説明

多発性嚢胞腎を処置するためのラパマイシン誘導体またはIMPDH阻害剤

それらの処置を必要とする対象に治療有効量のイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤またはラパマイシン誘導体を投与することを含む、多発性嚢胞腎を処置するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性嚢胞腎を処置するための薬剤、さらに具体的にラパマイシン誘導体およびイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは式
【化1】

で示されるストレプトミセス属ヒグロスコピクスにより製造される既知のマクロライド系抗生物質である。
【0003】
ラパマイシン誘導体は、置換ラパマイシン、例えば40および/または16および/または32位で置換されているラパマイシンを含む。
ラパマイシン誘導体の例は、40−O−アルキル−ラパマイシン誘導体、例えば、40−O−ヒドロキシアルキル−ラパマイシン誘導体、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)−エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、
40位をヘテロシクリルにより置換されているラパマイシン誘導体、例えば、40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578としても既知)、
32−デオキソ−ラパマイシン誘導体および32−ヒドロキシ−ラパマイシン誘導体、例えば、32−デオキソラパマイシン、
16−O−置換ラパマイシン誘導体、例えば、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、
酸素基で40位をアシル化されているラパマイシン誘導体、例えば、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−プロピオン酸メチル]−ラパマイシン(CCI779またはテムシロリムスとしても既知)、
例えば、AP23573、例えば、40−O−ジメチルホスフィニル−ラパマイシンを含む、WO9802441またはWO0114387に記載されているようなラパマイシン誘導体(ときどきラパログとも称される)
40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン、およびTAFA−93、AP23464、AP23675またはAP23841の名の下に記載されている化合物を含むバイオリムス(バイオリムスA9)の下に記載されている化合物;または
例えば、WO2004101583、WO9205179、WO9402136、WO9402385およびWO9613273に記載されているようなラパマイシン誘導体を含む。
【0004】
好ましいラパマイシン誘導体は、
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、および/または
32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、および/または
40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−プロピオン酸メチル]−ラパマイシン(CCI779としても既知)および/または
40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578としても既知)、および/または
例えば、WO9802441、WO0114387およびWO0364383、AP23573、AP23464、AP23675またはAP23841、例えば、AP23573に記載されている、いわゆるラパログ、および/または
TAFA−93の名の下に記載されている化合物、および/または
バイオリムスの名の下に記載されている化合物を含む。
【0005】
さらに好ましくはラパマイシン誘導体は、
40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(エベロリムスとしても既知)、および/または
32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、および/または
40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−プロピオン酸メチル]−ラパマイシン(CCI779またはテムシロリムスとしても既知)および/または
40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578としても既知)、および/または
AP23573、
例えば、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンからなる群から選択される。
【0006】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)はグアノシンヌクレオチドの新規合成と関連している酵素である。IMPDHは、イノシン−5’−一リン酸(IMP)のキサントシン−5’−一リン酸(XMP)へのNAD−依存酸化を触媒する(Jackson R. C. et. al., Nature, 256:331-333 (1975))。
【0007】
