説明

多構成要素ワクチン

本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、HTV−I感染に対して防御するための多構成要素ワクチンおよび該ワクチンを用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が本明細書に援用される、2006年11月17日出願の米国仮出願第60/859,496号の優先権を主張する。
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号AI0678501号のもと、政府支援を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、HIV−1感染に対して防御するための多構成要素ワクチンおよび該ワクチンを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
HIV−1に対する有効なワクチンの産生は、AIDS研究の非常に重要な目的である。現在まで、予防ワクチンの開発は、HIVの多様性(Gaschen, Science 296:2354(2002))、粘膜部位での免疫細胞アポトーシスの迅速な開始(Mattapallilら, Nature 434:1093(2005); Veazeyら, Science 280:427(1998); Guadalupeら, J. Virol 77:11708(2003); Brenchleyら, J. Exp. Med. 200:749(2004); Menhandruら, J. Exp. Med. 200:761(2004))、HIV−1がウイルスの細胞性貯蔵所を持つ組込みウイルスであるという事実(Fauci, Science 245:305(1989))、並びに自己HIV−1生得的および中和抗体応答の誘導が、血漿におけるウイルス増加(ramp−up)の8週〜1年後まで遅れること(Abelら, J. Virol 80:6357−67(2006), Weiら, Nature 422:307−12(2003); Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:4144−9(2003))によって、成功していない。
【0004】
本発明は、コンセンサスおよび/またはモザイクHIV遺伝子(Gaschenら, Science 296:2354(2002); Liaoら, Virology 353:268(2006), Gaoら, J. Virol. 79:1154(2005), Weaverら, J. Virol. 80:6754(2006), Fischerら, Nature Medicine, 13(1):100−106(2007), Epub 2006 Dec 24)を、免疫寛容を破壊して、粘膜部位で中和抗体の所望の特異性の誘導を可能にする戦略(例えば制御性T細胞阻害および/またはTLR−9アゴニストアジュバントの使用を通じたもの)、並びにHIV−1に誘導されるアポトーシスを克服するよう設計された戦略(例えば抗ホスファチジルセリン(PS)抗体、抗CD36抗体、および/または抗tat抗体の誘導)と組み合わせて使用することによって、HIVの多様性から生じる問題に取り組む多構成要素ワクチンに関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gaschen, Science 296:2354(2002)
【非特許文献2】Mattapallilら, Nature 434:1093(2005)
【非特許文献3】Veazeyら, Science 280:427(1998)
【非特許文献4】Guadalupeら, J. Virol 77:11708(2003)
【非特許文献5】Brenchleyら, J. Exp. Med. 200:749(2004)
【非特許文献6】Menhandruら, J. Exp. Med. 200:761(2004)
【非特許文献7】Fauci, Science 245:305(1989)
【非特許文献8】Abelら, J. Virol 80:6357−67(2006)
【非特許文献9】Weiら, Nature 422:307−12(2003)
【非特許文献10】Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:4144−9(2003)
【非特許文献11】Liaoら, Virology 353:268(2006)
【非特許文献12】Gaoら, J. Virol. 79:1154(2005)
【非特許文献13】Weaverら, J. Virol. 80:6754(2006)
【非特許文献14】Fischerら, Nature Medicine, 13(1):100−106(2007), Epub 2006 Dec 24
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一般的にHIVに関する。より具体的には、本発明は、HIV−1感染に対してヒトを防御するのに使用可能な多構成要素HIVワクチンに関する。
本発明の目的および利点は、以下の説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】急性HIV−1感染直後の抗体応答の概要。
【図2−1】図2A〜2F。Fasリガンド対ウイルス負荷。(図2A)Fasリガンド、パネル6246。(図2B)Fasリガンド、パネル6240。(図2C)Fasリガンド、パネル9076。(図2D)Fasリガンド、パネル9021。(図2E)Fasリガンド、パネル9020。(図2F)Fasリガンド、パネル9032。
【図2−2】図2A〜2F。Fasリガンド対ウイルス負荷。(図2A)Fasリガンド、パネル6246。(図2B)Fasリガンド、パネル6240。(図2C)Fasリガンド、パネル9076。(図2D)Fasリガンド、パネル9021。(図2E)Fasリガンド、パネル9020。(図2F)Fasリガンド、パネル9032。
【図3−1】図3A〜3F。Fas(CD95)対ウイルス負荷。(図3A)Fas(CD95)、パネル6246。(図3B)Fas(CD95)、パネル6240。(図3C)Fas(CD95)、パネル9076。(図3D)Fas(CD95)、パネル9021。(図3E)Fas(CD95)、パネル9020。(図3F)Fas(CD95)、パネル9032。
【図3−2】図3A〜3F。Fas(CD95)対ウイルス負荷。(図3A)Fas(CD95)、パネル6246。(図3B)Fas(CD95)、パネル6240。(図3C)Fas(CD95)、パネル9076。(図3D)Fas(CD95)、パネル9021。(図3E)Fas(CD95)、パネル9020。(図3F)Fas(CD95)、パネル9032。
【図4−1】図4A〜4E。TNFR2対ウイルス負荷。(図4A)TNFR2、パネル6240。(図4B)TNFR2、パネル6244。(図4C)TNFR2、パネル6246。(図4D)TNFR2、パネル9020。(図4E)TNFR2、パネル9021。
【図4−2】図4A〜4E。TNFR2対ウイルス負荷。(図4A)TNFR2、パネル6240。(図4B)TNFR2、パネル6244。(図4C)TNFR2、パネル6246。(図4D)TNFR2、パネル9020。(図4E)TNFR2、パネル9021。
【図5】図5Aおよび5B。TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導性リガンド)。(図5A)TRAIL、パネル9020。(図5B)TRAIL、パネル9021。
【図6】図6Aおよび6B。慢性HIV−1感染において、TおよびB細胞上でPD−1が上方制御される。(図6A)CD3+。(図6B)CD19+。
【図7】図7A〜7D。(図7Aおよび7B)非感染細胞上の抗PS。(図7Cおよび7D)MN感染細胞およびビリオン上の抗PS。
【図8−1】図8Aおよび8B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートに対するmAb 4E10および2F5の結合。約1000RUの合成リポソーム(赤);脂質−GTH1−4E10(図8A、緑);または4E10−GTH1−脂質(図8A、青)のいずれかをBIAcore L1センサーチップ上に係留した。4番目のフローセルは脂質を伴わず未処理のままであった(赤紫)。第二のセンサーチップ上、脂質−GTH1−2F5(図8B、緑);または2F5−GTH1−脂質(図8B、青)またはリポソームのみ(図8B、赤)を係留した。Mab 4E10(図8A)またはmAb 2F5(図8B)を各センサーチップ上に注入し、そしてBIAcore 3000装置上で結合応答を記録した。Kd値は、2工程コンホメーション変化モデルおよびBIAevaluationソフトウェアを用いた曲線適合分析に由来した。
【0008】
方法。クロロホルム中に溶解されたリン脂質POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン)、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン);DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)およびコレステロールをAvanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から購入した。クロロホルム耐性試験管中に適切なモル量のリン脂質を分配することによって、リン脂質リポソームを調製した。45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)のモル比で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。HIV−1膜近接ペプチドを70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。各ペプチドを1:420のペプチド:総リン脂質のモル比で添加した。穏やかにボルテックスすることによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流下で、ドラフト中、混合物を乾燥させた。脂質を高真空下で保存する(15時間)ことによって、いかなる残渣クロロホルムも除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製し、そして断続的に激しくボルテックスしながらTmより高い温度で10〜30分間維持してリン脂質を再懸濁し、その後、水槽超音波処理装置(Misonix Sonicator 3000, Misonix Inc., ニューヨーク州ファーミングデール)中で超音波処理した。周期あたり全超音波処理45秒間を3回連続周期で行うように、超音波処理装置をプログラミングした。各周期には、5秒間の超音波処理パルス(70ワット出力)、その後、12秒間のパルスオフ期間が含まれた。超音波処理終了時、薄板状リポソーム懸濁物を4℃で保存し、そして融解し、そしてBIAcoreセンサーチップ上に捕捉する前に、上述のように再び超音波処理した。
【0009】
逆相HPLCによってペプチドを合成し、そして精製し、そして質量分析によって、純度を確認した。この研究に用いたペプチドには以下が含まれた−
【0010】
【化1】

