多機能カテーテルおよびその使用
薬剤を治療の領域に送達するためのカテーテルが提示される。カテーテルは、カテーテル本体、カテーテル本体に結合されたバルーン、第1のルーメン、および第2のルーメンを含む。バルーンアセンブリは、離間されたバルーンを有し、その離間されたバルーンはバルーンの間の領域を画定する。第1のルーメンはカテーテル本体に沿って延び、バルーンの膨張レベルを制御するために膨張物質をバルーンに送る。第2のルーメンは、カテーテル本体に沿って延び、バルーンの間の領域に出口を有する。カテーテルが用いられている間、血液のような生物学的流体が迂回するために第3のルーメンが存在しても良い。このカテーテルを使用する方法もまた提供される。方法は、バルーンを同時に膨張させて治療領域を孤立させることと、ルーメンの1つを介して治療領域に薬剤を添加することを伴う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2005年4月1日に出願され、“多機能カテーテルおよびその使用”と題する米国特許出願シリアル番号11/097,582の一部継続であり、その特許出願に対して米国特許法第120条の下に優先権を主張するが、米国特許出願シリアル番号11/097,582もまた、2003年1月31日に出願された米国特許出願シリアル番号10/355,017の一部継続出願であり、その特許出願に対して米国特許法第120条の下に優先権を主張し、米国特許出願シリアル番号10/355,017はまた、2002年2月1日に出願された米国仮出願番号60/353,305および2002年6月7日に出願された60/387,260に対して米国特許法第119(e)条の利益を主張し、これら全ては参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
医療デバイスおよび医療処置の工程が記述され、特にカテーテルが記述される。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、脈管系および他の解剖学上の空間に医療工程中にアクセスするために広く用いられてきた。カテーテルは、点滴治療のために、および、様々な病気の治療のための物質または器具の挿入または配置のために、用いられ得る。カテーテルはまた、たとえば、動脈プラークおよび動脈瘤の治療のために、バルーンシステムの追加によって変更され得る。
【0004】
動脈プラークは、コレステロールが血液中を循環するときに動脈壁上に成長し、プラークが大きくなるにつれ、動脈は狭くなり硬くなる。この過程は、プラークの蓄積が動脈の壁を厚くするので、アテローム性動脈硬化と呼ばれ、“動脈硬化”として一般に知られており、血液がその中を流れる空間を狭くする。血管が狭くなることまたは血管が塞がることはまた、“狭窄”として参照される。
【0005】
動脈プラークを治療する通常の方法の一つは、バルーン血管形成法である。脈管系の様々な閉塞性の病気の処置では十分に確立された手続きとして、バルーン血管形成法が、腸骨、大腿骨、腎臓、冠状動脈、および脳血管系の閉塞性障害に対して適用されてきた。典型的には、小さな可撓性ガイドワイヤを、ガイドカテーテルを通って血管に進ませ、そして狭窄を横切るまで進ませる。次にバルーンカテーテルを、ワイヤの上を進ませ、狭窄を横切って配置される。バルーンは通常、血管を広げるために短い時間の間だけ膨張され、そして収縮される。代替として、狭窄は化学的手段によって治療しても良い。たとえば、Henry Wolinskyに対する米国特許公報第4,636,195号は、動脈プラークの周りにチャンバを生成するために拡張可能な遠位バルーンセグメントおよび近位バルーンセグメント、ならびにプラークを溶解するために可溶性液体をチャンバに送達するための細管(コンデュイット)を有するカテーテルを記述している。John Shulzeに対する米国特許公報第6,056,721号はまた、脈管の細管内の閉塞物質を治療するためのバルーンカテーテルデバイスを記述している。そのデバイスは、近位端と遠位端の間に延びる細長いカテーテル本体を含む。体液の流れを妨げるためにバルーンが遠位端に取り付けられ、閉塞物質を治療するためにカテーテル本体から薬が放出される。狭窄を治療するための他の方法は、電離放射線およびレーザー蒸着を含む。
【0006】
これら全ての工程は通常、ある程度、血管壁の生物学的反応を引き起し、しばしば治療部位に新たな腫瘍(グロース)および血管腔の顕著な縮小(再狭窄)をもたらす。したがって、バルーン血管形成の後に治療部位にステントを配置して、再狭窄を防ぐのが一般的な工程である。ステントは通常、導入カテーテルによって圧縮された形態で目標領域に導入され、次に特定のバルーンカテーテルを用いてその場で広げられる。ステントは、広げられた状態でも適所に留まって、血管の元々の形状が本質的に再現されるような方法で血管の壁を支持するであろう。ステントはその場で形成されても良い。たとえば、Stuart Edwardsらに対する米国特許公報第6,039,757号は全般的に、体内腔中のその場で有窓性ステントを形成するためのデバイスを記述している。簡単に言えば、体内腔およびステント形成デバイスは、モールド空間を形成し、その中には流動性組成物が与えられ、一連の開窓を有するステントの形状をした非流動性化合物に転換される。
【0007】
“動脈瘤”なる用語は、血管壁の損傷又は血管壁の弱さによって引き起される動脈の異常な拡大または隆起のことを言う。動脈瘤はあらゆるタイプの体血管中で生じ得るが、動脈瘤はほとんど常に動脈中に形成される。破裂した動脈は、内出血をもたらし得て、内出血はしばしば体機能の深刻な障害および死までもを結果として生じさせる。動脈瘤の伝統的な治療は外科的クリッピングであるが、外科的クリッピングは大手術を要求し、脳のような生命維持に必要な器官の内部の動脈瘤上では実行することが出来ない。もっと侵襲的ではない技法、つまり血管内コイリングが、別の方法では動脈瘤を治療できない多くの患者を治療するための実行可能な代替法として開発されてきた。血管内コイリング工程では、マイクロカテーテルが患者の鼠径領域中の大腿部動脈に挿入される。マイクロカテーテルは、患者の血管(動脈)を通って大腿部動脈から動脈瘤の場所まで到達する。マトリックスコイルがカテーテルを通って動脈瘤まで送り込まれ、動脈瘤を満たし、動脈から動脈瘤を密封する。動物研究では、コイルは、動脈瘤の内部の結合(瘢痕)組織の発達を促進することが分かっていた。結合組織は、動脈中の血液の流れから動脈瘤を除外した。血液循環から閉塞された動脈瘤では、破裂の危険は減少していることだろう。
【0008】
血管内コイルシステムを用いて動脈瘤を効果的に治療するために、コイルは動脈瘤に挿入され、適切な構造で動脈瘤の内部に配置されなくてはならない。しかしながら、この過程はしばしば、時間が掛かるし、経験を積んだ技師を必要とする。
【0009】
現在効果的に治療されない別の疾患は癌である。腫瘍を除去するための最新の努力は、化学療法、放射線治療、および組織の外科的切除などのシステマティック(系統的)なアプローチを含む。腫瘍が血管であるときは、化学療法および放射線療法は、期待するほど効果的ではないが、それは有効な特異性のレベルで腫瘍を目標とすることが難しく、ならびに化学療法および放射線の小さなパーセンテージしか、腫瘍に送り込まれた毛細管に“押し込まれ”ないからである。化学療法および放射線の小さなパーセンテージしか実際に腫瘍を捉えず、化学療法および放射線療法の多くは腫瘍の代わりに結局は健康な細胞に到達する。腫瘍を殺すためにより目標を絞ったアプローチを可能とする治療方法が望まれている。
【0010】
多くのカテーテルが専用化され、特定の医療工程にのみ用いることができる。たとえば、血管形成カテーテルは、動脈瘤の治療には使うことはできないし、逆に、動脈瘤の治療のために設計されたカテーテルは、狭窄症のために用いることはできない。バルーン血管形成の場合には、血管形成およびステント取り付けは一般的に、2つの異なる処分可能でロープロファイルなガイドカテーテルを必要とする。カテーテルの挿入および取り外しは時間の掛かる過程であり、カテーテルは高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コストを削減し効率を改善するために、狭窄症、動脈瘤、および脈管癌などの複数の疾患を治療するために用いられ得る1つのカテーテルが望まれているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図1B】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図1C】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図2A】膨張したバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面断面図を示している。
【図2B】多機能カテーテルの近位端の断面図を示している。
【図3】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて動脈プラークを治療する方法を示す流れ図である。
【図4A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4E】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図5】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する方法を示す流れ図である。
【図6A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図7】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて腫瘍を治療する方法を示す流れ図である。
【図8A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図9】多機能カテーテルの代替の実施形態を示している。
【図10】図9の代替のカテーテルを用いる治療方法を示す流れ図を示している。
【図11】多機能カテーテルの別の実施形態を示している。
【図12】図11中に示されている多機能カテーテルの近位部の詳細を示している。
【図13】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるマニフォールドの詳細を示している。
【図14A】図11中に示されている多機能カテーテルの近位突き出し部を示している。
【図14B】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位突き出し部を示している。
【図15A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張の詳細を示している。
【図15B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張の詳細を示している。
【図16A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部である注入拡張の詳細を示している。
【図16B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部である注入拡張の詳細を示している。
【図17A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張の詳細を示している。
【図17B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張の詳細を示している。
【図18】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図19】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図20】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図21】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図22A】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部の詳細を示している。
【図22B】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態において、薬剤を治療の領域に送達するためのカテーテルが提供される。カテーテルは、カテーテル本体、カテーテル本体に結合されるバルーンアセンブリ、第1のルーメン、および第2のルーメンを含む。バルーンアセンブリは、離間された複数のバルーンを有し、離間されたバルーンはバルーンの間に領域を画定する。第1のルーメンはカテーテル本体に沿って延び、バルーンの膨張レベルを制御するために、膨張物質をバルーンに送る。第2のルーメンは、カテーテル本体に沿って延び、バルーンの間の領域に出口を有する。バルーンアセンブリは、2つのバルーン要素を有しても良いが、バルーン要素の数はそのようには限定されない。第2のルーメンは、2つのバルーン要素の間に位置する治療部位に治療物質/薬剤を送達するために用いられ得て、治療物質はその治療部位に留まり続ける。治療物質/薬剤は、化学的療法薬、抗腫瘍薬、プレステント薬、生理食塩水物質、塞栓性物質、造影剤、プラーク除去剤、接着剤、および/または以下でより詳細に記述するようなこれらの1つ以上の組み合わせであっても良い。治療物質/薬剤は、液体または気体または溶解固形物であっても良い。以下で記述される実施形態の各々において、カテーテルは、カテーテルの容易な挿入を可能とする親水性物質から形成されても、または親水性コーティングを有しても良い。
【0014】
別の実施形態では、薬剤を治療領域に送達するための方法が記述される。方法は、複数の膨張可能なバルーンに取り付けられたカテーテルを与えることと、治療の領域がバルーンの間となるようにカテーテルを配置すること、を含む。カテーテルは、カテーテルに沿って延びる第1のルーメンおよび第2のルーメンを有する。複数のバルーンの膨張レベルは同時に制御され、バルーンの間に治療領域を形成する。膨張レベルは、生理食塩水(saline)などの膨張物質を、バルーンの各々への開口を有する第1のルーメンを通って送ることによって制御される。薬剤は第2のルーメンを通って治療領域に送られる。この方法では2つの膨張可能なバルーンが用いられるが、方法はそのようには限定されない。
【0015】
さらに別の実施形態では、癌治療のためのカテーテルが提供される。カテーテルは、近位端および遠位端を有するカテーテル本体と、可撓性カテーテル本体の近位端の周りで膨張するように配置される第1のバルーンと、可撓性カテーテル本体の遠位端の周りで膨張するように配置される第2のバルーン、を含む。可撓性カテーテル本体は、治療中に流体がカテーテルを通り治療領域を迂回する(バイパスする)ことを可能とする第1のルーメン、第1のバルーンおよび第2のバルーンを膨張させるための第2のルーメン、ならびに薬剤を第1のバルーンと第2のバルーンの間の開口に送るための第3のルーメンを含む。
【0016】
以下の詳細な記述は、同業者が本発明を作製し用いることが可能となるように提示される。説明のために、特定の名称が詳細な理解を与えるために使われる。しかしながら、当業者には自明であろうが、特定の名称および詳細は本発明を実施するためには必要ではない。特定の用途の記述は、代表的な例としてのみ提示される。実施形態に対する様々な変形は当業者には容易に明らかであろうし、本明細書中で定義される一般原理は、本発明の範囲を逸脱することなく他の実施形態および用途に適用されても良い。したがって、本発明は、示されている実施形態に限定されることは意図されず、本明細書中に開示された原理および特徴と矛盾しない最も広く可能な範囲に一致する。
【0017】
ここで図1A〜1Cを参照しながら、本発明の多機能カテーテルの様々な実施形態を記述しよう。以下でより詳細に記述されるように、多機能カテーテルは、動脈プラークの除去、ステントの設置、薬の注入、動脈瘤または血管の分岐の密封、生物学的経路の拡張、および他の用途に用いられても良い。
【0018】
図1Aに示されているように、全般的に参照符号100によって表される多機能カテーテルは、可撓性管状カテーテル本体102であって内側ルーメン104、近位端105、および遠位端106を有するカテーテル本体102と、カテーテル本体102の遠位端106において複数段階に膨張が可能な膨張可能なバルーンアセンブリ108と、生物学的流体(たとえば血液)が経路中を流れることを許容するように適合された少なくとも1つの流体送達細管(流体デリバリーコンデュイット)110と、バルーンアセンブリ108を膨張および収縮させる少なくとも1つのバルーン制御細管112を有する。多機能カテーテル100はさらに、図1B中に図示されているように、バルーンアセンブリ108の外周面上に製造済みステント114、および/または、図1C中に図示されているように、カテーテル本体102の遠位端106に磁化金属116を含んでも良い。磁化金属116は、多機能カテーテル100のオペレータが、たとえば3次元画像を見ながら、磁場によってカテーテル100を生物学的経路を通って目標部位まで動かすことを可能とする。生物学的経路は、限定はされないが、血管、気道、尿路、消化管、生殖管、および胆管を含む。好適な実施形態では、多機能カテーテル100は、直径が近似的に0.03から0.07インチである。ある特定の工程のために選択された多機能カテーテル100の絶対寸法は、当業者によく理解されているように、目標部位の位置およびその目標部位にアクセスするために用いられる生物学的経路のサイズに依存する。
