説明

多機能型電子部品

【課題】揺動つまみや回転つまみの大きさを大きく保ちながらその小型化を図ることができる多機能型電子部品を提供する。
【解決手段】フレキシブル回路基板40と、フレキシブル回路基板40上に揺動自在に設置されてフレキシブル回路基板40上に設置したスイッチ51を押圧する押圧部177を有してなる揺動体170と、揺動体170の外周を囲んで回転自在に設置され回転することでフレキシブル回路基板40との間に設置された電気的機能部の電気的出力を変化する回転体130とを具備する。揺動体170及び回転体130には、それぞれその上面側から揺動つまみ280及び回転つまみ300が圧入又はスナップイン係合によって取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動式電子部品と回転式電子部品の機能を併せ持つ多機能型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラや携帯電話等の各種携帯機器、コンピュータ、車載用ナビゲーションシステム、各種OA機器、ゲーム機等を操作するデバイス等として、揺動式電子部品と回転式電子部品の機能を併せ持つ多機能型電子部品が利用されている(例えば特許文献1)。この種の多機能型電子部品は、揺動つまみの外周に回転つまみを設置し、回転つまみと揺動つまみとを異なる操作に用いている。さらに多機能型電子部品の中には、前記揺動つまみの中央に押釦つまみを設置し、この押釦スイッチを押圧することでさらに別の操作が行えるようにしたものもある。
【0003】
そしてこの種の多機能型電子部品は更なる小型化が要求されているが、その全体を小型化すると揺動つまみや回転つまみも小型化され、それらの指等による操作が行いにくくなってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2005−317337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、揺動つまみや回転つまみの大きさを大きく保ちながらその小型化を図ることができる多機能型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、回路基板と、前記回路基板上に揺動自在に設置されて前記回路基板上に設置したスイッチを押圧する押圧部を有してなる揺動体と、前記揺動体の外周を囲んで回転自在に設置され回転することで前記回路基板との間に設置された電気的機能部の電気的出力を変化する回転体とを具備し、前記揺動体及び回転体には、それぞれその上面側から揺動つまみ及び回転つまみが圧入又はスナップイン係合によって取り付けられていることを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記回路基板のスイッチの周囲に側壁を立設すると共に、この側壁にヒンジ部材を介して前記揺動体を取り付け、この揺動体の上面側に前記揺動つまみを前記圧入又はスナップイン係合によって取り付けることを特徴とする請求項1に記載の多機能型電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、中央に開口を有する上ケースを前記回転体の上部に設置し、前記上ケースの上面側に設置される前記回転つまみを前記回転体に前記圧入又はスナップイン係合によって取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の多機能型電子部品にある。
【0008】
本願請求項4に記載の発明は、前記回転つまみには、この回転つまみを前記上ケースの上面側に設置した際に上ケースの開口の周囲に係合する抜け防止用の係合部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の多機能型電子部品にある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、揺動体と揺動つまみを分離し、また回転体と回転つまみを分離した上で、揺動体及び回転体にそれぞれその上面側から揺動つまみ及び回転つまみを圧入又はスナップイン係合によって取り付ける構造としたので、揺動体や回転体を含む多機能型電子部品の小型化を行っても、容易に揺動つまみや回転つまみの大きさを大きく保つことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、回路基板上への揺動体の設置及び揺動体への揺動つまみの取り付けが、容易且つ確実に行なえる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、回転体への上ケースを介した回転つまみの取り付けが容易且つ確実に行なえる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、回転つまみの抜け防止を容易且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかる多機能型電子部品1の斜視図、図2は多機能型電子部品1を所定位置で切断した多機能型電子部品1の断面斜視図、図3は多機能型電子部品1を他の所定位置で切断した多機能型電子部品1の断面斜視図、図4(図4−1〜図4−3)は多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図、図5(図5−1〜図5−3)は多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上側(上)」とはこの多機能型電子部品1を操作する操作面側(操作面方向)、「下側(下)」とはその反対面側(反対面方向)を言うものとする。
