説明

多板式クラッチ

【課題】第1凹部が設けられる第1カム部材ならびに第1凹部に挿入される第1突部が設けられる第2カム部材で構成されるアシストカム機構を備え、入力部材から出力部材への動力伝達状態での第1凹部および第1突部の当接面の少なくとも一方が加速時にクラッチばねの付勢力を強めるべく傾斜面として形成される多板式クラッチにおいて、クラッチ操作荷重の低減効果を充分に得つつ、唐突なクラッチ接続感の発生を抑制する。
【解決手段】傾斜面37a,38aのクラッチ中心軸線に直交する平面PLとの交差角度が、80度〜85度の範囲に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に連結されるクラッチアウタと、出力部材に連結されるクラッチインナと、前記クラッチアウタに係合される複数枚の駆動摩擦板と、それらの駆動摩擦板と交互に重ね合わされて前記クラッチインナに係合される複数枚の被動摩擦板と、複数枚ずつの前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を前記クラッチインナとの間に挟む挟圧板と、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を前記クラッチインナおよび前記挟圧板間に挟圧する側に前記クラッチインナまたは前記挟圧板を付勢するクラッチばねと、第1凹部が設けられる第1カム部材ならびに第1凹部に挿入される第1凸部が設けられる第2カム部材で構成されるアシストカム機構とを備え、前記入力部材から前記出力部材への動力伝達状態での第1凹部および第1凸部の当接面の少なくとも一方が前記動力伝達状態での加速時に前記クラッチばねの付勢力を強めるべく傾斜面として形成される多板式クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達状態での加速時にはクラッチカム部材を引き込んでクラッチばねの付勢力を強めて駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力を高め、減速時には前記クラッチカム部材を押し出してクラッチばねの付勢力を弱めて駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力を抑えるようにしたカム機構を備えた所謂アシスト・スリッパークラッチ装置が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−150517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン出力の増加に伴う多板式クラッチの大型化が必要な車両にあっては、クラッチばねのばね荷重を大きく設定せざるを得ず、ひいては操作荷重が大きくなってしまうので、上記特許文献1で開示されるように、凸部および凹部にそれぞれ形成された傾斜面を当接させることで、加速時にはクラッチカム部材を引き込んで駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力を高め、アシスト効果を得るようにした技術を適用することが望まれる。しかるに、たとえば引き込み力によるクラッチ操作荷重の低減効果を充分に得ながら、過大な引き込み力が発生した場合には唐突なクラッチ接続感が発生することを抑制する必要があることから、それらの均衡がとれた傾斜面の角度設定をする際には、様々な角度のカム機構を準備した上で、各要件のテストを実施して最適な角度を特定するまでに、相当の期間を要する。
【0005】
そこで本願の発明者は、傾斜面の角度についての各要件のテストを行い、クラッチ操作荷重の低減効果を充分に得つつ、唐突なクラッチ接続感の発生を抑制することのできる最適な角度範囲があることを見い出した。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、クラッチ操作荷重の低減効果を充分に得つつ、唐突なクラッチ接続感の発生を抑制し得るようにした多板式クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、入力部材に連結されるクラッチアウタと、出力部材に連結されるクラッチインナと、前記クラッチアウタに係合される複数枚の駆動摩擦板と、それらの駆動摩擦板と交互に重ね合わされて前記クラッチインナに係合される複数枚の被動摩擦板と、複数枚ずつの前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を前記クラッチインナとの間に挟む挟圧板と、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を前記クラッチインナおよび前記挟圧板間に挟圧する側に前記クラッチインナまたは前記挟圧板を付勢するクラッチばねと、第1凹部が設けられる第1カム部材ならびに第1凹部に挿入される第1凸部が設けられる第2カム部材で構成されるアシストカム機構とを備え、前記入力部材から前記出力部材への動力伝達状態での第1凹部および第1凸部の当接面の少なくとも一方が前記動力伝達状態での加速時に前記クラッチばねの付勢力を強めるべく傾斜面として形成される多板式クラッチにおいて、前記傾斜面のクラッチ中心軸線に直交する平面との交差角度が、80度〜85度の範囲に設定されることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