【0019】
ここで図2Aおよび図2B中の断面図を参照すると、カテーテル本体ルーメン104は、ガイドワイヤ202が近位端105で入り、遠位端106で出るようにすることを可能にする。本体ルーメン202はまた、工程の間、血液がカテーテルを通って流れることを可能とする。典型的には、ガイドワイヤ202は、生物学的経路内に配置され、治療部位を越えて進められる。次にカテーテル100は、配置済みのガイドワイヤ202の経路を用いて、ガイドワイヤ202の上に配置され、治療部位に進められ、治療部位まで案内される。様々なタイプのガイドワイヤが用いられても良い。例えば、一般的にはニッケルで作られ、好適には0.018インチまたはそれより小さい直径の金属ワイヤが用いられても良い。ガイドワイヤ202は、治療工程中に取り外され、取り替えられても良い。
【0020】
さらに図2Aを参照すると、バルーンアセンブリ108は、膨張したとき、少なくとも3つのバルーン要素、即ち近位バルーン要素124、中央バルーン要素126、および遠位バルーン要素128を有している。中央バルーン要素126は、少なくとも2つの異なる段階に膨張することが可能である。一実施形態では、3つのバルーン要素124、126および128は、バルーンアセンブリ108の一部として一体化され、バルーン制御細管112によってまとめて制御される。別の実施形態では、中央バルーン要素126は、バルーン制御細管112によって独立に制御されても良い。さらに別の実施形態では、3つのバルーン要素の各々は、バルーン制御細管112によって個別に制御されても良い。個別化された制御は、1つのバルーン要素が、バルーンアセンブリ108中の他のバルーン要素の膨張状態に影響を与えることなく、膨張または収縮されることを可能にする。図2Aに示されているように、近位バルーン要素124および遠位バルーン要素128は、膨張したときに、バルーンアセンブリ108とプラーク208の周りの動脈壁206の間にチャンバ204を形成する。チャンバ204の体積は、中央バルーン126を異なる段階に膨張させることによって調整され得る。
【0021】
カテーテル本体102は、たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、および塩化ポリビニールまたはポリ塩化ビニリデンなどのポリビニルハライドを含む、容易に入手可能で非毒性の可撓性ポリマーのいずれからも作ることが出来る。バルーンアセンブリ108は、圧力下で拡張可能であり、圧力から開放されたときに収縮するのに十分な弾性を有するように製造された類似の物質から製作されても良い。バルーン要素の外寸は、予め設定された圧力において、所望の直径に達するようなものであろう。好適な実施形態では、近位および遠位バルーン要素124および128は、約75mmから150mmHgの第1の予め設定された圧力において、所望の直径に達し、もし圧力が15気圧の高さほどまで増加してさえも外寸は維持されるが、一方、中央バルーン要素126は、第1の予め設定された圧力で第1の直径に達し、別の予め設定された圧力では別の半径に達する。
【0022】
バルーンに対して選択された絶対寸法は、治療を伴う血管の半径に依存するだろう。一実施形態では、近位および遠位バルーン要素124および128は、長さが約0.3mmから約10mmであり、拡大した直径は近似的に同一の範囲にあって良い。膨張したバルーンの形状は、円錐形、球形、正方形または特定の用途に対して便利であるいかなる形状であっても良い。中央バルーン126は、近位および遠位バルーン124および128と同一の直径領域に膨張可能であるが、長さは好適には約0.4から2インチである。
【0023】
再び図2Aおよび図2Bを参照すると、流体送達細管110およびバルーン制御細管112は、カテーテル本体102内に形成されている。流体送達細管110は、(今後は流体として参照される)流体および/または気体がチャンバ204の中へおよび/またはチャンバ204から外へ流れるようにすることを可能とする1つ以上の流体送達チャンネルを含む。当業者によって理解されるように、1つより多い流体送達細管110が、カテーテル本体102内に形成されても良い。バルーン制御細管112はまた、バルーンアセンブリ108の膨張/収縮のために、膨張物質がバルーンアセンブリ108の中へおよび/またはバルーンアセンブリ108から外へ流れるようにすることを可能とする1つ以上の溝を含む。膨張物質は、生理食塩水溶液(saline solution)などの、たとえ漏れがあったとしても治療患者にとって安全であろういかなる液体または気体であっても良い。流体送達細管110およびバルーン制御細管112は、テフロン、ポリウレタン、ポリエチレンまたは他の類似の物質を用いて形成されても良い。
【0024】
ここで図面の図3を参照すると、参照符号300で全般的に表される、本発明の多機能カテーテルを用いて動脈プラークを治療する方法が示されている。第一に、多機能カテーテル100をプラーク部位に進ませる(ステップ302)。第二に、プラークの周囲に潅流チャンバを形成するためにバルーンアセンブリを膨張させる(ステップ304)。第三に、プラークを溶解または蒸解するために潅流チャンバにプラーク除去剤を潅流する(ステップ306)。第四に、再狭窄を防ぐために、ステントを治療部位に配置する(ステップ308)。一実施形態では、ステントは、治療部位においてその場で非流動組成物に変換される流動組成物を用いて形成される。別の実施形態では、ステントは、予め製造され、図1B中に示されるように、多機能カテーテル100の一部である。最後に、多機能カテーテル100は引き抜かれ、ステントは細胞壁の治癒を助けるために治療部位に残される(ステップ310)。
【0025】
治療工程はさらに図4A〜図4E中に示されている。図4A中に示されるように、多機能カテーテル100を治療部位に進ませて、バルーンアセンブリ108をプラーク208の領域内に正確に配置させる。バルーンアセンブリ108は次に、プラーク208の周りにチャンバ204を形成するために、第一段階まで膨張される(図4B)。次にプラーク除去剤がチャンバ204内に送達される。プラーク除去剤は、上でより詳細に議論されているように、(図2A中に示されている)流体送達細管110を介して圧力を印加することによって、または、中央バルーン要素126の拡大によって、プラークに押し付けられ得る。プラーク除去剤は、プラーク(主としてコレステロール)が溶解されるまで、チャンバ204に再循環されても良い。所望の効果が得られた後、次にチャンバ204は、プラーク除去剤のあらゆる痕跡を取り除くために、生理食塩水などの洗浄溶液を用いて洗浄される。次のステップでは、バルーンアセンブリ108は第二段階まで膨張される(図4C)。この段階では、プラーク208によってあけられた空間のほとんどは、さらに膨らまされたバルーンアセンブリ108によって占められる。参照符号204´によって表されるずっと小さ目のチャンバは、ここでは、特別仕様のステントの形成のためのモールドとして機能する。図4D中に示されているように、チャンバ204´は、(図2A中に示されている)流体送達細管110を通って送達される流動性プレステント組成物で満たされる。プレステント組成物はチャンバ204´中で固化され、ステント210を形成する。バルーンアセンブリ108は次に収縮され、多機能カテーテルは引き抜かれ、ステント210が治療部位に残される(図4E)。好適な実施形態では、ステント210は、再狭窄および凝固の発生を減らすために、ある物質を含んでいるまたはある物質でコーティングされていても良い。別の好適な実施形態では、チャンバ204´はステント210のために流線形状の輪郭を示し、ステント210上での血液凝固の危険性を減らす。
【0026】
図4Bのプラーク除去工程に関して、様々なタイプのプラーク除去剤が多機能カテーテル100と共に用いられ得る。一般に、プラーク除去剤は非毒性であるべきであり、血液の凝固を引き起すべきではない。含まれる体積の小ささ、たとえば約0.1から約0.5ミリリットルゆえに、通常、内用にはあまりにも有毒であると考えられているにも関わらず、多くの極性有機溶剤をコレステロールおよびそのエステルの溶解のために用いることができる。これらの有機溶剤は、たとえば、アセトン、エーテル、エタノール、およびこれらの混合物を含む。
【0027】
プラーク除去剤はまた、リン脂肪を含む等張水性緩衝溶液を含む。リン脂肪は、加水分解によって脂肪酸、リン酸、通常はグリセリンであるアルコール、およびコリンまたはエタノールアミンなどの窒素性塩基が生成される自然界で入手可能な合成物である。リン脂肪の例は、レシチン、ケファリン、スフィンゴミエリンを含む。レシチンまたは他のリン脂肪を含むプラーク除去剤の有効性は、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、グリココール酸、およびタウロコール酸などの胆汁酸の追加によって改善され得る。
【0028】
プラーク除去剤はまた、酵素または酵素の混合物を含んでも良い。一実施形態では、酵素は、コレステロールをステロールおよび脂肪酸に加水分解する膵液コレステロールエステラーゼである。別の実施形態では、酵素はコラゲナーゼである。コラゲナーゼは、プラークの主要な支持構造であるコラーゲンを開裂する。そしてプラーク本体は崩壊する。パパイン、キモトリプシン、コンドロイチナーゼ、およびヒアルロニダーゼなどの他の酵素がまた、コラゲナーゼと一緒に用いられても、またはコラゲナーゼの代替として用いられても良い。酵素は、胆汁酸もしくはリン脂肪と一緒にまたは胆汁酸もしくはリン脂肪抜きのいずれかで用いられ得る。酵素は、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液、リンガー乳酸緩衝液等を含む多くの生理学的に許容可能な緩衝液中で可溶化され得る。
【0029】
好適な実施形態では、流体送達システム、好適には複数の流体送達チャンネルを有する流体送達システムが用いられる。通常、流体送達細管110を通ってチャンバ204内をプラーク除去剤で灌流するために、自動機械が用いられる。同様に、バルーンアセンブリ108の膨張および収縮は、バルーン制御細管112に接続された自動機械によって制御され得る。
【0030】
様々な流動性物質が、その場所にステント210を形成するために用いられ得る。流動性プレステント組成物は、1つ以上の成分から形成され得るが、その成分は、必要不可欠な生物学的適合特性を有し、その場で固体ステント組成物に変換され得る。典型的には、液固相転移が化学的触媒の導入、および/または、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーなどのエネルギーの導入によって引き起される。この相転移の可能性のある物質は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,899,917号公報中で詳細に議論されている。
【0031】
プレステント組成物はまた、たんぱく質(プロテイン)および/または多糖(ポリサッカロイド)を含んでも良い。たんぱく質/多糖成分の例は、限定はされないが、コラーゲン、フィブリン(繊維素)、エラスチン(弾性素)、フィブロネクチン、ビロネクチン、アグリン、アルブミン、ラミニン、ゼラチン、セルロース、加工セルロース、スターチ(でんぷん)、加工スターチ、合成ポリペプチド、アセチル化コラーゲン、スルホン酸化コラーゲンおよびリン酸化コラーゲン、ならびにグリコサミノグリカン(ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、硫酸コロンドイン(chrondoin))を含む。
【0032】
プレステント組成物は、電流またはRFエネルギーを伝導するのに十分なイオン強度を有する水溶性電解質溶液を含んでも良い。プレステント組成物はまた、創傷治癒を行うために補強剤および補助剤を含んでも良い。補強剤の例は、限定はされないが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)−コ−(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ベータヒドロキシ酪酸)、ポリ(無水物)、およびポリ(オルトエステル)を含む。
【0033】
プレステント組成物はまた、マイクロ波に対して高い感受率および吸収度を有する物質を含んでも良い。そのような物質は、限定はされないが、酸化第二鉄のような金属酸化物、アセチレンブラックおよびグラファイトのような石炭系物質、またはアルコールもしくは水のようなヒドロキシル(水酸基)含有物質を含む。
【0034】
もしプレステント組成物がフリーラジカル種によって媒介される共有結合の形成によって固化されるならば、熱的に活性化されたフリーラジカル開始剤および/または促進剤がその組成物に含まれても良い。そのような熱的開始剤物質は、限定はされないが、過酸化ベンゾイルもしくは過酸化ラウロイルもしくは過硫酸アンモニウムのような過酸化物質、またはアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBIN、Vazo 64)のようなアンアゾ(anazo)物質を含む。促進剤物質は、限定はされないが、トリエタノールアミン(TEOA)のようなアミン、ベンゾインおよびアセトインのようなアルファヒドロキシケトン、およびアスコルビン酸などの還元剤、ならびに誘導体を含む。
【0035】
プレステント物質には、治療を行い再狭窄を防ぐために、治療薬を混合することも可能である。治療薬の例は、限定はされないが、シクロポリン、アドリアマイシン、および等価物のような免疫抑制薬、ヘパリン、抗血小板薬、繊維素溶解性および血栓溶解性薬剤のような抗凝固薬、抗炎症薬、ならびに成長因子を含む。代替として、ステント210は、再狭窄および凝固を減らすために物質でコーティングされていても良い。
【0036】
ステント組成物はまた、生体吸収性物質から形成されていても良く、それ自身が周囲の組織に生体吸収されても良い。
【0037】
本発明の多機能カテーテル100はまた、動脈瘤を治療するために用いられ得る。以前に記述したように、血管内コイルシステムを用いる治療はしばしば、時間が掛かるし、経験を積んだ技師を必要とする。本発明の多機能カテーテルは、比較的簡単で短時間で終わる、動脈瘤に対する代替の治療法を与えるが、その治療法は特に緊急事態で有用である。
【0038】
ここで図5を参照すると、全般的に参照符号500で示される、本発明の多機能カテーテル100を用いて動脈瘤を治療する方法の流れ図が図示されている。第一に、多機能カテーテル100を動脈瘤部位に進ませる(ステップ502)。次に動脈瘤によって弱くなった領域の周りにチャンバを形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(ステップ504)。動脈瘤中の血液は、血管痙攣および水頭症を防ぐために(図2A中に示されている)流体送達細管110を通って除去され得る(ステップ506)。次に動脈瘤を密封するために、ステントが弱くなった領域の周りに配置され(ステップ508)、多機能カテーテルは引き抜かれる(ステップ510)。以前に記述したように、ステントは製造済みステントであっても良いし、その場で形成されても良い。
【0039】
図5に関連して上で説明された治療工程はさらに、図6A〜図6D中に図示されている。図6A中に示されているように、多機能カテーテル100は治療部位に進められ、バルーンアセンブリ108は、動脈瘤602によって弱くなった領域中に配置される。次に、動脈瘤602の近傍にチャンバ204を形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(図6B)。動脈瘤602から血液を除去するために、負圧がチャンバ204内部に流体送達細管110によって形成され得る。次にステント604が、動脈瘤602によって弱くなった領域に形成される(図6Cおよび図6D)。緊急時には、動脈瘤602を迅速に密封するために、製造済みステントが据え付けられても良い。当業者には容易に理解されるだろうが、方法500は体内のほとんどどんな動脈瘤に対しても使用することができる。
【0040】
本発明の多機能カテーテル100はまた、腫瘍学的目的に対しても用いることができる。本発明の血管内カテーテルを使用することは、脈管系腫瘍を効果的に目標とする治療を提供するが、それは他の器官への血液供給を減ずることなく、カテーテルを腫瘍に非常に近づけることが可能だからである。血管内カテーテルは、腫瘍に繋がる主要な血管の一つの中に配置される。腫瘍は1つ以上の分岐血管を介して主要な血管に接続され、分岐血管を通る血液流は(たとえば、酸素および栄養を腫瘍に送達することによって)腫瘍の生命を維持し続ける。本発明の血管内カテーテルは、抗腫瘍薬または生理食塩水溶液を分岐血管を介して注入することによって腫瘍の壊死を引き起し、化学的にまたは低酸素症によってのいずれかで腫瘍を殺す。
【0041】
