説明

多管式反応器の温度変化方法

【課題】始動および停止時の触媒気相反応に対する多管式反応器の温度変化方法において、許容されない熱応力が広範囲に回避され、その際に加熱および冷却が可能な限り迅速に行われるように温度差を制限する方法を提供する。
【解決手段】反応管の外側が通常運転で100℃〜450℃の範囲の溶融温度を有し、かつ1つの循環系内で反応器主部を通過して循環される熱媒によって洗浄され、a)熱媒の循環時に熱媒温度を変化させるステップと、b)少なくとも熱媒がまだ循環されずもしくはそれ以上循環されない場合に反応管を通る調温ガスを導通させるステップとを有する方法であって、調温ガスの温度の時間平均変化速度が反応管からの前記ガスの流出時に30℃/hを超えないように、上方への始動時および下方への停止時に反応管内への調温ガスの流入時の前記ガスの温度および/または上方への調温ガスの体積流量が制限される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動および停止時の触媒気相反応に対する多管式反応器の温度変化方法において、多管式反応器が、管束に垂直に配置された反応管と、反応管の上端部もしくは下端部に密接して連結された上部および下部管底と、管束を取り囲む反応器ジャケットとを備える反応器主部を有し、かつ反応管の外側が通常運転で100℃〜450℃の範囲の溶融温度を有し、かつ少なくとも1つの循環系内で反応器主部を通過して循環される熱媒によって洗浄される方法であって、a)熱媒の循環時に熱交換器を通る熱媒温度を変化させるステップと、b)少なくとも熱媒がまだ循環されず、もしくはそれ以上循環されないとき反応管を通る調温ガスを導通させるステップとを有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化−、水和−、脱水−、ニトロ化−、アルキル化プロセスのような触媒気相プロセスは、化学工業において等温固定床を有する多管式反応器で成功裡に実施されている。このような多管式反応器は、たとえば特許文献1から公知である。
【0003】
この場合の反応は原理的に吸熱性であっても発熱性であってもよい。固定床−本質的に顆粒状触媒−は、その両端が密閉されて管底に固定された一般に環状の垂直に配置された反応管束の反応管の中にある。反応混合物(「フィードガス」)は、該当する管底を過緊張させる反応器フードを介して反応管に供給され、かつ同様に別の管底を過緊張させる反応器フードを介して(生成混合物として)排出される。以下、反応器および多管式反応器の用語は同義語として使用する。
【0004】
安定的な反応条件は、一定の温度で熱媒が反応管を冷却もしくは加熱するポンプを用いて、かつそれに続き冷却/加熱により大抵バイパスに設置される熱交換器内で循環されることによって得られる。ここで熱媒は、好適な水平に延伸するバッフルを有する反応器内で、該熱媒がバッフル間の各ゾーンで反応管を本質的に横方向に流動し、かつ軸線方向にゾーンからゾーンへ反応器を通して導かれ、その結果、該熱媒が全体的に見て反応器を長手方向に貫流するように導かれる。この場合では、今日しばしば30000本およびそれ以上の反応管を使用する特に大型の多管式反応器に対してリング状およびディスク状のバッフルが特に実証されている。流路に沿って全反応管に可能な限り同一の反応条件を与えるために、反応器軸に対して垂直に各平面の内部で可能な限り良好な熱媒の均一な分布が目指されなければならない。これは特許文献2においてバッフル内の対応する部分流開口部によって達成される。これは、ミキサー、乱流発生器または付加的な流れ制御装置のようなその他多数の装置群によって支援される。ポンプ、熱交換器および加熱器のような多管式反応器の運転に必要な付帯機器群は通常反応器ジャケットの外部にあり、該反応器ジャケットに直接可能な限り短い連結管に接続されている。熱媒は対応して反応器ジャケット内の管底の近傍に流入し、別の管底の近傍で該反応器ジャケットから流出する。
【0005】
反応器システム内の熱媒の流れ誘導に関しては、たとえば特許文献3から、反応器から抽出される熱媒流から部分流を導出することが知られている。この部分流は、それに続き熱交換器の中に導かれ、その後再び主流と一つにまとめられ、循環装置を用いて再び反応器へ還流される。一変形態様において熱交換器から到来する部分流が熱媒流出側のリングチャネルに供給される。このような構造は、熱交換器循環系内に付加的な循環装置が必要になるかまたは熱交換器と平行に伸長する主管の中に熱交換器循環系を通して流れる熱媒の部分を調整可能である制御管継手を設置しなければならないことが欠点である。この方式は結果的に投資コストの増大を伴うより強力な循環装置になる。
【0006】
特許文献1に、循環系内に付加的な熱媒用の装置群を必要としない一実施形態が示されている。この場合は、ただ一つの循環装置が熱媒の大部分を主流として反応器へ送り返し、より少ない部分を副流として熱交換器に送る。ここで冷却される副流は反応器から到来する主流と一つにまとめられ、循環装置へ送られ、そこで両方の流れが引き続き供給かつ混合される。循環装置の後方に付加的にミキサーを設けることもできる。
【0007】
各多管式反応器は好適な運転結果を得るために各プロセスに適合される。その際に特に重要になるのは反応管に沿った温度管理である。しばしば反応が等温で実施されるだけで充分である。このような場合には1ゾーン型方式で充分である。しかしながら目的とする反応が複雑であり、かつ反応管に沿った好適な反応管理のために複数の異なる温度範囲が必要になるときは、付加的なリングチャネル、バイパスまたはさらに温度特性が反応管に沿って良好に制御可能である多ゾーン型方式が望ましい。これらの方式の例は、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7または特許文献8に示されている。
【0008】
このような気相プロセスの調温に使用される熱媒の選択は、主として各反応温度に左右される。反応温度で沸騰する媒体で作動されず、液体の状態にとどまる媒体で作動される場合、可能な限り低い蒸気圧を有する物質が使用される。このような適用に対しては、大抵アルカリ硝酸塩および−亜硝酸塩の混合物からなる液体塩溶融物が広範囲に提供されている。以下、簡略にする理由から、塩および塩混合物の用語は同義語として使用する。好ましい塩混合物は、硝酸カリウム53重量%、亜硝酸ナトリウム40重量%および硝酸ナトリウム7°重量%からなる。このような混合物は、約142℃で溶解する共融混合物を生成する。動作温度は一般に200℃および550℃の間にある。酸素を用いる反応と、熱分解とによって亜硝酸塩濃度が減少し、硝酸塩成分が増大する。このプロセスは窒素重ね合わせによって遅延させることができ、温度を約450℃に制限することによって、この塩は実質的に耐熱性であると見なすことができる。この分解プロセスの結果として設備内にある塩混合物の溶融点が上昇する。しかしながら、その他の物理的特性値の変化は重要ではなく、塩の熱伝達性質に全く影響しない。この適用は、前記温度以上から塩が鉄と強く反応するので一般に最高620°に制限される。
【0009】
上述のように、熱媒管理のテーマに関する大抵の刊行物は好適な温度特性の調整を扱っている。これらは大抵定常的な運転状態にのみ関係する。僅かな刊行物のみが設備の始動および停止時の非定常的な運転状態を扱っている。
【0010】
特許文献9に、始動過程時に、熱媒がまだ比較的冷たくかつ高粘度であるとき、自動的に開きかつこのように熱媒の大部分を熱交換器を通過して導く制御弁を備えるバイパスを使用する熱交換器が紹介されている。
【0011】
