多方向駆動装置
【課題】多方向駆動装置の構造を簡素化してより小型化を可能にすると共に、製造コストをより低減する。
【解決手段】多方向駆動装置は、被駆動体1と、被駆動体1の表面の一部に接触して配置されて該被駆動体1を第1の方向(X方向)に駆動する第1の駆動力伝達部2Aと、被駆動体1の表面の他の一部に接触して配置されて該被駆動体1を前記第1の方向とは異なる第2の方向(Y方向)に駆動する第2の駆動力伝達部2Bと、を備える。そして、被駆動体1と第1の駆動力伝達部2Aとは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であり、被駆動体1と前記第2の駆動力伝達部2Bとは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である。
【解決手段】多方向駆動装置は、被駆動体1と、被駆動体1の表面の一部に接触して配置されて該被駆動体1を第1の方向(X方向)に駆動する第1の駆動力伝達部2Aと、被駆動体1の表面の他の一部に接触して配置されて該被駆動体1を前記第1の方向とは異なる第2の方向(Y方向)に駆動する第2の駆動力伝達部2Bと、を備える。そして、被駆動体1と第1の駆動力伝達部2Aとは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であり、被駆動体1と前記第2の駆動力伝達部2Bとは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向駆動装置に関し、詳しくは、装置の構造を簡素化してより小型化を可能にすると共に、製造コストをより低減しようとする多方向駆動装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多方向駆動装置として例えばXYステージがある。XYステージは、基台上にX方向に進退自在なサブステージを設けるとともに、このサブステージ上に該サブステージの進退方向と同一平面で直交するY方向に進退自在なメインステージを設け、これらサブステージ及びメインステージを一対の直線駆動源によって進退移動させることでメインステージをX方向及びY方向に移動させて任意の位置に位置決めする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−190431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の多方向駆動装置においては、基台上にサブステージとメインステージとを積み重ねた構造となっているため、装置の高さが高くなって嵩張り、より小型化を図ることが困難であった。
【0005】
また、サブステージを一方向に案内するガイド部材、サブステージ及びメインステージを駆動する回転モータの回転運動を伝達するボールねじや回転運動を直線運動として各ステージに伝達する伝達機構等の部品がさらに必要であるため、使用する部品点数が多くなり製造コストをより低減することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、装置の構造を簡素化してより小型化を可能にすると共に、製造コストをより低減しようとする多方向駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面による多方向駆動装置は、被駆動体と、前記被駆動体の表面の一部に接触して配置され、該被駆動体を第1の方向に駆動する第1の駆動力伝達部と、前記被駆動体の表面の他の一部に接触して配置され、該被駆動体を前記第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2の駆動力伝達部と、を備え、前記被駆動体と前記第1の駆動力伝達部とは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であるとともに、前記被駆動体と前記第2の駆動力伝達部とは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である。
【0008】
ここで、例えば、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方が、前記被駆動体を駆動する方向の回転が規制された複数のフリーローラを含み、該複数のフリーローラが前記被駆動体の表面に接触して配置されるように構成することができる。
【0009】
また、例えば、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方が、前記被駆動体の表面に形成された歯と噛み合う歯車を含み、該歯車と前記被駆動体とが該歯車の歯すじ方向に相互に変位可能であるように構成することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の回転数と回転方向とを制御する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造が簡素化されて多方向駆動装置の小型化を図ることができる。また、多方向駆動装置を構成する基本要素が被駆動体及びこの被駆動体をそれぞれ異なる方向に駆動する二つの(一対の)駆動力伝達部であるので、部品点数が少なくて済み製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による多方向駆動装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記第1の実施形態の駆動力伝達部の具体的構成例を示す斜視図である。
【図3】上記第1の実施形態において平行平板の被駆動体の回転動作について説明する平面図である。
【図4】上記第1の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図5】上記第1の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明による多方向駆動装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図7】上記第2の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図8】上記第2の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【図9】図8に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図である。
【図10】図9の平面図であり、車輪間隔を狭めた状態を示す。
【図11】図9の平面図であり、車輪間隔を広げた状態を示す。
【図12】図7に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による多方向駆動装置の第1の実施形態を示す斜視図である。この多方向駆動装置は、被駆動体1と、第1の駆動力伝達部2A及び第2の駆動力伝達部2B(以下「一対の駆動力伝達部」という)と、制御部3と、を備えて構成され、一対の駆動力伝達部2A,2Bによって被駆動体1を少なくとも二方向に移動させる。
【0014】
本実施形態における被駆動体1は平板であり、図示省略の保持部材上にその裏面を接触させて任意の方向に移動自在に配置されている。
【0015】
被駆動体1の上方にて互いに交差(図1においては直交)する二つの軸4,5上には、夫々駆動力伝達部2A,2Bが設けられている。この一対の駆動力伝達部2A,2Bは、その外周面を上記被駆動体1の表面1aの一部に接触して配置され、回転することによって被駆動体1にX軸,Y軸方向の駆動力を付与して該被駆動体1をXY平面内の任意の方向に移動させるものであり、それらの外周面と被駆動体1の表面1aとの間に発生する摩擦力により被駆動体1に駆動力を付与するようになっている。この場合、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bは、夫々、軸4,5方向の上記摩擦力が軸4,5と直交方向の上記摩擦力よりも小さくなるように形成されており、被駆動体1に接触させた状態で該被駆動体1に対する回転方向と異なる方向に相対移動が可能になっている。
【0016】
各駆動力伝達部2A,2Bは、例えば図2に示すように、円柱状の本体部6の外周面6aに、外方に突出した一対の支持部材7を一定間隔で形成し、該一対の支持部材7の間に、軸8の回りに回転自由なフリーローラ9をその軸8が上記本体部6の周方向に向くように設けたものであり、公知の全方向車輪とすることができる。これにより、上記駆動力伝達部2A,2Bは、その軸4,5方向に回転自由なフリーローラ9により軸4,5方向の上記摩擦力を低減することができ、上記軸4,5と直交方向にはフリーローラ9の回転が規制されるため上記摩擦力を発生させることができる。なお、駆動力伝達部2A,2Bは、図2に示すものに限定されず、軸方向には移動が自由であり、軸と直交方向には移動が規制されたものであれば如何なる形状を有していてもよい。
