説明

多段圧密加工装置

【課題】被加工木材を多段に積層し,それを一括してプレス圧縮する1工程の動作中に特定の段の被加工木材の加圧圧縮により,当該特定の段のみの被加工木材の加圧力を一定とし,他の段の被加工木材の加工温度と加圧力の1つ以上を異にする制御が自在なこと。
【解決手段】被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱及び圧縮する複数対の熱盤20が被加工木材Wの加熱及び圧縮を開始し,対の熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,被加工木材Wを上下の面で挟む熱盤20に被加工木材Wを圧縮する外力を与えるプレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも厚み方向に圧縮が加えられた塑性加工木材を多段構成によって製造する多段圧密加工装置に関するもので,特に,製品間の品質のばらつきを少なくして製造できる多段圧密加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,プレス加工する際に木材の周囲を密閉し,木材に含まれる水分をその木材中に閉じ込めたうえで高温高圧で加熱圧縮処理すると,顕著な回復抑制効果が現われて,もはや元の厚みには戻らないことが知られている。ところが,このような木材を,処理後に直ちにプレス機から取出すと,木材中に含まれていた高温高圧の水蒸気の作用によって,この木材の表面にパンクと呼ばれる膨らみ変形が発生し易いという不具合があった。これに対処するため,従来は,木材の熱処理後にプレス状態を維持したままプレス機を冷却することで塑性加工木材(圧縮木材)を製造するしかなかった。しかしながら,このような工程の繰返しでは,プレス機の再加熱に伴う無駄な熱エネルギの消費と共に,時間も要するという問題が生じていた。
【0003】
そこで,特許文献1では,熱エネルギや時間を多大に消費することなしに,加熱圧縮した木材の表面における膨らみ変形の発生を防止することを目的として,木材を加熱プレス処理により圧縮して密閉空間に閉じ込め,木材中の水分を加圧水蒸気化させて圧縮変形状態に固定させた後,プレス状態を維持したまま密閉空間内を減圧させる技術が示されている。これによれば,木材中に含まれる水蒸気が密閉空間内に放出されることから,加熱プレス処理後に木材を加熱状態のまま熱プレス機から取出してもその表面における膨らみ変形の発生が防止される。
【0004】
また,特許文献2では,木材(木質材)の厚み方向に貫通孔或いは半貫通孔を形成し,プレス機構により木材を加熱圧縮する際,加熱水蒸気を供給することにより木材に加熱水蒸気を均一に行き渡らせ寸法の安定化処理を行う技術が示されている。これによれば,プレス機構に設けられた多数の細孔から内部空間内で加圧圧縮される木材に加熱水蒸気を均一に行き渡らせることができる。
【0005】
そして,特許文献3では,互いに対向する熱盤を有する密閉可能な金型を用いて木材を加熱及び圧縮することによって木材の圧密固定化処理を行う方法において,熱盤間に木材を収容して熱盤により木材を加熱及び圧縮すると共に,熱盤の温度を固定化処理用設定温度まで上昇させ,熱盤が固定化処理用設定温度に到達した後に熱盤間の密閉空間内へ水蒸気を導入して木材の含水率を調整しながら圧縮状態を維持し,その後に圧縮状態で熱盤を冷却する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−90516号公報
【特許文献2】特開平10−249813号公報
【特許文献3】特開2003−53705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,前述の特許文献1にあるように,木材中に含まれている高温高圧の水蒸気は密閉空間内を減圧するだけでは瞬時に抜けきることは難しく,依然として,木材の木口面から離れた中央部分では均一化されておらず,特に,厚板材では加熱プレス処理後の膨らみ変形を完全に抑えることは無理であり,多少でも膨らみ変形が生じると製品としての品質が低下するという問題があった。
【0008】
一方,特許文献2にあるように,プレス機構に設けられた多数の細孔から密閉空間内に加熱水蒸気を供給しても,プレス機構で加熱圧縮されている木材の貫通孔或いは半貫通孔等にプレス機構側の細孔を一致させ,木材内部へ水蒸気を確実に均一に浸透させることには無理があった。このため,元々木材内に含まれている水分もあることから,あらゆる部分での均一化は補償されず,やはり厚板材では加熱プレス処理後に冷却処理を行わないで膨らみ変形を完全に抑えることは無理であり,多少の膨らみ変形が生じることで製品としての品質が低下するという問題があった。
【0009】
そして,特許文献3では,対向する熱盤の各組において上側に位置する熱盤の下面周縁に強固に固定され,型枠の内側周縁(密閉空間側周縁)と熱盤との間には,密閉空間の気密保持効果を高めるためのシール部材が介在されている。図では簡略しているが,通常,型枠の内側周縁及び外側周縁の2列,上面下面でその2倍の4列以上のシール部材が配設されている。このシール部材としては,耐水蒸気性及び耐熱性に優れたシリコンゴム,シリコン樹脂等が使用されており,弾性に富む材料である。しかし,シール部材は型枠の内側周縁よりも上下に突出していないとシール性を確保できないから,圧縮された木材は,本来の仕上がりの厚み寸法を一義的に固定できない。ところが,熱盤を多段構造とすると,圧縮された木材の中に柔らかい木材が存在する段で他の木材以上に圧縮され,硬い木材との圧密加工後の厚さに違いが生じ,木材の仕上がりの厚みが一様にならなかった。特に,木材に硬いものと柔らかいものがあると,軟らかいものが異常に圧縮され,硬いものが圧縮が不十分となり,後の固定化にまで影響を与えるという問題があった。
【0010】
そこで,本発明はかかる不具合を解決するためになされたもので,被加工木材を多段に積層し,それを一括してプレス圧縮する1工程の動作中に特定の段の被加工木材の加圧圧縮により,当該特定の段のみの被加工木材の加圧力を一定とし,他の段の被加工木材の加工温度と加圧力の1つ以上を異にする制御が自在な塑性加工木材製造装置及びその製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明にかかる多段圧密加工装置は,被加工木材を上下の面で挟むよう配設して前記被加工木材を加熱する複数対の熱盤と,前記被加工木材を上下の面で挟む前記対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構と,前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面を挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行う制御装置とを具備するものである。
ここで,上記対の熱盤は,被加工木材を2枚の上下の面で挟むように併設され,前記被加工木材を加熱する加熱源を内蔵するものである。
また,上記プレス機構は,前記被加工木材を前記対の熱盤の上下の面で挟んだ前記被加工木材を圧縮する外力を与えるものである。
そして,上記制御装置は,前記対の熱盤が前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行うものである。
【0012】
請求項2の発明にかかる多段圧密加工装置は,被加工木材を上下の面で挟むよう配設して前記被加工木材を加熱する複数対の熱盤と,前記被加工木材を上下の面で挟む前記対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構と,前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面を挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行う制御装置とを具備するものである。
ここで,上記対の熱盤は,被加工木材を2枚の上下の面で挟むように併設され,前記被加工木材を加熱する加熱源を内蔵するものである。
また,上記プレス機構は,前記被加工木材を前記熱盤の上下の面で挟んだ前記被加工木材を圧縮する外力を与えるものである。
そして,上記制御装置は,前記対の熱盤が前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行うものである。
【0013】
請求項3の発明にかかる多段圧密加工装置における前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触によるものである。
