説明

多微粒子O−デスメチルベンラファキシン塩およびその使用

多微粒子O−デスメチルベンラファキシン(ODV)スクシナートまたはホルメートについて説明する。うつ病を治療する方法およびODVの胃腸副作用を低減する方法についても説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多微粒子O−デスメチルベンラファキシン塩およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンラファキシンの主要な代謝産物であるO−デスメチルベンラファキシン(ODV)は、セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みを選択的に阻害する。Klamerus, K. J. et al., "Introduction of the Composite Parameter to the Pharmacokinetics of Venlafaxine and its Active O-Desmethyl Metabolite", J. Clin. Pharmacol. 32: 716-724 (1992). O−デスメチルベンラファキシン、化学名1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−フェノール)エチル]−シクロヘキサノールは、米国特許第4,535,186号のフマラート塩として例示された。しかしながらO−デスメチル−ベンラファキシンのフマレート塩は、不適切な物理化学および透過性特徴を有する。O−デスメチル−ベンラファキシンは、国際特許公報第WO00/32555号の遊離塩基としても例示されている。
【0003】
ODVのスクシナート形が説明されている[米国特許第6,673,838号]。ODVのスクシナートモノハイドレート形態は、長期放出ハイドロゲル錠剤に包含されており、副作用、たとえば悪心、嘔吐、下痢、および腹痛を低減する。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のハイドロゲルマトリクスとしての使用について述べた製剤が説明されている[WO 02/064543 A2]。
【0004】
しかしながら、ハイドロゲル製剤の効果は、ODVハイドロゲル錠剤が食物と共に与えられるときに変化することが観察されている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、ODVに関連する望ましくない特徴を低減するODVの多微粒子形およびそのハイドロゲル製剤を提供する。これらのODV多微粒子は、ODVスクシナート、ODVホルメート、またはその組合せより成る。
【0006】
好都合には、この製剤は、固体食品の嚥下が困難な患者へのさらに好都合な投薬も可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ODVスクシナート(DVS)、ODVホルメート(DVF)、またはその組合せの多微粒子形を含有するO−デスメチルベンラファキシン(ODV)の多微粒子製剤を提供する。
【0008】
多微粒子製剤の使用は、投薬前にスフェロイド(spheroid)を懸濁液に分散すること、またはアップルソースなどの低pH液体に散布/分散することによって、小児患者、高齢患者、および嚥下障害を有する患者への投薬を促進する。カプセルまたはパウチまたは他の容器内の多微粒子のより小さなサイズは、鼻腔胃管または胃瘻管を通じた投与も可能にする。
【0009】
適切には、多微粒子ODVはサイズが一般に約0.6mm〜約1mmの範囲であるスフェロイド(spheroid)、ビーズまたはペレットである。しかしながらこれは、本発明から逸脱せずにサイズが変化してもよい。
【0010】
本発明の多微粒子ODVは、少なくともDVS、DVFまたはその組合せより成るコアと、1またはそれ以上の希釈剤、バインダ、フィラー、流動促進剤、固結防止剤、pH調節剤および/またはアジュバントとから成る。
【0011】
DVSは、米国特許第6,673,838号(参照により本明細書に組み込まれる)に述べられているように調製する。ODVのホルメート塩は、公開された米国特許出願第US2003/0236309号(参照により本明細書に組み込まれる)に述べられている適切な塩の置換による同様の技法を使用して調製できる。多微粒子コアは、約3重量(w/w)%〜約70重量%のDVSおよび/またはDVFを含有する。他の実施形態において、DVSまたはDVFは未コーティング投薬形100重量%に基づいて約5重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、約20重量%〜約40重量%、または約25重量%〜約35重量%、約30重量%〜約45重量%、または約32重量%〜約44重量%の範囲で変化しうる。
