説明

多気筒内燃機関用の制御方法及びシステム

【課題】センサー装置から多気筒内燃機関の気筒制御ユニットへの制御パラメータデータ通信及び操作事象の時機及び制御が、実際にリアルタイムで通信されているのと同じレベルの精度で実行されるように維持する。
【解決手段】各燃焼サイクル中に多気筒内燃機関の各気筒毎に行われる操作事象の実行は、前記操作事象の実行の時機を図り、制御するために、制御パラメータの瞬間的な値を前記内燃機関の制御ユニットに通信する段階を備えている方法によって制御されている。パラメータ信号は、標準的な通信バスネットワーク内の少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール33、34に送られて、データメッセージに組み込まれ、同時一斉送信によってコントローラインターフェースモジュールへ通信される。通信バスネットワークを介する送信によって生じるリアルタイムのメッセージ通信からの偏差を、推定値の計算によって補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関のための制御方法及びシステムに、特に、船舶に搭載される推進機関として使用するための多気筒舶用ディーゼルエンジンに関する。
より具体的には、本発明は、多気筒内燃機関の各気筒の各燃焼サイクル中に、エンジンの各回転中に時間で変動する制御パラメータに応じて行われる、操作事象の実行の電子制御に関する。操作事象を網羅しているわけではないが、代表的には、操作事象の実行は、各燃焼サイクル中に適時に制御されることになるが、これには、燃料の噴射、着火、吸気及び排気弁の作動、及び滑材剤と圧縮空気の気筒への供給、の瞬間が含まれる。
【0002】
制御パラメータは、代表的には、クランク軸の回りに規則的に分布配置されている複数の個々の感知点で少なくとも1つのセンサー装置によって捕捉される、瞬間的なクランク軸角度位置である。
【背景技術】
【0003】
本発明が関係する種類の制御方法及びシステムは、当該技術では周知であり、例えば、本出願者に帰属しており、制御システム又はその重要な部品の故障によって生じる操作の中断という危険性を最小にするため高度なエラー許容性を達成するという主要な目的を有する制御システムを開示している日本特許第3483743B2号からもよく知られている。これらの目的は、先行技術システムを、2つの中央エンジン制御ユニット、エンジンクランク軸の角度位置と速度を検出するための2つの別個のセンサー装置、及び、中央エンジン制御ユニットと個別の気筒制御ユニットとの間の2つの別個の通信線、を備えている完全冗長系として構成することによって達成される。
【0004】
各気筒の各燃焼サイクル中の操作事象の実行の正確な時機及び制御は、非常に重要であり、クランク軸の瞬間的角度位置に関する更新された正確な情報に依存しているので、記載している先行技術によるシステムは、クランク軸に隣接して配置されそれぞれが多数の個別の光学検出器部材を備えているセンサー装置によって高精度に判定された個々の瞬間的なクランク軸位置の数値を含んでいる制御パラメータのリアルタイムのデータ送信に対する必須要件に依存している。これらの検出器部材は、専用の個別の信号線を介して、エンジン及び気筒制御ユニットと接続されている。センサー装置に用いられている実際のエンコード形式と検出器部材の型式次第で、各センサー装置の検出器部材の数と、従って各センサー装置からエンジン及び気筒制御ユニットへの専用の個別の信号線の数は、通常、4から12本の別個の信号線となる。
【0005】
この先行技術による制御システムは、多気筒内燃機関に対する非常に信頼できるフェールセーフ電子制御モードを提供することが分かっているが、各センサー装置からエンジン及び気筒制御ユニットへの多数の専用の個別の信号線が必要なことは、特に、船舶に搭載される推進機関の場合には、重大な欠点となることを表している。エンジン気筒の数は、通常、4から14の範囲であるので、そのような推進機関は、非常に複雑で大きなシステムであり、クランク軸とエンジン及び気筒制御ユニットからの信号を捕捉するセンサー装置は、物理的に相当に離して配置されているので、専用の個別の信号線は、これに対応する長い距離引き回され、多くのユニットに接続されねばならない。更に、船の機関室内の物理的及び化学的環境が、その様な信号線に用いられるケーブルの品質に対して高い要求を課すことになる。
【0006】
推進機関及び各種エンジン補機装置と、船橋又は緊急操作ステーションに配置されている外部操作及び/又は監視端末の間の、エンジン制御コマンドと作動状態メッセージの通信を含む他の型式の船内データ送信では、標準的な通信バスネットワークを利用するのが最新の技術であり、通信バスによって、相当数のノード端末の間のメッセージの通信が、標準的なネットワークプロトコルによって操作され制御されている単一の共有通信線で行われている、という事実によって、この欠点は、更に深刻になる。
【0007】
その様なネットワークベースの通信システムの使用の例には、WO第2005/124161号に開示されている流体弁の制御へのバスモジュールの使用、WO第2005/119974号に開示されている分散処理制御システム内のデータ転送、又は米国特許出願第2004/0010349号及び同第2004/0042401号及び米国特許第6,629,247号に開示されている自動車又は電力供給システム内の発電機セット監視又は技術的データ通信のための標準的なCAN(コントローラエリアネットワーク)プロトコルの使用、及び、デンマーク特許第168807号に開示されている監視及び自動化のため、又は欧州特許第1591649号に開示されているディーゼルエンジン制御のための、船上での高冗長ローカルデータ通信ネットワークの使用、が含まれる。しかしながら、これらの先行技術による発行物の何れも、多気筒エンジンの気筒内での燃焼プロセスの重要な電子制御に関係するどの様な種類の情報も含んではいない。
【特許文献1】日本特許第3483743B2号
【特許文献2】WO第2005/124161号
【特許文献3】WO第2005/119974号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0010349号
【特許文献5】米国特許出願第2004/0042401号
【特許文献6】米国特許第6,629,247号
【特許文献7】デンマーク特許第168807号
【特許文献8】欧州特許第1 591 649号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
背景技術で上に概説した様に、本発明の一般的な目的は、多気筒内燃機関の各気筒における各燃焼サイクル中の操作事象を制御するための方法及びシステムを提供し、それによって日本特許第3483743B2号に開示されている先行技術による制御システムの上記欠点及び不都合な点を克服しながら、一方では信頼できフェールセーフな操作性を少なくとも先行技術によるシステムと同じレベルに維持することである。
【0009】
本発明の別の目的は、或る制御方法及びシステムを提供し、それによって1つ又は複数のセンサー装置から多気筒内燃機関のエンジン及び気筒制御ユニットへの制御パラメータデータのリアルタイム通信に関する先行技術における実際の効果的な要件を省けるようにしながら、一方では操作事象の時機及び制御が、各燃焼サイクル中に気筒制御ユニットによって、制御パラメータデータが実際にリアルタイムで通信されているのと同じレベルの精度で実行されるように維持することである。
【0010】
上記及びその他の目的を実現するため、以下の説明から明らかになるように、本発明の第1の態様によれば、各燃焼サイクル中に多気筒内燃機関の各気筒毎に、エンジンの各回転中に時間によって変動する制御パラメータに応じて行われる操作事象の実行を制御するための方法が提供されており、同方法は、エンジンの各回転中の複数の個々の瞬間における制御パラメータの値を少なくとも1つのセンサー装置によって捕捉する段階と、各気筒の各燃焼サイクル中に、前記操作事象の実行の時機を図り、制御するために、前記パラメータ値をデジタルパラメータ信号として前記内燃機関用の制御ユニットに通信する段階を含んでいる。
【0011】
本発明によれば、この制御方法は、
前記デジタルパラメータ信号を、少なくとも1つのセンサー装置から、標準的な通信バスネットワーク内で或るノードを形成している少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールへ送る段階であって、同ネットワーク内の別のノードは、前記制御ユニットに関係付けられたコントローラインターフェースモジュールによって個別に形成されている、前記デジタルパラメータ信号を送る段階と、
前記バスネットワークを介して送信するために、パラメータ信号をデータメッセージに含める段階と、
前記データメッセージを、同時一斉送信によって、前記バスネットワークを介して前記各コントローラインターフェースモジュールに通信する段階と、
随意的に、前記標準的な通信バスネットワーク(20;39、40)を介する前記送信によって生じる前記パラメータ信号のリアルタイム通信からの偏差を、補正データを前記データメッセージに含めることと、各コントローラインターフェースモジュール毎に、連続するデータメッセージの前記コントローラインターフェースモジュールによる受信の間の各間隔毎に前記制御パラメータの推定値を計算することと、によって補正する段階であって、前記計算は、前記制御パラメータの値と、各送信メッセージに含まれる前記補正データから行われる、補正する段階と、によって特徴付けられる。
【0012】
この制御方法を実施するために、本発明の別の態様によれば、各燃焼サイクル中に多気筒内燃機関の各気筒毎に、エンジンの各回転中に時間によって変動する制御パラメータに応じて行われる操作事象の実行を制御するためのシステムが提供されており、同システムは、エンジンの各回転中の複数の個々の瞬間に制御パラメータのパラメータ値を捕捉するための少なくとも1つのセンサー装置と、気筒の各燃焼サイクル中に前記操作事象の実行の時機を図り、制御するために、捕捉された制御パラメータ値をデジタルパラメータ信号として前記内燃機関用の制御ユニットへ通信するための通信手段と、を備えている。
【0013】
本発明によれば、この制御システムは、
前記少なくとも1つのセンサー装置が、少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールと、そこへ前記デジタルパラメータを送るために接続されており、前記エンコードインターフェースモジュールは、標準的な通信バスネットワーク内に或るノードを形成しており、そのネットワークの別のノードは、前記制御ユニットに関係付けられているコントローラインターフェースモジュールによって個別に形成されている、ことと、
前記デジタルパラメータ信号を含むデータメッセージを作成するためのメッセージ作成手段と、前記データメッセージを通信するための送信手段が、前記データメッセージを、前記バスネットワークを介して前記データメッセージを同時一斉送信することによって、前記コントローラインターフェースモジュールのそれぞれに通信するために備えられていることと、
随意的に、補正データを作成するための手段が、前記エンコーダインターフェースモジュール内に、前記補正データを、前記メッセージ作成手段によって作成されたデータメッセージ内に追加して含めるために設けられており、補正手段が、各コントローラインターフェースユニットによって、前記通信バスネットワークを介する送信によって生じる前記パラメータ信号のリアルタイム通信からの偏差を、連続するデータメッセージのコントローラインターフェースモジュールによる受信の間の各間隔毎に前記制御パラメータの推定値を計算することによって補正するために設けられており、前記計算は、制御パラメータの値と、送信される各メッセージに含まれている前記補正データから行われること、を特徴としている。
【0014】
