説明

多心ケーブル組立体とその製造方法

多心ケーブル組立体は、並列に接する関係にある複数の被覆線を含み、該ワイヤーの被覆は、ポリ(アリーレンエーテル)、ブロック共重合体および難燃剤が特定の割合で配合された組成物を含む。該多心ケーブル組立体は、ポリ(塩化ビニル)を使用することなく、優れた物性と難燃性能とを示す。該多心ケーブル組立体の種々の製造方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
リボンケーブルあるいはフラット導線ケーブルとも呼ばれる多心ケーブル組立体は、装置内および装置間の種々の部品間に電力および信号を送信する電気装置では一般的になった。多心ケーブル組立体は、特に、本質的に導線の高さおよび重量によってのみ決まる高さが低く重量も軽いために、配線技術においては一般的に好適である。多心ケーブル組立体は本来的に、ほとんどスペースを取らずまた柔軟性を有している。多心ケーブル組立体は、電気的・機械的特性が良好でありスペースも少なくて済むことから、自動車の固定部品と移動部品間の電力および信号を送信する公益装置の配線や、オフィスオートメーション装置において有用である。
【0002】
多心ケーブル組立体に一般に使用されている電気絶縁材はポリ(塩化ビニル)(PVC)である。PVCは比較的安価であり、広範に利用可能であり、柔軟性を有し、また本来的に難燃性である。しかしながら、環境に悪影響を与えることから、絶縁層中のハロゲン化樹脂の使用を削減または廃止する要求がますます高まっている。実際、多くの国々で、PVCなどのハロゲン化材料の使用の削減が義務付けられ始めている。したがって、多心ケーブル組立体における電気絶縁材、すなわち被覆がPVCや別のハロゲン系材料でない新しい多心ケーブル組立体の開発が引き続き求められている。
【0003】
最近の研究では、あるハロゲンフリーポリ(アリーレンエーテル)組成物類がワイヤーとケーブルの絶縁用として必要な物性と難燃性とを有していることがわかってきた。例えば、Kosakaらの米国特許出願公開第2006/0106139A1号や同第2006/0182967A1号を参照のこと。また、あるポリ(アリーレンエーテル)組成物類は、多心ケーブル組立体の製造に好適であることが開示されている。例えば、Xuらの米国特許出願公開第2006/0131059A1号を参照のこと。しかしながら、Xuらのポリ(アリーレンエーテル)組成物類は大量の難燃剤を必要とし、また、一部の用途では不適切となる熱変形性を示す。さらに、Xuらの実施例で示された溶剤溶着法では、揮発性有機化合物である溶着溶剤類の取扱いと処分が必要になるという欠点がある。
【0004】
そのために、ハロゲン化ポリマー類を使用せず、被覆組成物中の難燃剤量が少なく、熱変形性能が向上し、溶着溶剤類を使用しない多心ケーブル組立体とその製造方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
上記およびその他の欠点は、隣接する被覆線間に1つまたは複数の接続接点領域を与える並列に隣接する関係で配置された複数の被覆線を含み、前記複数の被覆線のそれぞれは、導線と、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含む熱可塑性組成物を含む被覆と、を備え、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体によって緩和される。
【0006】
別の実施形態は、それぞれの直径が0.2546〜0.8128mmの複数の未被覆導線を、本質的に互いに平行に、また、それぞれの中心−中心間距離が未被覆導線の直径の少なくとも1.5倍となるようにそれぞれを離間して並列に配置するステップと、前記複数の温度調整した未被覆導線を、230〜290℃の温度の熱可塑性組成物で押出被覆を行って多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備え、前記押出被覆は、ライン速度が3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して、50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブルの製造方法である。
【0007】
別の実施形態は、複数の被覆線を並列に隣接して配置し隣接する被覆線間に接点領域を設けるステップと、前記複数の被覆線の表面温度を150〜180℃に調整するステップと、前記温度調整した被覆線を2本のローラで定義されるニップを通過させて多心ケーブルを製造するステップと、を備える多心ケーブル組立体の製造方法であって、前記各ローラの表面温度は独立に180〜220℃であり、前記多心ケーブル組立体が前記ニップを出るときの表面温度は145〜210℃であり、前記複数の被覆線のそれぞれは、直径がDの導線と、前記導線上に配置され外径がDの被覆と、を備え、前記ニップは1.1×D〜1.1×Dであり、前記温度調整された被覆線の前記ニップの通過は、ライン速度3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して、50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体の製造方法である。
【0008】
これらおよび他の実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の図面において、同じ要素には同じ符号を付す。
【図1】個々の被覆線の直径がD、ピッチ(ワイヤー間の中心−中心間距離が)がPの多心ケーブル組立体の断面図である。
【図2】導線が3列の多心ケーブル組立体の断面図である。
【図3】未被覆導線から多心ケーブル組立体を製造する装置の透視図である。
【図4】被覆線から多心ケーブル組立体を製造する装置の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、ポリ(アリーレンエーテル)組成物類を用いた多心ケーブル組立体の製造方法について研究を行ってきた。この研究の過程で、優れた物性と難燃性とを有する多心ケーブル組立体は、特定の量の、ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)とポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体と、難燃剤と、選択的に少量のポリオレフィンと、を含む熱可塑性組成物を用いて製造できることを見いだした。該多心ケーブル組立体は、未被覆導線の配列を該熱可塑性組成物で被覆する所謂一段階プロセスで製造および、最初に未被覆導線を個々に該熱可塑性組成物で被覆し、次にできた被覆(絶縁)線を熱溶着して多心ケーブル組立体を製造する所謂二段階プロセスで製造できる。本方法では、ハロゲン化ポリマー類を使用せず、被覆組成物中の難燃剤量が少なく、熱変形性能が向上し、溶着溶剤を使用しない。
【0011】
ある実施形態は、隣接する被覆線間に1つまたは複数の接続接点領域を与える並列に隣接する関係で配置された複数の被覆線を含み、該複数の被覆線のそれぞれは、導線と、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含む熱可塑性組成物を含む被覆と、を備え、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜1,000MPa、具体的には100〜900MPa、より具体的には100〜800MPa、さらにより具体的には100〜700MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体である。
【0012】