【0014】
図4,図5に示すように多機能型電子部品1は、下ケース10内に、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)40と、摺動子60,61,63と、アース部材70と、スイッチパターン形成体110を取り付けた回転体130と、揺動体170と押釦つまみ190を取り付けたヒンジ部材210と、クリック部材240とを収納し、その上に上ケース260を被せるように取り付け、さらにその上から揺動つまみ280と回転つまみ300とを取り付けて構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0015】
下ケース10は図4−3,図5−3に示すように合成樹脂(例えばABS樹脂、PBT樹脂、POM樹脂等)の成形品であり、円板状の底板11の外周に筒状の外壁13を立設し、また底板11上の前記外壁13の内側に筒状の側壁15を立設し、側壁15の内側の空間をスイッチ収納部17とし、側壁15と外壁13の間の空間を電気的機能部収納空間19とし、スイッチ収納部17内の底板11に一対の貫通する小孔からなるアース端子挿通部21を設け、前記側壁15の上端面に複数本(この実施形態では4本)の小突起からなる係止部23を設け、電気的機能部収納空間19内の底板11に複数本(この実施形態では8本、但し図4−3には3本のみ示す。)の小突起からなる取付部25を設けて構成されている。外壁13の一部には、これを切り欠いてなる引出部挿通部27が設けられ、外壁13の外周側には上下方向に向かう帯状の溝からなるガイド部29が等間隔に複数ヶ所(この実施形態では4ヶ所)形成され、外壁13の上端面には180°対向する位置にそれぞれ小さな一対の凹部を接近して設けてなるクリック部材係止部31が形成されている。側壁15にはその複数ヶ所(この実施形態では4ヶ所)を等間隔に切り欠くことで基板挿通部33が形成されている。
【0016】
フレキシブル回路基板40は可撓性を有する絶縁性の合成樹脂フイルム(この実施形態では熱可塑性合成樹脂フイルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いているが、他の熱可塑性又は熱硬化性の合成樹脂フイルムを用いても良い。)を前記下ケース10の外壁13の内側に収納できる外形寸法の円形に形成し、その内部の前記下ケース10の側壁15に対向する位置にリング状の側壁挿通部41を設け、またその外周から帯状の引出部43を引き出して構成されている。そして側壁挿通部41で仕切られたその内側部分を第1電気的機能部設置部(以下「スイッチ形成部」という)45とし、外側部分を第2電気的機能部設置部(以下「摺動子取付部」という)47としている。スイッチ形成部45と摺動子取付部47は、側壁挿通部41に等間隔に複数(この実施形態では4ヶ所)設けた連結片49によって連結されている。スイッチ形成部45の上面には複数(この実施形態では5つ)のスイッチ51(中央に1つ、その周囲を囲む位置に等間隔に4つ)が設けられ、またスイッチ形成部45の外周近傍の180°対向する位置には一対の矩形状の小孔からなるアース挿通部53が設けられている。摺動子取付部47はその複数位置(この実施形態では3ヶ所)に円弧状の導電パターン55a,b,cを設け、各導電パターン55a,b,c中と引出部43を連結する位置とに小孔からなる取付部57を設けている。各スイッチ51は、フレキシブル回路基板40上にスクリーン印刷などによって形成した一対の接点パターン(図示せず)上にドーム形状の導電板(金属板)からなる反転板(可動接点板)を設置することで構成されている。反転板の外周辺には一方の接点パターンが当接しており、反転板の上面を押圧して反転板をクリック感覚を生じながら反転させるとその中央下面がもう一方の接点パターンに当接し、これによって両接点パターン間が導通する。
【0017】
