説明

多相多機能反応器

【課題】原産炭化水素流中に存在するイオウおよび窒素化合物、ならびに不安定な不飽和化合物の抽出酸化を、物理的現象および化学的現象が最良に使用され、また処理される炭化水素の収率の損失が回避されるように反応条件が調整される方法で達成することができる反応器を提供する。
【解決手段】基本的に2個の反応セクション1と2、2個のデカンテーションセクション3と4および不活性気体セクション5を含む、例えばカラムの形態を包含する多相多機能反応器が提供され、この反応器を用いることによって、良好な効率で、優れた品質を有する所望の生成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学反応を促進する装置の分野にあり、さらに特に夾雑物を含有する炭化水素の原産流における抽出酸化プロセスに必要な反応、デカンテーションおよび抽出の工程を同時的に行う反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
化石オイルまたは化石燃料のプロセッシングからのヘテロ原子含有極性化合物に富む高度に夾雑物を含有する原産流は、市販製品として販売される以前に処理およびプロセッシングを行う必要がある。
【0003】
化石オイルの処理およびプロセッシングは過酸化物溶液/有機酸カップルの存在下における抽出酸化によって行うことができる。この処理およびプロセッシングは燃料として使用される炭化水素流中のイオウおよび窒素化合物および/または不安定な不飽和化合物を除去するために、このような炭化水素流に適用することができ、例えばこれらの流には、水素処理法を行うことができ(行わなければならず)、ここで使用される触媒はそこに含有されている窒素化合物により脱活性化されることができる。
【0004】
この過酸化物/酸カップルの存在下における酸化は、炭化水素流中の不安定な化合物および天然イオウおよび窒素夾雑物を、より高い極性を有し、その結果として炭化水素流と比較的不混和性である水性系または極性溶媒に対しより大きい親和性を有する化合物に変換する。この処理の目的は不安定なイオウおよび窒素化合物の酸化および除去にあり、あるいはこれらを不活性にさえすることにある。この理由は、この処理が不安定な不飽和化合物を沈着物の形成に関して比較的不活性であるアルコール化合物に変換することができ、またこれらが油相に残留する場合、処理流がナフサである場合のオクタン価を改良する働きさえすることができるからである。この処理は基本的に、原産炭化水素流中の不安定なイオウおよび窒素化合物の酸化反応工程;引続く中和に伴う炭化水素の上方相の分離工程;洗浄;濾過;処理された炭化水素相を得るための乾燥;およびこの炭化水素相の採取を含み、これによりこの炭化水素相はあらゆる精製プロセスを行うのに適当なものにされる。
【0005】
上記諸工程の場合、下記装置が使用される:
−原料炭化水素および酸化性溶液を受容し、必要な反応の全部を進行させるように予め定められている反応器;
−過酸化物および有機酸のフレッシュな溶液を反応器に導入される前の一定の期間にわたり接触させておく混合装置(例えば、混合タンク);
−廃棄されるべき非凝縮性気体相を伴う逆流において酸化反応が生じることを可能にする凝縮システム;
−酸化された混合物が送られ、ここで水性相が有機酸の回収システムに送られるか、または酸水として浄化され、廃棄されるデカンター;
−その内部において、酸化された炭化水素がアルカリ性溶液により中和され、デカンテーションによる廃棄用ブラインから分離されるデカンテーション容器;
−炭化水素が洗浄され、残留する塩類が除去される洗浄容器;
および
−炭化水素が乾燥され、その後、製造プロセッシングの別の工程に送られる乾燥機。
【0006】
上記方法の全体の実施に関連し、酸化剤を含有する水性極性溶液と酸化されるべき化合物を含有する炭化水素相との間に非常に密接な接触が生じるように、特別の注意が必要である。
【0007】
当該方法は鉄酸化物触媒、例えば褐鉄鉱を用いて行われる。この触媒は反応媒質中の酸化性元素、例えばOHフリーラジカルおよび発生期酸素の発生を促進させる。この触媒の粒子はまた、当該粒子の或る部分が界面流動物性を示すことができ、これにより水性相と油相との間の活性元素の輸送が助長され、また酸化される成分の酸化反応および/または抽出の速度が高められる。
【0008】
このようなラジカルは高度の酸化力を有することから、このようなラジカルの生成メカニズムはまた、酸化反応に関与する反応媒質中の発生期遊離酸素(O)の発生を導く。したがって、反応器はほぼ不可避的に、この遊離酸素の液状反応媒質からの排出を遅延させる装置を備えていなければならない。油性/水性溶液界面上を浮遊する触媒の細かい粒子の一部分と共にこの酸素を含有して遊離される気体は、4種の相(油、気体、水性液体および固体粒子)を含有する泡様領域を構成する。この領域は高接触表面を有し、したがって抽出酸化のより高い効率が得られるものと信じられる。
【0009】
関連技術