記第1凹部の周囲の壁部のうち前記傾斜面が形成される特定の壁部が少なくとも該特定の壁部の周囲よりも隆起して形成されることを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、第2凹部が設けられる第3カム部材と、第2凹部に挿入される第2凸部が設けられる第4カム部材とで構成されるとともに、前記出力部材から前記入力部材へのバックトルク伝達状態での第2凹部および第2凸部の当接面の少なくとも一方が前記バックトルクの増加に応じて前記クラッチばねの付勢力を弱めるべく傾斜面として形成されるバックトルクリミッタ機構を備え、第2凹部および第2凸部の当接面の少なくとも一方に形成される前記傾斜面のクラッチ中心軸線に直交する平面との交差角度が、前記アシストカム機構の前記傾斜面の前記交差角度と同一に設定されることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明は、第2または第3の特徴の構成に加えて、前記第1および前記第3カム部材の半径方向に沿う前記第1および第2凹部の外端を開放して、湿式タイプに構成されることを第4の特徴とする。
【0011】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記第1および第3カム部材が前記出力部材に同軸に固定され、複数の前記第1および第2凹部の少なくとも一方が、前記第1および第3カム部材の周方向等間隔に配置されることを第5の特徴とする。
【0012】
本発明は、第3〜第5の特徴の構成に加えて、前記第1および第3カム部材として機能するようにして前記出力部材に固定される単一のセンターカムに、前記出力部材の軸方向一側に開放する第1凹部と、前記出力部材の軸方向他側に開放する第2凹部とが、前記軸方向での位置を同一として設けられることを第6の特徴とする。
【0013】
本発明は、第6の特徴の構成に加えて、前記センターカムは、前記出力部材に固定される円筒状のボス部と、該ボス部の軸方向中間部から半径方向外方に張り出す鍔部とを一体に有し、該鍔部の一部を形成して前記出力部材の軸線と直交する平面に沿う平板部分が複数の前記第2凹部の開口端に連設されることを第7の特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記第1凹部が、前記平板部分の一面から突出する第1および第2壁部間に形成され、前記第2凹部は、前記平板部分の一面から突出する第3および第4壁部ならびに第3および第4壁部の突出端を一体に連結する連結壁部とで形成され、第1および第3壁部間ならびに第2および第4壁部間で前記平板部分の一面が円弧状に凹んで形成されることを第8の特徴とする。
【0015】
なお実施の形態のメインシャフト11が本発明の出力部材に対応し、実施の形態の一次被動歯車16が本発明の入力部材に対応し、実施の形態の受圧板21が本発明の挟圧板に対応し、実施の形態のセンターカム25が本発明の第1および第3カム部材に対応し、実施の形態のアシストカム26が本発明の第2カム部材に対応し、実施の形態のスリッパカム27が本発明の第4カム部材に対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、第1凹部および第1凸部の当接面の少なくとも一方に形成される傾斜面のクラッチ中心軸線と直交する平面に対して交差する交差角度が、80度〜85度の範囲に設定されるので、車両の発進性およびアシスト効果を両立させた多板式クラッチを得ることができる。すなわち本願の発明者は、前記交差角度が80度未満では、クラッチ接続時にアシストカム機構によって生じる圧接力が過大となり、発進時に唐突なクラッチ接続感が発生して発進性能に影響を与えてしまい、前記交差角度が85度を超えると、効果的な圧接力が発生せず、アシストカム機構によるクラッチ操作荷重の低減効果が小さくなってしまうことを確認した。したがってアシストカム機構を備える多板式クラッチにおいて、アシストカム機構の傾斜面の前記交差角度を上記範囲に設定することにより、発進性能を満足しながら効果的なアシスト力を得ることができるようになり、最適な角度を設定するために相当の期間を要していた従来に比べて各要件のテスト期間を短縮しながら、最適な角度を絞り込めるようにして設計工数の低減を図ることができる。
【0017】
また本発明の第2の特徴によれば、傾斜面が形成される壁部を、少なくとも壁部の周囲よりも隆起して形成することで、傾斜面に必要な面積を確保しつつ第1カム部材の軽量化を図ることができる。
【0018】
また本発明の第3の特徴によれば、バックトルク増加時にクラッチばねの付勢力を弱めるバックトルクリミッタ機構における傾斜面のクラッチ中心軸線に直交する平面との交差角度を、アシストカム機構における傾斜面の前記交差角度と同一に設定することで、アシストカム機構およびバックトルクリミッタ機構で部品を共用化することを可能とし、専用部品を削減してコストを低減することができる。
【0019】
本発明の第4の特徴によれば、湿式タイプの多板式クラッチにおいて第1および第2凹部の外端を開放することで、第1および第2凹部内から潤滑油を良好に排出できるようにし、潤滑油が第1および第2凹部に過剰に溜まることによるアシストカム機構およびバックトルクリミッタ機構の作動への影響を抑制することができる。
【0020】
