説明

多機能装置

【課題】一度に多くの画像情報を提示でき、且つ画像データの読取も可能でコンパクトな多機能装置を提供する。
【解決手段】装置本体の上面に配置された原稿載置用のガラス板33を覆う原稿押えカバー体13が装置本体の上面一側部にヒンジ部34を介して起伏回動可能に装着され、ヒンジ部と反対側の上面には、原稿押えカバー体の裏面に画像データまたはファクシミリ受信データを投影させる投影手段38が装着され、投影手段38より下方位置には、光源40及び第1反射体41が配置され、第1反射体41が起立しているときには、光源40の照射光を投影手段38に入光させる。ガラス板33上に載置された原稿の画像データを読み込む時には、第1反射体41を伏せてガラス板33より下方位置の第2反射体45の乱反射面に直接照射させる。その光でガラス板33上の原稿を照らし、魚眼レンズ47付きの受光素子44で画像を読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷しなくても受信などした画像データを視認可能なファクシミリ機能や画像読取機能を備えた多機能装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の文字や図形などの画像データを送受信可能なファクシミリ装置では、受信した画像データを用紙に印刷することで、そのデータを視認できる他、ファクシミリ装置に備えられた液晶パネル表示部(表示モニタ部)に受信した画像データを表示するもの(特許文献1乃至3)があった。
【0003】
他方、特許文献4に示すように、印刷装置本体の上部前側に投影手段(プロジェクタ)を備え、装置本体の後端には、前下り傾斜して用紙を給紙するための給紙トレイを備え、この給紙トレイの表面または給紙トレイに載置された白色等の用紙に投影手段から画像を投影する構成が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献5に示すように、装置本体の上面に原稿載置ガラスが配置され、原稿載置ガラスを覆う原稿押えカバー体が装置本体の上面一側部にヒンジ部を介して起伏回動可能に装着され、原稿載置ガラスの下面に沿って往復移動するコンタクトイメージセンサにより原稿載置ガラス上に載置された原稿の画像データを読み取る読取部を備える一方、装置本体における前記読取部より下方位置はインクジェット式などの印刷部(画像記録部)を備えるなどした多機能装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−211521号公報(図1〜5参照)
【特許文献2】特開2006−218650号公報(図1〜5参照)
【特許文献3】特開2008−6698号公報(図1〜5参照)
【特許文献4】特開2009−34829号公報(図2参照)
【特許文献5】特開2008−122732号公報(図1〜4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1乃至3のような液晶パネル表示部(表示モニタ部)が備えられていても、それらの表示部分の面積は通常印刷される用紙の面積に比べて遥かに小さいため、印刷された用紙の画像に比べて視認しづらいという問題を有していた。
【0007】
この不具合を解消するため、受信した画像データの一部を大きく液晶パネル表示部(表示モニタ部)に表示すると共に、受信した画像データをスクロールして順次画像を表示させることも考えられるが、それでも印刷された1枚の用紙の画像の全体をスクロールするのに手間が掛かるという問題があった。
【0008】
他方、特許文献4の構成では、給紙トレイの機能上の制約のため、投影角度が固定されて調整できないので、ユーザの目視方向が制限されて見づらい。また、用紙に投影する場合、当該用紙の曲がり癖、撓みにより、投影された画像に歪みが発生して見づらい等の問題があった。
【0009】
さらに、給紙トレイに載置された白色等の用紙の全体に縦長の画像の全体を表示するためには、印刷装置の本体ケースの上端からの給紙トレイの上端位置までの高さ寸法を大きくしなければならないから、装置全体が嵩高くなるという問題があった。
【0010】
他方、特許文献5の多機能装置では、画像データを投影する投影手段が備えられておらず、この多機能装置に投影手段を付加するとすれば、画像データを読み取る読取部のための光源に加えて、投影手段用の光源も別途必要となる。しかも、投影手段及びその光源のための取り付け空間が必要となり、装置の小型化を図ることが困難になるという問題もあった。
【0011】
