説明

多方向操作型電子部品

【課題】薄型化が図れ、部品点数が減少する多方向操作型電子部品を提供する。
【解決手段】X,Y方向にそれぞれ移動する第1,第2移動体130,90と、第1,第2移動体130,90が交差する位置に配置され第1,第2移動体130,90を駆動する操作体50と、操作体50のX,Y方向への移動によって第1,第2移動体130,90を介して操作される第1,第2の位置検出部材(第1摺動子110と第1摺動パターン33、第2摺動子101と第2摺動パターン35)と、操作体50に設置される押圧スイッチSとを具備する。押圧スイッチSに接続している接続部67,77を操作体50から外部に突出させる。第1移動体130に接続部67,77を弾接させて摺接する摺接パターン165を形成し、押圧スイッチSの出力を接続部67,77と摺接パターン165を介して取り出すスイッチ出力検出部材(第3摺動子115と第3摺動パターン37)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作つまみ等を面方向に移動するとともに、操作つまみ等を押圧することで操作される多方向操作型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の図1に示す入力装置のように、X−Y面方向に移動する操作体(31)のX−Y面上の位置を検出するとともに、操作体(31)に取り付けた押圧部(64)を押圧することで押圧スイッチをオンする構造の多方向操作型電子部品がある。
【0003】
この多方向操作型電子部品において操作体(31)のX−Y面上の位置を検出する構造は、操作体(31)の移動によってそれぞれX,Y方向に移動する第1,第2の保持体(23,24)と、第1,第2の保持体(23,24)にそれぞれ取り付けた摺動子(43,46)と、これら摺動子(43,46)が摺接するパターン(47,48)を有し第1,第2の保持体(23,24)の上部に設置される基板(28)とを具備し、操作体(31)の移動に応じて移動する摺動子(43,46)の位置に応じた出力を基板(28)から外部に取り出す構造となっている。
【0004】
一方押圧スイッチの構造は、操作体(31)に取り付けた押圧部(64)によってオンオフされる接点部(63)の出力を、操作体(31)の下部に設置した下板(21)上の一対の接点用パターン(25a,25b)に取り出す構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−75832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の多方向操作型電子部品においては、操作体(31)の上部と下部とに、それぞれ操作体(31)のX−Y面上の移動位置の出力を外部に取り出すパターン(47,48)を設けた基板(28)と、押圧スイッチの出力を外部に取り出す接点用パターン(25a,25b)を設けた下板(21)とを設置する必要があるので、厚みの薄型化が阻害されるばかりか、部品点数が増加して構造の複雑化、組み立ての煩雑化、製造コストの増大化を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、薄型化が図れるとともに、部品点数が減少して構造の簡素化、組み立ての容易化、製造コストの低廉化が図れる多方向操作型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、第1の方向にスライド移動する第1移動体と、第1の方向に直交する第2の方向にスライド移動するとともに前記第1移動体に交差して第1移動体の下部又は上部に設置される第2移動体と、前記第1移動体と第2移動体が交差している位置に配置され、前記第1,第2移動体を駆動する操作体と、前記操作体の第1の方向への移動によって第1移動体を介して操作される第1の位置検出部材と、前記操作体の第2の方向への移動によって第2移動体を介して操作される第2の位置検出部材と、前記操作体に設置される押圧スイッチとを具備し、前記押圧スイッチに電気的に接続している接続部を前記操作体から外部に突出させるとともに、前記第1移動体には前記接続部を弾接させ且つ第1移動体に対して前記操作体が移動する範囲にわたって摺接する摺接パターンを形成し、さらに前記押圧スイッチの出力を前記接続部と摺接パターンを介して取り出すスイッチ出力検出部材を設けたことを特徴とする多方向操作型電子部品にある。