説明

多層フィルム

【課題】温室または農業用トンネル被覆物質に適した、優れた光透過性および物理的特性を有するフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、多層フィルムならびにかかるフィルムで被覆された温室および農業用トンネルなどの構造物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、特に、温室および農業用トンネル(例えば、ハイトンネル(high tunnel)を被覆するための屋外用途に有用なものに関する。
【背景技術】
【0002】
温室および農業用トンネルが、その中で植物が成長できる、より有利でありうる環境を提供する。かかる構造についての重要な特徴は、これを通して内側の植物に太陽光が提供される被覆物質である。ガラス、ポリエチレンフィルム、柔軟性ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、硬質ポリカーボネートシート、硬質ポリメタクリレートシートおよび他の柔軟性フィルムをはじめとする様々な被覆物質が使用されてきた。柔軟性フィルムのうち、ポリエチレンおよびポリ塩化ビニル(特に前者)は、低コストおよび適切な機械的性質(引き裂き抵抗、伸長など)のために優位である。
【0003】
残念なことに、ポリエチレンフィルムは曇り、光透過性が低く、光に曝されると急速に劣化する。光安定化添加剤を加えても、寿命は限定される。従って、市場は、高い光透過性、良好な物理的特性、良好な光安定性および延長された寿命を有する温室フィルムを必要とする。
【0004】
ビニル窓枠、羽目板、または家具のためのキャッピングとして使用されるアクリルフィルムは、優れた透明性を有する。しかし、かかるフィルムは、温室または農業用トンネル被覆物質に必要とされる適切な機械的特性を有さなず、その理由は、多くのアクリルフィルムは柔軟性を欠き、引裂強さが弱いためである。従って、アクリルフィルムは、典型的には、保護層として固定の基体上に積層するために適したフィルムにおいて使用される(例えば、米国特許第4,663,213号、第4,141,935号、第3,562,235号、第3,843,753号、および第3,812,205号参照)。
JP1999077939Aは、メチルメチルアクリレートを用いて製造されたアクリル(コ)ポリマーを含有する水性コーティング組成物で各面上をコーティングした熱可塑性ポリウレタンを用いて作られた温室フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,663,213号明細書
【特許文献2】米国特許第4,141,935号明細書
【特許文献3】米国特許第3,562,235号明細書
【特許文献4】米国特許第3,843,753号明細書
【特許文献5】米国特許第3,812,205号明細書
【特許文献6】特開平11−77939号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多層フィルムであって、
(a)下記グループ(i)もしくは(ii)、または(i)と(ii)との組み合わせから選択されるポリマー組成物を含む第一外側層、
ここで、組成物(i)は、80から100モルパーセントのC〜Cアルキルメタクリレートと、0〜40モルパーセントのC〜Cアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、置換アクリロニトリルまたはその組み合わせから選択されるモノマーとの(コ)ポリマー約10から96重量パーセント、および耐衝撃性樹脂約90から4重量パーセントを含み;
組成物(ii)は、第一から第四段ポリマー複合体を含み、ここで、第一のエラストマー性の比較的軟質の第一段ポリマーは水性乳化モノマー系から重合され、当該水性乳化モノマー系は約75〜99.8重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレートおよび約0.1〜5重量パーセントの少なくとも1種の架橋性多エチレン性不飽和モノマーを含み、第一段モノマー系の合計が100重量パーセントとなるための残部は1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーを含み、当該モノマー系は最大ガラス転移温度が−20℃を超えないように選択され;
第二段ポリマーは、第一段重合から得られる水性系の存在下、約10〜90重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および9〜89.9重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
第三段ポリマーは、第二段重合から得られる水性系の存在下、約5〜40重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および約95〜60重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
第四段ポリマーは、第三段重合から得られる水性系の存在下、約80〜100重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートおよび第四段モノマー系の合計が100重量パーセントとなるための残部である少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;第一段モノマー系の重量はポリマー組成物の合計重量の約10〜75%であり、後続の段の重量はポリマー組成物の合計重量の約90〜25%であり、第一段および第二段モノマー系のそれぞれに約0.1〜1重量パーセントの少なくとも1種のグラフト架橋性モノマーが組み入れられ、当該グラフト架橋性モノマーは、少なくとも2つの付加重合可能な不飽和官能基を含有し、その付加重合可能な不飽和官能基のそれぞれが互いに実質的に異なる速度(rate)で重合する共重合可能なモノマーである;