【0017】
上記一対の駆動力伝達部2A,2Bを制御する制御部3が設けられている。この制御部3は、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御するものであり、図示省略の駆動回路や制御回路を備えた電子制御回路部、及び上記駆動力伝達部2A,2Bの回転軸に回転軸を連結したモータを含んで構成されている。そして、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御することによって、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に移動して任意の位置に位置付けることができるようになっている。
【0018】
次に、このように構成された多方向駆動装置の動作について説明する。
図1において、被駆動体1上の点Oを点O′まで移動する場合には、先ず、制御部3により制御して駆動力伝達部2Aを矢印A方向にn回転させる。このとき、被駆動体1に接触した駆動力伝達部2Aのフリーローラ9には、軸4に直交方向(X軸方向)の力が作用する。この場合、フリーローラ9は、軸4と直交方向には回転が規制されているため、該フリーローラ9と被駆動体1の面との間には摩擦力が発生し、駆動力伝達部2Aの回転方向と同方向(X軸方向)の駆動力が被駆動体1に付与される。したがって、被駆動体1は、+X方向に駆動力伝達部2Aの回転数nに応じた距離xだけ移動される。一方、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9は、軸5方向(X軸方向)には回転自由であるため、被駆動体1がX軸方向に移動された場合に、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9が回転して被駆動体1のX軸方向への移動の妨げとならない。
【0019】
次に、制御部3により制御して駆動力伝達部2Bを矢印B方向にm回転させる。このとき、被駆動体1に接触した駆動力伝達部2Bのフリーローラ9には、軸5に直交方向(Y軸方向)の力が作用する。この場合、フリーローラ9は、軸5と直交方向には回転が規制されているため、該フリーローラ9と被駆動体1の面との間には摩擦力が発生し、駆動力伝達部2の回転方向と同方向(Y軸方向)の駆動力が被駆動体1に付与される。したがって、被駆動体1は、−Y方向に駆動力伝達部2Bの回転数mに応じた距離yだけ移動される。一方、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9は、軸4方向(Y軸方向)には回転自由であるため、被駆動体1がY軸方向に移動された場合に、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9が回転して被駆動体1のY軸方向への移動の妨げとならない。
【0020】
このようにして、被駆動体1は、X軸方向に距離xだけ移動され、さらにY軸方向に距離yだけ移動されて、被駆動体1上の点Oが点O′に位置付けられることになる。
【0021】
なお、以上の説明においては、駆動力伝達部2A,2Bを個別に駆動する場合について述べたが、同時に駆動してもよい。この場合、被駆動体1は、図1において矢印C方向に移動することになる。また、矢印Cと反対方向に被駆動体1を移動する場合には、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bを上記とは反対方向に回転させればよい。さらに、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御することにより、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0022】
また、図1には駆動力伝達部2A,2Bとして同一の構造と直径を有する場合について記載したが、このような形態に限定されることなく、用途に応じて異なる直径や構造の駆動力伝達部を使用できることはいうまでもない。また、図1においては、軸4,5が被駆動体1と平行に配置される例を示したが、特に図2に示すような全方向車輪を用いる場合には、用途に応じて当該全方向車輪が適切に被駆動体1に接触可能な範囲内で軸4,5を被駆動体1と非平行に配置することも可能である。更に、図1においては、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に与える駆動力の方向が相互に直交するように軸4,5を配置する例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に与える駆動力の方向を相互に直交しない配置とすることもできる。この場合には、一方の駆動力伝達部のみを回転しようとした場合に、他方の駆動力伝達部がその動きを阻害するように作用することから、制御部3の作用により両駆動力伝達部を協働させることにより、被駆動体1をその面内で自在に並進的に移動させることが可能である。
【0023】
また、図1には駆動力伝達部2A,2Bが平面状の被駆動体1に対して同じ側に配置される場合について記載したが、このような形態に限定されることなく、駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1の両側の面にそれぞれ配置することも可能である。駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1に対して同じ側に配置した場合には、一般に駆動機構の構成が簡素になって、全体をコンパクトな構成にすることができる。一方、駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1の両側の面にそれぞれ配置した場合には、被駆動体1を移動可能に保持する保持部材を省略することも可能になる等、駆動力伝達部2A,2Bと被駆動体1の配置はその用途に応じて適宜決定することができる。
【0024】
図3は、上記第1の実施形態の変形例を示す正面図である。
図3に示すように、例えば軸5上にて駆動力伝達部2B1と所定の距離だけ離れた位置に駆動力伝達部2B2を配置してもよい。この場合、駆動力伝達部2B1,2B2により被駆動体1に異なる駆動量の駆動力、例えば同図中の矢印D,E方向の駆動力を付与すれば、被駆動体1を軸5上の任意の点を中心として同図中矢印G方向に回転させることができる。このとき、駆動力伝達部2Aは、被駆動体1に接触させたままとして同図中矢印F方向の駆動力を被駆動体1に付与するようにしてもよく、又は駆動力伝達部2Aは、被駆動体1の表面1aから離隔させてもよい。また、図3において駆動力伝達部2B1,2B2を同期させて同方向に駆動すれば、駆動力伝達部2Aと協働して被駆動体1を任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0025】
図4は、上記第1の実施形態の他の変形例を示す斜視図である。
図4においては、変形可能なシート状物を被駆動体1として、駆動力伝達部2A,2Bを用いて被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動するものである。図4の構成においては、被駆動体1をX−Y軸方向に移動自在に保持すると共に、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に対して駆動力を伝えるのに充分な力で接触するように被駆動体1を保持する保持部材(不図示)を設ける等により、シート状の被駆動体1についてもX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。当該保持部材の具体的形態は特に限定されないが、変形可能な被駆動体1に十分な張力等を付与できるように適宜な箇所に十分な個数の保持部材を設けることで、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に対して充分な力で接触させることができる。また、保持部材を駆動力伝達部2A,2Bのそれぞれに対向して配置し、当該保持部材と各駆動力伝達部により被駆動体1を挟持することによっても、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に対して充分な力で接触させることができる。特に、被駆動体1がループ状である場合には、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に張力を生じるような形態に配置することで、格別な保持部材を設けることなくシート状の被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。