一般に熱交換器が熱媒として液体の塩を用いて運転されるような場合、始動時に最初にまだ固体の塩が受容器の中で溶融されていることが優先される。同時に熱交換器は、塩の溶融温度よりも高い温度に予熱する必要があり、それによって該塩が熱交換器内に充填されるとき、液体塩が同時に冷却かつ固化されない。また、塩を反応器の運転休止時に反応器自体の中に放置させ、そこで固化させることも可能である。再溶融はこの場合上方から下方へ実施されなければならない。さらに、固体の塩表面上に充分な膨張空間がなければならない。溶解した塩は、相変化時に、かつさらに上昇する温度で大きくなる容積を占め、その結果、妨害されずに上方へ膨張することができる。下方に溶融される場合は、膨張する空間がなくなる。膨張する塩は、このように取り囲む壁を許容できないほど変形させまたはさらに破裂させ得る。
【0012】
それに続き、塩は運転温度に移行されなければならない。その際に、まさに溶融した塩がまだ比較的高粘度であり、つまり大きい流れ抵抗を生じることに注意する必要がある。以下の考察は、このような熱交換器の例として液体塩を用いて調温された多管式反応器に関係する。
【0013】
反応管を通る高温ガスの導通による反応器の予熱は、たとえば特許文献10から基本的に知られている。ここには、触媒充填された反応管内で反応が生じる反応器が記載されている。その際に反応管は反応器のジャケット空間の中に流入する反応ガスによって冷却される。この反応器は、反応管のガス流入領域に導通され、特に反応器の始動時に反応しなかった予熱ガスの導入に利用される付加的な管を使用する。
【0014】
特許文献11は、反応管内の触媒粒子の除塵に取り組んでいる。この方法の一部は洗浄過程中の水分吸収による触媒損傷の防止である。これは、加熱された空気が反応器のジャケット空間を通して導かれ、かつこの空気を少なくとも120℃に、但し好ましくは140℃および200℃の間の温度に加熱されることによって達成されるものである。この特許公報に、高温の空気を反応管を通して導入する別法の加熱方法があることが記載されている。触媒が反応管内で除塵された後、洗浄用の窒素が触媒床を通して給送され、他方、ジャケット側で初めに加熱された空気と、次に高圧蒸気と、最後に反応のための熱媒としての塩浴とによって固化温度に移される。
【0015】
特許文献12に、詳しく説明しない熱媒によって冷却される発熱性化学反応を実施する多管式反応器の加熱過程が記載されている。運転温度は350℃および450℃の間にあるので、当業者に好ましい熱媒として液体塩が提供される。この文献に、このようなシステムが時々停止され、それに続きたとえば触媒の変更時に再び始動されなければならないことが記載されている。この反応過程は始動時に高温に達した後で初めて開始される。そのために多管式反応器の適切な予熱が必要である。反応空間を通して導かれる付加的な熱媒の使用はそれ自体可能である。特許文献12で、充分に高い温度の蒸気が提供されることはまれであり、他方、熱風および煙道ガスが加熱ユニットおよび付属品に相当なコストを要求しもしくは運転による欠陥を必然的に伴うことが記述されている。この問題の解決策として、熱媒の既存の循環系との並列回路に反応容器の外部に付加的に加熱装置を配置し、前記反応容器と組み合わされた遮断および制御機構を介して異なる圧力の2箇所に接続されることが提案されている。
【0016】
特許文献13に、反応器を高温の調温ガスの導通によって予熱し、それに続き液体塩をジャケット空間の中へ導入する前記の自体公知の思想が批判されかつ詳しく記載されている。この特許公報は、より詳しくは、反応管の外側に対して50℃および250℃の間の範囲の溶融点を有する熱媒の循環用に設計された多管式反応器の始動方法に関する。始動のために100℃〜400℃の間の範囲の温度を有する調温ガスが反応管の中に導入され、それによって温度が上昇され、それに続き熱媒が加熱状態で反応管の外側周りに循環される。この熱媒は、アルカリ硝酸塩および−亜硝酸からなる塩混合物である。その他の態様は、反応器からの出口で調温ガスの温度以上から熱媒を充填することができる温度と、別の温度上昇と、多ゾーン型反応器への前記方法の適用と、反応器が前記方法によって始動された後で(メタ−)アクロレインおよび/または(メタ−)アクリル酸の製造とに関する。
【0017】
特許文献13の実施例に、内径4000mm、ジャケット空間内の反応管の長さ6500mmおよび反応管の管数9300本を有する比較的小型の2ゾーン型多管式反応器が記載されている。この反応器に対して前記方法はおそらく損傷を引き起こさないであろう。しかしながら反応管30000本以上、直径約8000mmおよび同じオーダーの長さを有する大型多管式反応器の場合、それ以上の観点を考慮する必要がある。
【0018】
特に、このような大型多管式反応器の場合、直接加熱媒と接触する装置部分と、さらに離れた装置部分との間で温度補償が実施されるまで一定の時間がかかり得ることを考慮する必要がある。つまり反応器が始動開始時に周囲温度を有し、その反応管の中へ温度400℃を有する高温のガスが導入されるとき、反応管は反応器ジャケットよりも大きく膨張する。これは反応器を損傷しまたはその上破壊し得る許容できない熱応力を生じる可能性がある。
【0019】
この関連性において加熱速度−単位時間あたりの温度上昇−も重要である。このテーマについての一般的な序論は非特許文献1から読み取れる。その中で、設備の始動は運転開始プロセスの小さいが重要な部分として記載されている。その際に全設備部分が可能な限り均一に加熱され、それによって該設備部分が不均一に加熱されず、かつ許容できない熱応力が発生しないことを目指す必要がある。運転手段システムの運転開始の章で、特に蒸気−および凝縮液システムにおいて、そこに低温の配管束の加熱速度が最大5℃/minに、対応して300℃/hとするべきであることが記載されている。しかしながら、これは配管が全長にわたり均一に加熱される場合にのみ当てはまる。直径6〜8mおよび同じオーダーの長さを有する大型多管式反応器の場合、この課題の解決は非常に困難である。全設備の始動例において、この関連性で20℃/hの許容加熱速度で立ち上げられる(309頁下)触媒バルクを用いる2つの平行に作動する反応器が記載されている。
【0020】
特許文献13の図3に、時間に依存する2ゾーン型反応器の両ゾーン内の温度推移が線図で記載されている。この線図から約50℃/hの調温ガスによる加熱速度を読み取ることができる。
【0021】
さらに、すでにかなり前から熱媒塩の溶融温度に達しており、かつ反応器がすでに液体の熱媒塩で充填されている場合でも、まだ反応器をガスで加熱することは不利である。すなわち、この方法ではガスが加熱されなければならない。この熱は、第2のステップで反応管内壁に伝達されなければならない。つまり2つの熱伝達プロセスが存在する。それに対して、特許文献1記載の反応器の場合のような反応器の加熱が直接反応器に接続される電気加熱器によって実施されるとき、この電気エネルギーは直接熱媒塩に伝達される。つまり、この加熱過程はより直接的かつより迅速である。さらに、中間容器、外置型加熱器および反応器間の配管束による熱損失がない。これらの点を除き、特許文献13には断熱措置について全く説明がされていない。中間容器および加熱器のような外置型設備部分によって、電気加熱器が熱媒循環系内の箇所に接続されることによってのみ様々な圧力で貫流され、補助ポンプが不要になる特許文献1と異なり補助ポンプが必要になる。
【0022】
下位および上位の動作点間の通常の運転中、熱媒システムに熱媒の体積変化をもたらす温度変動を生じ得る。このような運転による体積変化は目的に応じて、この体積変化用に設計された補償容器によって吸収される。特許文献1において、この課題は簡単な方法で熱媒が直接循環ポンプおよび冷却器に接続された補償容器内で膨張できることによって解決されている。上部動作点の温度を超えると、補償容器の受容能力を超え、かつ過剰体積が溢れ管を介して受容器へ流れまたは再び受器の熱媒容器へ還流する。温度が下位動作点より下に下がると、不足する熱媒体積が受器の熱媒容器からの供給によって補償される。
【0023】
