説明

多相化粧料組成物

【課題】 多相化粧料組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、(1)粘度が5〜50cpsであるポリジメチルシロキサン成分を20〜40重量%;(2)ポリエーテル型ポリオールおよびアルキルカルボン酸のエステルであり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位およびアルキルカルボン酸の構造単位の両方の炭素原子数が6〜20であり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位とアルキルカルボン酸の構造単位との炭素原子数の差の絶対値が2以下である両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分を10〜35重量%;および(3)ポリオール成分を25〜50重量%、を含む化粧料組成物に関する。この化粧料組成物は、メークアップ除去料組成物として使用することができ、使用の際に相が均一になるまで振とうしたものは、メークアップ除去力およびクレンジング力が良好であり、かつ容易に洗い流すことができ、洗い流した後は滑らかで柔軟な皮膚感触が残り、一定の期間静置した後は各層が透明な3層構造を取り戻す。さらに、この化粧料組成物は、皮膚表面に残留するスキンケア製品に使用することも、毛髪表面に残留する、ツヤを高め、かつ櫛通り性を向上させるためのヘアケア製品に使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、静置すると2以上の層に分離する、化粧品産業において幅広い用途が見出される化粧料組成物、より詳細には、メークアップ除去料組成物としての化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
2相の液状メークアップ除去料はボディケア分野において既に十分に確立されており、これらは2層にはっきりと分かれた液状製品の外観を呈している。このような製剤には一般に水相および油相が含まれており、これらの相は界面活性成分を含んでいない。そのため、この2相が混和せず、乳化作用が存在しないことによって、2つの分離した層が形成される。しかしながら、この種の製品には多くの欠点がある。例えば、これらが着色されたメークアップ料を溶解させる機能は、油または脂肪のクレンジング作用のみによって果たされている。その結果として、この種の製品は皮膚から容易に洗い流すことができず、したがって、拭き取るかまたは他の洗浄剤を用いて除去するしかない。さらに、これらは油および水の単純な2相系からなり、したがって、相が均一になるように相を混合した後に相が分離するまでの速度が速いため、使用の際に不便である。この種の製品が消費者を惹き付ける大きな理由は、見た目が透明であることに加えて色の異なる2つの層を有しているという点にあり、この特徴が魅力的な外観を作り出している。これと同じ観点から、3つの透明な層に分離する製剤も同様に開発されている。この場合もやはり、水相を、相互に混和しにくく密度の差が比較的大きい2種類の油相と組み合わせることが製剤の主な基本となる。したがって、結局はこの種の製剤も上述した2層の均等物と全く同じで、やはり簡単には洗い流すことができない。
【0003】
そのため、すすぎが容易な多相メークアップ除去料組成物が求められ続けている。さらに、すすぎが容易なメークアップ除去料組成物は、静置すると3層に分離し、着色前は各層が透明であり、使用に都合のよい相分離速度を有することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、皮膚から洗い流すことができる化粧料組成物を提供することにあり、このすすぎが容易な組成物は、さらに望ましくは、メークアップ料の除去に適しているべきであり、かつ単純に静置することによって自然に3層に分離すべきである。着色前の層が透明であることおよび使用に適切な相分離速度を有することによって利点が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の説明
驚くべきことに、上に示した目的が、組成物の総重量を基準として、以下の成分:
(1)ブルックフィールド回転粘度計を使用し、スピンドルNo.2を用いて回転数を100rpmとし、25℃で測定した粘度が5〜50cpsである、少なくとも1種のポリジメチルシロキサンを20〜40重量%;
(2)ポリエーテル型のポリオールとアルキルカルボン酸とのエステルであり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位およびアルキルカルボン酸の構造単位の両方の炭素原子数が6〜20であり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位中の炭素原子数およびアルキルカルボン酸の構造単位中の炭素原子数の差の絶対値が2以下である、少なくとも1種の両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステルを10〜35重量%;および
(3)少なくとも1種のポリオールを25〜50重量%
