説明

多方路発着中継装置

【課題】多方路を有する通信ノードにおいてフラッディングを行うとき、各入方路から到着するパケットを同一の緩衝記憶装置に収容し経路選択の待合せを行わせると、緩衝記憶装置溢れに対し入方路間の独立性が生かされずフラッディングの高信頼性が失われるため、異なる入方路から到着するパケットの損失を統計的に独立に保つことが課題となる。
【解決手段】本発明は上記の課題を、入方路毎に経路選択装置を設置することにより待合せを行わせず、且つ出方路毎に緩衝記憶装置およびフラッディングに特有な遅れて到着する同一パケットを廃棄するための装置を設置し、着信側出方路における該緩衝記憶装置に対してはパケットが溢れない規模の記憶容量を具備させる手段により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッディングを行うパケット通信に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッディングは、主として情報の収集(discovering)や広告(advertising)のために、IP網ではルーターを立ち上げた際に実行され、ルーターをもたないアドホックネットワークやセンサネットワークでは各通信端末の間で頻繁に実行される。アドホックネットワークやセンサネットワークは無線通信を前提とするため、方路の概念が無く、ブロードキャストがフラッディングの実行形態となる。
【0003】
一方、我国では2050年頃から3人に1人が65歳以上になると推計されており、この状況の下では、年金制度の変質により高齢者に経済的な配慮が必要となるため、近隣地域において、高齢者に対する多種多様なデリバリー・サービスや、高齢者宅に配備する看護・介護・介助用のセンサおよびアクチュエータ等をネットワーク経由で管理、遠隔操作する多種多様なネットワーク・サービスを無料で提供する近隣網(The Home Interlinking Network)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】高瀬柔郎,"近隣網内パケット通信方式",日本国公開特許公報,公開番号:特開2005−229567,公開日:2005年08月25日。
【0005】
【特許文献2】高瀬柔郎,"近隣網接続装置", 特許出願2006−84696(平18.3.27)。
【0006】
【非特許文献1】高瀬柔郎,"近隣網における損失率について −フラッディングのために−",電子情報通信学会論文誌B,Vol. J88-B, No. 8, pp.1393−1401,Aug. 2005。
【0007】
【非特許文献2】高瀬柔郎,"近隣網アーキテクチャ −トポロジを不変に保つ網接続装置−",電子情報通信学会技術報告,IN2004−52,pp. 43−48,Sep. 2004。
【0008】
【非特許文献3】高瀬柔郎,"近隣網における経路選択方式 −ソースルーチングをベースとして−",電子情報通信学会技術報告,IN2004−53,pp. 49−54,Sep. 2004。
【0009】
近隣網とは、近隣地域における各家庭、事業所、および公的機関等がノードとなり、各ノードが所有する種々のデータ発着信装置(以下では通信端末と呼ぶことにする)を、網接続装置を介して有線リンクまたは無線リンクで直接連結し、IPルータや管理・制御を行うためのサーバ等の設備投資を行わず、各ノードが通信機能を無償で提供し合うことにより、課金を必要としない通信を実現する通信網である。
【0010】
ここで無線リンクとは、レーザビームや赤外線ビームの他に、UWB(Ultra Wide Band)技術として研究開発されている符号分割多重(Code Division Multiple Access)または時間ホッピング多重(Time Hopping Multiple Access)を用い隣接ノードとの間でGHz帯域において実現する方路を指す。
【0011】
近隣網では、各ノードが多方路を有しており、ルーチング情報の収集や広告にフラッディングを用いるだけではなく、停電したノードは非常用バッテリーの負荷を軽減するために経路選択を中止しフラッディングに切り替える。
【0012】
今後、近隣網に限らず、各ノードが多方路をもつパケット通信網が構築されるときに、フラッディングを意識したノード構成が必要となる。
【0013】
フラッディングでは、ノードが同一パケットのコピーを各出方路から退去させるため、異なる経路を経由した同一のパケットが、ノードの各入方路から到着する事態を生ずる。このため、パケットが、転送途中に特定の中継ノードで廃棄されても、同じパケットが他の経路で到着することが可能となり、通信の信頼性が高まる。
【0014】
反面、フラッディングでは、ノードの出方路から退去したパケットがノードの入方路から到着する可能性(ルーチングループ)や、同一パケットが長時間にわたり網内に滞留する可能性がある。これらの問題は、各ノードにおいて、遅れて到着する同一パケットを廃棄する(以下では同一後着パケット廃棄と称する)ことにより解決することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ハードウェアを簡潔にするため、各入方路から到着するパケットを同一の緩衝記憶装置に収容し、経路選択や同一後着パケット廃棄の待合せを行わせると、緩衝記憶装置からパケットが溢れるときには、各入方路から到着するパケットが同じ溢れを被ることになり、入方路間の独立性が生かされずフラッディングの高信頼性が失われる。
【0016】