ここで,特定厚みのブロックとは,1個以上で塑性加工木材の固定化した特定厚みとなるものであり,平面が正方形の柱状のもの,平面が正方形の柱状のもの,平面が円形の柱状のもの等その平面形状を問うものではなく,特定厚みが維持できるものであればよい。特定厚みのブロックの対向面が熱盤である場合,或いは2分割した厚みのブロック,特定厚みのブロックの対向面が他の構成部品である場合があるが,本発明を実施する場合にはいずれであってもよい。
【0014】
請求項4の発明にかかる多段圧密加工装置における前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号としたものである。
ここで,特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号とは,特定厚みになったことを特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触によって検出できればよい。特定厚みのブロックの対向面が熱盤である場合,或いは2分割した厚みのブロック,特定厚みのブロックの対向面が他の構成部品である場合があるが,本発明を実施する場合にはいずれであっても,結果的に電気信号として取出すことができればよい。
【0015】
請求項5の発明にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材を加熱するようにした複数対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を圧縮するようにしたプレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達してない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行うものである。
ここで,上記対の熱盤は,被加工木材を2枚の上下の面で挟むように併設され,前記被加工木材を加熱する加熱源を内蔵するものである。
また,上記プレス機構は,前記被加工木材を前記対の熱盤の上下の面で挟んだ前記被加工木材を圧縮する外力を与えるものである。
そして,上記制御装置は,前記対の熱盤が前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行うものである。
【0016】
請求項6の発明にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材を加熱するようにした複数対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を圧縮するようにしたプレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達してない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行うものである。
ここで,上記対の熱盤は,被加工木材を2枚の上下の面で挟むように併設され,前記被加工木材を加熱する加熱源を内蔵するものである。
また,上記プレス機構は,前記被加工木材を前記熱盤の上下の面で挟んだ前記被加工木材を圧縮する外力を与えるものである。
そして,上記制御装置は,前記対の熱盤が前記被加工木材を加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行うものである。
【0017】
請求項7の発明にかかる多段圧密加工方法における前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触によるものである。
ここで,特定厚みのブロックとは,1個以上で被加工木材の特定厚みとなるものであり,平面が正方形の柱状のもの,平面が正方形の柱状のもの,平面が円形の柱状のもの等その平面形状を問うものではなく,特定厚みが維持できるものであればよい。特定厚みのブロックの対向面が熱盤である場合,或いは2分割した厚みのブロック,特定厚みのブロックの対向面が他の構成部品である場合があるが,本発明を実施する場合にはいずれであってもよい。
【0018】
請求項8の発明にかかる多段圧密加工方法における前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号としたものである。
ここで,特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的導通とは,特定厚みになったことを特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触によって検出できればよい。特定厚みのブロックの対向面が熱盤である場合,或いは2分割した厚みのブロック,特定厚みのブロックの対向面が他の構成部品である場合があるが,本発明を実施する場合にはいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明にかかる多段圧密加工装置は,被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮する複数対の熱盤が,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤に前記被加工木材を圧縮する外力を与えるプレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行うものである。
したがって,仮に被加工木材に硬い,軟らかいがあっても,前記被加工木材を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材が圧縮され,次いで軟らかい被加工木材が圧縮されなくなったとき,特定の硬い被加工木材のみを圧縮することになるから,プレス機構の押圧エネルギが集中して使用でき,硬い被加工木材であっても押圧エネルギが集中することで容易に圧縮力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化(定着)制御に入り,固定化を早期に完了させ,そして,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができる。
【0020】
請求項2の発明にかかる多段圧密加工装置は,被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮する複数対の熱盤が,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤に前記被加工木材を圧縮する外力を与えるプレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行うものである。
したがって,仮に被加工木材に硬い,軟らかいがあっても,前記被加工木材を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材が圧縮され,次いで軟らかい被加工木材が圧縮されなくなったとき,特定の硬い被加工木材のみを圧縮することになるから,プレス機構の押圧エネルギが集中して使用でき,硬い被加工木材であっても押圧エネルギが集中することで容易に圧縮力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,そして,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができる。
【0021】
請求項3の発明にかかる多段圧密加工装置において,前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触によるものであるから,請求項1または請求項2に記載の効果に加えて,機械的に特定厚みが決定されるから,その特定された厚み以上に圧縮されないから,高精度に塑性加工木材の厚みを設定できる。
【0022】
請求項4の発明にかかる多段圧密加工装置において,前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的導通としたものであるから,請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の効果に加えて,機械的に特定厚みが決定されるから,その特定された厚みを電気的信号で検出でき,電気的信号によって前記被加工木材の温度制御を目的に応じて行うことができる。
【0023】