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多方向操作型電子部品において、前記第1移動体と第2移動体と操作体は回路基板上に設置され、前記第1の位置検出部材は、前記第1移動体に取り付けられる第1摺動子と、前記回路基板に形成され前記第1摺動子が摺接する第1摺動パターンとを有して構成され、前記第2の位置検出部材は、前記第2移動体に取り付けられる第2摺動子と、前記回路基板に形成され前記第2摺動子が摺接する第2摺動パターンとを有して構成され、前記スイッチ出力検出部材は、前記第1移動体に取り付けられ且つ前記摺接パターンに電気的に接続してなる第3摺動子と、前記回路基板に形成され前記第3摺動子が摺接する第3摺動パターンとを有して構成されていることを特徴とする多方向操作型電子部品にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、操作体に設けた押圧スイッチの出力を、第1移動体に設けた摺接パターンを介して外部に取り出せるので、多方向操作型電子部品の構造を簡素化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、第1移動体と第2移動体と操作体の出力を何れもそれらを設置する回路基板に取り出すことができるので、回路基板を1枚で構成することができ、多方向操作型電子部品の薄型化が図れるとともに、部品点数が減少できて構造の簡素化、組み立ての容易化、製造コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】多方向操作型電子部品1の斜視図である。
【図2】多方向操作型電子部品1を下側から見た斜視図である。
【図3】図1のA−A概略断面図である。
【図4】多方向操作型電子部品1の分解斜視図である。
【図5】多方向操作型電子部品1を下側から見た分解斜視図である。
【図6】取付板10とフレキシブル回路基板30と操作体50と第1,第2移動体130,90の部分の分解斜視図である。
【図7】取付板10とフレキシブル回路基板30と操作体50と第1,第2移動体130,90の部分を下側から見た分解斜視図である。
【図8】操作体50を拡大して図6とは別の角度から見た斜視図である。
【図9】第1移動体130を下側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態に係る多方向操作型電子部品1の斜視図、図2は多方向操作型電子部品1を下側から見た斜視図、図3は図1のA−A概略断面図、図4は多方向操作型電子部品1の分解斜視図、図5は多方向操作型電子部品1を下側から見た分解斜視図、図6は図4においてまとめて示している取付部材(以下「取付板」という)10と回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と操作体50と第1,第2移動体130,90の部分の分解斜視図、図7は図5においてまとめて示している取付板10とフレキシブル回路基板30と操作体50と第1,第2移動体130,90の部分の分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とはフレキシブル回路基板30から第1,第2移動体130,90側を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
これらの図に示すように多方向操作型電子部品1は、取付板10上に、フレキシブル回路基板30と、操作体50と、第2移動体90と、第1移動体130と、ケース170と、移動体駆動部材190と、操作つまみ210と、カバー230とを設置して構成されている。
【0015】
取付板10は、剛性を有する硬質板(この例では金属板であるが、樹脂板でも良い)を略矩形状に形成して構成されており、その4隅近傍には貫通孔からなるカバー取付部11が設けられ、また各カバー取付部11よりも内側位置には小孔からなる4つの取付部13が設けられている。
【0016】
フレキシブル回路基板30は、可撓性を有する略矩形状の合成樹脂フイルム(この例ではポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム)製の基板31上に、3組の第1,第2,第3摺動パターン33,35,37を形成し、またその4隅近傍(前記取付板10の各取付部13に対向する位置)に小孔からなる取付部39を形成し、さらにその外周の所定位置に帯状の引出部41を接続して構成されている。