内燃機関、特に船舶の推進機関として用いられる内燃機関の制御、並びにエンジン補機構成要素の制御に関係する全てのデータ通信を、他の通信目的にも用いられるのと同じ標準的な通信バスネットワーク上でのエンコーダ装置からエンジン及び/又は気筒の制御ユニットへの制御パラメータデータの通信を含めて管理することによって、各センサー装置の全ての検出器部材からエンジン及び気筒制御ユニットへデータを転送するための数多くの個別の専用の信号線に関する先行技術における要件が省かれ、その結果、エンジン設備が相当単純化され、経費も削減される。
【0015】
内燃機関の気筒の燃焼サイクル中に実行される操作事象の従来の機械的制御、並びに日本特許第3483743B2号の先行技術によるシステムの場合と同様に、本発明の制御方法とシステムに用いられている制御パラメータは、エンジンの全気筒のピストン部材と接続されているエンジンクランク軸の瞬間的角度位置であるのが望ましい。
【0016】
エンコーダインターフェースモジュールから、バスネットワークを介する同時一斉送信による各コントローラインターフェースモジュールへのメッセージの通信は、例えば、周波数分割多重(FDM)及び時間分割多重(TDM)送信を含む多重化方法の様な様々なリアルタイム送信モードにより行うことができるが、本発明による方法の好適な実施形態は、前記バスネットワークを介する前記データメッセージの送信が、少なくとも1つのセンサー装置による制御パラメータ値の捕捉と、前記デジタルパラメータ信号の、少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールへの供給とに関係無く行われていること、及び、データメッセージに含まれる補正データは、第1及び第2補正データを含んでおり、前記第1補正データは、対応する制御パラメータ値の捕捉の瞬間における、データメッセージに含まれているデジタルパラメータ信号の変化率を表しており、前記第2補正データは、対応する制御パラメータ値の捕捉の前記瞬間と前記データメッセージの送信の瞬間の間の時間のずれを表していること、を特徴としている。
【0017】
以下の説明から明らかになるように、好適な方法の性能試験は、エンコーダインターフェースモジュールからコントローラインターフェースモジュールへのリアルタイムメッセージ通信からの偏差を補正することによって、各燃焼サイクル中の操作事象の制御を取得することができ、それは、信頼性と精度については、FDM送信の場合に当てはまる帯域幅の要件、及びTDM送信の場合のシステムの個別のユニットの正確な時間的同期化のための厳しい要件の様な、過酷で困難な要件をシステムに課することなく、日本特許第3483743B2号に開示されている先行技術による制御システムに十分に匹敵する、ということが確認されている。
【0018】
その様な好適な実施策を実行するために、本発明の制御システムの有用な実施形態は、前記通信バスネットワークは、少なくとも1つのセンサー装置による制御パラメータ値の捕捉と、少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールへの前記デジタルパラメータ信号の供給とに関係無く、前記データメッセージの送信がバスネットワークを介して行われるように、配置され、制御されていることと、補正データを作成するための前記手段は、第1及び第2補正データを作成するために配置されており、前記第1補正データは、対応する制御パラメータ値の捕捉の瞬間におけるデータメッセージに含まれているデジタルパラメータ信号の変化率を表しており、前記第2補正データは、対応する制御パラメータ値の前記捕捉の瞬間と前記データメッセージの送信の瞬間の間の時間のずれを表していること、を特徴としている。
【0019】
比較的単純で信頼できるこの制御方法及びシステムの実施によれば、第1及び第2補正データは、エンコーダインターフェースモジュール内でエンコーダタイマー手段によって作成され、エンコーダタイマー手段は、エンコーダインターフェースモジュールに送られるデジタルパラメータ信号が変更される度にリセットされ、前記第1補正データは、リセットされたときの前記エンコーダタイマー手段のタイマー計数を含んでおり、前記第2補正データは、前記タイマー手段の連続するリセットの間の間隔におけるデータメッセージの送信の瞬間の前記エンコーダタイマーのタイマー計数を含んでいる。
【0020】
各コントローラインターフェースモジュールへの連続する更新メッセージの送信の間の各間隔における制御パラメータの推定値の計算は、例えば、パターン予想及び/又は予想フィルター又はカルマンフィルターの適用を含めて、様々な推定方法で行えるが、比較的単純且つ目下好適な実施策によって、制御パラメータの推定値が、各気筒インターフェースモジュール内で、エンコーダインターフェースモジュールから受信した各データメッセージに含まれている前記制御パラメータ値から線形外挿によって計算される方法が提供されている。線形内挿法を、更新間隔におけるパラメータ値の推定に適用すれば、更新間隔における加速又は減速の様な速度の変化も、送信時間の遅延の変化も考慮されないが、この比較的単純な推定方法の精度は、十分に満足できることが立証されている。
【0021】
好都合なことに、外挿は、前記制御パラメータを同じデータメッセージに含まれている補正データから計算される均等な反復間隔で捕捉する2つの連続する個々の瞬間の間の前記制御パラメータの値の変化を表している定数を繰り返して加えることを含んでおり、前記反復間隔は、コントローラインターフェースモジュール内の推定器タイマー手段から入手したリセットタイマー計数によって提供され、コントローラインターフェースモジュールによる各データメッセージの受信後の第1リセットタイマー計数(Δtestimation、1)は、前記第1補正データ(Δtvelocity)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって計算され、その次のリセットタイマー計数(Δtestimation、n)は、次の前に計算されたリセットタイマー計数(Δtestimation、n−1)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって計算される。
【0022】
本発明の或る好適な実施形態によれば、少なくとも1つのセンサー装置による制御パラメータの捕捉と、少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールへの前記デジタルパラメータ信号の供給とに無関係な、エンコーダインターフェースモジュールからの前記データメッセージの送信は、具体的には、それぞれが少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールによって形成されているネットワークノードが受信する送信勧誘トークンに従っている送信時間スロットでデータメッセージを送信するためのトークンベースの通信バスネットワークを使用して行われ、各データメッセージは、前記デジタル制御パラメータ信号と前記第1及び第2補正データに加えて、前記ネットワークノードを送信源として識別する識別データを含んでいる。トークンベースのバスネットワークを使用すると、メッセージを送信するためにネットワークノードに与えられる連続するアクセス間の最大時間間隔を決定することができ、送信ノードによる送信の開始から受信ノードでのメッセージの受信までにかかる送信時間がほぼ一定である、という具体的な利点が提供される。
【0023】
この様なトークンベースの標準的な通信バスネットワークを使用することにより、送信勧誘トークンが、順次ノード識別方式によって通信バスネットワークの全てのノードに好適に送信されることになり、その際、個別のノードIDが前記ノードに割り当てられる。本発明の制御方法の好適な形態では、エンコーダインターフェースモジュールからコントローラインターフェースモジュールへの連続する更新メッセージの間の間隔は、この接続では、エンコーダインターフェースモジュールに2つ以上のノードIDを割り当てることによって大幅に短縮される。これを実施することによって、例えば、2つのエンコーダインターフェースモジュールを使用する冗長的な操作と組み合わせれば、バスネットワークの全数のノードIDの全秒をエンコーダインターフェースモジュールに割り当てることができるようになる。
【0024】
標準的な通信バスネットワークの様々なノードの間で通信又は交換されるメッセージ又はデータグラムは、通常、送信されるユーティリティ情報データだけでなく、開始区切り文字(SD)、PACフレーム識別子(PAC)、ソース識別子(SiD)、宛先識別子(DiD)、情報長標示(IL)、システムコード(SC)、及びフレームチェックシーケンス(FSC)の様な様々な型式のデータフィールドを含んでいるPACとしても知られている標準的なパッケージフォーマットに従ってフォーマットされるのに対し、各コントローラインターフェースモジュールへの更新間隔の低減に対する更なる寄与は、エンコーダインターフェースモジュールと接続されているネットワークインターフェースモジュールからのメッセージを送信するのに、通信バスネットワークを介して送信される標準的なメッセージと比べると長さが短い修正されたメッセージフォーマットを使用して、本発明による方法及びシステムを更に好適に実施することにより、得ることができる。エンコーダインターフェースモジュールからコントローラインターフェースモジュールへのメッセージは、同時一斉送信によって通信され、エンコーダインターフェースモジュールと接続されているネットワークインターフェースモジュールは、コントローラインターフェースモジュールへの一方向送信だけに用いられるので、標準的なフォーマットの識別子フィールドの数を、メッセージを「エンコーダパッケージ」であると識別する単一のフィールドに減らすことができる。従って、コントローラインターフェースモジュールによるメッセージを受信すれば、コントローラインターフェースモジュール自体が使用する標準的なPACデータグラムと、各コントローラインターフェースモジュールに関係付けられている推定手段に直接送ることができるエンコーダパッケージとを区別できるようになる。
【0025】
エンコーダインターフェースモジュールからの更新メッセージに、長さを短縮したメッセージフォーマットを上記の通り優先して使用することに関連して、本発明の制御システムの別の好適な実施形態は、その様なメッセージ内にエンコーダインターフェースモジュールへの前記識別データが発生するのに応じて、各コントローラインターフェースモジュール毎に、エンコーダインターフェースモジュールから受信したメッセージを、コントローラインターフェースモジュールと関係付けられている推定手段へ直接経路指定する。
【0026】
本発明の制御方法及びシステムの特に好適な実施形態では、システムは、それぞれ独立したエンコーダインターフェースモジュールに関係付けられている2つの独立したセンサー装置を含むことによって、冗長操作に向け構成されており、前記独立したエンコーダインターフェースモジュールは、少なくとも2つの独立した通信バスネットワークを介してメッセージを送信し、その全てに対して他のノードが前記コントローラインターフェースモジュールによって形成されている。従って、各コントローラインターフェースモジュールは、2つのエンコーダインターフェースモジュールのそれぞれから更新メッセージを受信し、それぞれの場合に、少なくとも2つの独立した通信バスネットワークを介するその様なメッセージの通信によって、日本特許第3483743B2号の先行技術によるシステムに匹敵するレベルの信頼性とフェールセーフな操作が実現される。
【0027】
この実施策を更に好都合に発展させると、前記独立したエンコーダインターフェースモジュールのそれぞれが、メッセージを通信するために前記少なくとも2つの独立した通信バスネットワークの全てと接続されている、都合の良い相互冗長性を得ることができる。そうすると、ネットワークが故障又は破壊しても、エンコーダから制御ユニットへのメッセージ送信が中断しなくなるという好都合なことになる。