を含む化粧料組成物によって達成されることが見出された。
【0006】
この場合、上述の粘度は、成分(1)全体に関するものである。
【0007】
本発明の化粧料組成物は静置すると3層に分離し、その特有の特徴は、どの層も透明であり;相が均一になるまで振とうしてから使用すると、特にメークアップ料に対し良好なクレンジング力を示し、化粧料組成物自体が洗浄によって除去される能力は、界面活性剤様式の作用を示す両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステルが使用されていることによって良好であり;本発明の組成物を洗浄によって除去した後は柔軟で滑らかな皮膚感触が残り;2〜60分間静置した後には3層構造を取り戻すことにある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による化粧料組成物は、熱力学的に安定な層状製品であり、これは、この無色の製品を相が均一になるまで振とうした後に静置した場合、2〜60分以内に自然に明瞭な境界面を有する3層に分離することを意味し、各層は透明であり、各層の透光性は、425nmで厚さ1cmの層について測定した場合、好ましくは80%以上であり、100%の透光性とは、リファレンスである水を表す。
【0009】
より好ましくは、本発明による化粧料組成物は、好適な相分離速度を示す3層組成物であり、これは、本発明による化粧料組成物が、相が均一になるまで振とうして5〜20分間静置した後に、明瞭な境界面を有する3層構造をとることを意味する。
【0010】
本発明によれば、本化粧料組成物は、粘度が5〜50cps、好ましくは10〜20cps(ブルックフィールド回転粘度計、スピンドルNo.2、回転数100rpm、25℃で測定)であるポリジメチルシロキサン成分を含む。このポリジメチルシロキサン成分に包含されるポリジメチルシロキサンは、直鎖ポリジメチルシロキサンであり、主鎖としてのケイ素−酸素結合(Si−O)を有するオリゴマーであり、このケイ素原子にメチル基が直接結合したものである。このポリジメチルシロキサンの分子量は比較的低く、粘度は比較的低い。
【0011】
本発明の文脈における直鎖ポリジメチルシロキサンとは、例えば、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等である。
【0012】
本発明による化粧料組成物においては、ポリジメチルシロキサン成分の比重が比較的低いため、最上層として現れるのが一般的である。ポリジメチルシロキサンの分子量が低いほどその比重および粘度は低くなるとともに、相分離速度は高くなり、その結果、ポリジメチルシロキサンの粘度を調整することによって所望の相分離速度を得ることができる。粘度が350cpsを超えるポリジメチルシロキサンを使用することは、その密度および粘度のため、他の成分から相分離することが難しくなるので適していない。さらに、例えば、粘度が2cps未満の直鎖ポリジメチルシロキサン等の揮発性ポリジメチルシロキサンを使用することは、これらの揮発速度が高過ぎるという理由から適していない。その結果、系中にはごく少量のポリジメチルシロキサンしか残留しないことになり、このことによって、やはり系の相分離速度が極端に低くなることになり、例えば24時間後でさえも安定な相分離が達成できなくなる。
【0013】
本発明に関し、許容可能な相分離速度を達成することを目的としてポリジメチルシロキサン成分中に存在させるポリジメチルシロキサンの個々の粘度は、通常は5〜150cps、好ましくは10〜50cpsであり、ただし、ポリジメチルシロキサン成分(1)を形成する、これらのポリジメチルシロキサンをすべて混合した混合物の粘度は、5〜50cps、好ましくは10〜20cpsである。
【0014】
本発明の場合、1種類のポリジメチルシロキサンを使用することも、2種類以上のポリジメチルシロキサンを使用することも勿論可能であり、ただし、後者の場合は、このようなポリジメチルシロキサンをすべて混合した混合物の粘度は5〜50cps、好ましくは10〜20cpsである。本発明において2種以上のポリジメチルシロキサンを使用する場合、たとえ1種のポリジメチルシロキサンまたは2種以上のポリジメチルシロキサンの粘度が5〜50cpsの範囲を超えていてさえも、これらを混合することにより全体の粘度が5〜50cps、好ましくは10〜20cpsであれば使用可能であることは当業者に明らかである。好ましくは、使用される個々のポリジメチルシロキサンの粘度はすべて5〜50cps、好ましくは10〜20cpsである。
【0015】
ポリジメチルシロキサン成分は、特に、Dow Corning CompanyからDC200およびDC225の商品名で市販されている製品またはEVONIK Goldschmidt GmbHからABIL(登録商標)20およびABIL(登録商標)50の商品名で市販されている製品であってもよい。
【0016】
本発明におけるポリジメチルシロキサン成分は、ジメチコンまたはメチルシリコーンオイルとして識別される場合もある。これらは同義であり、互いに交換して使用可能である。
【0017】
