説明

多層型化粧料

【課題】層の境界が明確な美しい外観を有する多層型化粧料を提供すること。
【解決手段】下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと下記式(2)の疎水性モノマーと架橋性モノマーとを重合して得られる共重合体と、液状油分を5〜40質量%含有する多層型化粧料。
(1)


(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層型化粧料に関する。さらに詳しくは、層の境界が明確でかつ水相が白濁した多層型組成物からなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型化粧料とは、粉末/水、粉末/油、水/油のように、その外観が多層に見える化粧料である。例えば、水/油の二層型化粧料の場合は、上層が油分単独又は乳化系の2種類に大別される。
【0003】
多層形化粧料は、外観の美しさ及び使用性の観点から、多層型化粧水を初めとする様々な化粧料に有用である(特許文献1〜7)。
【0004】
多層形化粧料が外観の美しさを発揮する重要な点は、その界面を美しく保つことが必要であるが、層を形成する構成成分によっては、上層と下層の境界が不明瞭になるという問題点があった。
【0005】
特に、使用性及び多層の分離速度の観点から、天然高分子(多糖等)や合成高分子の増粘剤を配合すると、その傾向が強く、使用性と見た目の美しさを両立することは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−281193号公報
【特許文献2】特開2004−203764号公報
【特許文献3】特開2004−10517号公報
【特許文献4】特開2002−234815号公報
【特許文献5】特開平11−92356号公報
【特許文献6】特開平11−71230号公報
【特許文献7】特開平10−182340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、層の境界が明確な多層型化粧料を提供することである。すなわち、特定の共重合体と、液状油分5〜40質量%とを含有し、実質的に界面活性剤を含有しないか、或いは、界面活性剤を含有する場合であっても、液状油分に対する重量比が0.8以下であり、多層型組成物を構成する化粧料において、層の境界が極めて明確になることを見出した結果、完成された発明である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと下記式(2)の疎水性モノマーと下記式(3)の架橋性モノマーとを重合して得られる共重合体と、液状油分を5〜40質量%含有し、下記(a)又は(b)の条件を満たすことを特徴とする多層型化粧料を提供するものである。
(a)実質的に界面活性剤を含有しないこと
(b)界面活性剤を含有する場合には、「界面活性剤の含有量/液状油分の含有量」が重量比で0.8以下であること



【化1】

(1)
1は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、nは20〜200の数である。XはHまたはCH3を表す。
【化2】

(2)
2は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、R3は炭素原子数1〜8のアルキルを表す。
【化3】