本発明の第5の特徴によれば、複数の第1および第2凹部の少なくとも一方が、出力部材に同軸に固定される第1および第3カム部材の周方向等間隔に配置されるので、第2および第4カム部材の少なくとも一方が当接することによって発生する力を第1および第3カム部材の少なくとも一方で周方向に均等に分散せしめ、カム機構の作動を確実なものとすることができる。
【0021】
本発明の第6の特徴によれば、第1および第3カム部材として機能する単一のセンターカムが出力部材に固定されるので、部品点数を低減するとともに第1および第3カム部材の配置スペースを小さくすることができ、しかも第1凹部および第2凹部が、出力部材の軸方向での位置を同一としてセンターカムに設けられるので、第1および第2凹部を配置するための出力部材の軸方向に沿うスペースを小さくして、アシストカム機構およびバックトルクリミッタ機構のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
本発明の第7の特徴によれば、センターカムが備える鍔部の一部を構成して出力部材の軸線と直交する平面に沿う平板部分が複数の第2凹部の開口端に連設されるので、作用する力が比較的大きくなるバックトルクリミッタ機構の一部を構成する第2凹部の開口端を平板部分で補強することができる。
【0023】
さらに本発明の第8の特徴によれば、第1凹部および第2凹部間で平板部分の一面が円弧状に凹んで形成されるので、第1凹部および第2凹部の周方向両側を形成する壁部および平板部分の連設部を彎曲させて厚肉とし、前記連設部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】多板式クラッチの断面図である。
【図2】センターカム、アシストカムおよびスリッパカムの分解斜視図である。
【図3】センターカム、アシストカムおよびスリッパカムの分解縦断面図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図3の5矢視図である。
【図6】アシストカム機構およびバックトルクリミッタ機構の一部を示す周方向展開断面図である。
【図7】傾斜面のクラッチ中心軸線に直交する平面との交差角度によるクラッチ圧接力の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付の図1〜図6に基づいて説明すると、先ず図1において、たとえば自動二輪車に搭載されるエンジンのクランクシャフト(図示せず)と、歯車変速機(図示せず)のメインシャフト11との間に、一次減速装置12、ダンパばね13および多板式クラッチ14が介設され、前記一次減速装置12は、クランクシャフトに設けられる一次駆動歯車(図示せず)と、一次駆動歯車に噛合する一次被動歯車16とから成り、一次被動歯車16は前記メインシャフト11に相対回転可能に支承される。
【0026】
前記多板式クラッチ14は、湿式タイプのものであり、入力部材である前記一次被動歯車16にダンパばね13を介して連結されるクラッチアウタ17と、該クラッチアウタ17内に同軸に配置される円筒部18aならびに該円筒部18aの一端に一体に連設される加圧板部18bを有するクラッチインナ18と、前記クラッチアウタ17に相対回転不能に係合される複数枚の駆動摩擦板19,19…と、それらの駆動摩擦板19,19…と交互に配置されて前記クラッチインナ18の前記円筒部18aに相対回転不能に係合される複数枚の被動摩擦板20,20…と、相互に重なった前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を前記加圧板部18bとの間に挟んで出力部材である前記メインシャフト11に固定される挟圧板としての受圧板21と、前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を前記クラッチインナ18および前記受圧板21間に挟圧する側に前記クラッチインナ18を付勢するクラッチばね22と、前記一次被動歯車16から前記メインシャフト11への動力伝達状態での加速時に前記クラッチばね22の付勢力を強めるアシストカム機構23と、前記メインシャフト11から前記一次被動歯車16へのバックトルク伝達状態でのバックトルク増加時に前記クラッチばね22の付勢力を弱めるバックトルクリミッタ機構24とを備える。
【0027】
前記クラッチアウタ17は、前記クラッチインナ18の円筒部18aを同軸に囲繞する円筒部17aと、該円筒部17aの前記一次被動歯車16側端部に連なる端壁部17bとを一体に有して、一次被動歯車16と反対側に開放した椀状に形成されており、複数枚の駆動摩擦板19,19…の外周部が、軸方向の移動を可能とするとともに相対回転を不能として前記円筒部17aに係合される。
【0028】
前記一次減速装置12に対応する部分で前記メインシャフト11の外周には、前記多板式クラッチ14側に臨む環状段部11aが形成されており、メインシャフト11の外周に嵌装される円筒状のスリーブ28の前記多板式クラッチ14とは反対側の端部が前記環状段部11aに当接され、このスリーブ28の外周と、前記一次被動歯車16の内周との間にニードルベアリング29が介装される。
【0029】