クレンジング力および相分離効果に関して言えば、本発明による化粧料組成物の総重量に対するポリジメチルシロキサン成分の量は、通常は20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%である。
【0018】
本発明による化粧料組成物のさらなる重要な成分は、両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステルであり、これは、ポリエーテル型のポリオールとアルキルカルボン酸とのエステルであり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位およびアルキルカルボン酸の構造単位の両方の炭素原子数が6〜20であり、ポリエーテル型ポリオールの構造単位およびアルキルカルボン酸の構造単位中の炭素原子数の差の絶対値が2以下のものである。ポリエーテル型ポリオールは、好ましくは、重合度が2〜8である、グリセロールを縮合することにより得られるポリエーテルポリオール、エチレンオキシドを縮合することにより得られるポリオキシエチレンポリオール、および/またはプロピレンオキシドを縮合することにより得られるポリオキシプロピレンポリオール等であり、アルキルカルボン酸は、好ましくは6〜20個の炭素原子を有する脂肪酸、より好ましくは6〜16個の炭素原子を有する脂肪酸であり、例えば、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ヘキサンデカン酸等である。好ましい一実施形態においては、両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステルは、ポリグリセロールアルキルカルボン酸エステルおよびポリオキシエチレンのアルキルカルボン酸エステルを含む。
【0019】
好ましいポリグリセロールアルキルカルボン酸エステルは、ポリグリセロールと脂肪酸のエステル、より好ましくは、平均重合度が3〜5のポリグリセロールと8〜16個、好ましくは8〜12個の炭素原子を有する脂肪酸をエステル化することにより得られるポリグリセロール脂肪酸エステルであり、ポリグリセロールの構造単位および脂肪酸の構造単位の炭素原子数の差の絶対値が2以下のものである。この種のエステルの例としては、例えば、EVONIK Goldschmidt GmbHより入手可能なデカン酸ポリグリセリル−3(TEGO(登録商標)SOFT PC31)、デカン酸ポリグリセリル−4(TEGO(登録商標)SOFT PC41)、オクタン酸ポリグリセリル−3(TEGO(登録商標)COSMO P813)、およびラウリン酸ポリグリセリル−4(TEGO(登録商標)CARE PL4)が挙げられる。
【0020】
好ましいポリオキシエチレンのアルキルカルボン酸エステルは、ポリオキシエチレンと脂肪酸のエステル、より好ましくは、平均重合度が2〜8、好ましくは5〜8であるポリオキシエチレンと、6〜18個、より好ましくは8〜16個の炭素原子を有する脂肪酸をエステル化することにより得られるポリオキシエチレン脂肪酸エステルであり、ポリオキシエチレンの構造単位および脂肪酸の構造単位の炭素原子数の差の絶対値が2以下のものである。この種のエステルの例としては、デカン酸PEG−6、ラウリン酸PEG−6,ラウリン酸PEG−7、およびヤシ油脂肪酸PEG−7が挙げられる。
【0021】
本発明の場合、両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上の成分を組合せて使用してもよい。本発明による化粧料組成物の総重量に対する両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分の量は、通常は10〜35重量%、好ましくは15〜25重量%である。
【0022】
両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分が存在することにより、本発明による化粧料組成物に良好なクレンジング力および良好な洗い流し性が付与される。その密度に基づけば、この成分は中間層に最も多く現れるであろう。
【0023】
本発明による化粧料組成物の他の重要な成分はポリオールである。好ましくは、ポリオールはグリセロールおよび/またはプロピレングリコールであり、好ましくはグリセロールである。グリセロールは比較的高い比重を有するため、主に最下層に現れる。
【0024】
本発明による化粧料組成物の総重量に対するポリオール成分の量は、通常は25〜50重量%、好ましくは25〜35重量%である。
【0025】
これに加えて、本発明による化粧料組成物は、水も含んでいてもよい。水の存在は以下の役割を果たす:コストを低減し、製品のさっぱり感(freshness)を改善し、そして最も重要なのが、水を添加することにより中間層の厚みを増加させることができ、それによって中間層の親水性可塑剤相の量および最下層のグリセロール相の量を適切に調整できるようになることである。本発明による化粧料組成物の総重量に対する水の量は、一般に好ましくは10〜30重量、より好ましくは15〜30重量%である。グリセロールが本発明による化粧料組成物のポリオール成分として使用される場合は、グリセロール対水の重量比は、好ましくは2:1〜1:2である。