IMPDH阻害剤は既知であり、例えば、リバビリン、チアゾフリン、Vertex VX148、VX−497、VX944、メリメポディブ、ベンズアミドリボシド、ミコフェノール酸および塩、商標名Cellcept(登録商標)としても既知であるミコフェノール酸モフェチル(例えば、リバビリンと一緒にまたはリバビリンなしで、標準的なまたはPEG化されたインターフェロンα−2aと組み合わせて);Avalon AVN944を含む。
【0008】
MPAとしても本明細書に記載さているミコフェノール酸は、1896年に初めて単離された。適当なMPA塩は陽イオン塩、例えば、アルカリ金属塩、とりわけナトリウム塩、例えば、一または二ナトリウム塩、好ましくは一ナトリウム塩を含む。MPAのプロドラッグは、例えば、US4753 935に記載の、例えば、生理学的に加水分解できるMPAのエステル、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)としても既知であるモルホリノエチルエステルを含む。好ましくはナトリウムとのミコフェノール酸塩、例えば、ミコフェノール酸ナトリウムである。腸の上部で放出されるために腸溶被覆するかまたは適応させたとき、ミコフェノール酸塩は特に免疫抑制適応症に対して、例えば、細胞、組織または臓器同種移植片拒絶反応の処置または予防に対して有効な、良好な耐用性である、医薬となる。
【0009】
多発性嚢胞腎(PKD)は腎臓の多数の嚢胞の増殖により特徴付けられる遺伝病である。嚢胞は液体で満たされている。PKD嚢胞がゆっくりと腎臓塊体の大部分に取って代わり、腎臓機能が低下し、腎臓機能不全に至る。
【0010】
腎臓はそれぞれ握りこぶし程度の大きさであり、個体の腹部の上部に位置し、後部にある2つの臓器である。腎臓は血液から老廃物を濾過し、尿を形成する。それらはまた身体の特定の重要な物質の量を調節している。
【0011】
通常長年の後に生じるが、PKDが腎臓を不全にしたとき、患者は透析または腎臓移植が必要である。主要なタイプのPKDを有する約半数の人が末期腎臓疾患(ESRD)とも呼ばれる腎臓機能不全に進行する。
【0012】
PKDは肝臓における嚢胞ならびに他の臓器、例えば、心臓および脳の血管の問題を引き起こし得る。これらの合併症は、医師がPKDと、しばしば高齢者において腎臓で形成される通常無害な“単純な”嚢胞を区別することに役立つ。
【0013】
米国において、約500,000人がPKDを有し、腎臓機能不全を引き起こす4番目の原因である。医療専門家はPKDの2種の主要な遺伝型および非遺伝型、すなわち成人型優性PKD(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)および後天性嚢胞腎(ACKD)を記載する。
【0014】
成人型PKD(APKD)はもっとも一般的な遺伝型である。成人型PKD(ADPKD)は常染色体優性疾患(ADPKD)である。ADPKDはもっとも一般的な単一遺伝子の遺伝疾患の1種である。該疾患は、管状(ductal)臓器、例えば、腎臓、肝臓および膵臓の嚢胞形成、ならびに結腸憩室炎、漿果状動脈瘤、ヘルニアおよび僧帽弁逸脱を含む消化器、心血管および筋骨格異常により特徴付けられる全身性疾患であると考えられている(Gabow et al., Adv. Nephrol, 18:19-32, 1989; Gabow, New Eng. J. Med ., 329:332- 342, 1993)。しかしながら、APKDのもっとも優勢かつ明白な症状は、腎臓嚢胞の形成であり、これは腎臓の著しい肥大化および腎臓濃縮力の減少を引き起こす。
【0015】
ADPKDが関連する腎臓嚢胞は数リットルの液体を含むまで拡張し、腎臓は通常徐々に拡張し、疼痛を引き起こす。疼痛、血尿、腎臓および尿路感染、腎臓腫瘍、塩および水の不均衡、高血圧および他の内分泌腺異常のような他の異常は腎臓異常から生じる。該疾患は上皮性細胞の増殖、腎臓嚢胞の形成、肝臓嚢胞、頭蓋内動脈瘤、腎臓機能不全の進行および尿路感染により特徴付けられる。症状は血尿(尿中に血液)、肝臓および膵臓嚢胞、心臓の弁の異常、高血圧、腎臓結石、脳の動脈瘤(血管壁の膨張)および憩室症(大腸の小嚢)を含む。
【0016】
APKD患者の約半数において、該疾患は末期腎臓疾患にまで進行する;したがって、米国および欧州の場合、APKDは腎臓透析および移植の4−8%の原因である(Proc. European Dialysis and Transplant Assn., Robinson and Hawkins, eds., 17: 20, 1981)。したがって、当分野において、この疾患の発症および重度を減少するための治療ツールが必要である。
【0017】
ADPKDは疼痛、尿路感染および高血圧と関連する。現在、好結果の疾患処置の不足を考慮して、これらの症状しか処置できない。
【0018】
常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)は周生期の死および小児期腎不全の腎臓の重要な原因である。新生児の症状提示は特有であり、集合管の紡錘形拡張によって非常に拡大した腎臓により特徴付けられる;先天性肝線維症は高齢の患者における主な合併症である。この複雑な疾患の理解が、最近染色体領域6pl2における疾患原因遺伝子であるPKHD1の同定により進展した。PKHD1は67個のエクソンおよび12,222bpのオープンリーディングフレーム(ORE)を含む非常に大きな遺伝子(470kb)である。PKHD1は胎児および成人の腎臓で高レベルであるならびに肝臓、膵臓および肺で低レベルである組織特異的発現パターンを有する。マウスのオルソログであるPlldlが最近、発見された。
【0019】
