説明

多層金属平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケット

上記タイプのガスケット1は、通路開口2に配置されるビード5、6を備えた封止層3、4と、ビード5、6の弾性を制限するストッパ8を備えたストッパ層7と、を有する。ストッパは、複数の直接連続する畝状隆起11と溝状窪み12とから構成され、それらはともに断面が台形であり、かつ、ともに、ストッパ7の両面9、10に形成され、台形側面13の設定角14を有する。一方の面の台形隆起11は、他方の面の台形窪み12に対向して位置する。互いに隣接する、対向する台形側面13によって境界が画定される断面17(Q1)は、2つの面の対向する窪み間に境界が画定される断面18(Q2)と同じかまたはそれより大きい。ここで、弱化した場合の断面18(Q2)では十分に吸収できない力でも、ストッパ8の、断面17(Q1)によって画定される部分的領域によって完全に吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層金属平形ガスケット、特に、シリンダヘッドガスケット、または、封止されるべき他の面のため、たとえば多種多様のフランジガスケットのための封止手段として具現化され使用されることが可能なその他の多層金属平形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプのガスケットは、単層構造であり得る。しかしながら、本発明の対象は、従来技術により公知である多層ガスケットである。
【0003】
上記タイプのガスケットは、通常、その層を通して延在する複数の通路開口、特に1つ以上の燃焼ガス開口と、締結手段、油ダクト、冷却水ダクト等のためのさらなる開口と、を有している。
【0004】
ガスケットは、1つ以上の封止層から構成される。その封止作用を増大させかつ確実にするために、従来方式では、封止層のうちの少なくとも1つの対応する変形により、通路開口の周囲に、特に燃焼ガス開口の周囲に、あるいはたとえば冷却水ダクトの周囲にビードを形成し、そのビードが、ほぼ完全に1つ以上の通路開口を取り囲むようにしている。
【0005】
上記ビ−ドの機能を得るために、取付け中または動作中の圧縮の結果として、ビードが過度にまたは完全に塑性変形することは防止されなければならない。この目的のために、ストッパとも称される、変形リミッタが従来使用されている。これらは、多種多様の形態を有している。それらを、たとえば、複数の層またはそれら層のうちの1つを撓曲させることによって生成することができる。しかしながら、1つ以上の変形リミッタ(ストッパ)を、ビードより高さの低いエンボス加工の形態で1つ以上の封止層内に形成することもまた従来の方法である。
【0006】
最後に、多層ガスケットの層のうちの1つを、変形リミッタ(ストッパ)を備えたスペーサプレートまたはストッパ層として提供することもすでに公知である。本発明は、かかるガスケットタイプに関する。
【0007】
ここで、ストッパを、たとえば、ビードと燃焼室との間、もしくはビードより他方の側、または、ビードの両側の領域に配置することができる。
【0008】
特に、燃焼室開口周囲の環状帯として延在するストッパが知られており、その帯は、押出成形されたカップ状の窪みおよび隆起の2次元パターンとして形成され、隆起は、窪みのエンボス加工中に押し退けられるシートメタル層の材料によって形成され、各窪みは、シートメタル層の他方の面において隆起のちょうど反対側に位置し、それにより、シートメタル層の両面に、ダイヤモンドまたはチェス盤パターンの隆起および窪みが生成される(EP1577589A1号明細書)。しかしながら、この技術では、隆起および窪みは閉じたラインを形成しない。
【0009】
しかしながら、対照的に、ストッパを、スペーサまたはストッパ層の2つの面に形成される複数のすぐ横の直接隣接する畝状隆起および溝状窪みから構成されるように設計することが有利であることが分かっている。それら隆起および窪みは、それぞれのビードに対しその圧縮を制限するように機能する。
【0010】
ストッパの連続した隆起(畝)および窪み(溝)は、断面において、波の形状または歯付きの形状を有してもよく、その場合、波の山および谷または歯先端を平坦化してもよい。また、矩形ウェブ(DE19641491A1号明細書)または異形リブ(DE2145481号明細書、特開平11−108191号公報)と断面が対応して矩形である窪みとを生成するように、隆起および窪みを、断面が矩形であるように設計することもすでに提案されている(いわゆる矩形ストッパ)。