本発明は、これらの従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、一度に多くの画像情報を提示でき、且つ部品の共通化及び装置の小型化を図ることができる多機能装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、通信データを受信する受信手段と、前記受信手段で受信した受信データから画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段で生成した画像データに基づいて画像を投影する投影手段と、画像データの読取部とを装置本体に備え、前記装置本体の上面に原稿載置ガラスが配置され、前記原稿載置ガラスを覆う原稿押えカバー体が前記装置本体の上面一側部にヒンジ部を介して起伏回動可能に装着されてなる多機能装置であって、前記原稿押えカバー体のヒンジ部と反対側の前記装置本体の上面には、前記原稿押えカバー体の裏面に前記画像データまたはファクシミリ受信データを投影させるように、前記投影手段が装着され、前記装置本体における前記投影手段より下方位置には、光源と、この光源からの照射光を前記投影手段と前記原稿載置ガラスより下方位置とに選択的に照射させるための第1反射体が起伏可能に配置され、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記光源からの照射光を直接受けて前記原稿載置ガラスの下面に向かって反射させるための第2反射体が設けられ、さらに、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記原稿載置ガラス上に載置された原稿の画像データを読み込むための前記読取部における受光素子が配置されているものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多機能装置において、前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面から離間するように起立させるとき、前記第1反射体は、前記光源からの照射光を前記投影手段の受光部に向かって反射させるべく、起立姿勢に保持され、前記投影手段から前記原稿押えカバー体の裏面に向かって画像データを投影するように構成し、前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面の原稿を押圧するように伏せるときには、前記光源からの照射光を直接第2反射体に照射させるべく、前記第1反射体は伏せ姿勢に保持されるものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の多機能装置において、前記原稿押えカバー体の回動に応じて前記第1反射体の姿勢を変更するための機械的または電気的連動機構を備えたものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の多機能装置において、前記投影手段により、前記原稿押えカバー体の裏面に設けられた原稿押え板に、画像データまたはファクシミリ受信データを投影させるように構成し、前記原稿押え板は、前記原稿押えカバー体に対してその裏面と平行な面に沿って回動可能に装着されているものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の多機能装置において、さらに加えて、前記読取部で読み込まれた原稿の画像データを用紙に複写するコピー部と、各種記録媒体を装填可能なスロット部とのうち少なくとも1つの機能を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、通信データを受信する受信手段と、前記受信手段で受信した受信データから画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段で生成した画像データに基づいて画像を投影する投影手段と、画像データの読取部とを装置本体に備え、前記装置本体の上面に原稿載置ガラスが配置され、前記原稿載置ガラスを覆う原稿押えカバー体が前記装置本体の上面一側部にヒンジ部を介して起伏回動可能に装着されてなる多機能装置であって、前記原稿押えカバー体のヒンジ部と反対側の前記装置本体の上面には、前記原稿押えカバー体の裏面に前記画像データまたはファクシミリ受信データを投影させるように、前記投影手段が装着され、前記装置本体における前記投影手段より下方位置には、光源と、この光源からの照射光を前記投影手段と前記原稿載置ガラスより下方位置とに選択的に照射させるための第1反射体が起伏可能に配置され、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記光源からの照射光を直接受けて前記原稿載置ガラスの下面に向かって反射させるための第2反射体が設けられ、さらに、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記原稿載置ガラス上に載置された原稿の画像データを読み込むための前記読取部における受光素子が配置されているものである。
【0018】
