説明

多段ラジアルタービン

【課題】軸受数を低減し、変換効率を向上させ得る多段ラジアルタービンを提供する。
【解決手段】一本の回転軸3に間隔をあけて取り付けられている複数のラジアルタービン動翼5と、それぞれ各ラジアルタービン動翼5の上流側に設置され、流体流れを回転方向に加速する複数のノズル19と、前段側のラジアルタービン動翼5のガス出口部23と後段側のノズル19の上流側を接続する接続流路部9と、が備えられ、接続流路部9には、ラジアルタービン動翼5から軸方向に流出した流体流れを、半径方向外向きに転向するU字型ベンド部25と、U字型ベンド部25からの流体流れを半径方向外向きに導きながら、ラジアルタービン動翼5の回転方向Rに転向する複数枚の転向ベーン27を有するベーン部29と、ベーン部29から半径方向外向きに旋回しながら流出する流れを半径方向内向きに転向するリターンベンド部31と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段ラジアルタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルタービンは、回転軸に固定されたハブに複数の遠心翼が固定され、ほぼ平行な円板間を流路として半径方向外周側から内向きに流れる作動流体である空気やガスが、遠心翼に作用してハブを回転させるとともにほぼ軸方向に流出される構成となっている。
ラジアルタービンは、単段で高い膨張比が得られることもあり、一般に単段構成で用いられている。
【0003】
高い圧力比で大きな熱落差を持つ作動流体のエネルギーを有効に活用するために、ラジアルタービンを多段構成、すなわち、作動流体を直列に活用することが提案されている。
たとえば、特許文献1に示されるように、複数のラジアルタービンを並列に並べ、1のラジアルタービンから排出された流体流れを次のラジアルタービンの入り口に導入し、作動流体のエネルギーを回収するものが提案されている。これは、各ラジアルタービンが異なる回転数を持つ軸を有し、それぞれの軸の回転を用いて仕事をさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−79096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示されるものでは、各ラジアルタービン毎に回転軸が存在するので、軸受と軸シールが多くなる。このため、軸受損失と漏れ損失が大きくなるので、高圧力の作動流体のエネルギーを効率よく回転動力に変換できていない。
また、たとえば、一つの作業に動力を供給する場合、作業用の軸に各出力軸から、たとえば、ギアを用いて回転力を伝達させているので、構造が大型化するという課題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、軸受数を低減し、変換効率を向上させ得る多段ラジアルタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、一本の回転軸と、該回転軸に間隔をあけて取り付けられ、半径方向外周側から流入する流体流れを略軸方向に向けて流出する複数のラジアルタービン動翼と、それぞれ各該ラジアルタービン動翼の上流側に設置され、流体流れを回転方向に加速する複数のノズルと、前段側の前記ラジアルタービン動翼の出口部と後段側の前記ノズルの上流側を接続する接続流路部と、が備えられ、前記接続流路部には、前記ラジアルタービン動翼から軸方向に流出した流体流れを、半径方向外向きに転向するU字型ベンド部と、該U字型ベンド部からの流体流れを半径方向外向きに導きながら、前記ラジアルタービン動翼の回転方向に転向する複数枚の転向ベーンを有するベーン部と、該ベーン部から半径方向外向きに旋回しながら流出する流れを半径方向内向きに転向するリターンベンド部と、が備えられている多段ラジアルタービンである。
【0008】
本態様によれば、半径方向外周側から流入する流体流れはノズルによって回転方向に加速されてラジアルタービン動翼の外周部に導入される。ラジアルタービン動翼に導入された流体はラジアルタービン動翼から軸方向に流出し、U字型ベンド部を通って半径方向外向きに転向され、次いで、ベーン部を通る際、転向ベーンによって半径方向外向きに導かれながら、ラジアルタービン動翼の回転方向に転向される。ベーン部から半径方向外向きに旋回しながら流出する流れはリターンベンド部を通って半径方向内向きに転向され、次段のノズルに半径方向外周側から流入させられる。流体流れは、これを繰り返して最終段のラジアルタービン動翼から、たとえば、略軸方向に流出される。そして、各ラジアルタービン動翼の回転が一本の回転軸に伝えられ、回転軸が回転される。