(3)
4とR5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキルを表し、mは0〜2の数である。
【0009】
また、本発明は、前記共重合体が、下記(A)、(B)、(C)、(D)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体からなるミクロゲルであることを特徴とする上記の多層型化粧料を提供するものである。
(A)疎水性モノマーは炭素原子数1〜8のアルキルを有するメタクリル酸誘導体を一種もしくは二種以上を混合した組成であること
(B)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(C)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(D)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【0010】
さらに、本発明は、前記ミクロゲルの粒子径が50〜300nmであることを特徴とする上記の多層型化粧料を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、さらに増粘剤を含有することを特徴とする上記の多層型化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の多層型化粧料は、層の境界が明確である。容器に充填された本発明の多層型化粧料を振って混ぜると、水相が白濁し、その白濁度が極めて優れている。そして再び静置することによって、各層の境界面が明確に分かれ、多層型に外観を呈する。
(2)本発明の多層型化粧料は、保存安定性に優れており、長期保存によっても、その多層型の外観が維持出来る。
(3)本発明の多層型化粧料は、更に増粘剤を配合することにより、外観の美しさを損なうことなく、使用性に優れ、かつ、層分離速度を調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
「本発明に用いる共重合体について」
式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーは、例えばAldrich社から市販されている試薬、あるいは日本油脂から発売されているブレンマー(登録商標)を使用することが出来る。これら市販品の式(1)のポリエチレンオキサイド部分の分子量(即ちnの値)は幅広く、これを使用することができる。このポリエチレンオキサイド部分の分子量の好ましいサイズはn=50〜200のものである。例えば、日本油脂製ブレンマー(登録商標)PME1000あるいはブレンマー(登録商標)PME4000などが好適である。
【0015】
式(2)の疎水性モノマーは、例えば、Aldrich社もしくは東京化成社から市販されている試薬を使用することができる。式(2)のR3のアルキル鎖は炭素原子数1〜8のアルキルである。式(2)は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸へプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸へプチル、メタクリル酸オクチルなどである。特に、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレートが好適である。これらの疎水性モノマーは汎用原料であり、一般工業原料としても容易に入手することができる。
【0016】
式(3)の架橋性モノマーは、市販の試薬あるいは工業用原料として入手が可能である。この架橋性モノマーは疎水的であることが好ましい。式(3)のmの値は好ましくは1〜3である。具体的にはAldrich社から発売されているエチレングリコールジメタクリレート、日本油脂製ブレンマー(登録商標)PDE−50などが好適である。
【0017】
本発明に用いる共重合体は、任意の重合法により上記モノマーを共重合体させたものであるが、特に下記(A)、(B)、(C)、(D)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体(ミクロゲル)であることが好ましい。
