説明

多段ナノホールアレイ金属構造によって支持されたガス/イオン種選択性膜

多孔質金属膜を形成するための改善された2工程複製プロセスが提供される。多孔質非金属テンプレートのネガが、テンプレートに液体前駆体を浸透させ、この前駆体を硬化して固体のネガを形成した後、テンプレートを除去してネガを露出することで得られる。露出されたネガを周囲するように金属を成膜する。そしてネガを除去することで、元のテンプレート膜の細孔を複製した細孔を有する多孔質金属膜が得られる。テンプレートの除去と金属の成膜の間、ネガは常に液体中に浸った状態に保たれる。この浸漬によって、これらの工程間にネガが乾燥することで引き起こされるネガの損傷が防止される。本発明の別の側面によると、上記方法によって形成された金属膜が提供される。例えば、膜の一面に他面より小さい細孔を有するような金属膜が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスまたはイオン種選択性薄膜のための支持の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、燃料電池、ガス分離及びガス検知などの様々な用途において関心が持たれている。多孔質膜は、例えば米国特許第5,998,058号、米国特許第6,720,105号、米国特許第6、743、543号及び米国公開2004/0013924号で考察されているように、しばしば燃料電池の活性層及び/または支持層として用いられる。多孔質膜のガス分離への応用の例としては、米国特許第4,857,080号及び米国特許第5,498,278号がある。従来の多孔質膜の他の例としては、米国特許第5,734,092号、米国特許第6,027,796号及び米国特許第6,562,446号がある。
【0003】
金属と非金属の多孔質膜の両方が知られているが、多くの用途で金属膜が好適である。例えば、燃料電池用の金属支持膜は導電性と機械的耐久性(例えば、亀裂や破壊に対する耐性)の好適な組み合わせを提供する。多孔質金属膜についての例示的な議論には、米国特許第6,368,751号、米国特許第6,649,559号、米国特許第6,797,422号及び米国公開2002/0028345号が含まれる。多孔質金属膜を製造するための様々な方法が知られている。例えば、米国公開2002/0028345号では、2つの組成(compositions)からなる細孔のない複合材(composite)を冷間加工し、これら組成の一方を冷間加工の後に除去して多孔質金属構造を得ることが考察されている。米国特許第6,649,559号では、2相複合材の一方の相を除去して多孔質金属構造を得ることが考察されている。米国特許第6,338,751号及び米国特許第6,797,422号では、多孔質金属発泡体(metal foams)を商業的に得る可能性が示唆されている。
【0004】
多孔質金属膜は2工程の複製プロセスを用いることによっても形成されている。この複製プロセスは、非金属多孔質テンプレートから開始される。このテンプレートの細孔に適切な材料を充填することで、テンプレートのネガ(negative)が形成される。細孔への充填後、元のテンプレートは除去され、ネガが露出される。そして所望の金属組成がネガ上に成膜され、テンプレートの細孔に充填されていたネガの部分が、対応する細孔を金属構造中に形成する。最後に、ネガを除去すると多孔質金属膜が得られる。
【0005】
このような2工程複製は様々な著者によって考察されている。それらには、「Lei et al., "Preparation of highly ordered nanoporous Co membranes assembled by small quantum-sized Co particles", J. Vac. Sci. Teck. vB19(4), pp 1109-1114, 2001」、「Masuda et al.,"Ordered Metal Nanohole Arrays Made by a Two-Step Replication of Honeycomb Structures of Anodic Alumina", Science v268, pp 1466-1468,1995」、「Masuda et al. ,"Fabrication of Pt microporous electrodes from anodic porous alumina and immobilization of GOD into their micropores", J. Electroanalytical Chem. , v368, pp 333-336, 1994」、「Masuda et al. ,"Fabrication of PorousTi02 Films using two-step replication of microstructure of anodic alumina", Jpn. J. Appl. Phys. v31 (12B) pt 2, ppL1775-L1777, 1992」、「Masuda et al. ,"Preparation of Porous Material by Replacing Microstructure of Anodic Alumina Film with Metal", Chem. Lett., pp 621-222,1990」、「Jiang et al.,"Electrodeposited Metal Sulfide Semiconductor Films with Ordered Nanohole Array Structures", Langmuirv17, pp 3635-3638,2001」、及び「Jiang et al., "Ordered Porous Films of Organically-Modified Silica Prepared by a Two-Step Replicating Process", Colloids and Surfaces Av179, pp 237-241,2001」が含まれる。