フラッディングが有する高信頼性を保持するためには、異なる入方路から到着するパケットの損失を統計的に独立に保つことが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記の課題を、入方路毎に経路選択装置を設置することにより待合せを行わせず、且つ出方路毎に緩衝記憶装置およびフラッディングに特有な遅れて到着する同一パケットを廃棄するための装置を設置し、着信するトラヒック量はノードを通過するトラヒック量に比し少ないので、着信側出方路における該緩衝記憶装置に対し緩衝記憶装置溢れを発生させない規模の記憶容量を具備させる請求項1記載の手段によって解決する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の効果をもつ。
【0019】
請求項1記載の多方路発着中継装置を用いることにより、第一に、入方路毎に経路選択を行い、出方路毎に同一の後着パケットを廃棄するので、先着パケットとの照合を入方路で行う必要がなく、先着パケットとの照合を出方路毎に行えばよく、異なる出方路との間で該照合を行う必要がなくなるので、処理時間が短縮される効果をもつ。
【0020】
請求項1記載の多方路発着中継装置を用いることにより、第ニに、出方路毎にパケットが退去の順番を待合せ、同一の後着パケット廃棄の処理を受けるので、バッファ溢れに起因するパケット損の事象が、異なる出方路の間で統計的に独立となる。1ノードがN本の出方路をもつときに各出方路におけるバッファ溢れによるパケット廃棄率をd1、d2、・・・、dNと置くと、上記の独立性によりノードあたりのパケット損失率はd1×d2×・・・×dNとなり、各廃棄率の値は1よりも小さいのでそのN乗積は著しく小さな値となる効果をもつ(数値例:N=4のときに各出方路におけるパケット廃棄率をd1=d2=d3=d4=10- 3 に確保しさえすれば、ノードあたりのパケット損失率として10-1 2 を達成することができる)。
【0021】
請求項1記載の多方路発着中継装置を用いることにより、第三に、複数出方路のうちで特定の出方路から退去するパケットの数が増加し、その出方路における待合せ時間が増大しても、他の出方路から退去するパケットの待合せ時間には全く影響しない分散処理となり、ノード全体のスループットを向上させる効果をもつ。
【0022】
請求項2記載の多方路発着中継装置を近隣網に用いることにより、停電やブレーカ遮断が発生した時に該多方路発着中継装置内の経路選択機能を休止させてフラッディングを行い、非常用バッテリーの電力消費を抑制しながら通信経路を保持させるため、上記の効果に加え、長時間の停電に対しても通信路を変えずに保持し続け得る効果をもつ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するために必要なノード装置に関する形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明における多方路発着中継装置の適用環境に関する一実施例の構成略図である。図1には請求項1の特徴を記述する構成部分だけを記す。該構成部分は網接続装置1および通信端末2からなる。多方路発着中継装置は網接続装置1内に内蔵される。該構成略図では、ノードが東西南北の4方路をもち、且つ同一ノード内の一台の通信端末2が網接続装置1に接続される実施例となっている。
【0025】
網接続装置1は、通信端末2と別電源であり、常時稼動である。
【0026】
網接続装置1の、東側入方路信号端子3、北側入方路信号端子5、西側入方路信号端子7、および南側入方路信号端子9には、それぞれの隣接ノードからパケット信号が到着し、発信パケット信号端子11には通信端末2の発信するパケット信号が加わる。
【0027】
網接続装置1の、東側出方路信号端子4、北側出方路信号端子6、西側出方路信号端子8、および南側出方路信号端子10から、それぞれの隣接ノードへパケット信号が退去し、着信パケット信号端子12から通信端末2へ着信するパケット信号が加わる。
【0028】
通信端末2は、ネットワークレイヤ以上の機能を有し、発信するパケットの信号を発信パケット信号端子11へ加え、着信するパケットの信号を着信パケット信号端子12から受ける。
【0029】
なお、同一ノード内の複数の通信端末が網接続装置1に接続される実施例では、図1中の信号端子11、12からなる組が他にも複数並列に設置され、各組の信号端子にそれぞれ加わる信号が管理され処理される。
【実施例2】
【0030】
図2は、本発明における多方路発着中継装置の使用方法に関する一実施例の構成略図である。該構成略図は、図1に記載した近隣網接続装置1の内部構成を、各方路が有線リンクであるか無線リンクであるかを問わず、該リンクを通過後に現れる電気信号に対して記述した略図である。図2には請求項1の特徴を記述する構成部分だけを記す。該構成部分は、多方路発着中継装置13、および東側、北側、西側、南側、発信、着信の各信号端子からなる。
【0031】
多方路発着中継装置13は、到着するパケットの宛先アドレスと、自身に焼込まれ(記憶させられ)ている自ノードの物理アドレス(以下では自アドレスと略す)とを照合し、合致していれば到着パケットを自ノードへ着信させ、合致しなければ隣接ノードへ転送する。また多方路発着中継装置13は、自ノードが発信するパケットを隣接ノードへ転送する。
【実施例3】
【0032】
