説明

多径間連続コンクリート橋

【課題】支間長に比して橋脚高さが低い橋脚が存在することとなる架設環境下で架設された場合においても、ライフサイクルコストを抑制することができる多径間連続コンクリート橋を提供する。
【解決手段】橋桁14に剛結された複数の橋脚12P2、12P3、12P4のうち、地上高hoが比較的低い2つの橋脚12P3、12P4について、その本体部12Aの周囲における、基礎杭12Bの天端12Baから地表面2aまでの筒状の領域を、空洞部20として形成し、この空洞部20の深さ分も橋脚高さhの一部として確保する。これにより、これら2つの橋脚12P3、12P4の橋脚高さhをある程度高くし、橋梁全体を柔構造とする。また、支承を不要とし、その設置分のイニシャルコストおよびその維持管理費用を不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多径間連続コンクリート橋に関するものであり、特に、その橋脚周辺の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多径間連続コンクリート橋は、複数のコンクリート製の橋脚によりコンクリート製の橋桁が支持された構成となっている。
【0003】
そして、この多径間連続コンクリート橋の構成として、例えば「特許文献1」に記載されているように、各橋脚の上端部が橋桁に剛結された連続ラーメン構造を有するものも知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−171638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように多径間連続コンクリート橋において連続ラーメン構造を採用するためには、その架設環境として、各橋脚の橋脚高さ(すなわち橋脚の本体部の鉛直方向の部材長)を十分に確保可能な条件が整っていることが必要となる。
【0006】
すなわち、例えば、橋桁の地上高が低い等の理由により、支間長に比して橋脚高さが低く設定された多径間連続コンクリート橋に対して、連続ラーメン構造を採用したとすると、橋桁の温度変化、クリープ、乾燥収縮等により、各橋脚の断面力がかなり大きなものとなってしまうので、各橋脚の上端部に支承を設けることが必要となり、したがって連続ラーメン構造を採用することが困難となる。
【0007】
また、多径間連続コンクリート橋を、地表面の起伏が激しい山間部等に架設する場合には、各橋脚の橋脚高さが区々となるが、このように橋脚高さが不均等な多径間連続コンクリート橋に対して、連続ラーメン構造を採用した場合には、地震時における水平力が、橋脚高さが低い橋脚に集中してしまうので、この橋脚高さが低い橋脚に対して、その上端部に支承を設けることが必要となり、やはり連続ラーメン構造を採用することが困難となる。
【0008】
一方、このように支承を設けるようにした場合には、支承自体のコストが高いものとなる上、その維持管理費用も必要となるため、橋梁のライフサイクルコストが高くついてしまう、という問題がある。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、支間長に比して橋脚高さが低い橋脚が存在することとなる架設環境下で架設された場合においても、ライフサイクルコストを抑制することができる多径間連続コンクリート橋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、橋脚周辺の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る多径間連続コンクリート橋は、
複数のコンクリート製の橋脚によりコンクリート製の橋桁が支持されてなる多径間連続コンクリート橋において、
上記複数の橋脚のうち少なくとも一部の橋脚が、該橋脚の上端部において上記橋桁に剛結されており、
上記少なくとも一部の橋脚の基礎が、該橋脚の本体部よりも大径で形成された柱状の基礎杭として構成されるとともに、この基礎杭における環状の天端を周囲の地盤の地表面よりも下方に位置させるようにして該地盤に埋設されており、
上記少なくとも一部の橋脚の本体部の周囲における、上記基礎杭の天端から上記地表面までの筒状の領域が、空洞部として形成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記複数の橋脚のうち「少なくとも一部の橋脚」以外の橋脚について、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0013】