前記円筒部18aの半径方向内方には、前記アシストカム機構23の一部を構成する第1カム部材として機能するとともに前記バックトルクリミッタ機構24の一部を構成する第3カム部材としても機能するセンターカム25が配置される。このセンターカム25は、前記メインシャフト11の外周にスプライン係合される円筒状のボス部25aと、該ボス部25aの軸方向中間部から半径方向外方に張り出してメインシャフト11の軸方向に直交する平面内に配置される鍔部25bとを一体に有する。
【0030】
一方、前記受圧板21は、図1で示すように円板状に形成されており、この受圧板21の内周部は、前記ボス部25aの前記一次減速装置12側の端部外周にスプライン係合されるとともに、前記ボス部25aの前記一次減速装置12側の端部および前記スリーブ28間に挟まれる押さえ板30と、ボス部25aとの間に挟持されることによってボス部25aに固定される。
【0031】
またメインシャフト11の一端部には、前記センターカム25におけるボス部25aの一端との間に環状のばね受け部材31を挟むナット32が螺合されており、このナット32を締め付けることにより、前記環状段部11aおよびナット32間に、スリーブ28、押さえ板30、センターカム25のボス部25aおよびばね受け部材31が挟持され、ボス部25aはメインシャフト11の外周にスプライン係合されているので、センターカム25および受圧板21はメインシャフト11に固定されることになる。
【0032】
前記クラッチばね22は、前記メインシャフト11に固定されるばね受け部材31と、前記クラッチインナ18の円筒部18aに摺動可能に嵌合される環状のばね受け部材33との間に設けられる皿ばねであり、このクラッチばね22は、前記円筒部18aの内周に設けられて前記ばね受け部材33をクラッチばね22とは反対側から受ける環状段部34に前記ばね受け部材33を押しつけるものである。而してクラッチインナ18はその加圧板部18bを受圧板部21に近接させる側、すなわち駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,20…を摩擦係合させて多板式クラッチ14を接続状態とする側にクラッチばね22によって付勢されることになる。
【0033】
前記アシストカム機構23は、一次被動歯車16から入力される駆動力の増加に応じて前記加圧板部18bを前記受圧板21に近接させる側に前記クラッチインナ18を移動させるものであり、第1カム部材として前記メインシャフト11に固定されるセンターカム25と、該センターカム25における鍔部25bの一面に対向するようにして前記クラッチインナ18の円筒部18aにスプライン係合される第2カム部材としてのアシストカム26とで構成される。またバックトルクリミッタ機構24は、前記メインシャフト11からのバックトルクの増加に応じて前記加圧板部18bを前記受圧板21から離間させる側に前記クラッチインナ18を移動させるものであり、第1カム部材として機能するとともに第3カム部材としても機能する前記センターカム25と、該センターカム25の鍔部25bの他面に対向するようにして前記クラッチインナ18の円筒部18aにスプライン係合される第4カム部材としてのスリッパカム27とで構成される。
【0034】
前記アシストカム26は、センターカム25の鍔部25bおよび受圧板21間でクラッチインナ18の円筒部18aにスプライン係合されるものであり、アシストカム26および受圧板21間には、アシストカム26をセンターカム25の鍔部25bに近接する側にばね付勢する皿ばね35が介設される。
【0035】
一方、前記スリッパカム27は、前記センターカム25の鍔部25bと、前記クラッチインナ18の円筒部18aに摺動可能に嵌合される環状のばね受け部材33との間でクラッチインナ18の円筒部18aにスプライン係合されるものであり、前記メインシャフト11に固定されるばね受け部材31および前記ばね受け部材34との間にクラッチばね22が設けられるので、センターカム25の鍔部25bから離反する側へのスリッパカム27の軸方向移動は前記ばね受け部材33で規制されることになる。
【0036】
図2〜図4を併せて参照して、アシストカム機構23は、前記センターカム25の鍔部25bにおける一面に設けられる複数の第1凹部37…に、前記アシストカム26に突設される複数の第1突部38…がそれぞれ挿入されて成る。
【0037】
図5を併せて参照して、バックトルクリミッタ機構25は、前記センターカム25の鍔部25bにおける他面に設けられる複数の第2凹部40…に、前記スリッパカム27に突設される複数の第2突部41…がそれぞれ挿入されて成る。
【0038】
図6を併せて参照して、前記センターカム25の鍔部25bは、前記ボス部25aの外周から半径方向外方に突出するリング部分25baと、該リング部分25baの前記スリッパカム27側の端部から半径方向外方に張り出してメインシャフト11の軸線に直交する平面に沿う平板部分25bbとを一体に有するものである。
【0039】
第1凹部37は、センターカム25の周方向に間隔をあけて対向して前記平板部分25bbの一面から前記アシストカム26側に突出するとともにセンターカム25の半径方向に沿う内端を前記リング部分25baに連設せしめた第1および第2壁部56,57間に形成されており、アシストカム26側に開放するとともにセンターカム25の半径方向に沿う外端を開放するものであり、複数個たとえば3個の第1凹部37…が、センターカム25における鍔部25bの一面に設けられる。
【0040】