電気的機能部を構成する摺動子60,61,63は何れも弾性金属板(例えばリン青銅)製であり、摺動子60はコモンの摺動子、摺動子61,63は出力用の摺動子である。摺動子60は平板円弧状の基部60aの両端から摺接部60b,60cを突出し、また基部60a中の複数ヶ所(前記フレキシブル回路基板40の取付部57に対向する3ヶ所)に取付部57と同一径の小孔からなる取付挿入部60dを設けて構成されている。摺動子61,63は平板円弧状の基部61a,63aの一端から摺接部61b,63bを突出し、また基部61a,63a中の複数ヶ所(前記フレキシブル回路基板40の取付部57に対向する2ヶ所)に取付部57と同一径の小孔からなる取付挿入部61d,63dを設けて構成されている。各摺接部60b,60c,61b,63bは基部60a,61a,63aに連結される根元部分において上方向(操作面側)に折り曲げられている。
【0018】
アース部材70は導電部材製(この実施形態ではステンレス等の金属板製)であり、略十字状であってその内部が開口73となっているアース本体部71の突出している4つの部分の外周辺からそれぞれ取付部75を突出して設けて構成されている。各取付部75は、アース本体部71への接続部分から2回逆方向に90°折り曲げることで、その先端側の面がアース本体部71の面より上方に平行に位置するようにしている。そしてこの先端部分は水平で円弧状の設置部77となっている。各設置部77の中央には前記下ケース10の係止部23に挿入される小孔からなる係止部79が設けられている。またアース本体部71の開口73の取付部75の根元に位置する部分からは、下方向に90°折り曲げられて突出する舌片状のアース部81が180°対向する位置に一対設けられている。これらアース部81は前記下ケース10のアース端子挿通部21に対向する位置にアース端子挿通部21に挿入できる寸法で形成されている。
【0019】
スイッチパターン形成体110は、合成樹脂フイルム(この実施形態では可撓性を有するPETフイルムを用いているが、他の熱可塑性、熱硬化性の合成樹脂フイルムでもよく、硬質板でも良い)を中央に円形の貫通孔111を設けた円形のリング状に形成し、その下面(下ケース10側を向く面)にリング状で等間隔に複数(この実施形態では12個)の略矩形状の電気的機能部を構成する摺接パターン112を形成して構成されている。各摺接パターン112は貫通孔111に接近してリング状に設けた連結パターン113によって連結されている。スイッチパターン形成体110の外周の等間隔の複数位置(この実施形態では4ヶ所)からは小突起状の位置決め部115が突出している。
【0020】
回転体130は合成樹脂(例えばポリカーボネート樹脂等)を略平板リング状に成形してなる成形品であり、中央に円形に貫通する軸支部131を設けて構成されている。軸支部131の内径寸法は前記下ケース10の側壁15の外周に回転体130が回動自在に軸支されるように、側壁15の外径寸法よりも若干大きい寸法に形成されている。また回転体130の外径寸法は下ケース10の外壁13の内側に収納できる寸法に形成されている。回転体130の上面側の外周にはその全周にわたってリング状の凹凸からなるクリック係合部133が設けられ、その内側には同心円状の複数(この実施形態では4つ)の円弧状に上方向に突出する摺接部135が設けられ、その内側の軸支部131の周囲には同一円周状に等間隔に複数(この実施形態では4つ)の柱状の取付部137が設けられ、各取付部137の上端面には円形の凹部からなる圧入部139が設けられている。摺接部135は下記する上ケース260の下面の開口267周囲に当接(摺接)する位置に設けられ、取付部137は上ケース260の開口267内に露出する位置に設けられている。回転体130の下面には、リング状の平面からなるスイッチパターン形成体取付部141が設けられている。スイッチパターン形成体取付部141の前記スイッチパターン形成体110の各位置決め部115に対向する位置にはこれらを挿入する係止部143が設けられている。なおスイッチパターン形成体110は回転体130のスイッチパターン形成体取付部141に接着等によって取り付けてもよいが、この実施形態では図2,図3からも分かるように、スイッチパターン形成体110は回転体130のスイッチパターン形成体取付部141にインサート成形によって取り付けられている。
【0021】
揺動体170は合成樹脂(例えばABS樹脂、PBT樹脂、POM樹脂等)を略リング状に成形して構成されている。即ち略平板リング状であって中央に円形のつまみ挿通穴173を設けてなる揺動本体部171と、揺動本体部171の外周下面側に突出するように等間隔に複数(この実施形態では4つ)設けられる揺動つまみ取付部175と、揺動本体部171の下面の各揺動つまみ取付部175の内側(つまみ挿通穴173側)に下方向に突出するように設けられる柱状の複数(4つ)の押圧部177と、揺動本体部171の下面の各押圧部177の中間位置に下方向に突出するように設けられる柱状の複数(4つ)のひんじ取付部179とを設けて構成されている。各揺動つまみ取付部175は上下に貫通する貫通孔178を有する箱型に形成され、箱型を形成する筒状部分の内、左右一対(揺動体70を上側から見て半径方向外側に突出する左右一対)の部分によって下記する揺動つまみ280のクリック係合部285の両側辺を挿入自在にガイドし、また先端(揺動体70を上側から見て半径方向外側に最も突出している1辺)の部分の下辺をスナップ係合部183としている。