(A)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(B)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(C)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
(D)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【0018】
(A)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量は、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)の範囲でコロナ−コア型ミクロゲルが重合可能である。エチレンオキサイドマクロモノマーの仕込み量が、モル比で疎水性モノマーの10分の1を下回ると重合されるポリマーは水溶性になりコロナ−コア型ポリマーミクロゲルは形成しない。またポリエチレンオキサイドマクロモノマーのモル量に対して疎水性モノマーが250倍以上になるとポリエチレンオキサイドマクロモノマーによる分散安定化が不完全になり不溶性の疎水性モノマーによる疎水性ポリマーが凝集、沈殿する。ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み比は、好ましくは1:10〜1:200の範囲である。さらに好ましくは1:25から1:100の範囲である。
【0019】
(B)の架橋性モノマーを共重合することでコア部分の疎水性ポリマーが架橋されたミクロゲルを重合することが出来る。架橋性モノマーの仕込み量が疎水性モノマーの仕込み量の0.1重量%未満であると、架橋密度が低く、このミクロゲルは膨潤時に崩壊してしまう。また1.5重量%を上回ると、ミクロゲル粒子同士の凝集が生じ、粒度分布の狭い好適なミクロゲル粒子を重合することは出来ない。好ましい架橋性モノマーの仕込み量は、0.2〜1.0、さらに好ましくは0.2〜0.8、最も好ましくは0.2〜0.5重量%である。
【0020】
(C)の重合溶媒である水/エタノールの混合比は、水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)である。重合溶媒は疎水性モノマーを均一溶解するためにエタノールを加えることが必要である。エタノールの混合比は10〜60容量比である。エタノールの混合比が10容量比より低い場合は疎水性モノマーを可溶化することが困難になり、重合されるミクロゲル粒子の粒度分布が広くなってしまう。またエタノールの混合比が60容量比を上回ると、重合されるポリマーは重合溶媒に溶解してしまい、ミクロゲル粒子は得られない。好ましい水/エタノールの混合比は、水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜60:10〜40(20℃の容積比)である。さらに好ましくは水:エタノール=80〜70:20〜30(20℃の容積比)である。
【0021】
この重合系に用いられる重合開始剤は通常の水溶性熱ラジカル重合に用いられる市販の重合開始剤を用いることが出来る。
この重合系では特に攪拌条件を厳密にコントロールすることなく重合を行っても重合されるミクロゲル粒子の粒度分布は非常に狭いものを得ることが出来る。
【0022】
上述の製造方法により、粒子径が50〜300nmでありその分散度が0.01未満の単分散性粒子からなるミクロゲルが得られる。なお、このミクロゲルは有機溶媒に膨潤するという特質を有する。
【0023】
なお、一般的に乳化粒子あるいはポリマーエマルションなどの所謂コロイド粒子の粒子径は動的光散乱法あるいは光子相関法と呼ばれる方法で測定が可能である。この測定法は、十分に希薄な濃度に調製したサンプル分散液にレーザー光を照射し、サンプル粒子から散乱される散乱光強度を測定することで、サンプル粒子の並進拡散係数(平均値)を測定する方法である。サンプル粒子は分散液中でブラウン運動で常に動いている。このブラウン運動による粒子の移動速度、即ち並進拡散係数(平均値)を散乱光強度の時間変化の結果から、解析することが出来る。こうして得られた並進拡散係数(平均値)の値からストークス−アインシュタイン式(数1)に従ってサンプル粒子の流体力学的サイズを計算することが出来る。

