説明

多方弁

【課題】安価な製造コストによるコスト削減を実現するとともに、部品交換をほとんど必要とせず、さらには、弁本体以外の部品共通化を可能にした多方弁の提供を図る。
【解決手段】一または二以上の流入口と一の流出口を有する弁本体と、該弁本体に装着される回転シャフトと、導入口を備え弁本体の流入口に接続されるカップリングからなる多方弁において、回転シャフトの所定部位には凸状のカムが設けられ、かつ、カップリング内から弁本体の流入口を介して回転シャフトまでの中空部内には、湾曲した形状を有する弁と、該弁の湾曲した外側面に接触する状態で嵌合可能な形状を有する弁保持部材と、弁と弁保持部材とを嵌合した状態で密着させる機能を有するバネと、一端が弁に固定され他端に設けられたカム接触部に回転シャフトに設けられたカムからの押圧が加わることで弁と弁保持部材とが密着状態から離される機能を有する弁シャフトと、を具備する弁組品が配置される構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多方弁に関し、詳しくは、シャフトの回転角によって流出口の閉鎖あるいは選択された流入口側の弁の開放・閉鎖を行う機能を備えた多方弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水や空気等の流体の配管系においては、通常、流体の流入及び遮断を行うための弁が設置される。かかる弁の構造として、回転シャフトを回転することによって該シャフトの先端に備えられた円筒状あるいは略球状等のボールを所定の位置まで回転させ、流入口と流出口とを連通させて流体を流入させたり、あるいは、その逆に流入口と流出口との連通を遮断させて流体の流入を遮断する構造のものが広く採用されている。
【0003】
かかる従来の弁構造によると、弁本体におけるボールを収容する空間とボールのテーパー部を高精度に加工しなければならないという問題があった。しかも、該ボールの製造には切削加工が用いられており、製造コストの高騰を招いていた。また、ボールを配置・支持するためのシートパッキンがボールの摺動によって磨耗するため、頻繁に部品交換をする必要があった。さらには、流路の切り替え方向の数によって主要部品であるボールや弁本体をはじめ種々の部品が異なってしまうため、部品の共通化が図れず、切り替え方向の数に従った各専用の部品作成が必要であるといった問題があった。
【特許文献1】特開平6−213338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点に鑑み、本発明は、安価な製造コストによるコスト削減を実現するとともに、部品交換をほとんど必要とせず、さらには、弁本体以外の部品共通化を可能にした多方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、一または二以上の流入口と一の流出口を有する弁本体と、該弁本体に装着される回転シャフトと、導入口を備え弁本体の流入口に接続されるカップリングからなる多方弁において、回転シャフトの所定部位には凸状のカムが設けられ、かつ、カップリング内から弁本体の流入口を介して回転シャフトまでの中空部内には、湾曲した形状を有する弁と、該弁の湾曲した外側面に接触する状態で嵌合可能な形状を有する弁保持部材と、弁と弁保持部材とを嵌合した状態で密着させる機能を有するバネと、一端が弁に固定され他端に設けられたカム接触部に回転シャフトに設けられたカムからの押圧が加わることで弁と弁保持部材とが密着状態から離される機能を有する弁シャフトと、を具備する弁組品が配置されることで、回転シャフトの回転角によって流出口の閉鎖あるいは選択された弁の開放・閉鎖を行う機能を備えた構成を採用する。
【0006】
また、本発明は、前記カップリング及び弁組品に替えて閉鎖用封止パッキンを配置することが可能な構造を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる多方弁によれば、従来の弁構造において必要であった高価な切削加工により製造されるボールを必要とせず、安価な成型加工により製造される部品及び汎用部品によって構成されていることにより、製造コストの削減を実現することが可能となる。
【0008】
また、本発明にかかる多方弁によれば、従来のボールのような摺動部品を使用しないため、該摺動部品に接触している部品の磨耗といった問題は生じず、部品交換の回数低減を実現するとともに、コスト削減に資するといった効果も奏する。
【0009】
