説明

多段式ストロー

【課題】低温下での使用であってもストローの割れや亀裂が発生せず、また、先端の先鋭度を過度に高めなくても、種々の材質からなる蓋を容易に貫通することのできる、成形性、外観に優れ、飲み残しの少ない生分解性を有する多段式ストローを得る。
【解決手段】径の異なる2本以上の管が伸縮自在に組み合わされた多段式ストロー10であって、前記管のうち、最も内側に位置する最内管1が、厚みが0.1mm〜0.6mmであり、曲げ弾性率1000〜1600MPaの生分解性樹脂からなり、外側に位置する外管2が、厚みが0.05mm〜0.4mmであり、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器内の飲料を吸引するための多段式ストローに関し、詳しくは生分解性を有する飲料用の多段式ストローに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、飲料製品として、紙、プラスチック、あるいはこれらの複合物などの材質からなる様々なサイズ、形状の飲料容器に、各種飲料を充填したたものが市販されている。
このような飲料製品には、飲料を吸引するためのストローが包材に包装され貼付されていることが多く、このようなストローとして、内管と外管が伸縮自在に組み合わされた合成樹脂製の二段式ストローが広く使用されている。
【0003】
また、このような飲料容器の蓋には、紙、アルミニウム箔、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等の様々の材料を積層した複合シートが用いられることが多く、その厚みも千差万別である。
そのため、二段式ストローの内管には、このような様々の材質からなる蓋に突き刺さり、貫通可能であることが要求される。すなわち、これの内管には突き刺し時に曲がってしまい、突き刺し不能とならないような剛性や、その先端が蓋を突き刺した際に割れないだけの硬度等も要求される。
【0004】
このような二段式ストローの内管に使用される樹脂としては、例えば特開昭60−256414号公報にプロピレンホモポリマーが開示されている。
しかしながら、従来の二段式ストローの内管を、種々の材質からなる蓋に突き刺し貫通させようとすると、突き刺さらずに曲がってしまって貫通しない場合や、蓋を貫通したとしてもその先端が割れたり欠けたりしてしまう場合があった。
【0005】
また、このような二段式ストローを寒冷地で使用したり、冷蔵庫内などの低温環境から取り出した直後に使用したりすると、内管の先端を飲料容器の蓋に突き刺した場合に先端やそれ以外の部分に亀裂、割れ、欠け等が発生する場合もあった。とりわけエチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物が使用された蓋は固く、内管が貫通しづらかった。
【0006】
また、貫通性を改善するために、無機充填剤のタルクを添加し剛性を高めることが考えられるが、剛性を高めるためには多量に添加する必要があり、その結果、成形性の低下や着色による外観の悪化が引き起こされるという問題があった。
さらに、貫通性を改善する為に、内管の先端面の角度を非常に小さくして先鋭度を高めることも考えられる。
【0007】
しかし、そのように内管の先端を鋭利にした場合には、二段式ストローを備えた飲料容器を輸送したり、陳列したりする時などに、内管の先端がストローの包材を突き破り、飛び出してしまう可能性があり、また、このような二段式ストローを使用して飲料を飲んだ場合に、飲み残しが多くなるという問題があった。
これらの問題を解決するために、特開2003−290016号公報には、ポリプロピレン系樹脂に核剤を配合した多段式ストローが提案されている。
【0008】
また、近年、大量に使用され廃棄されるプラスチックの処理が大きな社会問題となっている。このプラスチックの廃棄による河川、海洋、土壌の汚染を緩和する為に生分解性を有するプラスチックの出現が待望され、生分解性を有するプラスチックの開発がなされている。
【0009】
しかし、生分解性樹脂の中で利用の進んでいる、例えばポリブチレンサクシネート系の生分解性樹脂は、ポリエチレン類似の特性を有し、比較的成形性良いが、ストローに使用する場合には軟らかく、剛性の不足を厚みでカバーする必要があり、コスト面で不利となり実用化されていない。また、ポリ乳酸系の生分解性樹脂は、硬くもろい性質があり、成形性も良くないため、ストローに使用されていない。
【0010】
特表2003−518998号公報には、ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含むことを特徴とする生分解性を有するストローが提案されているが、多段式ストローについての開示はなく、多段式ストローに必要な特性の有無についても開示がない。
さらに、特開2004−204143号公報には、ポリ乳酸を50質量%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂と層状珪酸塩からなる組成物が提案されており、該樹脂組成物からなるパイプの具体的用途としてストローが例示されている。
【0011】