【0026】
本発明による化粧料組成物がより好ましい相分離速度を有するように特性を改善するために、本発明による化粧料組成物は、さらに非シリコーン油系の油および/または脂肪を含んでいてもよい。相分離速度は極性が増大するに従って増大し、非シリコーン油系の油および/または脂肪を添加することによって3相に分離する速度が増大し得る。したがって、本発明による化粧料組成物が3相に分離する速度は、任意のこの種の油および/または脂肪の性質および量に応じて影響され得る。
【0027】
本発明に好適な非シリコーン油系の油および/または脂肪には、2〜44個の炭素原子を有する直鎖および/または分岐のモノカルボン酸および/またはジカルボン酸と1〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖および/または分岐のアルコールとのモノエステルおよびジエステルが含まれる。同様に、2〜36個の炭素原子を有する二官能性脂肪族アルコールと1〜22個の炭素原子を有する単官能性脂肪族カルボン酸とのエステルを本発明の文脈における非シリコーン油系の油および/または脂肪として使用することも可能である。
【0028】
本発明の文脈において使用される非シリコーン油系の油および/または脂肪として、より詳細には、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル(例えば、メチルエステル、イソプロピルエステル等)、例えば、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、および/またはオレイン酸イソプロピル等を利用することが可能である。
【0029】
本発明の文脈において非シリコーン油系の油および/または脂肪として使用される好ましい化合物は、より詳細には、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、パルミチン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、および/またはオレイン酸エルシルである。
【0030】
本発明の文脈において使用される同様に特に好適な非シリコーン油系の油および/または脂肪は、例えば、アジピン酸ジ−n−ブチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、コハク酸ジ−2−ヘキシルデシル、および/またはアゼライン酸ジイソトリデシル等のジカルボン酸エステルである。同様に本発明の文脈において用いられる特に好適な非シリコーン油系の油および/または脂肪は、ジオレイン酸エチレングリコール、ジイソトリデカン酸エチレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸ブタンジオール、および/またはジカプリル酸ネオペンチルグリコール等のジオールエステルである。
【0031】
比較的長鎖を有するトリグリセリドも同様に好適であり、その例として、グリセロールと3つの酸分子(そのうち少なくとも1種は比較的長鎖の酸分子である)とのトリエステルが挙げられる。本明細書において述べることができる例としては、カプリル/カプリン酸混合物の合成トリグリセリド、工業用オレイン酸のトリグリセリド、イソステアリン酸のトリグリセリド、およびパルミチン酸/オレイン酸混合物のトリグリセリドを含む脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。
【0032】
さらに、オレイルアルコールやオクチルドデカノール等の直鎖または分岐の脂肪族アルコールに加えて、ジオクチルエーテルやPPG−3ミリスチルエーテル等の脂肪族アルコールエステル等を使用することも可能である。例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、菜種油、扁桃油、パーム油、ホホバ油等の天然の植物油に加えて、例えば、ヤシ油またはパーム核油の液体画分、さらには、例えば、鯨油、骨油、牛脂等の動物油の液体画分を利用することも可能である。
【0033】
本発明の文脈において用いられる非シリコーン油系の油および/または脂肪として、炭化水素油/脂肪、より詳細には、流動パラフィンおよびイソパラフィンを使用することも可能である。使用できる炭化水素油/脂肪は、例えば、パラフィンオイル、ホワイトミネラルオイル、イソヘキサデカン、ポリデセン、ペトロラタム、軽質流動パラフィン、およびスクアランである。
【0034】
さらに、安息香酸のエステル等のアリールカルボン酸のエステルも同様に好適であり、その例として、1〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖または分岐のアルコールを安息香酸でエステル化することによる安息香酸イソステアリルや安息香酸オクチルドデシル等の安息香酸エステル、例えば、好ましくは安息香酸アルキル(C12〜15)が挙げられる。
【0035】
本発明の文脈において使用される非シリコーン油系の油および/または脂肪として、例えば、炭酸ジエチルヘキシル等の炭酸ジエステルを用いることも可能である。