【0006】
2工程複製は様々な場合に有用であるが、それは非金属テンプレート材料中に所望の細孔構造(pore geometry)を形成する方が、目的の金属組成中に直接形成するより容易であるためである。しかしながら、例えば、高アスペクト比の細孔を有する構造において、2工程複製にも問題があることが本分野において気づかれている。
【0007】
一般に、細孔構造をよく制御できることが望ましい。例えば、機械的に丈夫な(即ち、比較的厚い)膜において、小さな細孔サイズと高いガス透過速度とを両立させることが望まれることがしばしばある。膜全体に渡って同じ細孔サイズを有する一段膜(single-stage membranes)は、これらの目的に合致せず、設計者は妥協を求められることとなる。しかしながら、この問題は、薄い小孔領域と厚い大孔領域とを有する二段膜(two-stage membrane)を用いることによって解決することができる。そのような二段膜は、小さな細孔サイズと高流量を両立するとともに、同時に機械的な強度も得ることができる。基本的なアイデアは、透析膜に対する適切な機械的支持構造を与えるという公知のアイデア(例えば、米国特許第3,505,180号参照)に類似している。
【0008】
しかしながら、微孔性膜(micro-porous membranes)に対しては、巨視的な製造方法(例えば、米国特許第3,505,180号で考察されているような)は一般に適用することができない。公知の二段微孔性膜の例としては、米国特許第5,114,803号、米国特許第5,262,021号、米国特許第5,308,712号、及び米国特許第5,620,807号が含まれる。これらの例の顕著な特徴は、これらは全て非金属膜に関するものであるということである。また、微細加工技術に対して予期されるように、これらの採用された製造技術は材料固有となる傾向がある。非金属の二段膜は商業的に入手することもできる。例えば、Whattmanによって提供されているAnodisc(登録商標)膜のいくつかは、二段アルミナ膜である。しかしながら、本分野では二段微孔性金属膜の例は知られていない。
【0009】
従って、金属製の二段多孔質膜を提供すること、及び、そのような膜の製造方法を提供することは本分野において有益であろう。
【発明の開示】
【0010】
本発明はこのような要望に応えるものであり、改善された2工程複製プロセスを介して多孔質金属膜を提供する。多孔質非金属テンプレートのネガが、テンプレートに液体前駆体(liquid precursor)を浸透させ、この前駆体を硬化して固体のネガを形成した後、テンプレートを除去してネガを露出することで得られる。露出されたネガを周囲するように金属を成膜(deposit)する。そしてネガを除去することで、元のテンプレート膜の細孔を複製した細孔を有する多孔質金属膜が得られる。本発明の重要な特徴は、テンプレートの除去と金属の成膜の間、ネガを常に液体中に浸った状態に保つということである。この浸漬によって、これらの処理工程間にネガが乾燥することで引き起こされるネガの損傷が防止される。本発明の別の側面によると、上記方法によって形成された金属膜が提供される。例えば、膜の一面に他面より小さい細孔を有するような金属膜が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜支持構造を示している。図1の膜は第1の細孔サイズを有する第1の領域104と第2の細孔サイズを有する第2の領域102を有する。図1に示されているように、第2の細孔サイズは第1の細孔サイズより大きい。図1に示すように各々が異なる細孔サイズを有する2つの領域に膜が区分されているのは好適な実施例であるが、本発明を実施するのにこの特定の構造が必要というわけではない。本発明の構造の重要な点は、金属多孔質膜が相対する面を有しこれらの面において異なる細孔サイズを有するということである。膜内では、細孔サイズが内部境界(例えば、図1に示されているような)において急に変化してもよく、及び/または、徐々に変化してもよい。
【0012】
本発明の金属膜は好適には微孔性(micro-porous)である。特に、第1の細孔サイズは好適には約20nm乃至約30nmであり、第2の細孔サイズは好適には約200nm乃至約300nmである。多くの用途において(例えば、燃料電池技術やガス分離)、多孔質膜が細孔サイズに対して非常に大きな直径を有することが望ましい。従って、本発明の膜は約1cmより大きな直径または横方向拡がりを有することが好ましい。本発明の方法に基づくそのような膜の製造については、図3a乃至3gを参照して後に説明される。
【0013】
本発明は任意の金属材料または組成で実施することができるが、好適な組成にはニッケル、白金、パラジウム、金、銅またはそれらの合金若しくは混合が含まれる。本発明の膜は1または複数の異なる金属組成を含み得る。領域102及び104は同じまたは異なる組成を有し得る。領域102(及び/または領域104)はそれ自身で1または複数の異なる金属組成を有してもよい。例えば、領域102は領域104との境界における薄いPt層以外ほとんどNiからなるものとすることができる。このような複数組成を用いてコストを低減することができる(例えば、第1の領域104との接触のために領域102中にPtが必要とされる場合)。また、場合によっては領域104が触媒として働き、一方領域102は触媒として働かないようにすることもできる。このように、異なる機能を持たせられるということが、2つの領域において異なる組成を有することの別の動機である。