上記「基礎杭」は、橋脚の本体部よりも大径で柱状に形成されたものであれば、その水平断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、円形や小判形等の断面形状が採用可能であり、また、その種類としては、例えば、深礎基礎、ケーソン基礎、地中連続壁基礎、鋼管矢板基礎、直接基礎等が採用可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記構成に示すように、本願発明に係る多径間連続コンクリート橋は、その複数の橋脚のうち少なくとも一部の橋脚が、その上端部において橋桁に剛結されているが、これら少なくとも一部の橋脚の基礎は、その本体部よりも大径で形成された柱状の基礎杭として構成されるとともに、この基礎杭における環状の天端(すなわち上端面)を周囲の地盤の地表面よりも下方に位置させるようにして該地盤に埋設されており、そして、これら少なくとも一部の橋脚の本体部の周囲における、基礎杭の天端から地表面までの筒状の領域が、空洞部として形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、仮に、上記少なくとも一部の橋脚において、その本体部の下端近傍部位が、その基礎杭と共に周囲の地盤に完全に埋設された状態にあるとすると、その埋設分だけ橋脚高さが低くなるので、基礎杭の天端が地表面と面一に設定された橋脚の場合と略同様の橋脚高さとなってしまう。
【0016】
これに対し、本願発明のように、上記少なくとも一部の橋脚の本体部の周囲における、基礎杭の天端から地表面までの筒状の領域が、空洞部として形成された構成とすれば、この空洞部の深さ分も橋脚高さの一部として確保されるので、橋桁の地上高が低い位置に設置される橋脚であっても、その橋脚高さをある程度高くすることができる。
【0017】
このため、この多径間連続コンクリート橋に連続ラーメン構造を採用した場合においても、橋桁の温度変化、クリープ、乾燥収縮等により、各橋脚の断面力が過大にならないようにすることができる。また、各橋脚の橋脚高さをある程度の高さで揃えることができるので、橋梁全体を柔構造とすることができ、これにより、地震時における水平力が一部の橋脚に集中してしまうのを未然に防止することができる。
【0018】
そしてこのように、多径間連続コンクリート橋に連続ラーメン構造を採用することができるので、各橋脚の上端部に支承を設ける必要をなくすことができ、したがって、その支承設置分のイニシャルコストを削減することができ、また、その維持管理費用も不要となるためランニングコストも削減することができる。そしてこれにより、橋梁のライフサイクルコストを抑制することができる。
【0019】
このよう本願発明によれば、支間長に比して橋脚高さが低い橋脚が存在することとなる架設環境下で架設される場合においても、多径間連続コンクリート橋のライフサイクルコストを抑制することができる。
【0020】
しかも本願発明においては、橋脚の本体部の周囲に空洞部を形成するだけで所要の橋脚高さを確保することができるので、橋脚周囲の地表面の形状をほとんど変えることを必要とせずに上記作用効果を得ることができ、これにより環境破壊のおそれを最小限に抑えることができる。またこれにより、橋梁架設用として買収すべき用地面積を最小限に抑えることができるので、この点においてもイニシャルコストの削減を図ることができる。
【0021】
さらに本願発明においては、地表面の起伏の大小にかかわらず、各橋脚の橋脚高さを調整することが可能となるので、橋梁の計画高さを変更することなく、多径間連続コンクリート橋を連続ラーメン構造とすることができる。
【0022】
また本願発明においては、橋脚周囲の地盤における支持層が深い位置にある場合には、地表面に達する基礎杭を設置するようにした場合に比して、空洞部の深さ分だけ基礎杭の杭長を短くすることができ、これにより基礎工事のコスト低減を図ることができる。
【0023】
さらに本願発明においては、橋脚の本体部の周囲に空洞部が形成されているので、架設完了後も本体部の下端縁を容易に観察することができる。したがって、大地震があった直後に、橋脚の損傷具合の目視検査を行うことも容易に可能となる。
【0024】
上記構成において、空洞部の周囲の地盤には、基礎杭を掘削する際に土留め壁が設置されることとなるが、この土留め壁に加えて(あるいはこの土留め壁に代えて)、この空洞部の周囲の地盤に、該空洞部に臨むコンクリート製の筒状部材が設置された構成とすれば、この空洞部の存在を半永久的に維持することができる。
【0025】