【0022】
押釦つまみ190は合成樹脂(例えばABS樹脂、PBT樹脂、POM樹脂等)を成形して構成されており、略円形の柱状に成形してなるつまみ本体191と、つまみ本体191の外周下部から半径方向外側に張り出すリング状のつば部193と、つまみ本体191の下面中央から突出する円形柱状の押圧部195と、つまみ本体191の下面の押圧部195の両側に設けられる小突起からなる固定部197とを具備して構成されている。
【0023】
ヒンジ部材210は可撓性を有する合成樹脂フイルム製(この実施形態ではPETフイルムを用いているが、他の合成樹脂フイルムでも良い。)であり、外周を囲むリング状の連結部211と、中央の略円形の押釦つまみ取付部213と、押釦つまみ取付部213の周囲から放射状に突出してそれらの先端を連結部211に接続する複数本(4本)のヒンジ部215とを具備して構成されている。押釦つまみ取付部213の中央には前記押釦つまみ190の押圧部195を挿通する円形の貫通する挿通部217が設けられ、また挿通部217の両側部には前記押釦つまみ190の各固定部197を挿通する円形の貫通する係合部219が設けられている。各ヒンジ部215と押釦つまみ取付部213とを連結している部分には、それぞれ前記押釦つまみ取付部213のヒンジ部215に対する可撓性を高めるための開口221が設けられ、また各ヒンジ部215の中間位置には前記揺動体170のひんじ取付部179を挿入する円形の貫通する固定部223が設けられ、各ヒンジ部215の連結部211側の端部近傍にはそれぞれ前記下ケース10の係止部23に挿入される貫通する円形の固定部225が設けられている。
【0024】
クリック部材240は薄板状の弾性金属板をリング状に形成し、180°対向する部分に取付部241を設け、両取付部241の間を結ぶ円弧状の一対の弾発部243を下方向に少し折り曲げ、各弾発部243の中間部分を下方向に突出するように円弧状に折り曲げて弾接部245として構成されている。取付部241の外側辺には、矩形状に凹む係合凹部247が設けられている。
【0025】
上ケース260はステンレス等の金属板を加工することによって構成されており、略円形平板リング状の本体部261と、本体部261の外周から半径方向外側に向けて突出してその根元部分を90°下方向に折り曲げてなる舌片状の複数(この実施形態では4つ)の取付片263と、本体部261の外周から半径方向外側に向けて突出してその根元部分を90°下方向に折り曲げてなる略帯状の蓋部265とを具備して構成されている。本体部261の中央には円形の開口267が設けられている。各取付片263は前記下ケース10の各ガイド部29内にぴったり挿入される位置及び寸法に形成されている。また蓋部265は前記下ケース10の引出部挿通部27を略覆う位置及び寸法に形成されている。蓋部265の下部は、半径方向外側に向けて折り曲げられた後、上向きに折り曲げられ(即ち全体として略J字状に折り曲げられ)ている。このように折り曲げたのは、蓋部265の下側を通過するフレキシブル回路基板40の引出部43が撓んでこの蓋部265の下辺に当接しても引出部43を傷付けることがないようにするためである。
【0026】
揺動つまみ280は成形樹脂(例えばABS樹脂、PBT樹脂、POM樹脂等)を略円板状に成形して構成されており、その中央には前記押釦つまみ190のつまみ本体191を挿通するつまみ露出部281が設けられ、また揺動つまみ280下面のつまみ露出部281の周囲には押釦つまみ190のつば部193を収納するリング状で凹状のつば部収納部283が設けられ、また揺動つまみ280下面の前記揺動体170の各揺動つまみ取付部175(その貫通孔178)に対向する位置には下方向に突出するクリック係合部285が設けられている。クリック係合部285は弾性を有する薄板状の弾性部285aと、弾性部285aの先端(下端)に設けられる爪部285bとによって構成されている。また揺動つまみ280の上面の前記各クリック係合部285の真上の位置には、それぞれその押圧方向を示す記号部287が凹部によって形成されている。
【0027】
回転つまみ300は合成樹脂(例えばABS樹脂、PBT樹脂、POM樹脂等)を略リング状に成形して構成されており、中央には前記揺動つまみ280を挿入する円形のつまみ挿入穴301が設けられている。つまみ挿入穴301の内径は揺動つまみ280の外径よりも若干大きい。回転つまみ300の上面には指による操作が行い易いように等間隔に突部303が設けられている。一方回転つまみ300の下面のつまみ挿入穴301の周囲には、下方向に向かって突出する円形筒状の突出部305が設けられ、突出部305内の等間隔の4ヶ所には突出部305を切り欠いてなる凹部307が設けられ、各凹部307内にはその底面から突出する小突起状の取付部309が設けられている。突出部305の外径寸法は前記上ケース260の開口267の内径寸法よりも若干小さい寸法に形成されている。各取付部309は前記回転体130の各圧入部139に対向する位置に圧入部139の内径よりも若干大きい外径寸法で形成されている。突出部305の各凹部307で仕切られた部分の中間には、突出部305の根元側の部分に開口部311を設けることで開口部311を設けた下側の突出部305の部分の厚みを薄くして弾性を持たせたアーチ状の弾発部313とし、弾発部313の中間に半径方向外側に向かって突出する爪状の係合部315を設けている。各係合部315は少なくともそれらの先端を結ぶ円の径が上ケース260の開口267の内径よりも大きくなるように形成されている。
