある。また、レドックス硬化の速度を促進させるために、少量の遷移金属化合物を加えてもよい。還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(Mitraら)に記載されているように、マイクロカプセル化され得る。これは、一般に、重合性組成物の貯蔵安定性を増強し、必要であれば、還元剤及び酸化剤を共にパッケージ化できるようにする。例えば、カプセルの材料(encapsulant)の適切な選択により、酸化剤及び還元剤は、酸官能性成分及び任意の充填剤と組み合わせて、貯蔵安定性状態で維持することができる。
【0071】
また、本発明の組成物は、熱又は加熱により活性化されるフリーラジカル反応開始剤で硬化することができる。典型的な熱反応開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド等のペルオキシド及びアゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載される静電気防止コーティングを有する光学フィルムは、静電気拡散性であり、前面に適用される5キロボルトの電荷のうち90%を10秒間未満、好ましくは5秒間未満で拡散させる。米国特許第6,740,413号の13欄には、静電気拡散性及び表面抵抗率の試験方法が記載されている。本明細書で使用される具体的な手順は、実験のセクションに記載される。幾つかの実施形態では、静電気減衰時間は2秒以下である。幾つかの好ましい静電気防止剤は、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1秒以下の静電気減衰時間を提供する。
【0073】
幾つかの利点としては、本明細書に記載される静電気防止層が、(1)様々な光学フィルムに良好に接着する、(2)得られる光学デバイスに優れた静電気防止性を付与する、(3)例えば、ディスプレイデバイスを製造する等、光学デバイスとして用いるときに取扱及び操作に耐えるための耐久性を有し得る、並びに(4)無色透明であるので、そのままでも、又は色選択、ヘイズ、若しくは他の所望の効果をもたらすために更なる剤を追加したときでも、様々な光管理目的によく適したものとなる、等が挙げられる。
【0074】
多官能性カチオンを有する重合性イオン性液体と併用される好ましい一官能性(例えば、モノ(メタクリレート))重合性イオン性液体は、以下の式を有する。
【0075】
(Ra−b[(CHDR
【0076】
式中、X、R及びRは、既に記載した通りであり、
Gは、窒素、硫黄、又はリンであり、
aは、Gが硫黄である場合3であり、Gが窒素又はリンである場合4であり、
bは、1であり、
qは、1〜4の整数であり、
Dは、酸素、硫黄、又はNR(Rは、H又は炭素数1〜4の低級アルキルである)である。
【0077】
Gが環中に含まれる幾つかの実施形態では、オニウム塩は、以下の式のうちの1つを有する。
【0078】
【化12】

【0079】
幾つかの実施形態では、Gは、アンモニウムカチオンの窒素原子である。幾つかの実施形態では、Dは、酸素である。更に、幾つかの実施形態では、Rは、炭素数1〜4の低級アルキルである。
【0080】
本明細書において有用なアニオンの具体例としては、既に記載したものと同じアニオンが挙げられる。
【0081】
フルオロケミカルアニオンは、静電気防止コーティングに好ましい場合がある。したがって、幾つかの実施形態では、アニオンはフルオロケミカルアニオンである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される多官能性カチオンを有する重合性イオン性液体のアニオンは、フルオロケミカルアニオンである。他の実施形態では、多官能性カチオンを有する重合性イオン性液体と併用される一官能性重合性イオン性液体は、フルオロケミカルアニオンである。幾つかの具体例としては、−C(SOCF、−OSCF、−OSC 、及び−N(SOCFが挙げられる。入手容易性及びコストの面から、以下が好ましいことが多い:−OSCF、−OSC 、及び−N(SOCF
【0082】
本明細書で有用な弱く配位している有機フッ化物アニオンの代表例としては、フッ素化アリールスルホネート、ペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、シアノ−ビス−(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド等のアニオンが挙げられる。
【0083】
弱く配位している好適な有機フッ化物アニオンの例としては、以下が挙げられる。
【0084】
【化13】