また第2凹部40は、センターカム25の周方向に間隔をあけて対向して前記平板部分25bbの一面から前記アシストカム26側に突出するとともにセンターカム25の半径方向に沿う内端を前記リング部分25baに連設せしめた第3および第4壁部58,59と、それらの壁部58,59の突出端を一体に連結して前記リング部分25baに連なる連結壁部60とで形成されており、スリッパカム27側に開放するとともにセンターカム25の半径方向に沿う外端を開放するものであり、複数個たとえば3個の第2凹部40…が、センターカム25における鍔部25bの他面に設けられる。しかも鍔部25bの平板部分25bbは第2凹部40…の開口端に連設される。
【0041】
複数個たとえば3個ずつの第1凹部37…および第2凹部40…の少なくとも一方、この実施の形態では両方が、センターカム25の周方向等間隔に配置されており、第1凹部37…が相互間の中心角度βを同一としてセンターカム25の周方向等間隔に配置され、第2凹部40…が相互間の中心角度γを同一としてセンターカム25の周方向等間隔に配置されており、β=γである。しかも第2凹部40…は、第1凹部37…相互間に位置するように配置される。
【0042】
また第1凹部37…と、第2凹部40…とは、メインシャフト11の軸方向に沿う位置を同一として前記センターカム25の鍔部25bに設けられており、第1凹部37…の周方向両側を形成する第1壁部56…および第2壁部57…のアシストカム26側突出端と、第2凹部40…の閉塞端を形成する連結壁部60…の外面とは、メインシャフト11の軸線に直交する第1の平面PA上に在り、第1凹部37…の閉塞端を形成する平板部分25bbの外面と、第2凹部40…の周方向両側を形成する第3壁部58…および第4壁部59…のスリップカム27側の突出端とは、メインシャフト11の軸線に直交する第2の平面PB上に在る。
【0043】
図6に注目して、接続状態にある多板式クラッチ14を介して一次被動歯車16からメインシャフト11に動力が伝達されているときにクラッチインナ18の回転方向が、矢印39で示す方向であるときに、前記第1凹部37…の前記回転方向39に沿う前側面すなわち第1壁部56の内側面に前記第1突部38…の前記回転方向に沿う前側面が当接するものであり、この状態での第1凹部37…および第1突部38…の当接面の少なくとも一方、この実施の形態では両方が、アシストカム26側に向かうにつれて前記回転方向39に沿う前方に位置するように傾斜した傾斜面37a…,38a…として形成される。
【0044】
而して一次被動歯車16からメインシャフト11間のトルク伝達状態での加速側のトルク変動が生じたときには、アシストカム26における第1突部38…の傾斜面38a…が、センターカム25の鍔部25bにおける第1凹部37…の傾斜面37a…に当接し、アシストカム26には、センターカム25の円板部25bから離反する側の力が鍔部25bから作用し、クラッチばね22の付勢力を打ち消す方向で皿ばね35から作用していた逆向きの付勢力を弱め、クラッチばね22による付勢力を完全に発揮させて駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,20…の圧縮力を高めることになる。
【0045】
また多板式クラッチ14が接続状態にあるときにメインシャフト11から一次被動歯車16にバックトルクが伝達されているときのセンターカム25の回転方向が矢印42で示す方向であるときに、前記第2凹部40…の前記回転方向42に沿う後側面が第2突部41…の前記回転方向42に沿う後側面すなわち第3壁部58の内側面に当接するものであり、この状態での第2凹部40…および第2突部41…の当接面の少なくとも一方、この実施の形態では両方が、スリッパカム27側に向かうにつれて前記回転方向42に沿う後方に位置するように傾斜した傾斜面40a…,41a…として形成される。
【0046】
而してバックトルク伝達状態でのバックトルク増加時には、スリッパカム27における第2突部41…の傾斜面41a…に、センターカム25の鍔部25bにおける第2凹部40…の傾斜面40aが当接し、スリッパカム27には、センターカム25の鍔部25bから離反する側の力が鍔部25bから作用し、これによってクラッチばね22の付勢力が弱められ、駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,30…の圧縮力が弱められることになる。
【0047】
しかも前記傾斜面37a…,38a…,40a…,41a…がクラッチ中心軸線に直交する平面PLに対して交差する交差角度αは、本願発明者の実験に基づいて、80度〜85度の範囲に設定される。
【0048】
ところで前記アシストカム26および前記スリッパカム27は、同一の素材によって同一形状に形成されるものであり、アシストカム26の第1突部38…ならびにスリッパカム27の第2突部41…は同一形状であり、センターカム25における鍔部25aの一面に設けられる第1凹部37…ならびに前記鍔部25bの他面に設けられる第2凹部40…も同一形状である。
【0049】
