多室包装袋及びそれを用いた包装体の製造方法
【課題】意図的に開封しないと開封できない開封手段を有する多室包装袋を提供する。
【解決手段】裏面フィルム３側の収納部８ｂを開閉可能とするジッパー９を設け、更に側縁融着部５を貫通する切り込みにより、先端を内側に向けた開封用舌片４を形成する。ジッパー９を閉鎖した状態で、表面フィルム１と裏面フィルム３を吸着して外方に引っ張ると、表面フィルム１側の収納部８ａが開放される。ジッパー９を開放した状態で、表面フィルム１側から吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸着すると共に、裏面フィルム３を吸着して外方へ引っ張ると、裏面フィルム３側の収納部８ｂが開放される。従って、吸引孔１０は表面フィルム１に１箇所だけで済む。また、開封が、開封用舌片４の引き裂き除去による開封用ノッチを形成と、開封用ノッチを始点とした袋の引き裂き開封の二段階で行われることから、意図的ではない偶然の開封を防止できる。
【解決手段】裏面フィルム３側の収納部８ｂを開閉可能とするジッパー９を設け、更に側縁融着部５を貫通する切り込みにより、先端を内側に向けた開封用舌片４を形成する。ジッパー９を閉鎖した状態で、表面フィルム１と裏面フィルム３を吸着して外方に引っ張ると、表面フィルム１側の収納部８ａが開放される。ジッパー９を開放した状態で、表面フィルム１側から吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸着すると共に、裏面フィルム３を吸着して外方へ引っ張ると、裏面フィルム３側の収納部８ｂが開放される。従って、吸引孔１０は表面フィルム１に１箇所だけで済む。また、開封が、開封用舌片４の引き裂き除去による開封用ノッチを形成と、開封用ノッチを始点とした袋の引き裂き開封の二段階で行われることから、意図的ではない偶然の開封を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の収納部を有する多室包装袋及びこの多室包装袋を用いた包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、袋の表裏面を形成する表面フィルムと裏面フィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、表面フィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔（表面側吸引孔）と、裏面フィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔（裏面側吸引孔）とが、表面フィルムと裏面フィルムの上縁部にそれぞれ形成された多室包装袋と、それを用いた包装体の製造方法とが知られている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
更に説明すると、被包装物は、表面フィルム側と裏面フィルム側でそれぞれ動作する吸引盤による吸引で各収納部を開口させることで自動充填される。上記多室包装袋の表面側吸引孔と裏面側吸引孔は、この自動充填時に、二つの収納部を別々に開口させることができるようにし、自動充填時の誤充填を防止するためのものである。例えば、表面フィルム側の吸引盤を表面側吸引孔からずれた位置に押し当てて表面フィルムを吸引させると共に、裏面フィルム側の吸引盤を裏面側吸引孔の位置に押し当てて分割フィルムを吸引させると、表面フィルム側の収納部を開口させることができる。これとは逆に、表面フィルム側の吸引盤を表面側吸引孔の位置に押し当てて分割フィルムを吸引させると共に、裏面フィルム側の吸引盤を裏面側吸引孔からずれた位置に押し当てて裏面フィルムを吸引させると、裏面フィルム側の収納部を開口させることができる。
【０００４】
また、一般に、袋の開封手段としては、側縁融着部の外縁に切り込んだＩノッチやＶノッチが広く知られている。
【０００５】
【特許文献１】特許第３４１３５０６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、上記従来の多室包装袋は、二つの収納部を選択的に開口するために、表面フィルムと裏面フィルムの両者に吸引孔を形成することが必要となる。このため、表面フィルムに形成した吸引孔と、裏面フィルムに形成した吸引孔が共に所定の位置になるよう調整しなければならず、両フィルムのピッチ合わせなど、製袋時の工程数が増える問題がある。また、吸引孔は、通常、原反フィルムに形成するが、吸引孔が形成されることにより原反フィルムの強度が低下し、表面フィルムと裏面フィルムのいずれの原反フィルムについても製袋時の取り扱い性が低下するという問題もある。
【０００７】
更に、被包装物の充填後は、両収納部の開口部を上縁融着部で熱融着して封止するが、表裏両フィルムに吸引孔が形成されているので、シールバーへシーラント材などが付着堆積しやすい問題がある。また、上記熱融着は、吸引孔が上縁融着部に内包されるようにしてい行われるが、凹部としてその跡が表裏両面に残ってしまい、得られる包装体の見栄えを悪くする問題もある。
【０００８】
一方、多室包装袋の用途によっては、幼児が開封できないようにすることが求められる。例えば、薬剤などにおいては、幼児の誤飲を防止するために、意図的に開封しないと開封できない開封手段とすることが求められている。従来広く知られているＩノッチやＶノッチの場合、これらのノッチによる引き裂き方向に力を加えるだけで開封してしまうので、偶然の開封を完全には防止できない問題がある。
【０００９】
本発明は、二つの収納部を選択的に開口させるための吸引孔について、その数を軽減又はなくし、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う製袋時の原反フィルムの取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び開口部を封止するための上縁融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下をいずれも軽減又は解消できるようにすることを第一の目的とする。
【００１０】
また、本発明は、意図的に開封しないと開封できない開封手段を有する多室包装袋とすることを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の第一は、上記目的を達成するために、表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムの上縁部には、他方のフィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔が、ジッパーの位置より上縁側に形成されており、更に、側縁融着部には、ジッパーと吸引孔の間に対応する位置に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋を提供するものである。
【００１２】
本発明の第二は、表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層、他方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層より融点が高い高融点シーラント層となっており、更に、側縁融着部には、ジッパーに対応する位置より上縁側に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋を提供するものである。
【００１３】
上記本発明の第二は、高融点シーラント層の融点が、低融点シーラント層の融点より２０℃以上高いことを好ましい態様として含む。
【００１４】
本発明の第三は、前記本発明の第一に係る多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
他方のフィルムの上縁部を当該他方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引して、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程
とを有することを特徴とする包装体の製造方法を提供するものである。
【００１５】
上記本発明の第三は、ジッパーの開放を、他方のフィルムの上縁部を当該一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引することで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことと、
第一充填工程及び第二充填工程後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部を、開封用舌片に対応する位置より上縁側で熱融着し、吸引孔を内包する上縁融着部を形成するシール工程の後、上縁融着部に吸引孔を含む単一の貫通孔を吊り下げ孔として形成すること
を好ましい態様として含む。
【００１６】
本発明の第四は、前記本発明の第二に係る多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
第一充填工程の後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層を当該低融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、一方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第一シール工程と、
第一シール工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程と、
第二充填工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第二シール工程と
を有することを特徴とする包装体の製造方法を提供するものである。
【００１７】
上記本発明の第四は、ジッパーの開放を、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張ることで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを好ましい態様として含む。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の第一及び第三によれば、ジッパーが閉じているときには、他方のフィルムと分割フィルムが閉じたジッパーで一体となっているので、一方のフィルムと他方のフィルムを吸引することで一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。また、ジッパーを開いた状態で、一方のフィルムの吸引孔を介して分割フィルムを吸引すると共に、他方のフィルムを吸引すれば、他方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。吸引孔は、一方のフィルム側のみで足るので、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う原反フィルムの製袋時の取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び封止用の熱融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下のいずをも、二つの吸引孔が必要な従来に比して１／２に軽減することができる。