【0028】
次に上記多機能型電子部品1の組立方法を説明する。この実施形態では予め回転体130の下面のスイッチパターン形成体取付部141にスイッチパターン形成体110をその摺接パターン112を露出した状態でインサート成形しておく。また予めヒンジ部材210上に揺動体170と押釦つまみ190とを載置し、その際ヒンジ部材210の挿通部217に押釦つまみ190の押圧部195を挿通し、同時にヒンジ部材210の各係合部219に押釦つまみ190の各固定部197を挿入し、同時にヒンジ部材210の各固定部223に揺動体170の各ヒンジ取付部179を挿入する。このとき揺動体170の各押圧部177はヒンジ部材210の十字型の各ヒンジ部215の間の開口部分を通してヒンジ部材210の下面側に突出しており、また押釦つまみ190のつまみ本体191は揺動体170のつまみ挿通穴173内に挿入されている。そして前記各固定部197と各ヒンジ取付部179の先端を熱カシメすることで押釦つまみ190と揺動体170をヒンジ部材210上に取り付ける。
【0029】
そして下ケース10内にフレキシブル回路基板40を収納する。その際下ケース10の側壁15をフレキシブル回路基板40の側壁挿通部41に挿入し、同時に下ケース10の各取付部25をフレキシブル回路基板40の各取付部57に挿入する。このとき下ケース10のアース端子挿通部21とフレキシブル回路基板40のアース挿通部53の位置が一致する。次に前記フレキシブル回路基板40上の各導電パターン55a,b,c上に各摺動子60,61,63の基部60a,61a,63aを載置し、その際フレキシブル回路基板40上に突出している下ケース10の各取付部25(1つを除く)を各基部60a,61a,63aの取付挿入部60d,61d,63dに挿入する。そして全ての取付部25の先端を熱カシメすれば、下ケース10の底板11上にフレキシブル回路基板40と各摺動子60,61,63とが固定される。
【0030】
次に下ケース10内にアース部材70を収納し、その際下ケース10の側壁15上にアース部材70の設置部77を載置する。このとき各設置部77の各係止部79に下ケース10の各係止部23が挿入される。またこのときアース部材70の一対のアース部81がフレキシブル回路基板40のアース挿通部53を通して下ケース10の一対のアース端子挿通部21内に挿入され、それらの先端は少し下ケース10の下面側に露出する。次に前記揺動体170と押釦つまみ190とを取り付けたヒンジ部材210を前記アース部材70上に載置し、その際アース部材70の設置部77上に突出している下ケース10の各係止部23を、ヒンジ部材210の各固定部225に挿入する。そして各係止部23をヒンジ部材210上で熱カシメし、これによってアース部材70とヒンジ部材210とを下ケース10内に固定する。
【0031】
次にスイッチパターン形成体110を取り付けた回転体130を、下ケース10の電気的機能部収納空間19内に収納する。このとき回転体130は下ケース10の側壁15の外周にその軸支部131が回転自在に軸支される。次に下ケース10の電気的機能部収納空間19内にクリック部材240を収納し、その際クリック部材240の一対の取付部241の半径方向外側半分の部分(係合凹部247の部分)を下ケース10の外壁13上の一対のクリック部材係止部31に係合・保持する。次に下ケース10上に上ケース260を被せ、上ケース260の各取付片263を下ケース10の各ガイド部29に挿入・係合し、各取付片263の先端を下ケース10の下面に折り曲げる。このときの状態を図6に示す。同図に示すように上ケース260の開口267内には、揺動体170の各揺動つまみ取付部175(貫通孔178)と、回転体130の各取付部137(圧入部139)とが露出している。
【0032】
そして前記揺動体170の上面側に揺動つまみ280を設置することで揺動つまみ280の各クリック係合部285を揺動体170の各揺動つまみ取付部175(貫通孔178)にスナップイン係合する。このスナップイン係合は、クリック係合部285の爪部285bを揺動つまみ取付部175の貫通孔178に挿入し、その際爪部285bをスナップ係合部183(図4−2,5−2参照)によって内側に押圧して弾性部285aを内側にたわめ、さらに挿入することで爪部285bがスナップ係合部183の下側に入り込んで前記弾性部285aのたわめを解除することで行われる。
【0033】