図7を参照すると、全般的に参照符号700で表され、本発明の多機能カテーテル100を用いて腫瘍を治療する方法の流れ図が図示されている。この工程では、多機能カテーテルは、腫瘍に血液供給を行う分岐血管の開口に進められる(ステップ702)。次にバルーンアセンブリを膨張させて分岐血管の開口の周りにチャンバを形成し(ステップ704)、壊死を引き起すために分岐血管を介して腫瘍に薬剤を灌流させる(ステップ706)。オプションとして、灌流後に腫瘍への血液供給を止めるために分岐血管の開口にステントが形成される(ステップ708および710)。方法700はしたがって、抗腫瘍薬を用いて腫瘍を直接目標とすることを可能とし、副作用を最小にする。
【0042】
図7に関連して上で記述した治療工程はさらに、図8A〜図8D中に図示されている。図8A中に示されているように、多機能カテーテル100は治療部位に進められ、バルーンアセンブリ108は、腫瘍804または他の悪性組織に血液を供給する分岐動脈の血管開口802の近くに配置される。次に血管開口802の周りにチャンバ204を形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(図8B)。次に、腫瘍細胞の壊死を引き起すために、腫瘍804は分岐動脈を通る薬剤で灌流される。一実施形態では、薬剤は生理食塩水溶液である。血液を生理食塩水で置き換えることは、腫瘍細胞の虚血性壊死を引き起す。別の実施形態では、薬剤は腫瘍細胞にとって有毒な抗腫瘍薬である。注入後、ステント806が血管開口802に形成され、分岐動脈を密封し腫瘍804への血液供給を止め得る(図8Cおよび図8D)。
【0043】
図9は、カテーテル920として示されている多機能カテーテルの代替の実施形態である。この多機能カテーテル920は、近位バルーン要素922および遠位バルーン要素924を有するが、中央バルーン要素は有しない(あっても良いが膨張はしない)。図9中に示されているように、近位および遠位バルーン要素922、924は、血管101内で膨張する。血管101は開口802を有し、開口802を介して腫瘍804は血液を引き込み、酸素を受け取る。バルーン要素922、924は、血液が血管開口802に循環するのをバルーン要素922、924が止めるように配置される。
【0044】
カテーテル920はカテーテル本体930を含み、カテーテル本体930は図2Bに示されている可撓性カテーテル本体102に類似している。カテーテル本体930は、Tecoflex EG68Dとして市販されているような脂肪族ポリウレタンから製造されていても良い。可撓性カテーテル本体と同様、カテーテル本体930は好適には可撓性であり、その中を延びるルーメンを有する。たとえば、生物学的流体(たとえば、血液)の循環を止めることは望ましくないので、生物学的流体に対するパイパスを与える流体迂回ルーメン(バイパスルーメン)が存在する。示されてはいないが、流体迂回ルーメンの入口および出口が、バルーン要素922、924で画定される領域の外のカテーテル本体930上のどこかに存在する。たとえば、バルーンアセンブリの近位に位置する第1の開口、およびバルーンアセンブリの遠位に位置する第2の開口が存在する。加えて、バルーン要素922、924によって形成されたチャンバに薬剤を送達するための流体送達細管、およびバルーン要素922、924の膨張レベルを制御するためのバルーン制御細管が存在する。バルーン制御細管は、バルーン制御細管の入口からバルーン要素922中の近位出口およびバルーン要素924中の遠位出口まで延びており、両方のバルーンは同一のルーメンによって膨張および収縮される。流体送達細管は、流体送達細管の入口から2つのバルーン要素922、924の間に位置する出口934まで延びている。流体送達細管のための1つ以上の出口934が存在しても良い。出口934の形状は多様であり得る。たとえば、出口934は(示されているように)長方形、丸型、卵型、台形などであっても良い。
【0045】
バルーン要素922、924が膨張すると、腫瘍804を含む治療領域は隔離されるようになる。化学療法薬および造影剤が、バルーン要素922、924の間の隔離された領域に加えられる。隔離を達成するために、バルーン要素922、924が同時に膨張しつつある間に、バルーン要素922、924の間の空間に造影剤が加えられる。このとき、ユーザは周知であるように、造影剤がこれ以上隔離された領域から漏れ出さないならば、膨張を停止させるべきである。次に造影剤および化学療法薬は隔離された領域に加えられ、腫瘍804に押し付けられる。化学療法薬は必要な長さの時間だけ腫瘍804への接触が保持される。ゲルまたは泡の形態の塞栓物質(たとえばポリビニルアルコール)が加えられて、塞栓物質は腫瘍804への血液の流れの遮断を促進するために腫瘍に押し付けられても良い。
【0046】
薬剤をバルーン要素922、924の間のチャンバに加えるにつれ、出口934から出る矢印によって示されているように、より多くの薬剤が腫瘍804に送達されるであろう。血液の代わりに薬剤が腫瘍の中を流れるが、薬剤は血液のように酸素を運ばない。したがって、薬剤が腫瘍の中を流れると、腫瘍は低酸素症を患う。腫瘍804に流入した薬剤は、腫瘍804中を循環し、別の血管開口802を通って腫瘍804を出て行く。腫瘍804に流入する薬剤の量は、循環した薬剤が血流に加えられてもなんら有害副作用を引き起さないほどの微々たる量である。
【0047】
多目的カテーテル920は、外側表面上にマーカー936および放射線不透過性の先端938を有する。マーカー936および放射線不透過性の先端938は同一の物質(たとえば白金イリジウム)から作られていて良く、それらは画像デバイスを用いて見ることができ、カテーテル920の適切な配置のために有用である。
【0048】
膨張すると、バルーン要素922、924は約4〜8ミリメートルの最大直径を有するが、実際の直径は血管101のサイズに適合されている。バルーン要素922、924は、約0.001インチの厚さのポリウレタンもしくはシリコンウレタン、またはポリイソプレンから作られ得る。バルーン要素922、924は、可撓性カテーテル本体930とは別個である構成要素として製造されても良いが、可撓性カテーテル本体930の上を滑るように設計される。カテーテル本体930に対して突出しているマーカー936は、(特定の用途に依存して変化する)バルーン要素922、924の位置を示し、バルーン要素922、924を適所に保持する。示されている実施形態では、マーカー934はバルーン要素922、924の間であり且つバルーン要素922、924内に存在する。しかしながら、マーカーの数およびマーカーの位置は、用途に適合されても良い。
【0049】
図9は、膨張した状態にあるバルーン要素922、924を示している。膨張していないときは、バルーンはカテーテル本体102の周りの固定された場所に位置している。バルーン要素922、924が膨張すると、中央部はより大きくなり、一方で端部はカテーテル本体102にくっついた状態を保ち、膨張部を決まった場所に保持する。
【0050】
図10は、図10中に以下で示されているカテーテルのような本発明の多機能カテーテルの実施形態を用いる、ある領域(たとえば腫瘍)を治療するための方法900の流れ図である。カテーテル100は、たとえば画像デバイスを介して放射線不透過性の先端およびマーカーを用いることで、治療の領域に配置される(ステップ902)。カテーテルが適切に配置されるとすぐに、カテーテル上のバルーンアセンブリは膨張され、バルーン要素922、924の間に空間を生成する(ステップ904)。次に、薬剤(たとえば、抗腫瘍薬、生理食塩水溶液)が、カテーテルの中に延びているルーメンを介してこの空間に送達される(ステップ906)。薬剤が所望の時間の間送達された後、薬剤送達は停止され、バルーン要素922、924は収縮される(ステップ908)。カテーテル100は次に、治療領域から引き抜かれる(ステップ910)。
【0051】
低酸素症によって腫瘍を殺すために生理食塩水溶液を用いることは上で述べた。方法700および900では、腫瘍を化学的に殺すために生理食塩水溶液に代わって様々な抗腫瘍薬が使用されても良い。抗腫瘍薬は、アルキル化薬、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン抗生物質、グルココルチコイド、およびたんぱく質/DNA/RNA合成の抑制剤などのいかなる一般的に用いられる化学療法薬であっても良い。本発明では、効果を減ずることなく、従来の化学療法治療より低濃度の化学療法薬が用いられ得るが、それはこの方法では、薬剤は目標を定めた方法で、腫瘍に供給されるからである。用いられる化学療法薬の正確な濃度は化学療法薬のタイプに依存する。生理食塩水溶液または抗腫瘍薬は、造影剤(たとえば硫酸バリウム)と混合されても良く、生理食塩水または抗腫瘍薬の腫瘍への注入を観測し、注意深く制御することが可能となる。多機能カテーテル100と一緒に用いられ得る画像化技術はよく知られている。
【0052】
多機能カテーテルはまた、多くの他の工程で用いられ得る。たとえば、多機能カテーテルは、収縮された気管気管支または部分的に閉塞した卵管のような収縮された血管経路を、収縮された血管経路を広げて収縮された領域にステントを据え付けることによって、ずっと開いたままにするために用いられ得る。多機能カテーテルはまた、外傷患者の治療のために用いられ得る。特に、多機能カテーテルは、出血を止めるまたは傷ついた組織中の血管の中の閉塞物質を取り除くために用いられても良い。
【0053】
図11は、多機能カテーテルの別の実施形態1000を示している。この実施形態では、カテーテルは上述のような物質と類似の物質で作られていて良く、他の実施形態で示されているように、近位および遠位バルーン922、924を含んで良い。他の実施形態の中で示されている中央バルーンは、本実施形態では非膨張性であっても良いし、または存在していなくても良く、よって本実施形態の多機能カテーテルは2つまたは3つのバルーンを有する。図11中に示されている多機能カテーテルは、他の実施形態に対して上で記述されたものと同一の工程および方法を行うために用いられても良い。この実施形態では、多機能カテーテル1000はまた近位部1002を有し、近位部1002は1つ以上の雌型ルアー(leur)1004、注入分岐拡張(extension)1006、ガイドワイヤ分岐拡張1008、バルーン分岐拡張1010、マニフォールド1112および保護成形スリーブ1116を含む。多機能カテーテルはまた、(以下でより詳細に記述されるように2つ以上のルーメンを有する)カテーテルを有し、そのカテーテルは、近位部1002から延び、近位突き出し部1118および遠位突き出し部1120を有する。この実施形態の多機能カテーテルは、近位部1002からカテーテルの端まで171〜181センチメートルで、近位部1102の端からカテーテルの端まで150〜154センチメートルであっても良い。
【0054】
多機能カテーテルはまた、治療物質/薬剤または治療を治療部位(treatment site)に送達するために、以下で図18〜図21を参照しながら記述される、治療部(treatment portion)1121を有しても良い。多機能カテーテルはまた、遠位端に、シリコンで作られていても良い近位および遠位バルーン922、924と、上で記述したような1つ以上のマーカーバンド936と、上で記述したような放射線不透過性の先端938と、を有しても良い。多機能カテーテルは、一旦治療部位に位置を定められると、バルーン922、924を(バルーン分岐拡張を用いてバルーン膨張物質をバルーンに向けることによって)膨張させて上述のように治療部位を隔離し、治療が完了すると次に収縮させることを可能とし、(上述のように)治療物質/薬剤を(注入分岐拡張1006を介して)治療部位に注入させることを可能とし、そして治療部位にカテーテルを案内するためにガイドワイヤを用いられるようにすることを可能とする。
【0055】
図12は、図11に示される多機能カテーテルの近位部1002のさらなる詳細を図示している。各ルアー1004は、ポリカーボネートから作られ得る0.080インチ内径雌型ルアーであっても良い。たとえば、ニューヨーク州エッジウッドのQosina Inc.によって作られたルアー(部品番号65262)を多機能カテーテルに用いても良い。近位部1002は、注入分岐拡張1106に接続された注入ルアー1104aを含んで良く、注入ルアー1104aは医者、外科医、看護士、医療担当者が治療物質/薬剤をルアーにつなぎ、次に治療物質/薬剤を多機能カテーテルを介して治療部位に注入することが出来るようにする。近位部1002はまた、ガイドワイヤ分岐拡張1108に接続されたガイドワイヤルアー1104bを含んで良く、ガイドワイヤルアー1104bは医者、外科医、看護士、医療担当者が一般のガイドワイヤを多機能カテーテル内に向けさせ、よって多機能カテーテルが治療部位に配置され得るようにすることを可能とする。近位部1002はまた、バルーン分岐拡張1110に接続されたバルーンルアー1104cを含んで良く、バルーンルアー1104cは医者、外科医、看護士、医療担当者が、膨張物質を多機能カテーテルにつなぎ、次に(独立にまたは一緒に制御され得る)近位バルーンおよび遠位バルーンの膨張/収縮を制御することを可能にとする。近位部1102はまた、ガイドワイヤ拡張1108をカテーテル中のガイドワイヤルーメンに接続するマニフォールド1112を含み、マニフォールド1112は注入拡張1106をカテーテル中の注入ルーメンに接続し、バルーン拡張1110をカテーテル中の1つ以上のバルーンルーメンに接続する。マニフォールド1112はさらに接合翼(suture wing)1130を含み、工程の間、マニフォールド1112を固定するためにマニフォールド1112は特定の位置に接合される。
【0056】
図13は、図11に示された多機能カテーテルの一部であるマニフォールド1112のさらなる詳細を示している。マニフォールドは接合翼1130を有し、またカテーテルに接続している保護成形スリーブによって囲まれる、狭くなる先端部1132および入口1134を含んでも良い。
【0057】
図14Aおよび図14Bはそれぞれ、図11に示されている多機能カテーテルの近位突き出し部1118および遠位突き出し部1120を図示している。カテーテルは、1つ以上のルーメンに対して近位部1002から先端938まで連続経路を形成する。図14Aおよび図14Bに示されているように、この実施形態では、カテーテルはガイドワイヤルーメン1140、注入ルーメン1142、および膨張ルーメン1144を有し得て、ガイドワイヤルーメンはカテーテルを治療部位まで動かすためにカテーテル内に挿入されるガイドワイヤに適合し、注入ルーメンは治療部位まで治療物質/薬剤を運び、そして膨張ルーメンはバルーンの膨張の度合いを制御するために、たとえば生理食塩水のような膨張物質をバルーン922、924に運ぶ。この例では、バルーン922、924の両方が、同一の膨張ルーメンを用いて膨張/収縮される。しかしながら、別の実施形態では、各バルーンは、別々のルーメンを用いて独立に制御されても良い。図14Aおよび図14Bに示された実施形態では、近位部および遠位部におけるカテーテルの壁の厚さは0.003ミリメートルであっても良い。近位突き出し部1118におけるカテーテルの直径は1.17ミリメートルであっても良く、遠位端において0.76ミリメートルであって良い。一実施形態では、ガイドワイヤルーメンはカテーテル全体にわたって0.33ミリメートル直径を有する円形であって良く、注入ルーメンは円形で、近位端で0.41ミリメートル直径および遠位端で0.18ミリメートル直径を有しても良い。一実施形態では、膨張ルーメンは、(他の形状でも構わないし、図14Aおよび図14B中に示されている形状に限定されないが)図14Aおよび図14B中に示されているように半円のような形状であっても良いし、近位端で0.51ミリメートルの半径と1.0ミリメートルの幅および遠位端で0.31ミリメートルの半径と0.059ミリメートルの幅を有しても良い。膨張ルーメンはガイドワイヤルーメンおよび注入ルーメンの両方より大きく、それは治療が完了したときにバルーンの収縮が可能となるように十分に大きいことが必要であるからである。特に、最大1psiの真空度が(バルーンを収縮するために)膨張ルーメンに加えられることがあり、よって1psiの真空度のみを用いてバルーンを収縮させることを保証するために大き目の膨張ルーメンが必要である。一実施形態では、カテーテルが治療部位に配置されたときにガイドワイヤルーメンからガイドワイヤが取り出されると、(注入ルーメンを通って送達され得る同一の治療物質/薬剤と類似の)治療物質/薬剤が、カテーテルを通って送達され、カテーテルの遠位端に出て行くことが可能である。したがって、治療物質/薬剤は、同一の工程の間に、バルーンの間の治療領域に送達され得るし(治療物質/薬剤はカテーテルの軸長に対してある角度で送達される)、および/または、カテーテルの端を通って(カテーテルの軸長に沿って)排出され得る。
【0058】
図15Aおよび図15Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張1008のさらなる詳細を示している。ガイドワイヤ拡張は、図15Bに示されているようにそれがガイドワイヤであることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、ガイドワイヤ拡張は、0.039ミリメートルの内径1150および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0059】
