説明

多層布およびその製造方法

【課題】「折り」技術を用いて工業用布を製造するための方法および装置の提供。
【解決手段】この発明は、折り技術を用いることによって得る積層布に関する。その方法は、最終的な布の幅よりも大きな幅をもつベース支持構造を形成する工程、ベース支持構造の一面あるいは両面に、短繊維バットからなる層を少なくとも一層取り付ける工程、ベース支持構造をそれ自体の上に一回あるいは二回以上横方向に折り、多層構造を形成する工程、および多層構造の各層を互いに結合し、積層した布構造を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には工業用布に関し、具体的には、たとえば製紙工業で用いる製紙機械布(「PMC」、Paper Machine Clothing)であり、「折り」(folding)技術によって製造される布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明は、製紙機械布、処理ベルト(たとえば、シュープレスベルト、カレンダーベルト、トランスファベルトなど)、さらには、他の工業用テキスタイル処理布/ベルト(たとえば、皮なめしスリーブ)に広く関係する。この発明は、それに限定されるわけではないが、特に、製紙機械のプレス部分で用いるプレス布あるいはベルトに適用することができる。そのほか、この発明は、製紙機械における成形部分および乾燥部分にも適用することができる。この発明は、工業用布として多くの用途が考えられるが、以下においては、実例として製紙機械布への適用例を述べる。
【0003】
製紙プロセスにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作られる。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面にセルロースを含む繊維状のウェブを残す。
【0004】
新しく作られたセルロースを含む繊維状のウェブは、成形部分からプレス部分へと移る。プレス部分には、一連のプレスニップがある。セルロースを含む繊維状のウェブは、プレス布に支えられたプレスニップを通って、すなわち、しばしばはそのような二つのプレス布の間を通って行く。プレスニップにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、圧縮力を受けて水を搾り出し、さらに、ウェブ中のセルロース繊維を互いに付着し、セルロースを含む繊維状のウェブを紙シートに変える。一枚あるいは複数枚のプレス布が水を受け入れ、理想的には、水を紙シートに戻すことがない。
【0005】
紙シートは、最後に乾燥部分に移る。乾燥部分には、少なくとも一連の回転乾燥ドラムあるいはシリンダがあり、それらのドラムあるいはシリンダの内部はスチームで加熱されている。新しく作られた紙シートは、乾燥布によって一連のドラムのそれぞれの周りを順次曲がりくねるようにして進む。乾燥布は、紙シートをドラム表面に密着させるように保持する。加熱ドラムは、蒸発によって紙シートの水分量を低減し、好ましい水分レベルにする。
【0006】
成形、プレス、乾燥の各布は、すべて製紙機械上で無端ループの形態であり、コンベヤのように機能する。さらに、紙の製造は、かなりの速度で進行する連続的なプロセスであることを認識されたい。すなわち、繊維状のスラリーは、成形部分の成形布上に連続的に堆積し、また同時に、新しく作られた紙シートは、乾燥部分から出た後、ロールに連続的に巻き取られる。
【0007】
プレス布は、通常、ベース支持構造に織った糸材料から作られ、縦方向(MD、すなわち、製紙機械においてプレス布が動く方向)にエンドレスであって循環する。そして、プレス布は、ベース支持構造上に配置した、一あるいはそれ以上の繊維材料の層を備える。ここで言う「繊維材料」(fiber material)は、すべてのタイプのステープル、およびプレス布あるいはベルトに用いることができる同様なものを含む。
【0008】