常染色体劣性PKDを有する子供は高血圧、尿路感染および頻尿を経験する。該疾患は、通常肝臓、脾臓および膵臓に影響を与え、白血球減少、静脈瘤および痔を引き起こす。腎臓機能が初期の身体発育に対して重要であるため、常染色体劣性PKDを有する子供は通常、平均サイズよりも小さい。これらの症状の処置は血圧の制御、尿路感染の制御、および、ときどきの成長ホルモンの投与を含む。
【0020】
ACKDは長期間の損傷および悪い瘢痕を有する腎臓において発症し、そのため透析および末期腎臓疾患と関連する。5年間透析している約90%の人はACKDを発症する。ACKDを有する人は糸球体腎炎または糖尿病の腎臓疾患のようななんらかの基礎腎臓疾患を有し得る。
【0021】
症状はACKDの嚢胞が出血し得ることを含む。腎臓(kidney)(腎臓(renal))癌を含む腎臓腫瘍はACKDを有する人において発症し得る。腎臓癌はまれであるが、それは、しばしば、ACKD患者において一般集団の少なくとも2倍発症する。
【発明の開示】
【0022】
今回、驚くべきことに、イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤およびラパマイシン誘導体が多発性嚢胞腎を処置するために使用できることを見いだした。
【0023】
特定の発見によって、本発明は、下記を提供する:
1.1 多発性嚢胞腎を処置するための方法であって、それらの処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
1.2 多発性嚢胞腎と関連する腎嚢胞の増殖を阻害するための方法であって、それらの処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
1.3 多発性嚢胞腎を抑制または制御するための方法であって、それらの処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
1.4 多発性嚢胞腎の緩解、例えば、嚢胞塊の減少を誘導するための方法であって、それらの処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
1.5 多発性嚢胞腎と関連する障害を処置するための方法であって、それらの処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
1.6 上記1.1から1.5のいずれかに記載の方法において使用するための薬剤の製造のためのラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤の使用。
1.7 上記1.1から1.5のいずれかに記載の方法で使用または使用するための、ラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤をさらに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、例えば、増量剤、結合剤、崩壊剤、フロー調節剤、滑剤、糖または甘味剤、芳香剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩および/バッファーを含む、例えば、適当な担体および/または希釈剤と一緒に含む医薬組成物。
【0024】
本明細書に記載の多発性嚢胞腎は、PKD(ADPKD)の常染色体優性型である成人型多発性嚢胞腎(ADKP)、常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)および後天性嚢胞腎(ACKD)を含む。
【0025】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤またはラパマイシン誘導体は“本発明の(による)化合物”として本明細書に記載されている、ただし、本発明の化合物は、イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤またはラパマイシン誘導体のいずれかである。
【0026】
本発明の化合物は、単独または1種またはそれ以上、少なくとも1種の第2の薬剤と組み合わせて、例えば、本明細書に記載の1.1から1.6のいずれかの方法で使用できる。
【0027】
他の局面において、本発明は下記を提供する、
2.1 例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載において使用するための、本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤の組合せ。
2.2 例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載において使用するための、本発明の化合物を少なくとも1種の第2の薬剤と組み合わせて含む医薬組合せ。
2.3 例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載において使用するための、本発明の化合物を少なくとも1種の第2の薬剤および1種またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
2.4 例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載において使用するための、第2の薬剤と組み合わせて使用するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用。