すなわちアシストカム機構23における前記傾斜面37a…,38a…の前記平面PLに対する交差角度と、バックトルクリミッタ機構24における傾斜面40a…,41a…の前記平面PLに対する交差角度は同一である。また接続状態にある多板式クラッチ14を介して一次被動歯車16からメインシャフト11に動力が伝達されているときのクラッチインナ18の回転方向39に沿う第1凹部37…および第1突部38…の後側面も傾斜面37b…,38b…として形成され、バックトルク伝達状態のセンターカム25の回転方向42に沿う第2凹部40…および第2突部41…の前側面も傾斜面40b…,41b…として形成されており、それらの傾斜面37b…,38b…,40b…,41b…の前記平面PLに対する交差角度は、前記傾斜面37a…,38a…,40a…,41a…の前記平面PLに対する交差角度と同一に設定される。
【0050】
しかも第1凹部37…の周囲の壁部のうち前記傾斜面37a,37bが形成される特定の壁部である第1壁部56…および第2壁部57…が少なくとも該特定の壁部56…,57…の周囲よりも隆起して形成されるものであり、この実施の形態ではセンターカム25の半径方向に沿う第1凹部37…の内端を形成する壁部であるリング部分25baよりも前記第1および第2壁部56…,57…が軸方向に沿ってアシストカム26側に隆起して形成される。
【0051】
さらに前記センターカム25における鍔部25bの一面には、第1凹部37…の第1壁部56…および第2凹部40…の第3壁部58…間に配置される肉抜き凹部54…と、第1凹部37…の第2壁部57…および第2凹部40…の第4壁部59…間に配置される肉抜き凹部55…とが形成されており、センターカム25の軸方向に沿う前記両肉抜き凹部54…,55…の閉塞端を形成する平板部分25bbの一面は、アシストカム26とは反対側に凹んだ円弧状に形成される。
【0052】
再び図1において、前記クラッチインナ18における円筒部18aの内周には、前記アシストカム26およびスリッパカム27間に介在してセンターカム25の円板部25bを囲繞するカラー部材43の外周が、アシストカム26およびスリッパカム27間の最小間隔を規制するようにしてスプライン係合される。
【0053】
前記多板式クラッチ14は、エンジンが備えるエンジンカバー44で覆われており、該エンジンカバー44に一端部が軸方向移動可能に嵌合される作動軸45の他端部が前記メインシャフト11に同軸にかつ摺動可能に嵌合される。この作動軸45の中間部にはベアリングホルダ46が固定され、該ベアリングホルダ46との間にクラッチベアリング47を介装せしめたリフタ48の外周が、クラッチインナ18の円筒部18aの一端部に嵌合され、該円筒部18aの一端部内周には、前記リフタ48の外周に前記クラッチばね22とは反対側から当接する止め輪49が装着される。
【0054】
前記エンジンカバー44には、多板式クラッチ14の断・接を切り換える操作軸50が回動可能に支承されており、該操作軸50の前記エンジンカバー44からの突出端部にレバー51が設けられる。而して前記操作軸50の内端部に、操作軸50の回動に応じて軸方向に移動する伝動軸52の一端部が係合され、この伝動軸52の他端部が前記作動軸45に同軸に連結される。
【0055】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、第1凹部37…および第1突部38…の当接面の少なくとも一方、この実施の形態では両方にに形成される傾斜面37a…,38a…のクラッチ中心軸線と直交する平面に対して交差する交差角度αが、80度〜85度の範囲に設定されるので、車両の発進性およびアシスト効果を両立させた多板式クラッチ14を得ることができる。
【0056】
すなわち本願の発明者が、前記交差角度αを変化させて、アシストカム機構23による車両の発進性、クラッチ操作荷重の評価を行ったところ、表1で示す結果が得られた。この表1で判定Aは優、Bは良、Cは可、Dは不可を表すものである。
【0057】
【表1】

【0058】
上記表1で判定Dが存在する領域を不採用とすると、前記交差角度αが80度〜85度の範囲となる。すなわち本願の発明者は、前記交差角度αが80度未満では、クラッチ接続時にアシストカム機構23によって生じる圧接力が過大となり、発進時に唐突なクラッチ接続感が発生して発進性能に影響を与えてしまうことになり、前記交差角度αが85度を超えると、効果的な圧接力が発生せず、アシストカム機構23によるクラッチ操作荷重の低減効果が小さくなってしまうことを確認した。したがってアシストカム機構23を備える多板式クラッチ14において、アシストカム機構23の傾斜面37a…,38a…のクラッチ中心軸線と直交する平面に対して交差する交差角度を80度〜85度の範囲に設定することにより、発進性能を満足しながら効果的なアシスト力を得ることができるようになり、最適な角度を設定するために相当の期間を要していた従来に比べて各要件のテスト期間を短縮しながら、最適な角度を絞り込めるようにして設計工数の低減を図ることができる。
【0059】
而してアシストカム機構23の傾斜面37a…,38a…のクラッチ中心軸線と直交する平面に対して交差する交差角度を80度、85度と設定したときのクラッチ圧接力は図7で示すように変化するものであり、前記交差角度を80度〜85度の範囲に設定することで適切なアシスト力が得られる。
【0060】
またセンターカム25の一面に設けられる複数の第1凹部37…の周囲の壁部のうち前記傾斜面37a…,37b…が形成される特定の壁部56…,57…が少なくとも該特定の壁部56…,57…の周囲よりも隆起して形成されるので、傾斜面37a…,37b…に必要な面積を確保しつつセンターカム25の軽量化を図ることができる。しかも第1凹部37…および第2凹部40…間にそれぞれ配置される肉抜き凹部54…,55…がセンターカム25の一面に設けられるので、センターカム25がより軽量化されることになる。