前記多心ケーブル組立体は、それぞれが導線と被覆とを備える複数の被覆線を含む。該導線は、単一あるいは複数のストランドを含んでいてもよい。一部の実施形態では、複数のストランドを束ねてねじり、あるいは編んで導線を形成してもよい。また、該導線は、円形または矩形など種々の形状であってもよい。適切な導線としては、これに限定されないが、銅線、アルミ線、リード線、およびこれらの金属の1つまたは複数を含む合金からなるワイヤーなどがある。該導線も例えば錫または銀で被覆されていてもよい。一部の実施形態では、該導線は、1つまたは複数の導線類と、1つまたは複数の金属箔類と、1つまたは複数の導電性インク類、あるいはこれらの組合せを含んでいてもよい。導線のサイズには特別の制限はない。一部の実施形態では、該導線のサイズは、導線の直径0.2546〜0.8128mmに対応して、American Wire Gauge(AWG)30〜AWG20として規定されている。これらの実施形態では、該被覆線の被覆の厚さは、典型的には0.1〜0.5mm、具体的には0.15〜0.4mm、より具体的には0.2〜0.3mmである。他の実施形態では、該導線の直径は0.05mmまで小さくでき、あるいは0.85mmまで大きくできる。一部の実施形態では、該導線のサイズはAWG40まで小さくできる。
【0013】
図1は、その中心が単一の直線かまたは平面に沿うように並列に配置されている複数の導線30上に、被覆20が配置されている典型的な多心ケーブル組立体10の断面図である。多心ケーブル組立体は少なくとも2本の被覆線を備える。一部の実施形態では、該多心ケーブル組立体は10〜100本の被覆線、具体的には20〜50本の被覆線、より具体的には20〜40本の被覆線を備える。
【0014】
図2は、別の典型的な多心ケーブル組立体10の断面図である。この実施形態では、ケーブル組立体10は3列の被覆線を備えており、各被覆線は複数の導線30上に配置された被覆20を備える。
【0015】
該被覆線の被覆形成用の熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体と、難燃剤と、を含む。
【0016】
好適なポリ(アリーレンエーテル)類としては、下式の繰り返し構造単位を含むものがある。
【化1】

式中、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン、第三級ではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり、Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、第三級ではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書では、用語「ヒドロカルビル」は、単独あるいは接頭辞、接尾辞または他の用語の一部として使用される場合であっても、炭素と水素だけを含む残基を指す。該残基は、脂肪族あるいは芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和あるいは不飽和であってもよい。該残基はさらに、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組合せを含んでいてもよい。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換として記載された場合には、置換された残基の炭素員および水素員上にヘテロ原子を選択的に含んでいてもよい。このように、置換と特定的に記載された場合は、該ヒドロカルビル残基は、1つまたは複数のカルボニル基、アミノ基、水酸基などを含んでいてもよく、あるいは、ヒドロカルビル残基骨格内にヘテロ原子を含んでいてもよい。一例として、Zは、末端3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒であるジ−n−ブチルアミン成分との反応で形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であってもよい。
【0017】
一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位あるいはこれらの組合せを含んでいる。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0018】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、典型的に前記水酸基のオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるテトラメチルジフェノキノン末端基も存在することが多い。該ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、共重合体、グラフト共重合体、イオノマー、ブロック共重合体、あるいはこれらのものの少なくとも1つを含む組合せの形態であり得る。
【0019】
一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して0.1〜1dL/gである。具体的には、該ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は0.2〜0.8dL/gであってもよく、より具体的には0.3〜0.6dL/g、さらにより具体的には0.4〜0.5dL/gであってもよい。
【0020】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)を含んでいる。この範囲内で、該ポリ(アリーレンエーテル)の量は25〜45重量パーセントに、より具体的には25〜40重量パーセントにできる。
【0021】
ポリ(アリーレンエーテル)に加えて、前記熱可塑性組成物は、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体を含む。一部の実施形態では、該ポリオレフィンブロックはポリ(共役ジエン)あるいは水素化ポリ(共役ジエン)である。該ブロック共重合体は、15〜80重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)含量と、20〜85重量パーセントのポリオレフィン含量とを含んでいてもよい。一部の実施形態では、前記ポリ(アルケニル芳香族)含量は20〜40重量パーセントである。他の実施形態では、ポリ(アルケニル芳香族)含量は40超重量パーセント〜90重量パーセントであり、具体的には55〜80重量パーセントである。
【0022】
一部の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は3,000〜400,000原子質量単位である。数平均分子量と重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフを用い、ポリスチレン標準と比較することで求められる。一部の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は40,000〜400,000原子質量単位であり、具体的には200,000〜400,000原子質量単位、より具体的には220,000〜350,000原子質量単位である。他の実施形態では、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は40,000〜200,000原子質量単位未満であり、具体的には40,000〜180,000原子質量単位、より具体的には40,000〜150,000原子質量単位である。
【0023】
前記ブロック共重合体の調製に用いられるアルケニル芳香族モノマーは下記式の構造を有することができる。
【化2】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基あるいはC−Cアルケニル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子またはC−Cアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、C−Cアルキル基あるいはC−Cアルケニル基を表し、あるいはRとRはナフチル基を形成するものとして中央の芳香族環とともに取り上げられ、あるいはRとRはナフチル基を形成するものとして中央の芳香族環とともに取り上げられる。具体的なアルケニル芳香族モノマー類には、例えば、スチレン、およびα−メチルスチレンやp−メチルスチレンなどのメチルスチレン類が含まれる。一部の実施形態では、該アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0024】