【0011】
また、隆起および窪みを、断面が台形である畝および溝として(DE4219709A1号明細書、DE10256896A1号明細書)または断面が台形である波として(国際公開第01/96768A1号パンフレット)形成することもすでに提案されている。
【0012】
いずれの場合も、ストッパの隆起および窪みの幅は、保護されるべきビードの幅より小さい。
【0013】
国際公開第2006/005488A1号パンフレットは、上述した公知の波状またはのこぎり歯状または台形のストッパを、弾力性が高いために接触圧が低減するという理由で批判している。矩形ストッパの場合、隆起と窪みとの間のそれらの鋭利な遷移部により、ガスケット部品が破損するという固有の危険がもたらされるという欠点があるものとしてさらに異論が唱えられている。
【0014】
上記公知のストッパの利点を得ると同時にそれらの欠点を回避するため、特にそれらの非常に剛性な構造を得るがそれにも関わらず損傷を与える圧力ピークを回避するため、そこでは、スペーサプレート(ストッパ層の、そこでは「他方の封止層」と呼ぶ)の両面に、隆起および窪みが以下のように交互に形成されるように、ストッパを設計することが提案されている。すなわち、窪みは、少なくとも部分的に隆起に対向して位置し、窪みおよび隆起の少なくとも一部は、断面がほぼ台形であり、一方の面の、隣接して配置される窪みと隆起との間に、斜めに走る境界画定壁があり、2つの面の互いに隣接する、対向する境界画定壁は、2つの面の対向する窪み間で境界が画定される断面とサイズが同じかまたはそれより大きい、層のウェブ状の断面の境界を画定する。
【0015】
台形隆起および窪みの隣接する斜めの境界の間のウェブ状の断面を可能な限り厚くし、特に、両面の窪み間で境界が画定される断面より厚くするという教示により、台形の側面が大幅に強化され、したがってストッパの剛性が増大し、同時に、窪みの台形構造により、一定の程度までではあるが、ストッパの部品の破壊の危険が低減するが、得られる剛性は、ストッパに対して、実際に使用中に必要な疲労強度を与えるには十分でない。これは、主に、ストッパ全体の剛性は、ストッパの幾何学的形状のために比較的深くなければならない窪みの切り込みによって悪影響を受けるという事実による。
【0016】
また、従来技術の上記ストッパ構成における断面の幾何学的比率により、ストッパ全体に対し、すなわち厚い部分とエンボス加工との両方に対して非常に大きな空間が必要になり、その場合、十分な材料を押し退けなければならない。多くのガスケットが、これに対して必要な前提条件を提供しない。
【特許文献1】EP1577589A1号明細書
【特許文献2】DE19641491A1号明細書
【特許文献3】DE2145481号明細書
【特許文献4】DE4219709A1号明細書
【特許文献5】DE10256896A1号明細書
【特許文献6】特開平11−108191号公報
【特許文献7】国際公開第2006/005488A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来技術から、本発明の目的は、必要な高疲労強度(剛性および破壊抵抗)を有し、同時に、より単純かつ費用効率よく作製することができるストッパを備えた、多層金属平形ガスケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、請求項1による特徴を有するガスケットによって達成される。従属請求項は、請求項1の主題の好都合な実施形態を含む。
【0019】
本発明によるガスケットは、1つ以上の通路開口、特に燃料ガス開口、締結手段のための開口、およびシリンダヘッドガスケットの場合は、冷却液等のための開口も有する、多層金属平形ガスケットとして形成される。
【0020】
上記ガスケットは、少なくとも1つの通路開口を含む、少なくとも1つの弾性ビードを有する少なくとも1つの封止層と、それぞれのビードの圧縮を制限しかつビードに隣接して配置され、断面において、直接隣接する畝状隆起と溝状窪みとから構成され、それらがともに断面がほぼ台形であり、かつともにストッパ層の両面に形成される、少なくとも1つのストッパを有する、少なくとも1つのストッパ層と、から構成され、対向する隆起および窪みの体積の差が、10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは2%未満である。