【００１９】
本発明の第二及び第四において、ジッパーを閉じた状態で一方のフィルムと他方のフィルムを吸引すると、一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができるのは上記本発明の第一及び第三と同様である。加えて、本発明の第二及び第四によれば、低融点シーラント層と高融点シーラント層の融点の差によるシール温度領域の差を利用することで、低融点シーラント層同士が対向している一方のフィルムと分割フィルムの上縁部のみを選択的に熱融着させることができる。他方のフィルムと分割フィルムが閉じたジッパーで一体となっていることを利用して、一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させて被包装物を充填した後、低融点シーラント層同士が対向している一方のフィルムと分割フィルムの上縁部のみを選択的に熱融着し、ジッパーを開放すると、一方のフィルムと分割フィルムが熱融着されて一体となっているので、一方のフィルムと他方のフィルムを吸引すれば、他方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。本発明の第二及び第四によれば、吸引孔を設ける必要がないので、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う原反フィルムの製袋時の取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び封止用の熱融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下のいずをも解消することができる。
【００２０】
一方、本発明の第一〜第四において、側縁融着部に設けられている開封用舌片は、先端が内向きに形成されているので、当該側縁融着部の外縁側へ引っ張って引き裂き除去することができ、これによって開封用ノッチを形成することができる。本発明の第一〜第四に係る多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法により得られる包装体は、開封用舌片の引き裂き除去による開封用ノッチの形成と、この開封用ノッチを始点とした袋の引き裂き開封の二段階で開封が行われるものとなる。つまり、開封用舌片を引き裂き除去するまでは開封用ノッチが形成されていない状態となっていることから、意図的ではない偶然の開封を生じにくく、幼児による開封を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明を図面に基づいて更に説明する。なお、以下に説明する図面において、同じ符号は同様の部材又は部位を示す。
【００２２】
まず、図１〜図１１に基づいて、本発明の第一の例に係る多室包装袋と、これを用いた本発明の包装体の製造方法を説明する。
【００２３】
図１は本発明の第一の例に係る多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図２は本発明の第一の例に係る多室包装袋の斜視図、図３は本発明の第一の例に係る多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図、図４は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが閉鎖した状態で一方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第一充填工程）の説明図、図５は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図、図６は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図、図７は製造された包装体の一例を示す平面図、図８は製造された包装体の他の例を示す平面図、図９は図７に示される包装体の左側上部の拡大平面図、図１０は開封用舌片を用いて包装体を開封する場合の説明図、図１１は開封用舌片を除去して開封用ノッチを形成した状態の平面図、図１２は開封用舌片の他の形状例を示す図である。
【００２４】
図１及び図２に示されるように、本例の多室包装袋Ａは、一方のフィルム１、分割フィルム２及び他方のフィルム３の３枚のフィルムで構成されている。一方のフィルム１と他方のフィルム３は、多室包装袋Ａの表裏に位置するもので、いずれが表面でも裏面でもよいが、説明の便宜上、一方のフィルム１を袋の表面側に位置する表面フィルム、他方のフィルム３を袋の裏面側に位置する裏面フィルムとして説明する。
【００２５】
本例における上記表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３は、基材層にシーラント層を積層したもので、同形同大となっている。表面フィルム１と裏面フィルム３はそれぞれ内面がシーラント層となっており、分割フィルム２は両面がシーラント層となっている。多室包装袋Ａは、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３を、表面フィルム１と裏面フィルム３の間に分割フィルム２を挟み込んで、シーラント層同士を向き合わせて重ね、上縁を残して周縁部の三方を熱融着した袋状をなしている。
【００２６】
表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の各基材層としては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層としては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。
【００２７】
図２において、４は開封用舌片、５，５は側縁の熱融着部である側縁融着部、６は底縁の熱融着部である底縁融着部である。開封用舌片４は、図面上左側の側縁融着部５を貫通する切り込みによって先端を袋の内側向きにして形成されたもので、これについては後述する。
【００２８】
分割フィルム２は、上記熱融着が施されていない上縁に形成された、表面フィルム１と裏面フィルム３間の開口部７を二分しており、分割フィルム２を境にして、表面フィルム１側と裏面フィルム３側とにそれぞれ収納部８ａ，８ｂが形成されている。収納部８ａ，８ｂは、上記分割フィルム２で二分された開口部７の一方と他方である開口部７ａ，７ｂをそれぞれ有するものとなっている。
【００２９】
裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部（開口部７側の縁部）には、両者間に形成された収納部８ｂを開閉可能とするジッパー９が取り付けられている。ジッパー９は、凸条を有する雄型９ａと、凹条を有する雌型９ｂとからなるもので、雄型９ａと雌型９ｂを嵌め合わせることで収納部８ｂを閉鎖し、嵌め合わせを解除することで収納部８ｂを開放できるものとなっている。また、表面フィルム１の上縁部の中央部には、表面フィルム１側から分割フィルム２を吸引することができるよう、表面フィルム１を貫通する吸引孔１０が形成されている。この吸引孔１０は、上記ジッパー９の位置より上縁側に形成されている。
【００３０】
多室包装袋Ａには、表面フィルム１と分割フィルム２間に形成された表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３と分割フィルム２間に形成された裏面フィルム３側の収納部８ｂとに分けて、２種類の被包装物を充填することができる。被包装物は、表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３側の収納部８ｂとを別々に開くこと（開口部７ａと７ｂを別々に開くこと）で、充填箇所を誤ることなく自動充填することができる。
【００３１】
次に、上記多室包装袋Ａを用いた包装体の製造方法について説明する。
【００３２】
まず、図３に示されるように、多室包装袋Ａを、ジッパー９が閉じた状態で、側縁融着部５，５の上部をクリップ状の把持具１１，１１で掴んで吊り下げ、表面フィルム１と裏面フィルム３の外面に向かってそれぞれ進退可能な一対の吸引盤１２ａ，１２ｂ間に位置させる。
【００３３】
表面フィルム１側の収納部８ａ（図２参照）と、裏面フィルム３側の収納部８ｂ（図２参照）の選択的開放は、上記吸引盤１２ａ，１２ｂによる吸引と、ジッパー９の開閉によって行われる。吸引盤１２ａ，１２ｂによる吸引位置については後述するが、この吸引位置の調節は、吸引盤１２ａ，１２ｂ間における多室包装袋Ａの位置を調節することで行うこともできる。しかし、吸引位置の調節を行いやすくするために、上記吸引盤１２ａ，１２ｂは、対向する表面フィルム１又は裏面フィルム３に沿って上下左右に移動可能としておくことが好ましい。また、両把持具１１，１１は、後述する第一充填工程及び第二充填工程において、収納部８ａ，８ｂを大きく開口させることができるようにすると共に、この開放に伴って多室包装袋４Ａに無理な力が加わらないよう、対向方向に弾性的に進退可能としておくことが好ましい。
【００３４】
第一充填工程について説明する。
【００３５】
図４に示されるように、両吸引盤１２ａ，１２ｂを、表面フィルム１と裏面フィルム３とに向かって前進させ、表面フィルム１の上縁部の吸引孔１０からずれた位置と、裏面フィルム３の上縁部の中央部分とにそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム１と裏面フィルム３が吸引盤１２ａ，１２ｂにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤１２ａ，１２ｂを後退させる。これにより、表面フィルム１が外方へ引っ張られると共に、閉じたジッパー７によって分割フィルム２が裏面フィルム３と一体となって外方に引っ張られて、表面フィルム１側の収納部８ａの開口部７ａが開き、収納部８ａを開放することができる。この時、裏面フィルム３側の収納部８ｂ（図２参照）の開口部７ｂはジッパー９によって閉じた状態であるので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム１側の収納部８ａに自動充填することができる。
【００３６】
前記のように、把持具１０，１０を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、両吸引盤１２ａ，１２ｂを後退させて表面フィルム１と裏面フィルム３を外方へ引っ張た時に、両把持具１１，１１が弾性的に対向方向に前進し、多室包装袋Ａに過剰な張力が働くのを防止することができる。また、表面フィルム１側の収納部８ａに被包装物を充填した後、両吸引盤１２ａ，１２ｂを前進させると、両把持具１１，１１は弾性的に後退し、これに伴って収納部８ａの開口部７ａを閉じた状態に戻すことができる。
【００３７】
次に、ジッパー９の開放方法について説明する。
【００３８】
図５に示されるように、吸引盤１２ａ，１２ｂを、表面フィルム１の吸引孔１０の部分と、裏面フィルム３の上縁部の中央部分とにそれぞれ当接させて吸引し、吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸引盤１２ａで吸着すると共に、裏面フィルム３を吸引盤１２ｂで吸着する。この状態で吸引盤１２ａ，１２ｂを若干後退させると、ジッパー９は閉じた状態ではあるが、分割フィルム２と裏面フィルム３のジッパー９より上縁側の上縁部間を広げることができる。この広げられた上縁部間にヘラ状又は爪状の解除具１３を差し込み、ジッパー９に押し当てて、雄型９ａと雌型９ｂの嵌め合わせを解除することで、容易にジッパー９を開くことができる。