前記ブロック共重合体の調製に用いる共役ジエンはC−C20共役ジエンとすることができる。好適な共役ジエン類には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどやこれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、該共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンあるいはこれらの組合せである。一部の実施形態では、該共役ジエンは1,3−ブタジエンから構成される。
【0025】
前記ブロック共重合体は、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導される少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンから誘導される少なくとも1つのブロックと、を含む共重合体である。一部の実施形態では、(B)ブロックの脂肪族不飽和度は水素化によって、少なくとも50パーセント、具体的には少なくとも70パーセントは低減される。ブロック(A)と(B)の配置には、リニア構造、グラフト構造、および分枝鎖があってもなくてもよいラジアルテレブロック構造がある。リニアブロック共重合体類には、テーパー型リニア構造と非テーパー型リニア構造とがある。一部の実施形態では、前記ブロック共重合体はテーパー型リニア構造を有している。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は非テーパー型リニア構造を有している。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、アルケニル芳香族モノマーがランダムに組み込まれたBブロックを含む。リニアブロック共重合体構造には、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−AブロックあるいはB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)ペンタブロック(A−B−A−B−AブロックあるいはB−A−B−A−Bブロック)、およびAとBが合計で6個以上含まれるリニア構造などがあり、各Aブロックの分子量は他のAブロックの分子量と同じであっても違っていてもよく、また、各Bブロックの分子量は他のBブロックの分子量と同じであっても違っていてもよい。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体あるいはこれらの組合せである。一部の実施形態では、該ブロック共重合体はポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体である。
【0026】
一部の実施形態では、前記ブロック共重合体には、前記アルケニル芳香族化合物および共役ジエン以外のモノマー類の残基は含まれない。一部の実施形態では、該ブロック共重合体は、該アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとから誘導されるブロック類から構成される。これらの実施形態では、これらのモノマーまたはそれ以外のモノマーから形成されるグラフトは含まれず、また、炭素原子と水素原子とから構成されるためにヘテロ原子は含まれない。
【0027】
他の実施形態では、前記ブロック共重合体は、無水マレイン酸などの1つあるいは複数の酸性官能化剤の残基を含む。
【0028】
ブロック共重合体類の調製方法は当分野では既知であり、多くの水素化ブロック共重合体類が市販されている。市販の水素化ブロック共重合体類には、Kraton Polymers社からKraton G1701およびG1702として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP−6598、RP−6924、MD−6932M、MD−6933およびMD−6939として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレトリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton RP−6935およびRP−6936として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1730として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton G1901、G1924およびMD−6684として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、Kraton Polymers社からKraton MD−6670として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC H1043として市販されている、67重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC H1051として市販されている、42重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社からTUFTEC P1000およびP2000として市販されているポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、旭化成ケミカルズ社からS.O.E.−SS L601として市販されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロック共重合体、クラレ社からSEPTON S8104として市販されている、約60重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、クラレ社からSEPTON S4044、S4055、S4077およびS4099として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類、クラレ社からSEPTON S2104として市販されている、約65重量パーセントのポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体が含まれる。複数のブロック共重合体類の混合物も使用できる。市販の未水素化ブロック共重合体類としては、Kraton Polymers社のKRATONO D1101およびD1102などのKRATONO Dシリーズポリマー類、Chevron Phillips Chemical社から販売されている、例えばK−RESIN KR01、KR03、KR05およびKR10などのスチレン−ブタジエンラジアルテレブロック共重合体類、およびTotal Petrochemicals社から、例えばFINACLEARO 520および540として市販されているテーパー型ブロック共重合体類などがある。
【0029】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して30〜50重量パーセントの、具体的には35〜45重量パーセントの前記ブロック共重合体を含むことができる。
【0030】
前記熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とブロック共重合体に加えて難燃剤を含む。好適な難燃剤としては、例えば、リン酸トリアリール類(リン酸トリフェニル、アルキル化リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−リン酸キシリル)およびビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)など)、金属ホスフィン酸塩類(アルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)など)、メラミン塩類(メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンなど)、金属ホウ酸塩類(ホウ酸亜鉛など)、金属水酸化物類(水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなど)、およびこれらの組合せなどがある。
【0031】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して5〜25重量パーセントの、具体的には10〜20重量パーセントの難燃剤を含むことができる。