さらに、本発明にかかる多方弁によれば、弁本体以外の部品の共通化を実現したことにより、流路の切り替え方向の数が増減した場合であっても、弁本体のみ部品が異なるだけであって専用の部品を必要としないため、各専用部品をそろえる必要がなくなり、コストの削減及び取付・メンテナンス作業の効率化に資するといった効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる多方弁1は、安価な成型加工による部品と汎用部品によって弁組品4を構成させるとともに、弁本体2に装着される回転シャフト3の所定部位に凸状のカム3bを設けることで、回転シャフト3の回転角によりカム3bからの弁組品6の一部品を構成する弁シャフト10におけるカム接触部10bへの押圧を加減して、流出口の閉鎖あるいは選択された弁の開放・閉鎖を行うようにしたことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる多方弁1の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1及び図2は、本発明にかかる多方弁1の実施形態を示しており、図1は部品構成を示す分解斜視図であり、図2は本発明にかかる多方弁1の実施形態を示す側断面図である。該多方弁1は、一または二以上の流入口2aと一の流出口2bを有する弁本体2と、該弁本体2に装着される回転シャフト3と、導入口4aを備え弁本体2の流入口2aに接続されるカップリング4と、内部に配置される弁組品6とから構成されている。
【0012】
弁本体2の内部は中空となっており、流入口2aから流入した流体が流出口2bへ流出されるための流路並びに回転シャフト3及び弁組品6が配置される空間を形成する。弁本体2における流出口2bの反対側には回転シャフト挿入孔2cが設けられ、回転シャフト3は該回転シャフト挿入孔2cから流入口2bへ向けて装着される。
【0013】
回転シャフト3は、上端に操作部3a及び下端に位置決め用突起3cを設けた構造となっている。該操作部3aは回転シャフト3を回転させる際の操作摘みとして機能し、また、位置決め用突起3cは弁本体2の流出口2b内に挿入されて回転シャフト3の位置決めを行い横からの流体圧による中心軸のブレを防止する機能として働く。さらに、回転シャフト3における弁本体2の回転シャフト挿入孔2c内に位置する所定の箇所にOリング溝3dが形成され、該Oリング溝3dには回転シャフト挿入孔2cからの流体漏れを防止するためのOリングRが装着される。そしてまた、回転シャフト3には、弁本体2に装着された状態で該弁本体2の中空部に位置する箇所の所定部位に凸状のカム3bが設けられている。図3は、かかる回転シャフトの形状の一例を示す斜視図である。
【0014】
カップリング4には、流体を弁本体2へ流入させるための導入口4aが備えられるとともに、後述の弁保持部材8をカップリング4内に嵌合させる際の位置決め溝4bが形成され、弁本体2の流入口2aを閉塞するように接続される。このとき、図面ではカップリングナット5によってカップリング4が流入口2aに接続される構成を示しているが、かかる構成に限定するものではなく、例えばカップリング4自体が流入口2aへの接続機構を備える構成も考えられる。また、カップリング4に備えられる導入口4aの位置・形状については特に限定はなく、図面で示されているような位置・形状に限られない。
【0015】
尚、カップリング4を弁本体2の流入口2aに接続する場合に、該カップリング4と流入口2aとの間に流体漏れを防止するためのパッキンPが配置される。
【0016】
カップリング4内から弁本体2の流入口2aを介して回転シャフト3までの中空部内には、湾曲した形状を有する弁7と、該弁7の湾曲した外側面に接触する状態で嵌合可能な形状を有する弁保持部材8と、弁7と弁保持部材8とを嵌合した状態で密着させる機能を有するバネ9と、一端が弁7に固定され他端に設けられたカム接触部10bに回転シャフト3に設けられたカム3bからの押圧が加わることで弁7と弁保持部材8とが密着状態から離される機能を有する弁シャフト10と、を具備する弁組品6が配置される。図4は、かかる弁組品6の部品構成を示す分解斜視図であり、図4(a)は弁7側から見た斜視図を示し、図4(b)は弁シャフト10側から見た斜視図を示している。
【0017】
弁7は、その材質としてゴムや樹脂等の不透水性の弾性部材からなり、該弁7の中心には弁シャフト挿入孔7aが形成されている。そしてまた、弁7は湾曲した形状に成型されるとともに、該弁7を保持する弁保持部材8は弁7の湾曲した外側面に接触する状態で嵌合可能な形状に成型されている。かかる形状とすることで、弁7側から流体圧が掛かった場合に、外側面を弁保持部材8で支持された弁7の湾曲した内側面でその圧力を受けて、弁7と弁保持部材8とが接触する湾曲面で密着し、流体漏れを生じる恐れはない。