【0021】
ストッパの作製中に一方の面の台形窪みから押し退けられるストッパの一方の面の材料が、各々、他方の面の対向する隆起を形成する役割を果たし、そのため、それを形成するためにまさに十分である。ストッパに対して特定の剛性を与えるために隆起および窪みの側面が強化される場合に、10%、好ましくは5%、特に好ましくは2%を超過しない体積のわずかな差をもたらすことができる。
【0022】
十分な疲労強度、特に十分な剛性および破壊抵抗を有する(いずれの場合も、これに関して国際公開第2006/005488A1号パンフレットによる従来技術におけるものより優れた値を達成することができる)が、本発明により得られ、同時に、国際公開第2006/005488A1号パンフレットによるものとは対照的に、互いにもっとも近接して位置する台形側面を通る2つの平行線によって画定される断面Q1は、各面の窪みの基部を連結する2つの線によって画定される断面Q2に対して小さい。
【0023】
互いに平行である台形側面を有する隆起および窪みを備えた形態に加えて、本発明は、台形側面のすべてが互いに平行であるとは限らない形態も包含する。この場合、断面Q1は、2つの台形側面の勾配の平均値を有し、かつそれぞれの台形側面とそれらの半分の高さで(対称構成の場合はQ5/4で)交差する直線の間に形成される。
【0024】
国際公開第2006/005488A1号パンフレットの主題は、Q1対Q2の比が逆の構造であり、したがって、互いにもっとも近接して平行に位置する2つの台形側面各々の間の断面が、ストッパの両面の窪みの基部間に位置する領域の断面より厚いことを特徴とする。したがって、国際公開第2006/005488A1号パンフレットによる主題では、台形側面またはこれらによって画定される領域は、ストッパが吸収しなければならない負荷を支持する。ここでは、しかしながら、両面における基部の間の領域、すなわちエンボス加工後に残っているストッパ領域のコア領域、同時に耐負荷隆起の基部の、上記幾何学的形状に関連する弱化により、本質的に、ストッパ全体に対し望ましくない弾性を与える変形の可能性がもたらされるということは考慮されないままである。
【0025】
対照的に、本発明による教示は、耐負荷隆起のための基部、すなわち、エンボス加工後に残っているストッパ層のコア領域Q2を、動作中に変形力に永久的に耐えることができるように十分安定性があるように設計することに関する。
【0026】
これに関して、対向する隆起および窪みの体積が同じかまたは実質的に同じであることが、幅の異なるエンボス加工、特に、より狭くかつ深い隆起に対向して位置するより広くかつ浅い窪みにより得られる、形態が好ましい。ここで、残っているコア領域は、平均して特に広く、したがって特に安定している。ここで、一方の面に存在する隆起および突起がすべて同じ幅である必要はない。
【0027】
幾何学的に同一に設計された対向する隆起および窪みを有する形態をもたらすために必要とされる塑性変形の程度がより小さく、かつ、この幾何学的条件のために材料の流れが簡略化される結果として、本実施形態は、比較的低押圧力で作製され得るため、特に有益であることが分かる。極端な場合、一方の面において各々最初と最後を除くすべての隆起および窪みが同じ幾何学的形状を有することになる。
【0028】
上述したように、互いにもっとも近接して対向して位置する台形側面を通る2つの平行線によって画定される断面Q1を、特にQ2に対して非常に小さくすることが可能であり、これにより、広い断面Q2がストッパ構造全体を支持する。しかしながら、Q1は、隆起および窪みの台形形状が実際に失われるほど小さくしてはならない。その理由は、それにより、台形側面の設定角が90°に近づくためである。これは、ストッパの耐久性にほとんど悪影響を及ぼさないが、エンボス加工中に問題をもたらす可能性があり、それは台形形状が特に回避する問題である。より浅い角度とすることは、器具の脱型プロセス中に有益である。
【0029】