本発明に直接関連する技術は同一出願人が所有する先願特許文献中に含まれている。これらの文献について下記に簡単に説明し、包含される技術の開発を示す。
【0010】
特許文献1は、炭化水素化石オイル媒質中に存在するイオウおよび窒素含有夾雑物および不飽和化合物の接触酸化方法を開示しており、この方法は、少なくとも1種の過酸化物、少なくとも1種の酸および粉末状原産鉄酸化物の存在下に酸化を行う方法である。過酸と褐鉄鉱粘土などの鉄オキシヒドロオキシドの存在によって反応媒質中で発生されるヒドロキシル基との組合せから酸化力が誘導される。
【0011】
特許文献2はまた、ヘテロ原子含有極性化合物および/または不飽和分子に富む原産炭化水素流の改質方法を開示している。この方法は、これらの流中のイオウ、窒素および不安定な不飽和化合物、例えばジエン化合物などの、一組の過酸化物溶液および有機酸ならびに鉄酸化物触媒を用い、酸性pH、大気圧および大気温度、ならびに室温または僅かに高い温度における抽出酸化を包含する。
【0012】
特許文献3は、一組の過酸化物溶液および有機酸を用い原産炭化水素流の処理を含む抽出酸化方法を開示しており、この方法では、酸性pH、大気圧またはそれ以上であることができる圧力および室温またはそれ以上であることができる温度において、過酸化物溶液および有機酸の重量パーセントは過酸化物および有機酸の両方について少なくとも3%である。
【0013】
特許文献4はまた前記と同様に、ヘテロ原子含有極性化合物に富む原産燃料流中の夾雑物の抽出酸化方法を開示しており、この方法では水素流により還元される天然褐鉄鉱系針鉄鉱中に含有されている鉄酸化物を触媒として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】PI 0205814−6
【特許文献2】PI 0308158−3
【特許文献3】PI 0405642−6
【特許文献4】PI 0405847−0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記技術は、反応プロセスおよび抽出プロセスに包含される物理的および化学的現象をより好適に用いるための最適化は、依然としてなされていない。この最適化とは、これらの現象をより良好に用いるばかりでなくまた、これらを組合わせることを意味する。これらの最適化は基本的に下記諸点を目指している:
(i)相接触の効率を改善すること;
(ii)液体相中の別種のラジカルと並んで生成される酸化性気体をより有利に用いること;
(iii)反応器内の相の分離を改善すること。これはまた、活性反応混合物の生成される浮遊ナフサ中への喪失、およびまた活性反応混合物の消費された酸化性抽出溶液中への喪失の両方を回避するのに役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、多相多機能反応器にあるところ、同反応器は以下のような性能を有する:反応プロセスおよび抽出プロセス組合せにとって必須であり、また収率の損失を回避するために必須である物理的−化学的現象を同時的に最適化するように、原産炭化水素流中に存在するイオウおよび窒素化合物、およびまた不安定な不飽和化合物の抽出酸化を行う性能。
【0017】
かかる目的は、5個のセクションに分離されているカラムを含む反応器という考えにより達成される。該セクションは、反応の2セクション、デカンテーションの2セクションおよび加圧下における不活性気体の1セクションに分類することができる。これらのセクションの配置は、反応条件が完全に調整されるようになされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明により開発された技術は、利用できる資源を最適化する方法を提供し、装置のアイテムについての差別化される配置を提案する。これにより、より良好な処理効率が与えられ、かつ優れた品質を有する生成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明による反応器の可能な物理的形態の一つを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の主題である多相多機能反応器を、そこに含まれる構成部分として特定されているものに従い、上記図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の主題は、物理的現象および化学的現象が最良に用いられ、また処理される炭化水素の収率の損失が回避されるように反応条件が調整される方法で原産炭化水素流中に存在するイオウおよび窒素化合物、ならびに不安定な不飽和化合物の抽出酸化を生じさせることができる反応器にある。
【0022】
夾雑物の抽出酸化方法の範囲内の酸化反応の一貫性は反応媒質中の反応剤の良好な拡散を包含するプロセスの諸工程の効率に大いに依存する。
【0023】
すなわち、必要なことは、処理中において、水性極性溶液と原産炭化水素相との緊密な接触を達成することである。該水性極性溶液は、過酸化水素およびカルボン酸の両方を、その混合物から誘導される過カルボン酸と平衡状態で含む。また、原産炭化水素相は、前記酸化される化合物により汚染されている。