【0014】
本発明の膜の主たる用途は燃料電池技術への応用である。特に、燃料電池はしばしば活性膜(即ち、ガスまたはイオン種選択性膜)を有する。そのような活性膜は単層膜または複層膜のいずれともすることができ、「膜アセンブリ」という用語はどちらの可能性も含むものである。燃料電池の膜アセンブリは燃料電池の電気化学反応が生じるところである。燃料電池の活性膜アセンブリはしばしば1または複数の支持膜によって機械的に支持される。本発明の膜は燃料電池支持膜として有益に用いることができる。
【0015】
図2は本発明の実施例に基づくガス/イオン選択性膜アセンブリを示している。ガスまたはイオン種選択性膜アセンブリ202は図1の金属膜の第1の領域104(即ち、小孔領域)に接している。この構成にはいくつかの利点がある。領域102及び104を含む支持膜の金属としての性質により、所望の機械的特質(例えば、延性、破壊に対する耐性など)と共に導電性が得られる。二段細孔は、化学反応物が膜アセンブリ202に入る(または出る)能力を高めるという利点がある。膜アセンブリ202はしばしば薄く機械的に脆いが、領域104の小孔はそのような場合に十分な機械的支持を与えるのに役立つ。同時に、領域102の大孔は、同じ厚さだが全体に渡って小さな細孔サイズを有する支持膜と比較して、反応物の流れを大きく改善する。好適には領域104は領域102よりも大幅に薄い。例えば、好適実施例では、領域104は約70nmの厚さを有し、領域102は約20μm乃至約40μmの厚さを有する。領域104が膜アセンブリ202に隣接する面において約20nm乃至約40nmの細孔サイズを有し、膜アセンブリ202から離反した側の面において約70nm乃至約100nmの細孔サイズを有すると一層好適である。また、領域102がその厚さ全体に渡って約200nm乃至約300nmの細孔サイズを有することが好ましい。このような細孔サイズの配置によって、領域102及び104を含む支持膜に機械的な強度を与えるとともに、反応物が膜アセンブリ202へと容易に流れるようにすることができる。
【0016】
好ましくは、膜アセンブリ202の厚さは1μmより小さい。本発明のこの実施例では、任意のガスまたはイオン種選択性膜を用いることができる。膜アセンブリ202の例示的な材料としては、イットリウム安定化ジルコニア(yttrium-stabilized zirconia)、ガドリニウム添加セリア(gadolinium doped ceria)、パラジウム(palladium)、及ジルコン酸バリウム(barium zirconate)がある。場合によっては、膜アセンブリ202は多孔質触媒層を含む。そのような触媒層は約20nm乃至約40nmの細孔サイズを有することが好ましく、好適には白金、ニッケル、パラジウム、金、またはそれらの合金若しくは混合を含む。
【0017】
図3a乃至3gは本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造方法を示している。図3aは、小孔領域304と大孔領域302を有する多孔質非金属テンプレート膜の提供を示している。そのようにテンプレート膜を異なる細孔サイズを有する2つの領域に分けることは本発明の方法を実施するのに必須ではないが、好適である。以下の方法工程に適合する任意の材料をテンプレート膜に用いることができる。テンプレート膜に適した公知の材料にはアルミナ及びシリコンが含まれる。
【0018】
図3bは、小孔領域304の表面上に第1の金属層306を、この表面の細孔が第1の金属層によって塞がれないように成膜する工程を示している。結果として得られる金属層306は2以上の異なる金属組成を含むことができ、或いは、単一の組成からなるものとすることもできる。第1の金属層306は2つの機能を有する:1)後に続く電気めっきプロセスにおいてシード層(seed layer)として働くことができる、2)触媒層として働くことができる。第1の金属層はガス/イオン選択性膜に直接接触し得るため(例えば、図3gに示されているように)、触媒機能は電気化学装置への応用において特に有利である。後の電気めっき成膜工程を容易にするべく十分な導電性が得られるように、第1の金属層306は十分に厚いことが好ましい。約1nm/sの成膜速度を与えるような条件でのPtのRFスパッタリング(100WのRFパワー、1Paの圧力、Ar雰囲気)により好適な結果が得られることが分かった。結果として得られる第1の層306の厚さは、Ptからなる約30nm乃至約40nmと見積もられる。本発明の別の実施例では、後の電気めっきにおいて良好な結果を生じさせるのに第1の金属306がどれぐらいの厚さを有するべきか、及び、この層を形成するのにどのようにすると最もよいのかを決定するのに、何らかの通常的になされる実験が必要となり得る。
【0019】
図3cは、テンプレート膜のポリマーネガ(polymer negative)の提供を示している。詳述すると、テンプレート膜内の空間を液体ポリマー前駆体308′で埋めることができる。そしてポリマー前駆体308′を硬化しポリマーネガ308を得ることができる。ポリマー前駆体308′に適した材料には、メタクリル酸メチル、(MMA)、及びMMAとポリMMAの混合が含まれる。ポリマー前駆体308′からポリマーネガ308を生成するための適切な硬化方法には、熱硬化や紫外線放射への前駆体308′の曝露(好適には窒素雰囲気中でなされる)が含まれる。これらのポリマー前駆体材料及び硬化方法は例示的なものであって、本発明は他の処理工程と適合する任意のポリマーネガ材料で実施することができる。
【0020】