2.5 例えば、医薬組合せまたは組成物の形態で、同時にまたは連続して、治療有効量の本発明の化合物および少なくとも1種の第2の薬剤を共投与することを含む、上記1.1から1.5のいずれかに記載の方法。
2.6 例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載の方法で使用するための、薬剤の製造において使用するための少なくとも1種の第2の薬剤と組み合わせた本発明の化合物。
【0028】
組合せは本発明の化合物および少なくとも1種の第2の薬剤が同じ製剤中である固定された組合せ;別々の製剤で本発明の化合物および少なくとも1種の第2の薬剤を同じパッケージ中で、例えば、共投与の指示書と一緒に提供するキット;および本発明の化合物および少なくとも1種の第2の薬剤が別々にパッケージングされているが、同時にまたは連続して投与するための指示書が与えられる、自由な組合せを含む。
【0029】
他の局面において、本発明は、下記を提供する、
例えば、上記1.1から1.5のいずれかに記載において使用するための、
2.7 本発明の化合物である第1の薬剤および少なくとも1種の第2の薬剤と組合せ投与のための指示書を含む医薬パッケージ;
2.8 本発明の化合物と少なくとも1種の第2の薬剤と組合せ投与するための指示書を含む医薬パッケージ;
2.9 少なくとも1種の第2の薬剤と本発明の化合物と組合せ投与するための指示書を含む医薬パッケージ。
【0030】
本発明の組合せ処置は単剤処置と比較しての改善を提供する。
他の局面において、本発明は、下記を提供する、
例えば、上記1.1から1.6のいずれかに記載において使用するための、
2.10 相乗治療効果を得るために適当な量の本発明の化合物および第2の薬剤を含む医薬組合せ。
2.11 例えば、同時にまたは連続して、治療有効量の本発明の化合物および第2の薬剤を共投与することを含む本発明の化合物の治療有用性を改良するための方法。
2.12 例えば、同時にまたは連続して、治療有効量の本発明の化合物および第2の薬剤を共投与することを含む、第2の薬剤の治療有用性を改良するための方法。
【0031】
上記2.11から2.12の医薬組合せまたは方法において、本発明の化合物または第2の薬剤の活性を単剤処置と比較して増強することができ、例えば、上記1.1から1.6のいずれかに記載の方法で使用するとき、例えば、組合せ処置は相乗効果をもたらすか、または本発明の化合物または化学療法剤に対する抵抗性を克服できる。
【0032】
2.1から2.12に記載の(医薬)組合せ、例えば、組成物は下記を含む
a)本発明の化合物である第1の薬剤および
b)例えば、上記または下記に定義の化学療法剤である、共薬剤としての第2の薬剤。
ただし、第1の薬剤はラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤のいずれかであり、第1の薬剤がラパマイシン誘導体である場合、第2の薬剤はイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を含む;逆もまた同様。
【0033】
本発明の障害(疾患)の処置は処置および防止(予防)を含む。
このような処置に関して、適当な用量はもちろん、例えば、使用される化合物の化学的性質および薬物動態学的データ、個々の宿主、投与経路および処置される状態の性質および重症度に依存して変化する。しかし、一般に、大型哺乳類、例えば人において満足のいく結果のための指示される1日用量は
−約0.0001gから約1.5g、例えば0.001gから1.5g、
−約0.001mg/kg体重から約20mg/kg体重、例えば0.01mg/kg体重から20mg/kg体重、
の範囲を含み、
例えば1日に4回までの分割用量で投与される。
【0034】
本発明により提供される方法、使用、組合せ、医薬組合せまたは医薬組成物において、ラパマイシン誘導体は、適当、例えば、ラパマイシン誘導体に対して既知である用量で、投与形路、例えば、経腸的、例えば、経口的、または非経腸的のいずれかにより投与できる。例えば、エベロリムスは、例えば、経口的に、0.1mgから15mg、例えば、0.1mgから10mg、例えば、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、2.5mg、5mg、または10mg、より好ましくは0.5mgから10mgの用量で、例えば、(分散できる)錠剤で;例えば、固体分散体の形態でエベロリムスを含んで投与でき;例えば、1週間の用量は処置すべき疾患に依存して70mgまで、例えば、10から70、例えば、30から50mgであり得る。テムシロリムスは非経腸的に同じ用量範囲で投与できる。
【0035】
本発明により提供される方法、使用、組合せ、医薬組合せまたは医薬組成物において、IMPDH阻害剤は、例えば、記載の生成物にしたがって適当に投与できる。例えば、ミコフェノール酸ナトリウムは、例えば、錠剤の形態で、例えば、経口的に投与できる。腸溶被覆したミコフェノール酸のナトリウム塩はまた商標名Myfortic(登録商標)の下に既知である。用量範囲は、例えば、50mgから1500mg、例えば、100mgから1000mg、例えば、150mgから500mg、例えば、180mg、360mgを含む。
【0036】
第2の薬剤は、適当に、例えば、慣用の方法に従って、例えば、特定の薬剤で単剤処置のために与えられた投与指示に準じて、組合せ治療において投与できる。
【0037】