また、ポリ乳酸以外の生分解性樹脂として、ジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステルが例示されている。しかし、この先行発明においても、多段式ストローについての開示はなく、多段式ストローに必要な特性の有無についても開示がない。
このように、多段式ストローに適した生分解性樹脂がなく実用化されていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭60−256414号公報
【特許文献2】特開2003−290016号公報
【特許文献3】特表2003−518998号公報
【特許文献4】特開2004−204143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、たとえ低温下での使用であってもストローの割れや亀裂が発生せず、また、先端の先鋭度を過度に高めなくても、種々の材質からなる蓋を容易に貫通することのできる、成形性、外観に優れ、飲み残しの少ない生分解性を有する多段式ストローを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、特定の生分解性樹脂組成物からなる最内管と外管を備えた多段式ストローを用いることにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の(1)〜(5)に示される多段式ストローである。
(1)径の異なる2本以上の管が伸縮自在に組み合わされた多段式ストローにおいて、前記管のうち、最も内側に位置する最内管が、厚みが0.1mm〜0.6mmであり、曲げ弾性率1000〜1600MPaの生分解性樹脂からなり、外側に位置する外管が、厚みが0.05mm〜0.4mmであり、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂からなることを特徴とする多段式ストロー。
【0014】
(2)(1)において、生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物50〜90重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体10〜50重量%からなることを特徴とする多段式ストロー。
(3)(2)において、生分解性樹脂には、この生分解性樹脂100重量部に対して0〜10重量部の生分解性可塑剤が添加されていることを特徴とする多段式ストロー。
【0015】
(4)(1)において、最内管をなす生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物50〜90重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体10〜50重量%からなり、外管をなす生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物70〜100重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体0〜30重量%からなることを特徴とする多段式ストロー。
【0016】
(5)(4)において、最内管および外管をなす生分解性樹脂には、この生分解性樹脂100重量部に対して0〜10重量部の生分解性可塑剤が添加されていることを特徴とする多段式ストロー。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多段式ストローにあっては、径の異なる2本以上の管が伸縮自在に組み合わされた多段式ストローをなす管のうち、最も内側に位置する最内管が、曲げ弾性率が1000〜1600MPaの生分解性樹脂からなり、外側に位置する外管が、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂からなるので、たとえ低温下での使用であってもストローの割れや亀裂が発生せず、また、先端の先鋭度を過度に高めなくても、種々の材質からなる蓋を容易に貫通することのできる、成形性、外観に優れ、飲み残しの少ない生分解性を有する多段式ストローを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の多段式ストローの一実施形態を示すもので、この実施形態は、二段式ストローであり、図1(a)は、内管を外管内に収容した状態を示し、図1(b)は、内管を引き出した状態を示す。
【0019】
この二段式ストロー10は、径の異なる内管1と外管2とが伸縮自在に組み合わされたものである。以下の説明においては、この二段式ストローを例示して説明する。この例においては、内管1が最も内側に位置する最内管である。
この例の2段式ストロー10は、その外管2の両端に、第1の絞り部3と第2の絞り部4が形成され、これら絞り部3、4の間の先端側には第3の絞り部5が形成されている。また内管1の基端部にはストッパ部6が形成されている。
【0020】
よって、この2段式ストロー10を使用時に引き伸ばしても、ストッパ部6が第1の絞り部および第2の絞り部4に引っ掛って内管1が外管2から抜けず、かつ、一旦引伸ばされた後は、ストッパ部6が第3の絞り部5に引っ掛って、容易に縮まないようになっている。