請求項5の発明にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材を熱盤対の上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮する複数対の熱盤が,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,また,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を対の熱盤の上下の面で挟んで圧縮するプレス機構の押圧エネルギを,特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮制御を分離して行うものである。
したがって,仮に被加工木材に硬い,軟らかいがあっても,前記被加工木材の圧縮を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材が圧縮され,それ以上の圧縮が行われないから寸法精度が所定の値となり,次いで,特定の硬い被加工木材のみを圧縮するから,プレス機構の押圧エネルギが特定の硬い被加工木材のみに集中して使用でき,硬い被加工木材であっても押圧エネルギの集中で容易に押圧力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができ,作業性がよい。
【0024】
請求項6の発明にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材を熱盤の対の上下の面で挟み,前記被加工木材を加熱及び圧縮する複数対の熱盤が,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,また,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記被加工木材を対の熱盤の上下の面で挟んで圧縮するプレス機構の押圧エネルギを,特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材の温度制御を分離して行うものである。
したがって,仮に被加工木材に硬い,軟らかいがあっても,前記被加工木材の圧縮を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材が圧縮され,それ以上の圧縮が行われないから寸法精度が所定の値となり,次いで,特定の硬い被加工木材のみを圧縮するから,プレス機構の押圧エネルギが特定の硬い被加工木材のみに集中して使用でき,硬い被加工木材であっても押圧エネルギの集中で容易に押圧力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができ,作業性がよい。
【0025】
請求項7の発明にかかる多段圧密加工方法において,前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する対の熱盤との接触またはブロック相互間の接触によるものであるから,請求項5または請求項6に記載の効果に加えて,機械的に特定厚みが決定され,その特定された厚み以上に圧縮されないから,高精度に前記塑性加工木材の厚みを設定できる。
【0026】
請求項8の発明にかかる多段圧密加工方法において,前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号としたものであるから,請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の効果に加えて,機械的に特定厚みが決定され,その特定された厚みを電気的信号として検出するものであるから,電気的信号によって前記被加工木材の温度または圧縮制御を目的に応じて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置の全体を示す説明図である。
【図2】図2は図1の切断線X−Xによる切断の断面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置を形成する熱盤間の要部を説明する要部説明図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置を形成する対向する一対の熱盤の制御装置の全体の制御回路図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置を形成する対向する一対の熱盤の制御装置の処理動作を示す制御回路図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置の熱盤に埋設するセンサの構成図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置の全体をコンピュータ制御するブロック構成図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置で使用する被加工木材の事例の説明図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置の制御装置が実行する全体制御のメインルーチンのフローチャートである。
【図10】図10は本発明の実施の形態の多段圧密加工装置の制御装置の全体制御でコールされるサブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下,本発明の実施の形態について,図面を参照しながら説明する。
なお,各実施の形態において,図中,同一記号及び同一符号は,各々同一または相当する機能部分であるから,ここでは重複する説明を省略する。
【0029】
まず,本発明の実施の形態にかかる多段圧密加工装置100について説明する。
本発明の実施の形態にかかるプレス機構10を含む多段圧密加工装置100は,木材の圧密固定化を実施するものである。
プレス機構10は,公知の多段プレス機構で構成され,内部に複数台の油圧シリンダ等の駆動部材12が配設された基台11と,前記駆動部材12の作動により昇降する加圧盤15と,基台11の4隅部に立設された支柱13の上端に固定された固定盤16と,加圧盤15と固定盤16間に配設される複数段,本実施の形態では被加工木材の加工が3段の加工構成,即ち,4段の熱盤20A,20B,20C,20D及び型枠30B,30C,30Dで構成されている。
【0030】
なお,本発明を実施する場合には,1段以上の複数段であればよい。
本発明の実施の形態の表現においては,特定の位置の熱盤または型枠を示すときには,熱盤20Aまたは熱盤20Bまたは熱盤20Cまたは熱盤20Dと示し,または,型枠30Bまたは型枠30Cまたは型枠30Dと表現し,特定されない熱盤に共通するときには熱盤20,共通する型枠に共通するときには型枠30と表現する。以下,他の構成部品も同様の扱いとする。また,事例として特定していても,全体に共通するものもある。
【0031】
複数の熱盤20は,上下方向である圧縮方向(プレス方向)に所定間隔で配設され,互いに対となる対向する熱盤20同士が近接及び離間可能に構成されている。この実施の形態では,図1の最も上にある固定盤16に近い熱盤20Dは固定盤16に直接固定されており,それ以外の熱盤20は,基台11と固定盤16間の前記4本の支柱13よりも内側位置に立設された4本の円筒状のシャフト17に沿って昇降するようになっている。そして,この事例では,油圧シリンダ等の駆動部材12の上昇動作により,加圧盤15がまず上昇して,それによって各熱盤20同士が近接するようになっている。
また,駆動部材12の下降動作により,加圧盤15が下降して,それによって各熱盤20同士が離間するようになっている。なお,各熱盤21同士を近接及び離間させる構成は,上記例示に限定されるものではなく,多段圧密加工装置100の上側に駆動部材12を配設してもよいし,中間位置に配設してもよい。
【0032】
また,図示の例では,各支柱13の内側面の所定の位置に支柱側係合片13B,13Cが内側に堅固に突設している。この支柱側係合片13B,13Cは,熱盤20Bと熱盤20Cの上昇を許容し,それらの支柱側係合片13B,13Cよりも下方向の下降を防止するものである。本実施の形態では,支柱側係合片13B,13Cの範囲で熱盤20Bと熱盤20Cが上下動するものとする。また,下側から2段目の熱盤20B,その上側の3段目の熱盤20C,即ち,熱盤20Aと最も加圧盤15に近い熱盤20Dを除く熱盤20Bと熱盤20Cの外側面に支柱側係合片13Bまたは支柱側係合片13Cと係合する熱盤側係合片17Bまたは熱盤側係合片17Cに突設され,非加圧状態では支柱側係合片13Bまたは支柱側係合片13Cと熱盤側係合片17Bまたは熱盤側係合片17Cの係合によって,中間の熱盤20B及び熱盤20Cの下降がそれぞれ規制されている。