【0024】
反応混合物が含むのは、触媒として用いることができるばかりでなく、また不混和性の塊状物間の輸送を増大させるために用いることができる鉄酸化物触媒、たとえば針鉄鉱中に濃縮されている天然産生ラテライト系物質である褐鉄鉱などである。
【0025】
この触媒は、反応媒質中における酸素フリーラジカル成分、例えばOH、OOH、O−*の発生を促進すると共に、過酸による酸化反応を補助する。この触媒はまた、水性相と油相との間の界面における活性成分の輸送を助ける性能を有し、これにより酸化の反応速度および/または酸化された成分の抽出速度を増大せしめる。
【0026】
フリーラジカルの生成機構は、反応媒質中における発生期遊離酸素(O−*)の生成の原因にもなる。この発生期遊離酸素(O−*)は発生されると直ちに酸化反応に関与し、高度に酸化性(「一重項(singlet)酸素」)である性質を有し、反応媒質と最大限に長く反応し、酸化力の利点として最大のものをもたらすといった有用性を有する。
【0027】
炭化水素装填材料の初期沸点に応じて、この発生期遊離酸素(O−*)はさらに、気化した炭化水素装填材料の一部分と共に触媒床を上昇せしめる。その結果として、同時的に存在する4種の相、すなわち液状炭化水素相、水性酸化性溶液相、触媒粒子の相および炭化水素蒸気および活性酸素を含有する気体の泡の相により油性−水性界面が形成され、また安定化される。
【0028】
これらの共存する4相は、泡様体に類似する分散系の形態を取り、これらの相を横断する活性成分の輸送を促進する。
【0029】
反応条件を調整することは、上記系が生じるために不可欠な重要を有する。
【0030】
その特徴および構成上の特性によって、本発明は、反応および現象が生じるために必要な前記の調整を可能とし、優れた品質を有する最終生成物の生成を達成せしめる。
【0031】
本発明による多相多機能反応器は、図1を参照することにより、その構成部分とすることができる。この図1において、カラム形態の反応器は下記セクションを含んでいる:
【0032】
−第一反応セクション(1)として、その内部において、入口ノズル(B1)を経て導入される天然へテロ原子含有物質および/または不安定な夾雑物質を含有する装填材料が、水性溶液中に存在する酸化性物質および一定の粒度分布および濃度の触媒粒子と接触し、せん断攪拌システム(A)により4種の分散相システムが形成されるセクション;
−第二反応セクション(2)として、その内部において、容積が前記4種の相システムにより占められ、該相システムは、触媒粒子を気体相によって上昇させることにより反応条件下で安定である泡様領域に変形され、第一反応セクション(1)の直上に位置する水性相と炭化水素相との間の界面に特徴的に配置される相システムであって、その頂上部において、溶液ノズル(B2)および配送装置(D)により導入され、配送される酸化性水性溶液を受容するセクション;
【0033】
−第一デカンテーションセクション(3)として、第二反応セクション(2)の直上に配置され、第一有孔プレート(P1)により第二反応セクションから分離されていて、反応媒質より低い密度を有する処理された炭化水素相を受容し、この処理された相が、第二反応セクション(2)の残留酸化性水性溶液からデカンテーションにより分離すること、および生成物ノズル(B3)を経て反応器から取り出されることを可能にし、処理された相を中和および水分除去装置に送るセクション;
【0034】
−第一反応セクション(1)の直下に位置しており、第二有孔プレート(P2)により第一反応セクションから分離されている、第二デカンテーションセクション(4);この第二デカンテーションセクション(4)は第一反応セクションから有機酸の形態でデカンテーション処理を受ける酸化された物質を含有する水性相を回収する機能を有しており、前記有機酸は第二デカンテーションセクションから排出ノズル(B4)を経て回収され、事後の再循環用の酸の再生のために循環される;
【0035】
−加圧不活性気体セクション(5)として、第一デカンテーションセクション(3)の直上に位置しており、安全上の理由から、気体相中の未反応の気体状酸素の濃縮を防止する目的および酸化反応により発生する気体を反応媒質内にできるだけ長期間にわたり保持する目的、これにより依然として活性である酸化性気体の排出を遅延させる目的のためのものであり、および第一デカンテーションセクション(3)が占める容積に応じて気体ノズル(B5)を経る不活性気体の連続的注入により制御加圧下にあるセクション;ここで発生した気体は気体出口ノズル(B6)を経て排出され、濃縮システムおよび引続くレリーフシステムに移送される;
【0036】
−熱交換システム(6)として、第二反応セクション(2)、第一反応セクション(1)および第二デカンテーションセクション(4)から構成されている領域で反応器の外側に設置されており、必要に応じてそれらのこれらのセクションの加熱および冷却のいずれとしても作用し得る熱交換システム。