プレス布は、紙の製造プロセスの中で重大な役割を演じる。それらの主要な機能は、上に述べたように、プレスニップ中の紙シートから搾った水を吸収することである。プレス布の付加的な機能は、プレスニップの中に紙シートを支持し、紙の地合いを壊さないようにすること、ニップの中の紙シートに均一な圧力分布を与えること、紙シートに望ましい表面仕上げを行うこと、プレスロールの凹凸領域上に圧力を均等に分布させることによって、プレスロールの溝あるいは吸込みによるシャドーマークの発生をなくしたり減じたりすること、紙シートをある位置から別の位置まで動かすこと、そして、動力伝動ベルトとして、プレス部分のすべての非駆動ロールを駆動すること、である。
【0009】
現代の布は、製造すべき紙の品質に応じて、取り付けるべき製紙機械の要求に適合するように広範囲な多様性をもって製造される。一般に、それらの布は、ベース布として織られた糸(ヤーン)を備え、それらはまた、不織の繊維材料からなる針編み部材(batting)を備える。ベース布については、モノフィラメント、もろよりモノフィラメント、マルチフィラメントあるいはもろよりマルチフィラメントから織ることができるし、単層、多層、あるいは積層にすることができる。糸は、通常、製紙機械の布技術の分野の当業者がこの目的で用いる、ポリアミドのような合成樹脂の一つから押出し成形される。
【0010】
織り布は、多くの異なる形態である。たとえば、無端に織ることができるし、あるいは、平織りをしてから、縫い合わせにより無端の形態にすることもできる。そのほかに、変形無端織りとして一般に知られている方法によって、織り布を製造することができる。その方法では、ベース布の横方向の端あるいはへりに、縦方向(MD)糸を用いた縫い目ループを備えている。この方法において、布の横方向の端の間であり、折り返して縫い目ループを作る各端において、MD糸を連続的に前後に縫う。このように製造するベース布は、製紙機械に据え付ける際、無端の形態に据える。そのため、機械上で縫合可能な(on-machine-seamable)布と称される。そのような布を無端の形態に据えるため、2つの横方向の端を合わせ、2つの端の縫い目ループを互いに入り込ませ、その組み合った縫い目ループが作る通路に向けて縫い目ピンあるいはピントルを通す。
【0011】
さらに、織りベース布については、別のものが作る無端ループの内部に一つのベース布を置くことによって、そして、プレス布の場合には、両方のベース布を通して短繊維を針で縫って結合し、積層することができる。そのことについては、レックスフェルトほかの米国特許第5,360,656号(以下、「’656特許」)が示している。その’656特許の内容を引用してここに組み入れる。一つあるいは両方の織りベース布を、前記の機械上で縫合可能なタイプとすることができる。しかし、ベース布の上に繊維層を付け加え、その後にそれを針で縫うために、今までの針縫い工程が入ってくる。その針縫い工程においては、針縫いベッド上でベース布に繊維層を通すことになり、針縫いボードがベース布を通して短繊維を針で縫い、それによって、繊維をベース構造に引っかける。この工程には時間と労力がかかるだけでなく、費用も高くなる。
【0012】
米国特許第4,911,683号および5,466,339号は、布の一面あるいは両面に繊維バット材料を施したベース布からなるプレスフェルトを示している。繊維バット材料をベース布に取り付けるに際して、一般的な針縫い工程、あるいは適当な接着剤や樹脂による接着で行う。’683特許は、また、ベース布に対してバットを縫い付けたり、縫い合わせたりすることを示している。しかし、これらの技術では、縫われていない箇所で裂けたり層が分離したりするなど、由々しき問題がある。
【0013】
現在では、プレス布の大抵のベース支持構造は、この分野の当業者によく知られた管式あるいは無端の織り技術を主として用いて製造される。管式の織り技術では、ベース支持構造を無端のループの形態に形作り、MD糸を形成する横糸を、上部の縦糸層(上布)とベース支持構造の縦(CD)糸を形成する下部の横糸層(下布)とに交互に通す。織り機の横方向におけるこの「管(チューブ)」の長さは、最終的なベース布の長さの半分に相当する。ベース支持構造の幅は、織りの長さで決まる。しかし、これらの公知技術には、次のような欠点がある。
【0014】
第1に、管状の織りベース布の長さは、織り機のリード幅で決まる。このように、管状の織りベース布は、与えられた長さであり、後で大きくは変更することができない。そのため、織り作業中に、そのプレス布が使用される製紙機械のプレス位置に合うように正確に調整しなければならない。そこで、ベース支持構造およびプレス布については、標準の大きさに製造し保管することができず、それぞれの特定の注文に応じて製造せざるをえない。このことは、引渡し時間を延ばし、また、織り機の利用度を低下させる事態を招く。