【0012】
適切には、コア内に存在する希釈剤、バインダ、フィラー、流動促進剤、固結防止剤、およびアジュバントの総量は、多微粒子コアの約30重量%〜約97重量%の量である。たとえば存在する場合、バインダ、希釈剤および/またはフィラーはそれぞれ、未コーティング投薬形の約15重量%〜約80重量%、または約20重量%〜約70重量%、または約25重量%〜約45重量%、または約30重量%〜約42重量%の量で存在しうる。製剤中のpH調節剤の総量は、コアの約0.1重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約8重量%、または約3重量%〜約7重量%の範囲で変化しうる。しかしながら、これらのパーセンテージは、当業者によって必要または要望に応じて調節できる。
【0013】
バインダは、たとえば特にセルロース、およびポビドンを含む既知のバインダの中から選択できる。1つの実施形態において、バインダは微結晶性セルロース、クロスポビドン、およびその混合物の中から選択される。
【0014】
適切なpH調節剤はたとえば、特にナトリウムカーボネート、ナトリウムバイカーボネート、カリウムカーボネート、リチウムカーボネートを含む。なお他の適切な成分は、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0015】
1つの実施形態において、DVSおよび/またはDVFは、速度制御成分を含有する持続放出剤形になっている。通例、そのような速度制御成分は、親水性ポリマーおよび不活性可塑化ポリマーの中から選択される速度制御ポリマーである。適切な速度制御親水性ポリマーは、限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ハイポメロースおよびその混合物を含む。適切な不溶性または不活性「プラスチック」ポリマーの例は、限定されるものではないが、1またはそれ以上のポリメタクリレート(すなわちEudragit(登録商標)ポリマー)を含む。他の適切な速度制御ポリマー材料は、たとえばヒドロキシアルキルセルロース、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、およびポリエチレングリコールを含む。
【0016】
1つの実施形態において、本発明のODV多微粒子は、未コーティング投薬単位の重量に基づいて、微結晶性セルロース(MCC)を約5重量%〜約75重量%、約10重量%〜約70重量%、約20重量%〜約60重量%、または約30重量%〜約50重量%で含有する。
【0017】
1つの実施形態において、多微粒子DVSまたはDVF含有コアは未コーティングである。多微粒子は、当業者に既知の技法を使用して、適切なカプセルシェルに入れるか、または圧縮して錠剤にできる。適切には、得られたカプセルシェルまたは圧縮錠剤は、ODV 10mg〜400mgを含有する。
【0018】
他の実施形態において、多微粒子ODVは、コア上に1またはそれ以上のコーティングを含有する。なお他の実施形態において、多微粒子は、ペレットコアおよび非機能性シールコーティングおよび機能性第2コーティングより成る。
【0019】
1つの実施形態において、最初のシールコートはコアに直接施すことができる。このシールコートの成分は当業者が変更できるが、シールコートは、適切なポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびその組合せの中から選択され、場合により可塑剤および他の所望の成分を含有する。特に適切なシールコートはHPMCを含有する。たとえば適切なシールコートは、約3重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜約7.5重量%の濃度のHPMC溶液として施すことができる。乾燥時に適切な条件下では、最初のシールコートは、未コーティング多微粒子の約1重量%〜約3重量%の範囲、または約2重量%である。別の実施形態において、HPMC、特に不活性成分を含有する市販のシールコートが利用される。そのような市販のシールコートの1つはOpadry(登録商標) Clear(Colorcon, Inc.)である。
【0020】
場合により多微粒子は、遅延放出製剤を提供するために、存在する場合には最初のシールコート上に、または未コーティング多微粒子ODVコア上に直接、さらなるコーティング層を含有することができる。これらの製剤は、悪心、嘔吐、および過敏性腸症候群を含む副作用の発生を低下させることもできる。理論に拘泥するものではないが、これらの副作用は、上部胃腸管での放出をバイパスすることと、下部消化管での放出を提供することとによって回避できると考えられる。
【0021】