【0017】
第1摺動パターン33は2本の摺接パターン33a,33bを基板31の1つの外周辺近傍位置にこの外周辺に沿って並列に形成されている。一方の摺接パターン33aは抵抗体パターンであり、もう一方の摺接パターン33bは導電体パターンである。第2摺動パターン35も第1摺動パターン33と同様に、2本の摺接パターン35a,35bを基板31の別の1つの外周辺近傍位置にこの外周辺に沿って並列に形成されている。一方の摺接パターン35aは抵抗体パターンであり、もう一方の摺接パターン35bは導電体パターンである。第1摺動パターン33と第2摺動パターン35は直交する方向を向いている。
【0018】
第3摺動パターン37は2本の摺接パターン37a,37bを一列に、基板31のさらにもう1つの外周辺近傍位置にこの外周辺に沿って形成されている。両摺接パターン37a,37bは導電体パターンである。第3摺動パターン37は第1摺動パターン33と平行に形成されている。上記各摺接パターンの出力はいずれも図示しない回路パターンによって引出部41に取り出される。
【0019】
図8は操作体50を拡大して図6とは別の角度から見た斜視図である。同図に示すように操作体50は、1組の接点部材61,71を合成樹脂製の操作体本体51内にインサート成形して構成されている。操作体本体51は略矩形状に形成され、その4隅に上方向に向かって突出する略柱形状のガイド部53が形成されている。操作体本体51の上面は反転板載置面55となっている。
【0020】
接点部材61は小円形の当接部63と、当接部63から引き出されてL字状に屈曲する引出部65と、引出部65の先端から突出する接続部67をと有し、接続部67の先端に上方向に凸となるように湾曲する摺接部69を設けて構成されている。接続部67はその根元の部分で上方向に屈曲されている。接点部材71は前記当接部63を取り囲むように設置される略C字状の当接部73と、当接部73の一端から引き出される引出部75と、引出部75の先端から突出する接続部77とを有し、接続部77の先端に上方向に凸となるように湾曲する摺接部79を設けて構成されている。接続部77はその根元の部分で上方向に屈曲されている。両接点部材61,71の当接部63,73及び引出部65,75はその上面が前記操作体本体51の反転板載置面55に露出している。
【0021】
反転板載置面55には図6,図7に示す反転板(以下「可動接点板」という)57が載置される。可動接点板57は弾性金属板を略ドーム形状に形成して構成されており、その外周辺は前記当接部73上に当接して電気的に接続され、一方可動接点板57の下面中央と当接部63の間には隙間が形成され、これによって押圧スイッチS(図3参照)が構成される。なお図示はしていないが引出部65の上面には絶縁層が形成されており、可動接点板57の外周辺が接触しないようにしている。
【0022】
第2移動体90は合成樹脂を略帯状の平板状に成形して構成されており、中央に略矩形状の操作部挿入孔91を設け、また長手方向の両端部に前記長手方向に直交する方向に延びる略直方体形状のガイド部93を設けている。ガイド部93の上面には凹状の弾発部材挿入部95が設けられ、弾発部材挿入部95の内部にはコイルバネからなる復帰用弾発部材97が収納される。各弾発部材挿入部95の両端面にはスリット状に切り欠いてなる押圧部挿通部99が形成されている。一方のガイド部93の下面には第2摺動子101が取り付けられる。第2摺動子101は弾性金属板製であり、平板状の基部103の外周辺から一対の摺動接点105を突出し、これらをその根元の部分で折り返してその先端部分を摺接接点部107としている。基部103には取付孔105が設けられ、前記ガイド部93の下面に設けた小突起109(図7参照)をこの取付孔105に挿入してその先端を熱かしめして潰すことで、第2摺動子101はガイド部93に取り付けられる。
【0023】