【００３９】
ジッパー９の開放は、吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸引盤１２ａで吸着すると共に、裏面フィルム３を吸引盤１２ｂで吸着した後、両吸着盤１０ａ，１０ｂを強く後退させることでも行うことが可能である。しかし、上記のように解除具１３を使用すると、多室包装袋Ａに無理な力を加えることなく確実に開放できるので好ましい。また、解除具１３を使用する場合、解除具１３を差し込みやすくするために、ジッパー９より上縁側に設けられた吸引孔１０を介してジッパー７より上縁側部分が吸引盤１２ａで吸着される分割フィルム２だけでなく、裏面フィルム３も、ジッパー９より上縁側部分を吸引盤１２ｂで吸着することが好ましい。
【００４０】
上記のようにしてジッパー９を開放することで、図６に示されるように、裏面フィルム３側の収納部８ｂを選択的に開放することができるようになる。
【００４１】
次に、第二充填工程について説明する。
【００４２】
ジッパー９の開放後、ジッパー９の開放時の吸着盤１２ａ，１２ｂの吸着位置を維持したまま、更に吸着盤１２ａ，１２ｂを後退させると、図６に示されるように、分割フィルム２が表面フィルム１を伴って外方へ引っ張られると共に、裏面フィルム３が外方へ引っ張られ、裏面フィルム３側の収納部８ｂの開口部７ｂが広げられる。この時、分割フィルム２が吸引孔１０を介して吸着盤１２ａに吸着されていることで、分割フィルム２と表面フィルム１は密着しており、表面フィルム１側の収納部８ａ（図２参照）の開口部７ａは閉じた状態にある。したがって、裏面フィルム３側の収納部８ｂだけが開放され、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム３側の収納部８ｂへ自動充填することができる。
【００４３】
なお、把持具１１，１１を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、この第二充填工程においても、前記第一充填工程と同様に進退して、多室包装袋Ａへ過剰な負荷が加わるのを防止することができる。
【００４４】
以上のようにして、表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３側の収納部８ｂとへそれぞれ該当する被包装物を自動充填した後、上縁部を熱融着し、図７に示されるように、吸引孔１０を内包する上縁融着部１４を形成し、開口部７（図２参照）を封止すると共に、ジッパー９を閉じて包装体の製造を完了する。上縁部の熱融着は、被包装物を収納した多室包装袋Ａを把持具１１，１１で吊り下げた状態で、上縁部をシールバーで挟み付けることで行うことができる。また、ジッパー９の閉鎖は、上縁融着部１４の形成の前又は後若しくは形成と同時に、挟持ローラや押え板（図示されていない）間にジッパー９部分を挟み付けることで行うことができる。
【００４５】
ところで、図７に示される包装体は、上縁融着部１４に吸引孔１０の跡が、表面フィルム１側のみではあるが、凹部として残る。そこで、図８に示されるように、上記上縁融着部１４の形成とジッパー９の閉鎖後、上縁融着部１４の吸引孔１０部分を打ち抜いて、吸引孔１０を内包する単一の貫通孔を吊り下げ孔１５として形成することが好ましい。この吊り下げ孔１５は、製造された包装体を店頭で吊り下げ陳列するためのもので、この吊り下げ孔１５で吸引孔１０の跡を消してしまうことにより、違和感を無くすことができる。吊り下げ孔１５は、吸引孔１０と同じか吸引孔１０より大きい貫通孔として形成されるもので、図示される円形の孔の他、楕円形、ひょうたん形、卵形、おむすび形などとすることもできる。
【００４６】
図９に示されるように、開封用舌片４は、ジッパー９と吸引孔１０の間の領域に対応する位置に形成されており、上縁融着部１４は、この開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に形成されている。開封用舌片４は、前述のように、側縁融着部５を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けて、側縁融着部の幅内に形成されている。開封用舌片４は、包装体の開封に用いられるもので、図１０に示されるように、引き起こして、側縁融着部５の外縁方向へ引っ張って引き裂き除去することで、図１１に示されるように、側縁融着部５に開封用ノッチ１６を形成することができる。その後、この開封用ノッチ１６を引き裂き始点として袋の上縁部を引き裂くことで、容易に開封することができる。発明の効果の欄でも説明したように、開封が、開封用舌片４の除去による開封用ノッチ１６の形成と、開封用ノッチ１６を始点とした引き裂きの二段階で行われるので、不用意な開封を防止することができる。
【００４７】
開封用舌片４の形状は、図９に示されるような先端が二等辺三角形又は正三角形状になった将棋の駒形の他、図１２（ａ）に示されるような四角形状、同（ｂ）に示されるような先端が半円形又は半楕円形状となった形状、同（ｃ）に示されるような先端が直角三角形状となった形状などとすることができる。本例においては、第一充填工程、ジッパー９の開放、ジッパー９が開放した状態での裏面フィルム３側の収納部８ｂへの充填（第二充填工程）の順で説明したが、第二充填工程、ジッパー９の閉鎖、第一充填工程の順で行うこともできる。しかし、本発明に係る多室包装袋Ａのように、ジッパー９付きの袋の場合、異物の混入を抑制するため、できるだけジッパー９を閉じた状態で移送することが好ましい。このため、包装体の製造手順は、ジッパー９が閉じた状態で移送されて来た多室包装袋Ａをそのままの状態で製造工程で使用できることが好ましく、第一充填工程、ジッパー９の開放、第二充填工程の順で行うことが好ましい。
【００４８】
次に、図１３〜図１９に基づいて、本発明の第二の例に係る多室包装袋と、これを用いた本発明の包装体の製造方法を説明する。
【００４９】
図１３は本発明の第二の例に係る多室包装袋の斜視図、図１４は本発明の第二の例に係る多室包装袋の拡大横断面図、図１５は本発明の第二の例に係る多室包装袋の表面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第一シール工程）及び本発明の第二の例に係る多室包装袋の裏面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第二シール工程）の説明図、図１６は本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図、図１７は本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図、図１８は製造された包装体の一例を示す平面図である。
【００５０】
図１３に示されるように、本例の多室包装袋Ｂは、基本的には第一の例に係る多室包装袋Ａ（図２参照）と同様であるが、図２に示される吸引孔１０を有していないものとなっている。また、図１４に示されるように、表面フィルム１は、基材層１ａの内面側（収納部８ａ側）に低融点シーラント層１ｂを積層したもので、裏面フィルム３は、基材層３ａの内面側（収納部８ｂ側）に、低融点シーラント層１ｂより融点が高い高融点シーラント層３ｃを積層したものとなっている。分割フィルム２は、基材層２ａの片面に低融点シーラント層２ｂを積層し、他面に高融点シーラント層２ｃを積層したもので、低融点シーラント層２ｂを表面フィルム１の低融点シーラント層１ｂと対向させ、高融点シーラント層２ｃを裏面フィルム３の高融点シーラント層３ｃと対向させている。側縁融着部５と底縁融着部６は、高融点シーラント層２ｃ，３ｃ同士の熱融着と、低融点シーラント層１ｂ，２ｂ同士の熱融着とにより形成されている。
【００５１】
表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の各基材層１ａ，２ａ，３ａとしては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層１ａ，２ａ，３ａとしては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。これは前述の第一の例と同様である。
【００５２】
低融点シーラント層１ｂ，２ｂと、高融点シーラント層２ｃ，３ｃとは、それぞれのシール温度領域をずらすことで、後述する第一シール工程において、高融点シーラント層２ｃ，３ｃ同士を熱融着させることなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂ同士を選択的に熱融着可能とするためのものである。このため、高融点シーラント層２ｃ，３ｃの融点は、低融点シーラント層１ｂ，２ｂの融点より２０℃以上高いことが好ましい。高融点シーラント層２ｃ，３ｃの融点が低過ぎると、高融点シーラント層２ｃ，３ｃと低融点シーラント層１ｂ，２ｂのシール温度領域が接近し、上記選択的な熱融着が行いにくくなる。上限は、一般的なシーラント層の融点や、基材層１ａ，２ａ，３ａ，の融点などから定まる。また、低融点シーラント層１ｂと２ｂ、並びに、高融点シーラント層２ｃと３ｃとしては、一般的には同じ合成樹脂が用いられるが、異なる合成樹脂を用いることもできる。異なる合成樹脂を用いる場合、融点の低い方の高融点シーラント層２ｃ又は３ｃの融点が、融点の高い方の低融点シーラント層１ｂ又は２ｂの融点より２０℃以上高いことが好ましい。なお、本発明において融点とは、ＪＩＳ−Ｋ−７１２１に基づいて測定した値をいう。
【００５３】
次に、上記多室包装袋Ｂを用いた包装体の製造方法について説明する。
【００５４】
第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた場合でも、図３で説明した冶具１１，１１へのセット方法は、第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。また、第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた場合の第一充填工程は、多室包装袋Ｂに吸引孔１０（図２参照）が設けられていないので、表面フィルム１の吸着に際し、この吸引孔１０を避けて行う必要がない点以外は、図４で説明した第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。
【００５５】
第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた包装体の製造方法においては、第一充填工程の後、表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部を熱融着し、被包装物を充填した表面フィルム１側の収納部８ａを封止する第一シール工程を施す。
【００５６】