したがって、台形側面の設定角は、30°〜89°、好ましくは60°〜89°になり、特に、実質的に70°である。ここで、上述したように、すべての隆起および窪みが同じ台形側面角を有する必要はない。ここで、互いの角度の差は、35°以下、好ましくは15°以下、特に好ましくは8°以下であるべきである。
【0030】
台形隆起の平坦部の幅および台形窪みの基部の幅は、ストッパ層の非エンボス加工領域におけるその厚さQ3の、好ましくは30%〜200%であるが、好ましくは40%〜150%であり、より好ましくは40%〜100%であり、特に、40%〜70%である。上記値は、平坦部および基部の幅が同じである形態と、平坦部および基部の幅が異なるかまたは側面角が異なる形態と、の両方に適用される。後者の形態では、特に幅が非常に異なる場合、幅の一部は、厚さQ3の300%以下であってもよい。
【0031】
ここで、断面Q1は、たとえば、ストッパ層の非エンボス加工領域における断面Q3の50%未満、特に40%未満であるべきである。
【0032】
ストッパがビードの変形を有効に制限するというその目的を達成することができるため、その有効高さQ5(Q5=Q4−Q3)、すなわちストッパがストッパ層のエンボス加工のない領域Q3よりどれくらい厚いかの測定値は、0.05mm〜0.33mm、好ましくは0.05mm〜0.25mmであることで十分であることが多い。
【0033】
ここで、有効高さを、図1に示すように、ストッパ層の両面に均一に分散させるように配置してもよい。それを、図2に示すように、ストッパ層の一方の面にのみ配置してもよい。さらに、両面の間で非対称な分散も可能である。
【0034】
ストッパの全体幅は7mm以下、好ましくは2〜3mmであり、ここでは、ストッパは、本説明のさらなる過程において説明する、空間の理由または台形構造の理由のために、一部において狭くなるかまたは広くなることが可能であり、またはさらには短い区間で中断があってもよい。
【0035】
十分に耐久性のあるストッパ動作を得るために、ストッパ層が、互いに対向して位置する隆起および窪みの対が、相対的に多く隣接して配置される場合、有利である。当然ながら、隣接する対において、一方の対が窪みを有する側面において隣接する対が隆起を有する。一方、空間条件により、隆起および窪みの隣接する対の数が制限されることになる。この理由で、本発明によるストッパは、互いに隣接して位置する隆起および窪みの、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つの対を有する。ここで、上記数の隆起/窪み対が、閉リング、リング状または眼鏡状形状に関して、ストッパ輪郭の長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%および特に好ましくは75%に存在することが十分である。
【0036】
ストッパ層(7)を、引張強度が250N/mm2を上回り、好ましくは400N/mm2を上回り、より好ましくは600N/mm2を上回り、かつ1400N/mm2を下回り、好ましくは1300N/mm2を下回り、より好ましくは1200N/mm2を下回る鋼から作製することができる。ただし、引張強度は、たとえば、600N/mm2未満かまたは400N/mm2未満かまたは1200N/mm2を超えるかまたはさらには1400N/mm2を超えてもよい。
【0037】
ここで、ストッパ層の材料のクロム含有量は、好ましくは1%未満であり、特に好ましくは0.5%未満である。
【0038】
上記範囲は、ストッパ動作に必要な強度を提供すると同時に、適度な押圧力で、ストッパ形成に必要な塑性変形を可能にする。ストッパ層は、少なくとも1つの封止層より引張強度が低い鋼から作製されることが好ましい。
【0039】
ストッパ破壊の危険をさらに最小限にするために、台形窪みの基部と台形側面との間および/または台形側面と台形隆起の平坦部との間の遷移部に丸みをつけてもよい。上記丸み付けに対し、0.04mm〜0.1mmの半径であるが好ましくは0.05mm〜0.08mmの半径が使用に向いている。
【0040】
ストッパは、通路開口に配置される場合、上記通路開口を環状に包囲することが多い。ここで、上記ストッパを、通路開口と、同様に通路開口を環状に包囲することが多い割り当てられたビードとの間に配置してもよく、もしくは、ビードを包囲してもよく、またはビードの両側に配置してもよい。
【0041】