図3は、本発明における多方路発着中継装置に関する一実施例の構成略図である。図3には請求項1の特徴を記述する構成部分だけを記す。該構成部分は以下の通りである。西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25。西側、南側、北側、東側、および発信側の各入方路緩衝記憶装置26、27、28、29、および30。西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35。西側、南側、北側、東側、および着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、および40。西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45。西側、南側、北側、東側の各フレーム生成回路46、47、48、49。
【0033】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、それぞれの到着パケット信号端子14、15、16、17に加わる到着パケット信号に対して、同期を取り、フレーム誤りを検出し、フレーム誤りが検出されたパケット信号を廃棄する。
【0034】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、同時に、パケット信号のヘッダ誤りを検出し、ヘッダ誤りが検出されたパケット信号を廃棄する。
【0035】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、同時に、パケット信号のパケットヘッダ領域からフラッディングを行うか否かを指示するフラッディング識別子を読出す。
【0036】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、フレーム誤りおよびヘッダ誤りを生じていないパケット信号から、プリアンブル、スタートデリミタ、およびフレーム誤り検出符号をそれぞれ削除した領域を到着パケットとして、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29へ送る。
【0037】
発信パケット信号端子11に加えられる発信パケット信号および該パケットのフラッディング識別子信号は、発信側入方路緩衝記憶装置30へ送られる。
【0038】
なお、西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25、および発信パケット信号端子11の各々と、入方路緩衝記憶装置26、27、28、29、30とをそれぞれ連結する線路は、それぞれパケット信号用および該パケットのフラッディング識別子信号用の2本を必要とするが、図3が煩雑となるのを避けるために区別せずそれぞれ1本の線路で描いてある。
【0039】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各入方路緩衝記憶装置26、27、28、29、および30は、それぞれ西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25、および発信パケット信号端子11から送られて来るパケットを一時記憶する。
【0040】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29に一時記憶されている到着パケットの宛先アドレスを読出し、各経路選択装置31、32、33、34に焼込まれている自アドレスと照合する。
【0041】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、該照合と前記のフラッディング識別子とを基に、該パケットに対する経路の選択を行う。
【0042】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、該選択に基づき、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29に一時記憶されている該パケットを廃棄するか、または該パケットを西側、南側、北側、東側または着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、および40へ送る。
【0043】
発信側経路選択装置35は、入方路緩衝記憶装置30に一時記憶されているパケットに対する経路の選択を行う。
【0044】
発信側経路選択装置35は、該選択に基づき、発信側入方路緩衝記憶装置30に一時記憶されている該パケットを西側、南側、北側、東側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39へ送る。
【0045】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、経路選択処理を終えたパケットの管理情報を廃棄する。
【0046】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、該パケットを西側、南側、北側、東側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39へ送る前に、該パケットへTTL(Time to live)指示値の書込みを行い、その後にヘッダチェックサムの処理を行う
【0047】
なお、西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35と西側、南側、北側、東側または着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、または40とを連結する各5本または4本の線路は、図3が煩雑となるのを避けるために途中で各1本の線路にまとめて描いてある。