図16Aおよび図16Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部である注入拡張1006のさらなる詳細を図示している。注入拡張は、図16Bに示されているようにそれが注入拡張であることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、注入拡張は、0.025ミリメートルの内径1160および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0060】
図17Aおよび図17Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張1110のさらなる詳細を図示している。膨張拡張は、図17Bに示されているようにそれが膨張拡張であることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、膨張拡張は、0.025ミリメートルの内径1170および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0061】
図18〜図21は、図11に示された多機能カテーテルの治療部1121のさらなる詳細を図示している。治療部は、示されているように配置される位置バンド936の他に、非膨張状態で示されている近位および遠位バルーン922、924と、バルーンの間に位置する治療リージョン1180を、有する。一実施形態では、治療部1121は、37ミリメートルの全長a、31ミリメートルの第1のバルーンから先端938までの長さb、12ミリメートルの第2のバルーンから先端までの距離c、および5ミリメートルの先端部938の長さdを含む。治療リージョン1180は、一実施形態では、5ミリメートルの長さeであり、各バルーンは7ミリメートルの長さfを有しても良い。図19〜図21中により詳細に示されているように、近位バルーン942の前のバイパス入口部1190は、図20中に(ミリメートル単位で)示されている孔の間の間隔で1つ以上の孔1194を有して良く、孔1194は血液のような流体が、先端を通り且つ孔1194から外へ流れ(そして治療部位を迂回し)、よって治療が行われているときにカテーテルが動脈または静脈中の通常の流れを阻止しないようにすることを可能とする。バルーンの間の治療リージョン1180はまた、図21中に(ミリメートル単位で)示されている孔の間の間隔でカテーテルの片側または両側上に1つ以上の孔1196を有し、孔1196は注入ルーメンを通って供給された治療物質/薬剤が治療領域に与えられることを可能とするが、バルーンは膨張したときに、上述のように、治療物質/薬剤が治療部位に局在し続けるようにする。
【0062】
図11(およびその後の図面)に示されている多機能カテーテルは、様々な治療に用いられ得る。たとえば、多機能カテーテルは、固形腫瘍治療のために用いられ得て、固形腫瘍治療では、内科医がカテーテルを用いて腫瘍床に特定の流体を押し込むまたは血液より粘性の高い水溶液を腫瘍床に注入し、(以下でより詳細に記述するように)腫瘍を閉塞する。多機能カテーテルはまた、遠位先端から外へ(上に記述されたカテーテルの例では最大サイズ300マイクロメートルを有する)塞栓粒子を送達するために用いられても良い。多機能カテーテルはまた、動静脈奇形(ACM)の治療のために用いられても良い。多機能カテーテルはまた、遺伝子療法または一般の血管内応用のために用いられても良い。
【0063】
図22Aおよび図22Bは、図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部938のさらなる詳細を図示している。上述のように、先端は放射線不透過性であり、さらに図22Bに示されているように経路1200を有して良く、経路1200は治療されている動脈または静脈中の正常な流体流れが流れ続け、治療部位を迂回し、よって正常な流体流れは行われている治療の効果を弱めないようにすることを可能とする。経路1200はまた、上述のように治療物質をカテーテルの遠位端に送達することを可能とする。
【0064】
上述の治療に加えて、多機能カテーテルの様々な実施形態は、腫瘍を閉塞するために用いられても良い。特に、治療物質は血液より粘性の高い混合物であっても良く、よって、治療物質が多機能カテーテルを用いて腫瘍に注入されると、血液は治療物質に取って代わることが出来ず、腫瘍は血液供給の一部または全てを失い、収縮するまたは死ぬ。一実施形態では、治療物質は、生理食塩水および(近似的に50%の)造影剤の混合物、または、化学療法薬および造影剤の混合物であっても良い。
【0065】
(例示であることが意図されていて、それらに限定されない)多機能カテーテルおよびその使用の1つ以上の実施形態を記述してきたが、上の技術に照らして変形および変更が当業者によってなされ得ることには書き留めておく。たとえば、本明細書中に描写された実施形態は、バルーンアセンブリ中に2つのバルーン要素を示すが、バルーンアセンブリはそのようには限定されない。したがって、添付の請求項によって画定されるように記述されるものの趣旨および範囲内にある変更が、開示された特定の実施形態になされ得る。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2005年4月1日に出願され、“多機能カテーテルおよびその使用”と題する米国特許出願シリアル番号11/097,582の一部継続であり、その特許出願に対して米国特許法第120条の下に優先権を主張するが、米国特許出願シリアル番号11/097,582もまた、2003年1月31日に出願された米国特許出願シリアル番号10/355,017の一部継続出願であり、その特許出願に対して米国特許法第120条の下に優先権を主張し、米国特許出願シリアル番号10/355,017はまた、2002年2月1日に出願された米国仮出願番号60/353,305および2002年6月7日に出願された60/387,260に対して米国特許法第119(e)条の利益を主張し、これら全ては参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
医療デバイスおよび医療処置の工程が記述され、特にカテーテルが記述される。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、脈管系および他の解剖学上の空間に医療工程中にアクセスするために広く用いられてきた。カテーテルは、点滴治療のために、および、様々な病気の治療のための物質または器具の挿入または配置のために、用いられ得る。カテーテルはまた、たとえば、動脈プラークおよび動脈瘤の治療のために、バルーンシステムの追加によって変更され得る。
【0004】
動脈プラークは、コレステロールが血液中を循環するときに動脈壁上に成長し、プラークが大きくなるにつれ、動脈は狭くなり硬くなる。この過程は、プラークの蓄積が動脈の壁を厚くするので、アテローム性動脈硬化と呼ばれ、“動脈硬化”として一般に知られており、血液がその中を流れる空間を狭くする。血管が狭くなることまたは血管が塞がることはまた、“狭窄”として参照される。
【0005】
動脈プラークを治療する通常の方法の一つは、バルーン血管形成法である。脈管系の様々な閉塞性の病気の処置では十分に確立された手続きとして、バルーン血管形成法が、腸骨、大腿骨、腎臓、冠状動脈、および脳血管系の閉塞性障害に対して適用されてきた。典型的には、小さな可撓性ガイドワイヤを、ガイドカテーテルを通って血管に進ませ、そして狭窄を横切るまで進ませる。次にバルーンカテーテルを、ワイヤの上を進ませ、狭窄を横切って配置される。バルーンは通常、血管を広げるために短い時間の間だけ膨張され、そして収縮される。代替として、狭窄は化学的手段によって治療しても良い。たとえば、Henry Wolinskyに対する米国特許公報第4,636,195号は、動脈プラークの周りにチャンバを生成するために拡張可能な遠位バルーンセグメントおよび近位バルーンセグメント、ならびにプラークを溶解するために可溶性液体をチャンバに送達するための細管(コンデュイット)を有するカテーテルを記述している。John Shulzeに対する米国特許公報第6,056,721号はまた、脈管の細管内の閉塞物質を治療するためのバルーンカテーテルデバイスを記述している。そのデバイスは、近位端と遠位端の間に延びる細長いカテーテル本体を含む。体液の流れを妨げるためにバルーンが遠位端に取り付けられ、閉塞物質を治療するためにカテーテル本体から薬が放出される。狭窄を治療するための他の方法は、電離放射線およびレーザー蒸着を含む。
【0006】
これら全ての工程は通常、ある程度、血管壁の生物学的反応を引き起し、しばしば治療部位に新たな腫瘍(グロース)および血管腔の顕著な縮小(再狭窄)をもたらす。したがって、バルーン血管形成の後に治療部位にステントを配置して、再狭窄を防ぐのが一般的な工程である。ステントは通常、導入カテーテルによって圧縮された形態で目標領域に導入され、次に特定のバルーンカテーテルを用いてその場で広げられる。ステントは、広げられた状態でも適所に留まって、血管の元々の形状が本質的に再現されるような方法で血管の壁を支持するであろう。ステントはその場で形成されても良い。たとえば、Stuart Edwardsらに対する米国特許公報第6,039,757号は全般的に、体内腔中のその場で有窓性ステントを形成するためのデバイスを記述している。簡単に言えば、体内腔およびステント形成デバイスは、モールド空間を形成し、その中には流動性組成物が与えられ、一連の開窓を有するステントの形状をした非流動性化合物に転換される。
【0007】
“動脈瘤”なる用語は、血管壁の損傷又は血管壁の弱さによって引き起される動脈の異常な拡大または隆起のことを言う。動脈瘤はあらゆるタイプの体血管中で生じ得るが、動脈瘤はほとんど常に動脈中に形成される。破裂した動脈は、内出血をもたらし得て、内出血はしばしば体機能の深刻な障害および死までもを結果として生じさせる。動脈瘤の伝統的な治療は外科的クリッピングであるが、外科的クリッピングは大手術を要求し、脳のような生命維持に必要な器官の内部の動脈瘤上では実行することが出来ない。もっと侵襲的ではない技法、つまり血管内コイリングが、別の方法では動脈瘤を治療できない多くの患者を治療するための実行可能な代替法として開発されてきた。血管内コイリング工程では、マイクロカテーテルが患者の鼠径領域中の大腿部動脈に挿入される。マイクロカテーテルは、患者の血管(動脈)を通って大腿部動脈から動脈瘤の場所まで到達する。マトリックスコイルがカテーテルを通って動脈瘤まで送り込まれ、動脈瘤を満たし、動脈から動脈瘤を密封する。動物研究では、コイルは、動脈瘤の内部の結合(瘢痕)組織の発達を促進することが分かっていた。結合組織は、動脈中の血液の流れから動脈瘤を除外した。血液循環から閉塞された動脈瘤では、破裂の危険は減少していることだろう。
【0008】
血管内コイルシステムを用いて動脈瘤を効果的に治療するために、コイルは動脈瘤に挿入され、適切な構造で動脈瘤の内部に配置されなくてはならない。しかしながら、この過程はしばしば、時間が掛かるし、経験を積んだ技師を必要とする。
【0009】
現在効果的に治療されない別の疾患は癌である。腫瘍を除去するための最新の努力は、化学療法、放射線治療、および組織の外科的切除などのシステマティック(系統的)なアプローチを含む。腫瘍が血管であるときは、化学療法および放射線療法は、期待するほど効果的ではないが、それは有効な特異性のレベルで腫瘍を目標とすることが難しく、ならびに化学療法および放射線の小さなパーセンテージしか、腫瘍に送り込まれた毛細管に“押し込まれ”ないからである。化学療法および放射線の小さなパーセンテージしか実際に腫瘍を捉えず、化学療法および放射線療法の多くは腫瘍の代わりに結局は健康な細胞に到達する。腫瘍を殺すためにより目標を絞ったアプローチを可能とする治療方法が望まれている。
【0010】
多くのカテーテルが専用化され、特定の医療工程にのみ用いることができる。たとえば、血管形成カテーテルは、動脈瘤の治療には使うことはできないし、逆に、動脈瘤の治療のために設計されたカテーテルは、狭窄症のために用いることはできない。バルーン血管形成の場合には、血管形成およびステント取り付けは一般的に、2つの異なる処分可能でロープロファイルなガイドカテーテルを必要とする。カテーテルの挿入および取り外しは時間の掛かる過程であり、カテーテルは高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コストを削減し効率を改善するために、狭窄症、動脈瘤、および脈管癌などの複数の疾患を治療するために用いられ得る1つのカテーテルが望まれているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図1B】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図1C】本発明の教示に従う膨張していないバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面図を示している。
【図2A】膨張したバルーンを有する多機能カテーテルの実施形態の側面断面図を示している。
【図2B】多機能カテーテルの近位端の断面図を示している。
【図3】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて動脈プラークを治療する方法を示す流れ図である。
【図4A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図4E】本発明で記載の多機能カテーテルを用いるプラークの除去およびステントの据え付けの一工程を示している。
【図5】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する方法を示す流れ図である。
【図6A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図6D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いて動脈瘤を治療する一工程を示している。
【図7】本発明の原理に従う多機能カテーテルを用いて腫瘍を治療する方法を示す流れ図である。
【図8A】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8B】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8C】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図8D】本発明で記載の多機能カテーテルを用いた腫瘍学的治療の一工程を示している。
【図9】多機能カテーテルの代替の実施形態を示している。
【図10】図9の代替のカテーテルを用いる治療方法を示す流れ図を示している。
【図11】多機能カテーテルの別の実施形態を示している。
【図12】図11中に示されている多機能カテーテルの近位部の詳細を示している。
【図13】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるマニフォールドの詳細を示している。
【図14A】図11中に示されている多機能カテーテルの近位突き出し部を示している。
【図14B】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位突き出し部を示している。
【図15A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張の詳細を示している。
【図15B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張の詳細を示している。
【図16A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部である注入拡張の詳細を示している。
【図16B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部である注入拡張の詳細を示している。
【図17A】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張の詳細を示している。
【図17B】図11中に示されている多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張の詳細を示している。
【図18】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図19】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図20】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図21】図11中に示されている多機能カテーテルの治療部の詳細を示している。
【図22A】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部の詳細を示している。