環状形状の代りに、たとえば弁のための凹部のために、それから外側にそれる形状を提供することも可能である。上記形状は、たとえば、図4に示すように、ビードおよびストッパが複数の通路開口間の領域で集まる結果として、眼鏡形状であってもよい。空間の理由で、短いセグメント形状の断続したストッパも可能である。
【0042】
通路開口に割り当てられるストッパに加えて、これらから離れた領域、ストッパ層のいわゆる内部領域(hinderland)に、さらなるストッパがあってもよい。
【0043】
上記タイプのさらなるストッパを、たとえば、平形ガスケットの外縁の領域に、および/または少なくとも部分的に、締結手段のための通路開口のわたる領域の外側の領域に配置してもよい。
【0044】
均一に封止する面圧力を得るために、ストッパは、それらの高さおよび/または幅および/または硬度が、締結手段のための通路開口からの距離に応じて増大するような台形構造であってもよい。この場合、エンジンに特有の条件、特にシリンダヘッドおよびエンジンブロックまたは排気マニホルドに特に隣接する部品のより剛性の高いゾーンが組み込まれる。
【0045】
ストッパの硬度の増大を、材料の硬度の増加、台形隆起および窪みの数を増大させる構成により、台形側面の設定角の増大により、または隆起のエンボス加工の程度を高くすることによりもたらすことができる。
【0046】
本発明によるガスケットを、図面による例示的な実施形態に基づいて以下により詳細に説明する。
【0047】
明確にするために、断面図のすべてを、組立分解図で、間隔を含めて示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1aは、本発明による多層平形ガスケット1であって、通路または燃焼ガス通路開口2の領域に、2つの封止層3、4と、ストッパ8を有する1つのストッパ層7と、を有する多層平形ガスケット1の断面図を示す。封止層3、4は、燃焼ガス通路を密封するための各々1つのビード5、6を有する。図1において、上記ビードは、通路または燃焼ガス通路開口2を直接包囲する。
【0049】
ストッパ8は、畝状隆起11と溝状窪み12とから形成され、それらは、ストッパ層7の両面9、10に形成され、ビードに直接隣接して配置される。突起11および窪み12は、断面が台形であり、ストッパ層の一方の面9または10の各々の台形は、隣接する台形が各々1つの共通側面を有するように、互いに直接連続して配置される。
【0050】
図1aによる例示的な実施形態では、台形側面はすべて、実質的に同じ設定角14を有する。同時に、台形隆起11の平坦部(plateau)15と台形窪み12の基部16とは、実質的に同じ幅を有し、ストッパ層7の一方の面(9または10)の各台形隆起11は、他方の面(10または9)の台形窪み12に対向して位置する。
【0051】
互いにもっとも近接する、対向する台形側面13の各対は、それらの設定角14が実質的に同じであるため、互いに対して平行にまたは実質的に平行に位置合せされる。上記台形側面13間にまたはそれを通る2つの線の間に形成される断面17(Q1)は、ストッパ8の各面の基部16を連結する2つの線によって画定される断面18(Q2)に対して小さい。
【0052】
図1bは、ストッパの領域における、図1による本発明によるストッパ層の拡大断面を示す。この図は、図1aに関して上述した特徴のすべてを示す。
【0053】
さらに、図1bは、ストッパ層7が、その非エンボス加工領域20において初期厚さ19(Q3)を有することを示す。実質的に幅が等しい台形隆起11の平坦部15と台形窪み12の基部16との幅は、上記厚さに対して一定の比率であってもよく、その比率は、請求項9においてより詳細に定義されている。
【0054】
同様に、断面17(Q1)は、断面19(Q3)に対して、請求項10においてより詳細に定義された一定の比率で配置され得る。
【0055】
図1bはまた、有効高さ23(Q5)の一実施形態をさらに示す。それは、ここでは分割され、ストッパ層の両面に均一に振り分けられ、値が2×Q5/2となる。
【0056】
最後に、図1bはまた、台形窪み12の基部16から台形側面13へ、および/または台形側面13から台形隆起11の平坦部15への遷移部22の一実施形態も示し、その遷移部22に、半径0.04mm〜0.1mで、特に半径0.05mm〜0.08mmで丸みをつけてもよく、それにより、ストッパ破壊の危険がさらに低減する。
【0057】