【0032】
前記熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ブロック共重合体および難燃剤に加えてさらに、10重量パーセントまでのポリオレフィンを選択的に含むことができる。完全なポリマー(ブロック共重合体内のブロックの対語として)を記述するものとして本明細書で用いる用語「ポリオレフィン」は、C−C12アルケン類のホモポリマー類および共重合体類を指し、ここで用語「アルケン」は、1つまたは複数の脂肪族二重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。したがって、用語「ポリオレフィン」には、スチレンなどのアルケニル芳香族化合物を含むモノマー類の共重合体類は含まれない。
【0033】
一部の実施形態では、前記ポリオレフィンはオレフィンホモポリマーを含む。典型的なオレフィンホモポリマーには、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)およびアイソタクチックポリプロピレンが含まれる。
【0034】
一部の実施形態では、前記ポリオレフィンはオレフィン共重合体を含む。具体的なオレフィン共重合体類としては、エチレンと1−オクテンなどのaオレフィン類との、またプロピレンと4−メチル−1−ペンテンとの共重合体類や、エチレンと1つまたは複数のゴム類との共重合体類、プロピレンと1つまたは複数のゴム類との共重合体類などが挙げられる。オレフィン共重合体類にはさらに、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブテン(2−メチルプロペン)などの複数の異性体類の共重合体類が含まれる。本明細書ではEPDM共重合体類と呼ぶ、エチレン、C−C10モノオレフィン類および非共役ジエン類の共重合体類も好適なオレフィン共重合体類である。EPDM共重合体類用の好適なC−C10モノオレフィン類には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセンなどが含まれる。好適なジエン類には、1,4−ヘキサジエンと単環式および多環式ジエン類とが含まれる。エチレンと他のC−C10モノオレフィン類とのモル比は、ジエン単位の量を0.1〜10モルパーセントとして、95:5〜5:95の範囲である。EPDM共重合体類は、Laughnerらの米国特許第5,258,455号に開示されているように、ポリフェニレンエーテルにグラフトするアシル基または求電子基で官能基化できる。オレフィン共重合体類にはさらに直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。
【0035】
前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して0〜10重量パーセントの、具体的には1〜8重量パーセントの、より具体的には2〜8重量パーセントの前記ポリオレフィンを含むことができる。
【0036】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成されるポリオレフィンを含む。この実施形態では、「ポリブテンから構成されるポリオレフィン」とは、前記熱可塑性組成物は、ポリブテン以外のいかなるポリオレフィンも含まないことを意味する。ポリブテンの量は、前記熱可塑性組成物の全重量に対して、1〜10重量パーセント、具体的には2〜5重量パーセント、より具体的には2〜6重量パーセントとすることができる。
【0037】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物にはポリエチレン類とポリプロピレン類は含まれない。本明細書では、用語「ポリエチレン類」とは、エチレンのホモポリマー類と、80〜99.9重量パーセントのエチレンと0.1〜20重量パーセントのエチレン以外の1つまたは複数のアルケン類との共重合体類と、を指す。エチレン共重合体類の文脈において、「他のアルケン類」には、モノエン類(例えば、プロピレン、ブテン類、ペンテン類、ヘキセン類、へプテン類およびオクテン類など)やジエン類(例えば、エチリデンノルボネンなど)は含まれるが、アルケニル芳香族化合物類(例えば、スチレンなど)は含まれない。一部の実施形態では、前記組成物にはポリエチレン類は含まれない。一部の実施形態では、前記組成物にはエチレンホモポリマー類は含まれない。本明細書では、用語「ポリプロピレン類」とは、プロピレンのホモポリマー類と、80〜99.9重量パーセントのプロピレンと0.1〜20重量パーセントのプロピレン以外の1つまたは複数のアルケン類との共重合体類と、を指す。プロピレン共重合体類の文脈において、「他のアルケン類」には、モノエン類(例えば、エチレン、ブテン類、ペンテン類、ヘキセン類、へプテン類およびオクテン類など)とジエン類(例えば、エチリデンノボルネンなど)は含まれるが、アルケニル芳香族化合物類(例えば、スチレンなど)は含まれない。一部の実施形態では、前記組成物にはポリプロピレン類は含まれない。一部の実施形態では、前記組成物にはプロピレンホモポリマー類は含まれない。一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物にはエチレンホモポリマー類とプロピレンホモポリマー類は含まれない。
【0038】
前記熱可塑性組成物はさらに、熱可塑性分野では既知の種々の添加剤を選択的に含んでもよい。例えば、前記熱可塑性組成物はさらに、安定剤、離型剤、加工助剤、液滴抑制剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、鉱油、金属活性低下剤、ブロッキング防止剤、ナノ粘土などやこれらの組合せから選択的に選ばれた添加剤を含んでもよい。
【0039】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物には、本明細書で必要あるいは選択的として記載されていないいかなるポリマーも含まれない。一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物には充填材は含まれない。
【0040】
前記熱可塑性組成物は複数の成分を含むとして定義されているので、各成分がそれぞれ化学的に区別できること、特に単一の化合物が複数の成分の定義を満たす場合には特にそうであることは理解されるであろう。
【0041】
非常に特定的な実施形態では、前記熱可塑性組成物は、その全重量に対して、30〜36重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、5〜11重量パーセントのポリプロピレンと、8〜16の重量パーセントの熱可塑性エラストマ(例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体と、プロピレンホモポリマーと、エチレン−プロピレン共重合体と、鉱油と、住友化学株式会社よりSumitomo TPE−SB2400として市販されている炭酸カルシウムと、を含む熱可塑性エラストマ)と、3〜7重量パーセンのポリブテンと、25〜35重量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体と、1〜3重量パーセントのポリリン酸メラミンと、1〜3重量パーセントのアルミニウムトリス(ホスフィン酸ジエチル)と、5〜11重量パーセントのビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)と、を含む。
【0042】
本発明の組成物類の調製は、通常、緊密混合を形成する条件下で成分を溶融混合することによって達成される。こうした条件には、成分にせん断を加えられる一軸スクリュまたは二軸スクリュ型押出機や同様の混合装置での混合が含まれることが多い。一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、多心ケーブル組立体の製造方法の一部として混合される。他の実施形態では、前記熱可塑性組成物は混合された後、通常、多心ケーブル組立体の製造方法とは別の作業でペレット化される。
【0043】