【0085】
式中、各Rは、独立して、環状であっても非環状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよいフッ素化アルキル又はアリール基であり、所望により、N、O、及びS(例えば、−SF−又は−SF)等の連鎖(「鎖内」)又は末端ヘテロ原子を含有してもよい。Qは、独立して、SO又はCO連結基であり、Xは、基QR、CN、ハロゲン、H、アルキル、アリール、Q−アルキル、及びQ−アリールから選択される。任意の2つの連続するR基は、連結して、環を形成してもよい。好ましくは、Rは、ペルフルオロアルキル基であり、Qは、SOであり、各Xは、QRである。
【0086】
有機フッ化物アニオンを用いる場合、この有機フッ化物アニオンは、必要に応じて、完全にフッ素化されていてもよく(すなわち、ペルフルオロ化)、(その有機部分内で)部分的にフッ素化されていてもよい。有機フッ化物アニオンとしては、少なくとも1つの高度にフッ素化されたアルカンスルホニル基、すなわち、ペルフルオロアルカンスルホニル基、又は全ての非フッ素炭素結合置換基がスルホニル基に直接結合している炭素原子以外の炭素原子に結合している(好ましくは、全ての非フッ素炭素結合置換基が、スルホニル基から離れた2超の炭素原子である炭素原子に結合している)部分的にフッ素化されたアルカンスルホニル基を含むものが挙げられる。
【0087】
有機フッ化物アニオンは、少なくとも約80%がフッ素化されていてもよい(すなわち、アニオンの炭素結合置換基のうちの少なくとも約80%がフッ素原子である)。アニオンは、ペルフルオロ化されていてもよい(すなわち、完全にフッ素化されており、炭素結合置換基の全てがフッ素原子である)。好ましいペルフルオロ化アニオンを含むアニオンは、例えば、窒素、酸素、又は硫黄(例えば、−SF−又は−SF)等の1つ以上の連鎖(すなわち、鎖内)又は末端ヘテロ原子を含有してもよい。
【0088】
有機及び有機フッ化物アニオンとしては、ペルフルオロアルカンスルホネート、2つ又は3つのスルホネート基を有する有機フッ化物アニオン、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、ペルフルオロアルカンスルホネート、並びにビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド)が挙げられる。幾つかの実施形態で好ましいアニオンは、ペルフルオロ化されており、ここで全てのXはQRであり全てのQはSOであり、より好ましくは、アニオンは、ペルフルオロアルカンスルホネート又はビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、最も好ましくは、アニオンは、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドである。
【0089】
有機フッ化物イオンは、非オニウム重合性モノマー、オリゴマー、又はポリマーに対するオニウム塩の溶解度及び相溶性を高めることができる。これは、層の静電気防止性能を改善することができる優れた透明度及び優れたイオン移動度を有する層の提供において重要である。好ましいアニオンとしては、−C(SOCF、−OSCF、−OSC、及び−N(SOCFが挙げられる。より好ましいアニオンは、入手容易性及びコストの面から、−OSCF、−OSC、及び−N(SOCFであり、最も好ましいアニオンは、−N(SOCFである。
【0090】
重合性シリコーンモノマー、オリゴマー、及びポリマーの具体例は、DegussaからTEGO(登録商標)Rad製品群として入手することができる。特に有用な重合性シリコーンは、TEGO(商標)Rad 2250等のアクリレート官能性シリコーンポリエーテルである。
【0091】
また、静電気防止層は、上述の重合性シリコーンモノマー、オリゴマー、及びポリマーの代わりに又はこれらに加えて、重合性ペルフルオロポリエーテル部分含有モノマー、オリゴマー、又はポリマーを用いて作製してもよい。米国特許出願公開第2006/0216500A1号(Klunら)は、本明細書で有用なウレタンアクリレートを含有するペルフルオロポリエーテル部分の合成について開示している。米国特許出願公開第2008−0124555号(Klunら)は、本明細書で有用なポリ(エチレンオキシド)部分を含有するウレタンアクリレートを含有するペルフルオロポリエーテル部分について開示している。国際公開第2009/029438号(Pokornyら)は、本明細書で有用なウレタンアクリレートを含有するペルフルオロポリエーテル部分を含む硬化性シリコーンについて開示している。
【0092】
当業者に知られるように、表面の艶消しコーティングが光学フィルムにおいて有用であることが多く、このような艶消し特性を本発明の静電気防止コーティングに付与することが望ましい場合がある。艶消しコーティングによってヘイズが増大し透明度が低下することが、より均一なディスプレイを提供し、特に液晶ディスプレイ(LCD)において下層のフィルム積層体及びバックライトから光学的欠点を隠すのに役立つ。艶消しコーティングを提供するために様々な手段が利用可能であり、本発明で有用である。
【0093】
多相コーティングは、表面のコーティング、又はコーティングのバルク内に配合された不混和性材料から生じる艶消し表面構造、例えば、コーティングにおけるポリメチルメタクリレートビーズ等の粒子のエントレインメントを有する場合がある。幾つかの実施形態では、コーティングのバルクとは異なる屈折率を有する粒子を用いて、必ずしも艶消し表面を得ずに、所望のヘイズ特性を付与することができる。有用な粒子は任意の形状であってもよいが、典型的に好ましい粒子形状は、球形又は楕円形ビーズの形態であることが多い。好ましい粒径は、一般に、平均粒径で約0.1マイクロメートル〜約20マイクロメートルである。粒子は、コーティングに適合する任意の材料から作製することができる。粒子に好適な材料の幾つかの具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリシリコーン、及びシリカが挙げられる。有用な粒子は、全て日本のGanz Chemical,Sekisui Plastics Co.,Ltd.及びSoken Chemical & Engineering Co.,Ltdから入手することができる。
【0094】
特に、透明性が重要な用途で重合性組成物が使用される場合(光学フィルムで使用するための静電気防止コーティング等)、重合性イオン性液体及び任意の重合性シリコーン含有物、並びに他の成分は、存在する場合、混合及び重合して透明なフィルムを形成するという点で適合性でなければならない。
【0095】
上記重合性イオン性液体及び重合性シリコーン成分に加えて、本発明の静電気防止層は、重合性非シリコーンモノマー、オリゴマー、又はポリマーを更に含む硬化性組成物から作製することができる。このような材料を用いて、得られる層の特性、例えば、光学フィルムに対する接着性、可撓性又は他の機械的特性、光学特性、例えば、ヘイズ、透明度等を変化させることができ、コストを低減することができる。
【0096】
本明細書で有用な重合性(すなわち、非ケイ素、非オニウム)モノマー、オリゴマー、又はポリマーの幾つかの具体例としては、例えば、(a)モノ(メタクリル)含有化合物、例えば、フェノキシエチルアクリレート、エトキシル化フェノキシエチルアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシル化テトラヒドロフルフラールアクリレート、及びカプロラクトンアクリレート、(b)ジ(メタ)アクリル含有化合物、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、(c)トリ(メタ)アクリル含有化合物、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、(d)高級官能性(メタ)アクリル含有化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、(e)オリゴマー性(メタ)アクリル化合物、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;前述のポリアクリルアミド類似体;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。このような化合物は、例えば、Sartomer Company(Exton,Pennsylvania);UCB Chemicals Corporation(Smyrna,Georgia);Cytec Corporation、Cognis、及びAldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)等の供給メーカーから広く入手可能である。更なる有用な(メタ)アクリレート材料としては、例えば、米国特許第4,262,072号(Wendlingら)に記載されているようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0097】
光学フィルム
典型的に、本発明のデバイスにおける光学フィルムは、反射偏光子(例えば、交互の屈折率の規則的な繰り返し層を有するいわゆる多層光学フィルム又は「MOF」)、輝度向上フィルム、及び拡散反射偏光フィルム(時に、交互の屈折率のドメインを有する多層構造を有する「DRPF」と呼ばれる)からなる群から選択される。反射偏光子の1つの具体例は、3Mから市販されており、米国特許第7,345,137号(Hebrinkら)に記載されている、VIKUITI(商標)二重輝度向上フィルムII(DBEF−II)が挙げられる。やはり3Mから市販されている好適なプリズム式輝度向上フィルム(時に、「BEF」と呼ばれる)は、米国特許第5,771,328号(Wortmanら)、同第6,280,063号(Fong)、及び同第6,354,709号(Campbellら)、並びに米国特許出願公開第2009/0017256号(Huntら)に記載されている。本明細書で使用することができる拡散反射偏光フィルムの具体例としては、米国特許第5,825,543号(Ouderkirkら)に開示されているものが挙げられる。本明細書で使用するのに好適な市販の光学フィルムの具体例としては、VIKUITI(商標)二重輝度向上フィルム(DBEF)、VIKUITI(商標)輝度向上フィルム(BEF)、VIKUITI(商標)拡散反射偏光フィルム(DRPF)、VIKUITI(商標)増強正反射体(ESR)、及びVIKUITI(商標)高度偏光フィルム(APF)が挙げられ、いずれも3M Companyから入手可能である。
【0098】
米国特許第5,175,030号(Luら)及び同第5,183,597号(Lu)に記載されているように、ミクロ構造を有する物品(例えば、輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターのネガティブミクロ構造化成形表面上に、マスターのキャビティを充填するのにかろうじて十分な量の重合性組成物を付着させる工程と、(c)重合性組成物のビーズを、その少なくとも一方が可撓性である予備形成された基部(例えば、PETフィルム)とマスターとの間を移動させることによってキャビティを充填する工程と、(d)組成物を硬化させて基部上にミクロ構造化成形光学素子のアレイを得る工程と、を含む方法によって調製することができる。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅若しくは黄銅のような金属であり得るか、又は重合条件下で安定であり、かつマスターから重合材料をきれいに取り出し得る表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であり得る。
【0099】
有用な基部材料としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸系コポリマー又はブレンド、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、及びガラスが挙げられる。所望により、基部材料には、これらの物質の混合物又は組み合わせを含有することができる。更に、基部は多層であってもよいし、又は連続相の中に懸濁若しくは分散した分散成分を含有してもよい。
【0100】