なお、図4に示す実施形態においても、上記図1について説明したと同様に、軸4,5は必ずしも同一平面上で直交して配置される必要はなく、シート状の被駆動体1を移動させる目的に応じて、被駆動体1を任意の方向に移動可能とできる範囲内でその配置を決定することができる。
【0026】
図5は、上記第1の実施形態の他の変形例を示す斜視図である。
図5においては、被駆動体1が円筒状又は円柱状に形成された部材であり、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1の中心軸10に平行な方向と、被駆動体1の断面が成す円の接線方向とに駆動力を生じるように夫々設けられ、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触して設けられている。これにより、駆動力伝達部2A,2Bを回転駆動することにより、フリーローラ9と被駆動体1の外周面1bとの間において駆動力伝達部2Aの軸4と直交する方向に発生する摩擦力により、被駆動体1をその中心軸10と平行な方向に移動可能とすると共に、駆動力伝達部2Bを回転駆動することにより、フリーローラ9と被駆動体1の外周面1bとの間において駆動力伝達部2Bの軸5と直交する方向に発生する摩擦力により、被駆動体1を回転させることができる。
【0027】
この場合も、駆動力伝達部2Aが回転駆動して被駆動体1の中心軸10方向の駆動力が被駆動体1に付与されているとき、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9は、軸5方向、即ち被駆動体1の中心軸10と同方向には回転自由であるため、駆動力伝達部2Bは被駆動体1がその中心軸10方向へ移動してもその移動の妨げとならない。また、駆動力伝達部2Bが回転駆動して被駆動体1の周方向の駆動力が被駆動体1に付与されているとき、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9は、軸4方向、即ち被駆動体1の周方向には回転自由であるため、駆動力伝達部2Aは被駆動体1の回転の妨げとならない。この結果、駆動力伝達部2A,2Bにより被駆動体1に対して適宜の駆動力を加えることにより、被駆動体1を中心軸10の方向に並進的に移動させると共に、中心軸10を中心に回転させることができる。
なお、図5には、駆動力伝達部2A,2Bが、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触する例を示したが、特に被駆動体1が円筒状の場合には、適宜駆動力伝達部を被駆動体1の内周面に接触して設けることも可能である。
【0028】
以上説明した第1実施形態及びその変形例に係る多方向駆動装置は、被駆動体1と、被駆動体1の面の一部に接触して配置された第1の駆動力伝達部2Aと、被駆動体1の面の他の部分に接触して配置された第2の駆動力伝達部2Bと、を備える。そして、第1の駆動力伝達部2Aは回転して被駆動体1をその回転方向(第1の方向)に駆動し、第2の駆動力伝達部2Bは回転して被駆動体1をその回転方向(すなわち、第1の方向とは異なる第2の方向)に駆動する。ここで、第1の駆動力伝達部2A及び第2の駆動力伝達部2Bはフリーローラ9を有しており、被駆動体1と第1の駆動力伝達部2Aとは該第1の駆動力伝達部2Aによる被駆動力1の駆動方向(第1の方向)以外の方向に相互に変位可能であり、被駆動体1と第2の駆動力伝達部2Bとは該第2の駆動力伝達部2Bによる被駆動力1の駆動方向(第2の方向)以外の方向に相互に変位可能である。
【0029】
これにより、第1の駆動力伝達部2A、第2の駆動力伝達部2Bによって別々に被駆動体1を駆動することはもちろん、第1の駆動力伝達部2Aと第2の駆動力伝達部2Bとによって被駆動体1を同時に(協働して)駆動することも可能である。このため、例えば、駆動力伝達部2A,2Bの回転数や回転方向を適宜制御することによって、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に並進的に移動することができる。この場合、例えば、被駆動体1を、該被駆動体1に連結される部材を駆動する駆動手段として用いることにより、前記連結される部材を多方向に駆動できることになる。また、被駆動体1を回転させながら回転方向と直交する方向に移動させることも可能である。特に、本実施形態ではフリーローラ9を含む駆動力伝達部を用いており、被駆動体1の移動が滑らかに行われる。
【0030】
次に、本発明による第2の実施形態を図6を参照して説明する。ここでは、上記第1の実施形態と異なる部分について説明する。
第2の実施形態において、一対の駆動力伝達部2A,2Bとして、外周面に複数の歯11A,11Bを一定間隔で設けた一対の平歯車12A,12Bが用いられる。これに対応して、被駆動体1の表面1aの予め定められた領域内には、上記一対の平歯車12A,12Bのうち一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合う複数の第1の歯13と、他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合う複数の第2の歯14とが互いに交差するように形成されている。このように第1の歯13と第2の歯14とが互いに交差するように形成される結果として、被駆動体1の表面1aには歯13,14の各交差部に略四角錐状の微小歯15が形成されることとなり、この微小歯15が上記一対の平歯車12A,12Bと噛み合うことにより平歯車12A,12Bから被駆動体1に駆動力が伝達可能となる。
【0031】
このように構成したことにより、一方の平歯車12Aによって被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第2の歯14が他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合って、被駆動体1を他方の平歯車12Bの歯11Bの歯すじと同方向(図6に示すX軸方向)に案内するガイドレールの機能を果たし、他方の平歯車12Bにより被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第1の歯13が一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合って、被駆動体1を一方の平歯車12Aの歯11Aの歯すじと同方向(Y軸方向)に案内するガイドレールの機能を果たすことになる。このように、駆動力伝達部2A,2Bとして、平歯車12A,12Bを用いることで、駆動力伝達部の表面の摩擦力によって駆動力を伝達する第1の実施形態と比較して、駆動力伝達部からの駆動力を確実に被駆動体1に伝達することができる。
【0032】
以上の説明においては、平歯車12A,12Bを個別に駆動する場合について述べたが、図1について説明したと同様に平歯車12A,12Bは同時に駆動してもよく、その駆動力により被駆動体1をX−Y平面内において任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0033】
また、図6には、平歯車12A,12Bの歯11A,11Bの歯すじが実質的に直交する場合について記載したが、本発明はこれに限定されることなく、相互の歯すじが直交しない角度で交差するように配置すると共に、これに対応する微小歯15を被駆動体1に形成してもよい。この場合には、一方の平歯車のみを回転しようとした場合に、他方の駆動力伝達部がその動きを阻害するように作用することから、図示しない制御部3の作用により両平歯車を協働させることにより、被駆動体1をその面内で自在に並進的に移動させることが可能である。
【0034】
さらに、図6に示す実施形態においては、平歯車12A,12Bの歯11A,11B(及び、被駆動体1に形成される微小歯15を成す各面)がガイドレールとしても機能するため、この際の摩擦力を緩和するための適宜の手段が適用されることが望ましい。摩擦力を緩和する手段としては、適宜の潤滑剤を介在させることも可能であるが、例えば、上記一対の駆動力伝達部2A,2B及び被駆動体1のうち少なくとも一方は、自己潤滑性を有する樹脂で形成することで、駆動力伝達部2A,2Bと被駆動体1との間のすべりをよくして被駆動体1の移動を滑らかに行なわせることができる。また、平歯車12A,12Bの歯11A,11Bの適宜の箇所に、歯11A,11Bの歯すじと平行な方向への被駆動体1の移動を容易にするためのフリーローラを設けてもよい。
【0035】
図7は、上記第2の実施形態の変形例を示す斜視図である。