その際、橋脚周囲の地盤における基礎杭の上端位置に、この基礎杭の外周面に内接するコンクリート製の環状部材が、この基礎杭の天端と略面一で設置された構成とした上で、この環状部材の上面に上記筒状部材が載置された構成とすれば、基礎杭に筒状部材の自重が直接作用してしまわないようにすることができる。また、この環状部材を、基礎杭用の穴を掘削する際の掘削径を規定する定規材として用いることができるので、これにより基礎杭の形状精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る多径間連続コンクリート橋10を示す側面図である。
【0028】
同図に示すように、この多径間連続コンクリート橋10は、地表面2aの起伏が激しい山間部に架設された高速道路用の橋梁であって、6つのコンクリート製の橋脚12P1、12P2、12P3、12P4、12P5、12P6により、コンクリート製の橋桁14が支持された構成となっている。
【0029】
その際、この多径間連続コンクリート橋10においては、6つの橋脚12P1〜12P6のすべてが、その上端部において橋桁14に剛結された連続ラーメン構造を有するものとなっている。ただし、この多径間連続コンクリート橋10において、その橋軸方向両端部の橋台16A1、16A2による橋桁14の支持については、それぞれ支承を介して行われている。
【0030】
この多径間連続コンクリート橋10の橋桁14は、各橋脚12P1〜12P6の上端面において該橋脚と一体で形成された柱頭部14Aから、橋軸方向両側へ径間部14Bの張出し施工を行うことにより、その架設が行われるようになっている。
【0031】
6つの橋脚12P1〜12P6のうち、同図において左側に位置する橋台16A1寄りの2つの橋脚12P1、12P2は、その地上高(すなわち地表面2aからの高さ)が比較的高くなっており、残りの4つの橋脚12P3、12P4、12P5、12P6は、その地上高が比較的低くなっている。その際、これら4つの橋脚12P3〜12P6のうちでも、同図において右側に位置する橋台16A2寄りの橋脚12P6は、他の3つの橋脚12P3、12P4、12P5よりも、その地上高がやや高くなっている。
【0032】
同図において、多径間連続コンクリート橋10が架設される山間部の地盤2は、その支持層2Bの部分が網線で示されており、その表層2Aの部分が左上方向に延びるハッチングで示されている。この地盤2における支持層線(すなわち支持層2Bと表層2Aとの境界線)2bは、橋軸方向の位置によって地表面2aからの深さが大きく変化しており、中央に位置する2つの橋脚12P3、12P4付近では、特に深くなっている(すなわち表層2Aが厚くなっている)。
【0033】
この多径間連続コンクリート橋10においては、各橋脚12P1〜12P6の基礎が、その本体部12Aよりも大径で形成された柱状(具体的には円柱状)の基礎杭12Bとして構成されている。そして、これら各基礎杭12Bは、その環状の天端12Ba(図2参照)を周囲の地盤2の地表面2aよりも下方に位置させるようにして地盤2に埋設されている。
【0034】
これら各橋脚12P1〜12P6の基礎杭12Bは、地盤2の支持層2Bに達するようにして埋設されている。その際、4つの橋脚12P1、12P2、12P5、12P6の基礎杭12Bは、その全体が支持層2Bに埋設されているのに対し、表層2Aが厚くなっている部分に設置された残り2つの橋脚12P3、12P4の基礎杭12Bは、その下端部のみが支持層2Bに埋設されている。
【0035】
図2は、図1のII部詳細図であって、多径間連続コンクリート橋10における3つの橋脚12P2、12P3、12P4の部分を取り出して示す図である。
【0036】
同図に示すように、これら3つの橋脚12P2、12P3、12P4のうち、2つの橋脚12P3、12P4においては、その本体部12Aの周囲における、基礎杭12Bの天端12Baから地表面2aまでの筒状(具体的には円筒状)の領域が、空洞部20として形成されている。
【0037】
これら2つの橋脚12P3、12P4における基礎杭12Bの周囲の地盤2には、その基礎杭12Bの上端位置に、基礎杭12Bの外周面に内接するコンクリート製の環状部材22が、基礎杭12Bの天端12Baと略面一で設置されている。
【0038】
そして、これら2つの橋脚12P3、12P4においては、空洞部20の周囲の地盤2に、該空洞部20に臨むコンクリート製の筒状部材26が設置されている。その際、この筒状部材26は、環状部材22の上面に載置されている。
【0039】
なお、以上の点に関して、図1に示す橋脚12P5、12P6は、橋脚12P3、12P4と同様の構成を有している。
【0040】
図3は、図2のIII−III線断面詳細図であり、図4は、図3のIV部詳細図である。
【0041】