【0061】
しかも多板式クラッチ14は、メインシャフト11から一次被動歯車16へのバックトルク伝達状態でのバックトルクの増加に応じてクラッチばね22の付勢力を弱めるバックトルクリミッタ機構24を備えており、このバックトルクリミッタ機構24は、第2凹部40…が設けられるセンターカム25と、第2凹部40…に挿入される第2突部41…が設けられるスリッパカム27とで構成され、バックトルク伝達状態での第2凹部40…および第2突部41…の当接面の少なくとも一方、この実施の形態では両方がバックトルクの増加に応じてクラッチばね22の付勢力を弱めるべく傾斜面40a…,41a…として形成されるのであるが、前記傾斜面40a…,41a…のクラッチ中心軸線に直交する平面との交差角度が、前記アシストカム機構23の前記傾斜面37a…,38a…の前記交差角度αと同一に設定されるので、アシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24で部品を共用化することを可能とし、専用部品を削減してコストを低減することができる。
【0062】
特にセンターカム25がアシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24で共通であり、アシストカム26およびスリッパカム27が、同一の素材によって同一形状に形成されるので、部品点数を低減することができる。
【0063】
さらに多板式クラッチ14は、湿式タイプであるが、センターカム25の半径方向に沿う第1および第2凹部37…,40…の外端が開放されているので、第1および第2凹部37…,40…内から潤滑油を良好に排出できるようにし、潤滑油が第1および第2凹部37…,40…に過剰に溜まることによるアシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24の作動への影響を抑制することができる。
【0064】
またセンターカム25に設けられる複数ずつの第1および第2凹部37…,40…の少なくとも一方、この実施の形態では両方が、センターカム25の周方向等間隔に配置されるので、アシストカム26およびスリッパカム27が当接することによって発生する力をセンターカム25で周方向に均等に分散せしめ、アシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24の作動を確実なものとすることができる。
【0065】
またアシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24に共通である単一のセンターカム25がメインシャフト11に固定されており、部品点数を低減するとともにアシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24の配置スペースを小さくすることができる。しかも第1凹部37…および第2凹部40…が、メインシャフト11の軸方向での位置を同一としてセンターカム25に設けられるので、第1および第2凹部37…,40…を配置するためのメインシャフト11の軸方向に沿うスペースを小さくして、アシストカム機構23およびバックトルクリミッタ機構24のコンパクト化を図ることができる。
【0066】
またセンターカム25は、メインシャフト11に固定される円筒状のボス部25aと、該ボス部25aの軸方向中間部から半径方向外方に張り出す鍔部25bとを一体に有し、該鍔部25bの一部を形成してメインシャフト11の軸線と直交する平面に沿う平板部分25bbが複数の前記第2凹部40…の開口端に連設されるので、作用する力が比較的大きくなるバックトルクリミッタ機構24の一部を構成する第2凹部40…の開口端を平板部分25bbで補強することができる。
【0067】
さらに第1凹部37 …が、前記平板部分25bbの一面から突出する第1および第2壁部56…,57…間に形成され、第2凹部40…が、平板部分25bbの一面から突出する第3および第4壁部58…,59…ならびに第3および第4壁部58…,59…の突出端を一体に連結する連結壁部60…とで形成され、第1および第3壁部56…,58…間ならびに第2および第4壁部57…,59…間で平板部分25bbの一面が円弧状に凹んで形成されるので、第1凹部37…および第2凹部40…の周方向両側を形成する第1〜第4壁部56〜59および平板部分25bbの連設部を彎曲させて厚肉とし、前記連設部の強度を高めることができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0069】
11・・・出力部材であるメインシャフト
16・・・入力部材である一次被動歯車
17・・・クラッチアウタ
18・・・クラッチインナ
19・・・駆動摩擦板
20・・・被動摩擦板
21・・・挟圧板である受圧板
22・・・クラッチばね
23・・・アシストカム機構
24・・・バックトルクリミッタ機構
25・・・第1および第3カム部材であるセンターカム
25a・・・ボス部
25b・・・鍔部
25ba・・・リング部分
25bb・・・平板部分
26・・・第2カム部材であるアシストカム
27・・・第4カム部材であるスリッパカム
37・・・第1凹部
37a,38a,40a,41a・・・傾斜面
38・・・第1凸部
40・・・第2凹部
