説明

多層塗布用ダイ

【課題】幅方向の塗布量分布精度を維持しつつ、同時多層スライドホッパー型コータの小型・計量化された多層塗布用ダイを提供する。
【解決手段】複数のブロック21〜28が連結されてブロック上面に塗布液のスライド面12aが形成されると共に、連結されたブロック同士の合わせ面に塗布液流路40が形成され、塗布液流路40から吐出された複数の塗布液を流下面12aで重畳させ、ウエブ16に同時多層塗布する多層塗布用ダイ12において、塗布液流路40は、塗布液を塗布液流路に供給する供給口と、供給口からウエブ幅方向に流路幅が連続的に拡張され、ウエブ16に塗布される塗布幅に拡流する拡流スリットと、拡流スリットの終端から流下面12aまで流路幅が一定に形成され、塗布幅に維持したまま流下面12aに至るように流通させる干渉スリットと、を備えたことを特徴とする多層塗布用ダイである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層塗布用ダイに係り、特に、写真感光材料用フィルム、印画紙、磁気記録テープなどの製造に用いられ、連続走行する帯状支持体に塗布する各種液体の塗布組成物を多層同時塗布する装置として用いられるスライドホッパー型の多層塗布用ダイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライド塗布、スライド式カーテン塗布は多層同時塗布に適した方法であり、その塗布装置は、いくつかのブロックを一体に締結し、隣接するブロック間でポケットを形成する構成になっている。これらブロックの締結精度は各スロットの間隙精度と関係し、最終塗布膜厚の精度を決める重要な要件である。
【0003】
このような塗布装置としては、下記の特許文献1および2には、複数のブロックを締結部材により連結し、多層塗布する多層塗布用ダイが記載されている。このような従来の多層塗布用ダイとして、特許文献2に記載されている例を図5に示す。図5の多層塗布用ダイ112は、塗布液を幅方向に均一に押し出すためにブロック120ごとにポケット121と塗布液流路140が形成されている。図5に示すように、ブロック120にポケット121を備えるためには、ブロック120の厚みが必要である。特許文献2の同時多層塗布用スライドコータが構成されるブロック120は30mm以上の厚みのブロックが用いられていた。また、特許文献1に記載されているブロック厚みは20〜25mmのブロックが使用されていた。
【0004】
一方、エクストルージョン型ダイの塗布ヘッドの厚みを薄くする方法として、下記の特許文献3には、ポケットを設けないで、塗布幅全体に渡って均一な塗布膜を形成することができる塗布ヘッドが記載されている。図6に特許文献3に記載されている塗布ヘッドの例を示す。図6(a)が正面図、図6(b)が斜視図である。図6の塗布ヘッド220は、供給口241からスリット240開口部にいたる間に、スリット240の幅方向に連続的に長さを拡げ、スリット240の厚み方向に連続的に縮小して塗布液を供給することにより、塗布幅全体に渡って均一な塗布膜を形成できるようにしている。
【特許文献1】特開2001−70855号公報
【特許文献2】特開2003−117463号公報
【特許文献3】特開昭63−298044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載されているように、ブロックの厚みを厚くすると、コータ全体の重さが重くなると共に嵩張るため、同時に塗布できる層数が制限され、所望の層数の膜が一度で形成できない場合があるという問題があった。
【0006】
また、特許文献3のブロックは、加工方法が複雑であり、加工時間が多く必要であった。さらに、このブロックを多層塗布用ダイとして用いる場合、ブロックは、厚み方向に連続的に縮小しているため、ブロックの層数が多くなり、小型、軽量化が図れないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、幅方向の塗布量分布精度を維持しつつ、同時多層スライドホッパー型コータの小型、軽量化された多層塗布用ダイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は、上記目的を達成するために、複数のブロックが連結されてブロック上面に塗布液の流下面が形成されると共に、前記連結されたブロック同士の合わせ面に前記流下面に至る塗布液流路がそれぞれ形成され、前記塗布液流路から吐出された複数の塗布液を前記流下面で重畳させ、該重畳させた塗布液を走行するウエブに同時多層塗布する多層塗布用ダイにおいて、前記塗布液流路は、前記塗布液を前記塗布液流路に供給する供給口と、前記供給口から前記ウエブ幅方向に流路幅が連続的に拡張され、前記供給口に供給された塗布液を前記ウエブに塗布される塗布幅に拡流する拡流スリットと、前記拡流スリットの終端から前記流下面まで流路幅が一定に形成され、前記拡流した塗布液を前記塗布幅に維持したまま前記流下面に至るように流通させる干渉スリットと、を備えたことを特徴とする多層塗布用ダイを提供する。