図1cは、一実施形態におけるストッパ層の断面の詳細を示し、そこでは、隆起11のみなし体積(V1)および窪み12の体積(V2)を、隆起11と窪み12とが同じ幾何学的形状であることによって同じにすることができる。特に、側面角(明確にするために、ここではそれらの対角114によって示す)もまた同じである。
【0058】
しかしながら、原則的に、側面角を異なるように、すなわち、一方では対向する隆起11および窪み12に対して異なる側面角を使用するように、および/または他方では、ストッパ層の一方の面9または10に配置される隆起11および窪み12に対して異なる側面角をもたらすように設計することも可能である。対向する隆起および窪みの対のV1およびV2に対し体積が(少なくともおよそ)等しいことは、ここでは、基部および平坦部の幅を適応させることによって保証される。図1dは、窪みとその対向する隆起とにおいて側面角が異なる構成を概略的に明示し、この場合、窪み12に対し、より広い基部16″と、より急な対角114″によって示すより浅い側面角と、を選択することにより、隆起11と体積を少なくともおよそ等しくすることができ、隆起11自体は、相対的に狭い平坦部15′と、より浅い対角114′によって示す相対的に急な側面角と、を有する。ここで、互いに対向する隆起および窪みは、作製精度に関連して同じ高さでエンボス加工されていることが明示的に強調されるべきである。
【0059】
断面Q1の構成を、図1dから同様に見ることができる。間に断面Q1が延在する2つの直線の傾斜角は、上側および下側に連続して配置される平坦部の側面の傾斜角の平均値によって得られる。そして、上記直線は、平坦部の側面と、それらの半分の高さ、すなわちQ5=Q5′/2+Q5′/2である場合、Q5′/4で交差する。
【0060】
図1dは、隆起11とそれに対向して位置する窪み12とに対する例示的な実施形態を示すが、それぞれ隣接する隆起および窪みの構造に対し概して明確化しようとはしていない。しかしながら、これらの場合、各々、隣接する構造により1つの側面角が自動的に与えられる。これはまた、それぞれの幅にも影響を与える。
【0061】
図2は、本発明による多層平形ガスケット1であって、通路または燃焼ガス通路開口2の領域において、1つのみの封止層3とストッパ8を有する1つのストッパ層7とを有する、多層平形ガスケット1の断面図を示す。封止層3は、燃焼ガス通路を密封するビード5を有する。図2に示す実施形態では、ストッパ8は、ビード5と燃焼ガス通路開口2との間に配置される。ビード、ストッパおよび燃焼ガス開口の上記配置は、原則的に、図1に示す配置より好ましい。
【0062】
最適なストッパ動作を得るために、図2による例示的な実施形態におけるストッパ8は、非対称にエンボス加工されており、それにより、ストッパ8の有効高さ23(Q5)は、ストッパ層7の封止層3に面する側に全面的に配置される。
【0063】
図3〜図5は、各々、本発明による各々異なる構成でのストッパ層7の一部の平面図を示す。これらの図は、ストッパ層7の外縁24と、燃焼ガス通路開口2と、締結手段のための通路開口25と、ストッパ8と、さらなるストッパ26と、を示す。
【0064】
ここで、図3は、燃焼ガス開口2を環状に包囲する2つのストッパ8と、外縁24に配置されるさらなるストッパ26と、を示す。
【0065】
図4は、2つのストッパ8が、燃焼ガス通路開口が互いに隣接する領域において、すなわちいわゆるウェブ領域において、隆起および窪みの数が低減している点で、図3とは異なる。ストッパが、ビードの燃焼室から離れる方向に面する面に配置される場合のように、2つのストッパ8間の間隔が大幅に低減する場合、隣接するストッパが集まって、いわゆる眼鏡型ストッパを形成してもよい。
【0066】
図5は、外縁24に配置されたさらなるストッパ26の代りに、複数のさらなるストッパ26(ここではさまざまな実施形態で示す)が、締結手段のための通路開口25の領域に、または締結手段のための通路開口25のわたる領域の外側の領域に配置されるという点で、図3とは異なる。
【0067】
図6は、最後に、ストッパ層7の隆起11および窪み12が、ビード5および6に対しておよそ平行に案内され、したがって、それらの長手方向におけるそれらの基本構造が変化しないということを示す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1a】2つの封止層と1つのストッパ層とを有する、本発明による平形ガスケットの、ビード領域における断面図を概略的に示す。