腸溶コート(速度制御フィルム)は、多微粒子に施され、これに限定されるわけではないが、ポリメタクリレート、ヒポメロース、およびエチルセルロース、またはその組合せを含む。改良された放出多微粒子製剤は、未コーティング投薬形の重量に基づいて、約3重量%〜約70重量%のDVS、DVF、またはその組合せ、および約5重量%〜約75重量%の微結晶性セルロースを含有できる。
【0022】
1つの実施形態において、腸溶コートは、メタクリル酸およびメタクリレートのコポリマー、たとえば市販のEudragit(登録商標) L 30 K55(Rohm GmbH & Co. KG)である生成物を含有する。適切には、この腸溶コートは、未コーティングまたは初期コーティングされた多微粒子の約15〜45重量%、または約20重量%〜約30重量%、または約25重量%〜30重量%の量で多微粒子をコーティングするように施される。1つの実施形態において、腸溶コートは、Eudragit(登録商標) L30D−55コポリマー(Rohm GmbH & Co.KG)、タルク、トリエチルシトレート、および水より成る。さらに詳細には、腸溶コーティングは、約30重量%のEudragit(登録商標) L 30 D55コーティング30重量%分散物;約15重量%のタルク、約3%のトリエチルシトレート;pH調節剤、たとえばナトリウムヒドロキシドおよび水を含有できる。
【0023】
別の実施形態において、腸溶コートは、エチルセルロースベース生成物、たとえば市販のSurelease(登録商標)水性エチルセルロース分散物(固体25%)生成物(Colorcon, Inc.)を含有する。1つの実施形態において、Surelease(登録商標)分散物の約3重量%〜約25重量%の、好ましくは約3%〜約7%の、または約5重量%の溶液を多微粒子に施す。適切な条件下での乾燥時に、腸溶コートは未コーティングまたは初期多微粒子が約2%〜約5%の、または約3%〜約4重量%の範囲である。
【0024】
1つの実施形態において、腸溶コーティング多微粒子を、最終シールコートでさらにコーティングする。適切には、この最終シールコートは、HPMCおよび水より成り、乾燥時にはコーティング多微粒子全体の約1重量%未満である。
【0025】
II.本発明の多微粒子製剤の製造方法
本発明の多微粒子製剤は、本明細書で述べた技法はもちろんのこと、当業者に既知の方法も使用して調製できる。
【0026】
1つの実施形態において、未コーティングODV多微粒子は次のように調製される。少なくともDVSおよび/またはDVFならびにバインダを含む乾燥成分を適切なミキサー、たとえばHobartミキサーで乾燥ブレンドする。場合により、HPMCおよびpH調節剤をこのステップで包含させる。続いて、液体成分、たとえば界面活性剤および水を混合して、粒状生成物を得る。次に粒状物を押出して、適切な器具(たとえばNica押出機/スフェロナイザ(spheronizer))によって球状化して、得られたスフェロイド(spheroid)を乾燥させ、ふるいにかけて、場合により貯蔵前にブレンドする。
【0027】
別の実施形態において、未コーティングODV多微粒子は次のように調製する。DVSおよびバインダを、プラネタリミキサー、たとえばHobartミキサー内で水と合せて粒状化する。次にNica(登録商標)システムを使用して、得られた湿潤塊を1mmふるいで押出す。次に押出物をスフェロナイザ(spheronizer)に移して、球状ペレットが得られるまで回転させる(おおよそ2〜3分)。次に湿潤ペレットをAeromatic Strea(商標)流動床乾燥機で湿度レベル2%〜5%まで乾燥させる。次に乾燥ペレットに網目ふるいを通過させて、より大きい必要以上に大きいペレットを除去する。
【0028】
場合により、初期シールコートを未コーティング多微粒子に施すことができる。たとえば初期シールコートは、流動床コーターにたとえばスプレーによって塗布できる。1つの実施形態において、Aeromatic Strea(商標)流動床装置にWursterカラムおよびボトムスプレーノズルシステムを装着する。乾燥ペレットコア約200グラムを装置に装填する。Opadry(登録商標) Clearシールコートを入口温度約50℃〜60℃、コーティング溶液スプレー速度5〜10グラム/分、噴霧圧1〜2バールで施す。所望の生成物温度は35℃〜45℃、好ましくは38℃〜43℃である。
【0029】
腸溶コートは、未コーティングスフェロイド(spheroid)コア、すなわち未コーティング多微粒子に直接施すことができるか、または初期シールコート上に施せる。腸溶コートは上述のように、通例、流動床コーター上で施される。1つの実施形態において、Surelease(登録商標)水性エチルセルロース分散物(固体25%)をシールコートと同様の方法で施す。エチルセルロースコートを塗布した後に、ペレットをさらに5〜10分間乾燥させる。次にそれらを取出して、網目ふるいでふるいにかけて、凝集体および必要以上に大きい粒子を除去する。