【図8−2】図8Aおよび8B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートに対するmAb 4E10および2F5の結合。約1000RUの合成リポソーム(赤);脂質−GTH1−4E10(図8A、緑);または4E10−GTH1−脂質(図8A、青)のいずれかをBIAcore L1センサーチップ上に係留した。4番目のフローセルは脂質を伴わず未処理のままであった(赤紫)。第二のセンサーチップ上、脂質−GTH1−2F5(図8B、緑);または2F5−GTH1−脂質(図8B、青)またはリポソームのみ(図8B、赤)を係留した。Mab 4E10(図8A)またはmAb 2F5(図8B)を各センサーチップ上に注入し、そしてBIAcore 3000装置上で結合応答を記録した。Kd値は、2工程コンホメーション変化モデルおよびBIAevaluationソフトウェアを用いた曲線適合分析に由来した。
【0011】
方法。クロロホルム中に溶解されたリン脂質POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン)、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン);DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)およびコレステロールをAvanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から購入した。クロロホルム耐性試験管中に適切なモル量のリン脂質を分配することによって、リン脂質リポソームを調製した。45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)のモル比で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。HIV−1膜近接ペプチドを70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。各ペプチドを1:420のペプチド:総リン脂質のモル比で添加した。穏やかにボルテックスすることによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流下で、ドラフト中、混合物を乾燥させた。脂質を高真空下で保存する(15時間)ことによって、いかなる残渣クロロホルムも除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製し、そして断続的に激しくボルテックスしながらTmより高い温度で10〜30分間維持してリン脂質を再懸濁し、その後、水槽超音波処理装置(Misonix Sonicator 3000, Misonix Inc., ニューヨーク州ファーミングデール)中で超音波処理した。周期あたり全超音波処理45秒間を3回連続周期で行うように、超音波処理装置をプログラミングした。各周期には、5秒間の超音波処理パルス(70ワット出力)、その後、12秒間のパルスオフ期間が含まれた。超音波処理終了時、薄板状リポソーム懸濁物を4℃で保存し、そして融解し、そしてBIAcoreセンサーチップ上に捕捉する前に、上述のように再び超音波処理した。
【0012】
逆相HPLCによってペプチドを合成し、そして精製し、そして質量分析によって、純度を確認した。この研究に用いたペプチドには以下が含まれた−
【0013】
【化2】