第一シール工程は、図１５に示されるように、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の上縁部を重ねてシールバー１７，１７で挟み、表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部同士を熱融着することで行われる。この時、表面フィルム１と分割フィルム２だけではなく、裏面フィルム３もシールバー１７，１７に挟み込まれる。しかし、図１４で説明した高融点シーラント層２ｃ，３ｃを当該高融点シーラント層２ｃ，３ｃのシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂを当該低融点シーラント層１ｂ，２ｂのシール温度領域まで加熱することにより、高融点シーラント層２ｃ，３ｃが対向している裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部を熱融着させることなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂが対向している表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部同士のみを熱融着させた上縁融着部１４’（図１６参照）を形成することができる。つまり、裏面フィルム３側の収納部８ｂを封止することなく、表面フィルム１側の収納部８ａのみを封止することができる。上縁融着部１４’は、開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に形成さるものである。
【００５７】
ジッパー９の開放及び第二充填工程は、図１６及び図１７に示されるように、上縁融着部１４’によって表面フィルム１と分割フィルム２の上縁同士が一体化していることを利用し、吸引盤１２ａ，１２ｂで表面フィルム１の上縁部中央付近と、裏面フィルム３の上縁部中央付近を吸着して行う点以外は、図５及び図６で説明した第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。
【００５８】
第二充填工程の後、裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部を熱融着し、被包装物を充填した裏面フィルム３側の収納部８ｂを封止する第二シール工程を施す。
【００５９】
第二シール工程は、上記第二充填工程の後、上縁融着部１４’で接合された表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部と、裏面フィルム３の上縁部とを重ね、図１５に示されるように、シールバー１７，１７で挟み、裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部同士を熱融着することで行われる。この第二シール工程においては、図１４で説明した高融点シーラント層２ｃ，３ｃを当該高融点シーラント層２ｃ，３ｃのシール温度領域まで加熱する。これにより、高融点シーラント層２ｃ，３ｃが対向している裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部同士が熱融着され、裏面フィルム３側の収納部８ｂが封止される。同時に、上記高融点シーラント層２ｃ，３ｃより融点が低い低融点シーラント層１ｂ，２ｂもそのシール温度領域まで加熱されることになり、低融点シーラント層１ｂ，２ｂが対向している表面フィルム１と分割フィルム２の開口部７側の縁部はいわば再熱融着されることになる。
【００６０】
上記第二シール工程で、図１８に示されるように、開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に上縁融着部１４を形成して開口部７（７ａ，７ｂ）を封止し、包装体の製造を完了する。図１８に示される上縁融着部１３は、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の上縁部が相互に熱融着された部分である。特に第二の例に係る多室包装袋Ｂは、図２に示される第一の例に係る多室包装袋Ａのように吸引孔１０を有していないので、得られる包装体に吸引孔１０の跡が残らず、見栄えの低下などを解消することができる。
【００６１】
なお、以上の説明においては、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３を同じ大きさのものとして説明したが、表面フィルム１と裏面フィルム３の一方の上下長さを他方より短くし、収納部８ａ，８ｂの一方の深さを他方より浅くすることもできる。また、ガゼットタイプの多室包装袋とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【００６２】
【図１】本発明の第一の例に係る多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図である。
【図２】本発明の第一の例に係る多室包装袋の斜視図である。
【図３】本発明の第一の例に係る多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図である。
【図４】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが閉鎖した状態で一方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第一充填工程）の説明図である。
【図５】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図である。
【図６】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図である。
【図７】本発明の第一の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
【図８】本発明の第一の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の他の例を示す平面図である。
【図９】図７に示される包装体の左側上部の拡大平面図である。
【図１０】開封用舌片を用いて包装体を開封する場合の説明図である。
【図１１】開封用舌片を除去して開封用ノッチを形成した状態の平面図である。
【図１２】開封用舌片の他の形状例を示す図である。
【図１３】本発明の第二の例に係る多室包装袋の斜視図である。
【図１４】本発明の第二の例に係る多室包装袋の拡大横断面図である。
【図１５】本発明の第二の例に係る多室包装袋の表面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第一シール工程）及び本発明の第二の例に係る多室包装袋の裏面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第二シール工程）の説明図である。
【図１６】本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図である。
【図１７】本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図である。
【図１８】本発明の第二の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【００６３】
Ａ （第一の例に係る）多室包装袋
Ｂ （第二の例に係る）多室包装袋
１ 表面フィルム（一方のフィルム）
２ 分割フィルム
３ 裏面フィルム（他方のフィルム）
４ 開封用舌片
５ 側縁融着部
６ 底縁融着部
７ （表面フィルムと裏面フィルム間の）開口部
７ａ （表面フィルム側の収納部の）開口部
７ｂ （裏面フィルム側の収納部の）開口部
８ａ （表面フィルム側の）収納部
８ｂ （裏面フィルム側の）収納部
９ ジッパー
９ａ 雄型
９ｂ 雌型
１０ 吸引孔
１１ 把持具
１２ａ （表面フィルム側の）吸引盤
１２ｂ （裏面フィルム側の）吸引盤
１３ 解除具
１４ （表面フィルム、分割フィルム及び裏面フィルムの）上縁融着部
１４’ （表面フィルムと分割フィルムの）上縁融着部
１５ 吊り下げ孔
１６ 開封用ノッチ
１７ シールバー
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の収納部を有する多室包装袋及びこの多室包装袋を用いた包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、袋の表裏面を形成する表面フィルムと裏面フィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、表面フィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔（表面側吸引孔）と、裏面フィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔（裏面側吸引孔）とが、表面フィルムと裏面フィルムの上縁部にそれぞれ形成された多室包装袋と、それを用いた包装体の製造方法とが知られている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
更に説明すると、被包装物は、表面フィルム側と裏面フィルム側でそれぞれ動作する吸引盤による吸引で各収納部を開口させることで自動充填される。上記多室包装袋の表面側吸引孔と裏面側吸引孔は、この自動充填時に、二つの収納部を別々に開口させることができるようにし、自動充填時の誤充填を防止するためのものである。例えば、表面フィルム側の吸引盤を表面側吸引孔からずれた位置に押し当てて表面フィルムを吸引させると共に、裏面フィルム側の吸引盤を裏面側吸引孔の位置に押し当てて分割フィルムを吸引させると、表面フィルム側の収納部を開口させることができる。これとは逆に、表面フィルム側の吸引盤を表面側吸引孔の位置に押し当てて分割フィルムを吸引させると共に、裏面フィルム側の吸引盤を裏面側吸引孔からずれた位置に押し当てて裏面フィルムを吸引させると、裏面フィルム側の収納部を開口させることができる。
【０００４】
また、一般に、袋の開封手段としては、側縁融着部の外縁に切り込んだＩノッチやＶノッチが広く知られている。
【０００５】
【特許文献１】特許第３４１３５０６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、上記従来の多室包装袋は、二つの収納部を選択的に開口するために、表面フィルムと裏面フィルムの両者に吸引孔を形成することが必要となる。このため、表面フィルムに形成した吸引孔と、裏面フィルムに形成した吸引孔が共に所定の位置になるよう調整しなければならず、両フィルムのピッチ合わせなど、製袋時の工程数が増える問題がある。また、吸引孔は、通常、原反フィルムに形成するが、吸引孔が形成されることにより原反フィルムの強度が低下し、表面フィルムと裏面フィルムのいずれの原反フィルムについても製袋時の取り扱い性が低下するという問題もある。
【０００７】
更に、被包装物の充填後は、両収納部の開口部を上縁融着部で熱融着して封止するが、表裏両フィルムに吸引孔が形成されているので、シールバーへシーラント材などが付着堆積しやすい問題がある。また、上記熱融着は、吸引孔が上縁融着部に内包されるようにしてい行われるが、凹部としてその跡が表裏両面に残ってしまい、得られる包装体の見栄えを悪くする問題もある。
【０００８】
一方、多室包装袋の用途によっては、幼児が開封できないようにすることが求められる。例えば、薬剤などにおいては、幼児の誤飲を防止するために、意図的に開封しないと開封できない開封手段とすることが求められている。従来広く知られているＩノッチやＶノッチの場合、これらのノッチによる引き裂き方向に力を加えるだけで開封してしまうので、偶然の開封を完全には防止できない問題がある。