【0018】
弁保持部材8は、その中心に弁シャフト挿入孔8aが形成されるとともに、該弁シャフト挿入孔8aの周りに流体の流路8bが形成されている。また、弁保持部材8を前記カップリング4内に嵌合させる際の位置決め用凸部8cが形成されている。
【0019】
弁シャフト10は、弁7に形成された弁シャフト挿入孔7a及び弁保持部材8に形成された弁シャフト挿入孔8aに挿入される側の先端付近に弁固定溝10aが設けられ、その他端には回転シャフト3に設けられたカム3bと接触するカム接触部10bが設けられている。また、中心部付近には、バネ9を保持し又弁保持部材8を保持してスライドさせるための弁シャフト軸10cを有し、該弁シャフト軸10cとカム接触部10bとの間には、弁シャフト10を流入口2aから弁本体2内に挿入した際の位置決めを行って流体圧やカム3bからの押圧による中心軸のブレを防止する機能を有する位置決め用突起10dが設けられている構造となっている。
【0020】
尚、該カム接触部10bは、弁シャフト10がどの回転角度にあってもカム3bに連動して該弁シャフト10に動作を伝えられるよう、半球面構造とすることが望ましい。
【0021】
上記構造からなる弁シャフト10の一端から、まずバネ9が弁シャフト軸10cに挿入され、位置決め用突起10dの位置まで到達される。すなわち、該位置決め用突起10dは、バネ9の位置止めを行う機能をも有する。次に、弁保持部材8が同様に弁シャフト軸10cまで挿入され、先に挿入したバネ9と接触することとなる。最後に、弁7を挿入して弁固定溝10aに嵌めることによって位置が固定される。このようにして一組の弁組品6が完成する
【0022】
上記の通り構成される多方弁1について、カップリング4、カップリングナット5、バネ9、パッキンP、OリングRは汎用部品を転用すればよく、本発明にかかる多方弁1にとって独自の構成部品は、弁本体2、回転シャフト3、弁6、弁保持部材7、弁シャフト10だけである。しかしながら、かかる独自の構成部品についても一般的な成型部品であって、安価に成型できるとともに特殊な加工処理や高精度成型を必要とするものではなく、また、流入口2aの数が増減しても全く同じ部品を使用することが可能であるため、製造コストの削減に資する。
【0023】
次に、上記構成からなる多方弁1の動作状態について説明する。図5は、本発明にかかる多方弁1の動作状態を示す平断面図である。カップリング4内から弁本体2の流入口2aを介して回転シャフト3までの中空部内に配置されている弁組品6は、通常、バネ9の押す力の働きによって、弁7と弁保持部材8とが密着している状態にある。これが、カム接触部10bからの押圧が加えられることによってバネ9が縮んで、弁7と弁保持部材8とが密着状態から離されることとなる。すなわち、弁保持部材8は、カップリング4内に嵌合される際に、位置決め用凸部8cとカップリング4に形成された位置決め溝4bとが合わさることによって位置が固定される。したがって、カム接触部10bからの押圧が加えられた場合に、該弁保持部材8は固定されたまま移動せず、弁シャフト10が弁保持部材8に形成された弁シャフト挿入孔8a内をスライドしてカップリング4方向へ移動する。このとき、弁固定溝10aに固定された弁7も移動することとなって、弁7と弁保持部材8とが密着状態から離される。
【0024】
上記弁シャフト10をスライドさせる働きが、回転シャフト3の機能である。すなわち、該回転シャフト3には凸状のカム3bが設けられており、操作部3aを回転させて回転シャフト3の位置を合わせることにより、該カム3bがカム接触部10bに対する押圧を加減して、弁シャフト10のスライドを行う。
【0025】
このようにして、回転シャフト3を操作して一方の弁7を開放することにより、カップリング4に備えられた導入口4aから該カップリング4内に流入した流体は、密着状態が離された弁7と弁保持部材8との隙間を通って流入口2aから弁本体2内に入り込み、流出口2bへと流れ出ることとなる。逆に、他方の弁7は閉鎖されており、導入口4aからカップリング4内に流入した流体は、密着状態にある弁7と弁保持部材8によって弁本体2内に入り込むことはない。このとき、弁7は湾曲形状であって、その湾曲面に対して流体圧が略垂直に掛かることとなるため、弁7と弁保持部材8とは完全に密着状態にある。
【0026】
以上、図面においては、弁本体2における流入口2aを二箇所とした場合を示しているが、該流入口2aの数に限定はない。複数の流入口2aを設ける場合には、回転シャフト3の周囲において、その中心軸から放射状に弁組品6を配置することによって可能となる。その際、流入口2aの数に合わせた弁本体2をそろえる必要があるが、その他の構成部品は同じものを使用することができる。