【0009】
請求項1によれば、多層塗布用ダイのブロック同士の合わせ面に形成される塗布液流路は、拡流スリットの後に、干渉スリットを備える構造になっている。したがって、拡流スリットにより塗布液を幅方向に拡流することができ、さらに、干渉スリットにより、塗布液の塗布量を幅方向に均一にすることができる。そのため、拡流スリットのみの場合に比べて、幅方向の塗布量分布精度を向上させることができる。したがって、従来のようなポケットを有さなくても幅方向に対する塗布液量を均一にし、精度よく塗布することができる。また、ブロックにポケットを有さない構成とすることができるので、ブロックの厚さを薄くすることができ、多層塗布用ダイ全体として、小型、軽量化を行うことができる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記拡流スリットと前記干渉スリットの流路厚みは、前記供給口から前記流下面まで1.5mm以下で一定に形成されると共に、前記干渉スリットの前記拡流スリットの終端から前記流下面までの長さが40mm以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項2によれば、塗布液流路はブロック同士の合わせ面に形成されており、かつ、拡流スリットと干渉スリットの流路厚みを供給口から流下面まで一定に形成しているため、ブロックの加工・成形を容易に行うことができる。また、干渉スリットの長さを40mm以上とすることにより、塗布液が干渉スリットを通過する際に、幅方向に均一の塗布液量に安定化されるため、供給口から供給された塗布液を幅方向に均一に塗布することができる。
【0012】
請求項3は請求項1または2において、前記供給口の直径が前記拡流スリットの厚みと同じになるように先細形状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項3によれば、供給口の直径と拡流スリットの厚みを等しくしているため、供給口から供給された塗布液を塗布液流路内に容易に供給することができる。
【0014】
請求項4は請求項1から3において、前記ブロックの厚みが1mm以上10mm以内であることを特徴とする。
【0015】
請求項4は各ブロックの厚みを規定したものである。本発明によれば、ポケットを設けることなく、幅方向に均一に塗布することが可能であるため、従来のブロックと比較し、薄いブロックとすることができる。上記範囲とすることにより、塗布装置を小型化することができ、一度に塗布できる層数を増加させることができる。
【0016】
請求項5は請求項1から4において、複数の前記ブロックを締結部材により連結したことを特徴とする。
【0017】
請求項5によれば、複数のブロックを締結部材により連結した構造としている。したがって、各ブロックのつなぎ面を精度よく維持することができるため、各層を所望の膜厚に精度よく維持することができる。
【0018】
請求項6は請求項5において、前記締結部材がボルトであり、一本の前記ボルトにより前記複数のブロックの全てを連結していることを特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、複数のブロックの全てを一本のボルトにより連結している。したがって、より精度よくつなぎ目を維持することができる。本発明においては、ポケットを設けることなく、ブロックを形成することができるので、ブロックの厚みを薄くすることができ、一本のボルトで連結することが可能である。また、ボルトの頭部、ナットの数を減らすことができるので、小型化、軽量化を行うことができる。
【0020】
請求項7は請求項1から6において、前記干渉スリットの長さが、40mm以上200mm以下であることを特徴とする。
【0021】
請求項7は、干渉スリットの長さを規定したものであり、干渉スリットを上記範囲とすることが好ましい。干渉スリットが短いと、塗布液を塗布する際に、充分な圧力を与えることができないので、均一な塗布膜を形成することができない。また、干渉スリットの長さが200mmを超えても、塗布膜の均一性の効果は変わらず、装置が大型になるため、好ましくない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ブロック内に拡流スリットを設けた後、干渉スリットを設けているため、ブロック内で塗布液を拡流した後、干渉スリットで塗布液の量を幅方向に一定に安定させることができる。したがって、幅方向の塗布量分布精度を維持しつつ、多層塗布を行うことができる。