【0015】
第2に、より長いベース布を形作るように織り機を調整するとき、新しい縦糸をリードに挿入しなければならないが、それにはセットアップに時間がかかるだけでなく、縦糸の張力を均一にするために機械を調整する時間も必要である。
【0016】
第3に、今のベース支持構造のすべてのものに対する管状織りができるように、織り機には33mにもなるような大きな幅をもたせなければならない。したがって、織り機は大きくかつ高価になってしまう。
【0017】
第4に、幅の広い織り機によって短い長さのベース支持構造を織ると、縦糸を無駄に消耗してしまう。というのは、織り工程の際、織り機に送り込む縦糸のすべてが使用されることにならないからである。
【0018】
そこで、今までの技術における以上のような問題を解決することが要望される。この発明は、以上に述べた今までの技術における欠点を解消し、技術の進歩を図るものである。
【発明の概要】
【0019】
したがって、この発明の目的は、今までのものに比べて、きわめて速く製造することができる機械および方法を提供することを目的とする。
【0020】
この発明の目的は、プレス布のような多層の織物構造を提供することであり、その一実施例では折り技術を用いる。
【0021】
この発明の他の目的は、MD糸アレイを用いてベース支持構造を形作った、MD配列のプレス布を提供することである。
【0022】
この発明のさらに他の目的は、同様の布を今までの方法や機械で製造するとき、短繊維を付けるために必要な針縫い工程のすべてではないが、大幅に省くことにある。
【0023】
この発明のさらにまた他の目的は、不織の繊維層、特には短繊維層を、製造アセンブリ工程の間にベース支持構造に同時に付けることができる機械および方法を提供することである。
【0024】
この発明のさらなる目的は、人員および機械の数を低減することができる、フレキシブルな製造方法を提供することである。
【0025】
この発明によって、これらおよびその他の目的、ならびに利点を得ることができる。その点、この発明の一つの実施例は、プレス布などを形成するための機械および方法に関する。この発明の方法によれば、最終的な工業用布の幅よりも大きな幅をもつベース支持構造を構成する。たとえば、単層の織り構造を無端織りによって形作る。そして、少なくとも一層の短繊維バット材料を、ベース支持構造の一面あるいは両面に取り付ける。短繊維バット材料を取り付けた後、そのベース支持構造を横方向にそれ自体の上に一回あるいは二回以上折り、多層の構造を作り出す。最後に、多層の構造の各層を、この分野で知られた接着技術によって互いに接着する。そのような接着技術として、たとえば、付加する短繊維層を多層の構造の上に針縫いする方法、および/または加熱および加圧する方法、さらにはそれに適した他の手段を挙げることができる。それによって、積層したプレス布を形作ることができる。
【0026】
この発明の他の実施例は、工業用布の形成方法に関する。その方法では、糸材料からなる細片(ストリップ)、たとえば布の縦方向(MD)に実質的に配列した糸を伴うMD糸アレイを、二つの平行なロール上にらせん状に巻いて、ベース支持構造を形成する。また、ベース支持構造については、適切な幅のロールから糸材料の組織を平らに巻いて無端のループを形作ることによって形成することもできる。ベース支持構造は、最終的な布の幅よりも大きい幅であり、そして、少なくとも一層の短繊維バット材料の層をその一面あるいは両面に付加的にもつ。付加的な層は、織り材料でも良いし、あるいは、適用に応じてエアレイド、スパンボンドまたは発泡高分子フィルムあるいは層のような不織材料でも良い。そのような層を取り付けた後、そのベース支持構造を横方向にそれ自体の上に一回あるいは二回以上折り、多層の構造を作り出す。最後に、多層の構造の各層を、上に示した接着技術によって互いに結合する。それによって、目的とする適用に合った長さおよび幅の積層した布構造を形成する。
【0027】
次に述べることに留意されたい。最終的にXの布幅が必要な場合、二回の「折り重ね(foldover)」をするとして、最初のベース支持構造の幅は3Xである。しかし、付加的な層(一層あるいは複数の層)の幅は、必要な最終構造に応じて、1X、2X、あるいは3Xとすることができる。