(b)熱可塑性ポリウレタンまたはポリビニルブチラールから選択されるコア層;ならびに
(c)(i)もしくは(ii)またはその組み合わせから選択される第二外側層;
を含む、多層フィルムである。
【0007】
本発明者らは、熱可塑性ポリウレタンおよびポリビニルブチラールから選択されるポリマーを含む層のコア層のいずれかの面上に、組成物(i)もしくは(ii)(または両方)のポリマー系アクリルを含む層を含有する多層フィルムは、温室または農業用トンネル被覆物質に適した、優れた光透過性および物理的特性を有するフィルムを提供することを見出した。
【0008】
本発明はさらに、本発明のフィルムで被覆された温室または農業用トンネルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「フィルム」により、本発明者らは、全厚さが約300マイクロメートル未満であるポリマーシートを意味する。外側層のそれぞれが約20から約100マイクロメートルの厚さであり、コア層が約20から約200マイクロメートルの厚さであるのが好ましい。
【0010】
本発明のフィルムの外側層において使用するのに適した可塑剤は、モノマー系およびポリマー系の可塑剤の両方であってよく、これに限定されないが、フタレート系、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ビス(n−ブチルフタレート)(DNBP)、ブチルベンジルフタレート(BBzP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジ−n−オクチルフタレート(DOP)、ジエチルフタレート(DEP)、ブチルオクチルフタレート(BOP)、ベンゾエート、例えば、プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、ジエチレングリコールジベンゾエート/ジプロピレングリコールジベンゾエート、脂肪族二塩基酸エステル、例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DEHA)、ジメチルアジペート(DMAD)、ジイソオクチルアジペート(DIOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、モノメチルアジペート(MMAD)、マレエート系、例えば、ジブチルマレエート(DBM)、ジイソブチルマレエート(DIBM)、トリメリテート、例えば、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソオクチルトリメリテート(TIOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)、エポキシ化植物油、グリコール、およびポリマー系可塑剤、例えば、アクリルオリゴマーなどを包含する。
【0011】
「ガラス転移温度」または「T」は、次のようなフォックス式[Bulletin of the American Physical Society 1、3 123ページ(1956)]を用いて計算されるコポリマーのガラス転移温度である:
【数1】

【0012】
コポリマーに関して、wおよびwは、反応容器に入れられたモノマーの重量基準での2種のコモノマーの重量分率を意味し、Tg(1)およびTg(2)は、2種の対応するホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を意味する。3種以上のモノマーを含有するポリマーに関しては、さらなる項(w/Tg(n))が追加される。本発明の目的のためのホモポリマーのガラス転移温度は、”Polymer Handbook”J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishers、1966年において報告されているものであり、文献が特定のホモポリマーのTgを報告していない場合には、ホモポリマーのTgは示差走査熱量分析(DSC)により測定される。ホモポリマーのガラス転移温度をDSCにより測定するために、アンモニアまたは第一アミンの非存在下でホモポリマーサンプルを調製し、維持する。ホモポリマーサンプルを乾燥し、120℃に予熱し、急速に−100℃に冷却し、次いで20℃/分の割合で150℃に加熱し、その間にデータを集める。ホモポリマーのガラス転移温度は、半値法(half−height method)を用いて変曲の中点で測定する。
【0013】
重合単位として架橋性モノマーを含有するコポリマーのTgのFox計算は、各架橋性モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度に基づくが、ただし、ホモポリマーはアンモニアまたは第一アミンの存在下にはない。アニオン性モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度値は、酸形態におけるアニオン性ホモポリマーについてのものである。
【0014】
ポリマー組成物(ii)は、米国特許第4,141,935号においてさらに詳細に記載され、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明のアルキルアクリレートは、1から8個の炭素原子のアルキル基を有するアクリル酸エステルのモノマー群、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびn−オクチルアクリレートならびにその組み合わせから選択することができる。
【0016】
置換スチレンは、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ハロスチレン、t−ブチルスチレンなどを包含する。置換アクリロニトリルは、メタクリロニトリル、a−メチレングルタロニトリル、a−エチルアクリロニトリル、a−フェニルアクリロニトリルなどを包含する。