【数1】

但し、Dは拡散係数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度(K)、ηは溶媒の粘度、およびrは粒子の半径である。
この測定は市販の測定装置で簡便に測定可能である。たとえば大塚電子製 DLS7000、マーベルン製 ゼータサイザー4700、ブルックヘーブン製 ゼータプラスなどで測定が可能である。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することが出来る。この解析ソフトを用いることで平均粒子径、分散度の値を得ることが出来る。ここで分散度とは粒子径の平均値からのばらつきを示す値であり、キュムラント解析における二次キュムラントの値、即ち、分散値を規格化した値である。一般的にこの分散度が0.01以下であればそのサンプルの粒子径分布はほぼ単分散とみなすことが出来る。
【0024】
また、上述の製造方法により重合したミクロゲルを水中に分散した場合の共重合体粒子の粒子径をd0、この混合溶媒に共重合体粒子が膨潤飽和するベンゼンを混合して、膨潤飽和するまで攪拌した場合の共重合体粒子の粒子径をdとしたときに、膨潤率(d/d03が20〜450である有機溶媒膨潤性ミクロゲルが得られる。
【0025】
「この混合溶媒に共重合体粒子が膨潤飽和する量のベンゼンを混合して、膨潤飽和するまで攪拌した場合」とは、ベンゼンの量と攪拌時間を増大した場合であっても、膨潤したミクロゲルの粒子径膨潤率(d/d03がさらに増大しないベンゼン量と攪拌時間が必要であることを意味する。
例えば、水中にミクロゲルを分散させて、この混合溶媒と同容積のベンゼンを添加し、5時間攪拌すれば膨潤飽和するには十分である。
重合溶媒が水:エタノール=8:2(20℃の容積比)の混合溶媒である場合は、重合後に重合分散液を純水に対して十分透析し、分散液を純水に交換する。このミクロゲル水分散液を適当な濃度に水で希釈して、ミクロゲルの濃度が一定量になるように調製したサンプルに測定サンプルと同容積のベンゼンを添加し、5時間混合攪拌すれば十分である。
また、粒子径のd、d0は動的光散乱法にて測定可能である。測定条件は下記の通りである。
まずコントロール値すなわちd0の値として有機溶媒を添加する前のミクロゲルの水中での粒子径を測定する。この測定は市販の動的光散乱測定装置を用いて簡便に測定が可能である。例えば大塚電子製 DLS7000、マーベルン製 オートサイザー4700、ブルックヘーブン製 ゼータパルスなどで測定が可能である。これらの市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、自動的に平均粒子径および分散度の値を得ることが出来る。一方有機溶媒での膨潤後の粒子径dは以下の方法でサンプルを処理する。即ち、一定濃度、好ましくはミクロゲルの重量濃度が0.01%程度のミクロゲル水分散液に同容量のベンゼンなどの有機溶媒を添加してふたつきサンプル管に封入する。このサンプル管を室温において緩やかに攪拌しながら一定時間攪拌する。攪拌時間は5時間程度で十分である。攪拌後、サンプル管ごと1000×g程度の軽い遠心分離操作を行い有機溶媒を浮上させ、ミクロゲルが分散している水相部分を注意深く、注射器で採取する。この採取サンプルを上述の市販の動的光散乱測定装置を用いて同様に平均粒子径および分散度を測定する。
このようにして得られたdおよびd0の値から膨潤率(d/d03の値を算出することが出来る。
【0026】
なお、従来の合成高分子によるミクロゲルは、いずれも高分子電解質、例えばポリアクリル酸を応用したものであり、その水への分散性に耐酸性や耐塩性がないものであった。しかしながら、医薬品や化粧品の配合成分として応用を考える際、生理的条件化での適応においては耐酸性や耐塩性は非常に重要な性能である。本発明の上記ミクロゲルは非イオン性高分子であるポリエチレンオキサイド鎖で安定化されたミクロゲルであり、その水中での分散安定性は耐酸性や耐塩性が期待できる。
また、水溶性高分子構造を含むマクロモノマーを応用したマクロモノマー法による高分子微粒子重合法は知られているが、この方法を応用して、コア部分を架橋性モノマーにより架橋させてミクロゲルを製造する方法は知られていない。
本発明で使用するミクロゲルは、親水性マクロモノマーと疎水性モノマーとが溶媒中にて図1に示すように秩序化が起り、粒子径がほぼ一定で、かつコア部分が架橋されたコア−コロナ型高分子ミクロゲルが生成すると考えられる。
そして、このコア−コロナ型高分子ミクロゲルが、優れた白濁化剤として機能するものと考えられる。
【0027】
以上が本発明に用いる共重合体の説明である。本発明の多層型化粧料は、この共重合体を、水(又は水溶性の化粧料成分が溶解した水層)に常法により混合分散させることによって製造される。すなわち、本発明の多層型化粧料は極めて簡単な製造プロセスによって生産可能という優れた商業的価値を有する組成物である。
【0028】
本発明で使用されるミクロゲルはイオン交換水中へ分散させたときの250nm以下のものを使用するのが好ましい。250nmを超える粒径のものでは高温条件下での長期保存において安定性の観点から多層型組成物として好ましくない場合がある。
【0029】
本発明で使用されるミクロゲルは、多層型化粧料の全量に対して通常0.001〜90質量%の範囲で配合するのが望ましく、さらには0.01〜50質量%が好ましい。ミクロゲルの配合量が0.001質量%未満では安定な多層型組成物が得難く、90質量%を超える配合量では高温条件下での長期保存において安定性の観点から化粧料として好ましくない場合がある。
【0030】
本発明に用いる上記ミクロゲルは、水に僅か0.01質量%配合するだけで白濁することが視覚で確認できる。そして、0.01〜0.1質量%の配合量により層境界が明確な層境界が得られ、優れた白濁化剤として機能する。従来の活性剤による層境界を明確にする技術では、層境界を明確にすることは難しく、さらに水相が白濁しているものは、存在しなかった。