【図22B】図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態において、薬剤を治療の領域に送達するためのカテーテルが提供される。カテーテルは、カテーテル本体、カテーテル本体に結合されるバルーンアセンブリ、第1のルーメン、および第2のルーメンを含む。バルーンアセンブリは、離間された複数のバルーンを有し、離間されたバルーンはバルーンの間に領域を画定する。第1のルーメンはカテーテル本体に沿って延び、バルーンの膨張レベルを制御するために、膨張物質をバルーンに送る。第2のルーメンは、カテーテル本体に沿って延び、バルーンの間の領域に出口を有する。バルーンアセンブリは、2つのバルーン要素を有しても良いが、バルーン要素の数はそのようには限定されない。第2のルーメンは、2つのバルーン要素の間に位置する治療部位に治療物質/薬剤を送達するために用いられ得て、治療物質はその治療部位に留まり続ける。治療物質/薬剤は、化学的療法薬、抗腫瘍薬、プレステント薬、生理食塩水物質、塞栓性物質、造影剤、プラーク除去剤、接着剤、および/または以下でより詳細に記述するようなこれらの1つ以上の組み合わせであっても良い。治療物質/薬剤は、液体または気体または溶解固形物であっても良い。以下で記述される実施形態の各々において、カテーテルは、カテーテルの容易な挿入を可能とする親水性物質から形成されても、または親水性コーティングを有しても良い。
【0014】
別の実施形態では、薬剤を治療領域に送達するための方法が記述される。方法は、複数の膨張可能なバルーンに取り付けられたカテーテルを与えることと、治療の領域がバルーンの間となるようにカテーテルを配置すること、を含む。カテーテルは、カテーテルに沿って延びる第1のルーメンおよび第2のルーメンを有する。複数のバルーンの膨張レベルは同時に制御され、バルーンの間に治療領域を形成する。膨張レベルは、生理食塩水(saline)などの膨張物質を、バルーンの各々への開口を有する第1のルーメンを通って送ることによって制御される。薬剤は第2のルーメンを通って治療領域に送られる。この方法では2つの膨張可能なバルーンが用いられるが、方法はそのようには限定されない。
【0015】
さらに別の実施形態では、癌治療のためのカテーテルが提供される。カテーテルは、近位端および遠位端を有するカテーテル本体と、可撓性カテーテル本体の近位端の周りで膨張するように配置される第1のバルーンと、可撓性カテーテル本体の遠位端の周りで膨張するように配置される第2のバルーン、を含む。可撓性カテーテル本体は、治療中に流体がカテーテルを通り治療領域を迂回する(バイパスする)ことを可能とする第1のルーメン、第1のバルーンおよび第2のバルーンを膨張させるための第2のルーメン、ならびに薬剤を第1のバルーンと第2のバルーンの間の開口に送るための第3のルーメンを含む。
【0016】
以下の詳細な記述は、同業者が本発明を作製し用いることが可能となるように提示される。説明のために、特定の名称が詳細な理解を与えるために使われる。しかしながら、当業者には自明であろうが、特定の名称および詳細は本発明を実施するためには必要ではない。特定の用途の記述は、代表的な例としてのみ提示される。実施形態に対する様々な変形は当業者には容易に明らかであろうし、本明細書中で定義される一般原理は、本発明の範囲を逸脱することなく他の実施形態および用途に適用されても良い。したがって、本発明は、示されている実施形態に限定されることは意図されず、本明細書中に開示された原理および特徴と矛盾しない最も広く可能な範囲に一致する。
【0017】
ここで図1A〜1Cを参照しながら、本発明の多機能カテーテルの様々な実施形態を記述しよう。以下でより詳細に記述されるように、多機能カテーテルは、動脈プラークの除去、ステントの設置、薬の注入、動脈瘤または血管の分岐の密封、生物学的経路の拡張、および他の用途に用いられても良い。
【0018】
図1Aに示されているように、全般的に参照符号100によって表される多機能カテーテルは、可撓性管状カテーテル本体102であって内側ルーメン104、近位端105、および遠位端106を有するカテーテル本体102と、カテーテル本体102の遠位端106において複数段階に膨張が可能な膨張可能なバルーンアセンブリ108と、生物学的流体(たとえば血液)が経路中を流れることを許容するように適合された少なくとも1つの流体送達細管(流体デリバリーコンデュイット)110と、バルーンアセンブリ108を膨張および収縮させる少なくとも1つのバルーン制御細管112を有する。多機能カテーテル100はさらに、図1B中に図示されているように、バルーンアセンブリ108の外周面上に製造済みステント114、および/または、図1C中に図示されているように、カテーテル本体102の遠位端106に磁化金属116を含んでも良い。磁化金属116は、多機能カテーテル100のオペレータが、たとえば3次元画像を見ながら、磁場によってカテーテル100を生物学的経路を通って目標部位まで動かすことを可能とする。生物学的経路は、限定はされないが、血管、気道、尿路、消化管、生殖管、および胆管を含む。好適な実施形態では、多機能カテーテル100は、直径が近似的に0.03から0.07インチである。ある特定の工程のために選択された多機能カテーテル100の絶対寸法は、当業者によく理解されているように、目標部位の位置およびその目標部位にアクセスするために用いられる生物学的経路のサイズに依存する。
【0019】
ここで図2Aおよび図2B中の断面図を参照すると、カテーテル本体ルーメン104は、ガイドワイヤ202が近位端105で入り、遠位端106で出るようにすることを可能にする。本体ルーメン202はまた、工程の間、血液がカテーテルを通って流れることを可能とする。典型的には、ガイドワイヤ202は、生物学的経路内に配置され、治療部位を越えて進められる。次にカテーテル100は、配置済みのガイドワイヤ202の経路を用いて、ガイドワイヤ202の上に配置され、治療部位に進められ、治療部位まで案内される。様々なタイプのガイドワイヤが用いられても良い。例えば、一般的にはニッケルで作られ、好適には0.018インチまたはそれより小さい直径の金属ワイヤが用いられても良い。ガイドワイヤ202は、治療工程中に取り外され、取り替えられても良い。
【0020】
さらに図2Aを参照すると、バルーンアセンブリ108は、膨張したとき、少なくとも3つのバルーン要素、即ち近位バルーン要素124、中央バルーン要素126、および遠位バルーン要素128を有している。中央バルーン要素126は、少なくとも2つの異なる段階に膨張することが可能である。一実施形態では、3つのバルーン要素124、126および128は、バルーンアセンブリ108の一部として一体化され、バルーン制御細管112によってまとめて制御される。別の実施形態では、中央バルーン要素126は、バルーン制御細管112によって独立に制御されても良い。さらに別の実施形態では、3つのバルーン要素の各々は、バルーン制御細管112によって個別に制御されても良い。個別化された制御は、1つのバルーン要素が、バルーンアセンブリ108中の他のバルーン要素の膨張状態に影響を与えることなく、膨張または収縮されることを可能にする。図2Aに示されているように、近位バルーン要素124および遠位バルーン要素128は、膨張したときに、バルーンアセンブリ108とプラーク208の周りの動脈壁206の間にチャンバ204を形成する。チャンバ204の体積は、中央バルーン126を異なる段階に膨張させることによって調整され得る。
【0021】
カテーテル本体102は、たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、および塩化ポリビニールまたはポリ塩化ビニリデンなどのポリビニルハライドを含む、容易に入手可能で非毒性の可撓性ポリマーのいずれからも作ることが出来る。バルーンアセンブリ108は、圧力下で拡張可能であり、圧力から開放されたときに収縮するのに十分な弾性を有するように製造された類似の物質から製作されても良い。バルーン要素の外寸は、予め設定された圧力において、所望の直径に達するようなものであろう。好適な実施形態では、近位および遠位バルーン要素124および128は、約75mmから150mmHgの第1の予め設定された圧力において、所望の直径に達し、もし圧力が15気圧の高さほどまで増加してさえも外寸は維持されるが、一方、中央バルーン要素126は、第1の予め設定された圧力で第1の直径に達し、別の予め設定された圧力では別の半径に達する。
【0022】
バルーンに対して選択された絶対寸法は、治療を伴う血管の半径に依存するだろう。一実施形態では、近位および遠位バルーン要素124および128は、長さが約0.3mmから約10mmであり、拡大した直径は近似的に同一の範囲にあって良い。膨張したバルーンの形状は、円錐形、球形、正方形または特定の用途に対して便利であるいかなる形状であっても良い。中央バルーン126は、近位および遠位バルーン124および128と同一の直径領域に膨張可能であるが、長さは好適には約0.4から2インチである。
【0023】
再び図2Aおよび図2Bを参照すると、流体送達細管110およびバルーン制御細管112は、カテーテル本体102内に形成されている。流体送達細管110は、(今後は流体として参照される)流体および/または気体がチャンバ204の中へおよび/またはチャンバ204から外へ流れるようにすることを可能とする1つ以上の流体送達チャンネルを含む。当業者によって理解されるように、1つより多い流体送達細管110が、カテーテル本体102内に形成されても良い。バルーン制御細管112はまた、バルーンアセンブリ108の膨張/収縮のために、膨張物質がバルーンアセンブリ108の中へおよび/またはバルーンアセンブリ108から外へ流れるようにすることを可能とする1つ以上の溝を含む。膨張物質は、生理食塩水溶液(saline solution)などの、たとえ漏れがあったとしても治療患者にとって安全であろういかなる液体または気体であっても良い。流体送達細管110およびバルーン制御細管112は、テフロン、ポリウレタン、ポリエチレンまたは他の類似の物質を用いて形成されても良い。
【0024】
ここで図面の図3を参照すると、参照符号300で全般的に表される、本発明の多機能カテーテルを用いて動脈プラークを治療する方法が示されている。第一に、多機能カテーテル100をプラーク部位に進ませる(ステップ302)。第二に、プラークの周囲に潅流チャンバを形成するためにバルーンアセンブリを膨張させる(ステップ304)。第三に、プラークを溶解または蒸解するために潅流チャンバにプラーク除去剤を潅流する(ステップ306)。第四に、再狭窄を防ぐために、ステントを治療部位に配置する(ステップ308)。一実施形態では、ステントは、治療部位においてその場で非流動組成物に変換される流動組成物を用いて形成される。別の実施形態では、ステントは、予め製造され、図1B中に示されるように、多機能カテーテル100の一部である。最後に、多機能カテーテル100は引き抜かれ、ステントは細胞壁の治癒を助けるために治療部位に残される(ステップ310)。
【0025】
治療工程はさらに図4A〜図4E中に示されている。図4A中に示されるように、多機能カテーテル100を治療部位に進ませて、バルーンアセンブリ108をプラーク208の領域内に正確に配置させる。バルーンアセンブリ108は次に、プラーク208の周りにチャンバ204を形成するために、第一段階まで膨張される(図4B)。次にプラーク除去剤がチャンバ204内に送達される。プラーク除去剤は、上でより詳細に議論されているように、(図2A中に示されている)流体送達細管110を介して圧力を印加することによって、または、中央バルーン要素126の拡大によって、プラークに押し付けられ得る。プラーク除去剤は、プラーク(主としてコレステロール)が溶解されるまで、チャンバ204に再循環されても良い。所望の効果が得られた後、次にチャンバ204は、プラーク除去剤のあらゆる痕跡を取り除くために、生理食塩水などの洗浄溶液を用いて洗浄される。次のステップでは、バルーンアセンブリ108は第二段階まで膨張される(図4C)。この段階では、プラーク208によってあけられた空間のほとんどは、さらに膨らまされたバルーンアセンブリ108によって占められる。参照符号204´によって表されるずっと小さ目のチャンバは、ここでは、特別仕様のステントの形成のためのモールドとして機能する。図4D中に示されているように、チャンバ204´は、(図2A中に示されている)流体送達細管110を通って送達される流動性プレステント組成物で満たされる。プレステント組成物はチャンバ204´中で固化され、ステント210を形成する。バルーンアセンブリ108は次に収縮され、多機能カテーテルは引き抜かれ、ステント210が治療部位に残される(図4E)。好適な実施形態では、ステント210は、再狭窄および凝固の発生を減らすために、ある物質を含んでいるまたはある物質でコーティングされていても良い。別の好適な実施形態では、チャンバ204´はステント210のために流線形状の輪郭を示し、ステント210上での血液凝固の危険性を減らす。
【0026】
図4Bのプラーク除去工程に関して、様々なタイプのプラーク除去剤が多機能カテーテル100と共に用いられ得る。一般に、プラーク除去剤は非毒性であるべきであり、血液の凝固を引き起すべきではない。含まれる体積の小ささ、たとえば約0.1から約0.5ミリリットルゆえに、通常、内用にはあまりにも有毒であると考えられているにも関わらず、多くの極性有機溶剤をコレステロールおよびそのエステルの溶解のために用いることができる。これらの有機溶剤は、たとえば、アセトン、エーテル、エタノール、およびこれらの混合物を含む。
【0027】
プラーク除去剤はまた、リン脂肪を含む等張水性緩衝溶液を含む。リン脂肪は、加水分解によって脂肪酸、リン酸、通常はグリセリンであるアルコール、およびコリンまたはエタノールアミンなどの窒素性塩基が生成される自然界で入手可能な合成物である。リン脂肪の例は、レシチン、ケファリン、スフィンゴミエリンを含む。レシチンまたは他のリン脂肪を含むプラーク除去剤の有効性は、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、グリココール酸、およびタウロコール酸などの胆汁酸の追加によって改善され得る。
【0028】
プラーク除去剤はまた、酵素または酵素の混合物を含んでも良い。一実施形態では、酵素は、コレステロールをステロールおよび脂肪酸に加水分解する膵液コレステロールエステラーゼである。別の実施形態では、酵素はコラゲナーゼである。コラゲナーゼは、プラークの主要な支持構造であるコラーゲンを開裂する。そしてプラーク本体は崩壊する。パパイン、キモトリプシン、コンドロイチナーゼ、およびヒアルロニダーゼなどの他の酵素がまた、コラゲナーゼと一緒に用いられても、またはコラゲナーゼの代替として用いられても良い。酵素は、胆汁酸もしくはリン脂肪と一緒にまたは胆汁酸もしくはリン脂肪抜きのいずれかで用いられ得る。酵素は、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液、リンガー乳酸緩衝液等を含む多くの生理学的に許容可能な緩衝液中で可溶化され得る。
【0029】
好適な実施形態では、流体送達システム、好適には複数の流体送達チャンネルを有する流体送達システムが用いられる。通常、流体送達細管110を通ってチャンバ204内をプラーク除去剤で灌流するために、自動機械が用いられる。同様に、バルーンアセンブリ108の膨張および収縮は、バルーン制御細管112に接続された自動機械によって制御され得る。
【0030】
様々な流動性物質が、その場所にステント210を形成するために用いられ得る。流動性プレステント組成物は、1つ以上の成分から形成され得るが、その成分は、必要不可欠な生物学的適合特性を有し、その場で固体ステント組成物に変換され得る。典型的には、液固相転移が化学的触媒の導入、および/または、RFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーなどのエネルギーの導入によって引き起される。この相転移の可能性のある物質は、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,899,917号公報中で詳細に議論されている。
【0031】
プレステント組成物はまた、たんぱく質(プロテイン)および/または多糖(ポリサッカロイド)を含んでも良い。たんぱく質/多糖成分の例は、限定はされないが、コラーゲン、フィブリン(繊維素)、エラスチン(弾性素)、フィブロネクチン、ビロネクチン、アグリン、アルブミン、ラミニン、ゼラチン、セルロース、加工セルロース、スターチ(でんぷん)、加工スターチ、合成ポリペプチド、アセチル化コラーゲン、スルホン酸化コラーゲンおよびリン酸化コラーゲン、ならびにグリコサミノグリカン(ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、硫酸コロンドイン(chrondoin))を含む。
【0032】
プレステント組成物は、電流またはRFエネルギーを伝導するのに十分なイオン強度を有する水溶性電解質溶液を含んでも良い。プレステント組成物はまた、創傷治癒を行うために補強剤および補助剤を含んでも良い。補強剤の例は、限定はされないが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)−コ−(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ベータヒドロキシ酪酸)、ポリ(無水物)、およびポリ(オルトエステル)を含む。
【0033】