図9は第1移動体130を下側から見た分解斜視図である。同図に示すように第1移動体130は合成樹脂を略帯状の平板状に成形して構成されており、中央に略矩形状の操作部挿入孔131を設け、また長手方向の両端部に前記長手方向に直交する方向に延びる略直方体形状のガイド部133を設けている。ガイド部133の上面には凹状の弾発部材挿入部135が設けられ、弾発部材挿入部135の内部にはコイルバネからなる復帰用弾発部材137が収納される。各弾発部材挿入部135の両端面にはスリット状に切り欠いてなる押圧部挿通部139が形成されている。一方のガイド部133の下面には第1摺動子110が取り付けられ、他方のガイド部133の下面には一対の第3摺動子115が取り付けられる。第1摺動子110は弾性金属板製であり、平板状の基部111の外周辺から一対の摺動接点112を突出し、これらをその根元の部分で折り返してその先端部分を摺接接点部113としている。基部111には取付孔114が設けられ、前記ガイド部133の下面に設けた小突起145(図7参照)をこの取付孔114に挿入してその先端を熱かしめして潰すことで、第1摺動子110はガイド部133に取り付けられる。
【0024】
第1移動体130の下面には、一対の摺接パターン形成体160が平行・並列にインサート成形されている。両摺接パターン形成体160は、何れも金属板を長尺な帯状であってその途中において2回逆方向に90°折り曲げて構成されている。折り曲げた一方の細帯状の部分が摺接パターン部161であり、もう一方の端部の部分が摺動子取付部163である。摺動子取付部163の幅寸法は、摺接パターン部161の幅寸法よりも大きく、略矩形状に形成されている。摺接パターン部161の下面は摺接パターン165であり、一対の摺接パターン165は第1移動体130の下面に平行・並列に露出している。両摺動子取付部163の下面も一方のガイド部133の下面に平行・並列に露出している。
【0025】
一対の第3摺動子115は何れも弾性金属板製であり、平板状の基部116の外周辺から1本の摺動接点117を突出し、この摺動接点117を根元の部分で折り返してその先端部分を摺接接点部118としている。基部116には取付孔119が設けられている。そしてガイド部133の前記摺動子取付部163を露出した面に設けた小突起155をこの取付孔119に挿入してその先端を熱かしめして潰すことで、両第3摺動子115は一対の摺動子取付部163に面接触して電気的に接続された状態でガイド部133に直線状に並べて取り付けられる。
【0026】
ケース170は合成樹脂を下面が解放された略矩形状の箱型に成形することで下面側に収納部171を形成して構成されており、下面の4隅近傍に下方向に向かって突出する小突起状の取付部173を設けている。ケースの中央には円形の貫通孔からなる操作部挿通孔175が形成されている。ケース170の収納部171の底面の4隅近傍には、各取付部173の側面からケース170の各辺に沿って延びる略平板状の弾発部材押圧部177が設けられている。
【0027】
移動体駆動部材190は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その上面中央に円筒形状に突出する係合部191を設け、またその下面中央から筒状の操作部193を突出している。操作部193の中央には上下に貫通する貫通孔からなる押圧部挿入部195が設けられている。
【0028】
操作つまみ210は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その上面中央に円形に突出するつまみ部211を設け、またその下面中央に円形の凹部からなる移動体駆動部材係合部213を設け、移動体駆動部材係合部213の底面中央から下方向に向けて円柱状の押圧部215を突出している。押圧部215の根元近傍部分にはその外周から張り出すストッパー部217が形成されている。移動体駆動部材係合部213の内径寸法は、前記係合部191の外径寸法とほぼ同一であり、移動体駆動部材係合部213に係合部191が上下動自在にぴったり挿入できる寸法形状に形成されている。
【0029】
カバー230は合成樹脂を略矩形平板状に成形して構成されており、その中央に円形の貫通孔からなる開口部231を設け、またその下面の4隅近傍部分から下方向に向かって4本の柱状の支持柱233を設け、さらに支持柱233の下端面にネジ螺合穴235を設けている。
【0030】
次にこの多方向操作型電子部品1の組立方法について説明する。まず前述のように、操作体50の反転板載置面55上に可動接点板57を載置して押圧スイッチSを構成しておく。また第2移動体90の一方のガイド部93の下面に第2摺動子101を取り付け、両ガイド部93の弾発部材挿入部95にそれぞれ復帰用弾発部材97を収納しておく。また第1移動体130の一方のガイド部133の下面に第1摺動子110を取り付け、他方のガイド部133の下面に一対の第3摺動子115を取り付け、両ガイド部133の弾発部材挿入部135にそれぞれ復帰用弾発部材137を収納しておく。