図7においては、変形可能なシート状物を被駆動体1として、平歯車12A,12Bを用いて被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動するものである。
図7の構成においては、被駆動体1をX−Y軸方向に移動自在に保持すると共に、平歯車12A,12Bが被駆動体1に対して駆動力を伝えられる位置に被駆動体1を保持する保持部材(不図示)を設ける等により、シート状の被駆動体1についてもX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。当該保持部材の具体的形態は特に限定されないが、変形可能な被駆動体1に十分な張力等を付与できるように適宜な箇所に十分な個数の保持部材を設けることで、被駆動体1を平歯車12A,12Bからの駆動力を伝えられる位置に保持することができる。また、保持部材を平歯車12A,12Bのそれぞれに対向して配置し、平歯車12A,12Bに対して所定の位置に被駆動体1を保持してもよい。特に、被駆動体1がループ状である場合には、平歯車12A,12Bを被駆動体1に張力を生じるような形態に配置することで、格別な保持部材を設けることなくシート状の被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。
【0036】
図8は、上記第2の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
図8においては、被駆動体1が円柱状又は円筒状に形成された部材であり、上記一対の平歯車12A,12Bが被駆動体1の中心軸10に平行な方向と、被駆動体1の断面が成す円の接線方向とに駆動力を生じるように夫々設けられ、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触して設けられている。
図8において、一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合う複数の第1の歯13は、その歯すじが被駆動体1の周方向に伸びて形成されており、他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合う複数の第2の歯14は、その歯すじが被駆動体1の中心軸10に平行に伸びて形成されている。この場合も、一方の平歯車12Aによって被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第2の歯14が他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合って、被駆動体1を他方の平歯車12Bの歯11Bの歯すじと同方向(図8において被駆動体1の中心軸10に平行な方向)に案内するガイドレールの機能を果たし、他方の平歯車12Bにより被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第1の歯13が一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合って、被駆動体1を一方の平歯車12Aの歯11Aの歯すじと同方向(被駆動体1の周方向)に案内するガイドレールの機能を果たすことになる。
【0037】
なお、以上の説明においては、駆動力伝達部2A,2Bが平歯車である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、駆動力伝達部2A,2Bは、はすば歯車であってもよい。この場合、一方の歯車を駆動しているときに、それに同調させて他方の歯車を駆動すれば、他方の歯車が被駆動体1の移動の抵抗とならず、被駆動体1を滑らかに移動させることができる。
【0038】
以上説明した第2実施形態及びその変形例に係る多方向駆動装置においても、上記第1実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、被駆動体1を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む多方向に変位させることができ、この被駆動体1を介して、例えば該被駆動体1に連結される部材を多方向に駆動することができる。また、被駆動体1を回転させながら回転方向と直交する方向に移動させることもできる。特に、本実施形態では歯車を含む駆動力伝達部を用いており、被駆動体1の移動がより確実に行われる。
【0039】
上記第1及び第2の実施形態においては、一対の駆動力伝達部2A,2Bをいずれも被駆動体1の一面側に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば被駆動体1が板状に形成された部材である場合には、一対の駆動力伝達部2は、被駆動体1を挟んで、相対する二面に夫々接触して設けてもよい。また、被駆動体1が円筒状の部材である場合には、一方の駆動力伝達部2Aを被駆動体1の外周面に接触させ、他方の駆動力伝達部2Bを被駆動体1の内周面に接触させて設けるとよい。
【0040】
さらに、第1実施形態における駆動力伝達部と第2実施形態における駆動力伝達部とを組み合わせて用いてもよい。例えば、一対の駆動力伝達部のうちの一方がフリーローラを含む駆動力伝達部であり、他方が歯車を含む駆動力伝達部であってもよい。この場合においては、被駆動体1の一方の面にフリーローラを含む駆動力伝達部を配置し、被駆動体1の他方の面に歯車を含む駆動力伝達部を配置するのが好ましい。もちろん、被駆動体1の前記他方の面の所定領域には前記歯車に噛み合う複数の歯を形成する。
【0041】
次に、実施形態による多方向駆動装置の応用例を説明する。
図9は、図8に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図で、図10はその平面図であり、車両に応用したものである。
図10に示すように、車両本体16には、その前後に被駆動体1としての四つの車軸17が設けられており、各車軸17の側端部には、車輪18が設けられている。この車輪18は、例えばその外周面に車軸17の中心軸10に平行な方向には回転自由であり、中心軸10に直交方向には回転が規制されたフリーローラ19を周方向に一定間隔で設けたものである(図9参照)。また、各車軸17の車両本体16側には外周面を車軸17の外周面に接触させて夫々図8に示す駆動力伝達部2A,2Bが設けられている。
【0042】
上述したように、車輪18の外周面に設けたフリーローラ19は、車軸17の中心軸10方向には回転自由であり、中心軸10に直交方向(車軸17の回転方向)には回転が規制されているので、駆動力伝達部2Bの駆動により車軸17が回転された場合には、車輪18のフリーローラ19は回転しない。したがって、フリーローラ19と地面との間に摩擦力が発生し、該摩擦力により車両は前後進する。また、駆動力伝達部2Aを駆動して車軸17をその中心軸方向に移動し、左右の車輪18の間隔を可変することができるので、道幅が広い場合には、図11に示すように車軸17を伸ばして車輪間隔を広げ、安定走行を可能にし、道幅が狭いときには、図10に示すように車軸17を縮めて車輪間隔を狭め走行を可能にすることができる。
【0043】
図12は、図7に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図であり、キャタピラに応用したものである。
この場合、複数の駆動力伝達部2Aを同期して駆動することにより、被駆動体1としてのキャタピラ20を回転されて車両を前後進させることができる。また、複数の駆動力伝達部2Bを同期して駆動することにより、左右のキャタピラ間隔を縮めたり、広げたりすることができる。
【0044】
以上、本発明の各実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…被駆動体
2A…一方の駆動力伝達部
2B…他方の駆動力伝達部
3…制御部
4…一方の駆動力伝達部の軸
5…他方の駆動力伝達部の軸
6…駆動力伝達部の本体部
9…フリーローラ
10…円筒状又は円柱状の被駆動体の中心軸
11A…一方の平歯車の歯
11B…他方の平歯車の歯
12A…一方の平歯車
12B…他方の平歯車
13…第1の歯
14…第2の歯
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向駆動装置に関し、詳しくは、装置の構造を簡素化してより小型化を可能にすると共に、製造コストをより低減しようとする多方向駆動装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多方向駆動装置として例えばXYステージがある。XYステージは、基台上にX方向に進退自在なサブステージを設けるとともに、このサブステージ上に該サブステージの進退方向と同一平面で直交するY方向に進退自在なメインステージを設け、これらサブステージ及びメインステージを一対の直線駆動源によって進退移動させることでメインステージをX方向及びY方向に移動させて任意の位置に位置決めする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−190431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の多方向駆動装置においては、基台上にサブステージとメインステージとを積み重ねた構造となっているため、装置の高さが高くなって嵩張り、より小型化を図ることが困難であった。