従って、ファクシミリ通信で受信した受信データを用紙に印刷することなく、投影手段から受信データを画像として原稿押えカバー体の裏面に投影することができる。そして、本発明では、装置本体における前記投影手段より下方位置には、光源と、この光源からの照射光を前記投影手段と前記原稿載置ガラスより下方位置とに選択的に照射させるための第1反射体が起伏可能に配置され、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記光源からの照射光を直接受けて前記原稿載置ガラスの下面に向かって反射させるための第2反射体が揺動可能に設けられているから、投影手段と原稿の読取部との光源を1つだけとすると共に、従来の受光素子を走査させて画像データを読み取るための駆動手段が不要となり、多機能装置の構成が簡単且つコンパクトになるという効果を奏する。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面から離間するように起立させるとき、前記第1反射体は、前記光源からの照射光を前記投影手段の受光部に向かって反射させるべく、起立姿勢に保持され、前記投影手段から前記原稿押えカバー体の裏面に向かって画像データを投影するように構成し、前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面の原稿を押圧するように伏せるときには、前記光源からの照射光を直接第2反射体に照射させるべく、前記第1反射体は伏せ姿勢に保持されるものである。
【0020】
従って、投影手段と原稿の読取部との光源を1つだけ配置すれば済み、構成が簡単で、光源の廃熱の処理も簡単になる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、前記原稿押えカバー体の起伏回動に応じて前記第1反射体の姿勢を変更するための機械的または電気的連動機構を備えたものであるから、画像投影モードと画像(原稿)読取モードとの切り換え操作は、原稿押えカバー体の起伏回動だけで済み、ユーザによる操作が至極簡便になるという効果を奏する。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、前記原稿押え板は、前記原稿押えカバー体に対してその裏面と平行な面に沿って回動可能に装着されているものであるから、受信データが縦長の画像であるときに、原稿押え板の長辺の方向を縦方向となるように、当該原稿押え板の姿勢を変更すれば良く、これによって、受信データの画像全体を一度に視認することができるという顕著な効果を奏するものである。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、投影手段及び画像データの読取部及び画像の記録部(印刷部)に加えて、前記読取部で読み込まれた原稿の画像を用紙に複写するコピー部と、各種記録媒体を装填可能なスロット部とのうち少なくとも1つの機能を備えた多機能装置である。
【0024】
従って、本発明によれば、外部装置や各種記録媒体から取り込まれた画像データを印刷する以前に、投影手段と原稿押え板とよって、印刷すべき画像か否かの判断を行なえる。従って、印刷用の用紙の無駄な消費を無くすることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る多機能装置1の外観構成を示す斜視図である。
【図2】原稿押えカバー体を開いた状態の画像読取兼画像投影部を示す側面図である。
【図3】(A)は図2の概略平面図、(B)は図3(A)の IIIB −IIIB線矢視側面図である。
【図4】原稿押えカバー体を開いた状態の斜視図である。
【図5】原稿押えカバー体を閉じた状態の画像読取兼画像投影部を示す側面図である。
【図6】原稿押えカバー体の開閉動に連動する第1反射体の姿勢切り換えの構成の別実施例を示す概略平面図である。
【図7】別実施例の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、本実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施例を適宜変更できることは言うまでもない。本発明において画像とは、文字、図形、写された像を含む。
【0027】
図1は多機能装置1の斜視図である。この多機能装置1(MFD:Multi Function Device )は、プリンタ機能、ファクシミリ機能、コピー機能、スキャナ機能等の複数の機能を備えているが、本発明は単独のファクシミリ装置に適用しても良い。
【0028】
[基本形態]
本実施例の多機能装置1は、図1に示すように、合成樹脂製の射出成形品からなる装置本体としてのハウジング2の底部には、その前側の開口部2aから挿抜可能な第1給紙カセット3が配置されている。この第1給紙カセット3の上面には、第2給紙カセット30が進退動可能に連結または載置されている。
【0029】
不図示の記録部は、Y軸方向に沿って往復移動可能なキャリッジの下面にインクジェット式などの記録ヘッドが設けられたものである。そして、記録ヘッドは公知のように主走査方向(Y軸方向)に移動しながら、記録ヘッドにおけるノズルから、X軸方向に間欠的に搬送される用紙にインクを選択式に吐出することにより、用紙上には所望の画像が記録されるのである。記録部にて記録された用紙がその記録面を上向きにして開口部2a上の排紙部30aに向かって排出される。なお、記録部(プリンタ部)はインクジェット式の他、レーザトナー式やサーマルヘッド式であっても良い。
【0030】
[画像読取兼画像投影部]