また、この例では、内管の先端面7が内管1の長さ方向に対してθ=45〜60度の角度になるように、斜めに形成されている。
【0021】
この2段式ストロー10の内管1は、厚みが0.1mm〜0.6mm、好ましくは0.2mm〜0.5mmであり、曲げ弾性率1000〜1600MPaの生分解性樹脂からなる。曲げ弾性率が1000MPa未満では、ストローの厚みを極端に厚くせざるを得なくなり、ストッパー部6の安定した成形が困難になる恐れがあり、1600MPaを越えると固く、脆くなり、また押出成形安定性が低下するためストロー径の寸法精度が低下し、ストローの嵌合部の密着性が低下する恐れがある。また、厚さが0.1mm未満では飲料容器に突き刺したときにストロー先端が変形しやすく、0.6mmを越えるとコスト的に不利であるばかりか、ストッパ部6の成形が困難となる。
【0022】
この内管1をなす生分解性樹脂としては、第1成分となるポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれら共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物50〜90重量%と、第2成分となるポリ乳酸および/またはその共重合体10〜50重量%からなることが好ましい。なお、上記「これら共重合体からなる更なる共重合体または変性物」とは、これらの共重合体の少なくとも1種以上を構成成分として含有する共重合体または変性物を言うものである。
【0023】
第1成分となるポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物の配合量が、50重量%未満では、得られる内管1の剛性が過度に大きくなり、成形性も悪化する。90重量%を越えると、内管1の剛性が過度に小さくなる。
【0024】
また、必要に応じて、成形性を向上させるため。これに第3成分として、生分解性可塑剤を配合してもよく、その場合の配合量は上記第1成分と第2成分とからなる生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部とされる。生分解性可塑剤が10重量部を越えると、ブリードアウトが生じ、内管1の剛性が大きく低下する。
【0025】
生分解性樹脂の第1成分であるポリブチレンサクシネート系樹脂は、ポリオレフィンに類似の成形性を有しており、二段式ストロー10の最内管1と外管2の径の寸法精度を要求される用途には適しているが、一般に剛性が低いので、内管1に使用する場合、厚みを極端に厚くする必要があり、ストッパー部6の安定した成形が困難になる恐れがある。
このため、第2成分であるポリ乳酸系樹脂を、そのブレンド比率が10〜50重量%の範囲となるようにブレンドすることによって、成形性を損ねることなく、内管に必要な曲げ弾性率を得ることができる。
【0026】
第2成分であるポリ乳酸とは、L−、D−またはLD−乳酸単位を主成分とする重合体であって、少量共重合体成分として他のヒドロキシカルボン酸単位を含んでもよく、少量の鎖延長剤残基を含んでも良い。また、ポリ乳酸共重合体においては、乳酸と共重合するモノマーとして、乳酸の光学異性体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪産、4−ヒドロキシ酪産、2−ヒドロキシ−n−酪産、2−ヒドロキシ−3,3ジメチル酪産、2−ヒドロキシ−3−メチル酪産、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチルラクトン、バレロラクトン等のラクトン類があげられる。
【0027】
第3成分である生分解性可塑剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、エーテルエステル系可塑剤、その他添加量無制限の食品添加物等が使用できる。これらは単独でも複数併用しても使用できる。
【0028】
この2段式ストロー10の外側に位置する外管2は、厚みが0.05mm〜0.4mm、好ましくは0.15mm〜0.3mmであり、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂からなる。外管の厚みが0.05mmより薄い場合、ストローの嵌合部で内管を引伸ばす力が加わった時、絞り部3が力に負けて広がり内管が抜けてしまう恐れがある。外管の厚みが0.4mmより厚くなると、ストローを引伸ばすときに、内管のストッパー部が絞り部5を通過するときに絞り部5が外側へ広がりにくくなり、引伸ばしの抵抗が大きくなり、場合によっては引伸ばせない恐れがある。
【0029】
これは単純に厚みだけに依存するわけでなく、使用する生分解性樹脂の剛性にも関係し、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂が好ましい。曲げ弾性率800MPa未満の場合外管が軟らかくなりすぎ、ストローが潰れる等の問題が発生する恐れがあり、1300MPaを超えると引伸ばし時の抵抗が大きくなる恐れがあると共に内管との密着性が低下し、気密性が得られず、飲料を吸引時に嵌合部から空気も吸い込み飲みずらいという問題が発生する恐れがある。
【0030】