一方前記上ケース260を挟んだ回転体130の上面側に回転つまみ300を設置することで、回転つまみ300の各取付部309を回転体130の各取付部137の圧入部139に圧入する。このとき同時に回転つまみ300の各係合部315を上ケース260の開口267の内周辺に当接してその弾発部313をたわませることで各係合部315を開口267側(内側)に押し込みながら上ケース260の下面にスナップイン係合させる。なおこのとき図2に示すように、各係合部315と上ケース260の下面との間には少しの隙間がある。つまり回転つまみ300の取り付けは、取付部309の圧入部139への圧入によって行われており、各係合部315は補助的に回転つまみ300が外れないようにするために設けたものである。
【0034】
これによって多機能型電子部品1の組み立てが完了する。このとき回転つまみ300のつまみ挿入穴301内に揺動つまみ280が露出する。なお回転つまみ300の回転体130への取り付けと揺動つまみ280の揺動体170への取り付けはいずれが先でも良い。
【0035】
以上のようにこの多機能型電子部品1は、図2,図3に示すように、フレキシブル回路基板40と、フレキシブル回路基板40上に揺動自在に設置されてフレキシブル回路基板40上に設置したスイッチ51を押圧する押圧部177を有してなる揺動体170と、揺動体170の外周を囲んで回転自在に設置され回転することでフレキシブル回路基板40との間に設置された電気的機能部(摺動子60,61,63と摺接パターン111等からなる)の電気的出力を変化する回転体130とを具備し、揺動体170及び回転体130にそれぞれその上面側から揺動つまみ280と回転つまみ300をスナップイン係合と圧入とによって取り付けて構成されている。即ち、揺動体170と揺動つまみ280を分離し、また回転体130と回転つまみ300とを分離した上で、揺動体170及び回転体130にそれぞれその上面側から揺動つまみ280及び回転つまみ300をスナップイン係合又は圧入によって取り付ける構造としたので、揺動つまみ280や回転つまみ300の大きさを大きく保ったまま容易に多機能型電子部品1の小型化を図ることができる。上記実施形態において具体的に言えば、もし揺動体170と揺動つまみ280とを一体の成形品で構成して、この一体の揺動体170及び揺動つまみ280を取り付けたヒンジ部材210を下ケース10の側壁15上に取り付けようとした場合、小型化されたヒンジ部材210のため、ヒンジ部材210に取り付けられる側壁15上の係止部23の位置が揺動つまみ280下面側に隠れてしまい、係止部23を熱かしめすることができない。本実施形態では揺動つまみ280を揺動体170とは別部材としたので、上記取り付けが容易に行える。また回転体130と回転つまみ300の間には上ケース260が介在するので、回転体130と回転つまみ300を一体成形することは困難である。本実施形態では回転体130と回転つまみ300とを別部品としたので、容易に上ケース260を挟んでその上下に両者を設置できる。その際回転つまみ300は回転体130上に設置されるだけなので、その外径は自由に大型化できる。なおスナップイン係合とは、一方の部材と他方の部材とを接近していった際に一方の部材に設けた爪部を有する弾性部が撓みながら他方の部材に設けたスナップ係合部に接近し、スナップ係合部に前記爪部が係合した段階で前記弾性部の撓みが解除され(又は一部解除され)、これによって両部材を引き離すことができなくなる係合を言う。
【0036】
またこの多機能型電子部品1は、フレキシブル回路基板40のスイッチ51の周囲に側壁15を立設すると共に、この側壁15にヒンジ部材210を介して揺動体170を取り付け、この揺動体170の上面側に揺動つまみ280を前記スナップイン係合によって取り付けて構成されている。これによって、フレキシブル回路基板40上への揺動体170の設置及び揺動体170への揺動つまみ280の取り付けが、容易且つ確実に行なえる。
【0037】
またこの多機能型電子部品1は、中央に開口267を有する上ケース260を回転体130の上部に設置し、上ケース260の上面側に回転つまみ300を設置すると共に、この回転つまみ300を上ケース260の下面側の回転体130に前記圧入によって取り付けて構成されている。これによって回転体130上への上ケース260の設置、及び回転体130への上ケース260を介した回転つまみ300の取り付けが容易且つ確実に行なえる。
【0038】
またこの多機能型電子部品1は、回転つまみ300にこの回転つまみ300を上ケース260の上面側に設置した際に上ケース260下面の開口267の周囲に係合する抜け防止用の係合部315を設けて構成されている。これによって回転つまみ300の抜け防止を容易且つ確実に行うことができる。
【0039】