本発明の第2の薬剤は、なんらかの慣用の経路で、例えば、経鼻、経口内、経直腸、経口投与を例えば含む経腸;静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内注入、経皮(表皮を介する拡散)、経粘膜(粘膜を介する拡散)、吸入投与を含む非経腸で;腹腔内(腹腔への注入または注射)に;硬膜外(epidural)(硬膜上腔への注射または注入)に;髄腔内(髄液への注射または注入)に;硝子体内(眼を介する投与)に;または、例えば、局所送達のための医療デバイス、例えば、ステントを介して
例えば、被覆または非被覆錠剤、カプセル、(注射)溶液、注入溶液、固溶体、懸濁液、分散体、固体分散体の形態で;例えば、アンプル剤、バイアルの形態で、クリーム、ゲル、ペースト、吸入粉末、泡状物、チンキ剤、リップスティック、ドロップ、スプレー状の形態で、または座薬の形態で投与できる。
【0038】
本発明の第2の薬剤は、薬学的に許容される塩形、または遊離形;所望により溶媒和物形で投与できる。
本発明の医薬組成物は、慣用の方法にしたがって、例えば、準じて、例えば、混合、造粒、被覆、溶解または凍結乾燥法により製造できる。単位用量形は、例えば、約0.1mgから約1500mg、例えば、1mgから約1000mgを含み得る。
本発明の組合せを含む医薬組成物および本明細書に記載のとおりの第2の薬剤を含む医薬組成物は、適当なとき、例えば、慣用の方法にしたがって、例えば、準じて、または本発明の医薬組成物に対して本明細書で記載のとおりで提供される。
【0039】
本明細書で使用される“第2の薬剤”なる用語は、
a)第1の薬剤がラパマイシン誘導体である場合、
−第1の薬剤以外のラパマイシン誘導体、もしくは
−ラパマイシン誘導体以外の化学療法剤、または
b)第1の薬剤がイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤である場合、
−第1の薬剤以外のイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤、
−イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤以外の化学療法剤を意味する。
【0040】
このような第2の薬剤は好ましくはPKDおよび/またはPKD症状の処置における治療に有効であり、そして所望により、例えば、PKD症状処置のために、例えば、抗生物質、血圧低下剤、鎮痛剤を含む。
このような第2の薬剤はさらにラパマイシンを含む。
【0041】
好ましくは本明細書で使用される第2の薬剤は、第1の薬剤がラパマイシン誘導体である場合を含む、
−イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤、
−鎮痛剤、
−抗生物質、
−血圧低下剤(blood lowering agent)。
【0042】
好ましい組合せは下記を含む、
−鎮痛剤、抗生物質および/または血圧低下剤と組み合わせたラパマイシン誘導体;
−鎮痛剤、抗生物質および/または血圧低下剤と組み合わせたイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤;
−所望によりさらに鎮痛剤、抗生物質および/または血圧低下剤を含む、イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤と組み合わせたラパマイシン誘導体。
【0043】
他の局面において、本発明は下記を提供する
3.1 40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(エベロリムスとしても既知)、および/または
32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、および/または
16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、および/または
40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−プロピオン酸メチル]−ラパマイシン(CCI779としても既知)および/または
40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578としても既知)、および/または
例えば、WO9802441、WO0114387およびWO0364383、AP23573、AP23464、AP23675またはAP23841、例えば、AP23573に記載されている、いわゆるラパログ、および/または
TAFA−93の名の下に記載されている化合物、および/または
バイオリムスの名の下に記載されている化合物、
例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(本明細書において“化合物A”とも称する)から選択される、上記1.1から1.7および2.1から2.13に記載のいずれかの方法、組合せ、医薬組合せ、医薬組成物または使用。
【0044】
3.2 本発明の化合物が、イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤、例えば
リバビリン、チアゾフリン、Vertex VX148、VX−497、VX944、メリメポディブ、ベンズアミドリボシド、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸塩、ミコフェノール酸ナトリウム、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸モフェチル(リバビリンと一緒にまたはなしで、標準的なまたはPEG化されたインターフェロンα−2aと組み合わせて)またはAVN944、