プレステント組成物はまた、マイクロ波に対して高い感受率および吸収度を有する物質を含んでも良い。そのような物質は、限定はされないが、酸化第二鉄のような金属酸化物、アセチレンブラックおよびグラファイトのような石炭系物質、またはアルコールもしくは水のようなヒドロキシル(水酸基)含有物質を含む。
【0034】
もしプレステント組成物がフリーラジカル種によって媒介される共有結合の形成によって固化されるならば、熱的に活性化されたフリーラジカル開始剤および/または促進剤がその組成物に含まれても良い。そのような熱的開始剤物質は、限定はされないが、過酸化ベンゾイルもしくは過酸化ラウロイルもしくは過硫酸アンモニウムのような過酸化物質、またはアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBIN、Vazo 64)のようなアンアゾ(anazo)物質を含む。促進剤物質は、限定はされないが、トリエタノールアミン(TEOA)のようなアミン、ベンゾインおよびアセトインのようなアルファヒドロキシケトン、およびアスコルビン酸などの還元剤、ならびに誘導体を含む。
【0035】
プレステント物質には、治療を行い再狭窄を防ぐために、治療薬を混合することも可能である。治療薬の例は、限定はされないが、シクロポリン、アドリアマイシン、および等価物のような免疫抑制薬、ヘパリン、抗血小板薬、繊維素溶解性および血栓溶解性薬剤のような抗凝固薬、抗炎症薬、ならびに成長因子を含む。代替として、ステント210は、再狭窄および凝固を減らすために物質でコーティングされていても良い。
【0036】
ステント組成物はまた、生体吸収性物質から形成されていても良く、それ自身が周囲の組織に生体吸収されても良い。
【0037】
本発明の多機能カテーテル100はまた、動脈瘤を治療するために用いられ得る。以前に記述したように、血管内コイルシステムを用いる治療はしばしば、時間が掛かるし、経験を積んだ技師を必要とする。本発明の多機能カテーテルは、比較的簡単で短時間で終わる、動脈瘤に対する代替の治療法を与えるが、その治療法は特に緊急事態で有用である。
【0038】
ここで図5を参照すると、全般的に参照符号500で示される、本発明の多機能カテーテル100を用いて動脈瘤を治療する方法の流れ図が図示されている。第一に、多機能カテーテル100を動脈瘤部位に進ませる(ステップ502)。次に動脈瘤によって弱くなった領域の周りにチャンバを形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(ステップ504)。動脈瘤中の血液は、血管痙攣および水頭症を防ぐために(図2A中に示されている)流体送達細管110を通って除去され得る(ステップ506)。次に動脈瘤を密封するために、ステントが弱くなった領域の周りに配置され(ステップ508)、多機能カテーテルは引き抜かれる(ステップ510)。以前に記述したように、ステントは製造済みステントであっても良いし、その場で形成されても良い。
【0039】
図5に関連して上で説明された治療工程はさらに、図6A〜図6D中に図示されている。図6A中に示されているように、多機能カテーテル100は治療部位に進められ、バルーンアセンブリ108は、動脈瘤602によって弱くなった領域中に配置される。次に、動脈瘤602の近傍にチャンバ204を形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(図6B)。動脈瘤602から血液を除去するために、負圧がチャンバ204内部に流体送達細管110によって形成され得る。次にステント604が、動脈瘤602によって弱くなった領域に形成される(図6Cおよび図6D)。緊急時には、動脈瘤602を迅速に密封するために、製造済みステントが据え付けられても良い。当業者には容易に理解されるだろうが、方法500は体内のほとんどどんな動脈瘤に対しても使用することができる。
【0040】
本発明の多機能カテーテル100はまた、腫瘍学的目的に対しても用いることができる。本発明の血管内カテーテルを使用することは、脈管系腫瘍を効果的に目標とする治療を提供するが、それは他の器官への血液供給を減ずることなく、カテーテルを腫瘍に非常に近づけることが可能だからである。血管内カテーテルは、腫瘍に繋がる主要な血管の一つの中に配置される。腫瘍は1つ以上の分岐血管を介して主要な血管に接続され、分岐血管を通る血液流は(たとえば、酸素および栄養を腫瘍に送達することによって)腫瘍の生命を維持し続ける。本発明の血管内カテーテルは、抗腫瘍薬または生理食塩水溶液を分岐血管を介して注入することによって腫瘍の壊死を引き起し、化学的にまたは低酸素症によってのいずれかで腫瘍を殺す。
【0041】
図7を参照すると、全般的に参照符号700で表され、本発明の多機能カテーテル100を用いて腫瘍を治療する方法の流れ図が図示されている。この工程では、多機能カテーテルは、腫瘍に血液供給を行う分岐血管の開口に進められる(ステップ702)。次にバルーンアセンブリを膨張させて分岐血管の開口の周りにチャンバを形成し(ステップ704)、壊死を引き起すために分岐血管を介して腫瘍に薬剤を灌流させる(ステップ706)。オプションとして、灌流後に腫瘍への血液供給を止めるために分岐血管の開口にステントが形成される(ステップ708および710)。方法700はしたがって、抗腫瘍薬を用いて腫瘍を直接目標とすることを可能とし、副作用を最小にする。
【0042】
図7に関連して上で記述した治療工程はさらに、図8A〜図8D中に図示されている。図8A中に示されているように、多機能カテーテル100は治療部位に進められ、バルーンアセンブリ108は、腫瘍804または他の悪性組織に血液を供給する分岐動脈の血管開口802の近くに配置される。次に血管開口802の周りにチャンバ204を形成するために、バルーンアセンブリ108を膨張させる(図8B)。次に、腫瘍細胞の壊死を引き起すために、腫瘍804は分岐動脈を通る薬剤で灌流される。一実施形態では、薬剤は生理食塩水溶液である。血液を生理食塩水で置き換えることは、腫瘍細胞の虚血性壊死を引き起す。別の実施形態では、薬剤は腫瘍細胞にとって有毒な抗腫瘍薬である。注入後、ステント806が血管開口802に形成され、分岐動脈を密封し腫瘍804への血液供給を止め得る(図8Cおよび図8D)。
【0043】
図9は、カテーテル920として示されている多機能カテーテルの代替の実施形態である。この多機能カテーテル920は、近位バルーン要素922および遠位バルーン要素924を有するが、中央バルーン要素は有しない(あっても良いが膨張はしない)。図9中に示されているように、近位および遠位バルーン要素922、924は、血管101内で膨張する。血管101は開口802を有し、開口802を介して腫瘍804は血液を引き込み、酸素を受け取る。バルーン要素922、924は、血液が血管開口802に循環するのをバルーン要素922、924が止めるように配置される。
【0044】
カテーテル920はカテーテル本体930を含み、カテーテル本体930は図2Bに示されている可撓性カテーテル本体102に類似している。カテーテル本体930は、Tecoflex EG68Dとして市販されているような脂肪族ポリウレタンから製造されていても良い。可撓性カテーテル本体と同様、カテーテル本体930は好適には可撓性であり、その中を延びるルーメンを有する。たとえば、生物学的流体(たとえば、血液)の循環を止めることは望ましくないので、生物学的流体に対するパイパスを与える流体迂回ルーメン(バイパスルーメン)が存在する。示されてはいないが、流体迂回ルーメンの入口および出口が、バルーン要素922、924で画定される領域の外のカテーテル本体930上のどこかに存在する。たとえば、バルーンアセンブリの近位に位置する第1の開口、およびバルーンアセンブリの遠位に位置する第2の開口が存在する。加えて、バルーン要素922、924によって形成されたチャンバに薬剤を送達するための流体送達細管、およびバルーン要素922、924の膨張レベルを制御するためのバルーン制御細管が存在する。バルーン制御細管は、バルーン制御細管の入口からバルーン要素922中の近位出口およびバルーン要素924中の遠位出口まで延びており、両方のバルーンは同一のルーメンによって膨張および収縮される。流体送達細管は、流体送達細管の入口から2つのバルーン要素922、924の間に位置する出口934まで延びている。流体送達細管のための1つ以上の出口934が存在しても良い。出口934の形状は多様であり得る。たとえば、出口934は(示されているように)長方形、丸型、卵型、台形などであっても良い。
【0045】
バルーン要素922、924が膨張すると、腫瘍804を含む治療領域は隔離されるようになる。化学療法薬および造影剤が、バルーン要素922、924の間の隔離された領域に加えられる。隔離を達成するために、バルーン要素922、924が同時に膨張しつつある間に、バルーン要素922、924の間の空間に造影剤が加えられる。このとき、ユーザは周知であるように、造影剤がこれ以上隔離された領域から漏れ出さないならば、膨張を停止させるべきである。次に造影剤および化学療法薬は隔離された領域に加えられ、腫瘍804に押し付けられる。化学療法薬は必要な長さの時間だけ腫瘍804への接触が保持される。ゲルまたは泡の形態の塞栓物質(たとえばポリビニルアルコール)が加えられて、塞栓物質は腫瘍804への血液の流れの遮断を促進するために腫瘍に押し付けられても良い。
【0046】
薬剤をバルーン要素922、924の間のチャンバに加えるにつれ、出口934から出る矢印によって示されているように、より多くの薬剤が腫瘍804に送達されるであろう。血液の代わりに薬剤が腫瘍の中を流れるが、薬剤は血液のように酸素を運ばない。したがって、薬剤が腫瘍の中を流れると、腫瘍は低酸素症を患う。腫瘍804に流入した薬剤は、腫瘍804中を循環し、別の血管開口802を通って腫瘍804を出て行く。腫瘍804に流入する薬剤の量は、循環した薬剤が血流に加えられてもなんら有害副作用を引き起さないほどの微々たる量である。
【0047】
多目的カテーテル920は、外側表面上にマーカー936および放射線不透過性の先端938を有する。マーカー936および放射線不透過性の先端938は同一の物質(たとえば白金イリジウム)から作られていて良く、それらは画像デバイスを用いて見ることができ、カテーテル920の適切な配置のために有用である。
【0048】
膨張すると、バルーン要素922、924は約4〜8ミリメートルの最大直径を有するが、実際の直径は血管101のサイズに適合されている。バルーン要素922、924は、約0.001インチの厚さのポリウレタンもしくはシリコンウレタン、またはポリイソプレンから作られ得る。バルーン要素922、924は、可撓性カテーテル本体930とは別個である構成要素として製造されても良いが、可撓性カテーテル本体930の上を滑るように設計される。カテーテル本体930に対して突出しているマーカー936は、(特定の用途に依存して変化する)バルーン要素922、924の位置を示し、バルーン要素922、924を適所に保持する。示されている実施形態では、マーカー934はバルーン要素922、924の間であり且つバルーン要素922、924内に存在する。しかしながら、マーカーの数およびマーカーの位置は、用途に適合されても良い。
【0049】
図9は、膨張した状態にあるバルーン要素922、924を示している。膨張していないときは、バルーンはカテーテル本体102の周りの固定された場所に位置している。バルーン要素922、924が膨張すると、中央部はより大きくなり、一方で端部はカテーテル本体102にくっついた状態を保ち、膨張部を決まった場所に保持する。
【0050】
図10は、図10中に以下で示されているカテーテルのような本発明の多機能カテーテルの実施形態を用いる、ある領域(たとえば腫瘍)を治療するための方法900の流れ図である。カテーテル100は、たとえば画像デバイスを介して放射線不透過性の先端およびマーカーを用いることで、治療の領域に配置される(ステップ902)。カテーテルが適切に配置されるとすぐに、カテーテル上のバルーンアセンブリは膨張され、バルーン要素922、924の間に空間を生成する(ステップ904)。次に、薬剤(たとえば、抗腫瘍薬、生理食塩水溶液)が、カテーテルの中に延びているルーメンを介してこの空間に送達される(ステップ906)。薬剤が所望の時間の間送達された後、薬剤送達は停止され、バルーン要素922、924は収縮される(ステップ908)。カテーテル100は次に、治療領域から引き抜かれる(ステップ910)。
【0051】
低酸素症によって腫瘍を殺すために生理食塩水溶液を用いることは上で述べた。方法700および900では、腫瘍を化学的に殺すために生理食塩水溶液に代わって様々な抗腫瘍薬が使用されても良い。抗腫瘍薬は、アルキル化薬、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン抗生物質、グルココルチコイド、およびたんぱく質/DNA/RNA合成の抑制剤などのいかなる一般的に用いられる化学療法薬であっても良い。本発明では、効果を減ずることなく、従来の化学療法治療より低濃度の化学療法薬が用いられ得るが、それはこの方法では、薬剤は目標を定めた方法で、腫瘍に供給されるからである。用いられる化学療法薬の正確な濃度は化学療法薬のタイプに依存する。生理食塩水溶液または抗腫瘍薬は、造影剤(たとえば硫酸バリウム)と混合されても良く、生理食塩水または抗腫瘍薬の腫瘍への注入を観測し、注意深く制御することが可能となる。多機能カテーテル100と一緒に用いられ得る画像化技術はよく知られている。
【0052】
多機能カテーテルはまた、多くの他の工程で用いられ得る。たとえば、多機能カテーテルは、収縮された気管気管支または部分的に閉塞した卵管のような収縮された血管経路を、収縮された血管経路を広げて収縮された領域にステントを据え付けることによって、ずっと開いたままにするために用いられ得る。多機能カテーテルはまた、外傷患者の治療のために用いられ得る。特に、多機能カテーテルは、出血を止めるまたは傷ついた組織中の血管の中の閉塞物質を取り除くために用いられても良い。
【0053】
図11は、多機能カテーテルの別の実施形態1000を示している。この実施形態では、カテーテルは上述のような物質と類似の物質で作られていて良く、他の実施形態で示されているように、近位および遠位バルーン922、924を含んで良い。他の実施形態の中で示されている中央バルーンは、本実施形態では非膨張性であっても良いし、または存在していなくても良く、よって本実施形態の多機能カテーテルは2つまたは3つのバルーンを有する。図11中に示されている多機能カテーテルは、他の実施形態に対して上で記述されたものと同一の工程および方法を行うために用いられても良い。この実施形態では、多機能カテーテル1000はまた近位部1002を有し、近位部1002は1つ以上の雌型ルアー(leur)1004、注入分岐拡張(extension)1006、ガイドワイヤ分岐拡張1008、バルーン分岐拡張1010、マニフォールド1112および保護成形スリーブ1116を含む。多機能カテーテルはまた、(以下でより詳細に記述されるように2つ以上のルーメンを有する)カテーテルを有し、そのカテーテルは、近位部1002から延び、近位突き出し部1118および遠位突き出し部1120を有する。この実施形態の多機能カテーテルは、近位部1002からカテーテルの端まで171〜181センチメートルで、近位部1102の端からカテーテルの端まで150〜154センチメートルであっても良い。
【0054】
多機能カテーテルはまた、治療物質/薬剤または治療を治療部位(treatment site)に送達するために、以下で図18〜図21を参照しながら記述される、治療部(treatment portion)1121を有しても良い。多機能カテーテルはまた、遠位端に、シリコンで作られていても良い近位および遠位バルーン922、924と、上で記述したような1つ以上のマーカーバンド936と、上で記述したような放射線不透過性の先端938と、を有しても良い。多機能カテーテルは、一旦治療部位に位置を定められると、バルーン922、924を(バルーン分岐拡張を用いてバルーン膨張物質をバルーンに向けることによって)膨張させて上述のように治療部位を隔離し、治療が完了すると次に収縮させることを可能とし、(上述のように)治療物質/薬剤を(注入分岐拡張1006を介して)治療部位に注入させることを可能とし、そして治療部位にカテーテルを案内するためにガイドワイヤを用いられるようにすることを可能とする。
【0055】
図12は、図11に示される多機能カテーテルの近位部1002のさらなる詳細を図示している。各ルアー1004は、ポリカーボネートから作られ得る0.080インチ内径雌型ルアーであっても良い。たとえば、ニューヨーク州エッジウッドのQosina Inc.によって作られたルアー(部品番号65262)を多機能カテーテルに用いても良い。近位部1002は、注入分岐拡張1106に接続された注入ルアー1104aを含んで良く、注入ルアー1104aは医者、外科医、看護士、医療担当者が治療物質/薬剤をルアーにつなぎ、次に治療物質/薬剤を多機能カテーテルを介して治療部位に注入することが出来るようにする。近位部1002はまた、ガイドワイヤ分岐拡張1108に接続されたガイドワイヤルアー1104bを含んで良く、ガイドワイヤルアー1104bは医者、外科医、看護士、医療担当者が一般のガイドワイヤを多機能カテーテル内に向けさせ、よって多機能カテーテルが治療部位に配置され得るようにすることを可能とする。近位部1002はまた、バルーン分岐拡張1110に接続されたバルーンルアー1104cを含んで良く、バルーンルアー1104cは医者、外科医、看護士、医療担当者が、膨張物質を多機能カテーテルにつなぎ、次に(独立にまたは一緒に制御され得る)近位バルーンおよび遠位バルーンの膨張/収縮を制御することを可能にとする。近位部1102はまた、ガイドワイヤ拡張1108をカテーテル中のガイドワイヤルーメンに接続するマニフォールド1112を含み、マニフォールド1112は注入拡張1106をカテーテル中の注入ルーメンに接続し、バルーン拡張1110をカテーテル中の1つ以上のバルーンルーメンに接続する。マニフォールド1112はさらに接合翼(suture wing)1130を含み、工程の間、マニフォールド1112を固定するためにマニフォールド1112は特定の位置に接合される。