またこの多機能型電子部品1において、各スイッチ51上にはそれぞれ揺動体170の押圧部177と押釦つまみ190の押圧部195とが位置しており、一方クリック部材240はその取付部241が下ケース10の外壁13と上ケース260とに挟持されて固定され且つその弾接部245が回転体130のクリック係合部133の面に弾接しており、各摺動子60,61,63の摺接部60b,60c,61b,63bはスイッチパターン形成体110の摺接パターン112を設けた面に弾接している。
【0040】
そして揺動つまみ280の上面の所定部分(特に記号部287の部分)を押圧すると、ヒンジ部材210のヒンジ部215がたわむことで、揺動つまみ280及びこれに一体に取り付けた揺動体170が揺動し、押圧して下降した位置にある押圧部177がこれに対向するスイッチ51を押圧してオンする。前記押圧を解除すると、ヒンジ部215及びスイッチ51を構成する反転板の弾性復帰力によって揺動つまみ280は元の位置に戻り、反転板の反転も解除されてスイッチ51はオフする。
【0041】
次に押釦つまみ190のつまみ本体191を押圧すると、ヒンジ部材210のヒンジ部215がたわむことで押釦つまみ190が下降し、下降した押圧部195がこれに対向するスイッチ51を押圧してオンする。前記押圧を解除すると、ヒンジ部215及びスイッチ51を構成する反転板の弾性復帰力によって押釦つまみ190は元の位置に戻り、反転板の反転も解除されてスイッチ51はオフする。
【0042】
一方回転つまみ300を回転すると、回転つまみ300と一体に回転体130及びスイッチパターン形成体110が回転し、スイッチパターン形成体110に設けた摺接パターン112が下ケース10に固定した摺動子60,61,63の摺接部60b,60c,61b,63b上を摺動する。このとき同時にクリック部材240の弾接部245が回転体130のクリック係合部133に弾接しながら摺動することで、所望のクリック感覚が生じる。摺動子60はその一対の接点部60b,60cの少なくとも何れか一方が常に摺接パターン112の何れかに接触しているコモンの摺動子である。また摺動子61と摺動子63はそれらの摺接部61b,63bが位相差をもって(接触位置に一定のずれを有して)何れかの摺接パターン112に接触するものである。図7は摺動子60,61,63と摺接パターン112とのオンオフ状態を示す図である。同図に示すように摺動子60はコモンであって常にオン状態にあり、また摺動子61と摺動子63は一定の位相差をもって繰返しオンオフされるものである。この電気的機能部は、ロータリーエンコーダとして利用される。この実施形態のように1つのトラック上に全ての摺動子60,61,63を設置すれば、トラックを複数とした場合に比べてその設置面積を小さくでき、小型化に有効である。この実施形態では回転側の部材である回転体130に摺接パターン112、固定側の部材である下ケース10に摺動子60,61,63を取り付けたが、逆に回転体130に摺動子、下ケース10に摺接パターンを設けても良い。
【0043】
なお多機能型電子部品1の金属製の上ケース260及びアース部材70はアースされる(アース部材70は下ケース10の下面に露出するアース部81先端がアースされる)。従って回転つまみ300の外周と上ケース260の間から侵入しようとする静電気は上ケース260に取り込まれ、また揺動つまみ280と回転つまみ300の隙間及び揺動つまみ280と押釦つまみ190の隙間から侵入しようとする静電気はアース部材70に取り込まれる。従って押釦つまみ190,揺動つまみ280,回転つまみ300を帯電した指等によって操作した場合でも、静電気がスイッチ51や導電パターン55a,b,c等の電気回路部分に侵入することはない。
【0044】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では押釦つまみ190とこれに対応するスイッチ51を設置し、これによって押圧スイッチ機構を設けたが、この押圧スイッチ機構、即ち押釦つまみ190とこれに対応するスイッチ51を省略してもよい。
【0045】
上記実施形態においてはスイッチ51として反転板を可動接点板として利用したフレキシブル回路基板40を示したが、2枚の合成樹脂フイルムを重ね合わせ、両フイルムの対向面の対向する位置に設けた一対の接点パターンを、スペーサ層によって所定の隙間を介して対向させることで構成されるいわゆるメンブレンスイッチ構造のスイッチを具備するフレキシブル回路基板で構成しても良い。その際、反転板は上側の合成樹脂フイルムの接点パターンを設けた部分の反対面側(上面側)に設置しても良いが、省略しても良い。
【0046】
上記実施形態においてはフレキシブル回路基板40を用いたが、その代りに硬質の回路基板を用いても良い。その場合、回路基板を下ケース10と兼用させても良い。また上記実施形態では電気的機能部の摺接パターンとしてスイッチパターンを用いたが、抵抗体パターン等、他の各種摺接パターンを用いても良い。要は電気的機能部は、回転体130を回転することでその電気的出力を変化する構造であれば良い。また上記実施形態では揺動体170に対して揺動つまみ280をスナップイン係合によって取り付け、回転体130に対して回転つまみ300を圧入によって取り付けたが、揺動体170に対して揺動つまみ280を圧入によって取り付けてもよく、また回転体130に対して回転つまみ300をスナップイン係合によって取り付けてもよい。また上記実施形態では圧入して取り付けた回転体300の抜け防止用に上ケース260に回転つまみ300の係合部315を係止したが、前記抜け防止の問題が生じない場合はこれを省略しても良い。