一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。
【0044】
多くの用途では必要ではないものの、一部の実施形態では、前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0である。
【0045】
本発明は多心ケーブル組立体の製造方法にまで及ぶ。例えば、ある実施形態は、それぞれの直径が0.2546〜0.8128mmの複数の未被覆導線を、本質的に互いに平行に、また、それぞれの中心−中心間距離が未被覆導線の直径の少なくとも1.5倍となるようにそれぞれを離間して並列に配置するステップと、前記複数の温度調整した未被覆導線を、230〜290℃の温度の熱可塑性組成物で押出被覆を行って多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備え、前記押出被覆はライン速度が3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントの、具体的には25〜45重量パーセントの、より具体的には25〜40重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントの、具体的には35〜45重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの、具体的には10〜20重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントの、具体的には1〜8重量パーセントの、より具体的には2〜5重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して50〜1,000MPa、具体的には100〜900MPa、より具体的には100〜800MPa、さらにより具体的には100〜700MPaであることを特徴とする多心ケーブルの所謂一段階製造方法である。本発明者らは、前記熱可塑性組成物の温度230〜290℃が非常に重要であることを見いだした。前記熱可塑性組成物は230℃未満では十分に流動せず、出来上がったケーブルの表面が悪くなる。温度が290℃を超えると、熱可塑性組成物の分解が起こり不快な臭いが生じ得る。ポリ(塩化ビニル)被覆は、約160〜180℃というはるかに低い温度範囲で形成されることに留意のこと。また、3〜10m/分というライン速度範囲が非常に重要であり、ライン速度が3m/分未満では、熱可塑性組成物が許容できないほど長時間高温にさらされることになり(また生産性も低下)、ライン速度が10m/分を超える場合には、できたケーブルの表面の質が悪くなる。この実施形態はさらに、前記押出被覆工程の前に、前記複数の未被覆導線を温度80〜150℃に、具体的には80〜120℃に調整(予熱)するステップを選択的に含むことができる。この実施形態では、前記熱可塑性組成物は、1〜10重量パーセントの、具体的には2〜8重量パーセントの、より具体的には2〜6重量パーセントの、ポリブテンから構成されるポリオレフィンを選択的に含むことができる。また、この実施形態では、前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから選択的に選ぶことができる。また、この実施形態では、前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を選択的に除外できる。また、この実施形態では、本方法はさらに、該押出被覆線を、例えば水浴中で冷却するステップを選択的に備えることができる。
【0046】
上記の一段階法の特定の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称外径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称直径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードを選択的にV−0とすることができる。
【0047】
前記一段階法に用いられる装置は、例えば、Bauerの米国特許第3,728,424号、Brandtの同第4,150,929号、Hoddinottの同第4,295,812号、Lookの同第4,478,778号、Brandolfらの同第4,783,579号、Froschlらの同第6,954,983B2号およびWatanabeらのヨーロッパ特許出願公報第938,099A1号などに記載されている。図3は、前記一段階方法に用いられる装置100の透視図である。装置100は、それぞれが未被覆導線ストランド120をローラ130に供給して、隣接する導線ストランド120間に所定の距離を設けて平行に配列する複数の未被覆導線ボビン110を備える。配列した導線ストランド140は押出機150に、具体的には押出機の口金160を経由して送られ、ここで前記熱可塑性組成物で押出被覆されて多心ケーブル組立体10が製造される。新しい形態の多心ケーブル組立体10は水浴180を経由して送られ、ここで冷却されて巻き取りリール190上に巻き取られる。
【0048】
別の実施形態は、複数の被覆線を並列に隣接して配置し、隣接する被覆線間に接点領域を設けるステップと、前記複数の被覆線の表面温度を150〜180℃に、具体的には160〜180℃に調整(予熱)するステップと、前記温度調整した被覆線を2本のローラで定義されるニップを通過させて多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備える多心ケーブル組立体の所謂二段階製造法であって、前記各ローラの表面温度は独立に180〜220℃、具体的には190〜210℃であり、前記多心ケーブル組立体が前記ニップを出るときの表面温度は145〜210℃、具体的には155〜200℃、より具体的には165〜190℃であり、前記複数の被覆線のそれぞれは、直径がDの導線と、前記導線上に配置され外径がDの被覆と、を備え、前記ニップは1.1×D〜1.1×Dであり、具体的には1.3×D〜0.9×Dであり、より具体的には1.5×D〜0.7×Dであり、前記温度調整された被覆線の前記ニップの通過はライン速度3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントの、具体的には20〜45重量パーセントの、より具体的には25〜40重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントの、具体的には35〜45重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの、具体的には10〜20重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントの、具体的には1〜8重量パーセントの、より具体的には2〜8重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して50〜1,000MPa、具体的には100〜900MPa、より具体的には100〜800MPa、さらにより具体的には100〜700MPaであることを特徴とする方法である。本発明者らは、180〜220℃の範囲にあるローラの表面温度が非常に重要であることを見いだした。ローラの表面温度が180℃未満では、被覆電線間の接着が悪くなり、一方、220℃を超えると、できたケーブルの表面特性が悪くなる。また、本発明者らは、多心ケーブル組立体が前記ニップを出るときの表面温度が145〜210℃のときに最良の結果が得られることも見いだした。ケーブルの表面温度が145℃未満であれば表面特性が悪くなり、一方210℃を超えると、絶縁厚みが不均一になって不都合となる。表面温度の測定方法は当分野では既知であり、例えば、赤外線放射を用いた非接触式温度測定などがある。この実施形態では、前記熱可塑性組成物は、1〜10重量パーセントの、具体的には2〜8重量パーセントの、より具体的には2〜6重量パーセントの、ポリブテンから構成されるポリオレフィンを選択的に含むことができる。また、この実施形態では、前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類、およびこれらの混合物と組合せから選択的に選ぶことができる。また、この実施形態では、前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を選択的に除外できる。本方法はさらに、未被覆導線を前記熱可塑性組成物で押出被覆して前記被覆線を製造するステップ(二段階プロセスにおける第1段階)を選択的に備えることができる。本方法はさらに、前記温度調整した被覆線をニップに通して製造後、前記多心ケーブル組立体を冷却するステップを選択的に含むことができる。