この外管2に使用される生分解性樹脂は、内管1に使用される生分解性樹脂と同一または同様のものから選択できるが、好ましくは生分解性樹脂の第1成分であるポリブチレンサクシネート系樹脂の配合比率が70〜100重量%で、第2成分であるポリ乳酸系樹脂の配合比率が0〜30重量%であるものが好ましい。この場合、ポリブチレンサクシネート系樹脂の配合比率が70重量%未満では、得られる外管2の剛性が過度に大きくなり、成形性も悪くなる。また、内管1の場合と同様に第3成分である生分解性可塑剤を配合してもよく、その配合量は同様に生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部となされる。
【0031】
また、本発明で使用される生分解性樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、着色剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0032】
このような二段式ストローを製造する方法としては、上述の生分解性樹脂から、押出成形機などを使用して、内管1および外管2を作製する。次いで、内管1については、図1に示すストッパ部6を形成し、内管2については、第1の絞り部3と第3の絞り部5を形成する。この後、外管2内に内管1を挿入したのち、外管2に第2の絞り部4を形成する。これにより、引き伸ばした際に、外管2から内管1が抜けず、しかも引き伸ばした後に容易に縮まない二段式ストロー10を得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
最内管にポリブチレンサクシネート樹脂80重量%とポリ乳酸20重量%を混合した生分解性樹脂組成物(曲げ弾性率 1020MPa)を使用し、外管に同一の生分解性樹脂組成物を使用し、それぞれの厚みが、0.35mm、0.25mm、外径が4.6mm、6.0mmのストロー原管を成形し、二段式ストローを成形した。最内管のストロー先端の角度は、60°とした。
【0034】
(実施例2)
最内管にポリブチレンサクシネート樹脂60重量%とポリ乳酸40重量%とグリセリン脂肪酸エステル3重量部を混合した生分解性樹脂組成物(曲げ弾性率 1500MPa)を使用し、外管にポリブチレンサクシネート樹脂80重量%とポリ乳酸20重量%とグリセリン脂肪酸エステル3重量部を混合した生分解性樹脂組成物(曲げ弾性率 1020MPa)を使用し、それぞれの厚みが、0.30mm、0.25mm、外径が4.6mm、6.0mmのストロー原管を成形し、二段式ストローを成形した。最内管のストロー先端の角度は、60°とした。
【0035】
(実施例3)
最内管にポリブチレンサクシネート樹脂70重量%とポリ乳酸30重量%を混合した生分解性樹脂組成物(曲げ弾性率 1260MPa)を使用し、外管にポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体80重量%とポリ乳酸20重量%を混合した生分解性樹脂組成物(曲げ弾性率 850MPa)を使用し、それぞれの厚みが、0.30mm、0.25mm、外径が4.6mm、6.0mmのストロー原管を成形し、二段式ストローを成形した。最内管のストロー先端の角度は、60°とした
【0036】
(比較例1)
最内管および外管にポリブチレンサクシネート樹脂100重量%(曲げ弾性率 530MPa)を使用し、それぞれの厚みが、0.35mm、0.25mm、外径が4.6mm、6.0mmのストロー原管を成形し、二段式ストローを成形した。最内管のストロー先端の角度は、60°とした。
【0037】
(比較例2)
最内管および外管にポリ乳酸100重量%(曲げ弾性率3470MPa)を使用し、それぞれの厚みが、0.35mm、0.25mm、外径が4.6mm、6.0mmのストロー原管を成形し、二段式ストローの成形を試みたが、外管の絞り部が成形できないなどして安定したストロー成形性が得られなかったので、二段式ストローとしての性能評価は断念した。
【0038】
上記各種樹脂の曲げ弾性率は、以下のようにして測定した。
各樹脂をタンブラーでブレンドし、樹脂温度220℃で押出成形し、ストロー原管を得た。このストロー原管を数mmの長さに切断した後、プレス成形して厚さ4mmの樹脂板を作製した。プレス成形条件としては、1段目成形温度210℃、予熱時間4分30秒、脱気30秒、加圧1分(18MPa)、2段目成形温度100℃、加圧5分(18MPa)、冷却25℃、加圧3分(18MPa)で、実施した。
【0039】
得られた樹脂板を12mm幅に切削後、ダンペラーにて10mm幅に加工し、曲げ弾性率測定用試験片とした。この試験片を用い、JIS K 7171に準拠して、曲げ弾性率を測定した。なお、測定条件は、支点間距離Lを64mm、試験速度2mm/分、圧子の半径R1は5.0mm、支持台の半径R2は5.0mmとした。また、7個の試験片を用い、7つの測定値の内、最大および最小の値を除く5点平均した値を、曲げ弾性率とした。
【0040】
これらの実施例および比較例で得られた二段式ストローについて、(1)低温耐衝撃性、(2)フィルム貫通性について評価した。
物性測定方法は、以下のとおりである。
(1)低温耐衝撃性