【0047】
上記実施形態ではヒンジ部材210を合成樹脂フイルムによって形成したが、ゴム材や合成樹脂の成形品などの他の材質のもので構成しても良い。またヒンジ部材210の形状・構造も種々の変形が可能であり、例えば連結部211は削除しても良い。また開口221も省略しても良い。またヒンジ部材210を成形品によって構成する場合は、他の部材、例えば揺動体170等と一体成形によって形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】多機能型電子部品1の斜視図である。
【図2】多機能型電子部品1の断面斜視図である。
【図3】多機能型電子部品1の断面斜視図である。
【図4−1】多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図(その上部)である。
【図4−2】多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図(その中間部)である。
【図4−3】多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図(その下部)である。
【図5−1】多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図(その上部)である。
【図5−2】多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図(その中間部)である。
【図5−3】多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図(その下部)である。
【図6】多機能型電子部品1の組立手順を示す分解斜視図である。
【図7】各導電パターン55a,b,cからの出力波形を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 多機能型電子部品
10 下ケース
13 外壁
15 側壁
40 フレキシブル回路基板(回路基板)
51 スイッチ
60,61,63 摺動子(電気的機能部)
70 アース部材
110 スイッチパターン形成体
112 摺接パターン(電気的機能部)
130 回転体
139 圧入部
170 揺動体
175 揺動つまみ取付部
177 押圧部
190 押釦つまみ
210 ヒンジ部材
240 クリック部材
260 上ケース
267 開口
280 揺動つまみ
285 クリック係合部
300 回転つまみ
309 取付部
313 弾発部
315 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、前記回路基板上に揺動自在に設置されて前記回路基板上に設置したスイッチを押圧する押圧部を有してなる揺動体と、前記揺動体の外周を囲んで回転自在に設置され回転することで前記回路基板との間に設置された電気的機能部の電気的出力を変化する回転体とを具備し、
前記揺動体及び回転体には、それぞれその上面側から揺動つまみ及び回転つまみが圧入又はスナップイン係合によって取り付けられていることを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項2】
前記回路基板のスイッチの周囲に側壁を立設すると共に、この側壁にヒンジ部材を介して前記揺動体を取り付け、この揺動体の上面側に前記揺動つまみを前記圧入又はスナップイン係合によって取り付けることを特徴とする請求項1に記載の多機能型電子部品。
【請求項3】
中央に開口を有する上ケースを前記回転体の上部に設置し、前記上ケースの上面側に設置される前記回転つまみを前記回転体に前記圧入又はスナップイン係合によって取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の多機能型電子部品。
【請求項4】
前記回転つまみには、この回転つまみを前記上ケースの上面側に設置した際に上ケースの開口の周囲に係合する抜け防止用の係合部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の多機能型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−71587(P2008−71587A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248337(P2006−248337)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】