ハウジング2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための画像読取部と画像データまたはファクシミリ受信データを投影させる画像投影部とが兼用される画像読取兼画像投影部12のケース12aが配置されている。この画像読取兼画像投影部12は図示しない枢軸部を介してハウジング2の一側端に対して上下方向に開閉回動可能に構成されている。画像読取兼画像投影部12の上面には、原稿押えカバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用のガラス板33(請求項の原稿載置ガラスに相当)が設けられ、原稿押えカバー体13の裏面には、その裏面と平行な面に沿って原稿押え板35が回動可能に装着されている(図4参照)。なお、ガラス板33の下側に配置される画像読取兼画像投影部12の詳細については後述する。
【0031】
原稿押えカバー体13の基端部操作パネル部14と反対側のハウジング2における上面の一側部(後端部)にヒンジ部34を介して起伏回動可能(上下方向に回動可能)に装着されている。その場合、図4(A)、図4(B)及び図5等に示すように、側面視でL字状のヒンジ部34を用い、ハウジング2の後面と上面との角部に形成された切欠き部36にヒンジ部34の一方の下向き片を固定するように構成する。これにより、原稿押えカバー体13を実質的に垂直状に開いたとき、装置本体としてのハウジング2の後側縁と原稿押えカバー体13の裏面との間に、原稿押え板35がその平面の周りで回動可能となるように寸法Hの隙間が形成される(図2参照)。
【0032】
原稿押えカバー体13の下面(裏面)に設けられる原稿押え板35は表面(下面)が白色などの樹脂板若しくは白色などに塗装されたものである。実施例では、原稿押え板35は、回動部材(不図示)を介して原稿押えカバー体13の裏面と平行状にて90度回動可能に取付けられている。これにより、載置用のガラス板33上の原稿を押える通常時には、矩形状の原稿押え板35はY軸方向に長辺で、X軸方向に短辺となるように配置されているが、上述の回動により、Y軸方向に短辺で、Z軸方向に長辺となるように姿勢を変更可能とする。
【0033】
ハウジング2の上側には、画像読取兼画像投影部12のケース12aの前方に各種操作ボタンを有する操作部14aや液晶表示部14b等を備えた操作パネル部14が設けられている。原稿押えカバー体13のヒンジ部34と反対側(操作パネル部14側)のハウジング2の上面中央部には、投影手段(映写機器ともいう)38が上下回動可能のヒンジ手段(不図示)を有して装着されている。なお、投影手段38では、その投影データ作成部、たとえば液晶板あるいは、マイクロミラーの反射鏡を備えたものの内部には、光源を有しておらず、実施例に示すように、別途に光源40を備えている。
【0034】
図1、図4、図5及び図6に示すように、第1実施例の投影手段38は、ハウジング2の上側の切欠き凹所39内に、ハウジング2の前端側に設けられたヒンジ手段(不図示)を介して起伏回動可能に設けられている。これにより、投影手段38は切欠き凹所47内に沈み込んだ姿勢と、投影手段38の投影部側(後端側)が大きく上昇した姿勢とを採ることができる。
【0035】
上記投影手段38により、原稿押えカバー体13の裏面に設けられた原稿押え板35に、メモリカード等の各種記録媒体の外部メモリから取り込まれた画像データまたはファクシミリ受信データから得られた画像を投影させるように構成する。
【0036】
ハウジング2内の前端側であって、投影手段38の配置位置より下方位置には、光源40と、第1反射体41とが配置されている(図2、図3、図4及び図5参照)。また、ガラス板33の下方の位置(ガラス板33に載置した原稿の領域の実質的に中央部)には、第1反射体41が水平状態に付勢されているとき、光源40からの照射光(光束)を直接受けてガラス板33の下面に向かって反射させるための第2反射体45が設けられ、さらに、ガラス板33より下方位置には、当該ガラス板33上に載置された原稿の画像データを読み込むための読取部31における受光素子44が配置されている。第2反射体45は基端(前端)を横軸46に取り付けられて、傾斜角度の調節が可能となっている。
【0037】
なお、ガラス板33から受光素子44までの距離を短くし、且つガラス板33上に載置された原稿Gの全体を撮像可能とするためには、受光素子44の手前に短焦点レンズ、望ましくは魚眼レンズ47を設置することが好ましい。
【0038】
第1反射体41は、光源40からの照射光を投影手段38または第2反射体45を介してガラス板33の下面とに選択的に照射させるための手段である。なお、第2反射体45の反射面は高反射率の凹凸状の反射部がランダムに配置されるなどした乱反射面に形成されている。
【0039】
光源40は、その光束の向きがガラス板33の下面と実質的に平行であり、第2反射体45の反射面に向かうように配置されている。投影手段38の受光部38a(下面)の下方に、第1反射体41が起伏回動可能に配置されている。第1反射体41の前端部が横軸42を介してハウジング2のフレーム43上に設けられている。ユーザが起立状の原稿押さえカバー体13を下向きに倒したとき、第1反射体41が水平状に伏せられ、反対に、原稿押さえカバー体13を起立させると、第1反射体41が水平に対して実質的に45度となるように起立させる機械的連動機構または電気的連動機構を備えている。