【0027】
また、弁本体2に複数の流入口2aを設けた場合に、使用しない流入口2aにおいて、カップリング4及び弁組品6に替えて閉鎖用封止パッキン11を配置することにより、実際に使用する流入口2aの数を減らす態様も考え得る。図6は、かかる実施形態を示す分解斜視図である。かかる構造を採用することにより、流入口2aの数に合わせた弁本体2を作成することなく、あらかじめ複数の流入口2aを持つ弁本体2を用意し、そのうち使用する流入口2aにのみカップリング4及び弁組品6を装着して、使用しない流入口2aには前記閉鎖用封止パッキン11を配置することによって、一の弁本体2で流入口2aの必要数に応じた対応ができ、弁本体2自体の汎用化を図ることが可能となる。
【0028】
尚、図面では、前記閉鎖用封止パッキン11をカップリングナット5によって配置・装着する態様を示しているが、かかる態様には限定されず、例えば上記カップリング4自体が流入口2aへの接続機構を備える場合には、該カップリング4によって閉鎖用封止パッキン11を流入口2aに配置・装着したり、該閉鎖用封止パッキン11自体に流入口2aへの接続機構を備えさせる態様も考え得る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、浄水器や浴水循環濾過装置等、液体や気体といった流体の配管系に使用される多方弁であって、該配管を必要とする様々な用途に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明かかる多方弁の部品構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明にかかる多方弁の実施形態を示す側断面図である。
【図3】本発明にかかる多方弁に装着される回転シャフトの形状を示す斜視図である。
【図4】本発明の多方弁における弁組品の部品構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明にかかる多方弁の動作状態を示す平断面図である。
【図6】本発明にかかる多方弁の第二の実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 多方弁
2 弁本体
2a 流入口
2b 流出口
2c 回転シャフト挿入孔
3 回転シャフト
3a 操作部
3b カム
3c 位置決め用突起
3d Oリング溝
4 カップリング
4a 導入口
4b 位置決め溝
5 カップリングナット
6 弁組品
7 弁
7a 弁シャフト取付孔
8 弁保持部材
8a 弁シャフト挿入孔
8b 流路
8c 位置決め用凸部
9 バネ
10 弁シャフト
10a 弁固定溝
10b カム接触部
10c 弁シャフト軸
10d 位置決め用突起
11 閉鎖用封止パッキン
P パッキン
R Oリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または二以上の流入口と一の流出口を有する弁本体と、該弁本体に装着される回転シャフトと、導入口を備え流入口に接続されるカップリングからなる多方弁において、回転シャフトの所定部位には凸状のカムが設けられ、かつ、カップリング内から弁本体の流入口を介して回転シャフトまでの中空部内には、湾曲した形状を有する弁と、該弁の湾曲した外側面に接触する状態で嵌合可能な形状を有する弁保持部材と、弁と弁保持部材とを嵌合した状態で密着させる機能を有するバネと、一端が弁に固定され他端に設けられたカム接触部に回転シャフトに設けられたカムからの押圧が加わることで弁と弁保持部材とが密着状態から離される機能を有する弁シャフトと、を具備する弁組品が配置されることで、回転シャフトの回転角によって流出口の閉鎖あるいは選択された弁の開放・閉鎖を行う機能を備えたことを特徴とする多方弁。
【請求項2】
前記カップリング及び弁組品に替えて閉鎖用封止パッキンを配置することが可能な構造を有することを特徴とする請求項1に記載の多方弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−125451(P2006−125451A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311850(P2004−311850)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(501415523)株式会社ディード (11)
【出願人】(000209027)瀧川株式会社 (3)
【Fターム(参考)】