例えば、商標名MYFORTIC(登録商標)の元に販売されている、例えば、ミコフェノール酸ナトリウム
から選択される、上記1.1から1.7および2.1から2.13に記載のいずれかの方法、組合せ、医薬組合せ、医薬組成物または使用。
【0045】
好ましい局面において、本発明は、成人型優性多発性嚢胞腎を処置するための上記1.1から1.7および2.1から2.13に記載のいずれかの方法、組合せ、医薬組合せ、医薬組成物または使用を提供する。
【0046】
別の好ましい局面において、本発明は、常染色体劣性多発性嚢胞腎を処置するための上記1.1から1.7および2.1から2.13に記載のいずれかの方法、組合せ、医薬組合せ、医薬組成物または使用を提供する。
【0047】
別の好ましい局面において、本発明は、後天性嚢胞腎を処置するための上記1.1から1.7および2.1から2.13に記載のいずれかの方法、組合せ、医薬組合せ、医薬組成物または使用を提供する。
【0048】
抗生物質、鎮痛剤および/または血圧低下剤は既知であるか、または必要に応じて提供される。
【0049】
特許出願または科学刊行物が引用されたそれぞれの場合において、その化合物に関連する主題発明を、出典明示により本明細書に包含する、例えば、薬学的に許容されるそれらの塩、対応するラセミ体、ジアステレオマー、エナンチオマー、互変異性体ならびに、存在するとき上記化合物の対応する結晶変態、例えば、溶媒和物、水和物および多形(これらはそれらの中に開示されている)を同様に含む。本発明の組合せにおける活性成分として使用される化合物は、それぞれ、引用文献または商品の説明書きにおいて記載されたように製造および投与され得る。また、上記2を超える別々の活性成分の組合せも本発明の範囲内である、すなわち、本発明の範囲内の医薬組合せは、3またはそれ以上の活性成分を含み得る。さらに、第1の剤および共薬剤の両方が同一の成分ということはない。
【0050】
コードナンバー、一般名または商標名により特定される薬剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)または上記および下記文献から得ることができる。それらの対応する内容を出典明示により本明細書に包含させる。
【0051】
PKDの処置における本発明の化合物の有用性は、例えば、既知のラットモデルのようなPKDのラットモデルで示すことできる。ラパマイシン誘導体およびイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤は特にこのようなラットモデルにおいて特に適当であることが明白である。
臨床試験は準備中である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性嚢胞腎を処置するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項2】
多発性嚢胞腎と関連する腎嚢胞の増殖を阻害するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項3】
多発性嚢胞腎を抑制または制御するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項4】
多発性嚢胞腎の緩解を誘導するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項5】
多発性嚢胞腎と関連する障害を処置するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量のラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法において使用するための薬剤の製造のためのラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤の使用。
【請求項7】
さらに治療有効量の少なくとも1種の第2の薬剤を投与することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1の薬剤がラパマイシン誘導体であり、第2の薬剤がイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の方法において使用するための薬剤の製造のためのラパマイシン誘導体またはイノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤の使用。
【請求項10】
ラパマイシン誘導体が40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンである、請求項1から8のいずれかに記載の方法または請求項9に記載の使用。
【請求項11】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素阻害剤がミコフェノール酸ナトリウムである、請求項1から8のいずれかに記載の方法または請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2009−516673(P2009−516673A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540628(P2008−540628)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068676
【国際公開番号】WO2007/057466
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】