図3に示すように、本実施形態に係る多径間連続コンクリート橋10は、高速道路の上下線の各々について架設されており、その構成はいずれも同様である。
【0042】
この多径間連続コンクリート橋10において、その橋脚12P3の位置における橋桁14の地上高hoは16m程度である。そして、この橋脚12P3の橋脚高さhは、23m程度に設定されている(すなわち、この橋脚12P3の空洞部20の深さは、7m程度に設定されている)。また、この橋脚12P3の基礎杭12Bは、その径がφ9m程度に設定されており、その高さが14m程度に設定されている。
【0043】
図4に示すように、基礎杭12Bは、地盤2に形成された円柱状の穴2cに、場所打ちでコンクリートを打設することにより形成されている。その際、この穴2cは、環状部材22を定規材として掘削されており、この環状部材22の内径と同じ径で形成されている。
【0044】
この穴2cの周壁面には、土留め壁30が形成されている。この土留め壁30の下部領域は、穴2cの周囲の地盤2に複数のロックボルト32を打ち込むとともに、吹付けコンクリート34を設けることにより形成されている。また、この土留め壁30の上部領域は、H形鋼36を上下複数段にわたって環状に配置するとともに、吹付けコンクリート38を設けることにより形成されている。
【0045】
一方、空洞部20の周壁面は、穴2cの周壁面よりもひと回り大きい径(具体的にはφ9.4m程度)で形成されている。そして、この空洞部20の周壁面は、上記筒状部材26の内周面で構成されている。
【0046】
その際、この筒状部材26は、空洞部20の周囲の地盤2に設置された土留め壁40の内周側に、該土留め壁40と内接するようにして設置されている。この土留め壁40は、H形鋼42を上下複数段にわたって環状に配置するとともに、吹付けコンクリート44を設けることにより形成されている。
【0047】
この土留め壁40の上端部には、筒状部材26の外周面に内接する断面逆L字形のコンクリート製の環状部材46が、地表面2aと略面一で設置されている。そして、土留め壁40は、この環状部材46を定規材として、該環状部材46の内径と同じ内径で形成されている。
【0048】
また、筒状部材26は、土留め壁40および環状部材22、46を外型枠として場所打ちでコンクリートを打設することにより形成されている。その際、この筒状部材26は、土留め壁40よりも厚肉で形成されている。
【0049】
図5は、図4のV−V線断面詳細図である。
【0050】
同図にも示すように、空洞部20は、その上端部に配置されたカバー部材50により閉塞されている。
【0051】
このカバー部材50は、橋脚12P3の本体部12Aの周囲に、複数のカバー片50A、50Bを互いに略隙間無く敷き詰めることにより構成されている。
【0052】
これを実現するため、筒状部材26の上端面は、環状部材46の上面よりも、各カバー片50A、50Bの板厚分だけ下方に位置している。また、この筒状部材26の内周面の上端部における周方向の4箇所には、梁受け部26aが各々形成されている。そして、互いに隣接する梁受け部26a間には、梁部材52が各々架け渡されている。その際、これら各梁部材52の上面が筒状部材26の上端面と面一となるように、各梁受け部26aの梁受け形状が設定されている。そして、各カバー片50A、50Bは、筒状部材26の上端面と各梁部材52の上面とによって支持された状態で、敷き詰められている。
【0053】
橋脚12P3の本体部12Aは、一辺5m程度の略正方形の水平断面形状を有している。
【0054】
複数のカバー片50A、50Bのうち、本体部12Aの隅角部に位置する各カバー片50Aは固定設置されており、本体部12Aの各側面部に位置する各カバー片50Bは着脱可能に設置されている。その際、これら各カバー片50Bの着脱を可能とするため、該カバー片50Bには、その4箇所に吊り金具54が取り付けられている。
【0055】
以上詳述したように、本実施形態に係る多径間連続コンクリート橋10は、6つの橋脚12P1、12P2、12P3、12P4、12P5、12P6のすべてが、その上端部において橋桁14に剛結された連続ラーメン構造を有しており、そして、これら各橋脚12P1〜12P6の基礎は、その本体部12Aよりも大径で形成された柱状の基礎杭12Bとして構成されるとともに、この基礎杭12Bにおける環状の天端12Baを周囲の地盤2の地表面2aよりも下方に位置させるようにして該地盤2に埋設されているが、これら6つの橋脚12P1〜12P6のうち、地上高hoが比較的低い4つの橋脚12P3、12P4、12P5、12P6は、その本体部12Aの周囲における、基礎杭12Bの天端12Baから地表面2aまでの筒状の領域が、空洞部20として形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0056】
