説明

多指多関節ロボットハンドおよびロボット

【課題】
省配線化することができるロボットを提供する。
【解決手段】
第1の指および第2の指を備え、前記第1の指および第2の指が複数の関節で構成される多指多関節ロボットハンドにおいて、前記第1の指または第2の指は、前記関節を回転させるための回転駆動手段を内蔵した第1の関節部と、所定の力以上の外力が加えられると当該外力に倣って回転する回転手段を備える第2の関節部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータの配線を省配線化するロボットに関し、特にロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボットは、多くの関節で駆動部と駆動軸ならびに駆動関節の間に動力伝達部が介在した多関節構造をしている(例えば、特許文献1参照)。また、関節の近くにモータを配置しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
図9において、91は第1駆動部、92は第1関節、93は第2駆動部、94は第2関節、95は第3関節である。第1駆動部91は動力伝達部を介して第1関節92を駆動させ、第2駆動部93は動力伝達部を介して第2関節94および第3関節95を駆動させる。
【0004】
図10において、101は第1駆動部、102は第1駆動軸、103は第2駆動部、104は第2関節、105は第3駆動部、106は第3関節である。第1駆動部101は動力伝達部を介して第1駆動軸102を駆動させ、第2駆動部103は動力伝達部を介して第2関節104を駆動させ、第3駆動部105は動力伝達部を介して第3関節106を駆動させる。
【特許文献1】特開2006−116667号公報(第4−18頁、図1)
【特許文献2】特開平5−69374号公報(第3−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロボットは、多くの関節で駆動部と駆動軸ならびに駆動関節の間に動力伝達部が介在した多関節構造をしており、機構が複雑になり、配線が多く煩雑になっているという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、1つ以上の関節を受動的に回転させる事で省配線化することができるロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、第1の指および第2の指を備え、前記第1の指および第2の指が複数の関節で構成される多指多関節ロボットハンドにおいて、前記第1の指または第2の指は、前記関節を回転させるための回転駆動手段を内蔵した第1の関節部と、所定の力以上の外力が加えられると当該外力に倣って回転する回転手段を備える第2の関節部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、第1の指の基端に設けられた前記第1の指を側方に振るための第1歯車と、第2の指の基端に設けられた前記第2の指を側方に振るための第2歯車と、前記第1および第2歯車に噛み合う第3歯車と、を備え、前記第3歯車が回転すると、前記第1の指および第2の指が同一方向に振られることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、第1の指の基端に設けられた前記第1の指を側方に振るための第1歯車と、第2の指の基端に設けられた前記第2の指を側方に振るための第2歯車と、を備え、前記第1歯車と、第2歯車が噛み合い、前記第1歯車が回転すると、前記第1指および第2指が反対方向に振られることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、隣接する基端側の関節の回転駆動手段の回転が回転伝達手段を介して伝達されて回転する関節を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記回転伝達手段は、ベルトであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、弾性体によって屈曲位を保つように付勢された関節を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記弾性体は、コイルバネであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記弾性体は、曲げ板ばねであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記回転駆動手段は減速機とモータが一体化されたアクチュエータであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9いずれかに記載の多指多関節ロボットハンドを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、9に記載の発明によると、多関節構造のマニピュレータの関節部モータを減らすことができ、省配線化することができる。
【0019】
また、請求項2、3、9に記載の発明によると、歯車を設けた関節のモータを省くことができ、省配線化することができる。
【0020】
また、請求項4、5、9に記載の発明によると、駆動ベルトを設けた関節のモータを省くことができ、省配線化することができる。