【０００９】
本発明は、二つの収納部を選択的に開口させるための吸引孔について、その数を軽減又はなくし、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う製袋時の原反フィルムの取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び開口部を封止するための上縁融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下をいずれも軽減又は解消できるようにすることを第一の目的とする。
【００１０】
また、本発明は、意図的に開封しないと開封できない開封手段を有する多室包装袋とすることを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の第一は、上記目的を達成するために、表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムの上縁部には、他方のフィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔が、ジッパーの位置より上縁側に形成されており、更に、側縁融着部には、ジッパーと吸引孔の間に対応する位置に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋を提供するものである。
【００１２】
本発明の第二は、表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層、他方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層より融点が高い高融点シーラント層となっており、更に、側縁融着部には、ジッパーに対応する位置より上縁側に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋を提供するものである。
【００１３】
上記本発明の第二は、高融点シーラント層の融点が、低融点シーラント層の融点より２０℃以上高いことを好ましい態様として含む。
【００１４】
本発明の第三は、前記本発明の第一に係る多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
他方のフィルムの上縁部を当該他方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引して、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程
とを有することを特徴とする包装体の製造方法を提供するものである。
【００１５】
上記本発明の第三は、ジッパーの開放を、他方のフィルムの上縁部を当該一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引することで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことと、
第一充填工程及び第二充填工程後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部を、開封用舌片に対応する位置より上縁側で熱融着し、吸引孔を内包する上縁融着部を形成するシール工程の後、上縁融着部に吸引孔を含む単一の貫通孔を吊り下げ孔として形成すること
を好ましい態様として含む。
【００１６】
本発明の第四は、前記本発明の第二に係る多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
第一充填工程の後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層を当該低融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、一方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第一シール工程と、
第一シール工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程と、
第二充填工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第二シール工程と
を有することを特徴とする包装体の製造方法を提供するものである。
【００１７】
上記本発明の第四は、ジッパーの開放を、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張ることで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを好ましい態様として含む。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の第一及び第三によれば、ジッパーが閉じているときには、他方のフィルムと分割フィルムが閉じたジッパーで一体となっているので、一方のフィルムと他方のフィルムを吸引することで一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。また、ジッパーを開いた状態で、一方のフィルムの吸引孔を介して分割フィルムを吸引すると共に、他方のフィルムを吸引すれば、他方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。吸引孔は、一方のフィルム側のみで足るので、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う原反フィルムの製袋時の取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び封止用の熱融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下のいずをも、二つの吸引孔が必要な従来に比して１／２に軽減することができる。
【００１９】
本発明の第二及び第四において、ジッパーを閉じた状態で一方のフィルムと他方のフィルムを吸引すると、一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができるのは上記本発明の第一及び第三と同様である。加えて、本発明の第二及び第四によれば、低融点シーラント層と高融点シーラント層の融点の差によるシール温度領域の差を利用することで、低融点シーラント層同士が対向している一方のフィルムと分割フィルムの上縁部のみを選択的に熱融着させることができる。他方のフィルムと分割フィルムが閉じたジッパーで一体となっていることを利用して、一方のフィルム側の収納部を選択的に開口させて被包装物を充填した後、低融点シーラント層同士が対向している一方のフィルムと分割フィルムの上縁部のみを選択的に熱融着し、ジッパーを開放すると、一方のフィルムと分割フィルムが熱融着されて一体となっているので、一方のフィルムと他方のフィルムを吸引すれば、他方のフィルム側の収納部を選択的に開口させることができる。本発明の第二及び第四によれば、吸引孔を設ける必要がないので、表裏両フィルムのピッチ合わせの手間、吸引孔の形成に伴う原反フィルムの製袋時の取り扱い性低下、シールバーへのシーラント材の付着堆積、及び封止用の熱融着部に残される吸引孔の跡による見栄えの低下のいずをも解消することができる。
【００２０】
一方、本発明の第一〜第四において、側縁融着部に設けられている開封用舌片は、先端が内向きに形成されているので、当該側縁融着部の外縁側へ引っ張って引き裂き除去することができ、これによって開封用ノッチを形成することができる。本発明の第一〜第四に係る多室包装袋及びこれを用いた包装体の製造方法により得られる包装体は、開封用舌片の引き裂き除去による開封用ノッチの形成と、この開封用ノッチを始点とした袋の引き裂き開封の二段階で開封が行われるものとなる。つまり、開封用舌片を引き裂き除去するまでは開封用ノッチが形成されていない状態となっていることから、意図的ではない偶然の開封を生じにくく、幼児による開封を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明を図面に基づいて更に説明する。なお、以下に説明する図面において、同じ符号は同様の部材又は部位を示す。
【００２２】
まず、図１〜図１１に基づいて、本発明の第一の例に係る多室包装袋と、これを用いた本発明の包装体の製造方法を説明する。
【００２３】
図１は本発明の第一の例に係る多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図、図２は本発明の第一の例に係る多室包装袋の斜視図、図３は本発明の第一の例に係る多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図、図４は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが閉鎖した状態で一方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第一充填工程）の説明図、図５は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図、図６は本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図、図７は製造された包装体の一例を示す平面図、図８は製造された包装体の他の例を示す平面図、図９は図７に示される包装体の左側上部の拡大平面図、図１０は開封用舌片を用いて包装体を開封する場合の説明図、図１１は開封用舌片を除去して開封用ノッチを形成した状態の平面図、図１２は開封用舌片の他の形状例を示す図である。
【００２４】
図１及び図２に示されるように、本例の多室包装袋Ａは、一方のフィルム１、分割フィルム２及び他方のフィルム３の３枚のフィルムで構成されている。一方のフィルム１と他方のフィルム３は、多室包装袋Ａの表裏に位置するもので、いずれが表面でも裏面でもよいが、説明の便宜上、一方のフィルム１を袋の表面側に位置する表面フィルム、他方のフィルム３を袋の裏面側に位置する裏面フィルムとして説明する。
【００２５】
本例における上記表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３は、基材層にシーラント層を積層したもので、同形同大となっている。表面フィルム１と裏面フィルム３はそれぞれ内面がシーラント層となっており、分割フィルム２は両面がシーラント層となっている。多室包装袋Ａは、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３を、表面フィルム１と裏面フィルム３の間に分割フィルム２を挟み込んで、シーラント層同士を向き合わせて重ね、上縁を残して周縁部の三方を熱融着した袋状をなしている。
【００２６】
表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の各基材層としては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層としては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。