【0031】
本発明の多層型化粧料は、液状油分を5〜40質量%含有する。液状油分を下記に例示する。液状油分に、油溶性薬剤や香料を溶解した場合も、層境界が明確な多層型化粧料を提供できる。なお、液状油分の含有量の5〜40質量%は、基剤の液状油分に溶解する固型、半固型油分、油溶性薬剤、油溶性香料等の油分も含んだ含有量を意味する。
【0032】
本発明に用いる液状油分は室温(15℃)で液状の油分であれば良く、限定されない。例えば、流動パラフィン、スクワレン等の炭化水素;エステル油;シリコーン油;アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;などが使用される。
【0033】
本発明の層境界が明確な多層型化粧料には実質的に界面活性剤を配合しないことが条件である。界面活性剤を配合すると、乳化現象が生じる可能性があり、明確な境界が生じ難くなる場合があるし、また、安定に均一の乳化組成物が生成して、放置しても、分離することなく、多層型の外観を生じない場合もある。
しかしながら、界面活性剤を配合する場合には、多層型化粧料を生成するため、液状油分の配合量に対する重量組成で0.8以下の配合量とすることが少なくとも必要である。
【0034】
液状油分に対する重量組成で0.8以下の配合量で配合可能な界面活性剤を以下に例示する。
(1)アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
(2)カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N'-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
(3)両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
(4)親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
(5)親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレート、POE-ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル類(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP-アルキルエーテル類(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0035】
本発明の多層型化粧料には、天然高分子や合成高分子の増粘剤を配合すると、使用性及び多層の分離速度を調整することが可能である。本発明においては、このような増粘剤を配合すると、通常の多層型化粧料においては境界が不明確になるが、本発明においては明確で美しい多層型化粧料の提供が可能である。増粘剤の配合量は限定されないが、多層型化粧料全量に対して、0.01〜10質量%が好ましい。
【0036】
本発明の多層型化粧料に配合可能な好ましい増粘剤を以下に例示する。
(1)天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子{例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸};微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);その他(例えば、魚由来コラーゲン、魚由来ゼラチン、コムギタンパク、シルクタンパク等)等が挙げられる。
(2)半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
(3)合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
(4)無機系の水溶性高分子としては、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0037】
本発明の多層型化粧料には、化粧料常使用される薬効剤、保湿成分、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機及び無機粉体、香料、色素などを必要に応じて配合することができる。
【0038】
薬剤成分は、油溶性、水溶性、両親媒性のいずれも適用し得る。具体的には、例えば、美白剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、各種アミノ酸およびその誘導体や酵素、抗酸化剤、育毛剤などの薬剤が挙げられる。
美白剤としては、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、コウジ酸、L−アスコルビン酸(ビタミンC)およびその誘導体、パントテニールエチルエーテル、トラネキサム酸およびその誘導体、プラセンタエキスや植物抽出物(例えばカミツレエキス等)等の各種抽出物などが例示される。