ポリマーネガ308がテンプレート膜の領域302内の細孔を越えて延在しないようにすることが重要である。なぜなら、更なる処理においてテンプレート膜にアクセスできる必要があるからである。ポリマー前駆体308′が細孔内に毛細管現象で流れるようにすることは、ポリマー前駆体308′及びポリマーネガ308を提供するための好適な方法である。この方法では、図3bに示された構造の上面がポリマー前駆体308′の浴(bath)に接触するように置かれる。するとポリマー前駆体308′は毛細管現象により細孔内に吸い込まれ、図3cに示すような構造を与える。本発明のこの側面が、第1の金属306が細孔を塞がないようにするのが大事であることの理由の1つである。
【0021】
図3dは、非金属テンプレート膜を除去してポリマーネガ308の細孔充填部を露出する工程を示している。例えば、この処理はエッチング剤でテンプレート膜をエッチングして除去することにより行うことができる。ポリマーネガ308と比較してテンプレート膜を優先的に溶解する任意のエッチング剤が好適である。例えば、アルミナテンプレート膜を溶解するのに塩基性溶液が適している。図3eは、第1の金属306上に第2の金属(310及び312)を、第2の金属がポリマーネガ308の細孔充填部に接触する(例えば周囲する)ように成膜する工程を示している。第2の金属は好適には電気めっきによって成膜されるが、他の工程に適合する任意の成膜技術を用いてもよい。しかしながら、ニッケルの無電解めっきは不満足な結果となることがわかった。これは、そのようにして成膜されたニッケルは多孔質となり脆くなりがちであるからである。第2の金属の成膜によって高密度(dense)な金属が提供され、得られる構造中の細孔のみがネガ308によって決定されるようにすることが好ましい。第2の金属は単一の組成からなるものとしても、或いは、2以上の異なる金属組成を含むものとすることもできる。
【0022】
本発明の重要な側面は、テンプレート膜の除去と第2の金属の成膜の間ずっとポリマーネガ308が液体中に浸漬されるよう保持することである。それによって、本発明の実施において、テンプレート膜の除去の後にポリマーネガ308が乾燥するのが防止される。ポリマーネガ308の乾燥によってしばしばその多孔質構造が劣化するため、このような乾燥の防止は極めて有益である。例えば、乾燥の際に生じる表面張力によってポリマーネガの部分同士が違いに引き合うということがあり得る(結合することすらあり得る)。高いアスペクト比を有する細孔及び/または異なる領域において異なるサイズを有する多段構造(multi-stage)の細孔のためのポリマーネガは、乾燥によって引き起こされる劣化に特に弱い。例えば、高アスペクト比を有する微小孔用のネガは長く細い多数の柱を有し、乾燥するとこれらは容易に且つ不所望に“凝集(clump)”し得る。同様に、互いに連結した細孔のネットワーク用のネガは、乾燥すると部分的にまたは完全に崩壊し得る。従って、本発明に基づく乾燥の防止はこのような構造において特に有益である。
【0023】
図3fは、第2の金属の成膜後のポリマーネガ308の除去を示している。このような除去は、金属領域(306、310及び312)に比較してポリマーネガ308を優先的に溶解する任意の溶剤を用いて行うことができる。適切な溶剤には、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、フォルムアルデヒド及びそれらの混合が含まれる。図3fを図3aと比較すると、この方法によって得られる多孔質金属膜は図3aのテンプレート膜の複製(replica)となっていることがわかる。従って、領域312及び310はそれぞれ、二段微孔性金属膜の小孔領域及び大孔領域となっている。
【0024】
所望に応じて、更なる処理工程を実行してもよい。例えば、図3gは多孔質金属膜上へのガスまたはイオン種選択性膜314の成膜を示している。選択性膜314の適切な成膜方法には、原子層堆積(atomic layer deposition)、パルスレーザ堆積(pulsed laser deposition)、金属のスパッタリングとそれに続くスパッタされた金属の酸化、金属酸化物のRFスパッタリング、及び金属のスパッタリングが含まれる。
【0025】
図4は、図3a乃至3gの方法とともに用いるのに適したテンプレート膜のSEM写真を示している。この例は、(上面に)約20nmの細孔を備えた小孔領域と、(底面に)約200nmの細孔を備えた大孔領域とを有する多孔質アルミナ膜を示している。
【0026】
図5は、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜のSEM写真を示している。図5の例は、図4に示されたのと同様のアルミナ膜に図3a乃至3fの方法を適用することによって形成されたものである。この例の金属はNiである。ここで、小孔領域は図5における下側であり、大孔領域は図5における上側である。
【0027】
図6は本発明の実施例に基づく二段多孔質膜の写真を示している。ここで、この例の膜直径は35mmであるので、大直径の二段多孔質膜が本発明よって提供されていることは明らかである。
【0028】
上記説明は例示を目的としたもので、限定的なものではなく、本発明は開示された例の多様な変更に基づいて実施することも可能である。例えば、図1乃至3gは個別の細孔を示し、図4乃至6は互いにつながった細孔のネットワークを示している。本発明は、個別の細孔及び/または相互連結された細孔のネットワークの任意の組み合わせで実施することができる。ただし、多孔質ネットワーク用のネガは個別細孔用より提供が容易であるため、多孔質ネットワークの方が好適である。
【0029】