【００２７】
図２において、４は開封用舌片、５，５は側縁の熱融着部である側縁融着部、６は底縁の熱融着部である底縁融着部である。開封用舌片４は、図面上左側の側縁融着部５を貫通する切り込みによって先端を袋の内側向きにして形成されたもので、これについては後述する。
【００２８】
分割フィルム２は、上記熱融着が施されていない上縁に形成された、表面フィルム１と裏面フィルム３間の開口部７を二分しており、分割フィルム２を境にして、表面フィルム１側と裏面フィルム３側とにそれぞれ収納部８ａ，８ｂが形成されている。収納部８ａ，８ｂは、上記分割フィルム２で二分された開口部７の一方と他方である開口部７ａ，７ｂをそれぞれ有するものとなっている。
【００２９】
裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部（開口部７側の縁部）には、両者間に形成された収納部８ｂを開閉可能とするジッパー９が取り付けられている。ジッパー９は、凸条を有する雄型９ａと、凹条を有する雌型９ｂとからなるもので、雄型９ａと雌型９ｂを嵌め合わせることで収納部８ｂを閉鎖し、嵌め合わせを解除することで収納部８ｂを開放できるものとなっている。また、表面フィルム１の上縁部の中央部には、表面フィルム１側から分割フィルム２を吸引することができるよう、表面フィルム１を貫通する吸引孔１０が形成されている。この吸引孔１０は、上記ジッパー９の位置より上縁側に形成されている。
【００３０】
多室包装袋Ａには、表面フィルム１と分割フィルム２間に形成された表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３と分割フィルム２間に形成された裏面フィルム３側の収納部８ｂとに分けて、２種類の被包装物を充填することができる。被包装物は、表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３側の収納部８ｂとを別々に開くこと（開口部７ａと７ｂを別々に開くこと）で、充填箇所を誤ることなく自動充填することができる。
【００３１】
次に、上記多室包装袋Ａを用いた包装体の製造方法について説明する。
【００３２】
まず、図３に示されるように、多室包装袋Ａを、ジッパー９が閉じた状態で、側縁融着部５，５の上部をクリップ状の把持具１１，１１で掴んで吊り下げ、表面フィルム１と裏面フィルム３の外面に向かってそれぞれ進退可能な一対の吸引盤１２ａ，１２ｂ間に位置させる。
【００３３】
表面フィルム１側の収納部８ａ（図２参照）と、裏面フィルム３側の収納部８ｂ（図２参照）の選択的開放は、上記吸引盤１２ａ，１２ｂによる吸引と、ジッパー９の開閉によって行われる。吸引盤１２ａ，１２ｂによる吸引位置については後述するが、この吸引位置の調節は、吸引盤１２ａ，１２ｂ間における多室包装袋Ａの位置を調節することで行うこともできる。しかし、吸引位置の調節を行いやすくするために、上記吸引盤１２ａ，１２ｂは、対向する表面フィルム１又は裏面フィルム３に沿って上下左右に移動可能としておくことが好ましい。また、両把持具１１，１１は、後述する第一充填工程及び第二充填工程において、収納部８ａ，８ｂを大きく開口させることができるようにすると共に、この開放に伴って多室包装袋４Ａに無理な力が加わらないよう、対向方向に弾性的に進退可能としておくことが好ましい。
【００３４】
第一充填工程について説明する。
【００３５】
図４に示されるように、両吸引盤１２ａ，１２ｂを、表面フィルム１と裏面フィルム３とに向かって前進させ、表面フィルム１の上縁部の吸引孔１０からずれた位置と、裏面フィルム３の上縁部の中央部分とにそれぞれ当接させて吸引する。表面フィルム１と裏面フィルム３が吸引盤１２ａ，１２ｂにそれぞれ吸着された状態で、両吸引盤１２ａ，１２ｂを後退させる。これにより、表面フィルム１が外方へ引っ張られると共に、閉じたジッパー７によって分割フィルム２が裏面フィルム３と一体となって外方に引っ張られて、表面フィルム１側の収納部８ａの開口部７ａが開き、収納部８ａを開放することができる。この時、裏面フィルム３側の収納部８ｂ（図２参照）の開口部７ｂはジッパー９によって閉じた状態であるので、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に表面フィルム１側の収納部８ａに自動充填することができる。
【００３６】
前記のように、把持具１０，１０を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、両吸引盤１２ａ，１２ｂを後退させて表面フィルム１と裏面フィルム３を外方へ引っ張た時に、両把持具１１，１１が弾性的に対向方向に前進し、多室包装袋Ａに過剰な張力が働くのを防止することができる。また、表面フィルム１側の収納部８ａに被包装物を充填した後、両吸引盤１２ａ，１２ｂを前進させると、両把持具１１，１１は弾性的に後退し、これに伴って収納部８ａの開口部７ａを閉じた状態に戻すことができる。
【００３７】
次に、ジッパー９の開放方法について説明する。
【００３８】
図５に示されるように、吸引盤１２ａ，１２ｂを、表面フィルム１の吸引孔１０の部分と、裏面フィルム３の上縁部の中央部分とにそれぞれ当接させて吸引し、吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸引盤１２ａで吸着すると共に、裏面フィルム３を吸引盤１２ｂで吸着する。この状態で吸引盤１２ａ，１２ｂを若干後退させると、ジッパー９は閉じた状態ではあるが、分割フィルム２と裏面フィルム３のジッパー９より上縁側の上縁部間を広げることができる。この広げられた上縁部間にヘラ状又は爪状の解除具１３を差し込み、ジッパー９に押し当てて、雄型９ａと雌型９ｂの嵌め合わせを解除することで、容易にジッパー９を開くことができる。
【００３９】
ジッパー９の開放は、吸引孔１０を介して分割フィルム２を吸引盤１２ａで吸着すると共に、裏面フィルム３を吸引盤１２ｂで吸着した後、両吸着盤１０ａ，１０ｂを強く後退させることでも行うことが可能である。しかし、上記のように解除具１３を使用すると、多室包装袋Ａに無理な力を加えることなく確実に開放できるので好ましい。また、解除具１３を使用する場合、解除具１３を差し込みやすくするために、ジッパー９より上縁側に設けられた吸引孔１０を介してジッパー７より上縁側部分が吸引盤１２ａで吸着される分割フィルム２だけでなく、裏面フィルム３も、ジッパー９より上縁側部分を吸引盤１２ｂで吸着することが好ましい。
【００４０】
上記のようにしてジッパー９を開放することで、図６に示されるように、裏面フィルム３側の収納部８ｂを選択的に開放することができるようになる。
【００４１】
次に、第二充填工程について説明する。
【００４２】
ジッパー９の開放後、ジッパー９の開放時の吸着盤１２ａ，１２ｂの吸着位置を維持したまま、更に吸着盤１２ａ，１２ｂを後退させると、図６に示されるように、分割フィルム２が表面フィルム１を伴って外方へ引っ張られると共に、裏面フィルム３が外方へ引っ張られ、裏面フィルム３側の収納部８ｂの開口部７ｂが広げられる。この時、分割フィルム２が吸引孔１０を介して吸着盤１２ａに吸着されていることで、分割フィルム２と表面フィルム１は密着しており、表面フィルム１側の収納部８ａ（図２参照）の開口部７ａは閉じた状態にある。したがって、裏面フィルム３側の収納部８ｂだけが開放され、誤投入を防止しつつ、被包装物を確実に裏面フィルム３側の収納部８ｂへ自動充填することができる。
【００４３】
なお、把持具１１，１１を対向方向に弾性的に進退可能としておくと、この第二充填工程においても、前記第一充填工程と同様に進退して、多室包装袋Ａへ過剰な負荷が加わるのを防止することができる。
【００４４】
以上のようにして、表面フィルム１側の収納部８ａと、裏面フィルム３側の収納部８ｂとへそれぞれ該当する被包装物を自動充填した後、上縁部を熱融着し、図７に示されるように、吸引孔１０を内包する上縁融着部１４を形成し、開口部７（図２参照）を封止すると共に、ジッパー９を閉じて包装体の製造を完了する。上縁部の熱融着は、被包装物を収納した多室包装袋Ａを把持具１１，１１で吊り下げた状態で、上縁部をシールバーで挟み付けることで行うことができる。また、ジッパー９の閉鎖は、上縁融着部１４の形成の前又は後若しくは形成と同時に、挟持ローラや押え板（図示されていない）間にジッパー９部分を挟み付けることで行うことができる。
【００４５】
ところで、図７に示される包装体は、上縁融着部１４に吸引孔１０の跡が、表面フィルム１側のみではあるが、凹部として残る。そこで、図８に示されるように、上記上縁融着部１４の形成とジッパー９の閉鎖後、上縁融着部１４の吸引孔１０部分を打ち抜いて、吸引孔１０を内包する単一の貫通孔を吊り下げ孔１５として形成することが好ましい。この吊り下げ孔１５は、製造された包装体を店頭で吊り下げ陳列するためのもので、この吊り下げ孔１５で吸引孔１０の跡を消してしまうことにより、違和感を無くすことができる。吊り下げ孔１５は、吸引孔１０と同じか吸引孔１０より大きい貫通孔として形成されるもので、図示される円形の孔の他、楕円形、ひょうたん形、卵形、おむすび形などとすることもできる。
【００４６】
図９に示されるように、開封用舌片４は、ジッパー９と吸引孔１０の間の領域に対応する位置に形成されており、上縁融着部１４は、この開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に形成されている。開封用舌片４は、前述のように、側縁融着部５を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けて、側縁融着部の幅内に形成されている。開封用舌片４は、包装体の開封に用いられるもので、図１０に示されるように、引き起こして、側縁融着部５の外縁方向へ引っ張って引き裂き除去することで、図１１に示されるように、側縁融着部５に開封用ノッチ１６を形成することができる。その後、この開封用ノッチ１６を引き裂き始点として袋の上縁部を引き裂くことで、容易に開封することができる。発明の効果の欄でも説明したように、開封が、開封用舌片４の除去による開封用ノッチ１６の形成と、開封用ノッチ１６を始点とした引き裂きの二段階で行われるので、不用意な開封を防止することができる。
【００４７】
開封用舌片４の形状は、図９に示されるような先端が二等辺三角形又は正三角形状になった将棋の駒形の他、図１２（ａ）に示されるような四角形状、同（ｂ）に示されるような先端が半円形又は半楕円形状となった形状、同（ｃ）に示されるような先端が直角三角形状となった形状などとすることができる。本例においては、第一充填工程、ジッパー９の開放、ジッパー９が開放した状態での裏面フィルム３側の収納部８ｂへの充填（第二充填工程）の順で説明したが、第二充填工程、ジッパー９の閉鎖、第一充填工程の順で行うこともできる。しかし、本発明に係る多室包装袋Ａのように、ジッパー９付きの袋の場合、異物の混入を抑制するため、できるだけジッパー９を閉じた状態で移送することが好ましい。このため、包装体の製造手順は、ジッパー９が閉じた状態で移送されて来た多室包装袋Ａをそのままの状態で製造工程で使用できることが好ましく、第一充填工程、ジッパー９の開放、第二充填工程の順で行うことが好ましい。
【００４８】
次に、図１３〜図１９に基づいて、本発明の第二の例に係る多室包装袋と、これを用いた本発明の包装体の製造方法を説明する。
【００４９】