【0005】
また、サブステージを一方向に案内するガイド部材、サブステージ及びメインステージを駆動する回転モータの回転運動を伝達するボールねじや回転運動を直線運動として各ステージに伝達する伝達機構等の部品がさらに必要であるため、使用する部品点数が多くなり製造コストをより低減することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、装置の構造を簡素化してより小型化を可能にすると共に、製造コストをより低減しようとする多方向駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面による多方向駆動装置は、被駆動体と、前記被駆動体の表面の一部に接触して配置され、該被駆動体を第1の方向に駆動する第1の駆動力伝達部と、前記被駆動体の表面の他の一部に接触して配置され、該被駆動体を前記第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2の駆動力伝達部と、を備え、前記被駆動体と前記第1の駆動力伝達部とは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であるとともに、前記被駆動体と前記第2の駆動力伝達部とは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である。
【0008】
ここで、例えば、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方が、前記被駆動体を駆動する方向の回転が規制された複数のフリーローラを含み、該複数のフリーローラが前記被駆動体の表面に接触して配置されるように構成することができる。
【0009】
また、例えば、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方が、前記被駆動体の表面に形成された歯と噛み合う歯車を含み、該歯車と前記被駆動体とが該歯車の歯すじ方向に相互に変位可能であるように構成することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の回転数と回転方向とを制御する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造が簡素化されて多方向駆動装置の小型化を図ることができる。また、多方向駆動装置を構成する基本要素が被駆動体及びこの被駆動体をそれぞれ異なる方向に駆動する二つの(一対の)駆動力伝達部であるので、部品点数が少なくて済み製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による多方向駆動装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記第1の実施形態の駆動力伝達部の具体的構成例を示す斜視図である。
【図3】上記第1の実施形態において平行平板の被駆動体の回転動作について説明する平面図である。
【図4】上記第1の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図5】上記第1の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明による多方向駆動装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図7】上記第2の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図8】上記第2の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【図9】図8に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図である。
【図10】図9の平面図であり、車輪間隔を狭めた状態を示す。
【図11】図9の平面図であり、車輪間隔を広げた状態を示す。
【図12】図7に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による多方向駆動装置の第1の実施形態を示す斜視図である。この多方向駆動装置は、被駆動体1と、第1の駆動力伝達部2A及び第2の駆動力伝達部2B(以下「一対の駆動力伝達部」という)と、制御部3と、を備えて構成され、一対の駆動力伝達部2A,2Bによって被駆動体1を少なくとも二方向に移動させる。
【0014】
本実施形態における被駆動体1は平板であり、図示省略の保持部材上にその裏面を接触させて任意の方向に移動自在に配置されている。
【0015】
被駆動体1の上方にて互いに交差(図1においては直交)する二つの軸4,5上には、夫々駆動力伝達部2A,2Bが設けられている。この一対の駆動力伝達部2A,2Bは、その外周面を上記被駆動体1の表面1aの一部に接触して配置され、回転することによって被駆動体1にX軸,Y軸方向の駆動力を付与して該被駆動体1をXY平面内の任意の方向に移動させるものであり、それらの外周面と被駆動体1の表面1aとの間に発生する摩擦力により被駆動体1に駆動力を付与するようになっている。この場合、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bは、夫々、軸4,5方向の上記摩擦力が軸4,5と直交方向の上記摩擦力よりも小さくなるように形成されており、被駆動体1に接触させた状態で該被駆動体1に対する回転方向と異なる方向に相対移動が可能になっている。
【0016】
各駆動力伝達部2A,2Bは、例えば図2に示すように、円柱状の本体部6の外周面6aに、外方に突出した一対の支持部材7を一定間隔で形成し、該一対の支持部材7の間に、軸8の回りに回転自由なフリーローラ9をその軸8が上記本体部6の周方向に向くように設けたものであり、公知の全方向車輪とすることができる。これにより、上記駆動力伝達部2A,2Bは、その軸4,5方向に回転自由なフリーローラ9により軸4,5方向の上記摩擦力を低減することができ、上記軸4,5と直交方向にはフリーローラ9の回転が規制されるため上記摩擦力を発生させることができる。なお、駆動力伝達部2A,2Bは、図2に示すものに限定されず、軸方向には移動が自由であり、軸と直交方向には移動が規制されたものであれば如何なる形状を有していてもよい。
【0017】
上記一対の駆動力伝達部2A,2Bを制御する制御部3が設けられている。この制御部3は、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御するものであり、図示省略の駆動回路や制御回路を備えた電子制御回路部、及び上記駆動力伝達部2A,2Bの回転軸に回転軸を連結したモータを含んで構成されている。そして、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御することによって、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に移動して任意の位置に位置付けることができるようになっている。
【0018】
次に、このように構成された多方向駆動装置の動作について説明する。
図1において、被駆動体1上の点Oを点O′まで移動する場合には、先ず、制御部3により制御して駆動力伝達部2Aを矢印A方向にn回転させる。このとき、被駆動体1に接触した駆動力伝達部2Aのフリーローラ9には、軸4に直交方向(X軸方向)の力が作用する。この場合、フリーローラ9は、軸4と直交方向には回転が規制されているため、該フリーローラ9と被駆動体1の面との間には摩擦力が発生し、駆動力伝達部2Aの回転方向と同方向(X軸方向)の駆動力が被駆動体1に付与される。したがって、被駆動体1は、+X方向に駆動力伝達部2Aの回転数nに応じた距離xだけ移動される。一方、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9は、軸5方向(X軸方向)には回転自由であるため、被駆動体1がX軸方向に移動された場合に、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9が回転して被駆動体1のX軸方向への移動の妨げとならない。
【0019】