【0037】
第一反応室(1)内部で攪拌機(A)により提供される激しい攪拌は、酸化性物質を装填材料と緊密に接触させるために必要である。適当な粒度および濃度に関して、触媒粒子は装填材料の40g/L以下、好ましくは装填材料の4g/L以下の濃度において250μm未満であるべきであるが、好ましくは150μm未満である。これらの条件において、細かい粒子の濃度は、酸化剤成分(この場合、過酸化物)の観点から実質的に劣化されることなく、懸濁され、界面浮遊されることを可能にするのに充分である。
【0038】
第一反応セクション(1)の内部において創出される攪拌は、機械的様式およびせん断様式であり、これにより軸状分散、すなわち攪拌機(A)の軸方向に沿った分散が回避され、したがって近隣セクションにおける望ましくない乱流の拡展が防止される。
【0039】
しかしながら、第一反応セクション(1)の内部における攪拌は、消費された酸化性溶液を含有する水性相のデカンテーションを行う第二デカンテーションセクション(4)の内部の領域に乱流を発生させることはできない。これら最後のセクション間の界面に設置されている第二有孔プレート(P2)が、この乱流を防止するのである。
【0040】
また、第一反応セクション(1)の内部で攪拌機(A)により作り出される攪拌は、直上のセクション、すなわち第二反応セクション(2)および第一デカンテーションセクション(3)の長さ方向全体にわたり減少された乱流傾向度が得られるような方法で行われるべきである。
【0041】
この乱流傾向度の減少は下記のように分類される:
−装填材料と酸化性溶液との間の接触を最高にするために、第一反応セクション(1)では最大である;
−第二反応セクション領域に泡様コンシステンシイが残ることを可能にし、これにより遊離酸素および触媒の存在により生じる界面現象が生起し、活性成分間の緊密な接触が生じるようにするために第二反応セクション内では中程度である;
−好ましくは、第一有孔プレート(P1)により僅かに分離されており、処理された炭化水素が水性溶液から分離される第一デカンテーションセクション(3)内では乱流は存在しない。
【0042】
入口ノズル(B1)により第一反応セクション中に導入される装填材料は主として、懸濁液中に分散されている触媒を含有する炭化水素流から構成されている。
【0043】
溶液ノズル(B2)により第二反応セクション(2)の頂上部に導入されるフレッシュな酸化性溶液は、過酸化水素と有機酸との混合物を含んでおり、配送装置(D)により配送された場合、第二反応セクション(2)の容積を満たしている4種の相を含有する泡様界面の床上を均一様相で降下し、ここで触媒および炭化水素流との接触が開始され、直後に、第一反応セクション(1)を通り流出を続け、ここで酸化性成分は泡状界面の安定性に寄与する炭化水素蒸気、熱および酸化性気体の発生による炭化水素流中の反応性成分の酸化により消費される。
【0044】
不活性気体セクション(5)において、気体ノズル(B5)を経て注入される不活性気体は窒素であることができ、この注入は液体表面の層状領域が乱流されないような方法で制御流出および制御圧力下に行われ、次いで継続的に更新される。このような方法により、第一デカンテーションセクション(3)の内部の液体表面上の気体雰囲気は爆発性を有していないようにされ、炭化水素蒸気と残留気体状酸素との間の接触が回避される。
【0045】
最終気体流を排出させる気体出口ノズル(B6)は、不活性気体セクション(5)の頂上部の内部圧力を0.02マノメーター大気圧(manometric atmospheres)よりも高いか、または少なくとも0.02マノメーター大気圧に等しいようにする調整バルブ(図示または言及されていない)を有する。
【0046】
熱交換システム(6)を反応器の内部に、または外部に設置することができ、下記装置から選択することができる:
第一の、循環する流体を有するスリーブ型;
第一型に関して追加の熱交換特性を備えている第二型;
第一型に関して別種の熱交換特性を備えている第三型。
【0047】
加熱操作は正常な反応操作期間全体にわたって行う。この操作において、この熱交換システム(6)はフリーラジカルの発生反応および不飽和成分の酸化反応の停滞をもたらさない温度が維持されるように反応混合物を加熱する。これらの反応は発熱性であるが、反応活性にかかわり不十分であることがある。これは媒質への熱の消失および熱の消費に加えて、当該抽出酸化プロセスで生じる吸熱現象に起因するものである。
【0048】
上記で言及されている現象は、例示するならば、下記機能を有するものであることが指摘される:
−同時的に生じるある種の吸熱反応、例えば過酸によるスルホキシド化合物のスルホン化合物への酸化に熱を供給する機能;
−油相内の触媒の細かい粒子を親和性にする機能;この機能はこれらの細かい粒子の界面浮遊にとって重要である;
−抽出性水性相内の酸化された物質の溶解性を増大させる機能;