多孔質ネットワークの顕著な特徴は、細孔サイズは膜の相対する2つの面で異なっていても、多孔度(所与の面の細孔面積を全面積で割ったものとして定義される)は相対する2つの面で同程度とすることができるということである。例えば、本発明に基づき形成された一面に〜20nmの細孔を有し、相対する面に〜200nmの細孔を有する金属膜は、20nmの側において約30%乃至35%の多孔度を有し、200nmの側において約30%乃至40%の多孔度を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜を示している。
【図2】本発明の実施例に基づくガス/イオン選択性膜アセンブリを示している。
【図3a】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3b】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3c】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3d】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3e】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3f】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図3g】図3a乃至3gは、本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の製造工程を示している。
【図4】図3a乃至3gの方法に用いるのに適したテンプレート膜のSEM写真を示している。
【図5】本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜のSEM写真を示している。
【図6】本発明の実施例に基づく二段多孔質金属膜の写真を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する第1及び第2の面を有する多孔質金属膜を含む装置であって、
前記膜は前記第1の面において第1の細孔サイズを有し、前記第2の面において第2の細孔サイズを有し、
前記第2の細孔サイズは前記第1の細孔サイズより大きいことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の細孔サイズが約20nm乃至約30nmであり、前記第2の細孔サイズが約200nm乃至約300nmであることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1において、前記金属膜が1cmより大きい直径を有することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1において、前記膜が2以上の異なる金属組成を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1において、前記金属膜がニッケル、白金、パラジウム、金、銅、またはそれらの合金若しくは混合を含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
a)相対する第1及び第2の面を有する多孔質金属支持膜と、
b)前記第1の面に接触するガスまたはイオン種選択性膜アセンブリとを有し、
前記支持膜は前記第1の面において第1の細孔サイズを有し、前記第2の面において第2の細孔サイズを有し、
前記第2の細孔サイズは前記第1の細孔サイズより大きいことを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項7】
請求項6において、前記選択性膜アセンブリが1μmより小さい厚さを有し、イットリウム安定化ジルコニア、ガドリニウム添加セリア、パラジウム及びジルコン酸バリウムからなる群から選択された材料を含むことを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項8】
請求項6において、前記選択性膜アセンブリが、約20nm乃至約40nmの細孔サイズを有し、白金、ニッケル、パラジウム、金、及びそれらの合金または混合からなる群から選択された材料を含む触媒層を有することを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項9】
請求項6において、前記支持膜が前記第1の面を含む第1の領域と、前記第2の面を含む第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域が境界において互いに隣接していることを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項10】
請求項9において、前記第1の領域が約70nmの厚さを有し、前記第1の細孔サイズが約20nm乃至約40nmであり、前記境界における前記第1の領域の細孔サイズが約70nm乃至約100nmであることを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項11】
請求項9において、前記第2の領域が約20μm乃至約40μmの厚さを有し、前記第2の細孔サイズが約200nm乃至約300nmであることを特徴とする支持された膜アセンブリ。
【請求項12】
金属膜の製造方法であって、
a)相対する第1及び第2の面を有する多孔質の非金属テンプレート膜を提供する工程と、
b)前記第1の面上に第1の金属層を、該第1の金属層によって前記第1の面の細孔が塞がれないように成膜する第1成膜工程と、
c)前記テンプレート膜のポリマーネガを前記第1の金属層に付着するように提供する工程と、