【0017】
架橋性モノマーは、二官能性架橋性モノマー、即ち、2個の反応性官能基を含むモノマーならびに2より多い反応性官能基を含有する架橋性モノマー、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリビニルベンゼン、例えば、ジビニルベンゼンもしくはトリビニルベンゼンまたはその混合物を包含する。グラフト架橋性モノマーは、α,β−不飽和カルボン酸または二酸の共重合可能なアリル、メタリル、またはクロチルエステルを含む。好ましいグラフト架橋性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマル酸のアリルエステルである。
【0018】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ジイソシアネート成分、ポリオール成分、および鎖延長剤を有する、ポリマー分子の主鎖中にウレタン結合を有するように公知方法により製造されたポリマーである。ジイソシアネートは、脂肪族タイプのジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、および芳香族タイプのジイソシアネートであり得る。ポリオールは、活性末端水素原子を含有し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリル、スチレン、ビニル付加および/または分散ポリオールであり得る。鎖延長剤は、低分子量ジオール、例えば、脂肪族グリコール、芳香族グリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノンである。
【0019】
ポリビニルブチラール(PVB)は光学的に透明なポリマーである。これは、ポリビニルアルコール(PVOH)をブチルアルデヒドと、通常、水性媒体中、酸性条件下で反応させることにより製造される。反応混合物を中和し、PVBポリマーを単離し、安定化させ、乾燥させる。ポリマーは、典型的には、12〜25重量%のヒドロキシル(OH)基(ポリビニルアルコール(PVOH)として計算)、好ましくは15〜20重量%のOH基をPVOHとして含む。加えて、ポリマーは場合によって、0.1〜10重量%残留エステル(COOR)基(ポリビニルエステル、例えば、アセテートとして計算);好ましくは0.1〜3重量%のCOOR基(ここで、Rは低級アルキル基である)を含む。ポリマーの残部はアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、場合によって、少量の他のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基を含む。
【0020】
典型的には、PVBポリマーは、70,000を超える重量平均分子量を有する。
【0021】
ポリマー系耐衝撃性樹脂を前述の本発明のフィルムの1以上の層に添加する。かかる耐衝撃性樹脂としては、エラストマーを含む様々なポリマー、例えば、天然および合成ゴム、アクリレートゴム、ならびにターポリマー、例えば、MBS(メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン)があげられる。
【0022】
通常の添加剤を、溶融加工前にアクリル樹脂中に組み入れることができる。添加剤としては、例えば、潤滑剤、安定剤、ブロッキング防止剤、および加工助剤が挙げられる。安定剤は、熱によるアクリルポリマーの分解、紫外線により刺激される酸化的分解、機械的分解および変色を防止する働きをする。他の添加剤としては、例えば、着色剤、無機顔料、ポリマー系または無機フィラーおよび粒子状エキステンダーが挙げられうる。さらに、農業用途の目的に関しては、添加剤には、例えば、ドリップ防止剤(anti−dripping agent)、防曇剤、抗真菌剤、および帯電防止剤、紫外線遮断剤、任意に光拡散剤または修飾剤が挙げられる。
【0023】
本発明の多層フィルムはいくつかの方法で作ることができる。一方法は、インフレーションフィルム法(blown film method)であり、この方法では複数の層を共押出して管状形態にし、この管を次にふくらませて、フィルム厚を有するさらに大きなバブルを形成する。多層管が押出ダイを出るにつれて管のインフレーション成形が達成されることができ、この場合、管が空気圧下で横方向に膨張するにつれて管が機械方向に延ばされるように、管状物質がダイを出る速さよりも速い速度で回転するニップロールを通って、インフレーション成形された管状フィルムが供給される。典型的には、ダイアニュラスとインフレーション成形されたフィルムの管の直径との間の膨張割合は、そのダイ直径の1.5から4倍である。溶融壁厚と冷却フィルム厚間のドローダウン(drawdown)は、半径方向と縦方向の両方で起こり、バブル内部の空気の体積/圧力を変えること、および引取速度(haul−off speed)を変えることにより、容易に制御される。これにより、インフレーション成形されたフィルムに、押出方向にそってのみ引き落される従来のキャストまたは押出フィルムよりも優れた性質のバランスが付与される。インフレーションフィルム法の別の利点は、農業用トンネル用途に必要とされる幅の広い(幅30フィートを超える)寸法のフィルムを製造できることである。
【0024】
この方法の別のバリエーションは、管を形成し、これを冷却し、次いでこれを内部空気圧下で再加熱して、2組のニップロール間にバブルをトラップし、一方の組が2組のニップロールの間に管を供給するよりも速い速度で、もう一方の組が管を引っ張る。空気圧が管を横方向に膨張させるにつれて、この引っ張りが管を流れ方向に延伸させる。言い換えると、管がダイから押し出されるにつれてフィルムが単一段階でインフレーション成形されうるか、または、管状フィルムが製造されるまで管を数段階で膨張させることにより数段階でインフレーション成形されることができる。