−装填材料が軽質炭化水素、例えばナフサである場合、この熱を炭化水素流の一部分の気化および泡様領域の安定化に貢献する蒸気泡の生成に用いる機能。
【0049】
蒸気泡は、これらの泡が加圧に充分な時間にわたり保持された場合、この蒸気相内でそれ自体を希釈する若干の「一重項」酸素による酸化を蒸気相内で受けることがある不安定な物質および/またはヘテロ原子含有物質をさらに含有する。
【0050】
熱交換システム(6)による冷却操作は、主に安全上の理由から、主として反応媒質中において過酸化水素が望ましくない分解により温度の差が生じた場合に、その内部を通って冷却性液体を循環せしめることによって、当該システムを冷却する反応媒質の温度を制御するように行う。
【0051】
本発明を好適実施態様について説明したが、本発明を画定する根本概念は、反応器であって、その物理的および化学的現象の最良の利点が得られ、かつ酸化性活性能力による処理された炭化水素の収率の損失が回避されるように、原産炭化水素流中に存在するイオウ、窒素化合物およびまた不安定な不飽和化合物の抽出酸化を進行させる能力を有する反応器にあるところ、当業者であれば、下記特許請求の範囲により表されている本発明の精神および範囲の包含範囲から逸脱することなく、対象とされる機能する媒質に対して適用または成立し得る変更したもの、修飾したもの、代替したもの、改変したものおよび均等物を認識することができ、また実施することができるように、かかる根本概念は、その革新的特徴が保持されるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を特徴とする多相多機能性反応器:
原産炭化水素流中に存在するイオウおよび窒素化合物、ならびに不安定な不飽和化合物の抽出酸化を進行させる性能を与え、反応条件が調整され、炭化水素の収率の損失を回避せしめること、および以下を含むこと:
−第一反応セクション(1)として、その内部において、入口バルブ(B1)を経て導入される天然へテロ原子含有物質および/または不安定な夾雑物質を含有する装填材料が、水性溶液中に存在する酸化性物質および一定の粒度分布および濃度の触媒粒子と接触し、せん断攪拌システム(A)により4種の分散相システムが形成されるセクション;
−第二反応セクション(2)として、その内部において、容積が前記4種の相システムにより占められ、該相システムは、触媒粒子を気体相によって上昇させることにより反応条件下で安定である泡様領域に変形され、第一反応セクション(1)の直上に位置する水性相と炭化水素相との間の界面に特徴的に配置される相システムであって、その頂上部において、溶液ノズル(B2)および配送装置(D)により導入され、配送される酸化性水性溶液を受容するセクション;
−第一デカンテーションセクション(3)として、第二反応セクション(2)の直上に配置され、第一有孔プレート(P1)により第二反応セクションから分離されていて、反応媒質より低い密度を有する処理された炭化水素相を受容し、この処理された相が、第二反応セクション(2)の残留酸化性水性溶液からデカンテーションにより分離すること、および生成物ノズル(B3)を経て反応器から取り出されることを可能にし、処理された相を中和および水分除去装置に送るセクション;
−第一反応セクション(1)の直下に位置しており、第二有孔プレート(P2)により第一反応セクションから分離されている、第二デカンテーションセクション(4);この第二デカンテーションセクション(4)は第一反応セクションから有機酸の形態でデカンテーション処理を受ける酸化された物質を含有する水性相を回収する機能を有しており、前記有機酸は第二デカンテーションセクションから排出ノズル(B4)を経て回収され、事後の再循環用の酸の再生のために循環される;
−加圧不活性気体セクション(5)として、第一デカンテーションセクション(3)の直上に位置しており、安全上の理由から、気体相中の未反応の気体状酸素の濃縮を防止する目的および酸化反応により発生する気体を反応媒質内にできるだけ長期間にわたり保持する目的、これにより依然として活性である酸化性気体の排出を遅延させる目的のためのものであり、および第一デカンテーションセクション(3)が占める容積に応じて気体ノズル(B5)を経る不活性気体の連続的注入により制御加圧下にあるセクション;ここで発生した気体は気体出口ノズル(B6)を経て排出され、濃縮システムおよび引続くレリーフシステムに移送される;
−熱交換システム(6)として、第二反応セクション(2)、第一反応セクション(1)および第二デカンテーションセクション(4)から構成されている領域で反応器の外側に設置されており、必要に応じてそれらのこれらのセクションの加熱および冷却のいずれとしても作用し得る熱交換システム。
【請求項2】
触媒粒子の粒度が250μm未満、好ましくは150μm未満であり、および濃度が装填材料の40g/L以下、好ましくは装填材料の4g/L以下であり、これにより触媒粒子が酸化性成分の劣化を伴うことなく懸濁され、界面浮遊されることが可能にされることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項3】