d)前記ポリマーネガの細孔充填部を露出するべく前記非金属テンプレート膜を除去する工程と、
e)前記第1の金属層上に第2の金属を成膜し、前記第2の金属が前記ポリマーネガの前記細孔充填部と接触するようにする第2成膜工程と、
f)前記ポリマーネガを除去する工程とを有し、
前記ポリマーネガは前記非金属テンプレート膜の除去と第2の金属の成膜の間常に液体に浸漬されていることを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記非金属テンプレート膜は前記第1の面を含む第1の領域と、前記第2の面を含む第2の領域とを有し、
前記第1の領域は第1の細孔サイズを有し、前記第2の領域は第2の細孔サイズを有し、
前記第2の細孔サイズは前記第1の細孔サイズより大きいことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項14】
請求項12において、前記非金属テンプレート膜がアルミナまたはシリコンを含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項15】
請求項12において、前記第1成膜工程が2以上の異なる金属組成を成膜する工程を有することを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項16】
請求項12において、前記第1成膜工程が約30乃至約40秒Ptを成膜する工程を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項17】
請求項12において、前記第1成膜工程が約1nm/sの成膜速度で約30乃至40秒の間PtをRFスパッタする工程を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項18】
請求項12において、前記ポリマーネガを提供する工程が、
前記テンプレート膜中の空間を液体ポリマー前駆体で埋める工程と、
前記ポリマー前駆体を硬化して前記ポリマーネガを提供する硬化工程とを有することを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項19】
請求項18において、前記ポリマー前駆体がメタクリル酸メチル、(MMA)、及びMMAとポリMMAの混合からなる群から選択されたものであることを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項20】
請求項18において、前記硬化工程が熱硬化工程または前記ポリマー前駆体を窒素雰囲気中で紫外線放射に曝す工程を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項21】
請求項12において、前記非金属テンプレート膜の除去工程が前記テンプレート膜をエッチング剤中で溶かす工程を含み、前記エッチング剤が塩基性溶液であることを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項22】
請求項12において、前記第2成膜工程が電気めっき工程を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項23】
請求項12において、前記第2成膜工程が2以上の異なる金属組成を成膜する工程を有することを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項24】
請求項12において、前記ポリマーネガを除去する工程がアセトン、トルエン、メチルエチルケトン、フォルムアルデヒド及びそれらの混合からなる群から選択された溶剤中で前記ポリマーネガを溶かす工程を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項25】
請求項12において、前記第1の面上にガスまたはイオン種選択性膜を成膜する第3成膜工程を更に有することを特徴とする金属膜の製造方法。
【請求項26】
請求項25において、前記第3成膜工程は、原子層堆積、パルスレーザ堆積、金属のスパッタリングとそれに続くスパッタされた金属の酸化、金属酸化物のRFスパッタリング、及び金属のスパッタリングからなる群から選択された方法を含むことを特徴とする金属膜の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図3e】
image rotate

【図3f】
image rotate

【図3g】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−514384(P2008−514384A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506490(P2007−506490)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010601
【国際公開番号】WO2005/094354
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506330896)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (15)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Stanford University, Office of Technology Licensing, 1705 El Camino Real, Palo Alto, CA 94306, U.S.A.
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】