【0036】
本発明の文脈において使用してもよい非シリコーン油系の油および/または脂肪は、好ましくは、ホワイトミネラルオイル以上の極性を有する油および/または脂肪であり、これらは中程度および/または高い極性を有するものである。中程度の極性を有する非シリコーン油系の油および/または脂肪は、好ましくは、炭酸ジエチルヘキシル、トリオクタン酸グリセロール、安息香酸アルキル(C12−15)、および/またはオクチルドデカノールであり、高極性を有する非シリコーン油系の油および/または脂肪は、好ましくは、ポリプロパンジオールの構造単位(以下、PPGと称する)を有する非シリコーン油系の疎水性油および/または脂肪であり、その例としては、EVONIK Goldschmidt GmbHから供給されるPPG−3ミリスチルエーテル(TEGO(登録商標)SOFT APM)、PPG−11ステアリルアルコールエーテル(TEGO(登録商標)SOFT APS)、PPG−14ブチルエーテル(TEGO(登録商標)SOFT PBE)、および/またはPPG−15ステアリルアルコールエーテル(TEGO(登録商標)SOFT E)が挙げられ、PPG−3ミリスチルエーテルが好ましい。化粧品分野において、これらのエーテルは、一般に、非シリコーン油系の疎水性油および/または脂肪と見なされている。
【0037】
非シリコーン油系の極性油および/または脂肪の量が過剰になると、各層の透明性が低下することになり、換言すれば、わずかな濁りが生じる。したがって、非シリコーン油系の極性油および/または脂肪の成分の使用量は、本発明による化粧料組成物の総重量を基準として、通常は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0038】
魅力的な外観を有する本発明による化粧料組成物を作製することを目的として、例えば、組成物の最上層、中間層、および/または最下層を着色するために、より詳細には、中間層を着色するために、染料等の着色剤をさらに使用することが可能である。本発明による化粧品の3層の極性は異なっている。驚くべきことに、油溶性染料が、本発明による3層化粧品の中間層を選択的に着色しながら、それと同時に最上層および最下層を無着色のままにし、その一方で、水溶性染料はこのような優れた選択性を示さないことが見出された。本発明の文脈において使用してもよい油溶性染料は、好ましくは、以下の群:D&CイエローNo.11 キノリンイエロー;D&CグリーンNo.6 ソルベントグリーン;D&CバイオレットNo.2 ソルベントバイオレット13;およびD&CレッドNo.17 ソルベントレッド23から選択される。
【0039】
使用される染料の量は、当業者に周知のように、製品の総量、着色される層に必要とされる色純度および明度に合わせてもよい。
【0040】
本発明による化粧料組成物は一般的な化粧料の調製方法により得ることができ、例えば、全成分を均一に混合することにより調製することができ、これは熱力学的に安定な3相系を形成し、この3相は、3相が上下に順番に重なっている。
【0041】
本発明による化粧料組成物は静置することによって3層に分離し、各層は透明であり、各層の透光性は80%までであるかまたはそれを超える。本化粧料組成物を相が均一になるまで振とうすると、通常、2〜60分間静置後に再び明瞭な境界面を有する3層を形成することができる。本発明によれば、有利には、化粧料組成物を均一に混合した後に3層が完全に分離して明瞭な境界面を形成するまでの時間が5〜20分以内になるように粘度の異なるジメチコンを混合することによって、ポリジメチルシロキサン成分の粘度の制御ならびに/または非シリコーン油系の極性油/脂肪の性質および量の選択が可能になる。
【0042】
一般的に言えば、2つの境界面によって分離した1:1:1の3層構造は消費者に受け容れられやすい。比率が1:2:3または約1:2:1または他の比率の3層化粧品を得ることが所望される場合は、上述の3種の成分の比率を適切に調整することによって得ることができる。
【0043】
本発明による3層化粧品中にはくっきりとした2つの境界面を直接観察することができるが、現時点においては個々の層にどの成分が存在するかおよび各成分が個々の層にどのように分配されているかは明らかではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明による化粧料組成物は、特にメークアップ除去料組成物として使用することができ、この製品は、その低刺激性およびケア性(caring quality)、ならびにポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分の湿潤性に基づけば、洗い流さないヘアケア製品として使用することも、毛髪のツヤを高め櫛通り性を向上させるための洗い流さないヘアケア製品として使用することも可能である。
【0045】
実施例によって本発明を以下に説明するが、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されると解釈すべきではない。
【実施例】
【0046】
実施例1
【0047】
【表1】