【0028】
この発明を特徴づけるいろいろな新規な特徴については、特許請求の範囲に詳しく示している。その内容をここで開示するものの一部とする。この発明、ならびにそれによる利点、およびそれにより得る具体的な目的についてより良く理解するため、引き続く詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好適な実施例について、図面とともに示している。図面の中には、対応する構成部分には、同じ符号を付けている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施例である製造機械を上から見た図である。
【図2】この発明の一実施例である製造機械に赤外線ヒーターを使用した形態を上から見た図である。
【図3】この発明の他の実施例である製造機械の外観図である。
【図4】この発明の一実施例であり、「折り」技術を示す図である。
【図5】折った布層の間に付加的な層を含む、この発明の一実施例について「折り」技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
複数の実施例の中の一つの発明は、多種多様な技術によって多層の無端布を製造するための方法および機械であり、それらについて以下に詳しく説明する。
【0031】
この発明の一実施例の機械100は、実質的に平行な二つのロール20,30を含むフレーム90を備える。それら二つのロール間の距離は、いろいろな布の長さに応じるように調整することができる。ロール20,30は、加熱しても良いし、加熱しなくても良い。ロール20,30の系統は、メインシリンダ30と伸びロール20とを含む。それらの間の距離は、最終的な布に求められる作動長さにほぼ一致する。その長さは、ベース支持構造が無端の織り布の場合、あるいは’656特許のように布の細片をらせん状に巻く場合、またはMD糸組織をたとえばロール20,30の周りにらせん状に巻く場合にほぼ同じである。フレーム90の幅は、この分野で一般的な標準の乾燥機フレームの幅(通常、最大で15m)よりもはるかに大きい。このはるかに大きい幅をもつために、「折り」技術に伴う非常に広い布の製造をすることができる。それについて、もう少し詳しく述べよう。たとえば、最終的な幅が10mの布を製造するため、シングル折りに対して20mの幅のフレームを用いる。そしてまた、二回折りの10mの幅を製造するためには、各折りを10mとして30mの幅のフレームを用いる。
【0032】
この機械の「伸び」ロールは、また、ロールと伸びメカニズムとを分割可能に提供することができる。その分割によって、製品がたとえ異なる長さであっても多数の製品について同時に機械を利用することができる。その分割は、また、同じ長さの布の生産に限られていた今までのフレームに比べて、生産および機械の活用をきわめて効率的にする。
【0033】
この発明の他の実施例によれば、それを製紙機械に使用したり、あるいは脱水、輸送、仕上げ布(ベルト)を必要とする他の機械に使用したりする布10を、上述した機械上で製造することができる。
【0034】
図1に示すように、支持布10については、一般的な織り技術のやり方で、目的とする最終的な完全な多層の布あるいはベルトの幅をもつ無端織り構造に形成することができる。支持布10は、また、管状あるいは無端の布を製造するために、MD糸アレイのような糸組織、織り製品、編み製品、スパンボンドのような不織製品、発泡製品、CD糸アレイあるいはフィルムのいずれかをロール20,30上に供給することによって製造することもできる。布10は、クリール40(つまり、糸用)を通して、あるいは、所定幅のフラットロール(すなわち、織り、編み、不織、発泡あるいはフィルムタイプの材料用)から供給することにより、無端のループを形作ることができる。無端のループは、また、’656特許が示すものと同様ならせん巻きの方法によって形成することもできる。支持布10は、また、積層の形態に形作ることができる。積層の場合、無端のループの内部に無端のループを配置し、両層を互いに結合させる。たとえば、上層が無端の織り構造であり、一層あるいは二層以上の下層が、らせん巻き、フラットロールから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品あるいはフィルムであり、または上層と下層とを逆にすることもできる。