輝度向上フィルムなどのミクロ構造保有製品の場合、好ましい基部材料の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネートが挙げられる。有用なPETフィルムの例としては、フォトグレードのポリエチレンテレフタレート及びMELINEX(商標)PET(DuPont Films(Wilmington,Del)から入手可能)が挙げられる。
【0101】
幾つかの基部材料は、光学的に活性であり得、偏光材料として作用することができる。フィルムを通る光の偏光は、例えば通過光を選択的に吸収するフィルム材料に二色偏光子を含めることにより実現され得る。光の偏光はまた、配列雲母チップのような無機材料を含めることによって、又は連続フィルム内に分散している光変調液晶の液滴といった連続フィルム内に分散している不連続相によって実現させることができる。代替手段として、異なる材料のマイクロファイン層から偏光フィルムを調製することができる。フィルム内の材料は、例えば、フィルムの延伸、電場又は磁場の適用、及びコーティング技術のような方法を用いることによって、偏光配向に揃えることができる。
【0102】
偏光フィルムの例としては、米国特許第5,825,543号(Ouderkirkら)及び同第5,783,120号(Ouderkirkら)に記載されているものが挙げられる。これら偏光フィルムと輝度向上フィルムとの併用は、米国特許第6,111,696号(Allenら)に記載されている。基部として用いることができる偏光フィルムの別の例は、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)に記載されているフィルムである。
【0103】
基部への光学層の付着を促進するために、ベースフィルム材料の1つ以上の表面に、所望により下地処理又は他の処理を施すことができる。ポリエステルベースフィルム層に特に好適なプライマーとしては、米国特許第5,427,835号(Morrisonら)に記載されているようなスルホポリエステルプライマーが挙げられる。プライマー層の厚さは、典型的には少なくとも約20nmであり、一般的には、約300nm以下〜約400nm以下である。
【0104】
光学素子は、多数の有用なパターンのいずれかを有することができる。これらには、規則的又は不規則的なプリズムパターンが挙げられ、これは環状プリズムパターン、キューブコーナーパターン又は任意のその他のレンズ状ミクロ構造であり得る。有用なミクロ構造は、輝度向上フィルムとして使用するための全内部反射フィルムとして作用することができる規則的プリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、反射フィルムとして使用するための再帰反射フィルム又は素子として作用することができるコーナーキューブプリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、光学ディスプレイに使用するための光学回転フィルム又は素子として作用することができるプリズムパターンである。
【0105】
重合ミクロ構造化表面を有する1つの好ましい光学フィルムは、輝度向上フィルムである。輝度向上フィルムは、一般に、照明装置の軸上の輝き(本明細書で「輝度」と呼ばれる)を増強する。ミクロ構造のトポグラフィーは、フィルム表面上に複数のプリズムであり得、その結果、このフィルムを使用して、反射及び屈折を通じて光の方向を変えることができる。プリズムの高さは、通常、約1〜約75マイクロメートルの範囲である。ラップトップコンピューター、時計などに見られるもののような光学ディスプレイで使用する場合、ミクロ構造化光学フィルムは、光学ディスプレイを貫通する法線軸から所望の角度で配設された1対の平面内に、ディスプレイから散逸する光を制限することにより、光学ディスプレイの輝度を増大させることが可能である。その結果、許容範囲外でディスプレイから出る光は、反射してディスプレイに戻し、そこでその一部が「再利用され」、それがディスプレイから出ることができるような角度でミクロ構造化フィルムに戻る。この再利用は、ディスプレイに所望の輝度を提供するのに必要な電力消費量を低減することができることから、有用である。
【0106】
輝度向上フィルムのミクロ構造化光学素子は、一般に、フィルムの長さ又は幅に沿って延在する複数の平行な長手方向隆起部を含む。これらの隆起部は、複数のプリズム頂点から形成することができる。各プリズムは、第1ファセットと第2ファセットとを有する。プリズムは、プリズムが形成されている第1表面及び実質的に平ら又は平面でありかつ第1表面に対向する第2表面を有する基部の上に形成されている。直角プリズムとは、頂角が典型的には約90度であることを意味する。しかし、この角度は、約70°〜約120°の範囲であってもよく、約80°〜約100°の範囲であってもよい。これらの頂点は、先鋭形、丸形、又は平坦形若しくは切頭形とすることができる。例えば、隆起部は、約4〜約7〜約15マイクロメートルの範囲の半径の丸形にしてよい。プリズムピーク間の間隔(又はピッチ)は、約5〜約300マイクロメートルであってよい。プリズムは、米国特許第7,074,463号(Jonesら)に記載のもののように様々なパターンに配置することができる。
【0107】
薄い輝度向上フィルムを用いる本発明の光学デバイスでは、ピッチは、好ましくは約10〜約36マイクロメートル、より好ましくは約17〜約24マイクロメートルである。これは、好ましくは約5〜約18マイクロメートル、より好ましくは約9〜約12マイクロメートルのプリズム高さに相当する。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムはお互いに対して傾斜していてよい。光学物品の総厚さとプリズム高さとの関係は、様々であり得る。しかしながら、典型的には、明確なプリズムファセットを有する比較的薄い光学層を用いるのが望ましい。約1ミル(約20〜35マイクロメートル)に近い厚さを有する基材上の薄い輝度向上フィルムについては、プリズムの高さの総厚さに対する典型的な比は、一般に、約0.2〜約0.4である。他の実施形態では、より厚いBEF材料、50マイクロメートルのピッチ及び25マイクロメートルの厚さを有するBEF材料が用いられる。
【0108】
当業者に理解されるように、本発明の光学デバイスは、上述の具体例以外の他の種類の光学層又はMOF、BEF、若しくはDRPF材料の他の実施形態を用いて作製してもよい。
【0109】
輝度向上フィルム上の外側層の静電気防止コーティングは、フィルムの輝度向上特性に干渉しないように、最小吸光度及び色を付与すべきである。コーティングは、ヘイズを高めかつ透明度を低下させて、均一なディスプレイを提供し、下層のフィルム積層体及びバックライトから光学的欠点を隠すことができる。これらは、妥当な耐久性を提供しなければならない。
【0110】
恐らく最も単純な実施形態では、本発明のデバイスは、その1つの表面上において、本明細書に記載されるような静電気防止層を有する光学層を含む。幾つかの実施形態では、光学デバイスは、例えばDBEF−II等の光学層の各層上に本発明の静電気防止層を含んでもよく、ここでは、静電気防止層は同じであってもよく、又は独立して最適化されて、例えば一方の静電気防止層ではPMMAビーズであるが他方はそうではなくてもよい。
【実施例】
【0111】
以下の具体例を参照して本発明を説明する。特に指示しない限り、全ての量は重量パーセントで表される。
【0112】
試験方法
平均静電気減衰は、以下の方法を用いて決定した。試験材料のシートを12cm×15cmのサンプルに切断し、約50%の相対湿度(RH)で少なくとも12時間コンディショニングした。材料を22〜25℃の範囲の温度で試験した。静電荷散逸時間は、ETSモデル406D静電気減衰試験装置(Electro−Tech Systems,Inc.,Glenside,Pa.製造)を用いて、連邦試験方法標準規格10113の方法4046「Antistatic Properties of Materials」として以前知られていたMIL−STD 3010の方法4046に従って測定した。この装置は、高圧(5000ボルト)を用いることによって平坦な試験材料の表面上で初期静電荷を誘導し(平均誘導静電荷)、電場計測器は、表面電圧の減衰時間を5000ボルト(又はどの誘導静電荷でも)から初期誘導電荷の10%まで観測できるようにすることができる。これが、静電荷散逸時間である。静電荷散逸時間が短いほど、試験材料の静電気防止特性が優れている。本発明における静電荷散逸時間の全ての報告値は、少なくとも3回の別個の測定の平均(平均静電気減衰率)である。>60秒と報告される値は、試験されたサンプルが、表面伝導によって除去することができない初期静電荷を有し、静電気防止性ではないことを示す。試験されたサンプルが約3000ボルト以上の電荷を受容しなかった場合、十分に静電気防止性に帯電しているとはみなされなかった。
【0113】
材料
DBEFフィルム(光学層):各サンプルにおいて、3M製のVIKUITI(商標)二重輝度向上フィルムII(又はDBEF II)を光学フィルムとして用いた。このようなフィルムは、以下のように作製することができる。
【0114】
多層反射偏光フィルムは、ポリエチレンナフタレートから作製される第1の光学層、及びコ(ポリエチレンナフタレート)から作製される第2の光学層、及びEastman Chemical Companyから商標名「VM365」として市販されている脂環式ポリエステル/ポリカーボネートブレンドから作製されるスキン層、すなわち非光学層から構築され、更にNOVA Chemicalsから入手可能なスチレン−アクリレートコポリマー「NAS30」とブレンドされた。
【0115】
第1の光学層を形成するのに用いられるコポリエチレンヘキサメチレンナフタレートポリマー(CoPEN5050HH)は、以下の原材料が充填されたバッチ反応器内で合成される:ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(80.9kg)、ジメチルテレフタレート(64.1kg)、1,6−ヘキサンジオール(15.45kg)、エチレングリコール(75.4kg)、トリメチロールプロパン(2kg)、酢酸コバルト(II)(25g)、酢酸亜鉛(40g)、及び酢酸アンチモン(III)(60g)。2気圧(2×10N/m(202.7kPa))の圧力で混合物を254℃に加熱し、メタノール反応生成物を除去しながら混合物を反応させた。反応が完了し、メタノール(約42.4kg)を除去した後、反応容器にトリエチルホスホノアセテート(55g)を充填し、290℃に加熱しながら1トール(263N/m(133.3Pa))に減圧した。フェノールとo−ジクロロベンゼンとの60重量%/40重量%の混合物において測定したときに固有粘度が0.55dl/gであるポリマーが生成されるまで、縮合副生成物であるエチレングリコールを絶え間なく除去した。この方法によって生成されたCoPEN5050HHポリマーは、温度上昇速度20℃/分で示差走査熱量測定したところ、85℃のガラス転移温度(T)を有していた。CoPEN5050HHポリマーは、632nmで1.601の屈折率を有していた。
【0116】
上記PEN及びCoPEN5050HHを多層融解物マニホールドを通して共押出して、275枚の第1及び第2の光学層が交互に存在する多層光学フィルムを作製した。この275枚の層の多層積層体を3つの部分に分け、積み重ねて、825枚の層を形成した。PEN層は、第1の光学層であり、CoPEN5050HH層は、第2の光学層であった。第1及び第2の光学層に加えて、2組のスキン層を、更なる融解物口を通して光学層の外側に共押出した。22重量%のNAs30とブレンドされたVM365を用いて、外部のスキン層セットを形成した。したがって、構成体は、以下の層の順序になった:VM365/NAS30ブレンドの外側スキン層、825枚の光学層1及び2の交互層、VM365/NAS30ブレンドの外側スキン層。
【0117】
多層押出フィルムを5メートル/分(15フィート/分)で冷却ロール上に流延し、150℃(302°F)のオーブンで30秒間加熱し、次いで、延伸比5.5:1で一軸配向した。150マイクロメートル(8ミル)の厚さの反射偏光フィルムを作製した。
【0118】
この多層フィルムは、Gardnerヘイズメーターを用いて測定したときヘイズ度が42%であると測定された。この多層フィルムは、熱ショック試験(歪み試験)に供したとき、−35℃〜85℃の熱サイクル100時間後に、許容できる歪みレベルを有していた。
【0119】
多官能性カチオンを有する重合性イオン性液体の合成
PIL Aの調製
工程1:ビスヒドロキシエチル化イミダゾリウム塩の調製
【0120】
【化14】