なお,上側の支柱側係合片13Bと下側の熱盤側係合片13Cとは,互いに干渉しないような位置に設け,かつ,下側の熱盤20Cの上方移動が支柱側係合片13Cにより干渉されないように設定されている。
【0033】
前記熱盤20は,被加工木材Wを加熱及び圧縮するためのもので,この例では各段毎に複数本(図では3本)を高さ方向に3段の被加工木材Wを載置できる平面及び高さ方向のサイズを有している。熱盤20の少なくとも被加工木材Wと接触する接触面は,被加工木材Wが鉄イオン汚染により黒色化しない材質からなることが好ましく,この例では図示されていないが接触面にステンレス鋼が取り付けられている。勿論,前記ステンレス鋼の代わりにアルミニウム等をメッキするようにしても良い。
【0034】
熱盤20の各内部には,加熱及び冷却用の媒体を通す媒体経路22が形成され,媒体経路22には配管及び開閉弁等を介して水蒸気や油等の加熱媒体の供給装置,即ち,高温加熱蒸気供給装置70,蒸気供給装置80,冷却水供給装置90が接続されている。そして,媒体経路22に冷却水や油等の加熱媒体又は冷却媒体を流通させることによって,当該熱盤20の加熱或いは冷却を行うようになっている。なお,熱盤20の加熱は,前記水蒸気や油等の加熱媒体によらないで,電気ヒータや高周波,マイクロ波等によって行われても良い。
【0035】
互いに対向する熱盤20として,本実施の形態では,例えば,下側の熱盤20Aと上側の熱盤20Bを用いて説明するが,基本的に他の熱盤20もその動作が相違するものでない。念のため記載すると,本発明の実施例においては,同時に熱盤20Aと熱盤20B,熱盤20Bと熱盤20C,熱盤20C及び熱盤20Dの3段が機能する。
本実施の形態では,互いに対向する熱盤20の少なくとも一方の上側の熱盤20Bの対向面の周縁には,図2に示すように,全体がロ字状の枠状の型枠30Bが配置され,対向する下側の熱盤20A相互によって下側の熱盤20A及び上側の熱盤20B及び型枠30B間で密閉空間Yが形成される。前記型枠30Bは,十分な強度を有し,かつ,木材が鉄イオン汚染により黒色化しない材質からなることが好ましい。例えば,ステンレス鋼や,非鉄金属のアルミニウムをメッキしたもの等が挙げられる。
【0036】
型枠30Bは,対向する熱盤20Aの上側に位置する熱盤20Bの下面周縁にボルト等で強固に取付けられている。また,型枠30Bは,その内側の密閉空間Yの気密を形成保持でき,かつ,被加工木材Wの圧縮時における内圧に耐えることができる強度を有するものであり,複数に分割された枠,単一の枠として構成される。加えて,型枠30Bの下側面と熱盤20Aとの間には,密閉空間Yの気密保持効果を高めるための環状のシール部材31b及びシール部材32bが介在されている。このシール部材31b,32bとしては,耐圧性及び耐熱性に優れたシリコンゴム,シリコン樹脂等が挙げられる。
【0037】
この実施の形態における全体がロ字状の枠状の型枠30Bは,図3に示すように,熱盤20Bの下側の面に堅固に取付けられている。型枠30Bの下面側には,全体がロ字状の型枠30Bに併設するシール部材31b及びシール部材32bが嵌込まれており,シール部材31b,32bに対向する熱盤20Aの上側の面との間を特定の弾性で封止できるようにしている。
このとき,シール部材31b及びシール部材32bが嵌め込まれた型枠30Bは,シール部材31b及びシール部材32bの弾性変化によって高さh1から型枠30B自体の厚みh2に近い値まで変化し,その間,被加工木材Wが入れられている型枠30B内は型枠30B及びシール部材31b及びシール部材32bでシールされている。
【0038】
型枠30Bの枠内に被加工木材Wの厚みが,特定厚みHに到達したときの判断手段及び押圧力の切り替え手段としてのブロック40は,対向する熱盤20Bの下側に配設した特定厚みHの高さ維持手段であって,被加工木材Wを特定厚みHまで圧縮して,固定化後の解圧により弾性変形した厚さhの塑性加工木材PWとする厚みHを特定している。
ここで,型枠30B及びシール部材31b,32bとの接合された厚みh1は,被加工木材Wの厚さよりも厚くなっている。また,型枠30B自体の厚みh2は,圧密固定化処理後の塑性加工木材PWの厚さhよりも薄くなっている。特に,塑性加工木材PWの厚さhは固定化した後であつても,弾性によりブロック40の特定厚みHよりも膨張している。
【0039】
即ち,シール部材31b,32bの弾性領域の範囲内にブロック40の厚みHがあり,その厚さHは,型枠30B及びシール部材31b,32bとの接合された厚みh1と型枠30Bの厚みh2との和の範囲内にある値である。即ち,ブロック40の厚みHは,所望する圧密固定化製品の厚さに応じて設定されている。
この厚みHのブロック40は,対向する熱盤20Aと熱盤20Bの間隔を圧縮したとき,被加工木材Wが圧縮され,厚みHのブロック40と熱盤20Aが当接すると,熱盤20Aの上面に載置されていた被加工木材Wが熱盤20Bと当接し,それ以上は被加工木材Wを圧縮できず,爾後,熱盤20Aと熱盤20Bの間隔は厚みHのブロック40によって間隔が保たれる。
【0040】
この実施の形態の型枠30Bには,外部から密閉空間Yに通じる複数の蒸気導入路54が形成されると共に,蒸気導入路54には配管や開閉弁等を介して図示しない蒸気供給装置80が接続されており,蒸気導入路54を介して密閉空間Y内に水蒸気を導入できるようになっている。密閉空間Y内への蒸気の導入は,本実施の形態に拘束されることなく,熱盤20Aに蒸気導入路54を設ける等,熱盤20A側から密閉空間Y内に水蒸気を導入するようにしても良い。また,型枠30Bの全周に設けてもよい。
【0041】
このとき,熱盤20Aと熱盤20Bの圧縮間隔は厚みHのブロック40によって最小間隔が保たれるが,被加工木材Wの厚みHよりも間隔が広い対向する熱盤20間が存在すれば,当然のこととして,プレス機構10の基台11と固定盤16間の前記4本の支柱13よりも内側位置に立設された4本のシャフト17に沿って油圧シリンダ等の駆動部材12の上昇動作が行われ,そこのみに駆動部材12の上昇動作の圧縮エネルギが集中することになる。
【0042】
特定厚みのブロック40によって,各熱盤20Aと熱盤20Bとの間,熱盤20Bと熱盤20Cとの間,熱盤20Cと熱盤20Dとの間の最小間隔が,被加工木材Wの圧縮加工が完了し,固定化される際の熱盤20Aと熱盤20Bの圧縮間隔の厚みHである。この厚みHのブロック40は,被加工木材Wと並行して配設されている。厚みHのブロック40の配置としては,被加工木材Wが厚みHを維持できるようにその周囲に配設されるが,各熱盤20の機械的強度によって,厚みHのブロック40の配置または配置形状を任意に設置することができる。結果的に,被加工木材Wの全体が厚みHになればよい。
【0043】
次に,本発明の実施の形態の被加工木材Wから塑性加工木材PWを製造する順序について,図4及び図5を参照して説明する。なお,本発明はこの構成を多段に有するものであり,同時にまたは時間差がどれだけか存在している下で動作するものである。
図4及び図5は,本実施の形態の塑性加工木材PWを製造する多段圧密加工装置100の対向する熱盤20として,上プレス盤である熱盤20Bと下プレス盤である熱盤20Aとの2分割された構造体によって内部空間Yを形成している事例で説明する。
上側の熱盤20Bと下側の熱盤20Aは,上側の熱盤20Bの型枠30Bに配設されるシール部材31b,32bと下側の熱盤20Aの周縁部20aで,所定の上下動の範囲内で内部空間Yを密閉状態とする。
【0044】
前記上側の熱盤20Bと下側の熱盤20Aで形成された内部空間Yに対しては,上側の熱盤20Bの内部空間Y内に連通され,内部空間Y内から水蒸気を排出するための蒸気排出口52aを有する蒸気排出路52,蒸気排出路52内の蒸気圧を検出する圧力計P2,その下流側のバルブV5,バルブV5に接続されたドレン配管53を有し,また,内部空間YにバルブV6に接続された蒸気導入路54を介して蒸気を供給する上側の熱盤20Bの蒸気導入口54a等から構成されている。
【0045】
また,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20A内には,それらを高温の水蒸気を通すことによって所望の温度に昇温するための媒体経路22が形成されており,これら媒体経路22には蒸気供給装置80側の配管ST1から分岐された配管ST2,ST3,蒸気排出側の配管ET1,ET2がそれぞれ接続され,水蒸気の通路を形成している。
そして,蒸気供給装置70側の配管ST1,ST2,ST3の途中にはバルブV1,V2,V3,配管ST1内の蒸気圧を検出する圧力計P1が配設されており,蒸気排出側の配管ET1,ET2は,バルブV4を介してドレン配管53に接続されている。