【図9】本発明の多構成要素ワクチンが克服する有害な急性感染事象のスキーム。
【図10】非ヒト霊長類(NHP)ONTAK枯渇(用量/動力学)。
【図11】rPAで免疫したNHPにおける制御性T。
【図12】抗PA結合性ELISA。
【図13】図13Aおよび13B。炭疽毒素中和。
【図14−1】図14A〜14C。血漿アポトーシス性MPの測定のためのフローサイトメトリー技術の開発。フローサイトメトリーで血漿をアッセイする新規プロトコルを開発するため、ポリスチレンビーズの混合物をまずアッセイした(図14A)。サイズ0.1μm〜1.0μmの範囲のビーズを等比率で混合し、希釈し、そしてBD LSRIIを用いて分析した。サイズによって微粒子を定義する先の研究にしたがって、これらのサイズを用いた(Werner, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26(1):112−6(2006) Epub 2005 Oct. 20, Distlerら, Apoptosis 10:731−741(2005))。前方散乱検出装置のダイオードよりも、より小さい粒子を区別する能力が光電子増倍管で増進しているため、サイズを区別するものとして側方散乱を用いた。最適希釈範囲を決定するため、ポリスチレンビーズ混合物の連続希釈シリーズを分析した(図14B)。こうした実験を行うことによって、十分に希釈されていない試料はいずれも、一致および高い中断率のため、不当に低い事象数を生じることが発見された。系が個々にプロセシングするには、ともに到着が近すぎるかまたは迅速すぎる(一致)ため、フローサイトメーターが事象をプロセシング不能であった場合に中断事象が生じる。一度に1つの粒子のみが検出装置を流れる点まで試料を希釈することによって、サイトメーターによってプロセシングされる事象数はより正確になる。実際、ビーズ混合物が1:1000で希釈された場合、4つの異なるサイズのビーズはよく区別されないが、1:100,000希釈では、各サイズの明確な集団が検出可能である。血漿微粒子を分析するため(図14C)、同様の希釈シリーズを用いて、最適希釈を実験的に決定した(データ未提示)。血漿中に存在するが、細胞微粒子より小さく、そして前方または側方散乱を持たない破片(debris)を計数する可能性を排除するため、定義した微粒子ゲート内で起こる事象を計数した。低い側方散乱範囲中に0.1μmビーズを含み、そしてより高い側方散乱範囲中に1.0μmビーズを含み、一方、非常にわずかな前方および側方散乱を有する粒子を排除することによって、このゲートを設定した(図14Aおよび14C中の赤い囲み)。ポリスチレンサイズ設定ビーズをあらゆる実験実行に関して1:100,000希釈で実験して、すべてのデータが同じ方式でゲート処理されることを可能にした。血漿試料中、微粒子の大部分は0.1〜0.5μmの間にあることが見出された(10未満の側方散乱領域を示す、赤い微粒子ゲート内の集団)。0.5μmより大きいが、1.0μmより小さい、より大きい微粒子が存在したが、比率は低かった。
【図14−2】図14A〜14C。血漿アポトーシス性MPの測定のためのフローサイトメトリー技術の開発。フローサイトメトリーで血漿をアッセイする新規プロトコルを開発するため、ポリスチレンビーズの混合物をまずアッセイした(図14A)。サイズ0.1μm〜1.0μmの範囲のビーズを等比率で混合し、希釈し、そしてBD LSRIIを用いて分析した。サイズによって微粒子を定義する先の研究にしたがって、これらのサイズを用いた(Werner, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26(1):112−6(2006) Epub 2005 Oct. 20, Distlerら, Apoptosis 10:731−741(2005))。前方散乱検出装置のダイオードよりも、より小さい粒子を区別する能力が光電子増倍管で増進しているため、サイズを区別するものとして側方散乱を用いた。最適希釈範囲を決定するため、ポリスチレンビーズ混合物の連続希釈シリーズを分析した(図14B)。こうした実験を行うことによって、十分に希釈されていない試料はいずれも、一致および高い中断率のため、不当に低い事象数を生じることが発見された。系が個々にプロセシングするには、ともに到着が近すぎるかまたは迅速すぎる(一致)ため、フローサイトメーターが事象をプロセシング不能であった場合に中断事象が生じる。一度に1つの粒子のみが検出装置を流れる点まで試料を希釈することによって、サイトメーターによってプロセシングされる事象数はより正確になる。実際、ビーズ混合物が1:1000で希釈された場合、4つの異なるサイズのビーズはよく区別されないが、1:100,000希釈では、各サイズの明確な集団が検出可能である。血漿微粒子を分析するため(図14C)、同様の希釈シリーズを用いて、最適希釈を実験的に決定した(データ未提示)。血漿中に存在するが、細胞微粒子より小さく、そして前方または側方散乱を持たない破片(debris)を計数する可能性を排除するため、定義した微粒子ゲート内で起こる事象を計数した。低い側方散乱範囲中に0.1μmビーズを含み、そしてより高い側方散乱範囲中に1.0μmビーズを含み、一方、非常にわずかな前方および側方散乱を有する粒子を排除することによって、このゲートを設定した(図14Aおよび14C中の赤い囲み)。ポリスチレンサイズ設定ビーズをあらゆる実験実行に関して1:100,000希釈で実験して、すべてのデータが同じ方式でゲート処理されることを可能にした。血漿試料中、微粒子の大部分は0.1〜0.5μmの間にあることが見出された(10未満の側方散乱領域を示す、赤い微粒子ゲート内の集団)。0.5μmより大きいが、1.0μmより小さい、より大きい微粒子が存在したが、比率は低かった。
【図15−1】図15A〜15D。血漿MPの表現型に対する凍結/融解周期の影響。血漿ドナー試料中の細胞外マーカーのいくつかの発現レベルが低かったため、微粒子表現型に対する血漿の凍結および融解の影響を研究した。HIV−1慢性感染ドナー由来の血漿を3つのアリコットに分けた。第一のものは20℃のままにした(新鮮)。第二のものを、−80℃で10分間凍結し、そして融解し(凍結1x)、そして第三のものを、同様に凍結し、融解し、そして再凍結した(凍結2x)。次いで、3つの試料すべてを希釈し、ろ過し、そして遠心分離した。MP再懸濁物をCD3(図15A)、CD45(図15B)、CD61(血小板MPマーカー)(図15C)、およびアネキシンV(図15D)で染色した。緑の囲み内の割合は、同時にアッセイしたアイソタイプ対照のバックグラウンド減算後、その特定のマーカーに関して陽性であるMPの割合を示す。これらの割合は、第一の凍結/融解周期に際して増加し、そしてもう1回の凍結/融解周期後に減少することが観察され、血漿MPの表現型決定には、試料完全性が重要な役割を果たすことが示された。
【図15−2】図15A〜15D。血漿MPの表現型に対する凍結/融解周期の影響。血漿ドナー試料中の細胞外マーカーのいくつかの発現レベルが低かったため、微粒子表現型に対する血漿の凍結および融解の影響を研究した。HIV−1慢性感染ドナー由来の血漿を3つのアリコットに分けた。第一のものは20℃のままにした(新鮮)。第二のものを、−80℃で10分間凍結し、そして融解し(凍結1x)、そして第三のものを、同様に凍結し、融解し、そして再凍結した(凍結2x)。次いで、3つの試料すべてを希釈し、ろ過し、そして遠心分離した。MP再懸濁物をCD3(図15A)、CD45(図15B)、CD61(血小板MPマーカー)(図15C)、およびアネキシンV(図15D)で染色した。緑の囲み内の割合は、同時にアッセイしたアイソタイプ対照のバックグラウンド減算後、その特定のマーカーに関して陽性であるMPの割合を示す。これらの割合は、第一の凍結/融解周期に際して増加し、そしてもう1回の凍結/融解周期後に減少することが観察され、血漿MPの表現型決定には、試料完全性が重要な役割を果たすことが示された。
【図16】図16A〜16C。HIV、C型肝炎ウイルス(HCV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)被験体の血漿ウイルス負荷。30のHIV+抗体陽転血漿パネル(HBVおよびHCV陰性)、10のHBV抗体陽転パネル(HIV陰性)、および10のHCV抗体陽転パネル(HIV陰性)を研究した。パネルは、HIV(図16A)、HCV(図16B)、およびHBV(図16C)におけるウイルス負荷増加の動力学を示す。第0日は、ウイルス負荷が、HIVに関しては100コピー/ml、HCVに関しては600コピー/ml、そしてHBVに関しては700コピー/mlに達した最初の日であることが決定された。
【図17−1】図17A〜17C。アポトーシスの血漿マーカー。図17A。ELISAによって各血漿試料に関してTRAIL、TNFR2、およびFasリガンドを測定し、そしてウイルス負荷レベルと比較した。3人の代表的な被験体を示す。図17B。被験体間のアポトーシスの血漿マーカーの増加を比較するため、第0日より前の平均を、第0日より後の平均と比較し、そして増加パーセントを計算した。図17C。アポトーシスの同じ血漿マーカーをHCVおよびHBV感染被験体において測定した。1人のHCVおよび1人のHBV被験体の結果を示す。
【図17−2】図17A〜17C。アポトーシスの血漿マーカー。図17A。ELISAによって各血漿試料に関してTRAIL、TNFR2、およびFasリガンドを測定し、そしてウイルス負荷レベルと比較した。3人の代表的な被験体を示す。図17B。被験体間のアポトーシスの血漿マーカーの増加を比較するため、第0日より前の平均を、第0日より後の平均と比較し、そして増加パーセントを計算した。図17C。アポトーシスの同じ血漿マーカーをHCVおよびHBV感染被験体において測定した。1人のHCVおよび1人のHBV被験体の結果を示す。
【図17−3】図17A〜17C。アポトーシスの血漿マーカー。図17A。ELISAによって各血漿試料に関してTRAIL、TNFR2、およびFasリガンドを測定し、そしてウイルス負荷レベルと比較した。3人の代表的な被験体を示す。図17B。被験体間のアポトーシスの血漿マーカーの増加を比較するため、第0日より前の平均を、第0日より後の平均と比較し、そして増加パーセントを計算した。図17C。アポトーシスの同じ血漿マーカーをHCVおよびHBV感染被験体において測定した。1人のHCVおよび1人のHBV被験体の結果を示す。
【図18−1】図18Aおよび18B。アポトーシスの血漿マーカーの概要。図18A。各データ群に関して、ボックスプロット分析を行った。急性HIV−1、HBVおよびHCVパネルの結果を示し、天地方向の線は、最大値および最小値を示す。スチューデントT検定を用いて、P値を計算した。青い囲みはp<0.01を示す。図18B。最大ウイルス拡大(r0)に比較した分析物ピークのタイミング。ペアード・ウイルコクソン順位和検定から結果を得て、そして低いp値は、(関心対象のピーク日の)2つの平均が有意に異なることを示す。これは、ピークの平均「到達時間」(例えば拡大ピーク日およびTRAILピーク日)が有意に異なることを示す。到達時間間の「遅延」は、平均、中央値、および四分位範囲に関して記載されうる。このパネル上、各分析物最大値の「到達時間」をウイルス拡大ピークの時間(赤い囲み)と比較する。ウイルコクソン検定から生じるp値を、関心対象の分析物の上に示す。平均遅延時間(括弧内の中央値時間)もまた示す。白抜きの円は異常値を示す。
【図18−2】図18Aおよび18B。アポトーシスの血漿マーカーの概要。図18A。各データ群に関して、ボックスプロット分析を行った。急性HIV−1、HBVおよびHCVパネルの結果を示し、天地方向の線は、最大値および最小値を示す。スチューデントT検定を用いて、P値を計算した。青い囲みはp<0.01を示す。図18B。最大ウイルス拡大(r0)に比較した分析物ピークのタイミング。ペアード・ウイルコクソン順位和検定から結果を得て、そして低いp値は、(関心対象のピーク日の)2つの平均が有意に異なることを示す。これは、ピークの平均「到達時間」(例えば拡大ピーク日およびTRAILピーク日)が有意に異なることを示す。到達時間間の「遅延」は、平均、中央値、および四分位範囲に関して記載されうる。このパネル上、各分析物最大値の「到達時間」をウイルス拡大ピークの時間(赤い囲み)と比較する。ウイルコクソン検定から生じるp値を、関心対象の分析物の上に示す。平均遅延時間(括弧内の中央値時間)もまた示す。白抜きの円は異常値を示す。
【図19−1】図19Aおよび19B。血漿試料における相対的微粒子数。図19A。研究した30人の被験体各々に関して、各連続時点に関して相対的微粒子数を得た。3人の代表的な被験体を示す。図19B。10人のHBVおよび10人のHCV感染被験体に関して、同じ分析を行った。1人のHCVおよび1人のHBV被験体の結果を示す。
【図19−2】図19Aおよび19B。血漿試料における相対的微粒子数。図19A。研究した30人の被験体各々に関して、各連続時点に関して相対的微粒子数を得た。3人の代表的な被験体を示す。図19B。10人のHBVおよび10人のHCV感染被験体に関して、同じ分析を行った。1人のHCVおよび1人のHBV被験体の結果を示す。
【図20】急性HIV−1感染被験体から採取した血漿MPの透過型電子顕微鏡写真。超遠心によって血漿MPをペレットにし、そしてスクロースパッド上で精製した。MPはサイズ0.05ミクロン〜0.8ミクロンの範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、i)HIV多様性、ii)中和抗体誘導の寛容制約、およびiii)アポトーシス性に誘導される免疫抑制を克服することを目標とする、多構成要素、多機能HIVワクチンに関する。本発明は、中央化HIV遺伝子挿入物(コンセンサス、モザイク)、寛容破壊構成要素(例えばTLRアゴニスト、制御性T細胞阻害)、およびアポトーシスの免疫抑制を阻害しうるかまたはアポトーシス自体を阻害しうる構成要素(例えば抗PS、抗CD36抗体誘導、および/または抗HIV tat抗体誘導)を含むHIVワクチンを提供する。
【0015】
HIV−1エンベロープ免疫に対して通常は作製されない抗体特異性の作製を生じるアジュバントおよび他の免疫措置の使用が先に提唱されてきている(PCT/US2006/013684;米国出願第11/785,007号;米国出願第11/812,992号;米国仮出願第60/960,413号)。この研究は、広く中和する抗HIV−1モノクローナル抗体の多くが自己抗体であり、そして免疫制御調節下にあるようであるという観察に由来する(Haynesら, Science 308:1906(2005), Haynesら, Human Antibodies 14:59(2006))。マウスにおける寛容を破壊するのに用いられてきた1つのアジュバントレジュメは、油性アジュバント中のオリゴCpGである(Tranら, Clin. Immunol. 109:278(2003))。ヒトに関しては、2006または10103 oCpGを含むB型のオリゴCpGが使用可能である(McCluskieおよびKrieg, Curr. Topic. Microbiol. Immunol. 311:155−178(2006))。しかし、寛容調節は、一時的にであってさえ、完全に克服することは困難であり、そして自己抗体産生もまた、制御性T細胞調節下にある(Shevach, Immunity 25:195−201(2006))。したがって、制御性T細胞を一時的に不活性化する措置と組み合わせて、アジュバント措置での免疫を用いると、通常は陰性免疫制御機構によって誘導が防止されている抗HIV−1抗体を誘導可能である。グルココルチコイド誘導性TNFファミリー関連受容体リガンド(GITRL)DNA(Stoneら, J. Virol. 80:1762−72(2006))、CD40リガンドDNA(Stoneら, Clin. Vaccine Immunol. 13:1223−30(2006))で免疫するか、あるいはCD25 mabまたはIL−2−毒素コンジュゲートであるONTAKを同時に投与するか(PCT/US2005/37384、PCT/US06/47591、米国出願第11/302,505号および米国出願第11/665,251号)のいずれかによって、制御性T細胞を不活性化するかまたは除去することも可能である(以下の実施例2に示すデータは、アカゲザルへのONTAKの投与が抗原に対する抗体生成を増進することを立証する)。
【0016】
投与された免疫原に対する寛容を破壊するさらなるアプローチは、リジン−リジンなどの細胞質ドメイン小胞体保持配列を含む組換え挿入遺伝子を設計し、そして小胞体に保持するため、HIV遺伝子(Envelopeなど)をターゲットとすることである(Cornallら, JEM 198:1415−25(2003))。こうした設計遺伝子は、例えば、DNA、組換えアデノウイルス免疫原もしくはDNA、組換え水疱性口内炎ウイルス免疫原またはその組み合わせであってもよい。また、多様な他のベクターのいずれかを用いて、挿入物遺伝子を送達してもよい(例えば表1に示すようなもの)。
【0017】
表1
【0018】
【表1−1】