【0048】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより化粧料組成物の製品1を得た。この製品は15分間静置後にほぼ等量の3つの層を有しており、これらの境界面は明瞭であり、中間層は青紫色であり、最上層および最下層は両方とも無色透明であることが観察された。
【0049】
使用時には、製品1を振とうまたは振動によって相が均一になるまで混合し、次いで、この製品を0.5〜1g抜き取って標的部位に適用すると、様々な種類の着色されたメークアップ料を容易に除去することができた。これは水できれいに洗い流され、皮膚を清浄化することが可能であった。使用後の皮膚感触は滑らかで柔軟であった。
【0050】
製品1の3層を、軽い方から重い方に向かって、最上層、中間層、最下層と識別した。使い捨てのシリンジ針を各層の中央部分に差し込み、その一部を慎重に吸引することにより試料を採取した。Unico Companyからの紫外可視分光光度計、型式2802を用いて、最上層、中間層、および最下層の透光性を波長425nmの条件で脱イオン水をリファレンスとして用いて測定した。以下に示すように、透光性の値に従い、個々の層の透明性を評価した:
透光性が90%以上であった場合、層は透明であると評価し、評点を1とし;
透光性が80%以上90%未満であった場合、層はやや濁っていると評価し、評点を2とし;
透光性が30%以上80%未満であった場合、層は半透明であると評価し、評点を3とし;
透光性が5%以上30%未満であった場合、層は不透明であると評価し、評点を4とし;
透光性が5%未満であった場合、層は完全に不透明であると評価し、評点を5とした。
【0051】
製品1の最上層、中間層、最下層の透明性を、上述した方法による試験に従い評価したところ、いずれも評点1であった。
【0052】
さらに、製品1について、室温下における安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施した。室温下における安定性試験は、試料を20〜25℃の室温下で3ヵ月間保持する試験とし;耐熱性試験は、試料を45℃で3ヵ月間保持する試験とし;凍結解凍試験は、試料を−15℃/室温の冷熱サイクルに3回かける試験とした。製品1について上に示したすべての試験を実施した結果、外観は試験開始時と同じ相分離状態のままであり、褪色等の現象は一切見られなかった。したがって、製品1が安定であることが示された。
【0053】
実施例2
【0054】
【表2】

【0055】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、水を含まない化粧料組成物の製品2を得た。外観的には、この製品を60分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、透明性を評価したところ、最上層から最下層に向かって、評点は2、1、および2であった。さらに、製品2について室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品2が安定であることが示された。
【0056】
実施例3
【0057】
【表3】

【0058】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、化粧料組成物の製品3を得た。外観的には、この製品を25分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、どの層も無色透明であり、透明性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品3について室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品3が安定であることが示された。
【0059】
実施例4
【0060】
【表4】

【0061】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、化粧料組成物の製品4を得た。外観的には、この製品を25分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、どの層も無色透明であり、透光性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品4について室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品4が安定であることが示された。
【0062】
実施例5
【0063】
【表5】

【0064】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、化粧料組成物の製品5を得た。外観的には、この製品を15分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、どの層も無色透明であり、透光性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品5について室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品5が安定であることが示された。