【0030】
1つの実施形態において、最終シールコートを腸溶コートの上に施し、場合により、多微粒子を適切な包装単位中に充填する前に最終ステップとしてタルクを使用する。
【0031】
III.製剤/キット/送達方法
別の実施形態において、本発明は、本発明のODV多微粒子を含有する生成物を提供する。
【0032】
1つの実施形態において、ODV多微粒子を患者または介護者による使用のために包装する。たとえば多微粒子は、フォイルまたは他の適切なパッケージに包装することが可能であり、患者による消費のために食品(たとえばアップルソースなど)に、または飲料に混入させるのに適切である。
【0033】
別の実施形態において、ODV多微粒子を生理的に適合する懸濁液中に懸濁させる。経口液体製薬組成物では、製薬担体または賦形剤は、これに限定されるわけではないが、水、グリコール、油、アルコール、着香料、保存料、着色料などを含むことができる。
【0034】
なお別の実施形態において、ODV多微粒子は経口送達用にカプセル、カプレットなどに充填される。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、これに限定されるわけではないがうつ病、ベンラファキシンを用いた治療を受けている対象におけるベンラファキシンの胃腸副作用、および過敏性腸症候群の治療に有用な医薬品を含む、医薬品の調製における、本発明の多微粒子製剤の使用を規定する。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、小児または高齢患者への送達のための医薬品の調製における、本発明の多微粒子製剤の使用を規定する。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、これに限定されるわけではないが経口、経皮、または粘膜投与のための投与単位を含む、投与単位の調製における本発明の多微粒子製剤の使用を規定する。
【0038】
本発明には、本発明の製剤を単位投薬形で有する容器、たとえばフォイルパッケージまたは他の適切な容器を含む製薬パックおよびキットも含まれる。
【0039】
なおさらなる実施形態において、本発明は、本発明のODV多微粒子の有効用量を投与することによって、それを必要とする対象を治療する方法を提供する。本発明の製剤は、うつ病、不安、パニック障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分、線維筋痛、広場恐怖症(agorophobia)、注意力欠如障害、強迫性障害、社会不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、拒食症、多食症、ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット症候群、血管性紅潮、コカインおよびアルコール依存症、性的機能不全、境界性人格障害、慢性疲労症候群、尿失禁、疼痛、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病、およびてんかんの治療に有用である。これらの製剤は、患者の認識向上または認識機能障害の処置、患者の喫煙または他のタバコ使用の停止、うつ状態または非うつ状態ヒト女性における視床下部性無月経の処置、O−デスメチルベンラファキシンスクシナートの経口投与から生じる悪心、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、血管迷走神経性倦怠、または開口障害の発生率の低下にも有用である。
【0040】
適切には、本発明の多微粒子ODVは、ベンラファキシンを用いた治療を受けている対象におけるベンラファキシンの胃腸副作用を減少させることが可能であり、患者に本発明の製剤を投与することを含む。
【0041】
本発明の多微粒子の有効量は、上述の状態の1またはそれ以上の状態を防止、抑制または軽減するのに十分な量である。上述の状態のそれぞれを処置、防止、抑制または軽減するのに有効な投薬量は、処置される状態の重症度および投与経路によって変化するであろう。用量、および投与頻度も、個々のヒト患者の年齢、体重、反応および過去の病歴によって変化するであろう。一般に、本明細書で述べた状態に推奨される1日用量範囲は、1日当たりDVSまたはDVF 10mg〜約1000mgの範囲に、さらに好ましくは約15mg〜約350mg/日の範囲に、なおさらに好ましくは約15mg〜約140mg/日の範囲にある。本発明の他の実施形態において、投薬量は約30mg〜約90mg/日で変化するであろう。投薬量は、遊離塩基によって表され、したがってスクシナート塩について調整される。患者の管理では、療法を低用量で開始して、必要ならば増加させることが一般に好ましい。したがって非ヒト患者の投薬量は、当業者が調整できる。
【0042】