所定の温度に24時間以上放置した直後(10秒以内)、測定雰囲気温度23℃で、デュポン衝撃試験器(東洋精器製)を使用して、台座上に載置されたストロー上に厚さ約3mmの鉄板を置き、50cmの高さから、質量200gの錘を落下させ、ストローの破壊の有無を目視で観察した。このような衝撃試験を10回行い、そのうち割れが発生した本数を測定した。
【0041】
(2)フィルム貫通性
密度0.958g/cmの高密度ポリエチレンからなる厚さ60μmの無延伸フィルムを用意し、このフィルムを2枚の円盤の間に挟み込み、しっかりと固定した。2枚の円盤には、径30mmの孔が形成され、この孔にフィルムが露出するようになっている。
この状態のフィルムに対して、先端面の角度が60°に形成された2段式ストローの内管用の押出成形品を垂直に突き刺し、貫通を試みた。押出成形品を突き刺す際の速度(貫通速度)は10m/min、押し込み深さは50mmとした。試験は10本の押出成形品に対して行い、例えば10本中、10本が貫通した場合、表中で「10/10」と表記し、10本中1本が貫通した場合、「1/10」と表記した。
これらの結果を、表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
なお、表1において、
第1成分のPBSは、ポリブチレンサクシネート(三菱化学社製 GSPla AZ91T)を示し、PBSAは、ポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子社製 #3000)を示す。
また、第2成分のポリ乳酸には、三井化学社製 LACEA H400を用いた。さらに、第3成分の生分解性可塑剤には、上述のようにグリセリン脂肪酸エステルを用いた。
【0044】
表1の結果から、本発明の二段式ストローにあっては、生分解性樹脂を使用しているのもかかわらず、低温耐衝撃性が高く、低温下においてもストローの割れ、亀裂等の発生がないことがわかる。また、貫通性も優れ、先端の鋭利性を過度に高めなくとも、種々の材質からなる蓋を容易に貫通するものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の多段式ストローの一実施形態を示すものであって、(a)内管が外管内に収納された状態を示す断面図と、(b)引き伸ばされた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・内管(最内管)、2・・・外管、10・・・二段式ストロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の異なる2本以上の管が伸縮自在に組み合わされた多段式ストローにおいて、前記管のうち、最も内側に位置する最内管が、厚みが0.1mm〜0.6mmであり、曲げ弾性率1000〜1600MPaの生分解性樹脂からなり、外側に位置する外管が、厚みが0.05mm〜0.4mmであり、曲げ弾性率800〜1300MPaの生分解性樹脂からなることを特徴とする多段式ストロー。
【請求項2】
生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物50〜90重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体10〜50重量%からなることを特徴とする請求項1記載の多段式ストロー。
【請求項3】
生分解性樹脂には、この生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の生分解性可塑剤が添加されていることを特徴とする請求項2記載の多段式ストロー。
【請求項4】
最内管をなす生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物50〜90重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体10〜50重量%からなり、
外管をなす生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)共重合体、およびこれらの共重合体からなる更なる共重合体または変性物の中から選ばれる単独または2種以上の混合物70〜100重量%、ポリ乳酸および/またはその共重合体0〜30重量%からなることを特徴とする請求項1記載の多段式ストロー。
【請求項5】
最内管および外管をなす生分解性樹脂には、この生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の生分解性可塑剤が添加されていることを特徴とする請求項4記載の多段式ストロー。

【図1】
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【公開番号】特開2006−136657(P2006−136657A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330994(P2004−330994)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(595159530)昭和電工プラスチックプロダクツ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】