さらにまた、支持布10について、二層あるいはそれ以上の層を無端に重ねた積層形態にすることもできる。積層する各層は、らせん巻き、フラットローラから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品あるいはフィルムである。布10は、表面部分あるいは糸構造の内部が可溶性の成分をもつ糸で構成することができる。たとえば、外部の材料が内部の材料よりも低融点である、シーズ−コア形態の二成分の糸である。支持ロープ、これはその分野で「カムアロング」と一般に称されるものであるが、それを支持布の縦方向の一方の端に取り付ける。その支持ロープは、この実施例で説明するように、「折り」技術で用いるものである。この発明の一実施例では、支持布を形成した後、短繊維バットの付加的な層45を設ける。付加的な層としては、すでに述べたように、織りあるいは不織の材料であり、溶解あるいは接着性の成分を含むものである。それを支持布10の外側、内側あるいは内外の両方に配置し、そこに結合する。
【0035】
この発明の一実施例による方法では、MD糸アレイを用いる際、糸の配置方向を保つために、繊維バット層あるいは他の不織層を施し、そしてまた、糸組織の材料に一定の間隔を置いてから、機械フレームのロール20,30上にそれを巻く。短繊維バット、織りあるいは不織の材料からなる層45は、支持布10の外側、内側あるいは内外の両方に配置し、そこに結合する。また、巻き工程では、糸組織の材料をロール20,30の上および/あるいは下に連続的に通す。
【0036】
図2に示すこの発明の一実施例の方法では、布10を製造するために、互いに離れた二つのロール20,30の間に走るプレスロール(図示しない)に沿う赤外線ヒーター50を使用している。その赤外線ヒーターは、付加的な層45(織り材料、不織材料、短繊維バットあるいは他の材料)を布10に付着あるいは結合するためのものである。付加的な層45の結合は、また、接着剤と熱源とを用いて行うことができる。接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール(「PVA」)、あるいは溶けやすい繊維がある。また、熱源は加熱シリンダロール30をもち、たとえば、加熱空気ブローボックス、赤外線ヒーター、加熱シリンダロール、あるいはこの分野で知られるその他の適切な手段などである。この工程には、針を伴うニードルロールあるいはベルトのシステム、または、機械フレームに取り付けた針縫いボードを含むことができる。それによって、繊維あるいは他の不織材料をしっかりと引っかけ、適正な結合を確実にして固定する。この方法により、すべての工程を単一のフレーム機械上で完結し、図3に示すように、先行する積層ベース支持構造60を得る。その配列によって、布の両側に繊維層を施すために、製紙機械布の分野で一般的なニードル機械に製品を移すことが必要でない。図3が明らかにするように、先行するものは、ロール30の周りを連続し、しかもまた、取巻きロール20に対しても連続的なループになっている。
【0037】
この発明によるベース支持構造60は、図3に示すように、横方向のへり1,2をもち、その幅が最終製品の大きさの少なくとも二倍に製造される。ベース支持構造60は、また、求められる大きさ、空隙量、強度、厚さなどを得るため、最終的な布幅の三倍、四倍あるいはその他の整数倍にすることもできる。付加的な層45と支持構造10とを結合する工程の後、完成した構造60を図4に矢印で示す方向に折り返し、布70を得る。布70は、その布70の妥当な面(すなわち、紙側およびロール側あるいは布の裏側)に、注文の材料10,45をもつ最小二つの異なる「層」を備えることになる。「折り」技術は、布60の一方の側を他方にひっくり返すことで完成する。たとえば、前に述べたカムアロングを第2のへりに向けて引っ張り、布60を折り返すことができる。
【0038】