さらに特許文献13に、多ゾーン型反応器の加熱過程が記載されている。異なるゾーン内の様々な温度の調整に対してただ1つの中間容器だけが設けられており、この容器から部分量が分離された加熱器に供給される。この反応器システムの加熱過程にコストのかかる体積流量および温度の測定−、制御−および調整システムが必要である。体積流量および温度の独立の制御は制限付きでのみ可能である。さらに、独立の供給装置と多数の連結管が多管式反応器、中間容器および加熱器の間に必要である。熱損失を制限するために、これらは絶縁された付随加熱装置を装備しなければならない。特に加熱後にようやく運転される冷却器のようなその他の設備部分の始動についての記載が無い。
【0024】
反応器の一般的な停止時に上記に準ずる温度差および冷却速度に関する類似の問題がある。しかしながら、対応する印刷物の先行技術は知られていない。
【0025】
先行技術から主として定常運転に対する熱媒の温度制御が知られている。非定常的な温度変化過程に対する公知の制御については一般的な方式のみが記載されている。
【0026】
つまり一定の加熱速度が設定されており、たとえば非特許文献1の書籍の、すでに上に引用した20℃/hは、どの箇所でこれが順守されているかを当業者が知らず、従ってこの温度が実際にどの時点で超えたのかも知っていない。なんとなれば反応器の加熱または冷却は等温過程ではなく、時間的および場所的に大幅に違いが設定されているからである。反応器は、その際に加熱もしくは冷却が非常に速く行われる加熱−もしくは冷却ローラによって通過される。それに対して、ローラの前および後で加熱または冷却のいずれも全く実施されていない。
【0027】
違いすぎる熱膨張によって結果的に反応器システムの部分が大きすぎる温度差によって損傷し得る問題については全く述べられておらず、このような損傷を回避する指摘は完全に欠落している。特に先行技術において始動および停止は直接多管式反応器に接続された付帯機器で考慮されていない。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第2207166号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第2004/052524号
【特許文献3】欧州特許第1080781号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許第2201528号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許出願公開第2830765号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許第69801797号明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第2004/052526号
【特許文献8】国際特許出願公開第2004/067165号
【特許文献9】英国特許第310157号
【特許文献10】ドイツ連邦共和国特許第1542517号明細書
【特許文献11】米国特許第6046343号
【特許文献12】ドイツ連邦共和国特許第2062095号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第1166865号明細書
【非特許文献1】クラウス ハー.ヴェーバー、「プロセス技術設備の運転開始」、シュプリンガー出版、1997年、第1版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ところで、ここで本発明が除去対策を講ずることにする。本発明の基礎におく課題は、多管式反応器において、特に塩浴冷却型多管式反応器において非定常的時間区分中の始動および停止時に、許容されない熱応力が広範囲に回避され、その際に加熱および冷却が可能な限り迅速に行われるように温度差を制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この課題は本発明により冒頭に挙げた形式の方法において、調温ガスの初回導入と共に始まる各期間にわたり調温ガスの温度の時間平均変化速度が反応管からの前記ガスの流出時に30℃/hを超えないように、上方への始動時および下方への停止時に調温ガスの反応管への流入時の調温ガスの温度および/または上方への調温ガスの体積流量が制限されることによって解決される。
【0030】
従属請求項は、さらに有利な方法変形態様を記載する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る措置によって多管式反応器の始動および停止時に高すぎる熱負荷が確実に回避される。この多管式反応器上の熱負荷は、その際に前記両過程中に本質的に等しく、その結果、本発明に係る方法の条件が加熱にも冷却にも適用される。
【0032】
反応管からの出口での調温ガスの温度の本発明による時間平均変化速度の順守は、可能な限り速い加熱および冷却時に加熱−もしくは冷却速度が、許容されない熱応力を回避するために反応器の長手方向にも半径方向にも充分に小さくなることを保証する。これは直接多管式反応器に付帯機器が接続される場合にも当てはまる。
【0033】
反応器内部の部分間の温度差または反応器部分に接触する媒体中の温度差は、大きすぎる違いがある熱膨張による許容されない高い熱応力を回避する範囲まで制限されている。
【0034】
反応管からの出口での調温ガス温度の変化速度は、調温ガスが反応管の中に入る温度および/または体積流量によって影響される。その際に、調温ガスの入口温度ならびに体積流量は始動または停止の開始時に問題のない範囲まで制限される。
【0035】
本発明に係る方法は、測定量および測定場所−反応管内への入口での調温ガスの温度および/または体積流量および反応管からの出口での調温ガス温度の時間平均変化速度−を一義的に規定し、その際に各測定量を直接的または間接的に測定することができることによって、当業者は始動または停止過程中に、熱負荷に関して確実または不確実な範囲で変動するかどうかを簡単かつ確実な方法で検出することができる。
【0036】
本発明に係る方法によって、反応器システムを一方で迅速に、しかし許容されない熱応力に関しては保護しながら確実に始動および停止することが可能である。それに続き、複数の負荷サイクルを運転させることができ、寿命が増大する。さらに、上昇する温度で膨張する熱媒を収容するただ1つの補償容器による反応器システムに対する装置の実装が容易になる。独立の蓄積容器は省くことができる。
【0037】
調温ガスの時間平均温度変化速度の制限によって、対応して加熱器もより正確に寸法指定することができ、場合により投資コストを節約できる。
【0038】
本発明に係る方法は1ゾーン型および多ゾーン型の両反応器に適用することができる。
【0039】
本発明に係る方法により基本的に先行技術から知られているあらゆる反応器システムを運転することができる。特に触媒の発熱性または吸熱性気相反応に好適であり、特に請求項15および16記載のものに非常に好適である。ここでプロセスの形式は、この方法が始動および停止中の非定常的時間部分に対応しているので重要ではない。以下、本発明に係る方法は、発熱性気相反応に対する反応器システムへの適用との関連性で引き続き説明するが、吸熱性気相反応に対する反応器システムへの本発明に係る方法の適用も同様に良好に可能である。このような反応器システムの主構成要素は本質的に反応器とその周辺機器である。周辺機器とは、反応器の外部に配設され、その運転に必要である循環装置および供給装置ならびに熱交換器、特に運転中の液体の熱媒の循環用の循環装置、反応器システムの一時的加熱用の加熱器、反応器内で生成される反応熱の排出用の冷却器、補償容器、塩タンクならびにそれを用いて調温ガスもしくは反応混合物が製造および/または調温されるガス処理装置のような装置および機械類である。
【0040】