【0019】
【表1−2】

【0020】
【表1−3】

【0021】
【表1−4】

【0022】
【表1−5】

【0023】
コンセンサス(PCT/US2004/030397、ならびに米国出願第10/572,638号および第11/896,934号)および/またはモザイク(PCT/US2006/032907)遺伝子T細胞およびB細胞ワクチン設計戦略を用いることによって、HIVの多様性に取り組んでもよい。これらの戦略の使用は、HIVのクレード間およびクレード内多様性の多くを排除し、そして野生型HIV遺伝子に勝る、HIV−1に対する交差クレードT細胞およびB細胞応答を誘導しうる(Gaschenら, Science 296:2354(2002); Liaoら, Virology 353:268(2006), Gaoら, J. Virol. 79:1154(2005), Weaverら, J. Virol. 80:6754(2006))。モザイク遺伝子アプローチ(Fischerら, Nature Medicine 13(1):100−106(2007), Epub 2006 Dec 24; PCT/US2006/032907)は、一緒に免疫原として用いた際に、抗HIV T細胞応答を誘導するのに最適なT細胞エピトープ範囲を提供する遺伝子を設計するため、インシリコ進化(in silico evolution)を使用する。したがって、本HIVワクチン構築物の不可欠な部分は、コンセンサスenv、gag、pol、nef、およびtat遺伝子である。好ましい遺伝子には、Los Alamos National Laboratory HIV Sequence Database配列由来の2003年M群コンセンサス遺伝子配列、またはあるいは、Center for HIV AIDS Vaccine Immunologyで開発されたものなどの感染HIV単離体データベースから選択される、より新規のコンセンサス遺伝子配列が含まれる。さらに、gagおよびnefなどのモザイクHIV遺伝子の使用を用いて、T細胞応答を多数のHIV株に広げてもよい。中和抗体の誘導のため、Env構築物は、例えばgpl60、gpl40C、gpl40CFまたはgpl40CFIの形の、M群コンセンサス2001年、CON−S、2003年CON−T、あるいは感染HIV株由来のより新規のコンセンサスEnvであってもよい(Liaoら, Virology 353:268(2006))(gp140CFIは、膜貫通および細胞質ドメインの欠失に加えて、切断部位が欠失され(C)、融合部位が欠失され(F)、そしてgp41免疫優性領域が欠失された(I)、HIV−Iエンベロープ設計を指す)。あるいは、広く反応性の中和抗体の誘導に、2003年A1コンセンサス、2003クレードCコンセンサスEnv(表2、3および4)を用いてもよい(米国出願第10/572,638号)。
【0024】
表2
【0025】
【表2】