【0046】
なお,配管ST1に水蒸気を供給するボイラ装置,また,プレス機構10として下側の熱盤20Aに対して上側の熱盤20Bを上昇/下降させ加圧するための油圧機構を含むプレス昇降装置は省略されている。また,本実施の形態では,プレス機構10の上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aで形成される内部空間Y内を加熱するためにバルブV6に接続された蒸気導入路54を用いて高温の水蒸気を導入しているが,この他,高周波加熱,マイクロ波加熱等を用いることもできる。特に,木材に対する高周波加熱は,マイクロ波による誘電過熱よりも,マイクロ波よりも若干周波数の低い高周波で,木材の中心から加熱する方法が好適である。
【0047】
更に,プレス機構10には,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20A内に形成された媒体経路22に水蒸気に換えて低温の冷却水を通すことによって所望の温度に冷却する冷却水供給装置90側の配管ST11から分岐された配管ST12,ST13が,上記配管ST2,ST3にそれぞれ接続されている。また,冷却水供給装置90側の配管ST11,ST12,ST13の途中にはバルブV11,V12,V13が配設されている。なお,図4及び図5において,配管ST1に蒸気供給する蒸気供給装置80,配管ST11に冷却水を供給する冷却水供給装置90は省略されている。
【0048】
ここで,各段の対向する熱盤20には,対向間隔を検出するセンサS1,S2,S3が配設されている。本実施の形態で使用するセンサS1,S2,S3は,図3に示すように,共に熱盤20の適所に埋設されており,型枠30B及びシール部材31b,32bとの接合された厚みh1,型枠30B自体に近似する厚みh2,ブロック40Bの厚みHが検出できるようになっている。
【0049】
センサS1,S2,S3は,構造的にみると同一で,図6に示すように,ロッド101の長さによって違いがあるのみである。ロッド101にはその全周に溝が形成されていて,そこにリングスプリング102が嵌められており,コイルスプリング103によって外方向に付勢されている。なお,コイルスプリング103の反対側は,スプリング押さえによって固着されている。ロッド101の外側端部は,熱盤20に当接するものであり,反対の内側はトグル機構を有するリードスイッチ内蔵のマイクロスイッチの入力端子に接続されている。
【0050】
次に,上述のようにして形成された本実施の形態の多段圧密加工装置100の各部の構成から,全体制御を行う制御装置60について図7を参照して説明する。
本実施の形態の多段圧密加工装置100の制御装置60は,図7に示されたように構成されている。即ち,マイクロコンピュータCPUで制御され,プレス機構10,4段の熱盤20に配設したセンサS(S1,S2,S3),3段の被加工木材Wを配置する熱盤20に配設したバルブ(V1,V2,V3,V4,V5,V11,V12,V13,V20)はマイクロコンピュータCPUの出力を受けている。
また,図示しない高温加熱蒸気供給装置70の稼動,蒸気供給装置80の稼動,冷却水供給装置90の稼動,圧力計P1及び圧力計P2の出力及び安全確認スイッチSWの出力が入力されている。
【0051】
ここで,本実施の形態の塑性加工木材PWの原材料となる加工前の被加工木材Wは,図8に示すように,前以って所定の寸法(厚み・幅・長さ)に製材されたもので,木口面(2面),板目面(木表及び木裏の2面),柾目面(2面)を有するものである。ここで,上面が木表側板目面B2となり,裏面が木裏側板目面B1となる。
なお,加熱圧縮による割れを防止するためには,被加工木材Wに,木口面A及び樹心側柾目面Cと直角に交わる面との境界線BLと木口面Aの年輪線RLとがなす鋭角側の交差角度θが全て45度〜85度の範囲内である柾目材を用いるのがよい。
【0052】
本実施の形態の多段圧密加工装置100は,図5(a)に示す加工前の被加工木材Wから図5(f)に示す塑性加工木材PWを製造するにあたり,まず,図5(a)に示すように,多段圧密加工装置100におけるプレス機構10の上側の熱盤20Bに対して下側の熱盤20Aが下降し,予め所定の条件に乾燥させた加工前の被加工木材Wが,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aで形成される内部空間Y内に載置される。
【0053】
続いて,図5(b)に示すように,可動側の下側の熱盤20A上に載置された加工前の被加工木材Wを上側の熱盤20B側に上昇させ,加工前の被加工木材Wの上面,即ち,本実施の形態においては,被加工木材Wの木表側板目面B2に上側の熱盤20Bを当接させる。そして,上側の熱盤20Bの媒体経路22及び下側の熱盤20Aの媒体経路22に所定温度(例えば,110〜160〔℃〕)の蒸気が通され,被加工木材Wの温度を上昇させる。
【0054】
次に,図5(c)に示すように,可動側の下側の熱盤20Aの上昇により,媒体経路22からの熱エネルギの供給及び蒸気導入路54を通って内部空間Y内にも蒸気が供給され,内部空間Y内が所定温度(例えば,110〜160〔℃〕)に保持される。そして,上側の熱盤20Bの圧縮圧力が所定圧力(例えば,2〜5〔MPa〕)で圧縮され,加工前の被加工木材Wが上側の熱盤20Bと下側の熱盤20Aによって所定時間(例えば,5〜40〔min:分〕)加熱圧縮される。なお,このときの圧縮圧力は,割れを防止するために,加工前の被加工木材Wの温度上昇,即ち,加工前の被加工木材Wの内部の温度の伝達状態に応じて徐々に大きくするのが望ましく,加熱圧縮の時間も伝達時間を考慮して設定するのが好ましい。
【0055】
更に,図5(d)に示すように,下側の熱盤20Aの周縁部が上側の熱盤20Bの型枠30Bの厚みh1の間隔以下となると,可動側の下側の熱盤20Aの上昇により,媒体経路22からの熱エネルギの供給の他に,内部空間Y内にも所定温度(例えば,150〜210〔℃〕)に保持されるように,例えば,150〜210〔℃〕の蒸気が通され,被加工木材Wの周囲の温度を上昇させる。
ここで,加工前の被加工木材Wを塑性加工する場合,厚みHのブロック40によって加工前の被加工木材Wがの圧縮の停止が行われると,上側の熱盤20Bの型枠30Bに配設されたシール部材31b,32bによって,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aにて形成される内部空間Yが密閉状態となっているから,内部空間Yの密閉状態で上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aによる圧縮圧力が保持されたまま,所定温度(例えば,150〜210〔℃〕)まで,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20A及び内部空間Y内の温度が上昇される。
【0056】
更に,図5(d)に示す内部空間Yの密閉状態で,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aの圧縮圧力が維持され,かつ,内部空間Yが所定温度(例えば,150〜210〔℃〕)のまま,所定時間(例えば,30〜120〔min〕)保持され,この後の冷却圧縮を解除したときに,戻りのない塑性加工木材PWを形成するための加熱処理が行われる。このとき,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aで密閉状態とされている内部空間Yを介して,加工前の被加工木材Wの周囲面とその内部とでは高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっている。
そして,このように,本実施の形態においては,加工前の被加工木材Wの表裏面に上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aが面接触し,密閉状態の内部空間Yに保持され,加工前の被加工木材Wは,厚み全体が十分に加熱され,効率よく圧縮変形されることになる。
【0057】
また,図5(e)に示すように,内部空間Yの密閉状態で加熱圧縮処理が行われているときに,蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間Yの蒸気圧が検出され,バルブV5が適宜,開閉される。これにより,蒸気排出口52a,蒸気排出路52を通って内部空間Yからドレン配管53側に高温高圧の水蒸気が排出され,特に,加工前の気材の外層部分の含水率に基づく余分な内部空間Y内の水分が除去され,内部空間Y内が所定の蒸気圧となるように調節される。また,必要に応じて,バルブV6に接続された水蒸気導入路54,水蒸気導入口54aを介して内部空間Yに所定の蒸気圧を供給することができる。