【0121】
1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(25.0g、0.22モル、Aldrichから入手可能)及び2−ブロモエタノール(27.9g、0.22モル、Aldrichから入手可能)のエタノール(100mL)溶液を36時間還流させながら加熱し、次いで、室温に冷却し、減圧下でエタノールを除去した。4×100mLの塩化メチレンで残りの油を抽出し、次いで、減圧下で濃縮して橙色の油であるビスヒドロキシエチル化イミダゾリウム塩(50.1g)が残った。油のNMR分析によって、所望の生成物が形成されたことを確認した。
【0122】
工程1:ビスメタクリレートイオン性液体の調製
【0123】
【化15】

【0124】
塩化メチレン(50mL)中、工程1で得られたビスヒドロキシエチル化イミダゾリウム塩(4.40g、18.6mmol)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(5.75g、37.1mmol、Aldrichから入手可能)、及び1滴(約20mg)のジブチルスズジラウレート(Aldrichから入手可能)の混合物を室温で4日間攪拌した。このとき、最初は不溶性であった塩が溶解し、赤外分光法による反応混合物の分析によって、最初に存在したイソシアネートの2275cm−1での吸収がなくなったことが示された。減圧下で塩化メチレンを除去した反応生成物の一部をNMR分析したところ、所望のビスメタクリレートが形成されていたことが確認された。ビスメタクリレートを塩化メチレン溶液中で維持し、そのまま使用した。
【0125】
PIL Bの調製
【0126】
【化16】