【0026】
表3
【0027】
【表3】

【0028】
表4
【0029】
【表4】

【0030】
HIV−1遺伝子を投与するのに用いられるベクターには、プライミング用のDNA(Letvinら, Science 312:1530−33(2006))、ブースト用の組換えアデノウイルス(Barouchら, Nature 441:239−43(2006), Letvinら, Science 312:1530−33(2006), Thornerら, J. Virol. Epub. October 11, 2006)、組換え水疱性口内炎ウイルス(Publicoverら, J. Virol. 79:13231−8(2005))、および弱毒化TB、rBCGまたはrM.スメグマティス(rM. smegmatis)などの組換えマイコバクテリア(Hovavら, J. Virol., epub., October 18, 2006, Yuら, Clin. Vacc. Immunol. 13:1204−11(2006), Derrickら, Immunology, epub. October 31, 2006)が含まれる。これらのベクターはいずれも、プライム/ブースト組み合わせで使用可能であり、そして免疫経路は全身性(例えばIM、SC)または粘膜(po、IN、膣内、直腸内)であってもよい。
【0031】
上に示すように、本発明のワクチン接種アプローチには、HIV−1が誘導するアポトーシスおよび免疫抑制を克服して、粘膜部位でのHIV−1感染後のT細胞およびB細胞応答の遅延を解消するための構成要素が含まれる。急性HIV感染において、多数の抗体種が非常に初期に生じるが、非中和抗gp41抗体が最初に生じ、そして自己中和抗体は感染数ヶ月後まで生じないことが最近示された(図1)(Wei, Nature 422:307−12(2003), Richman Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:4144−9(2003))。SIVに感染したアカゲザルにおいて、感染および血漿ウイルス負荷の増加(ramp−up)と同時に大規模なアポトーシスが生じることを考慮すると、免疫細胞のこうした大規模なアポトーシスがヒト急性HIV感染の極初期の段階で生じているかどうかに関して疑問が生じていた。アポトーシスは、最も一般的には、Fas(CD95)およびFasリガンド(CD178)、TNF受容体IおよびII、ならびにTNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)を含む腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーによって仲介される。
【0032】
FasおよびFasLは、慢性HIV−1感染において調節不全となっている(Cossarizzaら, AIDS 14:346(2000); Westendorpら, Nature 375:497(1995); Sloandら, Blood 89:1357(1997))。急性HIV感染において、血漿FasまたはFasLにおいて上昇があるかどうかを決定する研究が行われてきている。多くのAHI患者において、血漿ウイルス負荷の上昇と一致して、血漿FasLの劇的な増加があることが見出されている(図2)。さらに、すべてではないが何人かの患者において、血漿Fasが同時に上昇する(図3)。
【0033】
TNFR2レベルは、慢性HIVで増加し、そして疾患進行を予測し(Zangerleら, Immunol Lett. 41:229(1994))、そしてTNFR2は、HIVと単球の相互作用の初期段階で誘発される(Rimaniolら, Cytokine 9:9−18(1997))。図4に示すように、ウイルス負荷の増加と一致して、感染プロセス中、何人かのAHI患者で可溶性TNFR2上昇が見られた。
【0034】
最後に、TRAILは、HIV感染中、非感染T細胞のアポトーシスを仲介する(Kasichら, JEM 186:1365(1997); Miuraら, J. Exp. Med. 193:51(2001))。図5は、血漿TRAILレベルもまたAHIで上昇していることを示す。
【0035】
したがって、HIVビリオンおよびHIVエンベロープは、AHIでT細胞死を直接誘導可能であり、可溶性TRAILは、非感染細胞に結合し、そしてAHIにおいて死を誘導することも可能であり、そして細胞のHIV感染および大規模なアポトーシス両方が起こると、AHIにおいて、高レベルのホスファチジルセリン含有細胞および粒子が多い可能性がある。PD−1(プログラム細胞死分子−1)は、慢性HIV感染においてヒトB細胞表面上に存在することが最近示された。これは、ヒトB細胞がHIV感染において、アポトーシスに関してプライミングされることを示唆する(図6)。HIV特異的CD8+ T細胞PD−1発現は、ほとんど制御されていない慢性HIV感染に対するCD8+ T細胞応答と相関する(Petrovasら, JEM 203:2281(2006))。HIV感染細胞およびビリオンの表面上にホスファチジルセリン(PS)が見出されてきており(図7)、そしてCallahanらは、PSが単球のHIV感染に関する補因子であることを見出した(Callahan, J. Immunol 170:4840(2003))。アポトーシス細胞のPS依存性摂取は、TGF−βl分泌を促進し(Huynhら, J. Clin. Invest. 109:41(2002))、そしてPSおよびPS受容体間の相互作用は、in vivoでの抗体応答を阻害する(Hoffmanら, J. Immunol. 174:1393(2005))。抗ウイルスサイトカインであるINF−αは、アポトーシスに対してリンパ球を感作する(Carreroら, JEM 200:535(2004))。慢性HIV感染において、PS+脱落(shed)膜粒子が増加し(Aupeixら, J. Clin. Invest. 99:1546(1997))、そしてアポトーシス微粒子がマクロファージ免疫応答を調節する(Distlerら, Apoptosis 10:731(2005))。アポトーシス微粒子は、非常に炎症促進性であり(Distlerら, PNAS 102:2892(2005))、そして炎症促進性サイトカインの誘導は、HIV感染およびビリオン産生プロセスを増幅させる。酸化PS−CD36相互作用は、アポトーシス細胞のマクロファージ依存性食作用に必須の役割を果たし、そしてB細胞もまたCD36を発現する(Greenbergら, JEM, Nov. 13, 2006, オンライン公開)。
【0036】
したがって、急性HIV感染とともに起こり、TRAILの放出、FAS−FASL相互作用によるアポトーシスの仲介、ならびにPSを含有するウイルス粒子および他の粒子の放出を生じる大規模なアポトーシスは、すべて共謀して最初に宿主の免疫を抑制して、迅速な防御B細胞応答を防止する。
【0037】
本発明には、限定されるわけではないが、リポソームと会合するCON−SまたはCON−T gp140またはHIV envエピトープを伴うかまたは伴わないかいずれかで、PSリポソームなどのPSを含有するHIV免疫原、例えばアジュバントと一緒に投与される2F5−GTH1ペプチド脂質コンジュゲート(図8Aおよび8B)を用いて、寛容を破壊し、そしてPS−CD36相互作用を阻害する抗PS抗体を誘導する、アポトーシスを予防する戦略が含まれる。あるいは、抗CD36抗体を作製するために、組換えCD36がターゲティングされてもよく、好ましくは、抗PSまたは抗CD36抗体の両方が、粘膜部位で誘導されて、アポトーシスが仲介する免疫抑制を防止する。
【0038】
アポトーシスを防止するのに使用可能な本発明の他の戦略は、免疫細胞においてtatがアポトーシスを誘導する能力を阻害するであろう、tatタンパク質(Eusoliら, Microbes Infect. 7:1392−9(2005))に対する抗体を誘導するための、HIVワクチン免疫原中のHIV tat遺伝子またはタンパク質の包含である。使用可能なtatの型には、101アミノ酸tatタンパク質またはこうしたタンパク質をコードする遺伝子が含まれる(Watkinsら, Retrovirology 3:1742(2006))。
【0039】
上述のものに加えて、汎カスパーゼ阻害剤(例えばzVAD−FMK(Deanら, Cancer Treat. Rev. 33:203−212(2007), Mengら Current. Opinion Cell Biol. 18:668−676(2006)を参照されたい)をワクチン中に含めて、抗体応答が迅速に起こることを可能にするアポトーシスと関連する任意のワクチンまたは免疫細胞活性化を同時に阻害してもよい。免疫抑制に関連するいかなるEnvも克服されるであろう。汎カスパーゼ阻害剤はまた、慢性HIV感染の治療にも使用可能である。
【0040】
Etanercept(二量体ヒトTNFR p75−FC融合タンパク質)などのTNFの多様な阻害剤、またはTNFαに対する抗体(InfliximabまたはAdalimumabなど)(EW St. Clair, DS PisetskyおよびBF Haynesによる“Rheumatoid Arthritis”, Lippincott Williams and Wilkins, 2004、特に第31章および第32章を参照されたい)、ならびにFas−Fasリガンド相互作用の阻害剤(Fas−Fcのようなもの)およびTRAIL−DR5相互作用の阻害剤(DR5−Fcなど)(これらを一緒にまたは別個に用いてもよい)とともに、HIV抗原で免疫することによって、免疫抑制性アポトーシス性損傷の修正もまた達成可能である。こうした剤はまた、慢性HIV感染を治療するのにも使用可能である。
【0041】
本発明の多構成要素ワクチンの構成要素は、当該技術分野に周知の技術を用いて、必要に応じて、薬学的に許容されうるキャリアーとともに配合可能である。ワクチン構成要素の適切な投与経路には、必要に応じて、全身性(例えば筋内または皮下)、粘膜または鼻内が含まれる。当業者が最適投薬措置を決定してもよいし、そしてこれは、患者および用いる特定の構成要素に応じて多様でありうる。
【0042】
本発明の特定の側面は、以下の限定されない実施例に、より詳細に記載されうる。
【実施例】
【0043】
実施例1
ワクチン構成要素
多構成要素ワクチンの基本的構成要素は:
1.免疫寛容を破壊する戦略、
2.多様性を克服し、そして広く反応性である中和抗体を誘導する免疫原、
3.急性HIV感染時に生じる免疫および他の細胞の大規模なアポトーシスと関連する免疫抑制を回避する戦略、
4.粘膜免疫応答を提供するベクター/配合物
である。
【0044】
本発明の例は、以下の多構成要素免疫原である:
各免疫付与とともに投与されるDNAプラスミド中のCD40リガンドおよびGITRLと組み合わせた、KK細胞質ドメインモチーフを含む組換えCON−Sコンセンサスgp160 HIV Envを含有するDNAプライム(寛容を破壊し、そして多様性、中和抗体応答に取り組む)、CON−S gp140 Envおよびモザイクgag−nef遺伝子、コンセンサスpol、tat遺伝子を含有する組換え水疱性口内炎ウイルスを含む組換えブースト(多様性、粘膜免疫応答に取り組む)、DNAおよびrVSV免疫付与と一緒に投与されるスクアレン・エマルジョン中の「B」または「C」型oCpG中の組換えCON−S gp140タンパク質プライムおよびブースト(中和抗体応答、免疫寛容破壊)。
【0045】
実施例2
非ヒト霊長類炭疽PAワクチン接種モデル(アカゲザル)
炭疽防御抗原(rPA)に向けた宿主免疫応答に対する一過性制御性T不活性化の影響を試験するため、アカゲザル制御性T細胞枯渇モデルが開発されていた。アカゲザルにONTAK(15mcg/Kg)を5日間注入すると、末梢血中のCD4+/CD25+細胞の割合が有意に減少した(p<0.05)(赤い線対黒い太線;図10)。NHP(アカゲザル)CD25を抗huCD25 mAbクローン2A3(BD Biosciences)で監視することが非常に重要である。ONTAKがhuIL−2−ジフテリア毒素であり、そして動物からCD25+細胞を枯渇させることが知られることに注目することもまた重要である。
【0046】
ONTAKが生体防御免疫原に対する宿主免疫応答を改善するという仮説を試験するため、若年中国アカゲザル(Chinese rhesus monkey)をrPA(防御抗原;25μg)のみで、または5日連続でONTAK(15mcg/kg IV)注入と組み合わせて免疫した。免疫−7日、5日、10日、12日、19日、33日、40日後に、CBC/diff、免疫表現型、化学パネル、血漿および血清のため、動物(n=3/群)から出血させた。図11に示すのは、免疫群におけるPB中のCD4+/CD25制御性T細胞の頻度である。ONTAK注入されたサルは、制御性T細胞区画に明確な減少を有する。PA+ミョウバンで免疫された生理食塩水注入動物における制御性T区画は、影響を受けなかった。
【0047】
2回の測定を用いて、NHPモデル+/−ONTAKにおいて、PAに対する一次体液性応答の度合いおよび品質を評価した。第一に、抗原特異的Igアイソタイプ結合を研究し、そして第二に、TNAアッセイにおいて、血清が炭疽毒素(PA+LF)を中和する能力を決定した。用いたPAの用量(25μg+ミョウバン)は、対数スケール上にプロットされた幾何学的平均終点力価によって示されるように、第19日から抗PA体液性応答を誘導した(図12)。ONTAKは、第19日の単回免疫後、PA特異的IgGおよびIgMの終点結合力価を穏やかに改善したが、この差異は第40日までは続かないことが観察された(図12)。