【0028】
その様な冗長システムを実施する際には、各コントローラインターフェースモジュール毎に、独立した推定手段が、全ての前記独立したバスネットワークを介して送信されるメッセージに対する制御パラメータの推定値を作成するために、設けられ、前記独立したエンコーダインターフェースモジュールの内の1つからのメッセージから得られる推定値の選択は、少なくとも1つの選択基準の遵守に依存して推定手段と関係付けられた選択手段によって行われるようになっていれば、更に好ましい。この尺度によって提供される選択により、2つのエンコーダ装置のそれぞれから作り出されるメッセージが、少なくとも2つの独立したバスネットワークの全てを介して通信され、従って、1つのエンコーダ装置からのパラメータ値を含む同じメッセージが、2つ以上のバスネットワークを介して同時に通信されるので、2つのエンコーダの内の一方を「能動的」エンコーダとして選択することができる、という事実から、システムの相互冗長性は、評価できるものである。
【0029】
本発明の制御方法及びシステムの好適な実際の実施の際には、ArcNet(Attached Resource Computer Network)プロトコルが、前記標準的なバスネットワーク上の汎用データ通信に用いられ、前記プロトコルは、標準的なArcNet通信要件からの偏差を考慮するためにエンコーダインターフェースモジュールと接続されているネットワークインターフェースモジュールから前記メッセージを送信するように修正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の制御方法及びシステムの作用、構造、及び利点について、概略図で示している好適な実施形態によって、詳しく説明する。
図1の概略図は、日本特許第3483743B2号に開示されている種類の4気筒舶用ディーゼルエンジン用の冗長電子制御システムを示している。
【0031】
この制御システムは、エンジンクランク軸1の角度位置を表す個々の瞬間的パラメータ値が、2つの一般的な光電子センサー装置2及び3のそれぞれの数多くの検出器部材によって検出及び捕捉され、デジタル制御パラメータ信号として、専用の個別信号線4を介して、各センサー装置内の各検出器部材から、2つの中央エンジン制御ユニット5及び4つのエンジン気筒7と関係付けられている多数の気筒制御ユニット6へ、センサー装置2及び3から受信したパラメータ信号に依存して各気筒の燃焼プロセスの時機設定と制御を行うために、通信されるように作動する。
【0032】
各中央エンジン制御ユニット4と5は、一方では、通信バスネットワーク8を介して各気筒制御ユニット6と、他方では、図に2つのPC記号で示している多数の外部コマンド及び/又は監視端末9のそれぞれと、更に接続されている。
【0033】
エンジン制御ユニット4と5、気筒制御ユニット6、及び外部端末9の間の制御及び/又は状態メッセージの通信は、標準的なネットワークプロトコルで操作及び制御されるバスネットワーク8を介して完全に実行されるのに対し、各エンジン気筒7内の各燃焼サイクル中の様々な操作事象に関する極めて重要な時機設定と制御は、この先行技術によるシステムでは、センサー装置2及び3の全ての検出器部材からの制御パラメータ信号の気筒制御ユニット6への、その様な各センサー部材からの個別の信号線4を介するリアルタイム送信に依存している。
【0034】
図1に示している先行技術によるシステムに比べると、本発明の制御方法及びシステムは、制御パラメータ値の通信も、図1に示しているシステムの中央エンジン制御ユニットと気筒制御ユニットの間の通信に用いられるのと同じ共通の通信バスネットワークを介して行うことによって大幅な簡素化を図ることができ、従って、図1の先行技術によるシステムについて先に述べた多数の専用の個別の通信線が不要になる、という認識に基づいている。
【0035】
図2では、本発明による電子エンジン制御システムの好適な実施形態の主要な要素を概略ブロック図で表している。
このシステムでは、エンジンクランク軸11の角度位置の個々の瞬間的値を示す制御パラメータ値は、エンコーダインターフェースモジュール(EIM)13に接続されているエンコーダ装置12によって捕捉される。
【0036】
エンコーダインターフェースモジュール(EIM)13は、トークンベースの通信バスネットワークの個別ノードを形成しているネットワークインターフェースモジュール(NIM)14に接続されており、これについては図3に関連付けて後で更に説明する。
【0037】
エンジンクランク軸11に隣接して配置されているエンコーダ装置12は、共に回転するようにクランク軸11と接続されているセンサーディスク及び光源と、センサーディスクの何れかの側に配置されている幾つかの光検出器の配置とを含んでいる、それ自体が既知の型式の光電子センサー装置を備えている。
【0038】
エンジンの各回転中の複数の個々の瞬間におけるクランク軸11の瞬間的角度位置を高分解能で捕捉するのに適したセンサーディスクの形態は、パルス信号を例えばグレイコードで光電子検出器部材から作成するためにエンコーディングパターンを担持することによって絶対的なエンコーディングに備えて作られた類のディスクである。12ビットの絶対コード信号を作成するための1つの例では、センサーディスク上のエンコーディングパターンは、12の円形の同心トラックを備えており、各トラックは、不透明なセクターと透明なセクターが交互になっており、トラックに沿うそれらの位置も、1つのトラックと隣のトラックで交互になっている。12ビットの絶対コード化されたセンサーディスクでは、出来上がった分解能は、212=4096であり、ディスクの外周に沿って明確且つ均等な空間を空けて配置されている測定点の角度分解能は、0.088°である。出来上がった絶対パラメータ信号に、グレイコードを使用すると、1つの測定点から次の測定点で信号が1ビットだけ変化し、非常に好都合である。
【0039】
エンコーディングパターンの許容差から生じる誤差を考慮して、絶対コード化された光ディスクを使った絶対エンコーディングにより実行される位置検出の精度を改良するため、位置測定は、説明した12の円形同心トラックの絶対コードパターンを、2進増分エンコーディング用の、グレイコードパターンの分解能に対応する多数の不透明と透明のセクターが交互になっているコーディングパターンを担持する1つの周囲トラックと組み合わせることによって、更に精密化される。絶対エンコーディングパターンからの信号を明滅表示するのに増分エンコーディングパターンを使用することによって、位置決定の精度が改良され、増分エンコーディングパターン用の2つの角度方向に分離された検出器部材を使用することによって、クランク軸の回転の方向に関する情報が得られる。更に、絶対コード化されたパターンを明滅表示するために増分コーディングパターンを使用すると、絶対コーディングパターンのサンプリングが、全てのビットが安定している位置で行われることを保証することによって、2進絶対エンコーディングの固有の精度不良が取り除かれる。
【0040】
角度方向クランク軸位置に、12ビットの絶対コード化されたパラメータ信号を、1つのトラック増分コーディングと組み合わせて使用することによって、エンコーダ装置12からエンコーダインターフェースモジュール13へ送られることになる信号は、13ビット信号となる。本発明の文脈では、2つの信号に同じ角度分解能を使用すると、エンコーダインターフェースモジュールの作動にとって更に好都合であるが、これは、信号の1ビットの増分部分の各変化が、絶対コード化された部分の1ビットの変化、即ちクランク軸の或る測定点から次の測定点への角度方向の運動を表すからである。
【0041】
エンコーダ装置12内の検出器装置によって提供される、結果としての13ビット信号は、1ビットの増分信号の各明滅変化で好都合にサンプリングされ、それによって、サンプリング周波数は、通常2MHzになり、エンコーダインターフェースモジュール(EIM)13に送られ、その際、12ビットのグレイコード信号部分は、2進コード値に変換され、エンコーダレジスタ15の位置サブレジスタ15aに、1ビットの増分信号部分の変化で表される2進コード値の各変化におけるクランク軸の角度位置に関する制御パラメータとして入力される。
【0042】
後で更に詳細に述べる様に、エンコーダインターフェースモジュールからのメッセージの連続する送信の間の間隔で制御パラメータの推定値の各コントローラインターフェースモジュールで行われることになる計算は、一方では、送信された最新のメッセージと共に受信された制御パラメータ値に基づいており、他方では、送信されたメッセージへの補正データの組み込みに基づいているので、その様な補正データをエンコーダタイマー装置16の形態で作成するための手段が、エンコーダインターフェースモジュール(EIM)13に設けられている。
【0043】
タイマー装置16は、12ビットの分解能を有していて、エンコーダ装置12内の検出器装置からの結果信号のサンプリングに用いられるサンプリング周波数、例えば2MHzと等しいクロック周波数で作動するのが望ましい。
【0044】
1ビットの増分信号と組み合わせると、全数の測定点の中で1つの角度位置から次の角度位置まで1ビットだけ変わる、絶対コード化されたパラメータ信号の好適な使用に関連して、クランク軸11の回転速度を表す第1型式の補正データが、例えば、1ビットの増分信号部分の各変化によって示されているパラメータ信号の各変化毎にエンコーダタイマー装置16をリセットし、その様な各リセット毎にエンコーダタイマー装置16が到達するタイマー計数Δtvelocityをエンコーダレジスタ15の第1補正データサブレジスタ15bに入力することにより、提供される。
【0045】
リセットされたときにタイマー装置16が到達するタイマー計数Δtvelocityは、クランク軸11が或る測定点から次の測定点に動く際にその回転速度によって生じるパラメータ信号の変化の割合を表す。
【0046】
第1タイマー装置16は、実際にクロック周波数で計数操作を実行するので、タイマー装置をリセットするときに到達するタイマー計数Δtvelocityは、回転速度に逆比例する。従って、リセット時に到達するタイマー計数は、回転速度が低ければ高くなる。これは低い方の限界を設定することになり、それに対して第1型式の補正データが得られる。12ビットの位置信号を使用して、総数4096ビットの組み合わせと、12ビットのタイマー分解能及び2MHzのクロック周波数を提供することによって、この低い方の限界は、
BPMmin=60x2x10/4096=7,153rpm
と計算される。
【0047】
エンコーダ装置12から得られた制御パラメータ値を含むメッセージを通信するためにトークンベースの標準的な通信バスネットワークを好適に使用することにより、コントローラインターフェースモジュールによる推定位置の値の計算に用いられる第2型式の補正データは、エンコーダ装置12による制御パラメータ値の捕捉に関して特定の制御パラメータ値を含んでいるメッセージの通信の時間のずれ又は時間の遅延を表す。
【0048】
第2型式の補正データは、エンコーダタイマー装置16のターマー計数を、エンコーダレジスタ15の第2補正データサブレジスタ15cに連続して入力することによって得られ、従って、その内容は、何時も、エンコーダタイマー装置のタイマー計数の各シフトによってシフトされることになる。
【0049】
エンコーダタイマー装置16の実際のタイマー計数は、計数操作の各段階で、最新のクランク軸位置の値の捕捉からの時間のずれΔtoffsetを表しているのに対して、エンコーダメッセージの、通信バスを介するコントローラインターフェースモジュールへの送信によって予測される送信遅延を考慮することもでき、好都合である。以下に説明するように、これは、加算ノード17によって、図2に示している様に、通信時間の遅延Δttransmissionを表す定数を、エンコーダタイマー装置16のタイマー計数によって表される時間のずれの値Δtoffsetに加えることにより、第2補正データサブレジスタ15cの内容を修正することによって行うことができ、その結果、修正は、