41・・・第2凸部
56・・・第1壁部
57・・・第2壁部
58・・・第3壁部
59・・・第4壁部
PL・・・平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材(16)に連結されるクラッチアウタ(17)と、出力部材(11)に連結されるクラッチインナ(18)と、前記クラッチアウタ(17)に係合される複数枚の駆動摩擦板(19)と、それらの駆動摩擦板(19)と交互に重ね合わされて前記クラッチインナ(18)に係合される複数枚の被動摩擦板(20)と、複数枚ずつの前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板(20)を前記クラッチインナ(18)との間に挟む挟圧板(21)と、前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板(20)を前記クラッチインナ(18)および前記挟圧板(21)間に挟圧する側に前記クラッチインナ(18)または前記挟圧板(21)を付勢するクラッチばね(22)と、第1凹部(37)が設けられる第1カム部材(25)ならびに第1凹部(37)に挿入される第1凸部(38)が設けられる第2カム部材(26)で構成されるアシストカム機構(23)とを備え、前記入力部材(16)から前記出力部材(11)への動力伝達状態での第1凹部(37)および第1凸部(38)の当接面の少なくとも一方が前記動力伝達状態での加速時に前記クラッチばね(22)の付勢力を強めるべく傾斜面(37a,38a)として形成される多板式クラッチにおいて、前記傾斜面(37a,38a)のクラッチ中心軸線に直交する平面(PL)との交差角度が、80度〜85度の範囲に設定されることを特徴とする多板式クラッチ。
【請求項2】
前記第1凹部(37)の周囲の壁部のうち前記傾斜面(37a)が形成される特定の壁部(56,57)が少なくとも該特定の壁部(56,57)の周囲よりも隆起して形成されることを特徴とする請求項1記載の多板式クラッチ。
【請求項3】
第2凹部(40)が設けられる第3カム部材(25)と、第2凹部(40)に挿入される第2凸部(41)が設けられる第4カム部材(27)とで構成されるとともに、前記出力部材(11)から前記入力部材(16)へのバックトルク伝達状態での第2凹部(40)および第2凸部(41)の当接面の少なくとも一方が前記バックトルクの増加に応じて前記クラッチばね(22)の付勢力を弱めるべく傾斜面(40a,41a)として形成されるバックトルクリミッタ機構(24)を備え、第2凹部(40)および第2凸部(41)の当接面の少なくとも一方に形成される前記傾斜面(40a,41a)のクラッチ中心軸線に直交する平面(PL)との交差角度が、前記アシストカム機構(23)の前記傾斜面(37a,38a)の前記交差角度と同一に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の多板式クラッチ。
【請求項4】
前記第1および前記第3カム部材(25)の半径方向に沿う前記第1および第2凹部(37,40)の外端を開放して、湿式タイプに構成されることを特徴とする請求項2または3記載の多板式クラッチ。
【請求項5】
前記第1および第3カム部材(25)が前記出力部材(11)に同軸に固定され、複数の前記第1および第2凹部(37,40)の少なくとも一方が、前記第1および第3カム部材(25)の周方向等間隔に配置されることを特徴とする請求項3記載の多板式クラッチ。
【請求項6】
前記第1および第3カム部材として機能するようにして前記出力部材(11)に固定される単一のセンターカム(25)に、前記出力部材(11)の軸方向一側に開放する第1凹部(37)と、前記出力部材(11)の軸方向他側に開放する第2凹部(40)とが、前記軸方向での位置を同一として設けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の多板式クラッチ。
【請求項7】
前記センターカム(25)は、前記出力部材(11)に固定される円筒状のボス部(25a)と、該ボス部(25a)の軸方向中間部から半径方向外方に張り出す鍔部(25b)とを一体に有し、該鍔部(25b)の一部を形成して前記出力部材(11)の軸線と直交する平面に沿う平板部分(25bb)が複数の前記第2凹部(40)の開口端に連設されることを特徴とする請求項6記載の多板式クラッチ。
【請求項8】
前記第1凹部(37)が、前記平板部分(25bb)の一面から突出する第1および第2壁部(56,57)間に形成され、前記第2凹部(40)は、前記平板部分(25bb)の一面から突出する第3および第4壁部(58,59)ならびに第3および第4壁部(58,59)の突出端を一体に連結する連結壁部(60)とで形成され、第1および第3壁部(56,58)間ならびに第2および第4壁部(57,59)間で前記平板部分(25bb)の一面が円弧状に凹んで形成されることを特徴とする請求項7記載の多板式クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−33106(P2011−33106A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179282(P2009−179282)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】