【0127】
n−ブチルアミン(0.993g、14mmol、Aldrich)及びメタクリルオキシエチルアクリレート(5.00g、27mmol、Klee,J.E.ら、Macromol.Chem.Phys.、200、1999、517に従って調製)を室温で24時間攪拌した。中間生成物は、無色の液体であった。
【0128】
硫酸ジメチル(0.57g、4.5mmol)を上記中間生成物(2.00g、4.5mmol)に10分間かけて滴下した。混合物を17時間攪拌して、濃い液体として最終PIL生成物を得た。
【0129】
PIL−C(「POS−2」)の調製
【0130】
以下の式によって表される重合性オニウム塩2(POS−2):
【0131】
【化17】

【0132】
乾燥管及び電磁攪拌器を備えたフラスコ内のトリス−(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェート(11.58g、0.04モル、BASFから入手可能)、イソシアナトエチルメタクリレート(19.58g、0.12モル)、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT、0.020g、Aldrichから入手可能)の塩化メチレン(50mL)溶液に、1滴のジブチルスズジラウレートを加えた。溶液を氷浴中で冷却し、3時間攪拌し、次いで、室温に加温し、更に36時間攪拌を続けた。反応の進行を赤外分光法によってモニタしたところ、イソシアネート吸収の消失が観察された。反応が完了したら、減圧下で溶媒を除去し、非常に粘性の高い液体を得た。
【0133】
PIL Dの調製
【0134】
【化18】