【0021】
また、請求項6、7、8、9に記載の発明によると、従動軸を設けた関節のモータを省くことができ、省配線化することができる。
【0022】
また、請求項10に記載の発明によると、ロボットの省配線化をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の先端にロボットハンドを有するロボットアームを備えたロボットの構成を示す全体構成図である。図1において、1はロボット本体、2はロボットアーム、3は制御部、4はロボット、5は1つ以上の関節が受動的に回転するロボットハンドとなっている。また、図2に前記ロボットハンド5の例として、指1本に3関節を有し、1つのロボットハンドに指3本を有する物の拡大図を示す。
【0025】
本発明が従来技術と異なる部分は、1本の指に2つ以上の関節を持つロボットハンドにおいて1つ以上の関節が駆動モータと駆動関節が同じ位置にあり、他の1つ以上の関節が受動的に回転する軸を備えた部分である。
【0026】
図2において、6−1、6−2、6−3は第1関節、7−1、7−2、7−3は第2関節、8−1、8−2、8−3は第3関節、9はアンプ部である。また、6−1、7−1、8−1は第1指、6−2、7−2、8−2は第2指、6−3、7−3、8−3は第3指である。
【0027】
第1指から第3指は、アンプ部に設けられている。
【0028】
第1関節と第2関節は減速機とモータが一体化されたアクチュエータ(回転駆動手段)により駆動する駆動軸、第3関節は他の駆動軸からの力や外部からの力により受動的に回転する受動回転軸(回転駆動手段)である。
【0029】
ここで、受講的に回転する受動回転軸とは、所定の力以上の外力が加わらない限り、回転しない軸であり、自重のみで回転しないだけの保持力を持った軸である。
【0030】
なお、受動回転軸は第3関節以外でも良く、駆動軸が1つ以上あり、受動回転軸が1つ以上あればどのような軸構成でも良い。
【0031】
このように、多関節構造マニピュレータの1つ以上の関節を受動的に回転する関節とする事で、関節部モータを減らすことができ、省配線化することができる。
【実施例2】
【0032】
図3および図4は第2実施例の構成を示す図であり、図3において10は第1関節駆動軸である。図3では図2における第2指および第3指の第1関節が第1関節駆動軸10によって連動するように駆動され、前記第1関節駆動軸10が駆動することで、第2指と第3指が同じ方向に動く。図4では図2における第2指および第3指の第1関節の片側が駆動し、他方の第1関節は駆動する第1関節に連動するように駆動され、第2指と第3指は反対の方向(開閉する方向)へ動く。
【0033】
なお、図4では第2指の第1関節が駆動軸、第3指の第1関節が連動軸という構成をとっているが、第3指の第1関節が駆動軸、第2指の第1関節が連動軸という構成でも良い。また、図3および図4では、第2指と第3指の第1関節が連動する構成をとっているが、歯車で連動する構成をとっていれば、連動する軸が隣合わせである必要はない。さらに、駆動軸が1つに対して歯車を介して連動する軸が2つ以上でも良い。
【0034】
このように、1つ以上の関節が他の関節駆動部と歯車を介して連動して駆動するような構成をしているので、多関節構造のマニピュレータの関節部モータを減らすことができ、省配線化することができる。
【実施例3】
【0035】
図5および図6は第3実施例の構成を示す図であり、図5において11は連動ベルトA(回転伝達手段)であり、図6において12は連動ベルトB(回転伝達手段)である。図5では図2における第2関節および第3関節が連動ベルトA11によって連動するように駆動され、駆動軸と連動軸が同じ方向に回転する。図6では第2関節および第3関節が連動ベルトB12によって連動するように駆動され、駆動軸と連動軸が反対方向に回転する。
【0036】
なお、図5および図6では第2関節が駆動軸、第3関節が連動軸という構成をとっているが、第3関節が駆動軸、第2関節が連動軸という構成でも良く、駆動ベルトで連動する構成をとっていれば、連動する軸が隣合わせである必要はない。また、駆動軸1つに対して連動軸が2つ以上でも良い。
【0037】
このように、1つ以上の関節が他の関節駆動部と連動ベルトを介して連動して駆動するような構成をしているので、多関節構造のマニピュレータの関節部モータを減らすことができ、省配線化することができる。
【実施例4】
【0038】
図7および図8は第4実施例の構成を示す図であり、図7において13は従動軸(コイルバネ)であり、図8において14は従動軸(曲げ板バネ)である。図7では、コイルバネによって第3関節が常に屈曲位を保つように張力が発生している。図8では、曲げ板バネによって第3関節が常に屈曲位を保つように張力が発生している。
【0039】
すなわち、第3関節は、外力が全く加わらない場合は、初期の屈曲位置を保持することとなる。
【0040】
なお、図7および図8では第3関節が従動軸という構成をとっているが、第1関節または第2関節が連動軸という構成でも良く、駆動軸が1つ以上あれば従動軸が2つ以上でも良い。また、従動軸はコイルバネや曲げ板バネ以外でも一定方向に張力を発生する弾性体であれば良い。
【0041】
このように、1つ以上の関節が一定方向に張力を発生する構成をしているので、多関節構造のマニピュレータの関節部モータを減らすことができ、省配線化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