【0025】
第二の方法は、第一の方法と類似しているが、管を完全に共押出しない。その代わり、1以上の層を管状形態に押出し、1以上の層を次いでこの管上に押出コーティングして、多層管を形成し、これをインフレーション成形して、フィルム厚を有する、さらに大きなバブルを形成する。このインフレーション成形も、管状フィルムが製造されるまで数段階で行われることができる。
【0026】
多層フィルムを製造する他の方法としては、溶融加工法、例えば、スロットまたはフラットダイを用いるフィルム押出および下記の実施例で開示されるものが挙げられる。
【実施例】
【0027】
実施例1〜3
米国特許第4,141,935号の実施例1と同じに製造されたアクリルエマルジョンコポリマー(ポリマーA)を調製した。エマルジョンを次に、実験室用スプレードライヤー(NIRO Inc.、Soeborg、Denmark)を用いて噴霧乾燥した。得られた粉体を次に、Collin Mill(W.H.Collin GmbH Maschienefabrik、Aichach、Germany)を用い、175℃で3分間圧延した。圧延が完了した後、溶融ポリマーを金属ロールから剥がし、金属型中に入れて、加圧して、150μmから300μmの範囲の厚さを有する薄膜シートを得た。CARVERプレス(Carver Press Inc.、Menomonee Falls、Wisconsin)を使用した(動作温度185℃およびプレス条件2.268メートルトンで3分間、続いて9.07メートルトンで2分間、9.07メートルトンで5分の冷却期間(室温))。フィルムの破断応力、破断伸びを測定し、表1に記載した。
【0028】
前記粉体を可塑剤ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)とブレンドし、175℃で3分間圧延した。圧延が完了した後、溶融ポリマーを金属ロールから剥がし、金属型中に入れ、プレスして、150μmから300μmの範囲の厚さを有する薄膜シートにした。CARVERプレス(Carver Press Inc.、Menomonee Falls、Wisconsin)を使用した(動作温度185℃、プレス条件2.268メートルトンで3分間、続いて9.07メートルトンで2分間、9.07メートルトンで5分間冷却期間(室温))。フィルムの破断応力、破断伸びを測定し、表1に記載した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例4〜9
Krystalgran PN03−217(Huntsman、Michigan、USA)(TPU)のペレットをプレスして、実施例1〜3に記載された条件を用いて薄膜を製造した。得られたTPUフィルムを次に、前述の条件を用いて実施例1から得たフィルムとともにプレスして、「TPU/ポリマーA」の構造を有する2層フィルムを製造した。この2層フィルムの引き裂き抵抗を下記方法(フィンガーテスト)により実施し、結果を表2に記載した。DuPont(Delaware、USA)から入手したButocite(PVB)のペレットをプレスして、前述の方法を用いて薄膜を製造し、得られたPVBフィルムを次に、実施例1から得られたフィルムとともにプレスして、「100%ポリマーA/PVB/100%ポリマーA」の構造を有する3層フィルムを製造した。この3層フィルムの引き裂き抵抗を下記フィンガーテスト法により実施し、結果を表2に記載した。
【0031】
「TPU/90%ポリマーA+10%DEHP」、および「TPU/80%ポリマーA+20%DEHP」の構造を有するフィルムも、前述と同様の方法を用いて製造し、フィルム引き裂き抵抗結果を表2に記載した。
【0032】
引き裂き抵抗フィンガーテスト法:
まず、はさみを用いて、フィルム片の一辺の中心で2〜3cmの長さの切り込みを入れ、次に、両手を用いて、切断部を反対方向に引っ張って、フィルムの引き裂き伝播抵抗を試験する。裂け目を広げるために必要な力が大きいほど、フィルムの引き裂き抵抗は良好である。記号「+」は、各フィルムの引き裂き抵抗を示す。例えば、3つの「+」記号の引き裂き抵抗を有するフィルムは、2つの「+」記号の引き裂き抵抗を有するフィルムよりも高い引き裂き抵抗を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例10
この実施例は、水性エマルジョン中での2段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0035】
【表3】

【0036】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素で覆われたリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、7.5%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターがピーク温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に90分で徐々に添加した。添加が完了した後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると174nmであった。次いで混合物DおよびEをリアクター中に85分で徐々に添加した。添加が完了した後、リアクターを85℃に昇温させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズは、Brookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると192nmであった。
【0037】