すなわち、仮に、地上高hoが比較的低い4つの橋脚12P3、12P4、12P5、12P6において、その本体部12Aの下端近傍部位が、その基礎杭12Bと共に周囲の地盤2に完全に埋設された状態にあるとすると、その埋設分だけ橋脚高さhが低くなるので、基礎杭12Bの天端12Baが地表面2aと面一に設定された橋脚の場合と略同様の橋脚高さとなってしまう。
【0057】
これに対し、本実施形態のように、4つの橋脚12P3、12P4、12P5、12P6の各々の本体部12Aの周囲における、基礎杭12Bの天端12Baから地表面2aまでの筒状の領域が、空洞部20として形成された構成とすれば、この空洞部20の深さ分も橋脚高さhの一部として確保されるので、これら4つの橋脚12P3〜12P6は、橋桁14の地上高hoが比較的低い位置に設置される橋脚であるにもかかわらず、その橋脚高さhをある程度高くすることができる。
【0058】
このため、本実施形態に係る多径間連続コンクリート橋10においては、連続ラーメン構造が採用されているにもかかわらず、橋桁14の温度変化、クリープ、乾燥収縮等により、各橋脚12P1〜12P6の断面力が過大にならないようにすることができる。また、各橋脚12P1〜12P6の橋脚高さhをある程度の高さで揃えることができるので、橋梁全体を柔構造とすることができ、これにより、地震時における水平力が一部の橋脚に集中してしまうのを未然に防止することができる。
【0059】
そしてこのように、多径間連続コンクリート橋10に連続ラーメン構造を採用することができるので、各橋脚12P1〜12P6の上端部に支承を設ける必要をなくすことができ、したがって、その支承設置分のイニシャルコストを削減することができ、また、その維持管理費用も不要となるためランニングコストも削減することができる。そしてこれにより、橋梁のライフサイクルコストを抑制することができる。
【0060】
このよう本実施形態によれば、支間長に比して橋脚高さが低い橋脚が存在することとなる架設環境下で架設される場合においても、多径間連続コンクリート橋10のライフサイクルコストを抑制することができる。
【0061】
しかも本実施形態においては、このように地上高hoが比較的低い4つの橋脚12P3〜12P6の各々の本体部12Aの周囲に空洞部20を形成するだけで所要の橋脚高さhを確保することができるので、橋脚周囲の地表面2aの形状をほとんど変えることを必要とせずに上記作用効果を得ることができ、これにより環境破壊のおそれを最小限に抑えることができる。またこれにより、橋梁架設用として買収すべき用地面積を最小限に抑えることができるので、この点においてもイニシャルコストの削減を図ることができる。
【0062】
また、このように対象となる各橋脚12P3〜12P6の本体部12Aの周囲に空洞部20を形成するだけで上記作用効果を得ることができるので、支持層2Bの深さにかかわらず本実施形態の構成を採用することが可能となる。
【0063】
さらに本実施形態においては、地表面2aの起伏の大小にかかわらず、各橋脚12P1〜12P6の橋脚高さhを調整することが可能となるので、橋梁の計画高さを変更することなく、多径間連続コンクリート橋10を連続ラーメン構造とすることができる。
【0064】
また本実施形態においては、2つの橋脚12P3、12P4の周囲の地盤2における支持層2Bが深い位置にあるが、これら各橋脚12P3、12P4の本体部12Aの周囲には空洞部20が形成されているので、仮に、これら各橋脚12P3、12P4の基礎杭12Bに代えて地表面2aに達する基礎杭を設置するようにした場合に比して、空洞部20の深さ分だけ基礎杭12Bの杭長を短くすることができ、これにより基礎工事のコスト低減を図ることができる。
【0065】
さらに本実施形態においては、地上高hoが比較的低い4つの橋脚12P3〜12P6の各々の本体部12Aの周囲に空洞部20が形成されているので、架設完了後も本体部12Aの下端縁を容易に観察することができる。したがって、大地震があった直後に、これら各橋脚12P3〜12P6の損傷具合の目視検査を行うことも容易に可能となる。
【0066】
その際、空洞部20は、その上端部に配置されたカバー部材50により閉塞されているので、本体部12Aの下端縁が土砂や落ち葉等で埋まって観察不能となってしまうのを未然に防止することができる。しかも、このカバー部材50は、橋脚12P3の本体部12Aの周囲に、複数のカバー片50A、50Bを互いに略隙間無く敷き詰めることにより構成されており、そのうちの一部のカバー片50Bは、その4箇所に吊り金具54が取り付けられているので、その着脱を容易に行うことができる。したがって、各橋脚12P3〜12P6の損傷具合の目視検査を極めて効率良く行うことができる。