次に、制御部3により制御して駆動力伝達部2Bを矢印B方向にm回転させる。このとき、被駆動体1に接触した駆動力伝達部2Bのフリーローラ9には、軸5に直交方向(Y軸方向)の力が作用する。この場合、フリーローラ9は、軸5と直交方向には回転が規制されているため、該フリーローラ9と被駆動体1の面との間には摩擦力が発生し、駆動力伝達部2の回転方向と同方向(Y軸方向)の駆動力が被駆動体1に付与される。したがって、被駆動体1は、−Y方向に駆動力伝達部2Bの回転数mに応じた距離yだけ移動される。一方、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9は、軸4方向(Y軸方向)には回転自由であるため、被駆動体1がY軸方向に移動された場合に、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9が回転して被駆動体1のY軸方向への移動の妨げとならない。
【0020】
このようにして、被駆動体1は、X軸方向に距離xだけ移動され、さらにY軸方向に距離yだけ移動されて、被駆動体1上の点Oが点O′に位置付けられることになる。
【0021】
なお、以上の説明においては、駆動力伝達部2A,2Bを個別に駆動する場合について述べたが、同時に駆動してもよい。この場合、被駆動体1は、図1において矢印C方向に移動することになる。また、矢印Cと反対方向に被駆動体1を移動する場合には、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bを上記とは反対方向に回転させればよい。さらに、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bの回転数及び回転方向を制御することにより、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0022】
また、図1には駆動力伝達部2A,2Bとして同一の構造と直径を有する場合について記載したが、このような形態に限定されることなく、用途に応じて異なる直径や構造の駆動力伝達部を使用できることはいうまでもない。また、図1においては、軸4,5が被駆動体1と平行に配置される例を示したが、特に図2に示すような全方向車輪を用いる場合には、用途に応じて当該全方向車輪が適切に被駆動体1に接触可能な範囲内で軸4,5を被駆動体1と非平行に配置することも可能である。更に、図1においては、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に与える駆動力の方向が相互に直交するように軸4,5を配置する例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に与える駆動力の方向を相互に直交しない配置とすることもできる。この場合には、一方の駆動力伝達部のみを回転しようとした場合に、他方の駆動力伝達部がその動きを阻害するように作用することから、制御部3の作用により両駆動力伝達部を協働させることにより、被駆動体1をその面内で自在に並進的に移動させることが可能である。
【0023】
また、図1には駆動力伝達部2A,2Bが平面状の被駆動体1に対して同じ側に配置される場合について記載したが、このような形態に限定されることなく、駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1の両側の面にそれぞれ配置することも可能である。駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1に対して同じ側に配置した場合には、一般に駆動機構の構成が簡素になって、全体をコンパクトな構成にすることができる。一方、駆動力伝達部2A,2Bを平面状の被駆動体1の両側の面にそれぞれ配置した場合には、被駆動体1を移動可能に保持する保持部材を省略することも可能になる等、駆動力伝達部2A,2Bと被駆動体1の配置はその用途に応じて適宜決定することができる。
【0024】
図3は、上記第1の実施形態の変形例を示す正面図である。
図3に示すように、例えば軸5上にて駆動力伝達部2B1と所定の距離だけ離れた位置に駆動力伝達部2B2を配置してもよい。この場合、駆動力伝達部2B1,2B2により被駆動体1に異なる駆動量の駆動力、例えば同図中の矢印D,E方向の駆動力を付与すれば、被駆動体1を軸5上の任意の点を中心として同図中矢印G方向に回転させることができる。このとき、駆動力伝達部2Aは、被駆動体1に接触させたままとして同図中矢印F方向の駆動力を被駆動体1に付与するようにしてもよく、又は駆動力伝達部2Aは、被駆動体1の表面1aから離隔させてもよい。また、図3において駆動力伝達部2B1,2B2を同期させて同方向に駆動すれば、駆動力伝達部2Aと協働して被駆動体1を任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0025】
図4は、上記第1の実施形態の他の変形例を示す斜視図である。
図4においては、変形可能なシート状物を被駆動体1として、駆動力伝達部2A,2Bを用いて被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動するものである。図4の構成においては、被駆動体1をX−Y軸方向に移動自在に保持すると共に、駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1に対して駆動力を伝えるのに充分な力で接触するように被駆動体1を保持する保持部材(不図示)を設ける等により、シート状の被駆動体1についてもX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。当該保持部材の具体的形態は特に限定されないが、変形可能な被駆動体1に十分な張力等を付与できるように適宜な箇所に十分な個数の保持部材を設けることで、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に対して充分な力で接触させることができる。また、保持部材を駆動力伝達部2A,2Bのそれぞれに対向して配置し、当該保持部材と各駆動力伝達部により被駆動体1を挟持することによっても、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に対して充分な力で接触させることができる。特に、被駆動体1がループ状である場合には、駆動力伝達部2A,2Bを被駆動体1に張力を生じるような形態に配置することで、格別な保持部材を設けることなくシート状の被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。
なお、図4に示す実施形態においても、上記図1について説明したと同様に、軸4,5は必ずしも同一平面上で直交して配置される必要はなく、シート状の被駆動体1を移動させる目的に応じて、被駆動体1を任意の方向に移動可能とできる範囲内でその配置を決定することができる。
【0026】
図5は、上記第1の実施形態の他の変形例を示す斜視図である。
図5においては、被駆動体1が円筒状又は円柱状に形成された部材であり、上記一対の駆動力伝達部2A,2Bが被駆動体1の中心軸10に平行な方向と、被駆動体1の断面が成す円の接線方向とに駆動力を生じるように夫々設けられ、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触して設けられている。これにより、駆動力伝達部2A,2Bを回転駆動することにより、フリーローラ9と被駆動体1の外周面1bとの間において駆動力伝達部2Aの軸4と直交する方向に発生する摩擦力により、被駆動体1をその中心軸10と平行な方向に移動可能とすると共に、駆動力伝達部2Bを回転駆動することにより、フリーローラ9と被駆動体1の外周面1bとの間において駆動力伝達部2Bの軸5と直交する方向に発生する摩擦力により、被駆動体1を回転させることができる。
【0027】
この場合も、駆動力伝達部2Aが回転駆動して被駆動体1の中心軸10方向の駆動力が被駆動体1に付与されているとき、駆動力伝達部2Bのフリーローラ9は、軸5方向、即ち被駆動体1の中心軸10と同方向には回転自由であるため、駆動力伝達部2Bは被駆動体1がその中心軸10方向へ移動してもその移動の妨げとならない。また、駆動力伝達部2Bが回転駆動して被駆動体1の周方向の駆動力が被駆動体1に付与されているとき、駆動力伝達部2Aのフリーローラ9は、軸4方向、即ち被駆動体1の周方向には回転自由であるため、駆動力伝達部2Aは被駆動体1の回転の妨げとならない。この結果、駆動力伝達部2A,2Bにより被駆動体1に対して適宜の駆動力を加えることにより、被駆動体1を中心軸10の方向に並進的に移動させると共に、中心軸10を中心に回転させることができる。