更に,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aによる加熱圧縮から冷却圧縮へと移行する直前に,蒸気圧制御処理としてバルブV5が開状態とされることで蒸気導入口54a,蒸気導入路54を通って内部空間Yからドレン配管53側に高温高圧の水蒸気が排出される。これにより,木材の加熱圧縮処理の固定化,所謂,木材の固定化がより促進されることとなる。
【0058】
続いて,図5(e)に示すように,上側の熱盤20Bの媒体経路22及び下側の熱盤20Aの媒体経路22に常温の冷却水が通されることによって,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aが常温前後まで冷却され,材料によって異なる所定時間(例えば,10〜120〔min〕)保持される。なお,このときの可動側の下側の熱盤20Aに対する上側の熱盤20Bの圧縮圧力は,加熱圧縮の際の圧力と同じ所定圧力(例えば,2〜5〔MPa〕)に保持されたまま,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aが冷却される。
そして,最後に,図5(f)に示すように,固定側の下側の熱盤20Aに対して上側の熱盤20Bを上昇させ,内部空間Yから仕上がり品である塑性加工木材PWが取出されることで一連の処理工程が終了する。
【0059】
なお,このように,本実施の形態においては,蒸気圧を制御し,徐々に解圧して内部蒸気圧を開放し,また,冷却によって木材内の水蒸気圧を下げ固定化するので,冷却圧縮を解除したときの膨らみ変形やパンクと呼ばれる表面割れのない塑性加工木材PWを形成できる。即ち,本実施の形態の塑性加工木材PWは,圧縮解除後に膨らみ変形や表面割れを生じることがなくて安定した品質が確保されている。
【0060】
本実施の形態では,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aを用いて圧縮し,固定化して塑性加工木材PWを得ているが,本発明を実施する場合には,通常の電子レンジが使用するマイクロ波の周波数帯域よりも若干周波数の低い高周波で誘電加熱し,加工前の被加工木材Wを加熱し,圧縮し,固定化しても,塑性加工木材PWを得ることができる。
【0061】
本実施の形態の多段圧密加工装置100の図7に示す制御装置60は,次のように制御動作する。
まず,多段圧密加工装置100の電源投入によって,図示しない初期化を行い,本プログラムが動作を開始する。ステップS1で被加工木材Wの積載配置を行い,ステップS2でその完了を判断する。この完了は被加工木材Wの配置を画像情報として検出してもよいし,近接スイッチによって被加工木材Wの配置を検出してもよい。また,ステップS2の動作を省略してもよい。ステップS2で被加工木材Wの積載配置の完了が検出されると,ステップS3で安全確認スイッチSWのONの入力を確認する。
【0062】
ステップS3で安全確認スイッチSWのONの入力が確認されると,ステップS4でプレス機構10の油圧系を駆動する。同時にステップS5で全熱盤20の加熱を開始する。
全熱盤20には,バルブV1及びバルブV2及びバルブV3並びにバルブV4を開とする。なお,他のバルブは閉のままである。
次に,ステップS6で第1段の熱盤20Aと熱盤20Bとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったか否かを判断し,ブロック40の厚みHになってないとき,続いて,ステップS8で第2段の熱盤20Bと熱盤20Cとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったか否かを判断し,ブロック40の厚みHになってないとき,引き続いて,ステップS10で第3段の熱盤20Cと熱盤20Dとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったか否かを判断し,ブロック40の厚みHになってないとき,このルーチンを脱して,ステップS6乃至ステップS11のルーチンを繰り返し実行する。
【0063】
ステップS6で第1段の熱盤20Aと熱盤20Bとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったと判断したとき,ステップS7で第1段の被加工木材Wの厚みがブロック40の厚みHになったときのサブルーチンである「第1段ルーチン」を実行する。また,ステップS8で第2段の熱盤20Bと熱盤20Cとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったと判断したとき,ステップS9で第2段の被加工木材Wの厚みがブロック40の厚みHになったときのサブルーチンである「第2段ルーチン」を実行する。更に,ステップS10で第3段の熱盤20Cと熱盤20Dとの対の被加工木材Wの厚みが,ブロック40の厚みHになったと判断したとき,ステップS11で第3段の被加工木材Wの厚みがブロック40の厚みHになったときのサブルーチンである「第3段ルーチン」を実行する。
【0064】
次に,制御装置60のメインルーチンでコールされるサブルーチンのフローチャートについて説明する。なお,「第1段ルーチン」乃至「第3段ルーチン」は基本的に共通であるから,「第n段ルーチン」として説明する。
このルーチンがコールされると,ステップS21で時間を測定し,T1時間が経過するまで,ステップS22の処理を行いこのルーチンを脱する。ステップS22では,バルブV1,バルブV2,バルブV3,バルブV6を開とし,また,バルブV4,バルブV5も半開とする。即ち,図2に示すように,下側の熱盤20A及び上側の熱盤20B及び型枠30B間で形成された密閉空間Yに蒸気を供給する。そして,ステップS21で時間を測定し,T1時間が経過するまで,ステップS21及びステップS22のルーチンに留まる。
【0065】
ステップS21でT1時間の経過が確認されると,ステップS23でT2時間の経過の確認を行う。ステップS23でT2時間の経過が確認されないと,ステップS24でバルブV20,バルブV2,バルブV3,バルブV6を開とし,また,バルブV4,バルブV5も半開または閉とする。即ち,高温加熱蒸気供給装置70の高温加熱蒸気を媒体経路22及び内部空間Y内に供給する。そして,ステップS23でT2時間が経過するまで高温条件下におき植物繊維を柔らかくし,固定化を開始する。本実施の形態では,高温加熱蒸気供給装置70の高温加熱蒸気を用いているが,本発明を実施する場合には,バルブV1からの蒸気供給源から蒸気を供給してもよい。高温度の蒸気を使用するか否かは生産効率,品質管理の問題である。ステップS23及びステップS24は被加工木材Wの植物繊維を軟化させ,その形を固定する処理である。
【0066】
ステップS23でT2時間の経過が確認されると,ステップS25でバルブV20,バルブV1,バルブV2,バルブV3,バルブV6を閉じると同時に,バルブV4,バルブV5を開き,ドレンを排出する。また,バルブV11,バルブV12,バルブV13を開き,冷却水を供給し,被加工木材Wの温度を降下させて,固定化をより一層安定したものとすると共に,歪を最小限とする。ステップS26で木材温度が90℃以下に低下しているか判断する。木材温度が90℃以下に低下するまで,ステップS21,ステップS23,ステップS25,ステップS26を通るルーチンの処理となる。ステップS26で木材温度が90℃以下に低下していると判断すると,ステップS27でプレス機構10の押圧力を解圧する。
【0067】
このように,本実施の形態の制御装置60においては,蒸気圧を制御し,徐々に解圧して内部蒸気圧を開放し,また,冷却によって木材内の水蒸気圧を下げ固定化するので,冷却圧縮を解除したときの膨らみ変形やパンクと呼ばれる表面割れのない塑性加工木材PWを形成し,安定した品質が確保されている。
本実施の形態では,上側の熱盤20B及び下側の熱盤20Aを用いて圧縮し,固定化して塑性加工木材PWを得ているが,本発明を実施する場合には,通常の電子レンジが使用するマイクロ波の周波数帯域よりも若干周波数の低い高周波で誘電加熱し,加工前の被加工木材Wを加熱し,圧縮し,固定化しても,塑性加工木材PWを得ることができる。
【0068】