DVSまたはDVF多微粒子は、たとえばベンラファキシンを含む他の活性因子と組合せても提供される。ベンラファキシンの投薬量は、好ましくは約75mg〜約350mg/日、さらに好ましくは約75mg〜約225mg/日である。なおさらに好ましくは、ベンラファキシンの投薬量は約75mg〜約150mg/日である。DVSおよび/またはDVF多微粒子の比は患者の反応速度によって患者ごとに異なるであろうが、一般にODV塩対ベンラファキシンが少なくとも6:1となるであろう。本発明の多微粒子と共に投薬計画で送達されるベンラファキシンまたは別の活性因子は、本発明の多微粒子と共に処方されるか、または別個に送達される。
【0043】
いずれの適切な投薬経路も、患者にODV多微粒子の有効量を提供するために利用できる。たとえば経口、経粘膜(たとえば経鼻、舌下、頬側、経直腸または経膣)、非経口(たとえば経静脈または筋肉内)、経皮、および皮下経路が利用できる。好ましい投与経路は、経口、経皮および経粘膜である。
【0044】
多微粒子DVSおよび/またはDVFは、製薬組成物または投薬形を作成する従来の製薬配合技法に従って、製薬的担体または賦形剤(たとえば製薬的に許容される担体および賦形剤)と組合せることができる。適切な製薬的に許容される担体および賦形剤は、これに限定されるわけではないが、参照により本明細書に組み入れられているRemington's, The Science and Practice of Pharmacy, (Gennaro, A. R., ed., 19th edition, 1995, Mack Pub. Co.)で述べられているものを含む。「製薬的に許容される」という表現は、生理的に耐容され、動物、たとえば哺乳類(たとえばヒト)に投与したときに通例、アレルギー性または同様の有害な反応、たとえば胃の不調、めまいなどを発生しない添加剤または組成物を指す。
【0045】
経口固体製薬組成物は、これに限定されるわけではないが、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダおよび崩壊剤を含む。製薬組成物および投薬形は、上で述べたようなベンラファキシンまたはその塩も含む。
【0046】
以下の実施例は、本発明の多微粒子ODVの投薬形の例、およびその使用を説明する。これらの実施例は、本発明の制限ではない。
【実施例1】
【0047】
多微粒子ODVスクシナート(DVS)製剤

多微粒子投薬形A
成分 mg/300mg %w/w
DVS 151.75 50.58
(ODV遊離塩基として100)
微結晶性セルロース 148.25 49.42
合計 300 100.00

多微粒子投薬形B
成分 mg/300mg %w/w
DVS 151.75 50.58
(ODV遊離塩基として100)
ヒポメロース 75.0 25.00
微結晶性セルロース 73.25 24.42
合計 300 100.00
【実施例2】
【0048】
多微粒子ODVホルメート(DVF)製剤
DVF用投薬形A
成分 mg/300mg %w/w
DVF 118.3 39.43
(ODV遊離塩基として100)
微結晶性セルロース 181.7 60.57
合計 300 100.00

DVF用多微粒子投薬形B
成分 mg/300mg %w/w
DVF 118.3 39.43
(ODV遊離塩基として100)
ヒポメロース 90.85 30.28
微結晶性セルロース 90.85 30.28
合計 300 100.00
【0049】
多微粒子製剤は、少なくとも16〜20時間の期間に渡って、持続的に治療有効な血漿レベルを提供することが予想される。ヒプロメロース錠剤モデルと同様に[たとえば米国特許第6,673,838号および米国特許第6,274,171号を参照]、ピーク血漿レベルまでの時間(Tmax)は、一般に3〜10時間、さらに好ましくは6〜9時間であると予想される。Tmaxは、副作用、たとえば悪心および嘔吐の、これらの副作用の原因である上部胃腸管のレセプタをバイパスすることによる低減に重要である。その上、供給状態でのヒプロメロース錠剤で観察されたCmax(ピーク濃度)およびAUC(濃度−時間曲線下の総面積)の増加は、胃から上部胃腸管へ通過するより少量の溶解薬物と共に胃からのより迅速な排出のために、多微粒子製剤では観察されないであろう。多微粒子製剤はそれらが幽門を容易に通過できるという事実によって、患者間変動はもちろんのこと用量間変動の減少も示すであろうが、ヒプロメロース錠剤は、特に一部の錠剤の膨潤が起こった後に問題がありうる。改良された放出ペレット処方も、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、血管迷走神経性倦怠、および/または開口障害の減少を示す。
【実施例3】
【0050】
コーティングしたデスベンラファキシンスクシナート(DVS)多微粒子製剤の調製