【0048】
炭疽毒素中和アッセイ(TNA)は、マウスおよびアカゲザル血清で使用するために確立されている。試験血清をアッセイにおける希釈シリーズとして実験した。図13Aに示すのは、時間経過に渡る、1:512の最適希釈に関する中和%曲線である。図13Bに示すのは、免疫19日、33日および40日後の実験群に関するNT50である。免疫33日後、炭疽毒素中和力価ピークにおいて、PA+ミョウバンのみに対してONTAKで改善が観察され、したがって、NHPにおけるONTAKを用いた抗PA応答の機能的増進が示唆された。
【0049】
実施例3
血漿FASリガンド、TNFR2、TRAIL、およびアポトーシス性微粒子のレベルは、急性HIV−1感染において、ウイルス負荷増加中に上昇する
実験詳細
血漿試料
抗体陽転パネル(HIV−1+/HCV−/HBV−、n=30、HIV−1−/HCV−/HBV+、n=10、およびHIV−1−、HCV+/HCV−、n=10)をZeptoMetrix Corporation(ニューヨーク州バッファロー)から得た。各パネルは血漿ドナーからおよそ3日おきに収集した連続血漿アリコット(4〜30の範囲)からなった。HIV−1−/HCV−/HBV−ヒト血漿(n=25)をInnovative Research(ミシガン州サウスフィールド)から得た。すべての研究は、デューク大学ヒト被験体施設内審査委員会によって認可された。
【0050】
ウイルス負荷試験
Quest Diagnostics(ニュージャージー州リンドハースト)によって血漿試料のウイルス負荷試験が行われた(HIV−1 RNA PCR Ultra)。HCVおよびHBVウイルス負荷はZeptometrixによって行われ;Philip Norris、Blood Systems Research Institute、カリフォルニア州サンフランシスコによって選択HCVウイルス負荷が提供された。
【0051】
アポトーシスの血漿マーカーに関するELISA
製造者の指示にしたがって、Fas、Fasリガンド、TRAIL(Diaclone、Besancon Cedex、フランス)およびTNFR2(Hycult Biotechnology、Uden、オランダ)に関するELISAを行った。未希釈で(TRAIL)、1:10に希釈して(TNFR2)、または1:2に希釈して(Fasリガンド)、血漿をアッセイした。
【0052】
アポトーシス性微粒子(MP)定量化
各血漿試料中のMP数をフローサイトメトリーで決定した。LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences、カリフォルニア州サンホセ)上ですべてのフローサイトメトリー分析を行い、そしてFlowJoソフトウェア(オレゴン州アッシュランド)を用いてデータ分析を行った。任意のMP実験で使用する前に、すべての緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム不含PBS)(Cellgro、バージニア州ハーンドン)およびホルムアルデヒド(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を0.22μmフィルター(Millipore、マサチューセッツ州ビラリカ)でろ過した。血漿試料を希釈するのに用いた緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム不含PBS中の1%ホルムアルデヒド)を用いて、バックグラウンドMP数を定義した(フローサイトメーター上、60秒間で〜1500事象が計数される)。MPゲートを定義するため、0.1μm〜1μmのサイズ範囲のFluoSpheres蛍光ミクロスフェア(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)をフローサイトメーター上で分析した。0.1μm、0.2μm、0.5μm、および1.0μmビーズを含むビーズの周りにMPゲートを設定した。1%ホルムアルデヒド/PBS中で各血漿試料を1:100および1:1000に希釈し、そしてデータを60秒間獲得した。最適試料希釈を実験的に決定し、容認基準は、中断数<5%の血漿希釈、およびノイズ対シグナル比<0.1(ノイズ対シグナル比=PBS中のバックグラウンドMP数/実験血漿MP数)であった(図14および15)。
【0053】
微粒子表現型分析
血漿試料(2ml)を5mlのろ過生理食塩水中で希釈し、そして次いで5μmフィルター(Pall Corporation、ニューヨーク州イーストヒルズ)でろ過した。次いで、希釈試料を遠心分離した(200,000xg、4℃で1時間)(Sorvall RC M150 GX、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)。上清の上部2.5mlを取り除き、2.5mlの新鮮な生理食塩水を添加し、そして試料を200,000xgで1時間遠心分離した。1mlのろ過生理食塩水中でペレットを2回洗浄し;最後の洗浄後、900μlの上清を取り除き、そして残った200μlの生理食塩水中にペレットを再懸濁した。10μlのMP懸濁物を抗体および/またはアネキシンVとインキュベーションした(総体積100μlx20分間、20℃、暗所中)。抗体とのインキュベーション用の染色緩衝液として1%BSA(Sigma)を含む生理食塩水を用い、そしてアネキシンV染色には、緩衝液に2.5mM CaClを添加した。アネキシンV対照には、50mM EDTAを緩衝液に添加し、20分間インキュベーションし、生理食塩水/ホルムアルデヒドで体積を500μlに調整し、そして24時間以内にフローサイトメトリーによって分析した。コンジュゲート化抗体には、マウス抗ヒトCD45−PE、CD3−PE、CD4−PE、CD6a、CD63、CCR5−PE、CD14−PE、CD19−PE、およびアイソタイプ対照(BD Biosciences、カリフォルニア州サンホセ)、ならびにAlexaFluor647(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)にコンジュゲート化されたアネキシンVが含まれた。
【0054】
血漿微粒子の電子顕微鏡検査
ろ過生理食塩水中で8mlの血漿を1:5に希釈し、そしてMPをペレットにした(200,000xg x1時間、4℃)。ペレットを洗浄した(200,000xg x1時間、4℃)。1ml生理食塩水中にペレットを再懸濁し、そして2回洗浄した(100,000xg x30分間)。500μlの生理食塩水中にMPペレットを再懸濁し、そして1mlの40%スクロース溶液上に重層し、そしてMPを遠心分離した(100,000xg x90分間)。ペレットを固定し(1%ホルムアルデヒド、4℃一晩)、ペレットにし(100,00xg x60分間)、1%四酸化オスミウム中に10分間浸し、そして生理食塩水でリンスした。ペレットを寒天中にマウントし、そしてエポキシ樹脂中に包埋し、そして60℃で一晩ベーキングした。超薄層切片を切り取り、そして染色し、そしてPhilips CM12透過型電子顕微鏡で調べた。
【0055】
統計分析
すべての血漿抗体陽転パネル全体での参照点を確立するため、HIV−1では100コピー/ml、HCVでは600コピー/ml、そしてHBVでは700コピー/mlにウイルス負荷が到達した日を第「0」日と定義した。
【0056】
HIV−1、HBV、およびHCV感染中のアポトーシスの血漿マーカー中の増加パーセントを決定するため、第0日より前の平均TRAIL、TNFR2、またはFasリガンドレベルを第0日より後の平均レベルに比較し、そして増加パーセントを計算した([(第0日より後の平均−第0日より前の平均)/第0日より後の平均]x100)。
【0057】
感染経過中にアポトーシスの血漿マーカーを比較するため、非感染ドナーにおける、抗体陽転パネルの第一の試料における(最初の観察)、およびウイルス負荷ピーク時の、TRAIL、TNFR2、およびFasリガンドの平均レベルを、HIV−1感染、ならびにHBVおよびHCV感染において比較した(データ未提示)。次いで、各データ群に関してボックスプロット分析を行った。簡潔には、比較する各3群に関して、最大値、最小値、平均値、ならびに第一および第三・四分位(囲みに含まれる)を計算した。異常値(データの第三・四分位および第一・四分位間の相違の1.5倍)を削除した。スチューデントt検定を用いて、各群の平均を比較し、そしてP値を計算した。
【0058】
HIV−1感染中、アポトーシスの血漿マーカーの出現タイミングを分析するため、ウイルス拡大速度を特徴付けるための測定基準を開発した。開発した測定基準には、最大ウイルス拡大速度(r)、およびアポトーシスの各血漿マーカーに関するピーク日が含まれた。これらの分析のため、信頼性がある測定基準を得るには関連ウイルス負荷データがあまりにもわずかしか試料採取されていないために、総数30のうち6人の被験体を排除した。最大拡大を生じるウイルス増加内の2点を用いてウイルス拡大速度(r)を決定した。ウイルス装填および分析物測定基準間のタイミングの関係を確立する目的のため、ペアを形成するデータに関して、ウイルコクソン順位和検定を行った。行った各検定は、最大ウイルス拡大日を測定基準ピーク日と比較した。
【0059】
微粒子の研究のため、現存するフローサイトメトリープロトコルを最適化するために、多様な実験を行った。まず、ポリスチレンビーズの希釈シリーズをLSRIIでアッセイして、許容され得るシグナル対ノイズ比および中断数を決定した(図14)。CD3、CD45、血小板マーカーCD61、およびアネキシンVなどの細胞外マーカーの発現レベルが、1より多い凍結/融解周期では減少することもまた、実験的に決定され、試料完全性の重要性が示された(図15)。
【0060】
結果
TRAIL、TNFR2およびFasリガンドは、急性HIV−1感染中のウイルス負荷増加直前または増加中のいずれかで、大部分の患者において上昇した。
【0061】
1人の血漿ドナー患者と別の患者のウイルス動力学、ならびにアポトーシスの血漿マーカーおよび微粒子レベルのタイミングを比較するため、30人のHIV−1、10人のHCVおよび10人のHBV患者の各々に関して、共通の時点(第0日)を決定した(図16)。第0日は、患者のHIV−1ウイルス負荷が100コピー/mlに到達し、HCVウイルス負荷が600コピー/mlに到達し、そしてHBVウイルス負荷が700コピー/mlに到達した日と定義され、これらのレベルは、各ウイルス負荷決定のための検出限界によって課された。
【0062】
次に、アポトーシスの血漿マーカーの変化が、急性HIV−1感染プロセス中の初期時点で検出可能であるかどうかを決定するため、HIV−1ウイルス負荷が陽性になった各血漿ドナーのすべての血漿試料中で、可溶性TRAIL、TNFR2、およびFasリガンドのレベルをアッセイし、そしてこれらのレベルをHCVおよびHBV初期感染で見られるものと比較した(図17)。第0日より前の平均分析物レベルを第0日より後の平均に比較することによって、血漿可溶性TRAIL、TNFR2およびFasリガンドレベルの変化パーセントを決定した。急性HIV−1感染被験体のうち、27/30は、TRAILの20%より大きい増加を示し、26/30ではTNFR2が増加し、そして23/30ではFasリガンドレベルが増加した(図17B)。比較すると、HCV+およびHBV+感染被験体は、それぞれ、0/10、3/10、および2/10のみ(HBV)、1/10、6/10および7/10のみ(HCV)の被験体で、TRAIL、TNFR2またはFasリガンドの20%を超える上昇を示した(図17C)。
【0063】
ボックスプロット分析を用いて、分析物レベルが、ウイルス負荷増加前の患者から採取した試料に比較して、ウイルス負荷ピーク時点で有意に異なるかどうかを決定した。第0日より前に、各急性HIV−1感染患者から採取した極初期血漿試料に比較して、ウイルス負荷ピーク時点での平均TRAIL、TNFR2、およびFasリガンドレベルは、有意に異なった(TRAILに関してはp<0.01、TNRF2に関してはp<0.001、およびFasリガンドに関してはp<0.001)(図18A)。TRAIL、TNFR2およびFasリガンドレベルピークはまた、非感染血漿試料対照におけるTRAIL、TNFR2、およびFasリガンドのレベルとも有意に異なった(それぞれ、p<0.001、p<0.001、およびp<0.001)(図18A)。
【0064】
ウイルス負荷ピークに比較した、TRAIL、TNFR2およびFasリガンドのピークレベルのタイミングを調べるため、ウイルス負荷ピークに比較したアポトーシス性分析物ピークの発生間の関係、ならびにHIV−1ウイルス負荷ピーク前に、ピークと一致して、またはピーク後に生じる血漿アポトーシス性分析物のピークを有する被験体の数を決定した(表5)。急性HIV−1感染被験体の大部分(TRAILに関しては30/30、TNFR2に関しては27/30、そしてFasリガンドに関しては26/30)は、30日の時間枠(すなわちウイルス負荷ピークの15日前、ピーク時、またはピーク後15日以内)以内に生じる分析物レベルピークを示した(表5)。特に興味深いことに、被験体のTRAILレベルの大部分(21/30)は、ウイルス負荷ピーク前にピークとなり、一方、TNFR2およびFasリガンドレベルは、ウイルス負荷とよりしばしば一致してピークとなった(表5)。
【0065】
表5
【0066】
【表5】