【0135】
攪拌され、氷冷された、トリス−(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェート(17.38g、0.06モル)、モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルスクシネート(41.42g、0.18モル、Aldrichから入手可能)、及び4−ジメチルアミノピリジン(1.098g、0.009モル、Aldrichから入手可能)の酢酸エチル溶液(150mL)に、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、37.1g、0.18モル、Aldrichから入手可能)の酢酸エチル(150mL)溶液を2時間かけて滴下した。DCC溶液を加えた後、反応混合物の温度を徐々に室温まで上昇させ、次いで、反応物を14時間攪拌した。次いで、0.5gの脱イオン水及び2.0gのシリカゲルをフラスコに加え、反応混合物を1時間攪拌した。次いで、混合物を濾過し、減圧下で濾液から溶媒を除去して、僅かに黄色である非常に粘性の高い液体生成物を得た。
【0136】
PIL−Eの調製
【0137】
【化19】

【0138】
PIL−C(14.09g、0.0190モル)に250mLの丸底フラスコ内の水14.09gを加え、これを55℃の浴中にて空気下で加熱した。次いで、3Mから商標名「HQ−115」として販売されているリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、Li+−N(SOCFの80%固形分水溶液、6.82g(0.0190モル)を10秒間かけて加えたところ、白色の固体が沈殿し、次いで、0.78gの水を加えた。フラスコをフラスコから除去し、50gの塩化メチレンを攪拌しながら反応物に加えた。反応物を分液漏斗で分離し、下層の有機層を15.1gの水で洗浄した。有機層を再び分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、2mgのBHTで処理し、53℃、380mmの圧力で、空気下にて濃縮して、13.2gの透明な濃い油を得た。
【0139】
PIL−Eの代替的調製
50℃の油浴中の250mLのフラスコ内のトリス−(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェート(50.0g、0.182モル、の水(37.5g)溶液に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(65.18g、80%固形分水溶液(0.182モル)を攪拌しながら20秒間かけて加え、次いで、6.26gの水を加えた。3分間攪拌した後、反応物を最高100℃の浴中でロータリーエバポレータで濃縮して、101.75gの
【0140】
【化20】

【0141】
及びLi+ −OSOCHを、白色固体が分散している透明な液体として得た。均質であるときこの物質は78.85重量%が第四級アンモニウム化合物塩である。
【0142】
オーバーヘッドスターラーを備える2つ口の250mL丸底フラスコ内の前述の反応物(0.0889モル、0.267OH当量の(HOCHCHN(CH)+ −N(SOCF)からの混合物50gに、56.62gの塩化メチレンを加えた。フラスコを空気下で40℃の油浴中に入れ、1滴のジブチルスズジラウレートを加えた。次に、イソシアナトエチルメタクリレート(41.40g、0.267モル)を20分間かけて加えた。2275cm−1でのイソシアネートピークの消失についてFTIRで反応物をモニタし、反応の7時間後に完了したと判定された。室温の反応物に75gの塩化メチレン及び50gの水を攪拌しながら加えた。反応物を分液漏斗で分離し、下層の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、12mgのBHTで処理し、約5時間53℃にて圧力380mmの空気下で濃縮して、86.67gの透明な粘性の高い油を得た。
【0143】
PIL−Fの調製
【0144】
【化21】

【0145】
PIL−D(15.74g、0.0173モル)に125mLの丸底フラスコ内の水15.74gを加え、これを55℃の浴中にて空気下で加熱した。この物質は水溶性がそれほど高くなく、反応物は、曇った上層と液体の下層からなっていた。次いで、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、Li+−N(SOCFの80%固形分水溶液、6.20g(0.0173モル)を10秒間かけて加えたところ、白色の固体が沈殿し、次いで、5.84gの水を加えた。反応物を2時間攪拌し、次いで、浴の温度を40℃まで低下させた。次に、50gの塩化メチレンを攪拌しながら30分間かけて反応物に加えた。反応物を分液漏斗で分離し、下層の有機層を25.0gの水で洗浄した。有機層を再び分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、53℃、280mmの圧力で、空気下にて濃縮して、16.12gの僅かに黄色の透明な油を得た。
【0146】
窒素に対する空気の硬化発熱比率の測定:
窒素及び空気下におけるモノマーの光重合挙動を、示差走査光熱量計(フォトDSC)を用いて判定した。フォトDSCは、DSCモジュール2920を備えるTA instrument(New Castle,DE)であった。光源は、Oriel PN 59480の425nmのロングパス光フィルタを備える水銀/アルゴン電球であった。光の強度は、モデルXRL、340A検出器を備えるInternational Light光度計モデルIL 1400を用いて測定したとき、3mW/cmであった。光硬化性サンプルは、光反応開始剤パッケージとして0.5%のカンファーキノン(Sigma−Aldrich)、1.0%のエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート(Sigma−Aldrich)、及び1.0%のジフェニルヨウ素ヘキサフルオロホスフェートを含有していた。10mgの硬化したサンプルをレファレンスとして用いた。
【0147】
約10mgのサンプルを、サンプルホルダとしてHermeticパン(アルミニウムサンプルパン)を用いて試験用に正確に計量した。サンプルを37℃で5分間平衡化させ、次いで、光開口部を開いてサンプルに照射した。照射中、サンプルの温度を37℃に維持した。総照射時間は30分間であった。30分後、開口部を閉じ、サンプルを更に5分間37℃で維持した。サンプルを、それぞれ窒素及び空気雰囲気下で試験した。
【0148】
熱出力/単位重量(mW/g)としてデータを回収した。TA Thermal Solutions Universal Analysisソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0149】
窒素下で1回モノマーを試験し、次いで、同一サンプルを空気下で試験した。DSCは、曝露中の硬化サンプルからの熱発生を記録し、曲線下面積を積分して総ジュール/グラムを得た。サンプルを空気中で硬化させたときに発生する熱を、サンプルを窒素下で硬化させたときに発生する熱で除して、硬化比を得た。比が大きいほど、酸素阻害が少ないことを表す。
【0150】
フォトDSCによる多官能性PIL及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA、Aldrichから入手可能)の光硬化についての試験結果
【0151】
【表1】