周辺機器は、その際に構造的、プロセス技術的または経済的観点に従って様々に構成し、かつ配置することができる。特に非常に大型の多管式反応器の場合、大きさ、重量、効率、熱媒の良好な分配の理由からまたはその他の理由から、1つまたは複数の周辺機器の出力を2つまたはそれ以上のユニットに分割することも必要になる。必要であれば流れ制御および/または配管用の付加的な装置類が設けられる。
【0041】
材料、態様の詳細ならびに適用のようなその他の観点に関しても本発明に係る方法に使用される反応器は制限されていない。全ての構成要素および構造の詳細は個別的な場合で取り決められる。
【0042】
使用する反応器の態様は特に制限されていない。たとえば1つの反応管束を備える反応器の代わりに類似の方法でプレート形熱交換面を備える反応器を使用することができる。多管式反応器は多数の触媒充填型反応管を有し、これらは1つの管束にまとめられている。この管束は大抵円形の断面を有するが、四角形またはその他の断面も可能である。反応管は密閉式に上部管底および下部管底で終端する。管束は上部管底と下部管底とに接続された絶縁ジャケットによって取り囲まれている。ジャケットは必要に応じて熱応力吸収用の補償器を使用する。上部管底はガス流入短管を備える上部フードによって、下部管底はガス流出短管を備える下部フードによって取り囲まれる。
【0043】
反応管内で発生する反応熱は反応器のジャケット空間を貫流する熱媒によって排出される。これは分配チャネルを介して多管式反応器内に導入される。多管式反応器が円形断面を有するとき、分配チャネルは大抵リングチャネルとして形成されている。良好な熱伝達のために熱媒は大抵反応管に対して垂直に立ち上がる複数のバッフルによって反応管に対して横方向に導かれる。このバッフルは、最も簡単な場合で交互に取り付けられた流出開口部を有し、それを通して熱媒がそれぞれ常に管束の一端部から他端部へ導かれる。しかしながら、これは直径数メートルを有する大型反応装置の場合、不均一な排熱を引き起こし、そのため通常リング状およびディスク状のバッフルが設けられており、これが熱媒を蛇行状に管束を通して導く。管束の内部は、その際に半径方向に内部から外部へおよびその逆への貫流に対して熱媒に空間を提供するため大抵は配管されていない。対応して管束の外部仕切とジャケットとの間の流れ空間は開放されている。
【0044】
1ゾーン型反応器はその機能ユニットについて3部分に分けることができる。反応器主部Aは反応器ジャケット、管束、下部管底、上部管底およびジャケットに接続される分配チャネルを有する。反応器主部Aの一端部に、通常は上端部に、ガス流入短管を備える上部フードから形成されたガス流入領域Bが接続される。その他端部に、通常は下端部にガス流出短管を備える下部フードから形成されたガス流出領域Cが接続される。反応ガスの流れが下方から上方へ生じるとき、ガス流入フードおよびガス流出フードが対応して交換されている。
【0045】
以下においては、ガスの流れを反応器内の上方から下方へ仮定する。しかしながら、ガスの流れはその逆方向にも可能である。その場合には方向に準じて流入側と流出側とが交換される。
【0046】
熱応力に関して問題のある部分は反応器主部Aである。最大の温度差は管底上角部と反応器の他端部に置かれる分配チャネルとの間にあることが見出された。温度制御と特に最大の温度差の検出のために反応器全体にわたり多数の温度測定箇所が配置されている。しかしながら、少なくとも反応器の中に流入もしくは流出するガス用の温度測定箇所はガス流入短管およびガス流出短管の中に配置され、ならびに熱媒用のガス流入短管に対向して置かれる分配チャネル内および流入側管底に配置されている。管底温度の代替としてガス流入短管内の温度を使用することもできる。この方法により検出された温度差は実際にあるよりも多少大きくなる。これは、それにより付加的な安全性が得られるので欠点ではない。
【0047】
温度変化プロセスの進歩は、さらに少なくとも1つの温度測定箇所がある管束の内部に置かれる少なくとも1つの熱管によってコントロールされる。大抵反応器の中には2つの異なる熱管タイプを配設することができ、これは反応管に沿って反応ガス温度の運転による検出用のタイプと、反応管に沿って熱媒温度の運転による検出用のタイプである。このような熱管は、たとえば長手方向にその中に複数の熱電対が配置されるように構成することができる。このような測定装置は、いわゆる「多点式熱電対」としても知られている。熱電対の測定信号は信号ケーブルにより反応器から導出される。保護管は目的に応じて熱管の上端部と反応器壁との間にある。信号ケーブルは、好ましくは専用に設けられた短管を介して反応器から導出される。熱媒温度測定用の熱管はその下端部で閉じられており、熱電対と熱管内壁との間の中間空間は良好な熱伝導性物質、たとえば0.5mmおよび2.5mmの間の粒径を有するアルミニウム顆粒で充填されている。
【0048】
大抵の気相反応は、収率および選択性に関して好適な結果を得るために反応管に沿って特殊の温度または必要であれば特殊の温度特性を要求する。そのために反応管を調温する熱媒による温度制御には特別の重要性が与えられている。この課題設定に対しては多数の熱媒が好適である。
【0049】
発熱性気相反応の好適な温度レベルは大抵非常に高い。蒸発した熱媒に反応熱が引き渡されるとき、熱伝達は非常に良好になる。しかし、反応器内の温度が本質的にあらゆる箇所で等しいことが欠点である。それによって温度特性を調整することができない。さらに、蒸発温度は圧力依存性であり、直ちに不経済な肉厚をもたらす圧力が生じる。
【0050】
このような場合は、低い蒸気圧力を有し、高い温度でまだ液状であり、かつ熱的に安定している熱媒を使用することが目指される。これらの要求は一連のイオン性の液体によって満たされる。このようなイオン性の液体は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第10316418号明細書に記載されている。この液体は多管式反応器内の使用に対して基本的に発熱性気相反応に好適である。しかしながら、これはコストが高いためにあまり普及していない。
【0051】
このようなイオン性の液体の選択肢は、炭酸塩または亜硝酸塩/硝酸塩からなる塩混合物である。これらの物質は大きい熱的安定性の長所を有する。特に、該物質は明らかにイオン性の液体よりも廉価であり、これは特に数メートルの直径および長さを有する大型反応器で決定的な役割を果たしている。塩は様々な組成であってよく、対応して異なる溶融点を有する。本発明に係る方法に対しては、組成物に関係なく前記範囲の溶融点を有するあらゆる種類の塩を使用してよい。溶融点が100および450℃の範囲を有する熱媒が有利である。好ましくは共融組成物を含む硝酸カリウム、硝酸ナトリウムおよび亜硝酸ナトリウムからなる混合物が特に有利である。この混合物は「HTS」−塩(high temperature salt)として知られている。この混合物は約142℃の溶融点を有する。本願の枠組みの中で、熱媒および塩の用語は同じ意味で使用されている。
【0052】
化学反応の温度制御に使用される他の種類の熱媒に比べて、この塩は熱的安定性を特徴とし、350〜550℃までの範囲の高い温度で熱伝達に関する最大の安定性を有するので、特に有利である。
【0053】
反応器内の塩の循環のために、良好な流れ特性の熱媒を溶融点以上の温度に保持する必要がある。そのために、熱媒は好ましくは反応器の外部で加熱され、かつ上昇させた温度で反応器に供給される。さもないと固化する危険があるので、この熱媒が冷却されないようにするために、該熱媒は第1に溶融点以上の充分な温度を有する必要がある。第2に反応器が少なくとも溶融点に予熱されていなければならない。第3に連結管が熱絶縁を施され、かつ加熱されていなければならない。第4に充填過程を迅速に行わなければならず、第5に反応器内に充填された熱媒が良好に循環され、かつ加熱器を用いて温度を保持しまたは引き続き加熱されなければならない。その際に実施される加熱過程では、反応器が不均一に加熱されず、その際に許容されない熱応力を生じるため反応器が速すぎる加熱をされてはならない。この目的のために後述の装置類および方法ステップが利用される。