【0031】
そしてカバー230の下面側に操作つまみ210と移動体駆動部材190とケース170とを設置する。このとき操作つまみ210のつまみ部211がカバー230の開口部231内に挿入され、移動体駆動部材190の係合部191が操作つまみ210の移動体駆動部材係合部213に挿入され、操作つまみ210の押圧部215が移動体駆動部材190の押圧部挿入部195に挿入される。
【0032】
次に前記ケース170の収納部171内に、前記第1移動体130と第2移動体90と操作体50とを収納する。このとき第1移動体130と第2移動体90は操作部挿入孔131,91を設けた部分において交差(直交)して上下に重なるように配置され、また図4に示すように第2移動体90の下側に配置された操作体50の4つのガイド部53が、交差する第1,第2移動体130,90が形成する4つの凹状の角部にぴったり係合し、また操作体50から突出する各接続部67,77の摺接部69,79がそれぞれ第1移動体130の下面の摺接パターン165に弾接する。またこのとき交差する2つの操作部挿入孔131,91が重なって矩形状の孔になっている部分に、移動体駆動部材190の操作部193がぴったり挿入され、第2移動体90の下面側に露出する。
【0033】
次に操作体50の下にフレキシブル回路基板30と取付板10を設置し、ケース170の各取付部173をフレキシブル回路基板30の各取付部39と取付板10の各取付部13に挿入し、各取付部173の先端を熱かしめして固定する。同時にカバー230の各支柱233の下面が取付板10の各カバー取付部11上に位置するので、取付板10の下面の各カバー取付部11からネジ250を挿入してカバー230のネジ螺合穴235に螺合する。これによって多方向操作型電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0034】
以上のようにして構成された多方向操作型電子部品1において、操作つまみ210のつまみ部211を図1に示す第1の方向X(以下「X方向」という)に移動すると、操作つまみ210と一体に移動体駆動部材190がX方向に移動し、この移動体駆動部材190の操作部193によって第1移動体130がX方向に移動する。この移動によって第2移動体90は移動しないが、操作体50はX方向に移動する。この移動によって第1摺動子110と第3摺動子115も移動し、第1摺動子110の一対の摺接接点部113がフレキシブル回路基板30の摺接パターン33a,33b上を移動し、その出力(抵抗値変化に基づく出力)が変化し、X方向における位置が検出される。
【0035】
一方移動する一対の第3摺動子115の摺接接点部118は常にそれぞれ摺接パターン37a,37b上を摺動する。またこのとき押圧スイッチSから引き出されている接続部67,77先端の摺接部69,79は、一対の第3摺動子115にそれぞれ接続されている摺接パターン165に弾接している。従って第1移動体130がX方向に移動した何れの位置においても押圧スイッチSのオンオフ出力は摺接パターン37a,37bを介して引出部41に取り出せる。従って操作つまみ210のつまみ部211を下方に向かって押圧すれば、操作つまみ210の押圧部215が可動接点板57を反転し、両当接部63,73間が導通して押圧スイッチSがオンし、その出力が引出部41に取り出される。
【0036】
操作つまみ210をX方向に移動した際、中立位置では第1移動体130の押圧部挿通部139内に位置しているケース170の一方の弾発部材押圧部177の先端が弾発部材挿入部135内に入り込んで復帰用弾発部材137を圧縮するので、前記操作つまみ210の移動を中止した際は復帰用弾発部材137の弾性復帰力によって操作つまみ210は元の中立位置に自動復帰する。
【0037】