Δtoffset、mod=Δtoffset+Δttransmission
である。
【0050】
従って、エンコーダ装置12からの制御パラメータ信号の連続する供給の間の各間隔の何れの時点においても、エンコーダレジスタ15のサブレジスタ15a、15b、15cの内容は、それぞれ、エンコーダ装置12から直接入手され、位置サブレジスタ15aに入力された最新の捕捉されたクランク軸位置の値と、リセットされ、第1補正データサブレジスタ15bに入力されたときに、タイマー装置16のタイマー計数Δtvelocityによって提供される最新の測定されたクランク軸速度の表示と、タイマー装置16のタイマー計数Δtoffsetによって提供されるタイマー装置16及び17の最新のリセットから経過した時間の表示であって、恐らくは送信時間遅延を表わす定数Δttransmissionを第2補正データサブレジスタ15cに加えることによって修正されている表示と、を備えており、その結果、何れの時点でも、エンコーダメッセージパッケージに含まれ、ネットワークインターフェースモジュール(NIM)14からバスネットワークを介してコントローラインターフェースモジュール(CIM)に一斉通信されることになる全てのデータは、エンコーダレジスタ15内に記録されることになる。
【0051】
図2に概略的に示している様に、エンコーダメッセージパッケージは、ネットワークインターフェースモジュール(NIM)14内のメッセージ作成器18によって、エンコーダレジスタ15のサブレジスタ15a−cの内容を、EIM及びNIMモジュール13と14とによって形成されているネットワークノードによる送信勧誘トークンの受信に応えて転送することにより形成される。メッセージ送信器19を介して、メッセージ作成器18によって作成される各データメッセージは、トークンによって利用可能となる送信時間スロットで、バスネットワーク20へ通信される。メッセージ送信器19は、ネットワークインターフェースモジュールの標準的な構成要素であり、普通は、現下の通信バスネットワーク20の形式用のネットワークプロトコルの規定によって操作される。
【0052】
バスネットワーク20を介してネットワークインターフェースモジュール(NIM)14から送られたデータメッセージは、同時一斉通信によってコントローラインターフェースモジュール(CIM)22に通信されるが、その際、標準的なネットワークプロトコルの規定からの好都合な修正が、ネットワークインターフェースモジュール(NIM)14からの連続するエンコーダメッセージパッケージの送信の間の時間間隔を低減するために提供され、これについては、図3から5を参照しながら後で論じる。
【0053】
制御方法及びシステムの1つのその様な好都合な特徴は、ネットワークを介して通信される標準的なメッセージパッケージ(PAC)と比べて修正されたメッセージフォーマットを使用して、コントローラインターフェースモジュール(CIM)22と接続されているネットワークインターフェースモジュール(NIM)21が、エンコーダインターフェースモジュール13から発生したメッセージパッケージを、コントローラインターフェースモジュール22と関連付けられているが他の部分とは分離されている推定器装置23へ直接送ることができるようにすることである。
【0054】
推定器装置23では、エンコーダデータメッセージが推定器レジスタ24に入力され、クランク軸11の瞬間的角度位置を表すためにメッセージに含まれている制御パラメータ値に基づいて、但し、推定器装置内でのそのメッセージの到着は、エンコーダ装置12によるこのパラメータ値の捕捉と、バスネットワーク20を介するその送信の間の時間間隔だけ遅延しているが、この制御パラメータ値に基づいて、クランク軸の新しい位置を表す制御パラメータの推定値が、本発明の制御方法及びシステムの比較的単純で且つ現時点で好適な実施策に従って、線形外挿器25での外挿により作成される。
【0055】
この線形外挿器は、代表的な実施策を示しているに過ぎないが、本発明に従って、先に説明したようにエンコーダ装置の角度分解能に対応し、クランク軸11の回転によって生じる制御パラメータ値の変化を近似する定数を繰り返して加算することにより作られており、この定数を繰り返し加算するのは、エンコーダタイマー装置16と同じクロック周波数で計数操作を実行する推定器タイマー装置26が、繰り返して間隔を制御することによって行われる。推定器タイマー装置26は、データメッセージがエンコーダインターフェースモジュール13から到着する度にリセットされ、線形外挿器25によって用いられる繰り返しの間隔Δtestimation、nの持続時間は、上側のリセットタイマー計数に達した推定器タイマー装置26の計数操作によって決められ、そのとき推定器タイマー装置26が再びリセットされることになる。コントローラインターフェースモジュール(CIM)22が各エンコーダメッセージを受信した後、推定器タイマー装置26の第1上側リセットタイマー計数Δtestimation、1は、最初に、受信したエンコーダメッセージに含まれており、制御パラメータ値の捕捉と送信の間のずれ又は時間遅延Δtoffset、又は、修正したずれΔtoffset.modを表している第2型式の補正データを、明確な制御パラメータ値を捕捉するために、2つの連続する角度位置の間のクランク軸の回転の持続時間Δtvelocityとして測定される変化率を表す、受信したメッセージ内の第1型式の補正データから減算することによって計算される。送信時間の遅延Δttransmissionを考慮することによって、最初の繰り返しの間隔は、
Δtestimation.1=Δtvelocity−(Δtoffset+Δttransmission
と計算される。
【0056】
第1リセットタイマー計数Δttransmission.1を計算した後、次のそれぞれのリセットタイマー計数は、
Δtestimation.n=Δtestimation.n−1−Δtoffset
と簡単に計算される。
【0057】
外挿器25での線形外挿によって提供される、受信した制御パラメータ値に定数を繰り返し加えることによって、推定される制御パラメータ値は、繰り返し計算される。新しい推定値は、計算される度に、同じ定数を加えることによって次の推定値を計算するベースとして使用するために、位置レジスタ27と推定器レジスタ24にも入力されるが、これは、推定器レジスタ24が、バスネットワーク20を介して、エンコーダインターフェースモジュール14から送信される次のエンコーダメッセージに含まれる実際に捕捉された制御パラメータ値を入力することによって更新されるまで行われる。
【0058】
各推定された制御パラメータ値は、推定器装置23から、コントローラインターフェースモジュール(CIM)22を介して、1つ又は複数の気筒の燃焼サイクル中の操作事象を時機設定し制御するために1つ又は複数の気筒と関係付けられている中央エンジン制御ユニット又は分散型気筒制御ユニットの制御部分である制御ユニット28へ送られる。
【0059】
図3は、図2に示している制御システムで使用するための、トークンベースのバスネットワーク20用のノード構成の例を象徴的に示している。各円形記号29は、個別のノードIDによって識別され、ネットワークのノードを形成しているモジュール、端末、及びユニットの間のメッセージの全てのトラフィック及び交換のための1つの共通の通信線を構成しているバスを介して通信されるメッセージを送信及び/又は受信できるようになっている端末又はモジュールユニットのネットワークインターフェースモジュールに割り当てられている、ノードを示している。
【0060】
トークンベースの通信バスでは、特定のノード21から1つ又は複数の他の特定のノードへのメッセージの通信は、順番にノード29が使用できるように設定された時間スロットで行われる。各ノードで、メッセージの送信に使用できる時間スロットは、或るノードから次のノードへ順番に送られる送信勧誘トークン30の受信によって始まる。送信勧誘トークンを受信したとき、所与のノード29が送信を待機しているメッセージを有していれば、バスへの送信が、利用可能な送信時間スロットの持続時間内に行われ、完了する。送信は、メッセージフォーマットに含まれている宛先識別子データ(DiD)によって識別される1つ又は複数のノードを目標に行われる。トークンを受信したとき、所与のノードが送信を待機しているメッセージを持っていない場合、トークンは、順番の次のノードに送られるだけである。
【0061】
本発明の制御方法及びシステム内での、図3に示しているトークンベースの通信バス20の使用の際、個別のノードIDは、例えば、本発明による冗長制御システムの2つのエンコーダインターフェースモジュール(EIM1、EIM2)と複数のコントローラインターフェースモジュール(CIM)によって形成されているノードに割り当てられる。EIMとCIMの指定は、幾つかのノード29に関して、個別ノードのID番号と共に、円形記号で示されている。
【0062】
図3に示している標準的な通信バスネットワーク20は、ネットワークプロトコルに従って制御され操作される。本発明の制御方法及びシステムの文脈で、好適な型式の標準的な通信バスネットワークは、周知のArcNet(Attached Resource Computer Network)である。
【0063】
バスネットワーク20では、それぞれエンコーダ及びコントローラのインターフェースモジュールEIM及びCIMを表しているノードだけでなく、別のノードも、各バスネットワークと接続されているモジュール、端末、又はユニットの総数が制限内に維持され、各燃焼サイクル中の操作事象の時機及び制御の信頼性と精度に影響を与えなければ、図1に示している外部コマンド及び/又は監視端末の様な別のエンティティに割り当てられ、それが本発明の目標である。
【0064】
送信勧誘トークンはバスネットワークの各ノードに順番に割り当てられるので、送信勧誘トークンをネットワークの全てのノードに送っている間は、何れのノードも、メッセージを1つの時間スロットでネットワークに送信するのを許されているにすぎないことは、疑いなく明らかである。ノードの数は、例えば255ノードと比較的多いので、本発明の制御方法及びシステムでは、1つのノードIDしかエンコーダインターフェースモジュールに割り当てられない場合は、制御パラメータの更新値を含むメッセージパッケージを送信するために、エンコーダインターフェースモジュール(EIM)が利用できるようになる連続する送信時間スロットの間の間隔が相当に長くなる。
【0065】
このトークンベースの送信方式によって生じる制御システムの作動の信頼性と精度に対する拘束を避けるために、2つ以上のノードIDが各エンコーダインターフェースモジュール(EIM)に割り当てられることは、本発明の好適で好都合な特徴である。図3に示している様に、合計数から4つおきのノードIDが、例えば、同じエンコーダインターフェースモジュール(EIM1、EIM2)に割り当てられる。図7に示している相互冗長制御システムでは、詳細については後で述べるが、このことは、図3に示している様に、順序が一回りする間にネットワークノード29が利用できるようになる全送信時間スロットの50パーセントが、その様な冗長性システムの2つのエンコーダインターフェースモジュール(EIM1、EIM2)の一方からの更新メッセージの送信に利用できるようになることを意味する。
【0066】
先に述べた様に、本発明による制御方法及びシステムを好適に実際に実施すれば、ArcNet(Attached Resource Computer Network)プロトコルによって制御される標準的な通信バスネットワークを利用できるようになる。このプロトコルの下では、個別のノードの間で通信されるメッセージ又はデータグラムは、既に述べた様に、通信されるユーティリティ情報データに加えて、開始区切り文字(SD)、情報長標示(IL)、システムコード(SC)とフレーム確認シーケンス(FSC)、PACフレーム識別子(PAC)、ソース識別子(SiD)及び宛先識別子(DiD)の様な多数の識別子フィールド、情報長標示(IL)、システムコード(SC)、及びフレーム確認シーケンス(FSC)の様な従来通りに規定されている通信フィールドを含んでいる標準的なパッケージ又はPACフォーマットでフォーマットされ、従って、全体メッセージ長は、主に、500バイトを上回るユーティリティ情報の長さによって決まる。