【0049】
上記の二段階法の特定の実施形態では、前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格する。前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードを選択的にV−0とすることができる。
【0050】
ポリ(アリーレンエーテル)組成物を含む被覆を備える個々の被覆線の製造方法は、例えば、Mhetarらの米国特許出願公開第2006/0191706A1号に記載されている。個々の被覆線の製造は二段階法の第1段階である。
【0051】
前記二段階法の第2段階(被覆線融合)に好適な装置は、例えば、Hardisonの米国特許第2,749,261号、Baverstockの同第4,381,208号および同第4,430,139号、Hardenらの同第6,273,977号およびイギリス特許明細書第678,042号などに記載されている。図4は、該二段階法の熱融合ステップを行う装置200の透視図である。装置200は、それぞれが未被覆導線220をローラ130に供給して、隣接する被覆線220間に所定の距離を設けて平行に配列する複数の被覆線ボビン210を備える。配列した被覆線240は、予熱帯250を経由して送られ、次に加熱ローラ260で定義されるニップを経由して送られ、ここで配列した被覆線240は融合して多心ケーブル組立体10が製造される。新しい形態の多心ケーブル組立体10は、水浴180を経由して送られ、ここで冷却されて巻き取りリール190上に巻き取られる。
【0052】
特別のケーブル製造実施形態を簡略に、「一段階」あるいは「二段階」として記載したが、関連する方法は個々のステップの特定の数には限定されないことは理解されるであろう。こうした呼び方は単に、多心ケーブル組立体の製造前に未被覆導線を個々に被覆する(「二段階」)方法と、多心ケーブル組立体製造プロセス中に未被覆導線をまとめて被覆する(「一段階」)方法と、を区別することを目的としたものである。
【0053】
本発明には少なくとも以下の実施形態が含まれる。
【0054】
実施形態1:隣接する被覆線間に1つまたは複数の接続接点領域を与える並列に隣接する関係で配置された複数の被覆線を含む多心ケーブル組立体であって、前記複数の被覆線のそれぞれは、導体と、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンとを含む熱可塑性組成物を含む被覆と、を備え、重量パーセントはすべて熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体。
【0055】
実施形態2:前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする実施形態1に記載の多心ケーブル組立体。
【0056】
実施形態3:前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする実施形態1または実施形態2に記載の多心ケーブル組立体。
【0057】
実施形態4:前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【0058】
実施形態5:前記導体の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【0059】
実施形態6:前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格すること特徴とする実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【0060】
実施形態7:前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【0061】
実施形態8:それぞれの直径が0.2546〜0.8128mmの複数の未被覆導線を、本質的に互いに平行に、また、それぞれの中心−中心間距離が未被覆導線の直径の少なくとも1.5倍となるようにそれぞれを離間して並列に配置するステップと、前記複数の温度調整した未被覆導線を、230〜290℃の温度の熱可塑性組成物で押出被覆を行って多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備え、前記押出被覆はライン速度が3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブルの製造方法。
【0062】
実施形態9:前記押出被覆前に、前記複数の未被覆導線を温度80〜150℃に調整するステップをさらに備えることを特徴とする実施形態8に記載の方法。
【0063】
実施形態10:前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする実施形態8または実施形態9に記載の方法。
【0064】
実施形態11:前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする実施形態8乃至実施形態10のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施形態12:前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする実施形態8乃至実施形態11のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施形態13:前記未被覆導線の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする実施形態8乃至実施形態12のいずれかに記載の方法。
【0067】
実施形態14:前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格することを特徴とする実施形態8乃至実施形態13のいずれかに記載の方法。
【0068】
実施形態15:前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする実施形態8乃至実施形態14のいずれかに記載の方法。
【0069】
実施形態16:複数の被覆線を並列に隣接して配置し、隣接する被覆線間に接点領域を設けるステップと、前記複数の被覆線の表面温度を150〜180℃に調整するステップと、前記温度調整した被覆線を2本のローラで定義されるニップを通過させて前記多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備えた多心ケーブル組立体の製造方法であって、前記各ローラの表面温度は独立に180〜220℃であり、前記多心ケーブル組立体が前記ニップを出るときの表面温度は145〜210℃であり、前記複数の被覆線のそれぞれは、直径がDの導線と、前記導線上に配置され外径がDの被覆と、を備え、前記ニップは1.1×D〜1.1×Dであり、前記温度調整された被覆線の前記ニップの通過はライン速度3〜10m/分で行われ、前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して、50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体の製造方法。
【0070】
実施形態17:前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする実施形態16に記載の方法。
【0071】
実施形態18:前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする実施形態16または実施形態17に記載の方法。
【0072】