このように、複数のラジアルタービン動翼は一本の回転軸に間隔をあけて取り付けられているので、軸受および軸シールは一本の回転軸に対して備えられていればよく、当然ながら複数の回転軸を有するものに比べて少なくすることができる。
したがって、軸受損失と漏れ損失を小さくできるので、高圧力の作動流体のエネルギーを効率よく回転動力に変換することができる。
また、ラジアルタービン動翼および回転軸の構造は従来と同様な構造とでき、多段ラジアルタービンの構造の大型化を抑制することができる。
【0009】
前記態様では、前記U字型ベンド部は、前記ベーン部側端部の下流部流路面積が前記ラジアルタービン動翼側端部の上流部流路面積よりも小さく構成されている構成としてもよい。
【0010】
このようにU字型ベンド部は、ベーン部側端部の下流部流路面積がラジアルタービン動翼側端部の上流部流路面積よりも小さく構成されているので、U字型ベンド部で流体流れを加速することができる。
これにより、ラジアルタービン動翼の出口部で発生する可能性がある低流速域の影響による流れの剥離を抑制することができる。
【0011】
前記構成では、前記下流部流路面積は前記上流部流路面積の0.8〜0.9倍以下とされていることが好適である。
【0012】
ラジアルタービン動翼の出口部で発生する可能性がある低流速域は、一般にラジアルタービン動翼の出口部の流路面積の10〜20%を占めている。
本態様によると、U字型ベンド部で、流体流れを少なくとも10〜20%加速することができるので、この低速流域部分の影響を緩和することができる。
【0013】
前記態様では、前記転向ベーンはインボリュート状の曲線に構成されていることが好適である。
【0014】
このようにすると、ベーン部における転向ベーン間の入口部での流路面積と出口部での流路面積の変化を小さくできる。
これにより、ベーン部において、減速による損失や転向による損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複数のラジアルタービン動翼は一本の回転軸に間隔をあけて取り付けられているので、軸受および軸シールは一本の回転軸に対して備えられていればよく、当然ながら複数の回転軸を有するものに比べて少なくすることができる。
したがって、軸受損失と漏れ損失を小さくできるので、高圧力の作動流体のエネルギーを効率よく回転動力に変換することができる。
また、ラジアルタービン動翼および回転軸の構造は従来と同様な構造とでき、多段ラジアルタービンの構造の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかる一軸多段ラジアルタービン(多段ラジアルタービン)の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる一軸多段ラジアルタービン1について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、一軸多段ラジアルタービン1の概略構成を示す部分断面図である。図2は、図1のX−X断面図である。
【0018】
一軸多段ラジアルタービン1には、回転軸3と、複数、たとえば、2個のラジアルタービン動翼5と、ケーシング7と、接続流路部9と、が備えられている。
回転軸3は、ケーシング7に、その一端がラジアル軸受(図示略)により支持され、他端がラジアル軸受(図示略)およびスラスト軸受(図示略)により支持されている。
複数のラジアルタービン動翼5は、回転軸3の軸方向Lに間隔をあけて取り付けられ、半径方向Kの外周側から流入する流体流れを略軸方向Lに向けて流出するように構成されている。
【0019】
ラジアルタービン動翼5には、回転軸3に固定されたハブ11と、ハブ11の表面に円周方向に等間隔で多数固定された遠心翼13と、遠心翼13の先端に取り付けられたシュラウド15とが備えられている。
ラジアルタービン動翼5には、ハブ11と、遠心翼13と、シュラウド15とでガス(作動流体)が通過するガス通路が画成されている。このガス通路の回転軸3から離隔した側がガス入口部21となり、回転軸3側がガス出口部(出口部)23となる。
【0020】
ガス入口部21の半径方向K外周側のケーシング7には、ドーナツ形状をした入口流路17が形成されている。入口流路17は、半径方向K外側から内向きに半径方向Kに沿ってガスが流れるように構成されている。
入口流路17の下流側、言い換えると、ラジアルタービン動翼5の上流側には、ガス流れを回転方向Rに加速する翼型を有するノズル19が設置されている。