【図1b】図1aによる、本発明によるストッパ層の、ストッパの領域における断面図を概略的に示す。
【図1c】図1bによる断面図の詳細を概略的に示す。
【図1d】図1cによる詳細の変形を概略的に示す。
【図2】1つの封止層と1つのストッパ層とを有する本発明による平形ガスケットの、ビード領域における断面図を概略的に示す。
【図3】比例尺ではない模式図での、本発明によるストッパ層の平面図を示す。
【図4】比例尺ではない模式図での、本発明によるストッパ層の平面図を示す。
【図5】比例尺ではない模式図での、本発明によるストッパ層の平面図を示す。
【図6】2つの封止層と1つのストッパ層とを有する、本発明による平形ガスケットの部分断面斜視図を概略的に示す。
【符号の説明】
【0069】
1 多層金属平形ガスケット
2 通路開口/燃焼室開口
3 封止層
4 封止層
5 ビード
6 ビード
7 ストッパ層
8 ストッパ
9 ストッパ層の面
10 ストッパ層の面
11 断面がほぼ台形である畝状隆起
12 断面がほぼ台形である溝状窪み
13 台形側面
14 台形側面の設定角
15 台形隆起の平坦部
16 台形隆起の基部
17 断面Q1
18 断面Q2
19 ストッパ層の厚さQ3
20 ストッパ層の非エンボス加工領域
21 ストッパ高さQ4
22 遷移部
23 ストッパの有効高さQ5
24 平形ガスケットの外縁
25 締結手段のための通路開口
26 さらなるストッパ
27 体積V1
28 体積V2
114 14に対する対角
【図1−a】

【図1−b】

【図1−c.1−d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの通路開口、特に燃焼室開口を有し、前記通路開口を包囲する少なくとも1つの弾性ビードを備えた少なくとも1つの封止層と、前記ビードの変形の限界を定め、かつ複数の直接連続する畝状隆起および溝状窪みから構成される少なくとも1つのストッパを備えた少なくとも1つのストッパ層と、から構成され、前記畝状隆起および前記溝状窪みがともに、断面がほぼ台形であり、かつ、ともに、前記ストッパ層の両面に形成され、各々台形側面の設定角を有し、前記一方の面の台形隆起が、前記他方の面の台形窪みに対向して位置する、多層金属平形ガスケット、特にシリンダヘッドガスケットであって、
前記一方の面の台形隆起の体積V1と前記他方の面の対向する台形窪みの体積V2との差が10%未満であり、互いにもっとも近接して互いに反対側に位置する台形側面を通る2つの平行線によって画定される断面Q1が、各面の前記窪みの基部を連結する2つの線によって画定される断面Q2に対して小さいことを特徴とする平形ガスケット。
【請求項2】
前記ストッパ層が、引張強さが250N/mm2を上回り、好ましくは400N/mm2を上回り、より好ましくは600N/mm2を上回り、かつ1400N/mm2を下回り、好ましくは1300N/mm2を下回り、より好ましくは1200N/mm2を下回る鋼から作製されることを特徴とする、請求項1に記載の平形ガスケット。
【請求項3】
前記ストッパ層が、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つの、前記一方の面に形成された隆起と前記他方の面に形成された窪みとの直接連続した対を、前記ストッパの外形の長さの少なくとも60%に有することを特徴とする、請求項1または2に記載の平形ガスケット。
【請求項4】
前記体積V1、V2の差が5%未満、好ましくは2%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項5】
前記台形側面の前記設定角が、30°〜89°、好ましくは60°〜89°であり、特に実質的に70°であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項6】
前記ストッパ層内の前記台形側面の各々における前記設定角の差が、35°以下、好ましくは15°以下、特に好ましくは8°以下であることを特徴とする、請求項5に記載の平形ガスケット。
【請求項7】
前記ストッパ層に形成される直接連続する前記ほぼ台形の隆起および窪みの前記台形側面の前記設定角が同じかまたは実質的に同じであることを特徴とする、請求項6に記載の平形ガスケット。