【0067】
エンコーダインターフェースモジュール(EIM)のネットワークインターフェースモジュール(NIM)は、エンコーダパッケージの形態のメッセージの送信にだけ用いられ、送信勧誘トークン以外のメッセージの受信には用いられないという事実と、送信は、識別された受信器ノードへの目標を絞った通信としてではなく、気筒インターフェースモジュールと接続されている全てのノードへの同時一斉通信によって行われるという事実に照らして、制御パラメータ値と補正データを含んでいるエンコーダメッセージは、長さの短くなったエンコーダメッセージパッケージとしてフォーマットされるという、本発明の制御方法及びシステムの本質的な特徴の点から観て、標準的なArcNetパッケージに比べてエンコーダパッケージの長さをある程度短くすることは、識別子フィールドの幾つかを無しで済ませ、エンコーダインターフェースモジュールを示すSID型式のフィールドだけを通信源として維持し、ユーティリティ情報の長さを短くなった標準的な長さに保持することによって、可能である。
【0068】
本発明の制御方法及びシステムの文脈で使用するためのメッセージフォーマットの一例を図4に示している。例示されているフォーマットは、以下のデータフィールドを含んでいる。即ち、
SD:開始区切り文字(6ビット)、
ECP:エンコーダメッセージの識別(8ビット)、
P:12ビットの制御パラメータ値(クランク軸位置)、
S:12ビットの変化率情報(第1補正データ)、
O:12ビットの送信時間ずれ情報(第2補正データ)、
C:システムコード(4ビット)、及び
FSC:フレーム確認シーケンス(16ビット)である。
【0069】
例えば、データの崩壊又はクランク軸の回転方向の逆転を起こすエンジン制御コマンドに関する追加の情報の送信に使うことのできる、4ビットのシステムコードをメッセージフォーマットへ組み込むのは、ArcNetプロトコルを好適に使用し、これに従ってデータパッケージを全バイトでフォーマットすることから生じる。本発明の制御方法及びシステムで用いられるユーティリティ情報データ、即ち、合計3x12ビットになる制御パラメータ値と第1及び第2補正データの送信にこのフォーマットを使用すると、4ビットの利用可能な余剰を提供することになり、これを例えばシステムコードに用いることもできる。
【0070】
図4から明らかになるように、できあがったエンコーダパッケージ又はメッセージは、6ビットのSDフィールドと、それぞれが1バイトプラス3ビットを備えている8つのISU(情報記号ユニット)フィールドとで作られ、合計94ビットとなっており、これは、ArcNetプロトコルに従って通信される、505バイトにもなることもある標準的なPACの平均的な長さと比べると大幅に短くなっている。
【0071】
図3に関連する説明から、エンコーダメッセージに長さの短いメッセージフォーマットを使用することは、バスネットワークのエンコーダノードからの連続する更新メッセージの送信の間の時間間隔を短縮することに更に積極的に寄与することが分かる。
【0072】
通信バスの操作にArcNetプロトコルと使用すると、バスの周波数は、通常、2.5Mビット/sであり、合計94ビットに減らしたエンコーダメッセージのフォーマットを使うと、通信バスを介するエンコーダメッセージの送信に関する理論的な送信遅延は、37.6μsとなる。エンコーダ及び推定器のタイマー装置16と26が2MHzのクロック周波数で作動することで、送信時間の遅延を考慮して第2補正データを修正するために、エンコーダタイマー装置のタイマー計数で表される時間のずれΔtoffsetに加算される定数Δttransmissionは、エンコーダタイマー装置16の70計数段階まで選択される。
【0073】
連続する更新の間の間隔の長さに影響を与える別の要因は、エンコーダパッケージ以外のメッセージの送信に用いられる時間スロットの持続時間と周波数であり、即ち、エンコーダパッケージの送信に利用できない全送信時間スロットシーケンスの部分である。
【0074】
図3から明らかな様に、この部分は、例えば、2つ以上のノードIDを各種ノードの内のエンコーダノードに割り当てることによって短くなる。全ての利用可能な時間スロットの50パーセントを、本発明の冗長制御システム内のエンコーダパッケージの送信に割り当てるという上記例から、連続するエンコーダパッケージの送信に利用できるようになる時間スロットは、他の通信目的に、1時間スロット以上を使って分離されることはないものと理解されたい。
【0075】
図5と図6の図形表示は、エンコーダパッケージの送信にバスネットワークを使用できないことに関する、「最悪の場合」と「最良の場合」の状況をそれぞれ分かり易くする役目を果たしている。各表示において、気筒インターフェースモジュールを更新するための実際のエンコーダメッセージの送信の後に、モジュール、端末、又はエンコーダインターフェースモジュールとは別のユニットを表すノードへの「トークンを送信する勧誘(ITT)」の通信が続き、これにより、次の時間スロットがこのノードからのメッセージの送信に利用できるようになる。図5では、この利用可能性は、最大長の標準的なPACの送信に用いられるのに対して、図6では、ITTトークンを受信しているノードからの送信に対してメッセージが用意されていない。標準的なPACに合わせてフォーマットされた上記メッセージをArcNetプロトコルの下で用いると、エンコーダとは異なるノードからの送信に利用できるようになる時間スロットの最大持続時間は、時機設定及び通信遅延を含めて、約600μsとなるのに対して、最小持続時間は、時間スロットを使用しない場合は、約100μsとなる。
【0076】
これにより、同じエンコーダからの2つの連続するデータメッセージの送信の間の更新間隔の最大持続時間は、約1200μsとなり、一方、図7に関連して以下に説明する様に、完全相互冗長構造では、更新間隔の最小持続時間は、約100μsとなる。この背景では、新しいエンコーダパッケージで気筒インターフェースモジュールを更新する平均的周波数は、約3000Hzであることが予測される。
【0077】
図7は、本発明の制御システムの好適な実施形態の完全相互冗長構造の例を、単純化したブロック図を示している。
この構造では、エンジン回転中の瞬間的クランク軸位置の様な制御パラメータ値は、独自の等しく独立したエンコーダインターフェースモジュール(EIM1、EIM2)33と34に接続されている2つの独立したエンコーダ装置31と32によって捕捉され、各モジュールは、図2に示しているのと同じやり方で、エンコーダレジスタと、第1及び第2タイマー装置で構成されている。
【0078】
制御パラメータ値を含むエンコーダメッセージを、2つのエンコーダ装置31及び32それぞれから、2つの等しく独立したバスネットワーク39(ネットワークA)及び40(ネットワークB)を介して送信するために、エンコーダインターフェースモジュール33と34(EIM1、EIM2)は、それぞれ、2つの独立したネットワークインターフェースモジュール(NIMA、NIMB)35、36と37、38を備えており、ネットワークインターフェースモジュール(NIMA)35と37は、バスネットワーク39(チャネルA)のノードを形成し、ネットワークインターフェースモジュール36と38(NIMB)は、バスネットワーク40のノードを形成しており、それによって、図3にも示している様に、各バスネットワーク39と40上でエンコーダパッケージを送信するのに、2つのネットワークノードを利用できるようにしている。
【0079】
図7の相互冗長構造では、本発明の制御方法を実施するための、制御パラメータ値と第1及び第2補正データを含むエンコーダメッセージの作成に関する制御システムの基本的な作用は、図2に示している構造に関する説明と同じである。
【0080】
制御ユニット側では、2つの独立したネットワークインターフェースモジュール(NIMA、NIMB)41と42の一方が、それぞれバスネットワーク39(チャネルA)と40(チャネルB)の一方及び他方の単一のノードを形成している。しかしながら、相互冗長構造に続いて、ネットワークインターフェースモジュール41と42は、それぞれ、2つの推定器43と44の両方に接続されている。
【0081】
2つの各推定器43と44のそれぞれで、2つのバスネットワー39(チャネルA)と40(チャネルB)に、エンコーダメッセージ用のレジスタと、線形外挿器と、推定器のタイマー装置と、推定位置用のレジスタとを含む、図2に示しているのと同じ構成要素が設けられている。
【0082】
同じ制御パラメータ、即ち、角度方向クランク軸位置を測定するために、相互冗長構造に2つの独立したエンコーダ装置31と32を使用した結果、2つの独立したバスネットワーク39(チャネルA)と40(チャネルB)のそれぞれは、制御ユニット側で、エンコーダ装置31と32の一方及び他方から発生するエンコーダメッセージの間で選択を行う必要が生じる。このために、エンコーダ選択器45の形態の選択装置が設けられ、一方ではネットワークインターフェースモジュール(NIMA、NIMB)41と42のそれぞれに、他方では2つの推定器43と44のそれぞれに接続されている。
【0083】
エンコーダ選択器では、全ての到着したエンコーダメッセージの情報データの内容の分析と評価が実行され、図2に関連して先に述べた操作と計算に従って新しく推定されたパラメータ値を使って、エンコーダ選択器45と制御ユニット47の間に相互接続されている位置レジスタ46を更新するために、どのエンコーダ信号と、対応する推定値を受け入れるべきかの選択が行われる。これは、エンコーダ装置31と32の一方を「稼動中の」エンコーダ装置に、他方を待機中のエンコーダ装置に選択するのに有用に使用される。
【0084】
この選択操作を実行するために、各推定器43と44の位置レジスタ27に入力される制御パラメータ値は、図8のブロック図に示す様に、エンコーダ選択器45の一部を形成している選択器回路48に送られ、選択器回路48は、入ってくるエンコーダメッセージの情報データ内容を分析するために少なくとも1つの選択基準を適用することによって、エンコーダ装置31と32から到着し、エンコーダ選択器45へ何れかの推定器43と44から送られるメッセージの間で実際の選択を実行するため、多数の選択基準モジュール49、50、51、52によって制御されている。
【0085】
図8に示している様に、様々な型式の選択基準を、以下を含めモジュール49−52によって、個別に又は組み合わせて適用することができる。
更新観察(モジュール49):エンコーダ装置31と32の一方が「稼動」エンコーダに選択されると、観測は、稼働中のエンコーダから到着する更新メッセージの周波数を待機又は非稼動中のエンコーダ装置から到着する更新メッセージの周波数と比べることによって行われる。後者の更新周波数が、前者の3倍という様に相当に高ければ、稼働中のエンコーダに関する問題を示唆するものとして受け止め、当初の待機中のエンコーダ装置を稼働中にする選択を要求する。
【0086】
位置変化観測(モジュール50):選択された稼働中のエンコーダ装置から到着する連続する更新メッセージに含まれている瞬間的クランク軸値を示す制御パラメータ値の変化を観測し、この変化を、更新メッセージに含まれている変化率の情報と比較することによって、制御パラメータ値の観測された変化と、クランク軸速度を示す変化率情報の間の差の発生が検出される。制御パラメータ値の変化が、実際の速度と比べて、3倍の様に相当に高いか、又はゼロの様に相当に低い場合、これは、送信している稼働中のエンコーダモジュールのエラーを表しており、当初の待機中のエンコーダ装置を稼働中にするよう要求している。