【0054】
熱媒は、循環装置を用いて循環系内で反応器システムを通して供給される。循環装置は大抵、熱媒を対流の回避のために好ましくは上方から下方へ供給する軸流羽根車を有するポンプである。熱媒の主流は短い下部反応器供給管を介して反応器へ供給される。この主流は下部分配チャネルを介して反応器で分配される。対応して構成された下部ジャケット開口部を通して熱媒が均一に反応器円周にわたって分配される。反応器が円形の断面を有し、熱媒が上述のように均一に円周にわたって外部から内部へおよび再び内部から外部へ導かれるとき、ジャケット開口部は流れ圧力に応じて、熱媒が円周上に均一に反応器の外部のジャケット空間にわたって導かれるように寸法指定されている。反応器の通過後、液体塩は反応器内の流入時と同様の方法で反応器から上部ジャケット開口部を通して再び上部分配チャネルへ流出する。上部反応器排出管を介して熱媒が再び循環装置の流入領域に到達する。これが発熱プロセスである場合、循環系内の熱媒流が短い連結管を介して冷却器へ供給される。この熱媒の流量は制御弁で調整される。冷却された熱媒は再び短い配管を介して循環装置の流入領域へ到達し、この熱媒はそこで多管式反応器から到来する主流と共に循環装置の中へ還流する。そこで多管式反応器から到来する加熱された熱媒流と、冷却器から到来する冷却された熱媒流は循環装置によって混合され、引き続き供給される。さらに、熱媒の温度分布を引き続き均一にするために、静的混合器を循環装置の前段および/または後段に配設することができる。
【0055】
反応器の下部分配チャネルおよび上部分配チャネルに、さらに熱媒用の加熱器が短い加熱器供給管および上部加熱器排出管を介して接続されている。加熱器は、反応器の始動時および反応熱を供給する吸熱プロセスにおける高温加熱および温度保持に用いられる。加熱器を通る塩流は、必要であればさらに制御弁を介して調節することができる。加熱器は様々な方式で運転することができる。この加熱器は蒸気または煙道ガスで加熱された熱交換器とすることができ、または該加熱器は燃焼式である。加熱器は、好ましくは電気加熱器、略してE−加熱器として構成される。循環装置が運転されるとき、加熱器に熱媒の部分流が流れ込む。加熱後に加熱された熱媒は再び反応器へ戻る。その際に流量は制御弁によって変化させることができる。しかしながら、この制御弁は実際上の経験から欠点なしに省くことができる。
【0056】
発熱プロセスにおいておよび反応器の迅速な冷却のために、熱は冷却器によって排出される。この冷却器の形式は基本的に制限されていない。この冷却器は、たとえばガス冷却式熱交換器としてよく、冷却ガスは、たとえば反応ガスまたは周囲空気としてよく、または該冷却器は、たとえば給水予熱器としての態様で液体によって冷却することができる。冷却器は、さらに蒸気循環系の蒸気の過熱器として構成することができる。好ましい一実施形態において、冷却器は蒸気発生器として構成されている。すなわち、液体の蒸発媒体、通常は水の蒸発によって熱媒から熱が奪われる。
【0057】
圧力−および熱損失を制限するために、冷却器は、好ましくは短い連結管を用いて循環装置または反応器に接続されている。冷却器は蒸気発生器として、好ましくはその両端で管底によって密閉される蒸発管束を有する。上部冷却器管底は上部冷却器フードによって取り囲まれ、下部冷却器管底は下部冷却器フードによって取り囲まれている。上部冷却器管底は連結ハウジングによって堅固に補償容器に連結されており、下部冷却器管底は軸線方向に冷却器ハウジング内で自由に移動する。給水は給水管を介して供給される。この給水管は上部冷却器管底を通して導かれ、下部冷却器フードに入る。熱媒は蒸発管を循環し、蒸発管の中にある水が部分的に蒸発される。その際に可能な限り良好な熱伝達を達成するために、バッフルによって熱媒が蒸発管に対して横方向に導かれる。バッフルは交互に片側に取り付けられた流出開口部によって構成することができ、またはリング状もしくはディスク状のバッフルを有することができる。
【0058】
その他の近傍に設置される蒸気発生器が生産施設内にある場合、水蒸気混合物は通常中央の蒸気ドラムの中へ送られる。液体から解放された蒸気は、その際に蒸気網で利用され、排出された液体は給水の一部として再び蒸気発生器へ戻して供給される。設備部分は、有利には水蒸気混合物もしくは給水が自然循環で導かれるように指定される。すなわち、浮揚力は過熱を防ぐために充分に高い循環回数を達成するだけで充分である。独立の循環装置は不要になる。
【0059】
中央蒸気ドラムが割に合わない場合、好ましい一実施形態において蒸気分離装置が冷却器の中に組み込まれる。そのために上部冷却器管底に円筒形の冷却器ハウジングが当接される。このハウジングに蒸気流出短管を有する上部冷却器フードが接続される。この構造の場合、蒸発管内で生成される水蒸気混合物は初めに上方に向かって分離板によって密閉された収集室の中に流れ込む。給水は給水管を介して液体室の中に分離板を介して送られ、そこから冷却器連結管を介して下部冷却器フードの空間に流入する。給水管は一部直接前記空間の中に引き続き導くことができる。同様に、この連結管を通して必要に応じて堆積物を下部冷却器フードの底部で吸引する槽引抜管が導通される。表面排泥管を介して取り込まれた浮遊物質が除去される。収集室の中にある水蒸気混合物は分離板内の開口部を介して粗大分離機へ上昇する。このような粗大分離機の有利な構造は、たとえばスイス連邦特許第515734号に記載されているような遠心分離機である。分離される蒸気は微細分離機内で微滴から解放され、蒸気流出短管を介して冷却器を離れる。微細分離機として対象となるのは、全ての市販のかつ対応して寸法指定された、たとえば多板式分離機または織物のような液滴分離機である。本発明の枠組みの中で好ましくは特殊鋼織物が使用される。液相は液体空間に還流する。液体レベルは測定短管を介して測定され、供給された給水の量によって制御される。
【0060】
遠心分離機の台数は経済的理由から可能な限り少なく保持される。この台数は蒸気量、循環水量、圧力、水質量流に対して発生した蒸気質量流の比としての循環数および遠心分離機の好適な動作範囲に依存する。
【0061】
蒸気発生器の通過後、冷却された熱媒は循環装置の入口に還流する。反応器からの短い流出連結管から到来する加熱された熱媒と共に、この熱媒は循環装置の中に入り、そこでさらに供給され、熱媒主流と集中的に混合される。
【0062】
温度上昇と共に熱媒塩の体積が増大する。この付加的な体積は補償容器に逃げる。膨張容器の大きさは、ここで加熱によって発生する付加的な塩体積および最高温度の量に対応している。しかしながら、温度上昇によって発生する全付加体積を吸収する必要はない。補償容器の収容能に達したとき、熱媒は溢れ管を介して充分な収容能を有する確実な箇所でまたは直接塩タンクの中に再還流する。
【0063】
コンパクトな構造は、補償容器が付加空間として循環装置および/または冷却器または加熱器の内部に配設されることによって達成される。それぞれ熱媒−およびガス連結管を通して複数の空間を1つにまとめることができる。該補償容器は少なくとも1つの連結箇所で循環した熱媒と流れ接続されている。反応器内の上方箇所または熱媒ジャケット空間の別の箇所での脱ガス箇所は配管を介して補償容器に接続することができる。
【0064】
補償容器内には、臨界充填状態に応答できるようにするため、充填状態測定部が配置されている。この充填状態測定部は、好ましくはガス気泡法によって作動する。好ましくは窒素が作動ガスとして使用される。この場合、流出するガスの背圧から液体レベルが生じる。同時に窒素は、その他の点で全反応器システム内で窒素と重ね合わされる塩用の保護ガスとして作用する。この窒素管が不充分なときは、別の管を介して窒素が導入される。