攪拌がせん断様式で機械的であり、これにより軸状分散が回避され、上方セクションにおいて望ましくない乱流の拡展が回避されることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項4】
以下を特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器:
第一反応セクション(1)の内部における攪拌機(A)により作り出される攪拌が直上セクションの長さ方向全体にわたり減少された乱流傾向度が得られるように行われ、この乱流傾向度は、下記のとおりに分類される:
−装填材料と酸化性溶液との間の接触を最高にするために、第一反応セクション(1)において最大である;
−泡様コンシステンシイが第二反応セクション領域内に残ることを可能にし、これにより遊離酸素および触媒の存在により生じる界面現象が生起し、活性成分間の緊密な接触が生じるように第二反応セクション内では中程度である;
−好ましくは、第一有孔プレート(P1)により僅かに分離されており、処理された炭化水素が水性溶液から分離される第一デカンテーションセクション(3)内では乱流は存在しない。
【請求項5】
第一反応セクション(1)と第二デカンテーションセクションとの間の界面に第二有孔プレート(P2)が設置され、消費された酸化性溶液を含有する水性相のデカンテーションが行われる領域の乱流が回避されることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項6】
入口ノズル(B1)により第一反応セクション中に導入される装填材料が、優占的に懸濁液中に分散されている触媒を含有する炭化水素流から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項7】
過酸化水素と有機酸との混合物を含むフレッシュな酸化性溶液が、溶液ノズル(B2)により第二反応セクション(2)の頂上部に導入され、配送装置(D)により配送され、第二反応セクション(2)の容積を満たしている4種の相を含有する泡様界面の床上を均一様相で降下され、触媒および炭化水素流と接触し、その直後に、第一反応セクション(1)を通って流出を続け、ここで酸化性成分が炭化水素流中の反応性成分の酸化により消費され、酸化性気体、熱および泡状界面の安定性に寄与する炭化水素蒸気を発生せしめることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項8】
窒素であることができる不活性気体が気体ノズル(B5)を経て注入され、この注入は制御流出および圧力により行われ、継続的に更新されることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項9】
最終気体流を排出させる気体出口ノズル(B6)が、調整バルブを有し、不活性気体セクション(5)の頂上部の内部圧力を0.02マノメーター大気圧よりも高いか、または少なくとも0.02マノメーター大気圧に等しいようにすることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項10】
熱交換システム(6)を反応器の内部に、または外部に設置することができ、下記装置から選択されることができるものであることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器:
第一の、循環する流体を有するスリーブ型;
第一型に関して追加の熱交換特性を備えている第二型;
第一型に関して別種の熱交換特性を備えている第三型。
【請求項11】
加熱操作が反応器の正常な操作期間全体にわたり行われ、熱交換システム(6)が反応混合物がフリーラジカルの発生反応および不飽和成分の酸化反応の停滞をもたらさない温度に維持されるように反応混合物を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。
【請求項12】
熱交換システム(6)による冷却操作が、安全上の理由から行われ、その内部を循環することによって、主として反応媒質中の過酸化水素の望ましくない分解により温度の差が生じた場合に、冷却性液体が当該システムを冷却する反応媒質の温度を制御するように行われることを特徴とする、請求項1に記載の多相多機能性反応器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150507(P2010−150507A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−191519(P2009−191519)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(591005349)ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス (25)
【Fターム(参考)】