図１３は本発明の第二の例に係る多室包装袋の斜視図、図１４は本発明の第二の例に係る多室包装袋の拡大横断面図、図１５は本発明の第二の例に係る多室包装袋の表面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第一シール工程）及び本発明の第二の例に係る多室包装袋の裏面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第二シール工程）の説明図、図１６は本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図、図１７は本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図、図１８は製造された包装体の一例を示す平面図である。
【００５０】
図１３に示されるように、本例の多室包装袋Ｂは、基本的には第一の例に係る多室包装袋Ａ（図２参照）と同様であるが、図２に示される吸引孔１０を有していないものとなっている。また、図１４に示されるように、表面フィルム１は、基材層１ａの内面側（収納部８ａ側）に低融点シーラント層１ｂを積層したもので、裏面フィルム３は、基材層３ａの内面側（収納部８ｂ側）に、低融点シーラント層１ｂより融点が高い高融点シーラント層３ｃを積層したものとなっている。分割フィルム２は、基材層２ａの片面に低融点シーラント層２ｂを積層し、他面に高融点シーラント層２ｃを積層したもので、低融点シーラント層２ｂを表面フィルム１の低融点シーラント層１ｂと対向させ、高融点シーラント層２ｃを裏面フィルム３の高融点シーラント層３ｃと対向させている。側縁融着部５と底縁融着部６は、高融点シーラント層２ｃ，３ｃ同士の熱融着と、低融点シーラント層１ｂ，２ｂ同士の熱融着とにより形成されている。
【００５１】
表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の各基材層１ａ，２ａ，３ａとしては、合成樹脂の単層又は積層フィルムを用いることができる。積層フィルムとしては、合成樹脂層同士を積層したものの他、合成樹脂層と、金属その他の無機物層や紙層などを積層したものでもよい。また、各基材層１ａ，２ａ，３ａとしては、それぞれ同じ構成のフィルムでも、異なる構成のフィルムでもよい。これは前述の第一の例と同様である。
【００５２】
低融点シーラント層１ｂ，２ｂと、高融点シーラント層２ｃ，３ｃとは、それぞれのシール温度領域をずらすことで、後述する第一シール工程において、高融点シーラント層２ｃ，３ｃ同士を熱融着させることなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂ同士を選択的に熱融着可能とするためのものである。このため、高融点シーラント層２ｃ，３ｃの融点は、低融点シーラント層１ｂ，２ｂの融点より２０℃以上高いことが好ましい。高融点シーラント層２ｃ，３ｃの融点が低過ぎると、高融点シーラント層２ｃ，３ｃと低融点シーラント層１ｂ，２ｂのシール温度領域が接近し、上記選択的な熱融着が行いにくくなる。上限は、一般的なシーラント層の融点や、基材層１ａ，２ａ，３ａ，の融点などから定まる。また、低融点シーラント層１ｂと２ｂ、並びに、高融点シーラント層２ｃと３ｃとしては、一般的には同じ合成樹脂が用いられるが、異なる合成樹脂を用いることもできる。異なる合成樹脂を用いる場合、融点の低い方の高融点シーラント層２ｃ又は３ｃの融点が、融点の高い方の低融点シーラント層１ｂ又は２ｂの融点より２０℃以上高いことが好ましい。なお、本発明において融点とは、ＪＩＳ−Ｋ−７１２１に基づいて測定した値をいう。
【００５３】
次に、上記多室包装袋Ｂを用いた包装体の製造方法について説明する。
【００５４】
第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた場合でも、図３で説明した冶具１１，１１へのセット方法は、第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。また、第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた場合の第一充填工程は、多室包装袋Ｂに吸引孔１０（図２参照）が設けられていないので、表面フィルム１の吸着に際し、この吸引孔１０を避けて行う必要がない点以外は、図４で説明した第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。
【００５５】
第二の例に係る多室包装袋Ｂを用いた包装体の製造方法においては、第一充填工程の後、表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部を熱融着し、被包装物を充填した表面フィルム１側の収納部８ａを封止する第一シール工程を施す。
【００５６】
第一シール工程は、図１５に示されるように、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の上縁部を重ねてシールバー１７，１７で挟み、表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部同士を熱融着することで行われる。この時、表面フィルム１と分割フィルム２だけではなく、裏面フィルム３もシールバー１７，１７に挟み込まれる。しかし、図１４で説明した高融点シーラント層２ｃ，３ｃを当該高融点シーラント層２ｃ，３ｃのシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂを当該低融点シーラント層１ｂ，２ｂのシール温度領域まで加熱することにより、高融点シーラント層２ｃ，３ｃが対向している裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部を熱融着させることなく、低融点シーラント層１ｂ，２ｂが対向している表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部同士のみを熱融着させた上縁融着部１４’（図１６参照）を形成することができる。つまり、裏面フィルム３側の収納部８ｂを封止することなく、表面フィルム１側の収納部８ａのみを封止することができる。上縁融着部１４’は、開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に形成さるものである。
【００５７】
ジッパー９の開放及び第二充填工程は、図１６及び図１７に示されるように、上縁融着部１４’によって表面フィルム１と分割フィルム２の上縁同士が一体化していることを利用し、吸引盤１２ａ，１２ｂで表面フィルム１の上縁部中央付近と、裏面フィルム３の上縁部中央付近を吸着して行う点以外は、図５及び図６で説明した第一の例に係る多室包装袋Ａを用いた場合と同様である。
【００５８】
第二充填工程の後、裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部を熱融着し、被包装物を充填した裏面フィルム３側の収納部８ｂを封止する第二シール工程を施す。
【００５９】
第二シール工程は、上記第二充填工程の後、上縁融着部１４’で接合された表面フィルム１と分割フィルム２の上縁部と、裏面フィルム３の上縁部とを重ね、図１５に示されるように、シールバー１７，１７で挟み、裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部同士を熱融着することで行われる。この第二シール工程においては、図１４で説明した高融点シーラント層２ｃ，３ｃを当該高融点シーラント層２ｃ，３ｃのシール温度領域まで加熱する。これにより、高融点シーラント層２ｃ，３ｃが対向している裏面フィルム３と分割フィルム２の上縁部同士が熱融着され、裏面フィルム３側の収納部８ｂが封止される。同時に、上記高融点シーラント層２ｃ，３ｃより融点が低い低融点シーラント層１ｂ，２ｂもそのシール温度領域まで加熱されることになり、低融点シーラント層１ｂ，２ｂが対向している表面フィルム１と分割フィルム２の開口部７側の縁部はいわば再熱融着されることになる。
【００６０】
上記第二シール工程で、図１８に示されるように、開封用舌片４を内方へ延長した位置よりも上縁側に上縁融着部１４を形成して開口部７（７ａ，７ｂ）を封止し、包装体の製造を完了する。図１８に示される上縁融着部１３は、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３の上縁部が相互に熱融着された部分である。特に第二の例に係る多室包装袋Ｂは、図２に示される第一の例に係る多室包装袋Ａのように吸引孔１０を有していないので、得られる包装体に吸引孔１０の跡が残らず、見栄えの低下などを解消することができる。
【００６１】
なお、以上の説明においては、表面フィルム１、分割フィルム２及び裏面フィルム３を同じ大きさのものとして説明したが、表面フィルム１と裏面フィルム３の一方の上下長さを他方より短くし、収納部８ａ，８ｂの一方の深さを他方より浅くすることもできる。また、ガゼットタイプの多室包装袋とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【００６２】
【図１】本発明の第一の例に係る多室包装袋を構成するフィルムの組み合わせ状態の説明図である。
【図２】本発明の第一の例に係る多室包装袋の斜視図である。
【図３】本発明の第一の例に係る多室包装袋を把持具にセットした状態の斜視図である。
【図４】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが閉鎖した状態で一方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第一充填工程）の説明図である。
【図５】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図である。
【図６】本発明の第一の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図である。
【図７】本発明の第一の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
【図８】本発明の第一の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の他の例を示す平面図である。
【図９】図７に示される包装体の左側上部の拡大平面図である。
【図１０】開封用舌片を用いて包装体を開封する場合の説明図である。
【図１１】開封用舌片を除去して開封用ノッチを形成した状態の平面図である。
【図１２】開封用舌片の他の形状例を示す図である。
【図１３】本発明の第二の例に係る多室包装袋の斜視図である。
【図１４】本発明の第二の例に係る多室包装袋の拡大横断面図である。
【図１５】本発明の第二の例に係る多室包装袋の表面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第一シール工程）及び本発明の第二の例に係る多室包装袋の裏面フィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する工程（第二シール工程）の説明図である。
【図１６】本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーの開放時の説明図である。