【0021】
接続流路部9は、ケーシング7に掘設された流路で、前段側のラジアルタービン動翼5のガス出口部23と後段側のノズル19の上流側とを接続するものである。
接続流路部9には、ラジアルタービン動翼5から軸方向Lに流出したガス流れを、半径方向K外向きに転向するU字型ベンド部25と、U字型ベンド部25からのガス流れを半径方向K外向きに導きながら、ラジアルタービン動翼5の回転方向Rに転向する複数枚の転向ベーン27を有するベーン部29と、ベーン部29から半径方向K外向きに旋回しながら流出するガスを半径方向K内向きに転向するリターンベンド部31と、が備えられている。
【0022】
U字型ベンド部25におけるベーン部29側端部の下流部流路面積A2はラジアルタービン動翼5側端部の上流部流路面積A1の0.8〜0.9倍以下とされている。すなわち、下流部流路面積A2は上流部流路面積A1よりも小さくされている。
この比率は、少なくともラジアルタービン動翼5の出口部に発生する低流速域Tの大きさを勘案して決定される。低速領域Tは、一般に、ラジアルタービン動翼5の出口部流路面積、すなわち、上流部流路面積A1の10〜20%を占めるように発生する。
なお、下流部流路面積A2は上流部流路面積A1よりも小さくされているのが好ましいが、使用状況に応じて略等しくあるいは大きくしてもよい。
【0023】
ベーン部29の転向ベーン27は、図2に示されるように、インボリュート状の曲線を形成するように構成されている。
ベーン部29における転向ベーン27間の入口部での流路面積A3と出口部での流路面積A4との変化量は、図2に二点鎖線で示した直線状に拡大する転向ベーン33間の入口部での流路面積A5と出口部での流路面積A6との変化量に比べて格段に小さくすることができる。
なお、転向ベーン27は、インボリュート状の曲線を構成するのが好ましいが、それに限定されず適宜形状とされてよい。
【0024】
以上のように構成された本実施形態にかかる一軸多段ラジアルタービン1の動作について説明する。
図示しないガス源から1段目の入口流路17へ供給されるガス流れG1は、入口流路17を通って半径方向K外周側から内側に向かって半径方向Kにノズル19へ流入する。
ノズル19は、このガス流れG1を円周方向Rに加速し、ラジアルタービン動翼5の外周部に位置するガス入口部21へ供給する。
【0025】
ラジアルタービン動翼5に導入されたガスはハブ11、遠心翼13およびシュラウド15とで画成されるガス通路を通る際、膨張される。この膨張に伴い遠心翼13が押され、回転方向Rに移動する。この遠心翼13の移動によってハブ11が回転方向Rに回転移動するので、回転軸3が回転する。
ラジアルタービン動翼のガス出口部23から軸方向Lに流出したガス流れは、U字型ベンド部25を通って半径方向K外向きに転向される。
【0026】
このとき、U字型ベンド部25の下流部流路面積A2は上流部流路面積A1の0.8〜0.9倍以下とされているので、U字型ベンド部25を通るガス流れは流路面積の縮小に対応して、たとえば、10〜20%以上加速される。
ラジアルタービン動翼5のガス出口部23の前後位置には、一般に流路面積の10〜20%を占める低速領域Tが発生するが、U字型ベンド部25で少なくともそれに対応する分は加速されるので、低速領域Tを略解消することができる。言い換えると、低速流域T部分の影響を緩和することができる。
【0027】
このように低速領域Tの影響を緩和することができるので、ラジアルタービン動翼5のガス出口部23に発生する低流速域Tの集積によって、下流側のシュラウド15面の曲率により流れの剥離を発生することを抑制できる。
さらに、下流部流路面積A2を上流部流路面積A1の0.8〜0.9倍よりもより小さくすることができる場合には、より剥離し難くできるので、各部の曲率をより小さくすることができる。
これにより、特に多段構成の総軸長を短くできるので、一軸ラジアルタービン1の全体長さを短くでき、一軸ラジアルタービン1を小型に構成することができる。
【0028】
次いで、ガス流れは、ベーン部29を通る際、転向ベーン27によって半径方向K外向きに導かれながら、ラジアルタービン動翼5の回転方向Rに転向される。
このとき、転向ベーン27は、インボリュート状の曲線を形成するように構成されてので、転向ベーン27間の入口部での流路面積A3と出口部での流路面積A4との変化量が小さくされている。これにより、ベーン部29において、ガス流れの減速による損失や転向による損失を低減することができる。