以上のように,本実施の形態の多段圧密加工装置は,被加工木材Wを上下の面で挟むように併設し,被加工木材Wを加熱する複数枚の熱盤20と,被加工木材Wを上下の面で挟む熱盤20に被加工木材Wを圧縮する外力を与えるプレス機構10と,熱盤20が被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱及び圧縮を開始し,複数枚の熱盤20は熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,プレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行うマイクロコンピュータCPUからなる制御装置とを具備するものである。
【0069】
このように本実施の形態の多段圧密加工装置は,被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱及び圧縮する複数枚の熱盤20が,被加工木材Wの加熱及び圧縮を開始し,熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,被加工木材Wを上下の面で挟む熱盤20に被加工木材Wを圧縮する外力を与えるプレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行うものである。
【0070】
したがって,仮に被加工木材Wに硬い,軟らかいがあっても,被加工木材Wを定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材Wが圧縮され,次いで軟らかい被加工木材Wが圧縮されなくなったとき,特定の硬い被加工木材Wのみを圧縮することになるから,プレス機構10の押圧エネルギが集中して使用でき,硬い被加工木材Wであっても押圧エネルギが集中することで容易に圧縮力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,そして,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができる。
【0071】
ところが,仮に被加工木材Wに硬いもの,軟らかいものがあっても,最初に軟らかい被加工木材Wが圧縮され,次いで軟らかい被加工木材Wが圧縮されなくなったとき,即ち,被加工木材Wを定められたブロック40の厚みHまで圧縮したとき,その段の被加工木材Wはそれ以上圧縮されなくなり,プレス機構10からの圧縮するエネルギは,他の段にある被加工木材Wの圧縮に使用されることになる。この動作は,被加工木材Wを定められたブロック40の厚みHまで圧縮したとき,その段の被加工木材Wはそれ以上圧縮されなくなり,自動的に他の段にのみ圧縮するエネルギが与えられる制御が行われるものである。
【0072】
即ち,被加工木材Wを上下の面で挟むように併設し,被加工木材Wを加熱する一対以上の対からなる熱盤20と,被加工木材Wを上下の面で挟む対の熱盤20によって被加工木材Wを圧縮するプレス機構10と,対の熱盤20が被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wの加熱及び圧縮を開始し,対の熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,プレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wを挟む対の熱盤20の圧縮制御を分離して行うものである。
【0073】
したがって,仮に被加工木材Wに硬い,軟らかいがあっても,被加工木材Wを定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材Wが圧縮され,次いで軟らかい被加工木材Wが圧縮されなくなったとき,特定の硬い被加工木材Wのみを圧縮することになるから,プレス機構10の押圧エネルギが集中して使用でき,硬い被加工木材Wであっても押圧エネルギが集中することで容易に圧縮力が得られる。
【0074】
また,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触によるとしたものである。
したがって,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触によるものであるから,機械的に特定厚みが決定されるから,その特定された厚み以上に圧縮されないから,高精度に塑性加工木材の厚みを設定できる。
【0075】
勿論,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,近接スイッチまたはレーザ光または光,赤外線,紫外線の反射等によって,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの検出を行うことができる。特に,本発明の実施の形態では,特定厚みHのブロック40とした事例で説明したが,この場合には,制御装置60を廃止することもできる。また,塑性加工木材PWとブロック40の厚みを調整することにより,塑性加工木材PWの仕上がり精度をより高くすることもできる。
【0076】
また,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40を複数に分割して相互間の接触による電気的導通としたものである。
したがって,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック40相互間の接触による電気的導通としたものであるから,機械的に特定厚みが決定されるから,その特定された厚みを電気的接触として検出でき,電気的導通か否かによって被加工木材Wの温度制御を目的に応じて行うことができる。
【0077】
上記実施の形態の多段圧密加工装置は,被加工木材Wを上下の面で挟むように併設し,被加工木材Wを加熱する複数枚の熱盤20と,被加工木材Wを上下の面で挟む熱盤20に被加工木材Wを圧縮する外力を与えるプレス機構10とを具備し,熱盤20が被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱及び圧縮を開始し,複数枚の熱盤20は熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,プレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮制御を行う発明として捉える事ができる。
【0078】
本実施の形態にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材Wを熱盤20の上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱20及び圧縮する複数枚の熱盤20が,被加工木材Wの加熱及び圧縮を開始し,また,熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,被加工木材Wを熱盤20の上下の面で挟んで圧縮するプレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮を分離して行うものである。
【0079】
したがって,仮に被加工木材Wに硬い材料,軟らかい材料があっても,被加工木材Wの圧縮を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材Wが圧縮され,それ以上の圧縮が特定厚みHのブロック40等の作用により,行われないから寸法精度が所定の値となり,次いで,特定の硬い被加工木材Wのみを圧縮するから,プレス機構10の押圧エネルギが特定の硬い被加工木材Wのみに集中して使用でき,硬い被加工木材Wであっても押圧エネルギの集中で容易に押圧力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができ,作業性がよい。
【0080】
上記実施の形態の多段圧密加工装置は,被加工木材Wを上下の面で挟むように併設し,被加工木材Wを加熱する複数枚の熱盤20と,被加工木材Wを上下の面で挟む熱盤20に被加工木材Wを圧縮するプレス機構10とを具備し,熱盤20が被加工木材Wを上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱及び圧縮を開始し,複数枚の熱盤20は熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,プレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行う多段圧密加工方法の発明として捉える事ができる。
【0081】