【図１７】本発明の第二の例に係る多室包装袋のジッパーが開放した状態で他方のフィルム側の収納部へ被包装物を充填する工程（第二充填工程）の説明図である。
【図１８】本発明の第二の例に係る多室包装袋を用いて製造された包装体の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【００６３】
Ａ （第一の例に係る）多室包装袋
Ｂ （第二の例に係る）多室包装袋
１ 表面フィルム（一方のフィルム）
２ 分割フィルム
３ 裏面フィルム（他方のフィルム）
４ 開封用舌片
５ 側縁融着部
６ 底縁融着部
７ （表面フィルムと裏面フィルム間の）開口部
７ａ （表面フィルム側の収納部の）開口部
７ｂ （裏面フィルム側の収納部の）開口部
８ａ （表面フィルム側の）収納部
８ｂ （裏面フィルム側の）収納部
９ ジッパー
９ａ 雄型
９ｂ 雌型
１０ 吸引孔
１１ 把持具
１２ａ （表面フィルム側の）吸引盤
１２ｂ （裏面フィルム側の）吸引盤
１３ 解除具
１４ （表面フィルム、分割フィルム及び裏面フィルムの）上縁融着部
１４’ （表面フィルムと分割フィルムの）上縁融着部
１５ 吊り下げ孔
１６ 開封用ノッチ
１７ シールバー
【特許請求の範囲】
【請求項１】
表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に、分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムの上縁部には、他方のフィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔が、ジッパーの位置より上縁側に形成されており、更に、側縁融着部には、ジッパーと吸引孔の間に対応する位置に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋。
【請求項２】
表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層、他方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層より融点が高い高融点シーラント層となっており、更に、側縁融着部には、ジッパーに対応する位置より上縁側に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋。
【請求項３】
高融点シーラント層の融点が、低融点シーラント層の融点より２０℃以上高いことを特徴とする請求項２に記載の多室包装袋。
【請求項４】
請求項１に記載の多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
他方のフィルムの上縁部を当該他方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引して、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程
とを有することを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項５】
ジッパーの開放を、他方のフィルムの上縁部を当該一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引することで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを特徴とする請求項４に記載の包装体の製造方法。
【請求項６】
第一充填工程及び第二充填工程後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部を、開封用舌片に対応する位置より上縁側で熱融着し、吸引孔を内包する上縁融着部を形成するシール工程の後、上縁融着部に吸引孔を含む単一の貫通孔を吊り下げ孔として形成することを特徴とする請求項４又は５に記載の包装体の製造方法。
【請求項７】
請求項２又は３に記載の多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
第一充填工程の後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層を当該低融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、一方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第一シール工程と、
第一シール工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程と、
第二充填工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第二シール工程と
を有することを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項８】
ジッパーの開放を、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張ることで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを特徴とする請求項７に記載の包装体の製造方法。
【請求項１】
表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に、分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムの上縁部には、他方のフィルム側から分割フィルムを吸引するための吸引孔が、ジッパーの位置より上縁側に形成されており、更に、側縁融着部には、ジッパーと吸引孔の間に対応する位置に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋。
【請求項２】
表裏いずれか一方に位置する一方のフィルムと、他方に位置する他方のフィルムとの間に分割フィルムを挟み込んだ状態で、上縁の開口部を残して、側縁融着部と底縁融着部が形成され、分割フィルムを境に、一方のフィルム側と他方のフィルム側とに、それぞれ収納部が形成された袋状をなし、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部には、他方のフィルム側の収納部を開閉可能とするジッパーが設けられており、一方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層、他方のフィルムと分割フィルムの対向面がそれぞれ低融点シーラント層より融点が高い高融点シーラント層となっており、更に、側縁融着部には、ジッパーに対応する位置より上縁側に、当該側縁融着部を貫通する切り込みにより、先端を袋の内側に向けた開封用舌片が形成されていることを特徴とする多室包装袋。
【請求項３】
高融点シーラント層の融点が、低融点シーラント層の融点より２０℃以上高いことを特徴とする請求項２に記載の多室包装袋。
【請求項４】
請求項１に記載の多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
他方のフィルムの上縁部を当該他方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引して、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程
とを有することを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項５】
ジッパーの開放を、他方のフィルムの上縁部を当該一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引すると共に、分割フィルムの上縁部を、吸引孔を介して、一方のフィルムに対向する吸引盤で吸引することで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを特徴とする請求項４に記載の包装体の製造方法。
【請求項６】
第一充填工程及び第二充填工程後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部を、開封用舌片に対応する位置より上縁側で熱融着し、吸引孔を内包する上縁融着部を形成するシール工程の後、上縁融着部に吸引孔を含む単一の貫通孔を吊り下げ孔として形成することを特徴とする請求項４又は５に記載の包装体の製造方法。
【請求項７】
請求項２又は３に記載の多室包装袋を用い、
ジッパーが閉じた状態で、一方のフィルムと他方のフィルムの上縁部を、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、一方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第一充填工程と、
第一充填工程の後、一方のフィルム、分割フィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱することなく、低融点シーラント層を当該低融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、一方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第一シール工程と、
第一シール工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張り、ジッパーを開放すると共に、他方のフィルム側の収納部を開口させて被包装物を充填する第二充填工程と、
第二充填工程の後、分割フィルムが熱融着された一方のフィルム及び他方のフィルムの上縁部をシールバーで挟み、高融点シーラント層を当該高融点シーラント層のシール温度領域まで加熱して、開封用舌片に対応する位置より上縁側で、他方のフィルムと分割フィルムの上縁部を熱融着する第二シール工程と
を有することを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項８】
ジッパーの開放を、分割フィルムが熱融着された一方のフィルムの上縁部と、他方のフィルムの上縁部とを、一方のフィルムに対向する吸引盤と他方のフィルムに対向する吸引盤とでそれぞれ吸引して外方へ引っ張ることで、他方のフィルムと分割フィルムのジッパーより上縁側の上縁部間を広げ、広げられた他方のフィルムと分割フィルムの上縁部間に解除具を差し込んでジッパーに押し当てることで行うことを特徴とする請求項７に記載の包装体の製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【公開番号】特開２０１０−１３２３１２（Ｐ２０１０−１３２３１２Ａ）
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３０９９５３（Ｐ２００８−３０９９５３）
【出願日】平成２０年１２月４日（２００８．１２．４）
【出願人】（０００１６２１１３）共同印刷株式会社 (488)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１２月４日（２００８．１２．４）
【出願人】（０００１６２１１３）共同印刷株式会社 (488)
【Ｆターム（参考）】
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