L−アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸モノステアレート、L−アスコルビン酸モノパルミテート、L−アスコルビン酸モノオレート等のL−アスコルビン酸モノアルキルエステル類、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類;L−アスコルビン酸ジステアレート、L−アスコルビン酸ジパルミテート、L−アスコルビン酸ジオレートなどのL−アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L−アスコルビン酸ジリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸ジエステル類;L−アスコルビン酸トリステアレート、L−アスコルビン酸トリパルミテート、L−アスコルビン酸トリオレートなどのL−アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L−アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのアスコルビン酸トリエステル類;L−アスコルビン酸2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類などが挙げられる。L−アスコルビン酸およびその誘導体としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシドまたはそれらの塩が挙げられる。
トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4'−ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス−4−(P−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)などが挙げられる。
抗炎症剤としては、例えばグリチルリチン、グリチルリチン酸塩(例えばグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、等)、アラントインなどが挙げられる。
保湿剤としては、例えば尿素などが挙げられる。
抗菌剤としては、例えばレゾルシン、イオウ、サリチル酸などが挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばオキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニン、ヒノキチオール、エチニルエストラジオールなどが挙げられる。
ビタミン類としては、例えばビタミンAおよびその誘導体(例えば、レチノール、ビタミンAパルミテート、等)、ビタミンB6、ビタミンB6塩酸塩等のビタミンB6誘導体、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のニコチン酸誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、β−カロチンなどが挙げられる。
各種アミノ酸およびその誘導体や酵素としては、例えばL−グルタミン酸やウロカニン酸、トリプシン、塩化リゾチーム、キモトリプシン、セミアルカリプロテナーゼ、セラペプターゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼなどが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばチオタウリン、グルタチオン、カテキン、アルブミン、フェリチン、メタロチオネインなどが挙げられる。
育毛剤としては、例えばβ−グリチルレチン酸、パントテニルエチルエーテル、ミノキシジルなどが挙げられる。
また、カンファー、メントール等の清涼剤も用いられ得る。
【0039】
本発明の多層型化粧料の製品種類は限定されない。最も好ましい製品は多層型化粧水であるが、液状の毛髪化粧料、液状の入浴剤等の化粧品にも応用可能である。
【実施例】
【0040】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。最初に、実施例に使用した共重合体(ミクロゲル)の製造例を示す。配合量は特に断りのない限り、質量%で表す。
【0041】
「ミクロゲルの製造例」
ミクロゲルの重合は以下の方法で実施した。還流管と窒素導入管を備えた200mLの三口フラスコに水−エタノール混合溶媒(水:エタノール=40:60容量比)50mLにPME−4000、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(nBMA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を溶解する。十分溶解した後、2,2'アゾビス(2メチルプロピオンアミジン 2塩酸塩)を全モノマー量に対して1mol%の割合で添加してさらに溶解する。完全に均一になった重合溶液を20分間窒素置換して溶存酸素を除いた後、マグネチックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて65から70℃に8時間保って重合する。重合終了後、重合液を室温に戻した後、重合液を水に対して5日間透析して、残存モノマーを除去し、同時に分散液を水に置換する。
用いたモノマーの量(g)を「表1」に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
「粒子径及び分散度の測定方法」
ミクロゲルの粒子径の測定は、マルバーン社製 ゼータサイザーを用いて測定した。ミクロゲル分散液のミクロゲル濃度を約0.1%に調製し測定サンプルを作成し、0.45マイクロメーターのフィルターでごみを除去した後、25℃での散乱強度を散乱角度90°で測定し、測定装置に搭載されている解析ソフトで平均粒子径および分散度を算出した。粒子径はキュムラント解析法により解析し、分散度はキュムラント解析で得られる2次キュムラントの値を規格化した数値である。この分散度は一般的に用いられているパラメーターであり、市販の動的光散乱測定装置を用いることで自動的に解析が可能である。粒子径解析に必要な溶媒の粘度は25℃の純水の粘度、即ち0.89mPasの値を用いた。
測定は各サンプルについて10回の測定を行いその平均値をとった。
【0044】
「ミクロゲルの粒子径および分散度」
得られたミクロゲルの粒子径および分散度を「表2」に示す。
【表2】