【0056】
図13は、図11に示された多機能カテーテルの一部であるマニフォールド1112のさらなる詳細を示している。マニフォールドは接合翼1130を有し、またカテーテルに接続している保護成形スリーブによって囲まれる、狭くなる先端部1132および入口1134を含んでも良い。
【0057】
図14Aおよび図14Bはそれぞれ、図11に示されている多機能カテーテルの近位突き出し部1118および遠位突き出し部1120を図示している。カテーテルは、1つ以上のルーメンに対して近位部1002から先端938まで連続経路を形成する。図14Aおよび図14Bに示されているように、この実施形態では、カテーテルはガイドワイヤルーメン1140、注入ルーメン1142、および膨張ルーメン1144を有し得て、ガイドワイヤルーメンはカテーテルを治療部位まで動かすためにカテーテル内に挿入されるガイドワイヤに適合し、注入ルーメンは治療部位まで治療物質/薬剤を運び、そして膨張ルーメンはバルーンの膨張の度合いを制御するために、たとえば生理食塩水のような膨張物質をバルーン922、924に運ぶ。この例では、バルーン922、924の両方が、同一の膨張ルーメンを用いて膨張/収縮される。しかしながら、別の実施形態では、各バルーンは、別々のルーメンを用いて独立に制御されても良い。図14Aおよび図14Bに示された実施形態では、近位部および遠位部におけるカテーテルの壁の厚さは0.003ミリメートルであっても良い。近位突き出し部1118におけるカテーテルの直径は1.17ミリメートルであっても良く、遠位端において0.76ミリメートルであって良い。一実施形態では、ガイドワイヤルーメンはカテーテル全体にわたって0.33ミリメートル直径を有する円形であって良く、注入ルーメンは円形で、近位端で0.41ミリメートル直径および遠位端で0.18ミリメートル直径を有しても良い。一実施形態では、膨張ルーメンは、(他の形状でも構わないし、図14Aおよび図14B中に示されている形状に限定されないが)図14Aおよび図14B中に示されているように半円のような形状であっても良いし、近位端で0.51ミリメートルの半径と1.0ミリメートルの幅および遠位端で0.31ミリメートルの半径と0.059ミリメートルの幅を有しても良い。膨張ルーメンはガイドワイヤルーメンおよび注入ルーメンの両方より大きく、それは治療が完了したときにバルーンの収縮が可能となるように十分に大きいことが必要であるからである。特に、最大1psiの真空度が(バルーンを収縮するために)膨張ルーメンに加えられることがあり、よって1psiの真空度のみを用いてバルーンを収縮させることを保証するために大き目の膨張ルーメンが必要である。一実施形態では、カテーテルが治療部位に配置されたときにガイドワイヤルーメンからガイドワイヤが取り出されると、(注入ルーメンを通って送達され得る同一の治療物質/薬剤と類似の)治療物質/薬剤が、カテーテルを通って送達され、カテーテルの遠位端に出て行くことが可能である。したがって、治療物質/薬剤は、同一の工程の間に、バルーンの間の治療領域に送達され得るし(治療物質/薬剤はカテーテルの軸長に対してある角度で送達される)、および/または、カテーテルの端を通って(カテーテルの軸長に沿って)排出され得る。
【0058】
図15Aおよび図15Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部であるガイドワイヤ拡張1008のさらなる詳細を示している。ガイドワイヤ拡張は、図15Bに示されているようにそれがガイドワイヤであることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、ガイドワイヤ拡張は、0.039ミリメートルの内径1150および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0059】
図16Aおよび図16Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部である注入拡張1006のさらなる詳細を図示している。注入拡張は、図16Bに示されているようにそれが注入拡張であることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、注入拡張は、0.025ミリメートルの内径1160および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0060】
図17Aおよび図17Bは、図11に示された多機能カテーテルの一部であるバルーン拡張1110のさらなる詳細を図示している。膨張拡張は、図17Bに示されているようにそれが膨張拡張であることを示す説明文を外面上に含んでも良い。この実施形態では、膨張拡張は、0.025ミリメートルの内径1170および0.079ミリメートルの外径1152を有しても良い。
【0061】
図18〜図21は、図11に示された多機能カテーテルの治療部1121のさらなる詳細を図示している。治療部は、示されているように配置される位置バンド936の他に、非膨張状態で示されている近位および遠位バルーン922、924と、バルーンの間に位置する治療リージョン1180を、有する。一実施形態では、治療部1121は、37ミリメートルの全長a、31ミリメートルの第1のバルーンから先端938までの長さb、12ミリメートルの第2のバルーンから先端までの距離c、および5ミリメートルの先端部938の長さdを含む。治療リージョン1180は、一実施形態では、5ミリメートルの長さeであり、各バルーンは7ミリメートルの長さfを有しても良い。図19〜図21中により詳細に示されているように、近位バルーン942の前のバイパス入口部1190は、図20中に(ミリメートル単位で)示されている孔の間の間隔で1つ以上の孔1194を有して良く、孔1194は血液のような流体が、先端を通り且つ孔1194から外へ流れ(そして治療部位を迂回し)、よって治療が行われているときにカテーテルが動脈または静脈中の通常の流れを阻止しないようにすることを可能とする。バルーンの間の治療リージョン1180はまた、図21中に(ミリメートル単位で)示されている孔の間の間隔でカテーテルの片側または両側上に1つ以上の孔1196を有し、孔1196は注入ルーメンを通って供給された治療物質/薬剤が治療領域に与えられることを可能とするが、バルーンは膨張したときに、上述のように、治療物質/薬剤が治療部位に局在し続けるようにする。
【0062】
図11(およびその後の図面)に示されている多機能カテーテルは、様々な治療に用いられ得る。たとえば、多機能カテーテルは、固形腫瘍治療のために用いられ得て、固形腫瘍治療では、内科医がカテーテルを用いて腫瘍床に特定の流体を押し込むまたは血液より粘性の高い水溶液を腫瘍床に注入し、(以下でより詳細に記述するように)腫瘍を閉塞する。多機能カテーテルはまた、遠位先端から外へ(上に記述されたカテーテルの例では最大サイズ300マイクロメートルを有する)塞栓粒子を送達するために用いられても良い。多機能カテーテルはまた、動静脈奇形(ACM)の治療のために用いられても良い。多機能カテーテルはまた、遺伝子療法または一般の血管内応用のために用いられても良い。
【0063】
図22Aおよび図22Bは、図11中に示されている多機能カテーテルの遠位先端部938のさらなる詳細を図示している。上述のように、先端は放射線不透過性であり、さらに図22Bに示されているように経路1200を有して良く、経路1200は治療されている動脈または静脈中の正常な流体流れが流れ続け、治療部位を迂回し、よって正常な流体流れは行われている治療の効果を弱めないようにすることを可能とする。経路1200はまた、上述のように治療物質をカテーテルの遠位端に送達することを可能とする。
【0064】
上述の治療に加えて、多機能カテーテルの様々な実施形態は、腫瘍を閉塞するために用いられても良い。特に、治療物質は血液より粘性の高い混合物であっても良く、よって、治療物質が多機能カテーテルを用いて腫瘍に注入されると、血液は治療物質に取って代わることが出来ず、腫瘍は血液供給の一部または全てを失い、収縮するまたは死ぬ。一実施形態では、治療物質は、生理食塩水および(近似的に50%の)造影剤の混合物、または、化学療法薬および造影剤の混合物であっても良い。
【0065】
(例示であることが意図されていて、それらに限定されない)多機能カテーテルおよびその使用の1つ以上の実施形態を記述してきたが、上の技術に照らして変形および変更が当業者によってなされ得ることには書き留めておく。たとえば、本明細書中に描写された実施形態は、バルーンアセンブリ中に2つのバルーン要素を示すが、バルーンアセンブリはそのようには限定されない。したがって、添付の請求項によって画定されるように記述されるものの趣旨および範囲内にある変更が、開示された特定の実施形態になされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の領域に薬剤を送達するためのカテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に結合されたバルーンアセンブリであって、前記バルーンアセンブリは離間されたバルーンを有し、前記離間されたバルーンは前記バルーンの間に領域を画定するバルーンアセンブリと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御するために、膨張物質を前記バルーンに送る第1のルーメンと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記離間されたバルーンの間の前記領域中に出口を有する第2のルーメン、
を含むカテーテル。
【請求項2】
さらに、前記カテーテル本体を通って延び、前記離間されたバルーンが膨張したときに、生物学的流体が前記カテーテルを通り且つ前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とする第3のルーメンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項3】
前記第1のルーメン、前記第2のルーメン、および前記第3のルーメンは、前記カテーテル本体全体にわたって隔てられている、請求項2のカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンアセンブリはさらに、互いに水平方向に離間された第1のバルーンおよび第2のバルーンを含み、前記カテーテルはさらに、前記カテーテル本体上に第1のマーカーおよび第2のマーカーを含み、前記第1のマーカーおよび前記第2のマーカーは前記第1および前記第2のバルーンの間の所定の位置に配置され、治療の領域に対する前記カテーテルの場所を示す、請求項1のカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンはポリイソプレンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項6】
さらに、先端を含み、前記先端は放射線不透過性物質から作られている、請求項1のカテーテル。
【請求項7】
前記出口は前記カテーテル本体の側壁を貫通する、請求項1のカテーテル。
【請求項8】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送達することが可能であり、前記治療物質は生理食塩水溶液である、請求項7のカテーテル。
【請求項9】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送ることが可能であり、前記治療物質は、化学療法薬である、請求項7のカテーテル。
【請求項10】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送ることが可能であり、前記治療物質は、化学療法薬および造影剤の混合物である、請求項7のカテーテル。
【請求項11】
前記第2のルーメンは塞栓物質を前記出口に送ることが可能である、請求項7のカテーテル。
【請求項12】
前記出口は前記カテーテル本体の外側表面上にある、請求項1のカテーテル。
【請求項13】
前記第1および前記第2のルーメンの少なくとも1つは前記カテーテル本体を貫通して延びる、請求項1のカテーテル。
【請求項14】
前記離間されたバルーンは前記カテーテル本体の周りで膨張する、請求項1のカテーテル。
【請求項15】
前記膨張物質は生理食塩水溶液である、請求項1のカテーテル。
【請求項16】
前記カテーテルは開いた遠位端を有し、前記カテーテルはさらに、治療物質を前記カテーテルの前記開いた遠位端を通って送ることが可能であるガイドワイヤルーメンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項17】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送り、前記治療物質は腫瘍を閉塞する粘性治療物質である、請求項1のカテーテル。
【請求項18】
前記粘性治療物質はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項17のカテーテル。
【請求項19】
前記粘性治療物質はさらに、化学療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項18のカテーテル。
【請求項20】
治療物質を治療領域に送達する方法であって、
離間されたバルーンに取り付けられているカテーテルを与えることであって、前記カテーテルは前記カテーテルに沿って延びる第1のルーメンおよび第2のルーメンを有することと、
前記カテーテルを、前記治療領域が前記離間されたバルーンの間となるように配置することと、
前記離間されたバルーンの間に前記治療領域を生成するために前記離間されたバルーンの膨張レベルを同時に調整することであって、前記調整することは膨張物質を前記離間されたバルーンの各々への開口を有する前記第1のルーメンを通って送ることと、
前記治療物質を第2のルーメンを通って前記治療領域に送ること、
を含む方法。
【請求項21】
さらに、前記離間されたバルーンが前記治療領域に触れるまで、前記離間されたバルーンを膨張することと、前記離間されたバルーンの間に孤立した領域を形成すること、を含む請求項20の方法。
【請求項22】
さらに、生物学的流体が第3のルーメンを通って流れ、前記離間されたバルーンが膨張したときに生物学的流体が前記カテーテルを通り、前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とすることを可能とすることを含む、請求項21の方法。
【請求項23】
さらに、前記離間されたバルーンに対して所定の位置に配置されたマーカーを用いることによって、離間されたバルーンを配置することを含む、請求項20の方法。
【請求項24】
前記治療物質は化学療法薬を含む、請求項20の方法。
【請求項25】
前記治療物質は造影剤を含む、請求項20の方法。
【請求項26】
前記治療物質は塞栓物質である、請求項20の方法。
【請求項27】
前記治療物質はさらに、腫瘍を閉塞する粘性治療物質を含む、請求項20の方法。
【請求項28】
前記粘性治療物質はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項27の方法。
【請求項29】
前記第2の物質はさらに、化学的療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項28の方法。
【請求項30】
さらに、治療物質を前記カテーテルの開いた遠位端を通って灌流させること、を含む請求項20の方法。
【請求項31】
治療の領域を孤立させる方法であって、
離間されたバルーンに取り付けられているカテーテルを与えることであって、前記カテーテルは、前記カテーテルに沿って延びるルーメンを有することと、
前記カテーテルを、前記治療の領域が前記離間されたバルーンの間となるように配置することと、
第1の膨張物質を前記離間されたバルーンの各々への開口を有する前記ルーメンを通って送ることによって、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御し、前記治療の領域を孤立させることと、
を含む方法。
【請求項32】
さらに、前記治療の領域に造影剤を加えることと、前記造影剤の前記治療の領域の周りの領域への漏れがなくなるまで前記バルーンを膨張させること、を含む請求項31の方法。
【請求項33】