なお、図5には、駆動力伝達部2A,2Bが、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触する例を示したが、特に被駆動体1が円筒状の場合には、適宜駆動力伝達部を被駆動体1の内周面に接触して設けることも可能である。
【0028】
以上説明した第1実施形態及びその変形例に係る多方向駆動装置は、被駆動体1と、被駆動体1の面の一部に接触して配置された第1の駆動力伝達部2Aと、被駆動体1の面の他の部分に接触して配置された第2の駆動力伝達部2Bと、を備える。そして、第1の駆動力伝達部2Aは回転して被駆動体1をその回転方向(第1の方向)に駆動し、第2の駆動力伝達部2Bは回転して被駆動体1をその回転方向(すなわち、第1の方向とは異なる第2の方向)に駆動する。ここで、第1の駆動力伝達部2A及び第2の駆動力伝達部2Bはフリーローラ9を有しており、被駆動体1と第1の駆動力伝達部2Aとは該第1の駆動力伝達部2Aによる被駆動力1の駆動方向(第1の方向)以外の方向に相互に変位可能であり、被駆動体1と第2の駆動力伝達部2Bとは該第2の駆動力伝達部2Bによる被駆動力1の駆動方向(第2の方向)以外の方向に相互に変位可能である。
【0029】
これにより、第1の駆動力伝達部2A、第2の駆動力伝達部2Bによって別々に被駆動体1を駆動することはもちろん、第1の駆動力伝達部2Aと第2の駆動力伝達部2Bとによって被駆動体1を同時に(協働して)駆動することも可能である。このため、例えば、駆動力伝達部2A,2Bの回転数や回転方向を適宜制御することによって、被駆動体1をXY平面内の任意の方向に並進的に移動することができる。この場合、例えば、被駆動体1を、該被駆動体1に連結される部材を駆動する駆動手段として用いることにより、前記連結される部材を多方向に駆動できることになる。また、被駆動体1を回転させながら回転方向と直交する方向に移動させることも可能である。特に、本実施形態ではフリーローラ9を含む駆動力伝達部を用いており、被駆動体1の移動が滑らかに行われる。
【0030】
次に、本発明による第2の実施形態を図6を参照して説明する。ここでは、上記第1の実施形態と異なる部分について説明する。
第2の実施形態において、一対の駆動力伝達部2A,2Bとして、外周面に複数の歯11A,11Bを一定間隔で設けた一対の平歯車12A,12Bが用いられる。これに対応して、被駆動体1の表面1aの予め定められた領域内には、上記一対の平歯車12A,12Bのうち一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合う複数の第1の歯13と、他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合う複数の第2の歯14とが互いに交差するように形成されている。このように第1の歯13と第2の歯14とが互いに交差するように形成される結果として、被駆動体1の表面1aには歯13,14の各交差部に略四角錐状の微小歯15が形成されることとなり、この微小歯15が上記一対の平歯車12A,12Bと噛み合うことにより平歯車12A,12Bから被駆動体1に駆動力が伝達可能となる。
【0031】
このように構成したことにより、一方の平歯車12Aによって被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第2の歯14が他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合って、被駆動体1を他方の平歯車12Bの歯11Bの歯すじと同方向(図6に示すX軸方向)に案内するガイドレールの機能を果たし、他方の平歯車12Bにより被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第1の歯13が一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合って、被駆動体1を一方の平歯車12Aの歯11Aの歯すじと同方向(Y軸方向)に案内するガイドレールの機能を果たすことになる。このように、駆動力伝達部2A,2Bとして、平歯車12A,12Bを用いることで、駆動力伝達部の表面の摩擦力によって駆動力を伝達する第1の実施形態と比較して、駆動力伝達部からの駆動力を確実に被駆動体1に伝達することができる。
【0032】
以上の説明においては、平歯車12A,12Bを個別に駆動する場合について述べたが、図1について説明したと同様に平歯車12A,12Bは同時に駆動してもよく、その駆動力により被駆動体1をX−Y平面内において任意の方向に並進的に移動させることができる。
【0033】
また、図6には、平歯車12A,12Bの歯11A,11Bの歯すじが実質的に直交する場合について記載したが、本発明はこれに限定されることなく、相互の歯すじが直交しない角度で交差するように配置すると共に、これに対応する微小歯15を被駆動体1に形成してもよい。この場合には、一方の平歯車のみを回転しようとした場合に、他方の駆動力伝達部がその動きを阻害するように作用することから、図示しない制御部3の作用により両平歯車を協働させることにより、被駆動体1をその面内で自在に並進的に移動させることが可能である。
【0034】
さらに、図6に示す実施形態においては、平歯車12A,12Bの歯11A,11B(及び、被駆動体1に形成される微小歯15を成す各面)がガイドレールとしても機能するため、この際の摩擦力を緩和するための適宜の手段が適用されることが望ましい。摩擦力を緩和する手段としては、適宜の潤滑剤を介在させることも可能であるが、例えば、上記一対の駆動力伝達部2A,2B及び被駆動体1のうち少なくとも一方は、自己潤滑性を有する樹脂で形成することで、駆動力伝達部2A,2Bと被駆動体1との間のすべりをよくして被駆動体1の移動を滑らかに行なわせることができる。また、平歯車12A,12Bの歯11A,11Bの適宜の箇所に、歯11A,11Bの歯すじと平行な方向への被駆動体1の移動を容易にするためのフリーローラを設けてもよい。
【0035】
図7は、上記第2の実施形態の変形例を示す斜視図である。
図7においては、変形可能なシート状物を被駆動体1として、平歯車12A,12Bを用いて被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動するものである。
図7の構成においては、被駆動体1をX−Y軸方向に移動自在に保持すると共に、平歯車12A,12Bが被駆動体1に対して駆動力を伝えられる位置に被駆動体1を保持する保持部材(不図示)を設ける等により、シート状の被駆動体1についてもX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。当該保持部材の具体的形態は特に限定されないが、変形可能な被駆動体1に十分な張力等を付与できるように適宜な箇所に十分な個数の保持部材を設けることで、被駆動体1を平歯車12A,12Bからの駆動力を伝えられる位置に保持することができる。また、保持部材を平歯車12A,12Bのそれぞれに対向して配置し、平歯車12A,12Bに対して所定の位置に被駆動体1を保持してもよい。特に、被駆動体1がループ状である場合には、平歯車12A,12Bを被駆動体1に張力を生じるような形態に配置することで、格別な保持部材を設けることなくシート状の被駆動体1をX軸、Y軸の方向に任意に移動可能とすることができる。
【0036】
図8は、上記第2の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
図8においては、被駆動体1が円柱状又は円筒状に形成された部材であり、上記一対の平歯車12A,12Bが被駆動体1の中心軸10に平行な方向と、被駆動体1の断面が成す円の接線方向とに駆動力を生じるように夫々設けられ、いずれも被駆動体1の外周面1bに接触して設けられている。
図8において、一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合う複数の第1の歯13は、その歯すじが被駆動体1の周方向に伸びて形成されており、他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合う複数の第2の歯14は、その歯すじが被駆動体1の中心軸10に平行に伸びて形成されている。この場合も、一方の平歯車12Aによって被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第2の歯14が他方の平歯車12Bの歯11Bと噛み合って、被駆動体1を他方の平歯車12Bの歯11Bの歯すじと同方向(図8において被駆動体1の中心軸10に平行な方向)に案内するガイドレールの機能を果たし、他方の平歯車12Bにより被駆動体1に駆動力が付与されているときには、被駆動体1の第1の歯13が一方の平歯車12Aの歯11Aと噛み合って、被駆動体1を一方の平歯車12Aの歯11Aの歯すじと同方向(被駆動体1の周方向)に案内するガイドレールの機能を果たすことになる。