また、本発明により、ポケットを設けることなくブロックを製造することができるため、ブロックの厚さを薄くすることができ、小型、軽量化された多層塗布用ダイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。図1は本発明に係る多層塗布用ダイを有するスライドビード塗布装置を示す概略図である。図1に示すように、スライドビード塗布装置10は、コーティングロール11と、本発明の多層塗布用ダイ12と、ダイ架台13と、液受けを兼ねた減圧室14とから構成されている。コーティングロール11にはウエブ16が巻き掛けられて搬送され、この搬送されているウエブ16に対して多層塗布用ダイ12のスライド面(流下面)12aから塗布液が塗布される。
【0024】
多層塗布用ダイ12は、多数のブロック21〜28を縦にしてこれらを横方向に並べて、第1ブロック19及び最終ブロック29により挟み、ボルト31により締結することで構成されている。本実施形態では8個のブロック21〜28を用いて8層の同時塗布を可能としている。そして、各ブロック21〜28の連結には、すべてのブロックをボルト31により連結し、このボルト31を複数用いて連結している。
【0025】
スライド面(流下面)12aは、連結されたブロック21〜28同士の上面に形成される。そして、連結されたブロックの合わせ面に、供給口からスライド面12aに至る塗布液流路40が形成される。塗布液流路40は、一方のブロックの外側に形成され、これを他方のブロックで挟むことにより、塗布液流路40を形成することができる。したがって、ブロック内部を加工する必要がないため、ブロックの加工方法が容易となる。
【0026】
供給口から供給された塗布液は、ブロック同士の合わせ面に形成された塗布液流路40を通過しスライド面12aに至る。図1においては、8層の同時塗布が可能であり、塗布液流路40からスライド面に吐出された8種の塗布液はスライド面12aを流下しながら、順次重畳されて複数層の塗布液が形成される。図1においては、ブロック21と第1ブロック19とで形成される塗布液流路40から吐出される塗布液が最下層となる。そして、スライド面12aの上流側にいくに連れ、塗布液の上層となり、ブロック27とブロック28で形成される塗布液流路から吐出される塗布液が最上層の8層目となる。このようにして形成された複数層からなる布液は、スライド面12a先端に流下し、スライド面12a先端から走行するウエブ16に塗布される。
【0027】
図2に多層塗布用ダイに用いられる第1ブロック19とブロック21の部分側面図および断面図を示す。図2(a)は第1ブロック19とブロック21の側面図、図2(b)は図2(a)におけるA−A’断面図である。図2(a)に示すように、塗布ダイ中を塗布液が通過する塗布液流路40は、第1ブロック19とブロック21の合わせ面に形成されている。なお、図2(a)については、代表例として、第1ブロック19とブロック21の例について示したが、他のブロックについても同様である。ブロック21に形成される塗布液流路40は、塗布液を塗布液流路40に供給する供給口41と、供給口41からウエブ16の幅方向に流路幅が連続的に拡張され、供給口41に供給された塗布液をウエブ16に塗布される塗布幅まで拡流する拡流スリット42と、拡流スリット42の終端から流下面19aまで流路幅Wが一定に形成され、前記拡流した塗布液を塗布幅に維持したまま流下面19aに至るように流通させる干渉スリット43とを備える。
【0028】
なお、供給口41は、ブロック21の幅方向の中央部に設けることが好ましい。中央部に設けることにより、供給口41から供給された塗布液を均一に拡散させることができる。
【0029】
図2(b)に示すように、ブロック21に形成された塗布液流路40は、供給口41から所定の給液角度θで幅方向に拡張している。そして、その後、干渉スリット43を設け、拡流スリット42により幅方向に拡流した塗布液を所定の幅で維持している。このようにすることで、供給口41から供給された塗布液を拡流スリット42で、ウエブの幅方向に拡流した後、干渉スリット43により、塗布液を均一にしている。干渉スリット43において、塗布液を幅方向に均一に維持するため、スペーサー44をブロック21の側面に設けている。また、スペーサー44は、ブロック21の幅方向に移動可能とすることが好ましい。スペーサー44を幅方向に移動可能とすることにより、様々な塗布幅のウエブに対応することができる。
【0030】
また、各ブロック21〜28は、図1に示すように、一本ボルトにより複数のブロックを連結することが好ましい。そして、各ブロック21〜28は図2(b)に示すように固定穴45にボルト31を通すことにより、連結されている。一本のボルトを用いて、複数のブロックを連結することにより、ばらつきがなく、精度よく塗布することができる。また、装置の軽量化を図ることができる。