【0087】
速度比較(モジュール51):選択された稼働中のエンコーダ装置と待機中のエンコーダ装置の両方から到着する更新メッセージに第1補正データとして含まれている変化率の情報を観測することによって、到着するメッセージのこれらの部分の間の差の発生を検出することができる。稼働中のエンコーダ装置からの変化率情報に非常に急な変動が発生し、待機中のエンコーダ装置から受信される変化率情報がこれに対応する変動で追随していない場合は、稼働中のエンコーダ装置のエラーを示しており、当初の待機中のエンコーダ装置を稼働中にする選択が要求される。
【0088】
システムコード確認(モジュール52):送信している稼働中のエンコーダモジュールで様々なエラー状態が発生していることが既に発見されているので、その様なエラー状態の表示は、メッセージフォーマットのシステムコードフィールド(SC)のビット値を設定することによって、送信される更新メッセージで通信される。当初の待機中のエンコーダ装置を稼動させる選択が必要な場合、更新メッセージ内のSCフィールドの観測によって、メッセージを確認することができる。送信しているエンコーダモジュール内で検出できるエラー状態の1つの例は、制御パラメータ値に対するグレイコードのビットシーケンスの、或るクランク軸測定位置から次の位置への変化に関係している。2ビット以上変化しているか、値が変わらずに留まっていなければならない位置のビット値が変わっていれば、エラー状態を示している。
【0089】
先に単なる例として述べた選択基準は、制御システムの冗長構造の2つのエンコーダモジュールの間で選択するための基本として、個別に、又は組み合わせて適用することができる。
【0090】
制御システムの所望の作動安定性を保証するには、実際のエンコーダ選択は、エンコーダ選択器45内の選択器回路48によって行われるが、選択されたエンコーダ装置が、或る最短期間、確実に稼働中のエンコーダとして維持されるようにするのが更に望ましい。このため、選択タイマー53を、更に、選択操作を制御するための選択器回路48に接続してもよい。
【0091】
選択された稼働中のエンコーダ装置31又は32からの更新エンコーダメッセージが到着すると、実際の瞬間的クランク軸位置を示す、メッセージに含まれている制御パラメータ値は、各推定器装置の位置レジスタ27に直接入力され、必然的に、これも位置レジスタ46のエンコーダ選択器45によって行われた選択の結果として直接入力される。
【0092】
選択された稼働中のエンコーダから次の更新メッセージが到着するまでの時間間隔に、位置レジスタ46は、先に述べた様に、選択された稼働中のエンコーダに関する推定位置の値によって繰り返し更新される。
【0093】
第2補正データの値を選択された稼働中のエンコーダからの最新の更新メッセージに含まれている第1補正データの値から減じることにより推定位置の値で位置レジスタ46を更新するための繰り返し間隔を計算するための基本を、図9の上部と下部に、それぞれ、エンコーダ側によって作成及び送信され、推定器側によって受信される更新メッセージに含まれている実際の位置情報を示すグラフ表示を使って表している。
【0094】
各グラフ表示で、4つの方形波動信号は、一体になって、メッセージに含まれる位置情報の部分的な表示を形成しており、それぞれエンコーダ側によって第1及び第2補正データとして作成及び送信されるメッセージに含まれている変化率情報Δtvelocityと時間ずれ情報Δtoffsetは、それぞれ「速度」と表示された破線と、「ずれ」と表示された点線とによって示されており、推定器側で推定位置の値の作成に用いられる繰り返しの時間間隔は、「速度−ずれ」と表示された太線で示されている。しかしながら、これらの呼称は、推定器で推定位置の値を作成するのに用いられる繰り返しの時間間隔が、実際には、エンコーダ側で測定される実際のクランク軸速度を、実際の位置情報の捕捉から送信までの時間遅延を補正して送信時にエンコーダメッセージ内に組み込まれる捕捉された位置情報の「年齢」を補正する量だけ上げることに対応している、ということを示すためだけに単純化した表現になっていることに注目して頂きたい。
【0095】
1つ又は複数のエンコーダモジュールからの連続する更新メッセージの間で推定位置の値を作成するために各推定器43と44に適用される線形外挿では、「速度−ずれ」値を各推定器装置内の推定器タイマー26用の上側リセットタイマー計数として使用することは、推定位置の値が作成される繰り返しの間隔が、2つの連続する更新エンコーダメッセージの間の間隔では同じに留まり、前の更新エンコーダメッセージと通信されるRPMでの実際の捕捉されたクランク軸速度と値が一致することを意味している。
【0096】
従って、各更新エンコーダメッセージの後の間隔で推定位置の値を作成する際には、更新メッセージと通信される速度の変化を考慮するのに対して、連続する更新エンコーダメッセージの間の間隔における加速又は減速が引き起こし、実際の角度方向クランク軸位置に影響を与える可能性があるクランク軸速度の変動は考慮しない。
【0097】
その様なクランク軸加速度の潜在的な影響は、ほぼ一定のエンジン速度での定常運転、各気筒へ始動空気を供給することによるエンジンの始動、及び、前方推進のため特定の速度で作動しているエンジンに、エンジンクランク軸を停止するまで制動して逆方向に回転を再開させることを求める「逆転」コマンドが与えられるいわゆる「クラッシュ」状況、の各作動状況に対して確認されている。
【0098】
定常運転では、それぞれTDC(上死点)位置に近いピストンで起こる連続する点火の間の、多気筒エンジンの内の1つの気筒の1燃焼サイクルを通してのクランク軸速度の代表的な変動は、TDCとBDC位置の間の加速度によって生じる速度の変化がほぼ線形で、少なくとも2次多項式により良好な精度で近似することのできる、正弦曲線を重ね合わせた調波変動として良好な近似で記述することができる。
【0099】
極端な「クラッシュ」状況では、先ず「風車状態」としても知られているアイドル運転によるクランク軸速度の大幅な減速を可能にする点火の中断によって、次に圧縮空気を各気筒にクランク軸の完全制動を引き起こす順に供給することによって、エンジンは停止され、直後に、各気筒内の通常の点火が確立されるレベルまで逆回転方向に加速される。各気筒の通常の点火が始まると、クランク軸速度は、再び、ほぼ同じ調波変動を示す。従って、逆推進モード、即ち、前の前方推進から生じた水流に対向して作動しているエンジンの潜在的な影響は、実用的には無視してよい。
【0100】
説明のみを目的として、数個の連続する推定位置の値に対して続くクランク軸の緩やかな加速度によって生じ得る、理論的に考えられる集積推定エラーを、角度方向クランク軸位置Pを時間の関数としてして示すグラフで、図10に示している。曲線Prealは、図2に12で、図7に31と32で示すエンコーダ装置による位置の値の捕捉によって得られる実際のクランク軸位置を示しているのに対して、各付点位置の値Pest1−Pest4は、先に説明した線形外挿LE1−LE4によって、垂直軸との交点で実際の位置から始まる次の更新メッセージの到着時に得られる推定位置を示している。
【0101】
以上の説明から明らかな様に、例えば60rpmの回転クランク軸速度では、約3000個の更新エンコーダメッセージが、推定エラーを最小化するために各エンジン回転毎に受信できるよう期待されているので、実際的に考えると、図10の表示は誇張されていると見るべきである。
【0102】
要約すると、上に述べた本発明の制御方法及びシステムの好適な実施策の作動全体は、図7に示している完全相互冗長システムの構成に関係している図11の作動図で表すことができる。
【0103】
図11に示している様に、12ビットのグレイコードの位置の値と1ビットの速度表示を含んでいる実際の制御パラメータ値は、エンコーダ1と2によって捕捉される。各エンコーダと接続されているエンコーダインターフェースモジュールでは、12ビットの第1補正データは、捕捉された速度表示から求められ、12ビットの第2補正データは、最新の捕捉された位置の値から経過した時間を継続的に測定することによって求められる。エンコーダID及び4ビットのシステムコードと共に、位置と第1及び第2補正データを備えている3つの12ビットの値は、データメッセージに含まれており、データメッセージには、更新エンコーダメッセージを形成するため、フレーム確認シーケンスFSCも組み込まれている。
【0104】
通信バスを介する一斉通信によって、更新エンコーダメッセージは、バスネットワークと接続されている各コントローラインターフェースモジュール(CIM)に受信され、更新エンコーダメッセージで受信された実際の位置の値から線形外挿によって推定位置の値を作成するため、推定器1と2に送られる。
【0105】
目下の好適な実施策では、本発明の制御方法及びシステムは、多気筒内燃機関の各気筒毎の各燃焼サイクル中の操作事象の制御に、全ての関与するエンコーダとコントローラインターフェースモジュール用の共有される通信線を形成している標準的な通信バスネットワークを介してデータメッセージを通信することにより、先行技術による方法に完全に匹敵する精度及び信頼性を提供し、これにより、センサー装置の検出器部材からの専用の個別の信号線に関する、先行技術による制御方法における必要性を無くすことができる。
【0106】
以上、主に、制御パラメータ値を含むデータメッセージが、パラメータの捕捉とは関係無く、即ち、時間遅延で、例えばトークンベースの通信ネットワークを使用することにより通信される目下の好適な1つの実施策に関連付けて、本発明の制御方法及びシステムについて説明してきたが、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって提供されている定義に含まれている他の型式の標準的な通信ネットワーク及び他の送信モードを利用している代替実施形態も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】多気筒舶用ディーゼル機関用の先行技術による電子制御システムの全体図である。
【図2】本発明による制御方法及びシステムの或る実施形態の基本的全体ブロック図である。
【図3】図2に示しているシステムで使用するための、トークンベース通信バスネットワークのためのノード識別方式の或る例の図である。
【図4】図3に示しているバスネットワークを介して送られるメッセージのためのメッセージフォーマットの一例を示している。
【図5】図4で示しているようにフォーマットされたメッセージの通信の例を示しており、図4に示している2つの連続するメッセージの通信の間の更新間隔の持続時間における究極的な変動を表している。
【図6】図4で示しているようにフォーマットされたメッセージの通信の例を示しており、図4に示している2つの連続するメッセージの通信の間の更新間隔の持続時間における究極的な変動を表している。
【図7】本発明による制御システムの好適な相互冗長実施形態の単純化した概略ブロック図である。
【図8】図7に示している相互冗長制御システムの別個の推定手段の間の選択を示すブロック図である。
【図9】図2又は図7に示している制御システムによる、制御パラメータ値の捕捉と、同値を含むエンコーダメッセージの送信との間のずれ又は時間遅延の補正を示すグラフである。
【図10】図2又は図7に示している制御システム内の連続する制御パラメータエンコーダメッセージの間の更新間隔における制御パラメータ値の線形外挿による推定を示すグラフである。
【図11】図1から図10に示している制御方法及びシステムの全体的作用を示す作用図である。
【符号の説明】
【0108】
12、31、32 センサー装置
11 エンジンクランク軸
13、33、34 エンコーダインターフェースモジュール
13、33、34 コントローラインターフェースモジュール
14、35−38 ネットワークインターフェースモジュール
16、17 エンコーダタイマー手段(補正データを作成するための手段)
18 メッセージ作成手段
19 送信手段