【0037】
なお、以上の説明においては、駆動力伝達部2A,2Bが平歯車である場合について述べたが、本発明はこれに限られず、駆動力伝達部2A,2Bは、はすば歯車であってもよい。この場合、一方の歯車を駆動しているときに、それに同調させて他方の歯車を駆動すれば、他方の歯車が被駆動体1の移動の抵抗とならず、被駆動体1を滑らかに移動させることができる。
【0038】
以上説明した第2実施形態及びその変形例に係る多方向駆動装置においても、上記第1実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、被駆動体1を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む多方向に変位させることができ、この被駆動体1を介して、例えば該被駆動体1に連結される部材を多方向に駆動することができる。また、被駆動体1を回転させながら回転方向と直交する方向に移動させることもできる。特に、本実施形態では歯車を含む駆動力伝達部を用いており、被駆動体1の移動がより確実に行われる。
【0039】
上記第1及び第2の実施形態においては、一対の駆動力伝達部2A,2Bをいずれも被駆動体1の一面側に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば被駆動体1が板状に形成された部材である場合には、一対の駆動力伝達部2は、被駆動体1を挟んで、相対する二面に夫々接触して設けてもよい。また、被駆動体1が円筒状の部材である場合には、一方の駆動力伝達部2Aを被駆動体1の外周面に接触させ、他方の駆動力伝達部2Bを被駆動体1の内周面に接触させて設けるとよい。
【0040】
さらに、第1実施形態における駆動力伝達部と第2実施形態における駆動力伝達部とを組み合わせて用いてもよい。例えば、一対の駆動力伝達部のうちの一方がフリーローラを含む駆動力伝達部であり、他方が歯車を含む駆動力伝達部であってもよい。この場合においては、被駆動体1の一方の面にフリーローラを含む駆動力伝達部を配置し、被駆動体1の他方の面に歯車を含む駆動力伝達部を配置するのが好ましい。もちろん、被駆動体1の前記他方の面の所定領域には前記歯車に噛み合う複数の歯を形成する。
【0041】
次に、実施形態による多方向駆動装置の応用例を説明する。
図9は、図8に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図で、図10はその平面図であり、車両に応用したものである。
図10に示すように、車両本体16には、その前後に被駆動体1としての四つの車軸17が設けられており、各車軸17の側端部には、車輪18が設けられている。この車輪18は、例えばその外周面に車軸17の中心軸10に平行な方向には回転自由であり、中心軸10に直交方向には回転が規制されたフリーローラ19を周方向に一定間隔で設けたものである(図9参照)。また、各車軸17の車両本体16側には外周面を車軸17の外周面に接触させて夫々図8に示す駆動力伝達部2A,2Bが設けられている。
【0042】
上述したように、車輪18の外周面に設けたフリーローラ19は、車軸17の中心軸10方向には回転自由であり、中心軸10に直交方向(車軸17の回転方向)には回転が規制されているので、駆動力伝達部2Bの駆動により車軸17が回転された場合には、車輪18のフリーローラ19は回転しない。したがって、フリーローラ19と地面との間に摩擦力が発生し、該摩擦力により車両は前後進する。また、駆動力伝達部2Aを駆動して車軸17をその中心軸方向に移動し、左右の車輪18の間隔を可変することができるので、道幅が広い場合には、図11に示すように車軸17を伸ばして車輪間隔を広げ、安定走行を可能にし、道幅が狭いときには、図10に示すように車軸17を縮めて車輪間隔を狭め走行を可能にすることができる。
【0043】
図12は、図7に示す多方向駆動装置の応用例を示す正面図であり、キャタピラに応用したものである。
この場合、複数の駆動力伝達部2Aを同期して駆動することにより、被駆動体1としてのキャタピラ20を回転されて車両を前後進させることができる。また、複数の駆動力伝達部2Bを同期して駆動することにより、左右のキャタピラ間隔を縮めたり、広げたりすることができる。
【0044】
以上、本発明の各実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…被駆動体
2A…一方の駆動力伝達部
2B…他方の駆動力伝達部
3…制御部
4…一方の駆動力伝達部の軸
5…他方の駆動力伝達部の軸
6…駆動力伝達部の本体部
9…フリーローラ
10…円筒状又は円柱状の被駆動体の中心軸
11A…一方の平歯車の歯
11B…他方の平歯車の歯
12A…一方の平歯車
12B…他方の平歯車
13…第1の歯
14…第2の歯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体と、
前記被駆動体の表面の一部に接触して配置され、該被駆動体を第1の方向に駆動する第1の駆動力伝達部と、
前記被駆動体の表面の他の一部に接触して配置され、該被駆動体を前記第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2の駆動力伝達部と、
を備え、
前記被駆動体と前記第1の駆動力伝達部とは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であるとともに、前記被駆動体と前記第2の駆動力伝達部とは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である、多方向駆動装置。
【請求項2】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方は、前記被駆動体を駆動する方向の回転が規制された複数のフリーローラを含み、該複数のフリーローラが前記被駆動体の表面に接触して配置される、請求項1に記載の多方向駆動装置。
【請求項3】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方は、前記被駆動体の表面に形成された歯と噛み合う歯車を含み、該歯車と前記被駆動体とが該歯車の歯すじ方向に相互に変位可能である、請求項1に記載の多方向駆動装置。
【請求項4】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の回転数と回転方向とを制御する制御部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多方向駆動装置。
【請求項1】
被駆動体と、
前記被駆動体の表面の一部に接触して配置され、該被駆動体を第1の方向に駆動する第1の駆動力伝達部と、
前記被駆動体の表面の他の一部に接触して配置され、該被駆動体を前記第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2の駆動力伝達部と、
を備え、
前記被駆動体と前記第1の駆動力伝達部とは前記第1の方向以外の方向に相互に変位可能であるとともに、前記被駆動体と前記第2の駆動力伝達部とは前記第2の方向以外の方向に相互に変位可能である、多方向駆動装置。
【請求項2】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方は、前記被駆動体を駆動する方向の回転が規制された複数のフリーローラを含み、該複数のフリーローラが前記被駆動体の表面に接触して配置される、請求項1に記載の多方向駆動装置。
【請求項3】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の少なくとも一方は、前記被駆動体の表面に形成された歯と噛み合う歯車を含み、該歯車と前記被駆動体とが該歯車の歯すじ方向に相互に変位可能である、請求項1に記載の多方向駆動装置。
【請求項4】
前記第1の駆動力伝達部及び前記第2の駆動力伝達部の回転数と回転方向とを制御する制御部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多方向駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−196487(P2011−196487A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65262(P2010−65262)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】
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