次に操作つまみ210のつまみ部211を図1に示す第2の方向Y(以下「Y方向」という)に移動すると、操作つまみ210と一体に移動体駆動部材190がY方向に移動し、この移動体駆動部材190の操作部193によって第2移動体90がY方向に移動する。この移動によって第1移動体130は移動しないが、操作体50はY方向に移動する。この移動によって第2摺動子101も移動し、第2摺動子101の一対の摺接接点部107がフレキシブル回路基板30の摺接パターン35a,35b上を移動し、その出力(抵抗値変化に基づく出力)が変化し、Y方向における位置が検出される。このとき操作体50の移動によって押圧スイッチSから引き出されている接続部67,77先端の摺接部69,79がそれぞれ摺接パターン165上を摺動するので、第2移動体90がY方向に移動した何れの位置においても押圧スイッチSのオンオフ出力を摺接パターン37a,37bを介して引出部41に取り出せる。従って操作つまみ210のつまみ部211を下方に向かって押圧すれば、前記と同様に押圧スイッチSがオンし、その出力が引出部41に取り出される。操作つまみ210をY方向に移動した後にその移動を中止した際に、復帰用弾発部材97の弾性復帰力によって操作つまみ210が元の中立位置に自動復帰することは上記したX方向への移動の場合と同様である。
【0038】
また操作つまみ210をX方向とY方向に同時に移動した場合は、第1移動体130がX方向のみに移動すると同時に第2移動体90はY方向のみに移動し、両者の出力によって操作つまみ210のX−Y平面での位置が検出できる。また操作つまみ210がX−Y平面の何れの位置にあっても、操作したスイッチSの出力を取り出すことができる。
【0039】
以上説明したように、多方向操作型電子部品1は、第1の方向Xにスライド移動する第1移動体130と、第1の方向Xに直交する第2の方向Yにスライド移動するとともに第1移動体130に交差して設置される第2移動体90と、第1移動体130と第2移動体90が交差している位置に配置され、第1,第2移動体130,90を駆動する操作体50と、操作体50の第1の方向Xへの移動によって第1移動体130を介して操作される第1の位置検出部材(第1摺動子110と第1摺動パターン33)と、操作体50の第2の方向Yへの移動によって第2移動体90を介して操作される第2の位置検出部材(第2摺動子101と、第2摺動パターン35)と、操作体50に設置される押圧スイッチSとを具備し、押圧スイッチSに電気的に接続している接続部67,77を操作体50から外部に突出させるとともに、第1移動体130には接続部67,77(その摺接部69,79)を弾接させ且つ第1移動体130に対して操作体50が移動する範囲にわたって摺接する摺接パターン165を形成し、さらに押圧スイッチSの出力を接続部67,77と摺接パターン165を介して取り出すスイッチ出力検出部材(第3摺動子115と第3摺動パターン37)を設けて構成されている。
【0040】
このように構成することで、操作体50に設けた押圧スイッチSの出力を、第1移動体130に設けた摺接パターン165を介して外部に取り出せるので、多方向操作型電子部品1の構造を簡素化することができる。
【0041】
また多方向操作型電子部品1は、第1移動体130と第2移動体90と操作体50がフレキシブル回路基板30上に設置され、前記第1の位置検出部材は、第1移動体130に取り付けられる第1摺動子110と、フレキシブル回路基板30に形成され第1摺動子110が摺接する第1摺動パターン33とを有して構成され、第2の位置検出部材は、第2移動体90に取り付けられる第2摺動子101と、フレキシブル回路基板30に形成され第2摺動子101が摺接する第2摺動パターン35とを有して構成され、前記スイッチ出力検出部材は、第1移動体130に取り付けられ且つ摺接パターン165に電気的に接続してなる第3摺動子115と、フレキシブル回路基板30に形成され第3摺動子115が摺接する第3摺動パターン37とを有して構成されている。
【0042】
このように構成することで、第1移動体130と第2移動体90と操作体50の出力を何れもそれらを設置するフレキシブル回路基板30に取り出すことができるので、フレキシブル回路基板30を1枚で(複数枚で構成してもよいが)構成することができ、多方向操作型電子部品1の薄型化が図れるとともに、部品点数が減少できて構造の簡素化、組み立ての容易化、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、第1移動体130や第2移動体90やその他の各部材の形状や構造に種々の変更が可能であることは言うまでもない。また第1,第2の位置検出手段は、操作体50の第1,第2の方向X,Yへの移動によって第1,第2移動体130,90を介して操作される構成であれば、上記実施形態の構造に限定されない。押圧スイッチSの構造も種々の変更が可能であり、例えば上記例では金属板製の一対の接点部材61,71を用いてスイッチSを構成したが、回路基板(フレキシブル回路基板を含む)上にスイッチパターンを形成したものを用いてスイッチを構成しても良い。また上記例では摺接パターン165を金属板で構成したが、導電塗料の塗布や、金属箔のエッチングなどによって構成しても良い。また上記例ではフレキシブル回路基板30を用いたが、硬質の回路基板を用いても良い。