【0040】
図3(A)及び図3(B)は、機械的連動機構を示す。この機械的連動機構50は、原稿押さえカバー体13の開閉回動につれて一体的に回動するヒンジ部34の回動軸(不図示)に固定された第1歯車51と、ケース12a内に配置されて第1歯車51と噛合う第2歯車52と、第2歯車52と一体的に回動する第1回転体(第1プーリ)53と、ケース12a内の前側に配置された第2回転体(第2プーリ)54と、第1回転体53と第2回転体54に巻掛けたチエンまたはタイミングベルトなどの無端帯55とを有しており、第2回転体54には上記横軸42が固定されているので、第1 反射体41が第2回転体54と一体的に回動可能となっている。
【0041】
実施例では、原稿押さえカバー体13がガラス板33の表面に対して90度の起立状態から原稿押さえカバー体13がガラス板33と平行な伏せ状態まで90度回動すると、第1回転体53と第2回転体54が45度だけ回動するように、第1歯車51と第2歯車52との減速比率を持つ歯数に設定されている。従って、原稿押さえカバー体13がガラス板33の表面に対して90度の起立状態のとき、第1反射体41が水平に対して実質的に45度となるように起立する(図2の状態、図3(B)の二点鎖線の状態参照)。また、原稿押さえカバー体13がガラス板33上に水平に伏せると、第1反射体41の反射面が上向きで水平となる姿勢に保持されるのである。なお、横軸42や第1回転体53と第2回転体54などの回転すべき軸は公知の軸受にて回転自在に軸支されている。
【0042】
なお、別の実施例として、電気的連動機構を介して、原稿押さえカバー体13の起伏回動に連動させて第1反射体41を起伏動させることができる。図6はその概略平面図である。原稿押さえカバー体13のヒンジ部34には、当該原稿押さえカバー体13の回動方向及び回動角度を検出可能な姿勢センサ48が設けられている。他方、第1反射体41は横枢軸42に設けられた起伏用アクチュエータ49の駆動により、水平状態と斜め45度の起立状態とに姿勢変更されるものであり、原稿押さえカバー体13がガラス板33の表面に対して90度の起立状態のとき、第1反射体41が水平に対して実質的に45度となるように起立し、原稿押さえカバー体13がガラス板33上に水平に伏せると、第1反射体41の反射面が上向きで水平となる姿勢に保持されるような制御を後述する電子制御装置(コントローラ)56を介して実行するものである。
【0043】
[多機能装置1の制御手段]
図7は多機能装置1の制御手段を示す機能ブロック図である。制御手段におけるマイクロコンピュータ等の電子制御装置56には、通信データを受信する送受信手段としてのFAX通信装置57と、受信手段で受信した受信データから画像データを生成する画像データ生成手段(画像生成部58)と、画像データ生成手段で生成した画像データを基に画像を投影する投影手段としての投影手段38と、光源40と、第1反射体41の起伏用アクチュエータ49と、原稿読取部としての受光素子44と、原稿押えカバー体13に対する原稿押え板35の回動姿勢を検出する姿勢センサ49と、ハウジング2の上面に対する投影手段38の起伏状態を検知する起伏センサ54と、受光素子44で読み取られた画像を正常な画像に補正するための画像補正部59と、用紙に画像を記録するための記録部7と、読取部31で読み込まれた原稿の画像を用紙に複写するコピー部(記録部7が兼用されている)が接続されている。なお、電子制御装置56には図示していないが、制御プログラムが記憶されたROMと、各種データを記憶するRAMと、画像データを記憶したり、画像データと送受信のデータとの変換などを実行するEEPROMなどを備えている。焦点距離の短いレンズ(魚眼レンズ47)を介して受光素子44に取り込まれた画像データは、読み込まれた画像領域の周辺部が縮んだ画像となるので、これを正常な画像に補正するために画像補正部59が必要となる。画像補正部59の構成は従来から周知のものを使用するものであり、仔細な原理説明は本出願の目的ではないために省略する。
【0044】
[画像投影モードの動作]
原稿押えカバー体13の裏面に設けられた原稿押え板35に、メモリカード等の各種記録媒体の外部メモリから取り込まれた画像データまたはファクシミリ受信データから得られた画像を投影させるため、原稿押さえカバー体13を垂直に起立させると、上記機械的連動機構50または電気的連動機構を介して、第1反射体41が水平に対して実質的に45度となるように起立させることができる。そして、光源40からの照射光は第1反射体41で反射され、投影手段38の受光部38aに入る。投影手段38で投影すべき画像を含む光が原稿押え板35に照射されて、ユーザは画像を観察することができる。
【0045】
[画像読取モードの動作]
ガラス板33に載置された原稿Gの画像を読み取るには、原稿押さえカバー体13を下向きに倒してガラス板33上の原稿Gを押える。この原稿押さえカバー体13の回動にて、第1反射体41が水平状に伏すから、光源40からの照射光は乱反射面である第2反射体41に直接反射され、ガラス板33のほぼ全領域を略均一に照らすことができる。当該ガラス板33上に載置された原稿Gの表面で反射された光は魚眼レンズ47を介して受光素子44で受光されることで、原稿Gの画像データを読み込むことになる。