【0152】
多官能性重合性イオン性液体と併用される一官能性重合性イオン性液体
【0153】
1.重合性オニウム塩1(POS−1)(CHNCHCHOC(O)CH=CH+−N(SOCF、−(アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
【0154】
【化22】

【0155】
を以下の通り調製した:オーバーヘッドスターラーを備える、風袋を量った既知の5Lの3つ口丸底フラスコに、1486g(水中固形分79.1%、6.069モル)のAGEFLEX(商標)FA1Q80MC500を充填し、内容物を40℃に加熱した。フラスコに、約1分間かけて、2177.33g(水中固形分80%、6.069モル)のHQ−115、次いで、597.6gの脱イオン水を加えた。1時間攪拌した後、反応物を分液漏斗に移し、下層の有機層(2688.7g)を反応フラスコに戻し、40℃で30分間1486gの脱イオン水で洗浄した。下層(2656.5g)を再度水層から分離し、オーバーヘッドスターラー、スティルヘッド(stillhead)、及びエアーバブラーを備える乾燥した5Lの3つ口丸底フラスコに入れた。フラスコに、2000gのアセトンを加え、反応物を6時間かけてエアスパージにより大気圧で蒸留して生成物を共沸乾燥させ、2591gの透明な液体を得、これはゆっくりと固体に結晶化しせた。
【0156】
2.重合性オニウム塩1(「POS−3」)3−ブチル−1−[2−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチル]−3H−イミダゾール−1−イウムブロミド
【0157】
【化23】

【0158】
A)3−ブチル−1−(2−ヒドロキシ−エチル)−3H−イミダゾール−1−イウムブロミドの合成
N−ブチルイミダゾール(新たに蒸留、37.2g、300mmol)及び2−ブロモエタノール(新たに蒸留、37.5g、300mmol)を室温で混合して、僅かに発熱反応を引き起こした。混合物を50℃で90時間加熱した。非常に粘性の高い液体が生成物として得られた。
【0159】
B)3−ブチル−1−[2−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチル]−3H−イミダゾール−1−イウムブロミドの合成
3−ブチル−1−(2−ヒドロキシ−エチル)−3H−イミダゾール−1−イウムブロミド(29.9g、120mmol)に20mgのBHT及び2−メタクリロイルクロリド(13.8g、132mmol)を加えた。出発イオン性液体(IL)は、2−メタクリロイルクロリドに不溶性であった。混合物を室温で攪拌した。ILは徐々に溶解し、約半時間で均一なピンク色の溶液が得られた。揮発性の副生成物及び出発物質を反応の4時間後に減圧下で除去した。明るい茶色の液体が生成物として得られた。
【0160】
(実施例1〜3)
指定の配合を有する3つの重合性透明コーティング製剤を調製し、DBEF−II上にコーティングし、乾燥させ、硬化させ、試験した。これらの製剤は、全て85%のメタノール及び0.15%のCIBA(商標)DAROCUR(商標)4265硬化剤を含有していた。そうでなければ、以下の表に示すように様々であった。各製剤を混合して、可溶性成分を確実に溶解させた。#16の巻き線型メイヤーロッドを用いてDBEF−IIの裏側に各製剤を更にコーティングして、約3マイクロメートルの平均乾燥厚さを得た。各コーティングを140°F(60℃)のバッチオーブンで2分間乾燥させ、次いで、Fusion UV Systems Inc.製のD型電球を用いるFusion F600マイクロ波駆動式中圧ランプ下で、35フィート/分(10.7メートル/分)にて2パスで窒素環境下で紫外線硬化させた。35fpm(10.7メートル/分)の速度では、紫外線エネルギーは以下の通り発せられた:UVA 460mJ/cm、UVB 87mJ/cm、UVC 12mJ/cm、UVV 220mJ/cm。全てのコーティングから、DBEF−IIフィルムの輝度向上特性に干渉しない滑らかな透明のコーティング層が得られた。
【0161】
配合及び静電気減衰結果を表1に示すが、これは、重合性オニウムイオン性液体及び重合性シリコーンの組み合わせから重合性透明コーティングの静電気防止特性の驚くほどかつ劇的な改善が見られる。
【0162】
【表2】

【0163】
実施例4及び5では、表2に記載の成分を2.0グラムのメタノールに溶解させた。各製剤を#12の巻き線型メイヤーロッドを用いてPETフィルム(Dupontから商標名「Melinex 618」として入手可能)上にコーティングして、約10マイクロメートルの平均乾燥厚さにした。各コーティングを60℃のバッチオーブンで5分間乾燥させ、次いで、Fusion UV Systems Inc.製のFusion UV H電球を備える6インチ(15.24cm)の紫外線硬化プロセスライン(1分間当たり30フィート(9.1m)の速度で58mJ/cmを提供する高出力100% UV)上において、1分間当たり30フィート(9.1m)で、2パスにて、窒素環境下で紫外線硬化させた。硬化したコーティングは全て、非粘着性で滑らかな透明のコーティング層を提供した。
【0164】
硬化したコーティングを周囲湿度で即座に試験したことを除いて上記の通り硬化したコーティングを試験し、2つの別個の測定値を平均した。
【0165】
【表3】