【表1】

多微粒子コアの製造は次の通りである。デスベンラファキシンスクシナート(DVS)を微結晶性セルロースと組合せて、プラネタリミキサーで水と共に造粒する。次に得られた湿潤塊はNica(登録商標)システムを使用して1mmふるいで押出す。次にDVS押出物をスフェロナイザ(spheronizer)に移し、球状ペレットが得られるまで約700rpmで回転させる(2〜3分)。
【0051】
次に湿潤ペレットをAeromaticStrea(商標)流動床乾燥機で湿度レベル2%〜5%まで乾燥させる。乾燥させたペレットに18網目ふるいを通過させて、より大きな必要以上に大きいペレットを除去する。ここでペレットはコーティング工程への準備が整っている。
【0052】
コーティング
シールコート
【表2】

Aeromatic Strea(商標)流動床装置にWursterカラムおよびボトムスプレーノズルシステムを装着する。乾燥ペレットコア約200グラムを装置に装填する。Opadry(登録商標)シールコートを入口温度約60℃、コーティング溶液スプレー速度5〜10グラム/分、噴霧圧1〜2バールで施す。所望の生成物温度は38℃〜43℃である。おおよそ2%のシールコートの重量増加が得られた後に、エチルセルロースコートを施すことができる。

エチルセルロースコート
【表3】

【0053】
エチルセルロースは、シールコートと同様の方法で3〜4%の重量増加まで施す。エチルセルロースコートを施した後、ペレットをさらに5〜10分間乾燥させる。ペレットを取出して、18網目ふるいを用いてふるいにかけて、凝集体および必要以上に大きい粒子を除去する。
【0054】
コーティングDVS多微粒子の溶解試験
得られたコーティング多微粒子は、DVS−233放出速度について試験管内で試験を行った。デスベンラファキシン150mgに等しい活性量を有するDVS多微粒子を含有するペレットは、USP Apparatus I, basketsを100rpmにて使用して試験を行った。溶媒は37℃の0.9% NaClであった。
【0055】
結果は、未コーティングDVS多微粒子生成物が即時放出(<1時間)を与え、それが少なくとも24時間持続されたことを示している。コーティングDVS多微粒子生成物は、遅延放出[2時間後に<50%放出、4時間後に<70%放出、および8時間後に<90%放出]を有し、最大持続放出レベルは20時間後に達成された。
【実施例4】
【0056】
多微粒子ODVスクシナート(DVS)製剤
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
本発明は、本明細書で述べた特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。これらの実施形態に対する各種の変更形態は、説明から当業者に明らかとなるであろう。係る変更形態は、添付請求項の範囲内に含まれる。
【0059】
特許、特許出願、公報、手順などは、本出願全体に渡って引用されている。これらの文書の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。明細書と参考文献との間に矛盾が存在する範囲内では、本明細書でなされた開示の用語が規制する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ODVスクシナートおよび/またはODVホルメートの多微粒子形を含むO−デスメチルベンラファキシン(ODV)の多微粒子製剤。
【請求項2】
前記多微粒子製剤が持続放出製剤または遅延放出製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤がODVのスフェロイド(spheroid)、ビーズまたはペレットを含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
ペレットのサイズが約0.6mm〜約1mmである、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
多微粒子がさらに速度制御ポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
速度制御ポリマーが親水性ポリマーおよび不活性可塑化ポリマーから成る群より選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
多微粒子が希釈剤、フィラー、流動促進剤、固結防止剤、および/またはアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