【0048】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、または40は、西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35から送られて来る各パケット信号を一時記憶する。
【0049】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、または40は、西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35から、パケットが同時に送られて来るときにはそれらのパケット信号を同時に一時記憶する。
【0050】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、または40は、それぞれ西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45から、該パケットの廃棄指示があるまで該パケットを記憶し続ける。
【0051】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、それぞれの出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、40に一時記憶されているパケットを先着順に読出す。
【0052】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、読出したパケットのヘッダのうち、フレーム長領域、TTL領域、およびヘッダチェックサム領域を除いたヘッダ領域と、自身が一定時間だけ記憶保管している先着パケットの該領域とを照合する。該一定の記憶保管時間は予め設定される。
【0053】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、該照合で該領域が合致するときには、フラッディングに起因する同一パケットが先着していることがわかるため、それぞれの出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、40に一時記憶している該パケットの廃棄を指示する。
【0054】
また、西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、該照合で該領域が合致しないときには、該パケットが新着パケットであることがわかるため、該パケットの該領域を新たに一定時間だけ記憶保管する。
【0055】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、同時に、それぞれの出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、40に一時記憶されている該パケットを西側、南側、北側、東側の各フレーム生成回路46、47、48、49、および着信パケット信号端子12へ送り、出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、40内の該パケットを廃棄させる。
【0056】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45は、新着パケットのヘッダのうち、フレーム長領域、TTL領域、およびヘッダチェックサム領域を除いたヘッダ領域を、一定時間だけ記憶保管し、該記憶保管時間を超えた該領域は消去する。
【0057】
西側、南側、北側、東側の各フレーム生成回路46、47、48、49は、それぞれの同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44から送られて来るパケットに、プリアンブル、スタートデリミタ、およびフレーム誤り検出符号を付加した信号を、西側、南側、北側、東側の各退去パケット信号端子18、19、20、21へ加える。
【実施例4】
【0058】
図4は、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置の適用環境に関する一実施例の構成略図である。図4の構成では、請求項1に関する実施例1の図1における構成に請求項2の特徴を加えるために、網接続装置1が近隣網接続装置50に変更され、登録名信号端子51、ノード電圧信号端子52、および非常用バッテリー電圧信号端子53が追加されている。多方路発着中継装置は近隣網接続装置50内に内蔵される。
【0059】
以下では、図4中の該追加された構成についてだけを詳細に説明する。他の部分の構成については図1による実施例1の説明と同じである。
【0060】
近隣網接続装置50は、通信端末2と別電源であり、常時稼動であるが、停電やブレーカ遮断により自ノードへ電力が供給されなくなった時には、近隣網接続装置50の電源は自動的に非常用バッテリーに切り替えられる。
【0061】
近隣網接続装置50のノード電圧信号端子52には、自ノードに供給される電圧が加わる。近隣網接続装置50は、該電圧の監視により、自ノードへ電力が供給されているか否かを検知する。近隣網接続装置50の非常用バッテリー電圧信号端子53には、非常用バッテリーの電圧が加わる。近隣網接続装置50は、該電圧の監視により、非常用バッテリーが有効であるか否かを検知する。
【0062】
通信端末2は、ネットワークレイヤ以上の機能を有するが、停電やブレーカ遮断により自ノードへ電力が供給されなくなった時には稼動しない。
【0063】
通信端末2は、自ノードの登録名(セマンティックネーム)を近隣網接続装置50に書き込むためにも用いられ、このときには、通信端末が有するキーボードから登録名を入力することにより、該登録名信号を登録名信号端子51へ加える。