【請求項8】
前記台形隆起の平坦部および前記台形窪みの前記基部の幅が同じかまたは実質的に同じであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項9】
前記ストッパ層が、前記ほぼ台形の隆起および窪みの外側の領域において厚さQ3を有し、前記台形隆起の前記平坦部および前記台形窪みの前記基部の幅が、前記厚さQ3の30%〜200%、好ましくは40%〜150%、特に好ましくは40%〜100%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項10】
前記断面Q1が、前記断面Q3の50%未満、特に40%未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項11】
前記ストッパの有効高さQ5(Q4−Q3=Q5)が、0.03mm〜0.3mm、好ましくは0.05mm〜0.25mmであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項12】
前記ストッパが、前記ビードより前記通路開口に面する側に、および/または、前記ビードより前記通路開口から離れる方向に面する側に、配置されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項13】
前記ストッパが、前記通路開口を環状に包囲することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項14】
前記ストッパが、前記燃焼室開口を、前記燃焼室の周縁まで0.1mmを上回る間隔で包囲することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項15】
前記ストッパが、前記通路開口を環状に取り囲む前記ビードを環状に包囲することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項16】
少なくとも1つのさらなるストッパが、前記通路開口から離れた領域(内部領域)に設けられることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項17】
前記さらなるストッパが、前記平形ガスケットの外縁の領域に、および/または、少なくとも部分的に締結手段のための通路開口のわたる領域の外側の領域に配置されることを特徴とする、請求項16に記載の平形ガスケット。
【請求項18】
均一な封止面圧力を得るために、前記ストッパが、その高さおよび/または幅および/または硬度が、締結手段のための前記通路開口からの距離に応じて増大するような台形構造であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項19】
前記ストッパの前記硬度の増大を、該ストッパの材料の硬度の増加、前記台形隆起および窪みの数の増加、前記台形側面の設定角の増大、または、前記隆起のエンボス加工の程度を高くすること、によりもたらすことを特徴とする、請求項18に記載の平形ガスケット。
【請求項20】
前記ストッパ層が、クロム含有量が好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満である鋼から作製されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の平形ガスケット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−544913(P2009−544913A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521279(P2009−521279)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057767
【国際公開番号】WO2008/012363
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(303050078)ラインツーディチュングスーゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】