【0067】
研究した30人の急性HIV−1感染患者のうち、大部分はウイルス負荷ピークに近い(15日以内)TRAIL、TNFR2、およびFasリガンドレベルピークを示した。さらに、これらの患者の大部分は、ウイルス負荷がピークとなる前にTRAILレベルピークを示し、そしてTNFR2およびFasリガンドレベルは、ウイルス負荷ピークと一致してピークとなった。研究した10人のHCVおよび10人のHBV被験体に関して、同じ分析を行った。
【0068】
ウイルス動力学に対する分析物レベルピークのタイミングを統計的に分析するため、ペアード・ウイルコクソン順位和検定(paired Wilcoxon rank test)を行った(図18B)。有意なp値は、分析物レベルピークの平均日が、ウイルス拡大ピークの平均日(r)とは有意に異なることを示す。ウイルス拡大速度ピークは、ウイルスが最大速度で複製する日を示す(平均5.5日目)。rが、増殖率Rとは異なることに注目されたい。重要なことに、これらの分析は、TRAILレベルが、ウイルス拡大ピーク後、最初に、または1.7日後にピークとなることを示した。TNFR2レベルが次であり、ウイルス拡大ピークの7.5日後にピークとなり、そしてFasリガンドはrの9.8日後にピークとなった。同じパネルを分析すると、ウイルス負荷は、第0日後、平均13.9日で最大レベルに到達する(中央値13日、四分位範囲3日間)ことが明らかになり、TRAILレベルがウイルス負荷ピークよりはるかに前にピークとなり、一方、TNFR2およびFasリガンドは、最大ウイルス負荷時点に非常に近い時点でピークレベルに達することが示される。
【0069】
血漿微粒子の定量的フローサイトメトリー分析
血漿パネルでは、付随する(cocomitant)末梢血単核細胞試料が利用不能であるため、サイズ〜10μM〜1.0μMの血漿微粒子の相対レベルに関して、血漿パネルをアッセイし、そしてMPに関して、免疫細胞およびエキソソームマーカーの存在を決定した。フローサイトメトリー分析を用いて、MPの相対レベルを決定し、各個体由来の潜伏期血漿試料に対して最初の血漿試料を比較した(図19)。血漿MPを視覚化するため、スクロース勾配上でバンドを形成したMPの透過型電子顕微鏡検査を用いた。上に概略を示す戦略を用いて、抗体陽転パネルの各試料中に存在するMPの相対数を決定した(図14)。急性HIV−1感染被験体の大部分は、ウイルス負荷ピークに近い(第0日より15日前以内または15日後以内)MP数ピークを示した。研究した30のHIV−1抗体陽転パネルのうち、18がウイルス負荷ピークに近い微粒子数ピークを有し、そしてこれらの18のピークのうち11が、ウイルス負荷ピーク直前に生じた(表6)。対照として、HCVおよびHBV抗体陽転パネルもまた分析して、微粒子数を定量化し、そしてMPピークはまったく観察されなかった。
【0070】
表6
【0071】
【表6】