【0065】
実施例6
【0066】
【表6】

【0067】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、化粧料組成物の製品6を得た。外観的には、この製品を15分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、どの層も無色透明であり、透明性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品6について室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品6が安定であることが示された。
【0068】
比較例7および実施例8〜11
【0069】
【表7】

【0070】
比較例7および実施例8〜11について上の表に示した処方に従い、各処方ごとに全成分を均一に混合することによって、化粧料組成物の製品7〜11を得た。
【0071】
実施例8〜11から、5〜50cpsの範囲においては、静置することによって明瞭な境界面を伴う相分離が起こるまでに要する時間は、ジメチコンの粘度が増加するに従い長くなることがわかる。異なる粘度を有する異なるジメチコンを混合してポリジメチルシロキサン組成物を形成した場合でも、この組成物の合一後の粘度が5〜50cpsの範囲内であれば本発明の目的を達成できることは、当業者であれば予測することができる。粘度が5cps未満である場合は、ジメチコンの揮発性および浸透性が増大することになり、この系で3層構造を得ることが難しくなるであろう(比較例7参照)。
【0072】
さらに、製品8〜11について、室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品8〜11が安定であることが示された。
【0073】
実施例12
【0074】
【表8】

【0075】
上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより、化粧料組成物の製品12を得た。外観的には、この製品を60分間静置した後にほぼ等量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、どの層も無色透明であり、透光性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品12について、室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品12が安定であることが示された。
【0076】
本発明を用いた場合、非シリコーン油系の極性油/脂肪は選択可能な成分であり、低粘度のジメチコンを使用する場合は、この種の極性油/脂肪(例えば、極性油/脂肪である炭酸ジエチルヘキシルの等)の非存在下においてさえも比較的高い相分離速度を達成することができる。例えば、実施例12は、粘度が20cpsのジメチコンを含み、60分間を要したが、それと比較すると、ジメチコンおよび20cpsの炭酸ジエチルヘキシルを含む実施例10は、15〜16分間しか要しなかった。
【0077】
実施例13〜14
【0078】
【表9】

【0079】
実施例13〜14について上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより化粧料組成物の製品13〜14を得た。
【0080】
この試験から、油/脂肪の極性を高くするほど相分離速度をより効果的に加速することができることが見出された。実施例13において、例えば比較的極性の高いPPG−3ミリスチルエーテルを実施例10の炭酸ジエチルヘキシルに替えて添加すると、静置から5分以内に製品中に明瞭な境界面が現れたが、その一方で、実施例10では明瞭な境界面が現れるまでに15〜16分間を要した。実施例14に示した実施例の場合は、極性の弱いホワイトオイルを実施例10の炭酸ジエチルヘキシルに替えて使用したが、層分離(delamination)に約25分間を必要とした。
【0081】
さらに、製品13および14について、室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品13および14が安定であることが示された。
【0082】
実施例15〜19
【0083】
【表10】

【0084】
実施例15〜19について上の表に示した処方に従い全成分を均一に混合することにより化粧料組成物の製品15〜19を得た。外観的には、15〜20分後、これらの製品に同量の3つの層が観察され、層間の境界面は明瞭であり、その透光性を評価したところ、評点は1であった。さらに、製品15〜19について、室温下の安定性試験、耐熱性試験、および凍結解凍試験を実施したところ、製品15〜19が安定であることが示された。
【0085】
上に示した試験の結果から、中間層のみが着色された3層系を得るために、有利には油溶性染料を使用すべきであることが示された。黄色染料を使用した実施例15および19では、油溶性のD&CイエローNo.11は中間層のみを着色したが、その一方で、水溶性のD&CイエローNo.5は下側の2層に着色作用を示した。
【0086】