【0031】
次にブロック21に形成される塗布液流路40のサイズについて説明する。ブロック21の拡流スリット42および干渉スリット43の流路厚みDは1.5mm以下で、供給口41から流下面21aまで一定であることが好ましい。流路厚みDを上記範囲内とすることにより、ブロック21の幅方向に塗布液を均一に拡散することができる。また、1層当たりのブロック厚みを薄くすることができるため、より多くのブロックを積層することができる。流路厚みDが1.5mmを超える場合は、塗布液流路内での拡流が多方向に及ぶため、塗布液の均一性を保つことができない。
【0032】
また、干渉スリット43の拡流スリット42の終端から流下面21aまでの長さは40mm以上であることが好ましい。干渉スリット43の長さを充分長くとることにより、塗布液を干渉スリット43内に保持する時間を長くとることができるため、安定して塗布を行うことができる。干渉スリット43の長さは40mm以上あれば、安定して塗布を行うことができるが、好ましくは60mm以上である。また、上限は、塗布用ダイの小型、軽量化の点から200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。流路厚みDは1.5mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0mm以下である。本発明の多層塗布用ダイ12に用いられる各ブロック21〜28は、幅方向に均一に塗布することが可能であるため、特に上記範囲のブロックに対して有効だからである。
【0033】
なお、上記実施形態では、スライドビード塗布装置で用いる多層塗布用ダイ12について説明したが、本発明の塗布ダイはこの他にも、スライドカーテン方式、エクストルージョンビード方式、エクストルージョンカーテン方式などの他の塗布方式に用いてもよい。
【実施例】
【0034】
<試験例1:幅方向塗布量分布の確認>
[使用液条件]
5%ゼラチン水溶液に市販の界面活性剤(ラピゾールA90(日本油脂(株)))と増粘剤(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(富士フイルムファインケミカルズ(株)))を添加して粘性度を50mPa・sec、静的表面張力を30mN/mになるように液物性を調整した。
【0035】
[実験方法および評価方法]
図1に示すスライドビード塗布装置を用いて、塗布量の幅方向の分布の測定を行った。ブロックは厚さ3mmのブロックを用い、装置パラメータとして、給液角度、スリットクリアランス(CL)および干渉スリット長を、塗布操作条件として、送液量を変更して塗布量分布の測定を行った。試験パラメータを図3に示す。
【0036】
測定はスライド面幅方向の5点の位置で一定時間での液量をサンプリングし、重さを測定することにより評価を行った。評価は以下の基準により行った。
○・・・・・充分満足のいく塗布量分布を示した。
△・・・・・ほぼ満足のいく塗布量分布を示した。
×・・・・・不満足な塗布量分布を示した。
【0037】
[結果]
結果を図3に示す。スリットクリアランス(CL)が0.5mm、給液角度が66°、干渉スリット長が60mmであれば、検討した送液量の範囲内では良好な塗布量分布が得られた。干渉スリット長を短くすることにより、40mmでは、ほぼ満足のいく塗布量分布が得られたが、20mmまで短くすると、全ての流量範囲で満足のいく塗布量分布が得られなかった。
【0038】
また、スリットクリアランスを1mm、給液角度を66°、干渉スリット長を60mmとした場合は、ほぼ満足のいく塗布量分布が得られたが、同一条件でスリットクリアランスを3.0mmとした場合は塗布量分布が悪化した。
【0039】
以上より、給液角度および塗布液の送液量によらず、スリットクリアランスを1mm以下、および、干渉スリット長を40mm以上とすることにより、ほぼ満足のいく塗布量分布が得られることが確認できた。
【0040】
<試験例2:超薄層コータでの塗布面状の確認>
[使用液条件]
5%ゼラチン水溶液に市販の界面活性剤(ラピゾールA90(日本油脂(株)))と増粘剤(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(富士フイルムファインケミカルズ(株)))を添加して粘性度を50mPa・sec、静的表面張力を30mN/mになるように液物性を調整した。
【0041】
[実験方法および評価方法]