【0046】
上記の投影手段38による画像投影モードと、受光素子44による画像読取モードとの切り換え操作は、原稿押さえカバー体13の回動姿勢に変更だけで行なえるので、操作パネル部14におけるキー操作部14aの操作よりも簡便となる。
【0047】
なお、多機能装置1は、不図示のコンピュータ(外部情報機器)と主に接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、被記録媒体としての用紙に画像や文書を記録することができる。また、多機能装置1には、デジタルカメラ等の外部機器が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体の外部メモリを取り込む(装填する)スロット部を設けて、該記憶媒体に記録された画像データ等を用紙に記録したり、上述のように投影手段38により画像を投影することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 多機能装置
2 装置本体としてのハウジング
12 画像読取兼画像投影部
13 原稿押えカバー体
14 操作パネル部
33 ガラス板
34 ヒンジ部
35 原稿押え板
38 投影手段
40 光源
41 第1反射体
42 横軸
44 受光素子
45 第2反射体
46 横軸
47 魚眼レンズ
48 姿勢センサ
49 起伏用アクチュエータ
50 機械的連動機構
56 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信データを受信する受信手段と、前記受信手段で受信した受信データから画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データ生成手段で生成した画像データに基づいて画像を投影する投影手段と、画像データの読取部とを装置本体に備え、
前記装置本体の上面に原稿載置ガラスが配置され、前記原稿載置ガラスを覆う原稿押えカバー体が前記装置本体の上面一側部にヒンジ部を介して起伏回動可能に装着されてなる多機能装置であって、
前記原稿押えカバー体のヒンジ部と反対側の前記装置本体の上面には、前記原稿押えカバー体の裏面に前記画像データまたはファクシミリ受信データを投影させるように、前記投影手段が装着され、
前記装置本体における前記投影手段より下方位置には、光源と、この光源からの照射光を前記投影手段と前記原稿載置ガラスより下方位置とに選択的に照射させるための第1反射体が起伏可能に配置され、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記光源からの照射光を直接受けて前記原稿載置ガラスの下面に向かって反射させるための第2反射体が設けられ、
さらに、前記原稿載置ガラスより下方位置には、前記原稿載置ガラス上に載置された原稿の画像データを読み込むための前記読取部における受光素子が配置されていることを特徴とする多機能装置。
【請求項2】
前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面から離間するように起立させるとき、前記第1反射体は、前記光源からの照射光を前記投影手段の受光部に向かって反射させるべく、起立姿勢に保持され、前記投影手段から前記原稿押えカバー体の裏面に向かって画像データを投影するように構成し、
前記原稿押えカバー体が前記原稿載置ガラスの上面の原稿を押圧するように伏せるときには、前記光源からの照射光を直接第2反射体に照射させるべく、前記第1反射体は伏せ姿勢に保持されることを特徴とする請求項1に記載の多機能装置。
【請求項3】
前記原稿押えカバー体の回動に応じて前記第1反射体の姿勢を変更するための機械的または電気的連動機構を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の多機能装置。
【請求項4】
前記投影手段により、前記原稿押えカバー体の裏面に設けられた原稿押え板に、画像データまたはファクシミリ受信データを投影させるように構成し、
前記原稿押え板は、前記原稿押えカバー体に対してその裏面と平行な面に沿って回動可能に装着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多機能装置。
【請求項5】
さらに加えて、前記読取部で読み込まれた原稿の画像データを用紙に複写するコピー部と、各種記録媒体を装填可能なスロット部とのうち少なくとも1つの機能を備えたことを特徴とする前記請求項1乃至4のいずれかに記載の多機能装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−41003(P2011−41003A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186674(P2009−186674)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】