実施形態19:前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする実施形態16乃至実施形態18のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施形態20:前記被覆線は、導線と、前記導線上に配置された被覆と、を備え、前記導線の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする実施形態16乃至実施形態19のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施形態21:前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格することを特徴とする実施形態16乃至実施形態20のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態22:前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする実施形態16乃至実施形態21のいずれかに記載の方法。
【0076】
以下の制限しない実施例によって本発明をさらに説明する。
(実施例1)
【0077】
前記の溶融混合熱可塑性組成物の製造に用いた成分を表1に示す。
【表1】

【0078】
具体的な組成物類を表2に列挙する。ここで、成分量は重量部で表している。
【表2】

【0079】
該プロセスの第1段階で、スクリュ径が60mm、スクリュ長さと直径比が24:1、ライン速度が50〜400m/分、銅線芯の直径が0.318mm、押出溶融温度が250〜290℃、冷却浴温度が15〜80℃、ペレット予備乾燥時間が80〜90℃で4〜6時間とした大宮精機(株)製一軸スクリュ押出機(型式D2−1053)を用いて被覆線を製造した。できた被覆線の直径は1.075mm、絶縁厚みは0.378mmであった。該プロセスの第2段階で、個々の被覆線間の距離を1.27mmとして平行に配列し、該個々の被覆線を図4の予熱帯250で120〜160℃に予熱し、その後、180〜220℃に維持された直径200cmの2本の加熱ロール(図4の部品260)で定義された0.95mmのニップに該被覆線を通して20〜40本の溶融ストランドから構成されるリボン化ワイヤーを製造した。該多心ケーブル組立体のピッチは1.27mmであった。変形プロセスを表3にまとめた。
【0080】
表3の最後の欄は、用いた条件でのリボン化ケーブルの製造の可否を示す。リボン化ケーブルの製造が可能な条件に対して、できたケーブルの引裂強度を手で評価してワイヤー間の接続強度をチェックした。
【0081】
表3の結果から、加熱ロールの実際の温度が重要であり、この温度を145℃以上にしなければならないことがわかる。
【表3】

(実施例15〜18)
【0082】
これらの実施例は、リボン化ワイヤーの被覆製造に用いた組成物の物性を示す。
【0083】
上記の組成物No.1〜5で記述したように組成物を製造した。バレル温度250℃、金型温度60℃として、物性測定用のテスト棒を成形した。表4の成形棒物性について、MPa単位で表した引張強度および%単位で表した引張伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃にて測定したものであり、MPa単位で表した曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃にて測定したものであり、無単位のショアA硬度は、OS−2H操作台付きのRexモデルDD−3−Aデジタルデュロメータを用いて、ASTM D2240に準拠して温度25℃にて測定したものであり、g/10分で表したメルトフローインデックスは、ASTM D1238に準拠して温度250℃、荷重10kgにて測定したものであり、UL94燃焼性グレードは、厚みが6mmのサンプルを用いてUL94垂直燃焼試験により求めたものである。
【0084】
予熱器の上部加熱器設定温度を266〜300℃、下部加熱器設定温度を266〜300℃、内部温度を120〜175℃、ワイヤー表面温度を138〜158℃、加熱ロール入口設定温度を160〜208℃、出口設定温度を160〜202℃、実際の温度を131〜187℃、ライン速度を2.0〜3.4m/分として、上記実施例1〜14で記述したようにリボン化ワイヤーを調製した。表4のリボン化ワイヤーの物性に関して、「121℃での熱変形」とはUL1581セクション560に準拠して測定した熱変形であり、「UL1581VW−1グレード」とはUL1581セクション1080(VW−1垂直試験片)に準拠して求めたものであり、「他の機械特性」(最終伸び率および引張強度)とはUL1581セクション470に準拠したものであり、「熱劣化」とはUL1581セクション480に準拠したものであり、「リボン化」とは、多心ケーブル組立体の製造能力のことである。
【0085】
表4の結果から、特に実施例15および16の結果から、関連する要件すべてを満たすリボン化ケーブルが製造されたことがわかる。実施例17と18の組成物は、多心ケーブル組立体の製造物では評価しなかったが、良好に機能すると予想される。
【表4】

(実施例19〜31)
【0086】
これらの実施例は、前記熱可塑性組成物を用いた多心ケーブル組立体の一段階製造方法を示す。
【0087】
使用した熱可塑性組成物は、表2に示した組成物1〜4と表5に示した組成物5と6である。ここで、それぞれの成分量は重量部で表されている。
【表5】

【0088】
大宮精機(株)製ワイヤー押出機(型式D2−1053)を用いて、連続一段階プロセスで多心ケーブル組立体を製造した。前記特定の組成物(事前に混合・ペレット化されたもの)を、スクリュ径が60mm、スクリュ長さと直径比が24:1、それぞれの温度が調節可能な4つのシリンダ(バレル)を有する一軸スクリュ押出機の供給口に添加した。該4つのシリンダの温度は、「アダプタ」の温度および口金のD1、D2およびD3サブコンポーネントの温度として変化させた。「アダプタ」は押出機とネック間にあり、D1はネック、D2は口金入口、D3は口金先端である。口金を出た後、新しく製造された複数の多心ケーブル組立体を水浴中で冷却してスプール上に集めた。
【0089】
変形プロセスとケーブル評価結果を表6にまとめた。これらの結果から、熱可塑性組成物と押出条件の両方が許容できるリボン化ケーブルの製造実現には重要であることがわかる。
【表6】

【0090】
本明細書では、最良の形態を含む本発明を説明するため、および当業者が本発明を成し利用できるように実施例を用いている。本発明の特許範囲は請求項によって定義され、当業者に生じる他の実施例を含んでもよい。そうした他の実施例は、本請求項の文字どおりの言語と違わない構造要素を含む場合、あるいは本請求項の文字どおりの言語との違いがごくわずかな、同等の構造要素を含む場合には、本請求項の範囲に入るものと意図される。
【0091】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照によりそのすべてが本明細書に援用される。しかしながら、本出願中の用語が援用された参考文献の用語と矛盾するか対立する場合、本出願の用語が援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0092】
本明細書で開示された範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組合せできる。
【0093】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。量に関連して用いられる修飾語「約」は、述べられた数値を含んでおり、文脈で指図された意味(例えば、特定の量の測定に付随する誤差の程度を含むなど)を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する被覆線間に1つまたは複数の接続接点領域を与える並列に隣接する関係で配置された複数の被覆線を含む多心ケーブル組立体であって、
前記複数の被覆線のそれぞれは、
導体と、
20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含む熱可塑性組成物を含む被覆と、を備え、
重量パーセントはすべて熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体。
【請求項2】