【0064】
近隣網接続装置50は、自ノードへ電力が供給されているときには通信端末2が稼動していると判断し、東側、北側、西側、南側の各入方路3、5、7、9から到着するパケットの宛先を照合し、宛先が自ノードであるときには、該パケット信号を着信パケット信号端子12へ接続する。また、宛先が自ノードでないときには経路選択結果に基づき、該パケット信号を東側、北側、西側、南側の出方路信号端子4、6、8、10へ接続する。
【0065】
近隣網接続装置50は、自ノードへ電力が供給されないときには通信端末2が稼動していないと判断し、東側、北側、西側、南側の各入方路3、5、7、9から到着するパケット信号を該入方路側の出方路を除く他のすべての出方路へ接続する(フラッディング)。
【実施例5】
【0066】
図5は、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置の使用方法に関する一実施例の構成略図である。図5の構成では、請求項1に関する実施例2の図2における構成に請求項2の特徴を加えるために、登録名信号端子51、ノード電圧信号端子52、非常用バッテリー電圧信号端子53、および東側、北側、西側、南側の各入方路スイッチ54、55、56、57が追加されている。
【0067】
以下では、図5中の該追加された構成についてだけを詳細に説明する。他の部分の構成については図2による実施例2の説明と同じである。
【0068】
図5には、非常用バッテリーが有効であるときの入方路スイッチ54、55、56、57の接続状態が記されている。長時間にわたる停電や長時間のブレーカ遮断により、非常用バッテリーの電流容量が消費され尽くすと、非常用バッテリー電圧信号端子53に加わる該バッテリーの供給電圧が低下し、各入方路スイッチ54、55、56、57は図5中とは反対の接続状態になり、東側入方路信号端子3と西側出方路信号端子8、西側入方路信号端子7と東側出方路信号端子4、北側入方路信号端子5と南側出方路信号端子10、および南側入方路信号端子9と北側出方路信号端子6、がそれぞれ連結される。
【0069】
なお、図5は、各入方路が対向する出方路をもつ実施例であるが、対向する出方路をもたない入方路が存在する実施例においては、非常用バッテリーの電流容量が消費され尽くすと、該入方路から到着するパケットは廃棄される。また、入方路の数が4を超える実施例においては、多方路発着中継装置13の端子14、15、16、17、18、19、20、21に加えて更に端子が増設される。
【0070】
多方路発着中継装置13、および東側、北側、西側、南側の各入方路スイッチ54、55、56、57は、ノードに供給される電力に加え、該電力の供給が途絶えたときに非常用バッテリーを電源とする。
【0071】
多方路発着中継装置13は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧を監視することにより停電やブレーカ遮断を検知する。
【0072】
多方路発着中継装置13は、登録名信号端子51に加わる自ノードの登録名信号を記憶しておき、到着するパケットが宛名データを積載するパケットであるときには該宛名データと該登録名とを照合し、また宛名データを積載しないパケットであるときには該パケットの宛先アドレスと多方路発着中継装置13に焼込まれている自アドレスとを照合する。
【実施例6】
【0073】
図6は、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置に関する一実施例の構成略図である。図6の構成では、請求項1に関する実施例3の図3における構成に請求項2の特徴を加えるために、登録名信号端子51、ノード電圧信号端子52、および隣間パケット生成装置58が追加されている。
【0074】
以下では、図6中の該追加された構成についてだけを詳細に説明する。他の部分の構成については図3による実施例3の説明と同じである。
【0075】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、それぞれの到着パケット信号のパケットヘッダ領域からパケット種別識別子を読出す。なお、本発明において使用するパケット種別識別子の実施例については、前記の特許文献1"近隣網内パケット通信方式"に記載されているので説明を省略する。
【0076】
西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25は、到着パケットと共に、前記のパケット種別識別子を、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29へ送る。該パケット種別識別子はパケット管理情報として一時記憶する。
【0077】
西側、南側、北側、東側の各入方路緩衝記憶装置26、27、28、29は、送られてくる該パケット種別識別子をパケット管理情報として一時記憶する。
【0078】
隣間パケット生成装置58は、自ノードアドレスを隣接ノードへ通知するために、自ノードアドレスを積載した隣間パケットを生成し、定期的に発信側入方路緩衝記憶装置30へ送る。隣間パケットの実施例については、前記の特許文献1"近隣網内パケット通信方式"に記載されているので説明を省略する。
【0079】
隣間パケット生成装置58は、同時に、隣間パケット識別子を発信側入方路緩衝記憶装置30へパケット管理情報として送る。
【0080】
発信パケット信号端子11に加えられる発信パケット信号および該パケットの種別識別子信号は、発信側入方路緩衝記憶装置30へ送られる。