【0044】
また上記実施形態では第1移動体130の下部に第2移動体90を設置したが、第1移動体130の上部に第2移動体90を設置しても良い。ただしこの実施形態のように第2移動体90の上部に第1移動体130を設置してこの第1移動体130に摺接パターン165を設けた方が、接続部67,77の長さを長くでき、これによって接続部67,77のいわゆる「へたり」が少なくなり、製品寿命を長くすることができる。言い換えれば、接続部67,77の長さを第2移動体90の厚み寸法分を利用して容易に長くすることができ、また第2移動体90に摺接パターン165を設けた場合に比べて製品の薄型化も容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 多方向操作型電子部品。
10 取付板(取付部材)
30 フレキシブル回路基板(回路基板)
33 第1摺動パターン(第1の位置検出部材)
35 第2摺動パターン(第2の位置検出部材)
37 第3摺動パターン(スイッチ出力検出部材)
50 操作体
S 押圧スイッチ
67,77 接続部
90 第2移動体
101 第2摺動子(第2の位置検出部材)
110 第1摺動子(第1の位置検出部材)
115 第3摺動子(スイッチ出力検出部材)
130 第1移動体
X 第1の方向
Y 第2の方向
165 摺接パターン
170 ケース
190 移動体駆動部材
210 操作つまみ
230 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向にスライド移動する第1移動体と、
第1の方向に直交する第2の方向にスライド移動するとともに前記第1移動体に交差して第1移動体の下部または上部に設置される第2移動体と、
前記第1移動体と第2移動体が交差している位置に配置され、前記第1,第2移動体を駆動する操作体と、
前記操作体の第1の方向への移動によって第1移動体を介して操作される第1の位置検出部材と、
前記操作体の第2の方向への移動によって第2移動体を介して操作される第2の位置検出部材と、
前記操作体に設置される押圧スイッチとを具備し、
前記押圧スイッチに電気的に接続している接続部を前記操作体から外部に突出させるとともに、前記第1移動体には前記接続部を弾接させ且つ第1移動体に対して前記操作体が移動する範囲にわたって摺接する摺接パターンを形成し、
さらに前記押圧スイッチの出力を前記接続部と摺接パターンを介して取り出すスイッチ出力検出部材を設けたことを特徴とする多方向操作型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向操作型電子部品において、
前記第1移動体と第2移動体と操作体は回路基板上に設置され、
前記第1の位置検出部材は、前記第1移動体に取り付けられる第1摺動子と、前記回路基板に形成され前記第1摺動子が摺接する第1摺動パターンとを有して構成され、
前記第2の位置検出部材は、前記第2移動体に取り付けられる第2摺動子と、前記回路基板に形成され前記第2摺動子が摺接する第2摺動パターンとを有して構成され、
前記スイッチ出力検出部材は、前記第1移動体に取り付けられ且つ前記摺接パターンに電気的に接続してなる第3摺動子と、前記回路基板に形成され前記第3摺動子が摺接する第3摺動パターンとを有して構成されていることを特徴とする多方向操作型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−134683(P2011−134683A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295431(P2009−295431)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】