【0065】
一定の液体レベルで対応する措置が解除される。特性的な液体レベルは、ここで「HL」と呼ばれる運転による最大液体レベルである。この液体レベルに達すると、余剰の熱媒が溢流/非常排出短管とそれに接続される溢れ管を介して充分な収容能を有する確実な箇所かまたは再び塩タンクへ還流する。さらに、アラームを解除することができる。液体が流れ出るよりも速く上昇し、この液体がレベル「HHL」に達すると、設備は自動的に減速される。別の場合で、液体レベルが「LL」以下の値に下がると、塩タンクから必要な後供給に注意を促すアラームが解除される。最小許容レベル「LLL」に達すると、設備は自動的に減速される。レベル「LLL」は反応器の上部管底下角部の上にある。
【0066】
非常排出短管は熱媒の過度の膨張時に利用されるだけではなく、−むしろあり得ないとしても−たとえば蒸発冷却器の管が裂ける場合にも利用される。このような場合、水蒸気混合物は塩空間の中で圧縮し、そこで非常にすばやく蒸発する。その際に発生する水、蒸気および液体塩からなる混合物は、確実に前記非常排出短管を介して排出することができる。
【0067】
熱媒塩は初めて粉末または顆粒として塩タンクの中に充填される。反応器システムの始動時に、塩は塩タンクの中および/またはその外側に取り付けられた加熱装置によって溶解される。ここで加熱装置の型式は規定されていない。この加熱装置は、たとえば蒸気駆動式または電気駆動式とすることができる。この時点までにその他の反応器システムはまだ塩を含まず、周囲温度を有する。塩が溶解されかつポンピング可能になる時点から、この溶解過程を均一化しかつ加速するために、塩タンクポンプを用いて循環系内の還流管を介して運転することができる。この塩タンクは複数の塩連結管を介して反応器システムの個々の構成要素に接続されている。塩連結管は各々1つの遮断弁を有する。大型多管式反応器の運転に必要な塩量が対応して多くなり得、かつ加熱装置が塩タンクでそのまれな使用のため経済的理由から比較的小型に維持されるので、溶融−および加熱過程は数日間かかり得る。
【0068】
始動時にガス処理装置で最初に好適な調温ガスが圧縮機またはブロワーを用いてガス主管に対して主流またはバイパス中にあるガス加熱器に供給される。次にガス送給は対応するガス遮断管継手によって実施される。調温ガスの温度は、さらにガス混合器内で均一化することができる。反応器が動作温度になると、直ちに置換される反応ガス成分は供給管を介してガス流に添加することができ、これは次に1台または複数台のガス混合器内でガス流と共に均一化される。しかしながら、最初に調温ガスが加熱過程中に反応器のガス空間を貫流する。その際に加熱は温度レベルと温度差に対する本発明に係る条件によって実施される。反応器が一定の温度に達すると、絶縁された付随加熱装置がポンプハウジング、加熱器、冷却器ハウジングおよび連結管で相互にかつ塩タンクに対して運転される。
【0069】
別の方法で加熱できない全ての周辺装置も連結される管も加熱された絶縁体を装備している。このエネルギー媒体は通常蒸気網を介して簡単に提供できるので、蒸気が加熱媒として使用される。
【0070】
反応器システムが充分に塩の溶融温度以上に予熱され、かつ塩タンク内の塩の温度が塩充填温度にあるとき、液体塩の反応器システムへの充填と共に開始される。この充填は、ポンプ好ましくはタンク内の液体塩溶融物の中に浸漬される水中ポンプを介して行うことができる。その際に塩タンク内のガス体積の変化は、溢れ管を通して反応器システムから補償される。または充填のために好ましくは窒素によって発生するガス過圧がタンクのガス空間内で利用される。そのためにタンクは対応する圧力容器として構成されていなければならず、タンクの排気およびタンクの中に流れ込む溢れ管を遮断可能にしなければならない。充填前に充填管内の遮断弁は対応して開放されなければならず、必要であればバイパス管が閉じられなければならない。この充填過程中に反応器の補償容器内の熱媒の液体レベルは充填状態測定部によって測定される。この測定が最小充填状態を表示するとき、塩供給は遮断弁の閉鎖によって終了され、かつ塩タンクポンプは、これが使用される場合、オフにされる。タンクへの充填管の対応する通気開口部を通して充填管の自動無負荷運転が可能になる。そのために強制的に連続的勾配を有する配管を反応器システムからタンクへ向けて敷設する必要がある。同時にまたは時間的にずらして調温ガスの供給が調整され、同様に排出管および溢れ管を除き蒸気付随加熱装置が調整される。循環装置および加熱器が駆動される。任意選択式の遮断管継手の先行する解除によって、加熱器で加熱される反応器への熱媒の通路が解除される。充填状態測定部の測定原理は、好ましくはガス気泡法である。その際に、不活性ガスが、ここで使用する塩の場合では窒素が、塩の中へ泡立てられ、かつ圧力差を介して液体塩の高低レベルが決定される。その際に同時に液体塩の上方にあるガス空間が塩の分解現象に逆に作用するために窒素で充填されることが達成される。別の測定原理が使用される場合、窒素は1本または複数本の独立の窒素管を介して供給することもできる。
【0071】
この方法は、有利にはそのジャケット空間が少なくとも1つの分離板によって少なくとも2つのジャケット空間に分離される多ゾーン型反応器にも使用することができる。このような反応器のジャケット空間は、以下「ゾーン」と呼び、対応してこのような少なくとも2つのゾーンを有する反応器を「多ゾーン型反応器」と呼ぶ。このような多ゾーン型反応器内で各ゾーンで別の温度を設定でき、このようにして反応条件を好適に設定することができる。たとえば、このような多ゾーン型反応器は、望ましくない連続反応または副生成物の形成を抑制するために、反応混合物が可能な限り遅延なしに冷却されなければならない反応に使用される。このような場合、反応管の最後の部分が低温の熱媒を用いて特に冷却される。その際に主循環系から冷却された部分流を使用できまたは独立の熱媒循環系を設けることができる。また、専用の管束を備える独立の後冷却ユニットの接続も可能である。この機能分離によって、この後冷却器はその機能について最適化して構成することができる。たとえば冷却管は別の直径を有することができ、および/または別の管間隔を有することができ、または管束は内部空間に配管することもでき、かつその全体を一端部から他端部へ横方向に一回または複数回貫流させることができる。これは、たとえば熱媒のより高い流速を可能にし、かつ熱伝達をさらに改善することになる。このような態様において分配チャネルもしくは収集チャネルは、リングチャネルとしてではなく、後冷却器円周の一部のみを覆う分配ボックスとして形成される。
【0072】
もちろん、後反応器のような別の機能ユニットまたは、反応器主部に前置された、たとえば予熱器のような機能ユニットも反応器主部Aに接続できる。これらの機能ユニットは中間配管なしに反応器主部Aに連結され、着脱式か溶接かが重要ではない場合、本発明に係る方法の条件は反応器主部A単独の代わりにそれに準じて機能ユニットの全複合体に適用される。
【0073】
反応器主部Aの手前にガス流入領域Bが置かれている。これは、この場合に反応ガスが上方から下方へ導かれる箇所で、ガス流入短管を備える上部反応器フードからなる。上部反応器フードは着脱式または溶接により反応器主部Aと連結されている。対応して同様に着脱式または溶接によりガス流出短管を備える下部反応器フードからなるガス流出領域Cが反応器主部Aに接続されている。
【0074】
ここで、このような反応器の形式は、所望の温度特性の調整時または構造的な形成時に最大限可能な自由度を得るために、特に制限されていない。最も簡単な場合では各ゾーンが専用の循環装置、専用の冷却器および専用の加熱器を使用する。この配列により、各ゾーンで一定の温度を設定する最大限可能な自由度を有する。しかしながら、この方法は非常に労力がかかり、かつコスト集約的である。
【0075】