【0081】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各入方路緩衝記憶装置26、27、28、29、および30は、それぞれ西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25、隣間パケット生成装置58、および発信パケット信号端子11から送られて来るパケットおよび該パケットの種別識別子を一時記憶する。パケット種別識別子はパケットの管理情報として使用する。
【0082】
発信側入方路緩衝記憶装置30は、隣間パケット生成装置58から隣間パケットが、また発信パケット信号端子11から発信パケットが、同時に送られて来たときには両パケットを同時に一時記憶する。
【0083】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29、および30が一時記憶するパケット管理情報を共有する。
【0084】
また、西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、登録名信号端子51に加わる自ノードの登録名信号を記憶する。
【0085】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29に書き込まれる到着パケットが宛名データを積載するパケットであるときには該宛名データを読出し前記の自ノード登録名と照合し、また該パケットが宛名データを積載しないパケットであるときには該パケットの宛先アドレスを読出しそれぞれの経路選択装置31、32、33、34に焼込まれている自アドレスと照合する。
【0086】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、該照合と前記のパケット管理情報とを基に、該パケットに対する経路の選択を行う。
【0087】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、該選択に基づき、それぞれの入方路緩衝記憶装置26、27、28、29に一時記憶されている当該パケットを廃棄するか、または該パケットを西側、南側、北側、東側、着信側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39、40へ送る。
【0088】
発信側経路選択装置35は、予め定められているパケット種別の優先順に、入方路緩衝記憶装置30に一時記憶されているパケットに対する経路の選択を行う。
【0089】
発信側経路選択装置35は、該選択に基づき、発信側入方路緩衝記憶装置30に一時記憶されている当該パケットを西側、南側、北側、東側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39へ送る。
【0090】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、経路選択処理を終えたパケットの管理情報を廃棄する。
【0091】
西側、南側、北側、東側、および発信側の各経路選択装置31、32、33、34、および35は、該パケットを西側、南側、北側、東側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39へ送る前に、該パケットへスタックポインタ指示値の書込みや自アドレスの書込みを行い、その後にヘッダチェックサムの処理を行う。
【0092】
隣間パケット生成装置58は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するために自身の隣間パケット生成機能を停止する。
【0093】
西側、南側、北側、東側の各入方路緩衝記憶装置26、27、28、29は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するために自身の緩衝記憶機能を停止し、西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25から送られて来る各パケット信号をそれぞれ西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34へバイパスさせる。
【0094】
発信側入方路緩衝記憶装置30は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するために自身の緩衝記憶機能を停止する。
【0095】
西側、南側、北側、東側の各経路選択装置31、32、33、34は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するために自身の経路選択機能を停止し、西側、南側、北側、東側の各同期/誤り検出回路22、23、24、25から送られて来る各パケット信号を西側、南側、北側、東側の各出方路緩衝記憶装置36、37、38、39へ分岐(フラッディング)させる。
【0096】
発信側経路選択装置35は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するために自身の経路選択機能を停止する。
【0097】
西側、南側、北側、東側、および着信側の各同一後着パケット廃棄装置41、42、43、44、および45については、図3で使用するパケットヘッダ内のTTL領域が、図4で使用するパケットヘッダ内のスタックポインタ領域へ名称変更される。
【0098】