上の表中の「少量」とは、着色された領域に中程度の純度および明度を得ることが所望される場合は、総重量が100g以下の組成物である場合に使用される染料の量が通常は0.001g未満であることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料組成物であって、前記組成物の総重量を基準として、以下の成分:
(1)20〜40重量%の少なくとも1種の、ブルックフィールド回転粘度計でスピンドルNo.2を用いて回転数を100rpmとして25℃で測定した粘度が5〜50cpsである、ポリジメチルシロキサン;
(2)10〜35重量%の少なくとも1種の、ポリエーテル型のポリオールとアルキルカルボン酸とのエステルであって、前記ポリエーテル型のポリオールの構造単位および前記アルキルカルボン酸の構造単位の両方の炭素原子数が6〜20であり、前記ポリエーテル型のポリオールの前記構造単位および前記アルキルカルボン酸の前記構造単位の前記炭素原子数の差の絶対値が2以下である、両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル;および
(3)25〜50重量%の少なくとも1種のポリオール
を含む組成物。
【請求項2】
前記両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分(2)が、ポリグリセロールアルキルカルボン酸エステル、ポリオキシエチレンのアルキルカルボン酸エステル、またはこれらの混合物であり、
前記ポリグリセロールアルキルカルボン酸エステルが、好ましくはポリグリセロールと脂肪酸のエステル、より好ましくは平均重合度が3〜5であるポリグリセロールと8〜16個、好ましくは8〜12個の炭素原子を有する脂肪酸をエステル化することにより得られるポリグリセロール脂肪酸エステルであり、前記ポリオキシエチレンのアルキルカルボン酸エステルが、好ましくはポリオキシエチレンと脂肪酸のエステル、より好ましくは平均重合度が2〜8であるポリオキシエチレンと6〜18個の炭素原子を有する脂肪酸をエステル化することにより得られるポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分(2)が、以下の群の1種またはそれ以上から選択される、請求項2に記載の組成物:
デカン酸ポリグリセリル−3、デカン酸ポリグリセリル−4、オクタン酸ポリグリセリル−3、ラウリン酸ポリグリセリル−4、デカン酸PEG−6、ラウリン酸PEG−6、ラウリン酸PEG−7、およびヤシ油脂肪酸PEG−7。
【請求項4】
前記ポリオール成分(3)が、グリセロール、プロパンジオール、またはこれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量を基準として、
25〜35重量%の前記ポリジメチルシロキサン成分(1)、
15〜25重量%の前記両親媒性ポリエーテルポリオールアルキルカルボン酸エステル成分(2)、
25〜35重量%の前記ポリオール成分(3)、および
10〜30重量%の水
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の総重量を基準として、
15〜30重量%の水
を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の総重量を基準として、
0.1〜10重量%の少なくとも1種の非シリコーン油系の極性油および/または脂肪
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の非シリコーン油系の極性油および/または脂肪が、以下の群の1種またはそれ以上から選択される、請求項7に記載の組成物:
炭酸ジエチルヘキシル、トリオクタン酸グリセリル、安息香酸アルキル(C12〜15)、オクチルドデカノール、PPG−3ミリスチルエーテル、PPG−11ステアリルアルコールエーテル、PPG−14ブチルエーテル、およびPPG−15ステアリルアルコールエーテル、好ましくは、炭酸ジエチルヘキシルまたはPPG−3ミリスチルエーテル。
【請求項9】
好ましくは以下の群から選択される油溶性染料をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物:
D&CイエローNo.11 キノリンイエロー、D&CグリーンNo.6 ソルベントグリーン、D&CバイオレットNo.2 ソルベントバイオレット13、およびD&CレッドNo.17 ソルベントレッド23。
【請求項10】
前記組成物が、相が均一になるまで振とうして静置した後、2〜60分以内に明瞭な境界面を有する3層に自然に分離し、各層が透明であり、好ましくは各層の透光性が80%以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−265265(P2010−265265A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−108195(P2010−108195)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】