この関連性において多ゾーン型反応器では各ジャケット空間が反応ゾーンである必要がない。むしろ1つのゾーンは、予熱器または冷却器としての構成で反応ガスの温度変化にのみ利用することもでき、または1つのゾーンが全く冷却されず、断熱反応ステップとして用いられる。
【0076】
このような多ゾーン型反応器の運転に必要な各周辺装置の態様に関しては、すでに1ゾーン型反応器システムに行われた説明が当てはまる。これらは、その際に構造的、プロセス技術的または経済的観点によって様々に配置することができる。たとえば加熱器、冷却器または循環装置またはそれらの組合せは1つまたは複数のゾーンで省くことができる。他方、たとえば2つまたはそれ以上の加熱器、冷却器または循環装置またはそれらの組合せを1つのゾーンに配置することができる。両者の場合でシステムに適合された、対応する遮断−および制御管継手を備える連結管が設けられている。
【0077】
その際に一方のゾーンから他方のゾーンへ供給された熱媒は、もう1つの接続を介して再び還流させる必要がある。この接続は、共通の冷却器を介して構築することができまたは閉鎖可能の第2の管を通してまたは両ゾーンの膨張容器間の、いわゆる補償管を介して構築することができる。
【0078】
好ましくは可能な限り大きい圧力差を有する箇所に配置される2ゾーン間で閉鎖可能の連結管は、熱媒循環による加熱または冷却時に、しかしまた特殊のプロセス条件でも簡単な方法でゾーンの間で大量の熱量の交換を可能にする。
【0079】
いずれの場合でも液体塩の充填時に、この塩がゾーンからゾーンへ下方から上方へ上昇することができ、かつゾーン間の連結管が特に標準の反応運転に対して遮断可能であることに留意しなければならない。
【0080】
吸熱反応の場合、本発明に係る方法は1ゾーン型反応器または多ゾーン型反応器で対応して実施される。供給される反応熱は別々に、たとえば対応して寸法指定された加熱器を用いて発生され、または別の設備部分からのプロセス熱が利用される。反応器システムの個々の構成要素の態様に対して前記態様が適用される。冷却器は定常的な通常運転で本来不用であるが、より低い温度レベルが調整される必要がある場合または反応器を停止する必要があり、それによって冷却時間が受容できる枠内にとどまる場合、該冷却器が有用である。これは運営者の裁量に任せられる。
【0081】
冷却は、対応する設備部分がある場合、発熱プロセスと同じステップで実施される。
【0082】
本発明に係る方法の温度変化は、詳細には多管式反応器の始動時の加熱および停止時の冷却に関する。この非定常的過程は分離して考察することができない。むしろこの過程は運転開始もしくは運転停止による全関連性で見られるべきである。この過程内で多数の個別措置に留意する必要がある。以下、まず本発明に係る方法による反応器システムの始動時の過程を説明する。
【0083】
初回運転開始プロセスの範囲内で反応器の始動および停止を本来の運転開始の前に少なくとも1回実施することが提案されており、これは「高温試験」とも呼ばれる。これは、該試験が熱媒温度の上昇により設計温度以下に近づくまで実施されることによって、運転による始動から区別される。該高温試験は全システムを点検する初回負荷試験である。特に、管溶接の強度および密閉性は、反応器に塩の漏れが無いことを保証するために点検される。
【0084】
さらに、その際に操作要員は反応器システムのハンドリングに習熟している。しばしば安全上の理由からこの高温試験は反応管の触媒充填なしにかつ反応ガスの供給なしに実施され、それによって万が一塩が流出しても不要な損傷を生ぜしめることができない。この点についての決定はこの方法に対して触媒製造者もしくは実施権許諾者と打ち合わせて講じる必要がある。それとは関係なく、この運転の場合に対してより簡単な代用シールを使用してもよい。
【0085】
この高温試験は、以下さらにより詳しく説明する次のステップを含む:
1 初回運転開始前の手順
2 塩充填温度への反応器システムの予熱
3 反応器システムへの塩の充填
4 試験温度への反応器システムの加熱
5 高温試験の実施
6 塩排出温度への高温試験温度の冷却
7 塩タンク内の塩の排出
8 周囲温度への反応器システムの冷却
【0086】
高温試験後、反応管は必要であれば触媒を充填され、反応器システムは再び本発明に係る方法で始動される。生産時間に従って、反応器システムは再び本発明に係る方法で停止される。
【0087】
通常運転での始動および停止は、塩がスタート前に塩タンク(かつ反応器内ではない)の中にのみある場合について、同様に以下より詳しく説明する次のステップを含む:
9 運転温度への反応器システムの加熱
10 プロセスの始動および実施
11 反応の停止および反応器の暖機
12 反応器の停止
【0088】
それに対して、塩がスタート前に反応器内にある場合については、後述する幾つかの相違点に留意する必要がある。
【0089】
以下、個別の方法ステップをより詳しく説明する。その際、一方のステップは他方のステップに基づいている。
【0090】
高温試験
反応器システムの初回始動前に、反応塩側の完全な密閉性と、特に反応器が冷却後に塩漏れが無く、かつそれによって操作要員が反応器システムのハンドリングに習熟できることを保証するために、管溶接を試験するために「高温試験」が実施される。
【0091】
1 初回運転開始前の手順
全塩空間の洗浄
輸送および組立中、特に湿度の多い季節に凝縮水の生成は完全には避けられないので、ジャケット側が洗浄されなければならない。ジャケット側の密閉性が空気圧力試験を実施する代わりに水圧試験によって完全な組立後に工業用水で試験された場合、同じ用水を洗浄に使用することもできる。Na3PO4を0.5%重量%添加することが望ましい。管側での水蒸気の凝縮と共に腐食を防ぐために、水温を空気の露点以上の温度に保持しなければならない。水温は、反応管内への熱風の吹付けによってまたはE−加熱器のオンによってゆっくり60〜80℃に上げることができる。ポンプは約12時間回転させなければならない。その後、ジャケット側を空にし、もう1回約2時間かけて脱鉱物水で洗浄される。さらに、もう1回空にして洗浄することが望ましい。各洗浄過程中に、ジャケット側が十分に水を含むことに注意する必要がある(少なくともポンプハウジング内の「最低レベル」になるまで)。水の排出後にジャケット側を熱風で乾燥し、それに続き不活性ガスで洗浄される。
【0092】
管側の洗浄/錆落し
管が清浄に搬入されていれば、特に洗浄は不要である。
【0093】
塩タンク内の塩溶融
反応器内の損傷を防ぐために、使用する塩が製造者仕様書の最少要件に相当することを保証する必要がある。
【0094】
2 塩充填温度への反応器システムの予熱
準備
・反応器システムを完全に組み立て、高温試験で好適な代用シールを使用することもできる。
・必要な配管束を上部および下部反応器フードに接続し、残りの開口部を密閉する。
・個々の構成要素の機能を事前に点検する。
・ジャケット側の密閉性試験を実施する。
・空気ブロワーを運転準備完了にする。
・空気予熱器を運転準備完了にする。
・調温用の供給装置を運転準備完了にする。
・ガス−および塩側の計器を実装し、かつ運転準備完了にする。
・レベル測定短管および充填時の塩の射出を防ぐために、その他の、配管束と連結されない塩側の短管を密閉する。
・安全な箇所への反応器からの調温ガスの流出
・反応管に触媒および/または不活性物質を充填する;触媒製造者およびプロセス実施権許諾者と共に、触媒がすでに高温試験中に反応管内に存在してよいかまたは反応管を触媒保護のために空にしたままにするべきかを明らかにする。
・塩の品質が反応器の損傷を防ぐために少なくとも製造者仕様書に相当する塩を塩タンクに充填する。
・塩を充填した塩タンクを運転温度(約200℃)に予熱する。
・反応器システム内に熱媒塩がない。
・冷却器を組み込み、運転準備完了にする。
・制御弁を熱媒用に較正し、運転準備完了にする。
・駆動モータを含む循環ポンプを組み込むが、運転しない。