【0067】
また本実施形態においては、空洞部20に臨むコンクリート製の筒状部材26が、その周囲の地盤2に設置された土留め壁40に内接するようにして設置されているので、空洞部20の存在を半永久的に維持することができる。
【0068】
その際、橋脚周囲の地盤2における基礎杭12Bの上端位置に、この基礎杭12Bの外周面に内接するコンクリート製の環状部材22が、基礎杭12Bの天端12Baと略面一で設置された構成となっており、そして、この環状部材22の上面に上記筒状部材26が載置された構成となっているので、基礎杭12Bに筒状部材26の自重が直接作用してしまわないようにすることができる。また、この環状部材26を、基礎杭12B用の穴を掘削する際の掘削径を規定する定規材として用いることができるので、これにより基礎杭12Bの形状精度を高めることができる。
【0069】
なお、上記実施形態においては、多径間連続コンクリート橋10が、6つの橋脚12P1〜12P6を有しているものとして説明したが、橋脚が5つ以下の場合あるいは7つ以上の場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
また、上記実施形態においては、6つの橋脚12P1〜12P6のすべてが、その上端部において橋桁14に剛結されており、橋台16A1、16A2を除く多径間連続コンクリート橋10の全体が連続ラーメン構造を有するものとして説明したが、6つの橋脚12P1〜12P6のうちの一部が支承を介して橋桁14を支持しており、これにより多径間連続コンクリート橋10の残りの部分が連続ラーメン構造を有する構成となっている場合においても、この連続ラーメン構造を有する部分について、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本願発明の一実施形態に係る多径間連続コンクリート橋を示す側面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】図2のIII−III線断面詳細図
【図4】図3のIV部詳細図
【図5】図4のV−V線断面詳細図
【符号の説明】
【0073】
2 地盤
2A 表層
2B 支持層
2a 地表面
2b 支持層線
2c 穴
10 多径間連続コンクリート橋
12A 本体部
12B 基礎杭
12Ba 天端
12P1、12P2、12P3、12P4、12P5、12P6 橋脚
14 橋桁
14A 柱頭部
14B 径間部
16A1、16A2 橋台
20 空洞部
22、46 環状部材
26 筒状部材
26a 梁受け部
30、40 土留め壁
32 ロックボルト
34、38、44 吹付けコンクリート
36、42 H形鋼
50 カバー部材
50A、50B カバー片
52 梁部材
54 吊り金具
h 橋脚高さ
ho 地上高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンクリート製の橋脚によりコンクリート製の橋桁が支持されてなる多径間連続コンクリート橋において、
上記複数の橋脚のうち少なくとも一部の橋脚が、該橋脚の上端部において上記橋桁に剛結されており、
上記少なくとも一部の橋脚の基礎が、該橋脚の本体部よりも大径で形成された柱状の基礎杭として構成されるとともに、この基礎杭における環状の天端を周囲の地盤の地表面よりも下方に位置させるようにして該地盤に埋設されており、
上記少なくとも一部の橋脚の本体部の周囲における、上記基礎杭の天端から上記地表面までの筒状の領域が、空洞部として形成されている、ことを特徴とする多径間連続コンクリート橋。
【請求項2】
上記空洞部の周囲の地盤に、該空洞部に臨むコンクリート製の筒状部材が設置されている、ことを特徴とする請求項1記載の多径間連続コンクリート橋。
【請求項3】
上記基礎杭の周囲の地盤における該基礎杭の上端位置に、該基礎杭の外周面に内接するコンクリート製の環状部材が、該基礎杭の天端と略面一で設置されており、
この環状部材の上面に、上記筒状部材が載置されている、ことを特徴とする請求項2記載の多径間連続コンクリート橋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−37798(P2010−37798A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201471(P2008−201471)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】