この発明の別の考え方によれば、短繊維あるいはフィルム、発泡品またはCD糸アレイ80のような別の層を、図5に示すように、支持構造60に据えることができる。それによって、たとえば、その別の層を折り返した布70の間に位置させ、厚さ、空隙量、通気性、強度および/または求められる他の特性を得ることができる。たとえば、短繊維あるいはフィルム80の幅は、最終的な布が二回折りであればベース構造60の幅の半分の大きさであり、また、三回折りであれば1/3・・・というようになる。層80は、ベース構造60を折り返す前にその横方向のへり1,2のいずれかに沿うように置く。しかし、余分な厚さあるいは密度が必要な場合、短繊維あるいはフィルム80の幅をベース支持構造60の幅と同じにすることができる。多層構造の層については、その分野で知られた結合手段(たとえば、加熱、加圧および/または接着剤)によってそれぞれを結合し、それによって積層布を形成する。層80を「切断」形態で示しているが、それはループ形態であり、最終的な布の長さであり、両方のロール20,30の周りに連続的なループを形成していることに留意されたい。
【0039】
他の実施例では、ベース支持構造60に対して可溶性の糸組織45を供給し添えることができる。そして、それを前に述べたニードルロールあるいはベルトシステム、機械フレーム上に取り付けたニードルボードあるいは装置で処理する。それによって、可溶性の繊維組織を構造の中に充分に混じらせることができ、引き続く熱処理によって、構造を固めるために充分な結合をすることができる。可溶性の繊維組織45については、溶融温度が異なる第1および第2の繊維で構成することもできる。第1の繊維を処理する第1のレベルにおいて、ベース構造と繊維とが接着し、そして、より高い溶融温度をもつ第2の繊維が最終段階で溶融し、構造全体を固めることになる。たとえば、可溶性の繊維として、115℃および140℃でそれぞれ溶融するものを用いることができる。二成分の繊維、すなわち、シーズ−コア形態あるいは共存形態をもまたこれに適用することができる。最終構造70については、また、ポリビニルアルコール(「PVA」)のような接着剤、あるいは針縫い工程のいずれかによって層を結合し、その後、層が低融点繊維のような可溶性材料を含むときには加熱して得ることもできる。さらにまた、前に述べたように、付加的な短繊維バット層の一層あるいは複数の層を、通常の手法によって最終的な布70の外側の層上に加えることができる。
【0040】
以上に示した方法は、少なくとも以下の理由によって、今までのものよりも有益である。まず、この発明による方法は、今までの技術に比べて、多層の積層構造を迅速に製造することができる。この方法は、また、繊維状の層を付け、強固にし積層を保持するためにニードル機械上で行う今までのニードル工程を最小にするか、全く省略する。この工程において、短繊維層を、らせん巻き工程の間に同時に当て、今までのニードル工程に必要な機械的な連結とは対立する溶融あるいは接着によって結合する。今までのニードル工程では、前に述べたように、一般的に布をそのための他の機械に移さなければならない。
【0041】
結果として得る布の中にMD糸の不織アレイを少なくとも二層もつ、MD配列の不織糸アレイを含む実施例においては、それが布の圧縮性を増大するように働く。これは、織りがないことに起因し、それが布に圧縮力に対する非常に小さな抵抗を与える。布の圧縮性が大きくなる結果、製紙機械のプレスの「始動」が非常に速くなり、通常、ニップ脱水が非常に速く現れる。また、このように製造された布は、布の縦方向の流れ抵抗が非常に小さい。それは、多層のMD配列糸組織があることによって「流れ通路」が形成されるからである。
【0042】
無端織りで幅が満たない以上に述べた層の組み合わせを利用するとき、さらなる利点は、他の製造技術で作るときにおけるような、織り機のへり、結合によるCD縫い目、あるいは他のCD途切れが完全にないことである。これら織り機のへり、CD縫い目および途切れがないことによって、布全体に排水が均一になるなどの布特性の均一性が向上するだけでなく、シート模様が少ない製品を得ることになる。さらにまた、この発明の方法は、製造工程に柔軟性を生み、人員および機械の数を最小にする。
【0043】
この発明の実施例について図面を参照しながら詳しく説明したが、この発明は、そのような実施例に限定されない。当業者は、特許請求の範囲に定めた考え方から離れることなく、いろいろな変形や修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
10 布
20,30 ロール
40 クリール
45 付加的な層
50 赤外線ヒーター
60 支持構造
70 最終的な布
80 別の層
90 フレーム