図1に示すスライドビード塗布装置に3層構成の同時重層塗布を行うことができる多層塗布用ダイを用いて試験を行った。塗布用ダイは、試験例1において、幅方向塗布量分布に効果の認められたブロック厚み3mm、給液角度66°、スリットクリアランス0.5mm、干渉スリット長60mmの複数の超薄層ブロックの前後に厚さ20mmのブロックを挟んで加工したダイを用いた。このダイを塗布装置に組み込む方法としては、図1に示すようにボルトに全てのブロックを串刺しにして固定できるようにした。そして、この超薄層コータを用いて3層構成の同時重層塗布を行い、そのときの塗布面状の確認を行った。なお、試験は、1層目と3層目の塗布量を固定し、2層目の塗布量を変化させて3層全体の面状を目視により評価を行った。また、比較例6として従来の塗布コータ(図5に記載)を用いて試験を行った。なお、評価は以下の基準により行った。
【0042】
○・・・・・従来の塗布コータを用いた塗布と同等以上の塗布面状である。
△・・・・・従来の塗布コータと比較し、やや劣る塗布面状である。
×・・・・・従来の塗布コータと比較し、劣る塗布面状である。
【0043】
[結果]
結果を図4に示す。図4に示すように、2層目の塗布液の量によらず、3層での膜面は良好であり、従来と比較してまったく問題ない塗布面状を得ることができた。
【0044】
以上より、拡流スリットの後に干渉スリットを設け、クリアランスを同じで1mm以下とし、かつ、干渉スリットを40mm以上とすることにより、ブロックの薄層化が可能となり、塗布精度を維持しつつ、塗布ダイの小型、軽量化を行うことができる。また、厚みを厚くした第1ブロックと最終ブロックの間に薄層化したブロックをサンドイッチ状にはさみ全てのブロックを一本のボルトで縫合することで、超多層スライドコータの製作が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の多層塗布用ダイを備えるスライドビード塗布装置の概略図である。
【図2】多層塗布用ダイに用いられるブロックの(a)側面図、(b)A−A’断面図である。
【図3】試験例1の結果を示す表図である。
【図4】試験例2の結果を示す表図である。
【図5】従来の多層塗布用ダイを備える塗布装置の概略図である。
【図6】従来の塗布に用いられるブロックの(a)正面図、(b)斜視図を示す。
【符号の説明】
【0046】
10…スライドビード塗布装置、12…多層塗布用ダイ、12a、19a、21a…スライド面、13…ダイ架台、14…減圧室、16…ウエブ、19…第1ブロック、21〜28…ブロック、29…最終ブロック、31…ボルト、40…塗布液流路、41…供給口、42…拡流スリット、43…干渉スリット、44…スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックが連結されてブロック上面に塗布液の流下面が形成されると共に、前記連結されたブロック同士の合わせ面に前記流下面に至る塗布液流路がそれぞれ形成され、前記塗布液流路から吐出された複数の塗布液を前記流下面で重畳させ、該重畳させた塗布液を走行するウエブに同時多層塗布する多層塗布用ダイにおいて、
前記塗布液流路は、
前記塗布液を前記塗布液流路に供給する供給口と、
前記供給口から前記ウエブ幅方向に流路幅が連続的に拡張され、前記供給口に供給された塗布液を前記ウエブに塗布される塗布幅に拡流する拡流スリットと、
前記拡流スリットの終端から前記流下面まで流路幅が一定に形成され、前記拡流した塗布液を前記塗布幅に維持したまま前記流下面に至るように流通させる干渉スリットと、を備えたことを特徴とする多層塗布用ダイ。
【請求項2】
前記拡流スリットと前記干渉スリットの流路厚みは、前記供給口から前記流下面まで1.5mm以下で一定に形成されると共に、前記干渉スリットの前記拡流スリットの終端から前記流下面までの長さが40mm以上であることを特徴とする請求項1記載の多層塗布用ダイ。
【請求項3】
前記供給口の直径が前記拡流スリットの厚みと同じになるように先細形状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の多層塗布用ダイ。
【請求項4】
前記ブロックの厚みが1mm以上10mm以内であることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の多層塗布用ダイ。
【請求項5】
複数の前記ブロックを締結部材により連結したことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の多層塗布用ダイ。
【請求項6】
前記締結部材がボルトであり、一本の前記ボルトにより前記複数のブロックの全てを連結していることを特徴とする請求項5記載の多層塗布用ダイ。
【請求項7】
前記干渉スリットの前記拡流スリットの終端から前記流下面までの長さが、40mm以上200mm以下であることを特徴とする請求項1から6いずれか記載の多層塗布用ダイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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