【0072】
研究した30人の急性HIV−1感染患者のうち、大部分はウイルス負荷ピークに近い(15日以内)MPレベルピークを示し、そしてこれらの患者の大部分は、ウイルス負荷がピークとなる前にMPピークを示した。
【0073】
血漿微粒子の表現型的および顕微鏡的分析
図20は、スクロース勾配上でのMPバンド形成後の血漿MPの透過型電子顕微鏡写真である。
【0074】
上に引用するすべての文献および他の情報供給源は、その全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において、HIV−1に対する免疫応答の産生を誘導する方法であって:
i)中央化HIV−1遺伝子配列、
ii)哺乳動物免疫寛容を破壊する剤、および
iii)HIV−1が誘導するアポトーシスまたはHIV−1が誘導するアポトーシスの免疫抑制効果を阻害する剤
を前記哺乳動物に投与する工程を含む、
ここで(i)、(ii)および(iii)が前記産生を達成するのに十分な量で投与される
前記方法。
【請求項2】
前記中央化HIV−1遺伝子配列が、コンセンサスまたはモザイクHIV−1遺伝子配列である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記中央化HIV−1遺伝子配列がベクター中に存在する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスベクターが、組換えアデノウイルスベクターまたは組換え水疱性口内炎ウイルスベクターである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ベクターが組換えマイコバクテリアベクターである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記組換えマイコバクテリアベクターが、弱毒化TB、rBCGまたはrM.スメグマティス(rM. smegmatis)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記中央化HIV−1遺伝子配列が、コンセンサスHIV−1遺伝子配列である、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記コンセンサスHIV−1遺伝子配列が、コンセンサスHIV−1 env、gag、pol、nefまたはtat遺伝子配列である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コンセンサスHIV−1遺伝子配列が、コンセンサスHIV−1 env遺伝子配列である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記コンセンサスHIV−1 env遺伝子配列が、コンセンサスHIV−1 gp160遺伝子配列である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記中央化HIV−1遺伝子配列が、モザイクHIV−1遺伝子配列である、請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記モザイクHIV−1遺伝子配列が、モザイクHIV−1 gagまたはnef遺伝子配列である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記中央化HIV−1遺伝子配列が、細胞質ドメイン小胞体保持配列をコードする配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記細胞質ドメイン小胞体保持配列がリジン−リジンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物免疫寛容を破壊する前記剤が、制御性T細胞阻害剤またはTLR−9アゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物免疫寛容を破壊する前記剤が、オリゴCpGを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記オリゴCpGが油性アジュバント中にある、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記オリゴCpGがオリゴCpGのB型である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物免疫寛容を破壊する前記剤が、制御性T細胞阻害剤である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記制御性T細胞阻害剤が、グルココルチコイド誘導性TNFファミリー関連受容体リガンド(GITRL)コード配列、抗CD25抗体またはONTAKを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する前記剤が、抗ホスファチジルセリン(PS)抗体、抗CD36抗体、または抗HIV tat抗体を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する剤が、抗PS抗体を誘導し、そしてPSリポソームを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記PS−リポソームがHIV免疫原を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記PS−リポソームがHIV envエピトープを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記HIV免疫原が2F5−GTH1ペプチド脂質コンジュゲートを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記PSリポソームがCON−Sを含む、請求項23記載の方法。
【請求項28】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する前記剤が、PS−CD36相互作用を阻害する抗PS抗体を誘導する、請求項22記載の方法。
【請求項29】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する前記剤が、抗CD36抗体を誘導する、請求項22記載の方法。
【請求項30】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する前記剤が、前記哺乳動物の粘膜部位で、抗PSまたは抗CD36抗体を誘導する、請求項22記載の方法。
【請求項31】
HIV−1が誘導するアポトーシスを阻害する前記剤が、抗HIV tat抗体を誘導する、請求項22記載の方法。
【請求項32】
HIV−1が誘導するアポトーシスの免疫抑制効果を阻害する前記剤を投与する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
HIV−1が誘導するアポトーシスの免疫抑制効果を阻害する前記剤が、TNF阻害剤を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記TNF阻害剤が、TNF受容体に対するモノクローナル抗体、Fas−Fasリガンド相互作用の阻害剤、またはTRAIL−DR5相互作用の阻害剤を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、HIV−1が誘導するアポトーシスに関連する免疫細胞活性化を阻害するのに十分な量の汎カスパーゼ阻害剤を、前記哺乳動物に投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項37】
中央化HIV−1遺伝子配列、哺乳動物免疫寛容を破壊する剤、およびHIV−1が誘導するアポトーシスまたはアポトーシスの免疫抑制効果を阻害する剤を含む、組成物。

【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−510226(P2010−510226A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537233(P2009−537233)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/024122
【国際公開番号】WO2008/063586
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(591101777)デューク ユニバーシティ (10)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】