100 機械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用布を製造する方法であって、次の各工程を備える製造方法。
(a)最終的な布の長さに相当するだけの長さと、最終的な布の幅よりも大きく、前記工業用布の幅の整数倍である幅とをもつベース支持構造を形成する工程。
(b)そのベース支持構造を横方向にそれ自体の上に一回あるいは二回以上折り、多層構造を形成する工程。
(c)前記多層構造の各層を互いに結合し、積層した布構造を形成する工程。
【請求項2】
前記ベース支持構造が、無端の織り構造である、請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記ベース支持構造を、少なくとも二つの平行なロール周りに細片材料をらせん状に巻くことにより形成する、請求項1の製造方法。
【請求項4】
前記細片材料が、その布の縦方向に配列した糸を備える、請求項3の製造方法。
【請求項5】
前記細片材料が、織った材料、不織材料、編んだ材料、発泡材料、CD糸アレイ、あるいはフィルムタイプである、請求項3の製造方法。
【請求項6】
前記ベース支持構造が、無端の織り構造の上層と、らせん巻き、フラットロールから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品、あるいはフィルムの一層あるいは二層以上からなる下層とを含むか、または、それらの上層と下層とを逆にした積層体であり、
前記上層と下層とを互いに結合したものである、請求項1の製造方法。
【請求項7】
前記ベース支持構造が、らせん巻き、フラットロールから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品、あるいはフィルムの二層あるいはそれより多くの層を含む、無端形態の積層体であり、
前記二層あるいはそれより多くの層を互いに結合したものである、請求項1の製造方法。
【請求項8】
前記支持構造は、表面部分あるいは糸構造の内部が可溶性の成分をもつ糸で構成されている、請求項1、6あるいは7のいずれか一つの製造方法。
【請求項9】
前記糸が二成分の糸を含む、請求項8の製造方法。
【請求項10】
前記ベース支持構造の一面あるいは両面に、少なくとも一層あるいは二層以上の短繊維材料からなる層を取り付ける工程をさらに備える、請求項1、6あるいは7のいずれか一つの製造方法。
【請求項11】
前記短繊維材料が、異なる溶融温度をもつ短繊維を含む、請求項10の製造方法。
【請求項12】
前記短繊維材料が二成分繊維を含む、請求項10の製造方法。
【請求項13】
前記取付け工程を、赤外線ヒーター、接着剤、加熱シリンダロール、加熱空気ブローボックス、針縫いロール、ニードルベルト、または機械フレームに支持した針縫いボードを用いて行う、請求項10の製造方法。
【請求項14】
前記接着剤がポリビニルアルコールである、請求項13の製造方法。
【請求項15】
前記折り返したベース支持構造の間に、短繊維、フィルム、発泡材料、CDアレイあるいは他の材料の層を挿入する工程をさらに備える、請求項10の製造方法。
【請求項16】
前記した短繊維、フィルム、発泡材料、CDアレイあるいは他の材料の層は、前記ベース支持構造の半分、1/3あるいは全幅と同等の幅をもつ、請求項15の製造方法。
【請求項17】
多層の構造の各層を、熱、圧力、針縫いおよび/または接着剤を用いて互いに結合する工程をさらに備える、請求項1あるいは15の製造方法。
【請求項18】
積層した布構造の外側の層に、短繊維バットからなる付加的な層を取り付ける工程をさらに備える、請求項17の製造方法。
【請求項19】
次の各構成を備える工業用布。
(a)前記布の長さに相当するだけの長さと、最終的な布の幅よりも大きく、前記工業用布の幅の整数倍である幅とをもつベース支持構造。
(b)そのベース支持構造は、横方向にそれ自体の上に一回あるいは二回以上折られて、多層構造になっていること。
(c)前記多層構造の各層は互いに結合され、積層した布構造を形成していること。
【請求項20】
前記ベース支持構造が、無端の織り構造である、請求項19の布。
【請求項21】
前記ベース支持構造は、少なくとも二つの平行なロール周りに細片材料をらせん状に巻くことにより形成した形態である、請求項19の布。
【請求項22】