治療の領域に薬剤を送達するためのカテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体に結合されたバルーンアセンブリであって、前記バルーンアセンブリは2つの離間されたバルーンを有し、前記2つの離間されたバルーンは前記バルーンの間に領域を画定するバルーンアセンブリと、
前記カテーテル本体に沿って延びる第1のルーメンであって、前記離間されたバルーンに膨張物質を与え、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御することが可能な前記第1のルーメンと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記2つの離間されたバルーンの間の前記領域中に出口を有する第2のルーメンと、
を含むカテーテル。
【請求項34】
さらに、前記カテーテル本体を通って延び、前記離間されたバルーンが膨張したときに、生物学的流体が前記カテーテルを通り、且つ前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とする第3のルーメンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項35】
前記第1のルーメン、前記第2のルーメン、および前記第3のルーメンは、前記カテーテル本体全体にわたって隔てられている、請求項34のカテーテル。
【請求項36】
前記バルーンアセンブリはさらに、第1のバルーンおよび前記第1のバルーンから水平方向に離間された第2のバルーンを含み、前記カテーテルはさらに、前記カテーテル本体上に第1のマーカーおよび第2のマーカーを含み、前記第1のマーカーおよび前記第2のマーカーは前記第1および前記第2のバルーンの間の所定の位置に配置され、治療の領域に対する前記カテーテルの場所を示す、請求項33のカテーテル。
【請求項37】
前記バルーンはポリイソプレンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項38】
先端を含み、前記先端は放射線不透過性物質から作られている、請求項33のカテーテル。
【請求項39】
前記出口は前記カテーテル本体の側壁を貫通する、請求項33のカテーテル。
【請求項40】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は生理食塩水溶液である、請求項39のカテーテル。
【請求項41】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は、化学療法薬である、請求項39のカテーテル。
【請求項42】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は、化学療法薬および造影剤の混合物である、請求項39のカテーテル。
【請求項43】
前記第2のルーメンは塞栓物質を前記出口に送ることが可能である、請求項39のカテーテル。
【請求項44】
前記出口は前記カテーテル本体の外側表面上にある、請求項33のカテーテル。
【請求項45】
前記第1および前記第2のルーメンの少なくとも1つは前記カテーテル本体を貫通して延びる、請求項33のカテーテル。
【請求項46】
前記バルーンは前記カテーテル本体の周りに膨張する、請求項33のカテーテル。
【請求項47】
前記膨張物質は生理食塩水溶液である、請求項33のカテーテル。
【請求項48】
前記カテーテルは開いた遠位端を有し、前記カテーテルはさらに、薬剤を前記カテーテルの前記開いた遠位端を通って送ることが可能であるガイドワイヤルーメンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項49】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送り、前記薬剤は腫瘍を閉塞する粘性薬剤である、請求項33のカテーテル。
【請求項50】
前記粘性薬剤はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項49のカテーテル。
【請求項51】
前記粘性薬剤はさらに、化学療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項50のカテーテル。
【請求項1】
治療の領域に薬剤を送達するためのカテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に結合されたバルーンアセンブリであって、前記バルーンアセンブリは離間されたバルーンを有し、前記離間されたバルーンは前記バルーンの間に領域を画定するバルーンアセンブリと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御するために、膨張物質を前記バルーンに送る第1のルーメンと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記離間されたバルーンの間の前記領域中に出口を有する第2のルーメン、
を含むカテーテル。
【請求項2】
さらに、前記カテーテル本体を通って延び、前記離間されたバルーンが膨張したときに、生物学的流体が前記カテーテルを通り且つ前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とする第3のルーメンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項3】
前記第1のルーメン、前記第2のルーメン、および前記第3のルーメンは、前記カテーテル本体全体にわたって隔てられている、請求項2のカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンアセンブリはさらに、互いに水平方向に離間された第1のバルーンおよび第2のバルーンを含み、前記カテーテルはさらに、前記カテーテル本体上に第1のマーカーおよび第2のマーカーを含み、前記第1のマーカーおよび前記第2のマーカーは前記第1および前記第2のバルーンの間の所定の位置に配置され、治療の領域に対する前記カテーテルの場所を示す、請求項1のカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンはポリイソプレンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項6】
さらに、先端を含み、前記先端は放射線不透過性物質から作られている、請求項1のカテーテル。
【請求項7】
前記出口は前記カテーテル本体の側壁を貫通する、請求項1のカテーテル。
【請求項8】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送達することが可能であり、前記治療物質は生理食塩水溶液である、請求項7のカテーテル。
【請求項9】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送ることが可能であり、前記治療物質は、化学療法薬である、請求項7のカテーテル。
【請求項10】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送ることが可能であり、前記治療物質は、化学療法薬および造影剤の混合物である、請求項7のカテーテル。
【請求項11】
前記第2のルーメンは塞栓物質を前記出口に送ることが可能である、請求項7のカテーテル。
【請求項12】
前記出口は前記カテーテル本体の外側表面上にある、請求項1のカテーテル。
【請求項13】
前記第1および前記第2のルーメンの少なくとも1つは前記カテーテル本体を貫通して延びる、請求項1のカテーテル。
【請求項14】
前記離間されたバルーンは前記カテーテル本体の周りで膨張する、請求項1のカテーテル。
【請求項15】
前記膨張物質は生理食塩水溶液である、請求項1のカテーテル。
【請求項16】
前記カテーテルは開いた遠位端を有し、前記カテーテルはさらに、治療物質を前記カテーテルの前記開いた遠位端を通って送ることが可能であるガイドワイヤルーメンを含む、請求項1のカテーテル。
【請求項17】
前記第2のルーメンは治療物質を前記出口に送り、前記治療物質は腫瘍を閉塞する粘性治療物質である、請求項1のカテーテル。
【請求項18】
前記粘性治療物質はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項17のカテーテル。
【請求項19】
前記粘性治療物質はさらに、化学療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項18のカテーテル。
【請求項20】
治療物質を治療領域に送達する方法であって、
離間されたバルーンに取り付けられているカテーテルを与えることであって、前記カテーテルは前記カテーテルに沿って延びる第1のルーメンおよび第2のルーメンを有することと、
前記カテーテルを、前記治療領域が前記離間されたバルーンの間となるように配置することと、
前記離間されたバルーンの間に前記治療領域を生成するために前記離間されたバルーンの膨張レベルを同時に調整することであって、前記調整することは膨張物質を前記離間されたバルーンの各々への開口を有する前記第1のルーメンを通って送ることと、
前記治療物質を第2のルーメンを通って前記治療領域に送ること、
を含む方法。
【請求項21】
さらに、前記離間されたバルーンが前記治療領域に触れるまで、前記離間されたバルーンを膨張することと、前記離間されたバルーンの間に孤立した領域を形成すること、を含む請求項20の方法。
【請求項22】
さらに、生物学的流体が第3のルーメンを通って流れ、前記離間されたバルーンが膨張したときに生物学的流体が前記カテーテルを通り、前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とすることを可能とすることを含む、請求項21の方法。
【請求項23】
さらに、前記離間されたバルーンに対して所定の位置に配置されたマーカーを用いることによって、離間されたバルーンを配置することを含む、請求項20の方法。
【請求項24】
前記治療物質は化学療法薬を含む、請求項20の方法。
【請求項25】
前記治療物質は造影剤を含む、請求項20の方法。
【請求項26】
前記治療物質は塞栓物質である、請求項20の方法。
【請求項27】
前記治療物質はさらに、腫瘍を閉塞する粘性治療物質を含む、請求項20の方法。
【請求項28】
前記粘性治療物質はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項27の方法。
【請求項29】
前記第2の物質はさらに、化学的療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項28の方法。
【請求項30】
さらに、治療物質を前記カテーテルの開いた遠位端を通って灌流させること、を含む請求項20の方法。
【請求項31】
治療の領域を孤立させる方法であって、
離間されたバルーンに取り付けられているカテーテルを与えることであって、前記カテーテルは、前記カテーテルに沿って延びるルーメンを有することと、
前記カテーテルを、前記治療の領域が前記離間されたバルーンの間となるように配置することと、
第1の膨張物質を前記離間されたバルーンの各々への開口を有する前記ルーメンを通って送ることによって、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御し、前記治療の領域を孤立させることと、
を含む方法。
【請求項32】
さらに、前記治療の領域に造影剤を加えることと、前記造影剤の前記治療の領域の周りの領域への漏れがなくなるまで前記バルーンを膨張させること、を含む請求項31の方法。
【請求項33】
治療の領域に薬剤を送達するためのカテーテルであって、
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体に結合されたバルーンアセンブリであって、前記バルーンアセンブリは2つの離間されたバルーンを有し、前記2つの離間されたバルーンは前記バルーンの間に領域を画定するバルーンアセンブリと、
前記カテーテル本体に沿って延びる第1のルーメンであって、前記離間されたバルーンに膨張物質を与え、前記離間されたバルーンの膨張レベルを制御することが可能な前記第1のルーメンと、
前記カテーテル本体に沿って延び、前記2つの離間されたバルーンの間の前記領域中に出口を有する第2のルーメンと、
を含むカテーテル。
【請求項34】
さらに、前記カテーテル本体を通って延び、前記離間されたバルーンが膨張したときに、生物学的流体が前記カテーテルを通り、且つ前記離間されたバルーンの間の前記領域の周りを流れることを可能とする第3のルーメンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項35】
前記第1のルーメン、前記第2のルーメン、および前記第3のルーメンは、前記カテーテル本体全体にわたって隔てられている、請求項34のカテーテル。
【請求項36】
前記バルーンアセンブリはさらに、第1のバルーンおよび前記第1のバルーンから水平方向に離間された第2のバルーンを含み、前記カテーテルはさらに、前記カテーテル本体上に第1のマーカーおよび第2のマーカーを含み、前記第1のマーカーおよび前記第2のマーカーは前記第1および前記第2のバルーンの間の所定の位置に配置され、治療の領域に対する前記カテーテルの場所を示す、請求項33のカテーテル。
【請求項37】
前記バルーンはポリイソプレンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項38】
先端を含み、前記先端は放射線不透過性物質から作られている、請求項33のカテーテル。
【請求項39】
前記出口は前記カテーテル本体の側壁を貫通する、請求項33のカテーテル。
【請求項40】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は生理食塩水溶液である、請求項39のカテーテル。
【請求項41】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は、化学療法薬である、請求項39のカテーテル。
【請求項42】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送ることが可能であり、前記薬剤は、化学療法薬および造影剤の混合物である、請求項39のカテーテル。
【請求項43】
前記第2のルーメンは塞栓物質を前記出口に送ることが可能である、請求項39のカテーテル。
【請求項44】
前記出口は前記カテーテル本体の外側表面上にある、請求項33のカテーテル。
【請求項45】
前記第1および前記第2のルーメンの少なくとも1つは前記カテーテル本体を貫通して延びる、請求項33のカテーテル。
【請求項46】
前記バルーンは前記カテーテル本体の周りに膨張する、請求項33のカテーテル。
【請求項47】
前記膨張物質は生理食塩水溶液である、請求項33のカテーテル。
【請求項48】
前記カテーテルは開いた遠位端を有し、前記カテーテルはさらに、薬剤を前記カテーテルの前記開いた遠位端を通って送ることが可能であるガイドワイヤルーメンを含む、請求項33のカテーテル。
【請求項49】
前記第2のルーメンは薬剤を前記出口に送り、前記薬剤は腫瘍を閉塞する粘性薬剤である、請求項33のカテーテル。
【請求項50】
前記粘性薬剤はさらに、造影剤および第2の物質の混合物を含む、請求項49のカテーテル。
【請求項51】
前記粘性薬剤はさらに、化学療法薬および生理食塩水薬の1つを含む、請求項50のカテーテル。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【公表番号】特表2011−509158(P2011−509158A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542338(P2010−542338)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/030434
【国際公開番号】WO2009/089343
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510189639)ヴァスキュラー デザインズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】VASCULAR DESIGNS,INC.
【住所又は居所原語表記】4960 Almaden Expressway,San Jose,California 95118,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/030434
【国際公開番号】WO2009/089343
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510189639)ヴァスキュラー デザインズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】VASCULAR DESIGNS,INC.
【住所又は居所原語表記】4960 Almaden Expressway,San Jose,California 95118,United States of America
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]