前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載の多心ケーブル組立体。
【請求項3】
前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多心ケーブル組立体。
【請求項4】
前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【請求項5】
前記導体の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【請求項6】
前記熱可塑性組成物は、
25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、
2〜6重量パーセントのポリブテンと、
リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、
引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、
破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、
公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格すること特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【請求項7】
前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の多心ケーブル組立体。
【請求項8】
それぞれの直径が0.2546〜0.8128mmの複数の未被覆導線を、本質的に互いに平行に、また、それぞれの中心−中心間距離が未被覆導線の直径の少なくとも1.5倍となるようにそれぞれを離間して並列に配置するステップと、
前記複数の温度調整した未被覆導線を、230〜290℃の温度の熱可塑性組成物で押出被覆を行って多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備え、
前記押出被覆はライン速度が3〜10m/分で行われ、
前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、
重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記押出被覆前に、前記複数の未被覆導線を温度80〜150℃に調整するステップをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記未被覆導線の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性組成物は、
25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、
2〜6重量パーセントのポリブテンと、
リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、
引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、
破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、
公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格することを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
複数の被覆線を並列に隣接して配置し、隣接する被覆線間に接点領域を設けるステップと、
前記複数の被覆線の表面温度を150〜180℃に調整するステップと、
前記温度調整した被覆線を2本のローラで定義されるニップを通過させて前記多心ケーブル組立体を製造するステップと、を備えた多心ケーブル組立体の製造方法であって、
前記各ローラの表面温度は独立に180〜220℃であり、前記多心ケーブル組立体が前記ニップを出るときの表面温度は145〜210℃であり、
前記複数の被覆線のそれぞれは、直径がDの導線と、前記導線上に配置され外径がDの被覆と、を備え、前記ニップは1.1×D〜1.1×Dであり、
前記温度調整された被覆線の前記ニップの通過はライン速度3〜10m/分で行われ、
前記熱可塑性組成物は、20〜50重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ブロックとポリオレフィンブロックとを含む30〜50重量パーセントのブロック共重合体と、5〜25重量パーセントの難燃剤と、0〜10重量パーセントのポリオレフィンと、を含み、
重量パーセントはすべて前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠し温度23℃で測定して、50〜1,000MPaであることを特徴とする多心ケーブル組立体の製造方法。
【請求項17】
前記熱可塑性組成物は、ポリブテンから構成される1〜10重量パーセントのポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記難燃剤は、リン酸トリアリール類、金属ホスフィン酸塩類、メラミン塩類、金属ホウ酸塩類、金属水酸化物類およびこれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記熱可塑性組成物は、エチレンホモポリマー類およびプロピレンホモポリマー類を含まないことを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記被覆線は、導線と、前記導線上に配置された被覆と、を備え、前記導線の直径は0.2546〜0.8128mmであることを特徴とする請求項16乃至請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記熱可塑性組成物は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gの、20〜40重量パーセントのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体類と、これらの混合物と、から構成される群から選択される30〜50重量パーセントのトリブロック共重合体と、2〜6重量パーセントのポリブテンと、リン酸トリアリール類、ポリリン酸メラミン類、金属ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム類およびこれらの混合物から構成される群から選択される10〜20重量パーセントの難燃剤と、を含み、
前記熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠して温度23℃で測定して100〜800MPaであり、引張強度は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して10〜35MPaであり、破断伸び率は、ASTM D638に準拠して温度23℃で測定して50〜200%であり、公称直径が0.318mmのAWG28導線と、前記熱可塑性組成物を含み公称外径が1.075mmのチューブ状被覆と、から構成される被覆線試験サンプルで測定して、UL1581セクション1080に準拠した燃焼試験グレードに合格することを特徴とする請求項16乃至請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記熱可塑性組成物はさらに、厚みが6mmのサンプルでのUL94垂直燃焼試験グレードがV−0であることを特徴とする請求項16乃至請求項21のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504284(P2011−504284A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534589(P2010−534589)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054866
【国際公開番号】WO2009/069042
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】