1つ以上の関節が受動的に回転するような構成をしているので、多関節構造のマニピュレータの関節部モータを減らすことができ、省配線化することができるので、サービスロボットなどの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を実施する先端にロボットハンドを有するマニピュレータを備えたロボットの構成を示す全体構成図
【図2】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1つ以上の関節が回転的に駆動する機構例の概略図
【図3】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が歯車で連動される機構例1の概略図
【図4】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が歯車で連動される機構例2の概略図
【図5】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が駆動ベルトで連動される機構例1の概略図
【図6】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が駆動ベルトで連動される機構例2の概略図
【図7】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が従動軸で駆動される機構例1の概略図
【図8】指1本に3関節を有するロボットハンドにて1関節が従動軸で駆動される機構例2の概略図
【図9】従来のロボットハンドの説明図
【図10】従来のロボットハンドの説明図
【符号の説明】
【0044】
1 ロボット本体
2 ロボットアーム
3 処理部
4 ロボット
5 ロボットハンド
6 第1関節
7 第2関節
8 第3関節
9 アンプ部
10 第1関節駆動軸
11 連動ベルトA(回転伝達手段)
12 連動ベルトB(回転伝達手段)
13 従動軸(コイルバネ)
14 従動軸(曲げ板バネ)
91 第1関節駆動部
92 第1関節
93 第2関節駆動部
94 第2関節
95 第3関節
101 第1駆動部
102 第1駆動軸
103 第2駆動部
104 第2関節
105 第3駆動部
106 第3関節

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の指および第2の指を備え、前記第1の指および第2の指が複数の関節で構成される多指多関節ロボットハンドにおいて、
前記第1の指または第2の指は、前記関節を回転させるための回転駆動手段を内蔵した第1の関節部と、
所定の力以上の外力が加えられると当該外力に倣って回転する回転手段を備える第2の関節部と、を備えたことを特徴とする多指多関節ロボットハンド。
【請求項2】
複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、
第1の指の基端に設けられた前記第1の指を側方に振るための第1歯車と、
第2の指の基端に設けられた前記第2の指を側方に振るための第2歯車と、
前記第1および第2歯車に噛み合う第3歯車と、を備え、
前記第3歯車が回転すると、前記第1の指および第2の指が同一方向に振られることを特徴とする多指多関節ロボットハンド。
【請求項3】
複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、
第1の指の基端に設けられた前記第1の指を側方に振るための第1歯車と、
第2の指の基端に設けられた前記第2の指を側方に振るための第2歯車と、を備え、
前記第1歯車と、第2歯車が噛み合い、前記第1歯車が回転すると、前記第1指および第2指が反対方向に振られることを特徴とする多指多関節ロボットハンド。
【請求項4】
複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、
隣接する基端側の関節の回転駆動手段の回転が回転伝達手段を介して伝達されて回転する関節を備えたことを特徴とする多指多関節ロボットハンド。
【請求項5】
前記回転伝達手段は、ベルトであることを特徴とする請求項4記載の多指多関節ロボットハンド。
【請求項6】
複数の関節からなる複数の指を備え、少なくとも1つの関節に当該関節を独立に動かすための回転駆動手段を内蔵した多指多関節ロボットハンドにおいて、
弾性体によって屈曲位を保つように付勢された関節を備えたことを特徴とする多指多関節ロボットハンド。
【請求項7】
前記弾性体は、コイルバネであることを特徴とする請求項6記載の多指多関節ロボットハンド。
【請求項8】
前記弾性体は、曲げ板ばねであることを特徴とする請求項6記載の多指多関節ロボットハンド。
【請求項9】
前記回転駆動手段は減速機とモータが一体化されたアクチュエータであることを特徴とする請求項1、2、3、4、6いずれかに記載の多指多関節ロボットハンド。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれかに記載の多指多関節ロボットハンドを備えたことを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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