本実施の形態にかかる多段圧密加工方法は,被加工木材Wを熱盤20の上下の面で挟み,被加工木材Wを加熱20及び圧縮する複数枚の熱盤20が,被加工木材Wの加熱及び圧縮を開始し,また,熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,被加工木材Wを熱盤20の上下の面で挟んで圧縮するプレス機構10の押圧エネルギを,特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行うものである。
【0082】
したがって,仮に被加工木材Wに硬い,軟らかいがあっても,被加工木材Wの圧縮を定められた特定厚みまで圧縮し,最初に軟らかい被加工木材Wが圧縮され,それ以上の圧縮が行われないから寸法精度が所定の値となり,次いで,特定の硬い被加工木材Wのみを圧縮するから,プレス機構10の押圧エネルギが特定の硬い被加工木材Wのみに集中して使用でき,硬い被加工木材Wであっても押圧エネルギの集中で容易に押圧力が得られる。また,圧縮が完了した木材から固定化制御に入り,固定化を早期に完了させ,開放によるエネルギの流出を最小限度に抑えることができ,作業性がよい。
【0083】
また,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触によるとしたものである。
したがって,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触によるものであるから,機械的に特定厚みが決定され,その特定された厚み以上に圧縮されないから,高精度に塑性加工木材の厚みを設定できる。
【0084】
また,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触による電気的導通としたものである。
したがって,被加工木材Wの厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触による電気的導通としたものであるから,機械的に特定厚みが決定されるから,その特定された厚みを電気的接触として検出するものであるから,電気的導通によって被加工木材Wの温度制御を目的に応じて行うことができる。
【0085】
上記実施の形態の多段圧密加工装置において,熱盤20は,被加工木材Wを2枚の上下の面で挟むように併設され,被加工木材Wを加熱する媒体経路22等の加熱源を内蔵するものであればよい。
また,上記プレス機構10は,被加工木材Wを熱盤20の上下の面で挟んだ被加工木材Wを圧縮する外力を与えるものであればよい。
そして,上記マイクロコンピュータCPUからなる制御装置60は,熱盤20が被加工木材Wを加熱及び圧縮を開始し,複数枚の熱盤20は熱盤20による圧縮で被加工木材Wの厚みが特定厚みHに到達したとき,被加工木材Wの圧縮を停止し,プレス機構10の押圧エネルギを特定厚みに到達していない被加工木材Wの圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した被加工木材Wと特定厚みに到達していない被加工木材Wの温度制御を分離して行うものである。
【0086】
上記実施の形態の多段圧密加工装置において,被加工木材Wの厚みが特定厚みHに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤20との接触またはブロック40相互間の接触によるものである。
ここで,特定厚みのブロック40とは,1個以上で塑性加工木材の固定した特定厚みとなるものであり,平面が正方形の柱状のもの,平面が正方形の柱状のもの,平面が円形の柱状のもの等その平面形状を問うものではなく,特定厚みが維持できるものであればよい。
【0087】
上記実施の形態の多段圧密加工装置において,被加工木材Wの厚みが特定厚みHに到達したときの判断は,対向する熱盤20の一方または両方に配設した特定厚みのブロック40と対向する熱盤との接触またはブロック40相互間の接触による電気的導通としたものである。
ここで,特定厚みのブロック40と対向する熱盤との接触またはブロック40相互間の接触による電気的導通とは,特定厚みになったことを特定厚みのブロック40と対向する熱盤との接触またはブロック40相互間の接触によって検出できればよい。
【符号の説明】
【0088】
W(W1,W2,W3) 被加工木材
PW(PW1,PW2,PW3) 塑性加工木材
Y 内部空間
SW 安全確認スイッチ
10 プレス機構
20(20A,20B,20C,20D) 熱盤
22 媒体経路
30B,30C,30D 型枠
40 ブロック
60 制御装置
70 高温加熱蒸気供給装置
80 蒸気供給装置
90 冷却水供給装置
100 多段圧密加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工木材を上下の面で挟むように併設し,前記被加工木材を加熱する一対以上の対からなる熱盤と,
前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構と,
前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用することを特徴とする多段圧密加工装置。
【請求項2】
被加工木材を上下の面で挟むように併設し,前記被加工木材を加熱する一対以上の対からなる熱盤と,
前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構と,
前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材を挟む対の熱盤の温度制御を分離して行う制御装置と
を具備することを特徴とする多段圧密加工装置。
【請求項3】
前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の当接によるとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多段圧密加工装置。
【請求項4】
前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の多段圧密加工装置。
【請求項5】
被加工木材を上下の面で挟むように併設し,前記被加工木材を加熱する一対以上の対からなる熱盤と,
前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構とを具備する多段圧密加工装置において,
前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用することを特徴とする多段圧密加工方法。
【請求項6】
被加工木材を上下の面で挟むように併設し,前記被加工木材を加熱する一対以上の対からなる熱盤と,
前記被加工木材を上下の面で挟む対の熱盤によって前記被加工木材を圧縮するプレス機構とを具備する多段圧密加工装置において,
前記対の熱盤が前記被加工木材を上下の面で挟み,前記被加工木材の加熱及び圧縮を開始し,前記対の熱盤による圧縮で前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したとき,前記被加工木材の圧縮を停止し,前記プレス機構の押圧エネルギを特定厚みに到達していない前記被加工木材の圧縮に使用すると共に,特定厚みに到達した前記被加工木材と特定厚みに到達していない前記被加工木材を挟む対の熱盤の温度制御を分離して行うことを特徴とする多段圧密加工方法。
【請求項7】
前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の当接によるとしたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多段圧密加工方法。
【請求項8】
前記被加工木材の厚みが特定厚みに到達したときの判断は,対向する熱盤の一方または両方に配設した特定厚みのブロックと対向する熱盤との接触またはブロック相互間の接触による電気的信号としたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載の多段圧密加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−82076(P2013−82076A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221675(P2011−221675)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(501115689)マイウッド・ツー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】