前記細片材料が、その布の縦方向に配列した糸を備える、請求項21の布。
【請求項23】
前記細片材料が、織った材料、不織材料、編んだ材料、発泡材料、CD糸アレイ、あるいはフィルムタイプである、請求項21の布。
【請求項24】
前記ベース支持構造が、無端の織り構造の上層と、らせん巻き、フラットロールから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品、あるいはフィルムの一層あるいは二層以上からなる下層とを含むか、または、それらの上層と下層とを逆にした積層体であり、
前記上層と下層とを互いに結合したものである、請求項19の布。
【請求項25】
前記ベース支持構造が、らせん巻き、フラットロールから供給するMDあるいはCD糸アレイ、織り製品、編み製品、不織製品、発泡品、あるいはフィルムの二層あるいはそれより多くの層を含む、無端形態の積層体であり、
前記二層あるいはそれより多くの層を互いに結合したものである、請求項19の布。
【請求項26】
前記支持構造は、表面部分あるいは糸構造の内部が可溶性の成分をもつ糸で構成されている、請求項19、24あるいは25のいずれか一つの布。
【請求項27】
前記糸が二成分の糸を含む、請求項26の布。
【請求項28】
前記ベース支持構造の一面あるいは両面に、少なくとも一層あるいは二層以上の短繊維材料からなる層をさらに備える、請求項19、24あるいは25のいずれか一つの布。
【請求項29】
前記短繊維材料が、異なる溶融温度をもつ短繊維を含む、請求項28の布。
【請求項30】
前記短繊維材料が二成分繊維を含む、請求項28の布。
【請求項31】
前記少なくとも一層あるいは二層以上の短繊維材料からなる層が、赤外線ヒーター、接着剤、加熱シリンダロール、加熱空気ブローボックス、針縫いロール、ニードルベルト、または機械フレームに支持した針縫いボードを用いて取り付けられている、請求項28の布。
【請求項32】
前記接着剤がポリビニルアルコールである、請求項31の布。
【請求項33】
前記折り返したベース支持構造の間に、短繊維、フィルム、発泡材料、CDアレイあるいは他の材料の層がさらに挿入されている、請求項28の布。
【請求項34】
前記した短繊維、フィルム、発泡材料、CDアレイあるいは他の材料の層は、前記ベース支持構造の半分、1/3あるいは全幅と同等の幅をもつ、請求項33の布。
【請求項35】
多層の構造の各層が、熱、圧力、針縫いおよび/または接着剤を用いて互いに結合されている、請求項19あるいは33の布。
【請求項36】
積層した布構造の外側の層に、短繊維バットからなる付加的な層をさらに備える、請求項35の布。
【請求項37】
工業用布を製造する方法であって、次の各工程を備える製造方法。
(a)平行なロール間に糸材料を巻くことにより、所定のベース支持構造を形成する工程であり、そのベース支持構造は、最終的な布の長さに相当するだけの長さをもち、布の縦方向に配列した糸から構成されており、しかもまた、最終的な布の幅よりも大きく、前記工業用布の幅の整数倍である幅をもつ。
(b)そのベース支持構造を横方向にそれ自体の上に一回あるいは二回以上折り、多層構造を形成する工程。
(b)前記多層構造の各層を互いに結合し、積層した布構造を形成する工程。
【請求項38】
工業用布を製造するためのものであり、次の各構成を備える装置。
・二またはそれより多くのロールからなる手段を含み、しかも、その幅が最終的な布の幅よりも大きいフレーム。
・ロール間の距離が、いろいろな布長さに適合するように調整可能であること。
・ロールは、加熱されるか、あるいは非加熱であること。
・ロールからなる手段は、メインシリンダと伸びロールとを含むこと。
・前記伸びロールは分割可能であること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537060(P2010−537060A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521097(P2010−521097)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072548
【国際公開番号】WO2009/026008
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】