20、39、40 通信バスネットワーク
21、41、42ネットワークインターフェースモジュール
22 コントローラインターフェースモジュール
23、43、44 推定手段(推定器装置)
25 外挿手段
26 推定器タイマー手段
28、47 内燃機関の制御ユニット
29 ノード
30 送信勧誘トークン
43、44 推定手段
45 選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各燃焼サイクル中に多気筒内燃機関の各気筒毎に、エンジンの各回転中に時間によって変動する制御パラメータに応じて、操作事象の実行を制御するための方法において、
エンジンの各回転中の複数の個々の瞬間における制御パラメータの値を、少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)によって捕捉する段階と、
各気筒の各燃焼サイクル中に前記操作事象の実行の時機を図り、制御するために、前記パラメータ値をデジタルパラメータ信号として前記内燃機関用の制御ユニット(28;47)に通信する段階と、を含んでおり、
前記デジタルパラメータ信号を、前記少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)から、標準的な通信バスネットワーク(20;39、40)内の或るノード(29)を形成している少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)へ送る段階であって、同ネットワーク内の別のノードは、前記制御ユニット(28;47)に関係付けられたコントローラインターフェースモジュール(22)によって個別に形成されている、前記デジタルパラメータ信号を送る段階と、
前記バスネットワークを介して送信するために、前記パラメータ信号をデータメッセージに含める段階と、
前記データメッセージを、同時一斉通信によって、前記バスネットワーク(20;39、40)を介して前記各コントローラインターフェースモジュール(13;33、34)に通信する段階と、
随意的に、前記標準的な通信バスネットワーク(20;39、40)を介する前記送信によって生じる前記パラメータ信号のリアルタイム通信からの偏差を、補正データを前記データメッセージに含めることと、各コントローラインターフェースモジュール(22)毎に、連続するデータメッセージの前記コントローラインターフェースモジュール(22)による受信の間の各間隔に前記御パラメータの推定値を計算すること、によって補正する段階であって、前記計算は、前記制御パラメータ値と、各送信メッセージに含まれる前記補正データから行われる、補正する段階と、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御パラメータ値は、前記各気筒のピストン部材と接続されているエンジンクランク軸(11)の瞬間的角度位置を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バスネットワーク(20;39、40)を介する前記データメッセージの送信は、前記少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)による前記制御パラメータ値の捕捉と、前記デジタルパラメータ信号の、前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)への供給とに関係無く行われることと、データメッセージに含まれる前記補正データは、第1及び第2補正データを含んでおり、前記第1補正データは、対応する前記制御パラメータ値の捕捉の瞬間における、前記データメッセージに含まれている前記デジタルパラメータ信号の変化率(Δtvelocity)を表しており、前記第2補正データは、前記対応する制御パラメータ値の前記捕捉の瞬間と前記データメッセージの送信の瞬間の間の時間のずれ(Δtoffset)を表していること、を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2補正データは、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)内でエンコーダタイマー手段(16)によって作成され、前記エンコーダタイマー手段は、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)に送られるデジタルパラメータ信号が変化する度にリセットされ、前記第1補正データは、リセットされたときの前記エンコーダタイマー手段(16)の時間計数を含んでおり、前記第2補正データは、前記タイマー手段の連続するリセットの間の間隔におけるデータメッセージの送信の瞬間の前記エンコーダタイマー手段(17)の時間計数を含んでいることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2補正データ(Δtoffset)は、前記バスネットワークを介する前記データメッセージの送信に関する送信時間の遅延(Δttransmission)を表す定数を加えることによって修正されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記推定値は、各コントローラインターフェースモジュール内で、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)から受信される各データメッセージに含まれている前記制御パラメータの値から線形外挿によって計算されることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記外挿は、前記制御パラメータを、同じデータメッセージに含まれている前記補正データから計算される均等な反復間隔で捕捉する2つの連続する個々の瞬間の間の前記制御パラメータの値の変化を表している定数を繰り返して加えることを含んでおり、前記反復間隔は、前記コントローラインターフェースモジュール(22)内の推定器タイマー手段(26)のリセットタイマー計数(Δtestimation、n)によって提供され、前記コントローラインターフェースモジュールによる各データメッセージの受信後の第1リセットタイマー計数(Δtestimation、1)は、前記第1補正データ(Δtvelocity)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって計算され、その次のリセットタイマー計数(Δtestimation、n)は、次の前に計算されたリセットタイマー計数(Δtestimation、n−1)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって計算されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
トークンベースのバスネットワーク(20;39、40)が、前記データメッセージを、それぞれが、前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)によって形成されている前記ネットワークノードにより受信される送信勧誘トークン(30)に続いている、送信時間スロットで送信するのに用いられており、各データメッセージは、前記デジタルパラメータ信号と前記第1及び第2補正データに加えて、前記ネットワークノードを送信源として識別する識別データを含んでいることを特徴とする、請求項3から7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記送信勧誘トークンは、順次ノード識別方式に従って前記通信バスネットワーク(20;39、40)の全ノード(29)に送られ、その際、個別のノードIDが前記ノードに割り当てられ、これにより、2つ以上のノードIDが前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)に割り当てられることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記データメッセージは、前記ネットワークインターフェースモジュール(14;35−38)によって、前記通信バスネットワーク(20;39、40)を介して送信される標準的なメッセージと比べて長さが短い修正されたメッセージフォーマットを使って作成されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
コントローラインターフェースモジュールと接続されているネットワークインターフェースモジュール(21;41、42)により受信されるデータメッセージは、その様なメッセージ内の前記エンコーダインターフェースモジュールへの前記識別データの発生に応じて前記気筒インターフェースモジュールの別の部分から分離された推定手段(43、44)に直接送られることを特徴とする、請求項8から10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
それぞれが独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)と関係付けられている2つの独立したセンサー装置(31、32)の使用を含む冗長操作であって、前記独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)は、少なくとも2つの独立した通信バスネットワーク(39、40)を介してメッセージを送信し、前記独立した通信バスネットワーク(39、40)のそれぞれに対し、前記別のノードが前記コントローラインターフェースモジュールによって形成されている、冗長操作を特徴とする、請求項1から11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)は、データメッセージを、前記少なくとも2つの独立した通信バスネットワーク(39、40)の全てに送信することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各コントローラインターフェースモジュール(22)毎に、前記制御パラメータの前記推定値が、前記独立したバスネットワーク(39、40)のそれぞれを介して送信されるメッセージのために独立した推定手段(43、44)によって作成され、前記独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)の一つからのメッセージから得られる推定値の選択は、少なくとも1つの選択基準の遵守に依存して、前記推定手段(43、44)と関係付けられている選択手段(45)によって行われることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ArcNetプロトコルが、前記標準的なバスネットワーク(20;39、40)上の一般的データ通信に用いられ、前記プロトコルは、標準的なArcNet通信要件からの偏差を考慮して、前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュールから前記メッセージを送信するために修正されることを特徴とする、請求項8から14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
各燃焼サイクル中に多気筒内燃機関の各気筒毎に、前記エンジンの各回転中に時間によって変動する制御パラメータに応じて、請求項1から15の何れかで請求している方法によって、操作事象の実行を制御するためのシステムにおいて、
エンジンの各回転中の複数の個々の瞬間に前記制御パラメータのパラメータ値を捕捉するための少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)と、
前記気筒の各燃焼サイクル中に前記操作事象の実行の時機を図り、制御するために、捕捉された制御パラメータ値をデジタルパラメータ信号として前記内燃機関用の制御ユニット(28、47)へ通信するための手段と、を備えており、