実験室用スプレードライヤー(NIRO Inc.、Soeborg、Denmark)を用いて、前記エマルジョンを噴霧乾燥し、ポリマーB粉体を得た。実施例1から製造されたポリマーA粉体30重量%およびポリマーB粉体70重量%を含む粉体ブレンドを、30mm二軸スクリュー押出機および4mmの2ストランドダイ(Werner & Phleiderer、Ramsey、New Jersey)を用いてペレット化した。ペレット化条件は次のとおりであった:温度は200℃、供給速度は20 lbs/時、RPMは150であった。ペレットを、重量平均分子量143000、数平均分子量31000、屈折率1.50のTPUとともに、30mmダイを有する共押出インフレーションフィルムライン(Dr.Collin GmbH、Ebersberg、Germany)を用いて共押出して、アクリレート/TPU/アクリレートの構造を有し、アクリレート:TPUの重量比が40:60である3層フィルムを製造した。125マイクロメートルの厚さを有するフィルムは、92%を超える光透過性、28.5kg/cmの引き裂き伝播耐性(ASTM D1938)、5077psiの引っ張り強度(ASTM D882)および419%の伸びを示した。
【0038】
実施例11
実施例1から製造されたポリマーAの粉体を、実施例10に記載された条件でペレット化した。得られたペレットを、実施例10に記載されたのと同じTPUを用い、同じ加工条件下、同じ共押出インフレーションフィルムラインで共押出した。90μmの厚さを有し、アクリレート(30μm)/TPU(30μm)/アクリレート(30μm)の構造を有する3層フィルムを製造した。このフィルムの光透過性は92%を超え、引き裂き伝播耐性(ASTM D1938)は8.08kg/cmであり、引っ張り強度(ASTM D882)は4339psiであり、伸びは128%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、
(a)下記グループ(i)もしくは(ii)、または(i)と(ii)との組み合わせから選択されるポリマー組成物を含む第一外側層、
ここで、組成物(i)は、80から100モルパーセントのC〜Cアルキルメタクリレートと、0〜40モルパーセントのC〜Cアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、置換アクリロニトリルまたはその組み合わせから選択されるモノマーとの(コ)ポリマー約10から96重量パーセント、および耐衝撃性樹脂約90から4重量パーセントを含み;
組成物(ii)は、第一から第四段ポリマー複合体を含み、ここで、第一のエラストマー性の比較的軟質の第一段ポリマーは水性乳化モノマー系から重合され、当該水性乳化モノマー系は約75〜99.8重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレートおよび約0.1〜5重量パーセントの少なくとも1種の架橋性多エチレン性不飽和モノマーを含み、第一段モノマー系の合計が100重量パーセントとなるための残部は1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーを含み、当該モノマー系は最大ガラス転移温度が−20℃を超えないように選択され;
第二段ポリマーは、第一段重合から得られる水性系の存在下、約10〜90重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および9〜89.9重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
第三段ポリマーは、第二段重合から得られる水性系の存在下、約5〜40重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および約95〜60重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
第四段ポリマーは、第三段重合から得られる水性系の存在下、約80〜100重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートおよび第四段モノマー系の合計が100重量パーセントとなるための残部である少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;第一段モノマー系の重量はポリマー組成物の合計重量の約10〜75%であり、後続の段の重量はポリマー組成物の合計重量の約90〜25%であり、第一段および第二段モノマー系のそれぞれに約0.1〜1重量パーセントの少なくとも1種のグラフト架橋性モノマーが組み入れられ、当該グラフト架橋性モノマーは、少なくとも2つの付加重合可能な不飽和官能基を含有し、その付加重合可能な不飽和官能基のそれぞれが互いに実質的に異なる速度で重合する共重合可能なモノマーである;
(b)熱可塑性ポリウレタンまたはポリビニルブチラールから選択されるコア層;ならびに
(c)(i)もしくは(ii)またはその組み合わせから選択される第二外側層;
を含む、多層フィルム。
【請求項2】
外側アクリル層の厚さが、20マイクロメートルから100マイクロメートルであり、中間TPUまたはPVB層の厚さが20から200マイクロメートルである、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
第一および第二外側層のそれぞれが可塑剤をさらに含む請求項1記載の多層フィルム。
【請求項4】
紫外線吸収剤、光安定剤、およびドリップ防止剤をさらに含む請求項1記載の多層フィルム。
【請求項5】
請求項1記載の多層フィルムで被覆された温室または農業用トンネル。

【公開番号】特開2009−154529(P2009−154529A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−288462(P2008−288462)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】