なお、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置が使用するスタックポインタについては、前記の特許文献1にインクリメント型が、また特許文献2にデクリメント型がそれぞれ記載されており、スタックポインタ自体が果たす役割は同じであるので、説明を省略する。
【0099】
着信側出方路緩衝記憶装置40および着信側同一後着パケット廃棄装置45は、ノード電圧信号端子52に加わるノード電圧信号により停電やブレーカ遮断を検知すると、非常用バッテリーの負荷を軽減するためにそれぞれの機能を停止する。
【0100】
なお、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置が使用する経路選択装置の実施例については、前記、特許文献2記載の実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0101】
また、本発明における近隣網内の多方路発着中継装置が使用するパケットの実施例については、前記、特許文献1記載の実施例と同じであるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】多方路発着中継装置の適用環境を示した説明図である(実施例1)。
【図2】多方路発着中継装置の使用方法を示した説明図である(実施例1)。
【図3】多方路発着中継装置の実施方法を示した説明図である(実施例1)。
【図4】近隣網における多方路発着中継装置の適用環境を示した説明図である(実施例2)。
【図5】近隣網における多方路発着中継装置の使用方法を示した説明図である(実施例2)。
【図6】近隣網における多方路発着中継装置の実施方法を示した説明図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0103】
1 網接続装置
2 通信端末
3 東側入方路信号端子
4 東側出方路信号端子
5 北側入方路信号端子
6 北側出方路信号端子
7 西側入方路信号端子
8 西側出方路信号端子
9 南側入方路信号端子
10 南側出方路信号端子
11 発信パケット信号端子
12 着信パケット信号端子
13 多方路発着中継装置
14 西側到着パケット信号端子
15 南側到着パケット信号端子
16 北側到着パケット信号端子
17 東側到着パケット信号端子
18 西側退去パケット信号端子
19 南側退去パケット信号端子
20 北側退去パケット信号端子
21 東側退去パケット信号端子
22 西側同期/誤り検出回路
23 南側同期/誤り検出回路
24 北側同期/誤り検出回路
25 東側同期/誤り検出回路
26 西側入方路緩衝記憶装置
27 南側入方路緩衝記憶装置
28 北側入方路緩衝記憶装置
29 東側入方路緩衝記憶装置
30 発信側入方路緩衝記憶装置
31 西側経路選択装置
32 南側経路選択装置
33 北側経路選択装置
34 東側経路選択装置
35 発信側経路選択装置
36 西側出方路緩衝記憶装置
37 南側出方路緩衝記憶装置
38 北側出方路緩衝記憶装置
39 東側出方路緩衝記憶装置
40 着信側出方路緩衝記憶装置
41 西側同一後着パケット廃棄装置
42 南側同一後着パケット廃棄装置
43 北側同一後着パケット廃棄装置
44 東側同一後着パケット廃棄装置
45 着信側同一後着パケット廃棄装置
46 西側フレーム生成回路
47 南側フレーム生成回路
48 北側フレーム生成回路
49 東側フレーム生成回路
50 近隣網接続装置
51 登録名信号端子
52 ノード電圧信号端子
53 非常用バッテリー電圧信号端子
54 東側入方路スイッチ
55 北側入方路スイッチ
56 西側入方路スイッチ
57 南側入方路スイッチ
58 隣間パケット生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッディングを行うパケット通信網内で、隣接する複数のノードと連結する多方路を有する各ノードにおいて、各入方路から到着するパケットに対する緩衝記憶装置溢れ(バッファ溢れ)を統計的に独立とするために、入方路毎に経路選択装置を設置することにより待合せを行わせず、且つ出方路毎に緩衝記憶装置およびフラッディングに特有な遅れて到着する同一パケットを廃棄するための装置(以下では同一後着パケット廃棄装置と称する)を設置し、着信するトラヒック量はノードを通過するトラヒック量に比し少ないので、着信側出方路における該緩衝記憶装置に対しては緩衝記憶装置溢れを発生させない規模の記憶容量を具備させることを特徴とする多方路発着中継装置。
【請求項2】
隣接する家庭、事業所、および公的機関からなるノード同士を、有線リンクまたは無線リンクで直接連結することによって構築する近隣網と称する通信網内で多方路を有する各ノードにおいて、電力がノードへ供給されている間は該電力で該多方路発着中継装置を常時稼動させ、停電やブレーカ遮断により電力がノードへ供給されない間は、該多方路発着中継装置の内部において電力消費量が多い機能を休止させ、他を非常用バッテリーの電力で稼動させることにより新着パケットを入方路側の出方路を除く他のすべての出方路へ接続(フラッディング)させることを特徴とする請求項1記載の多方路発着中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−187411(P2008−187411A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18628(P2007−18628)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(591024557)
【Fターム(参考)】