また、この転向ベーン27の角度を調整することによって下流側のノズル19の入口の流れ角を調整できる。たとえば、ノズル19の入口の流れ角を周方向から40〜50度になるように調整すると、ノズル19の入口衝突損失を低減することができる。
【0029】
ベーン部29から半径方向K外向きに旋回しながら流出する流れはリターンベンド部31を通って半径方向K内向きに転向され、次段の入口流路17に半径方向K外周側から流入させられる。
リターンベンド部31から供給されるガス流れG2は、入口流路17を通って半径方向K外周側から内側に向かって半径方向Kにノズル19へ流入する。
ノズル19は、このガス流れG2を円周方向Rに加速し、ラジアルタービン動翼5の外周部に位置するガス入口部21へ供給する。
【0030】
ラジアルタービン動翼5に導入されたガスはハブ11、遠心翼13およびシュラウド15とで画成されるガス通路を通る際、膨張される。この膨張に伴い遠心翼13が押され、回転方向Rに移動する。この遠心翼13の移動によってハブ11が回転方向Rに回転移動するので、回転軸3が回転する。
ラジアルタービン動翼のガス出口部23から軸方向Lに流出したガス流れは、図示しない排出流路を通って一軸ラジアルタービン1の外へ排出される。
【0031】
このように、複数のラジアルタービン動翼5は一本の回転軸3に間隔をあけて取り付けられているので、軸受および軸シールは一本の回転軸3に対して備えられていればよく、当然ながら複数の回転軸を有するものに比べて少なくすることができる。
したがって、軸受損失と漏れ損失とを小さくすることができるので、高圧力の作動流体のエネルギーを効率よく回転動力に変換することができる。しかも一式の一軸ラジアルタービンでその熱落差を回転動力に変換できる。
また、ラジアルタービン動翼5および回転軸3の構造は従来と同様な構造とできることも相まって、一軸多段ラジアルタービン1の構造の大型化を抑制することができる。
【0032】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
たとえば、本実施形態では、ラジアルタービン動翼5は2段としているが、これは3段以上としてもよい。この場合、隣り合うラジアルタービン動翼5間は、それぞれ接続流路部9によって接続される。
【符号の説明】
【0033】
1 一軸ラジアルタービン
3 回転軸
5 ラジアルタービン動翼
9 接続流路部
19 ノズル
25 U字型ベンド部
27 転向ベーン
29 ベーン部
31 リターンベンド部
A1 上流部流路面積
A2 下流部流路面積
K 半径方向
L 軸方向
R 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本の回転軸と、
該回転軸に間隔をあけて取り付けられ、半径方向外周側から流入する流体流れを略軸方向に向けて流出する複数のラジアルタービン動翼と、
それぞれ各該ラジアルタービン動翼の上流側に設置され、流体流れを回転方向に加速する複数のノズルと、
前段側の前記ラジアルタービン動翼の出口部と後段側の前記ノズルの上流側を接続する接続流路部と、が備えられ、
前記接続流路部には、前記ラジアルタービン動翼から軸方向に流出した流体流れを、半径方向外向きに転向するU字型ベンド部と、
該U字型ベンド部からの流体流れを半径方向外向きに導きながら、前記ラジアルタービン動翼の回転方向に転向する複数枚の転向ベーンを有するベーン部と、
該ベーン部から半径方向外向きに旋回しながら流出する流れを半径方向内向きに転向するリターンベンド部と、が備えられていることを特徴とする多段ラジアルタービン。
【請求項2】
前記U字型ベンド部は、前記ベーン部側端部の下流部流路面積が前記ラジアルタービン動翼側端部の上流部流路面積よりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1に記載された多段ラジアルタービン。
【請求項3】
前記下流部流路面積は前記上流部流路面積の0.8〜0.9倍以下とされていることを特徴とする請求項2に記載された多段ラジアルタービン。
【請求項4】
前記転向ベーンはインボリュート状の曲線に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載された多段ラジアルタービン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132877(P2011−132877A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292600(P2009−292600)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】