前記少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)は、少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)と、そこへ前記デジタルパラメータ信号を送るために接続されており、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)は、標準的な通信バスネットワーク(20;39、40)内に或るノード(29)を形成しており、そのネットワークの別のノードは、前記制御ユニット(28;47)に関係付けられているコントローラインターフェースモジュール(22)によって個別に形成されており、
メッセージ作成手段(18)は、前記デジタルパラメータ信号を含むデータメッセージを作成するために設けられており、送信手段(19)は、前記データメッセージを前記バスネットワーク(20;39、40)を介して前記コントローラインターフェースモジュール(22)のそれぞれに同時一斉送信することにより通信するために設けられており、
随意的に、補正データを作成するための手段(16、17)は、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)内に、前記補正データを、前記メッセージ作成手段によって作成された前記データメッセージ内に追加して含めるために設けられており、補正手段は、各コントローラインターフェースユニット(22)によって、前記通信バスネットワークを介する送信によって生じる前記パラメータ信号のリアルタイム通信からの偏差を、連続するデータメッセージの前記コントローラインターフェースモジュール(22)による受信の間の各間隔毎に前記制御パラメータの推定値を計算することによって補正するために設けられており、前記計算は、前記制御パラメータの値と、送信される各メッセージに含まれる前記補正データから行われる、ことを特徴とするシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)は、前記各気筒のピストン部材と接続されているエンジンクランク軸(11)の瞬間的角度位置の値を、前記制御パラメータとして用いるために捕捉するように配置されていることを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記通信バスネットワーク(20;39、40)は、前記少なくとも1つのセンサー装置(12;31、32)による前記制御パラメータ値の捕捉と、前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)への前記デジタルパラメータ信号の供給とに関係無く、前記データメッセージの送信が行われるように配置され、制御されていることと、補正データを作成するための前記手段は、第1及び第2補正データを作成するために配置されており、前記第1補正データは、対応する前記制御パラメータ値の捕捉の瞬間における、前記データメッセージに含まれている前記デジタルパラメータ信号の変化率/(Δtvelocity)を表しており、前記第2補正データは、対応する前記制御パラメータ値の捕捉の前記瞬間と前記データメッセージの送信の前記瞬間の間の時間のずれ(Δtoffset)を表していること、を特徴とする、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1及び第2補正データを作成するための前記手段は、エンコーダタイマー手段(16)を備えており、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)に送られる前記デジタル制御パラメータ信号が変化する度に前記エンコーダタイマー手段(16)をリセットするために、リセット段階が設けられており、前記第1補正データは、前記エンコーダタイマー手段(16)がリセットされたときの前記タイマー計数(Δtvelocity)として作成され、前記第2補正データは、前記エンコーダタイマー手段(16)の連続するリセットの間の間隔におけるデータメッセージの送信時の、前記エンコーダタイマー手段(16)の前記タイマー計数(Δtoffset)として作成されることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
手段(17)は、前記第2補正データ(Δtoffset)を、前記バスネットワークを介する前記データメッセージの送信に関する送信時間の遅延(Δttransmission)を示す定数を加えることによって修正するために、前記エンコーダインターフェースモジュール内に設けられていることを特徴とする、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
前記推定制御パラメータ値を計算するために各コントローラインターフェースモジュール(22)に関係付けられている推定手段(23;43、44)は、前記推定値を、線形外挿によって、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)から受信される各データメッセージに含まれている前記制御パラメータの値から計算するための外挿手段(25)を備えていることを特徴とする、請求項16から20の何れかに記載のシステム。
【請求項22】
前記外挿は、前記制御パラメータを同じデータメッセージに含まれている前記補正データから計算される反復間隔で捕捉する2つの連続する個々の瞬間の間の前記制御パラメータ値の変化を表している定数を繰り返し加えることを含んでおり、前記反復間隔は、前記外挿手段(25)と接続されているリセットタイマー計数(Δtestimation、n)によって提供され、前記手段は、前記コントローラインターフェースモジュールによる各データメッセージの受信後に、前記第1補正データ(Δtvelocity)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって第1リセットタイマー計数(Δtestimation、1)を計算し、次の前に計算されたリセットタイマー計数(Δtestimation、n−1)から前記第2補正データ(Δtoffset、Δtoffsetmod.)を引くことによって、その後のリセットタイマー計数(Δtestimation、n)を計算するために、前記コントローラインターフェースモジュールによって提供されていることを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記標準的な通信バスネットワーク(20;39、40)は、前記メッセージを、それぞれが、前記エンコーダインターフェースモジュールによって形成されている前記ネットワークノードにより受信された送信勧誘トークン(30)に続いている、送信時間スロットで送信するためのトークンベースのネットワークであり、各メッセージは、前記デジタル制御パラメータ信号と、前記第1及び第2補正データに加えて、前記ネットワークノードを送信源として識別する識別データを含んでいることを特徴とする、請求項18から22の何れかに記載のシステム。
【請求項24】
前記トークンベースのネットワーク(20;39、40)は、順次ノード識別方式を含むネットワークプロトコルに従って操作され、前記方式では、個別のノードIDが、前記ネットワークの全てのノード(29)に、2つ以上のノードIDが前記少なくとも1つのエンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)に割り当てられるように割り当てられ、そのため、前記送信勧誘トークン(30)は、前記全てのノード(29)に順次送られることを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記メッセージ作成手段(18)は、前記ネットワークインターフェースモジュール(18)によって設けられ、前記メッセージを、前記通信バスネットワーク(20;39、40)を介して送信される標準的なメッセージと比べて長さが短い修正されたメッセージフォーマットで作成するように配置されていることを特徴とする、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
各コントローラインターフェースモジュール毎に、前記モジュールの他の部分から分離されている推定器装置(23;43、44)を備えている推定手段が設けられており、前記コントローラインターフェースモジュールと関係付けられているネットワークインターフェースモジュール(21;41、42)は、前記エンコーダインターフェースモジュール(13;33、34)から受信した一斉通信メッセージを、その様なメッセージ内での前記識別データの発生に応じて前記推定器装置(23;43、44)に直接送るための手段を備えていることを特徴とする、請求項23から25の何れかに記載のシステム。
【請求項27】
それぞれ独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)と関係付けられている2つの独立したセンサー装置(31、32)を含むことにより、冗長操作に備えて構成されており、前記独立したエンコーダインターフェースモジュールは、少なくとも2つの独立した通信バスネットワーク(39、40)を介してメッセージを送信し、前記2つの独立した通信バスネットワーク(39、40)のそれぞれに対して、前記別のノード(29)が、前記コントローラインターフェースモジュール(22)によって形成されていることを特徴とする、請求項18から26の何れかに記載のシステム。
【請求項28】
前記独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)のそれぞれは、メッセージ通信のために、前記少なくとも2つの独立した通信バスネットワーク(39、40)の全てと接続されていることを特徴とする、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
各コントローラインターフェースモジュール(22)毎に、独立した推定手段(43、44)が、前記独立したバスネットワーク(39、40)のそれぞれを介して送信されるメッセージ用の前記制御パラメータの推定値を作成するために設けられており、前記独立したエンコーダインターフェースモジュール(33、34)の一方からのメッセージから得られる推定値の選択は、少なくとも1つの選択基準の遵守に依存して前記推定手段(43、44)に関係付けられている選択手段(45)によって行われることを特徴とする、請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記標準的なバスネットワーク(20;39、40)の各ネットワークインターフェースモジュール(35−38、41、42)は、前記バスネットワーク上の一般的なデータ通信のためにArcNetプロトコルに従って作動するArcNetコントローラを備えており、前記プロトコルは、標準的なArcNet通信要件からの偏差を考慮して、前記エンコーダインターフェースモジュールからの前記メッセージの送信に備えて修正されていることを特徴とする、請求項18から29の何れかに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−223565(P2008−223565A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−61448(P2007−61448)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(594140904)マーン・ベー・オグ・ドバルドヴェー・ディーゼール・アクティーゼルスカブ (22)
【氏名又は名称原語表記】Man B&W Diesel A/S
【住所又は居所原語表記】Center Syd,161 Stamholmen,DK−2650 HVIDOVRE,Denmark
【Fターム(参考)】