多微粒子がフィルムコーティングを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のODVスクシナートまたはホルメートの多微粒子製剤を含む組成物を患者に投与することを含む、それらを必要とする対象におけるうつ病を治療する方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載のODVの多微粒子製剤を含む組成物を患者に投与することを含む、ベンラファキシンを用いた治療を受けている対象におけるベンラファキシンの胃腸副作用を低減する方法。
【請求項11】
約3重量%〜約70重量%のO−デスメチルベンラファキシンスクシナートまたはホルメートおよび約5重量%〜約75重量%の微結晶性セルロースを含む、多微粒子の改良放出製剤。
【請求項12】
多微粒子がシールコートをさらに含む、請求項11に記載の改良放出製剤。
【請求項13】
シールコートがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項12に記載の改良放出製剤。
【請求項14】
多微粒子がポリメチルアクリレート、ヒポメロース、エチルセルロースおよびその組合せの中から選択される腸溶コートをさらに含む、請求項11から13のいずれかに記載の改良放出製剤。
【請求項15】
腸溶コートがエチルセルロースを含む、請求項14に記載の改良放出製剤。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか一項に記載の改良製剤を患者に投与することを含む、それらを必要とする対象におけるうつ病を治療する方法。
【請求項17】
請求項11から15のいずれかに記載の改良製剤を患者に投与することを含む、ODVを用いた治療を受けている対象におけるODVの胃腸副作用を低減する方法。
【請求項18】
多微粒子O−デスメチルベンラファキシン(ODV)スクシナートまたはホルメート10mg〜400mgを含む、改良放出ベンラファキシン生成物。
【請求項19】
前記多微粒子ODVスクシナートまたはホルメートを含有するカプセルシェルである、請求項18に記載の生成物。
【請求項20】
前記多微粒子ODVスクシナートまたはホルメートを含む圧縮錠剤である、請求項18に記載の生成物。
【請求項21】
請求項18に記載の生成物を含む投薬計画を患者に投与することを含む、それらを必要とする対象におけるうつ病を治療する方法。
【請求項22】
請求項18から20のいずれか一項に記載の生成物を含む投薬計画を患者に投与することを含む、ベンラファキシン治療に関連する胃腸副作用を低減する方法。
【請求項23】
請求項3または請求項4に記載のペレット、ビーズまたはスフェロイド(spheroid)を投与するステップを含む、ODVを小児または高齢患者に送達する方法。
【請求項24】
多微粒子ODVスクシナートおよび/またはホルメートを含む生成物。
【請求項25】
多微粒子ODVスクシナートおよび/またはホルメートを含むフォイルパケットを含む、請求項24に記載の生成物。
【請求項26】
経鼻胃管を通じて、半固体食品による懸濁物または分散物として患者に投与できる、ODVホルメートまたはスクシナートの多微粒子製剤。
【請求項27】
過敏性腸症候群の治療のための、ODVホルメートまたはスクシナートの遅延放出多微粒子製剤。
【請求項28】
医薬品の調製における、請求項1から8、11から15、および26から27のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項29】
前記医薬品がうつ病、ベンラファキシンを用いた治療を受けている対象におけるベンラファキシンの胃腸副作用、および過敏性腸症候群の治療に有用である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
小児または高齢患者へ送達する医薬品の調製のための、請求項3または4に記載の製剤の使用。
【請求項31】
投与単位の調製における、請求項1から8、11から15、および26から27のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項32】
前記投薬単位が経口、経皮、または経粘膜投与用である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1から8、11から15、および26から27のいずれかに記載の製剤を単位投薬形内に有する容器を含む製薬パック。

【公表番号】特表2007−520553(P2007−520553A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552145(P2006−552145)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/002215
【国際公開番号】WO2005/077340
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】