【0045】
次に多層型化粧料の実施例について説明する。
【0046】
「保存安定性の評価方法」
専門パネル10名により、1ヶ月室温で保存されたミクロゲル配合多層型化粧料を、1ヶ月後の外観を直後の状態と比較確認した。外観の変化については、次のように評価した。
<評価>
◎:直後の状態からの変化を10名中全員が確認できないと答えた。
○:直後の状態からの変化を10名中7名以上が確認できないと答えた。
△:直後の状態からの変化を10名中5名以上が確認できないと答えた。
×:直後の状態からの変化を10名中4名以下が確認できないと答えた。
【0047】
「使用感の評価」
専門パネル10名により、使用感(「べたつきのなさ」「こく感」「なじみの早さ」「テカリの抑制感」)の良否を下記の基準によって評価した。
◎:10名中7名以上が「良い」「実感できる」と答えた。
○:10名中5名以上が「良い」「実感できる」と答えた。
△:10名中3名以上が「良い」「実感できる」と答えた。
×:10名中2名以下が「良い」「実感できる」と答えた。
【0048】
下記の二層型化粧料を次の製造法により調製した。なお、比較例1の多層型化粧料は製造例のポリマーを配合しておらず、水相が透明の二層型化粧料である。
<製造法>
(A)の各成分を均一に混合溶解する。「表3」及び「表4」中の(C)の各成分を均一に混合溶解する。(A)に(B)及び(C)を撹拌しながら加え、さらに均一に混合した(D)を撹拌しながら2層型化粧料を得た。これを試料として、上記の評価方法にしたがい評価を行った。
【0049】
質量%
(A)精製水 残余
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.03
クエン酸(食品) 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
(B)グリセリン 12
キサンタンガム 0.12
(C)共重合体の分散水溶液 下記[表3]と[表4]に示す配合量
(D)スクワラン 5.0
オクタン酸セチル 2.0
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
「保存安定性の評価」
下記「表5」及び「表6」に示す通り、本発明の多層型化粧料は保存安定性に優れていた。すなわち、本発明の多層型化粧料は、長期にわたり保存しても、明確な境界を維持できる。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
「使用感の評価」
下記「表7」及び「表8」に示したように、本発明の多層型化粧料は、特に従来の多層型化粧料に比べ、べたつきが低減されたことが実感できる。
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
下記に本発明のその他の多層型化粧料を挙げる。
【0059】
「実施例12 三層型クレンジングオイル」
製造例4の共重合体 0.3質量%
流動パラフィン 20.0
2−エチルヘキシルパルミテート 5.0
シリコーン油 5.0
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
へキシレングリコール 30.0
ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル 3.0
食塩(局方) 3.0
精製水 残余
【0060】
「実施例13 三層型ローション」
製造例6の共重合体 0.5質量%
スクワラン 5.0
シリコーン油 5.0
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
プロピレングリコール 10.0
ソルビタンモノオレート 3.0
食塩(局方) 5.0
精製水 残余
【0061】
「実施例14:スキンローション
A.水相
製造例6の共重合体 0.5質量%
精製水 残余
ジプロピレンレングリコール 5.0
エリスリトール 5.0
リンゴ酸ナトリウム 0.5
エタノール 5.0
イソプロピルアルコール 1.0
ポリオキシエチレン(25)ポリオキシプロピレングリコール(30)
1.0
メチルパラベン 0.1
オウバク抽出液 0.5
B.油相
マカデミアナッツ油 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 0.5
2−エチルヘキサン酸トリグリセリル 2.0
香料 0.1
【0062】
「実施例15:日焼け止めローション」
A.水相
精製水 残余
ジプロピレンレングリコール 5.0重量%
ジグリセリン 3.0
乳酸ナトリウム 1.0
エタノール 10.0
モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10) 0.3
メチルパラベン 0.1
カオリン 2.0
B.油相
オクタメトキシシンナメート 8.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 10.0
酢酸トコフェロール 0.1
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の多層型化粧料は、層の境界が明確で、安定した美しい外観を有する多層型化粧料を提供可能である。また、水相が白濁した多層型化粧料を提供可能である。本発明の多層型化粧料は、各種増粘剤を配合してその使用性を向上させることが可能であり、多層型化粧水を初めとする様々な化粧料に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に用いるミクロゲルのコア−コロナ型高分子ナノスフェア生成メカニズムを示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと下記式(2)の疎水性モノマーと下記式(3)の架橋性モノマーとを重合して得られる共重合体と、液状油分を5〜40質量%含有し、下記(a)又は(b)の条件を満たすことを特徴とする多層型化粧料。
(a)実質的に界面活性剤を含有しないこと
(b)界面活性剤を含有する場合には、「界面活性剤の含有量/液状油分の含有量」が重量比で0.8以下であること
【化1】

(1)
1は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、nは20〜200の数である。XはHまたはCH3を表す。
【化2】

(2)
2は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、R3は炭素原子数1〜8のアルキルを表す。
【化3】

(3)
4とR5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキルを表し、mは0〜2の数である。
【請求項2】
前記共重合体が、下記(A)、(B)、(C)、(D)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体からなるミクロゲルであることを特徴とする請求項1記載の多層型化粧料。
(A)疎水性モノマーは炭素原子数1〜8のアルキルを有するメタクリル酸誘導体を一種もしくは二種以上を混合した組成であること
(B)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(C)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(D)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【請求項3】
前記ミクロゲルの粒子径が50〜300nmであることを特徴とする請求項2記載の多層型化粧料。
【請求項4】
さらに増粘剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の多層型化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−126394(P2007−126394A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320333(P2005−320333)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】