【0166】
本発明を添付図面を参照しながら好ましい実施形態について詳細に説明したが、様々な変更及び修正が当業者に明らかであることに留意されたい。このような変更及び修正は、本発明の範囲内に含まれるものと理解すべきである。
【0167】
本明細書で引用する全ての特許及び特許出願は、全てその全文を援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオンと、それぞれが二価の非アルキル連結基を介してカチオン性基に結合している少なくとも2つのエチレン性不飽和重合性基を有するカチオン性基と、を含む、多官能性重合性イオン性液体。
【請求項2】
前記カチオン性基が、置換イミダゾリウム、置換アンモニウム、置換ホスホニウムから選択されるオニウム塩である、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項3】
前記カチオン性基が置換イミダゾリウムである、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項4】
前記カチオン性基が置換アンモニウムである、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項5】
前記アニオンが一価である、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項6】
前記アニオンがスルホネートである、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項7】
前記アニオンがハロゲン化物又は有機フッ化物アニオンである、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項8】
前記連結基が独立してヘテロ原子を含む、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項9】
前記連結基が独立して酸素又は窒素を含む、請求項8に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項10】
前記連結基が独立してアミド、ウレタン、尿素、エーテル、又はエステルから選択される1つ以上の結合を含む、請求項8又は9に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項11】
前記連結基がウレタン結合を含む、請求項10に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項12】
前記連結基がエステル結合を含む、請求項10に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項13】
前記重合性基が(メタ)アクリレート基である、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項14】
式:
【化1】


(式中、
Qは、窒素又はリンであり、
は独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はこれらの組み合わせであり、
は独立して、エチレン性不飽和基であり、
は独立して、連結基であるが、前記連結基のうちの少なくとも2つはアルキル連結基ではなく、
mは、2〜4の整数であり、
nは、0〜2の整数であり、
m+n=4であり、
Xは、アニオンである)を有する、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項15】
が独立してヘテロ原子を含む、請求項14に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項16】
前記ヘテロ原子が酸素又は窒素である、請求項15に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項17】
が独立してウレタン又はエステル結合を含む、請求項15又は16に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項18】
Qが窒素である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項19】
nが少なくとも1であり、Rが炭素数1〜4の低級アルキルである、請求項14〜18のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項20】
が(メタ)アクリレートである、請求項14〜19のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項21】
前記重合性イオン性液体が、式:
【化2】


を有する、請求項14に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項22】
前記重合性イオン性液体が、式:
【化3】


(式中、
は独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はこれらの組み合わせを含み、
は独立して、エチレン性不飽和基であり
は独立して、連結基であるが、前記連結基のうちの少なくとも2つはアルキル連結基ではなく
dは、0〜3の整数であり
Xは、アニオンである)を有する、請求項1に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項23】
が独立してヘテロ原子を含む、請求項22に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項24】
前記ヘテロ原子が酸素又は窒素である、請求項23に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項25】
が独立してウレタン又はエステル結合を含む、請求項23又は24に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項26】
が(メタ)アクリレートである、請求項22〜25のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項27】
前記重合性イオン性液体が、式:
【化4】


を有する、請求項22に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項28】
前記重合性イオン性液体が、少なくとも0.70の窒素に対する空気の硬化発熱比率を有する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体を含む、コーティング。
【請求項30】
前記コーティングが一官能性重合性イオン性液体を更に含む、請求項29に記載のコーティング。
【請求項31】
前記一官能性重合性イオン性液体が、式:
(Ra−b[(CHDR]X
(式中、
各Rは独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリル、又はこれらの組み合わせを含み、
Gは、窒素、硫黄、又はリンであり、
aは、Gが硫黄である場合は3であり、Gが窒素又はリンである場合は4であり、
qは1〜4の整数であり、
Dは、酸素、硫黄、又はNR(Rは、H又は炭素数1〜4の低級アルキルである)であり、
は、(メタ)アクリルであり、
Xは、アニオンである)を有する、請求項30に記載のコーティング。
【請求項32】
Gがアンモニウムカチオンの窒素である、請求項31に記載のコーティング。
【請求項33】
Gがイミダゾリウムカチオンの環に含まれ、前記一官能性重合性液体が式:
【化5】


を有する、請求項31に記載のコーティング。
【請求項34】
が(メタ)アクリレートであり、Dが前記(メタ)アクリレート基の酸素原子である、請求項31〜33のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項35】
が炭素数1〜4の低級アルキルである、請求項31〜34のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項36】
Xがハロゲン化物又は有機フッ化物アニオンである、請求項31〜35のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項37】
前記一官能性重合性イオン性液体が、少なくとも0.70の窒素に対する空気の硬化発熱比率を有する、請求項30〜36のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項38】
前記コーティングが静電気防止コーティングである、請求項30〜37のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項39】
基材と、前記基材の表面上で硬化される請求項30〜38のいずれか一項に記載のコーティングと、を含む、コーティングされた基材。
【請求項40】
少なくとも0.70の窒素に対する空気の硬化発熱比率を有する、反応開始剤を含む、多官能性重合性イオン性液体。
【請求項41】
前記重合性イオン性液体が、二価非アルキル連結基を介してカチオン性基に結合している少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む、請求項40に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項42】
前記重合性イオン性液体が多官能性カチオンを含む、請求項40に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項43】
前記重合性イオン性液体が置換アンモニウムカチオン性基を含む、請求項40に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項44】
前記アニオンが無機アニオンである、請求項40に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項45】
前記重合性イオン性液体が非重合性アニオンを含む、請求項40に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項46】
前記重合性イオン性液体が置換イミダゾリウムカチオン性基を含む、請求項45に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項47】
前記アニオンが有機アニオンである、請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項48】
前記窒素に対する空気の硬化発熱比率が少なくとも0.75である、請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項49】
前記窒素に対する空気の硬化発熱比率が少なくとも0.80である、請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項50】
前記窒素に対する空気の硬化発熱比率が少なくとも0.85である、請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項51】
前記窒素に対する空気の硬化発熱比率が少なくとも0.90である請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。
【請求項52】
前記窒素に対する空気の硬化発熱比率が少なくとも0.95である、請求項40〜46のいずれか一項に記載の多官能性重合性イオン性液体。

【公表番号】特表2013−506008(P2013−506008A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526891(P2012−526891)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046411
【国際公開番号】WO2011/031442
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】