・加熱器を熱媒用に運転準備完了にするが、運転しない。
・全ての塩配管(充填/排出、溢流、排気)を取り付け、運転準備完了に接続する。
・全ての熱電対、特に熱媒用の上部および下部分配チャネル内ならびに上部および下部のフード内で運転準備完了にする。
・全ての蒸気付随加熱装置を装置類および配管用に接続し、運転準備完了にする。
・反応器および熱媒を送給する配管束を完全に絶縁する。
・遮断弁を塩充填管および排出管内の塩側で閉鎖する。
・付随加熱装置の遮断弁始動蒸気を閉鎖する。
【0095】
実施
使用する熱媒が液体塩または液体塩混合物である場合、反応器は液体塩溶融物の充填前に、明らかに塩の溶融温度以上の温度に予熱する必要があり、それによってこの塩は直ちに再び固化することがない。そのために高温の調温ガスが反応器を通して導入される。
【0096】
調温ガスの種類は、その際に場合により反応管内にある触媒を損傷しない限りにおいて、特に制限されていない。対象となるのは、特に蒸気、不活性ガス、空気、煙道ガスまたは少なくとも部分的に循環系内に導かれた反応しない、一部または全部反応した反応ガスである。しかしながら、前記ガスが容易に使用可能であり、必要であればフィルタ処理後に清浄でありかつ問題がないので、好ましくは調温ガスとして加熱された空気が使用される。必要に応じて循環系内で運転してもよい。高温の調温ガスは、たとえば空気がガスブロワーおよびガス予熱器で発生され、反応器内へ導入されることによって発生される。
【0097】
この場合に、調温ガスを反応管を通してまたは反応器のジャケット空間を通して導くことも可能である。調温ガスが反応器のジャケット空間を通して導かれる場合、これは全ジャケット空間が調温ガスによって貫流されることが長所である。このジャケット空間は反応管として大きい容積と、大きい熱伝達面積とを有する。しかしながら、欠点は熱伝達媒体がガスであり、このようなガスとして液体塩のような液体熱媒と異なる流動性質を有することである。調温ガスは最小の流れ抵抗を有する流路を必要とし、バイパスで反応器の部分を迂回する。それによってしばしば均一な予熱を達成することが困難である。特に加熱部に接続して再び閉鎖する必要がある開口部がジャケット空間内に作られる必要がある。しかしながら液体塩の危険性のために、基本的に塩空間をシールなしに溶接構造として構成することが目指される。
【0098】
ジャケット空間の貫流時の前記の不定かつ不均一な加熱は、調温ガスが管束の反応管を通して導かれる場合に回避される。これらの管は、それによって連続的に入口から終端部まで加熱される。加熱された管はジャケット空間内でこの管を取り囲むガスを加熱する。ところで、加熱されたガスはより少ない密度を有し、上方へ上昇する。この自然対流として知られている現象によってガスがジャケット空間内で循環され、熱を別の箇所へ伝達する。
【0099】
最も遅く加熱される反応器の箇所は、当然熱媒用の分配チャネルのような自然に露出した箇所である。熱媒が円周にわたって反応器のジャケット空間に供給される多管式反応器の場合、分配チャネルはリングチャネルとして構成されている。このチャネルは、反応器の円周上に熱媒を分配し、該熱媒はそこから対応して寸法指定されたジャケット内の流出開口部を通して均一に反応器のジャケット空間内に流入する。この分配チャネルは第1に反応器ジャケットから出て熱管による温度変化を生じ、該反応器ジャケット側で上述のようにジャケット空間内にあるガスの自然対流によっても放熱によっても加熱される。リングチャネルの不均一な加熱によって、この内部でその中に含まれるガスの自然対流が発生し、それによって再び温度補償が好適になる。
【0100】
上述のように、反応器の加熱が個別の場合で反応器のジャケット側を通る調温ガスの導入によって可能でありかつ有意義であるにもかかわらず、一般に反応管を通す調温ガスの導入が有利になる。これは、さらに調温ガスを冷却ガスとして反応器の停止時に利用する長所も提供するが、ジャケット空間がまだ完全に熱媒で充填されている別の場合では不可能である。
【0101】
調温ガスの流れ方向は特に制限されていない。つまり上方から下方へまたは下方から上方へ多管式反応器の管を通して導くことができる。しかしながら、反応器の停止後反応器内に塩を放置させ、そこで固化させる可能性も持ちたいときは、ジャケット空間内にある固体塩の溶融による反応器の再始動時に調温ガスが上から下へ反応器の管を通して導かれ、それによって溶融した塩が妨害されずに上方へ膨張できるようにすることは不可欠である。調温ガスが下方から反応管の中へ導入されるような場合、初めに下方で溶融する塩はどこにも膨張できず、反応器を損傷させるであろう。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態において、調温ガスは基本的に上部反応器フードの中へ導かれ、そこで反応管束に分配され、反応管を貫流し、下部反応器フードに到達し、そこからガス流入短管を通して流出する。
【0103】
通常運転では、反応器の内部に温度差がある。反応器の上部としての上部反応器フードは、そこでほぼその中に流入する反応ガス混合物の温度を有する。本質的に反応器ジャケット、管束、管底およびそれに接続される分配チャネルから構成される反応器主部は、通常本質的により高い温度を有する。しかしながら、全体的に温度差が反応器主部の内部で該主部を通して流れる熱媒によって小さい量に制限されている。迅速な温度補償の理由は第1に熱媒の大きい熱容量であり、第2に充分に調節された流速による熱媒と反応器との間の良好な熱伝達である。上部反応器フードと反応器主部との間の異なる温度による異なる膨張は、これが構造的に種々の措置たとえばフランジを用いる分離によってまたは上部フードの弾性変形によって捕捉されるので、問題がない。
【0104】
まさに始動過程でも反応器の内部に温度差があるが、これは熱媒がまだ充填されないので、または熱媒がジャケット空間内にある場合、該媒体側で熱媒が溶融されかつ温度補償に寄与し得るまで該熱媒が一定の時間を必要とするので、ゆるやかにしか補償できない。
【0105】
経済的な理由から、一般的に反応器を可能な限り速く始動し、かつ高温試験もしくは運転温度にすることが目指される。まだ周囲温度を有する反応器内に高温の調温ガスが導入されるとき、これは最初にガスと接触する反応器部分が反応器出口よりも強く加熱され、そこで調温ガスがすでにその熱の大部分を引き渡しているので、反応器主部の内部の温度差を生じる。このような温度差は反応器内での物質の様々な膨張と、その結果として熱応力とを生じる。その際に対応する構造的措置のために反応器主部A、ガス流入領域Bおよびガス流出領域Cの主構成要素間の温度差は一般的に問題がない。
【0106】
最も問題があるのは、まだ熱媒が循環されず、高温の調温ガスが反応器主部Aの中に導入される加熱過程中の時間部分である。その際に温度差はガス流入側の管底上角部と反応器の他端部に置かれるリングチャネルの外端部との間の反応器主部で最大になる。
【0107】
本発明により、上方への始動時の反応管の中への前記ガスの流入時の調温ガスの温度および/または上方への調温ガスの体積流量が、反応管からの前記ガスの流出時に調温ガスの初回導入と共に始まる各期間にわたり調温ガスの温度の時間平均変化速度が最大30℃/hになるように制限される場合に、加熱が特に均一に実施され、許容されない熱応力の危険をほぼ除外できることが驚くべき仕方で見出された。
【0108】
本発明の好ましい一実施形態において、反応管からの調温ガスの流出時の前記ガスの温度の時間平均変化速度は最大20℃/h、特に好ましくは最大10℃/hになる。
【0109】
その際に特性温度は、少なくともガス流入短管およびガス流入フードを備えるガス流入領域、ガス流出短管およびガス流出フードを備えるガス流出領域、ガス流入端部に対向する端部で分配チャネル内に置かれている温度測定箇所で測定される。
【0110】
反応管の中への調温ガスの流入時の前記ガスの温度と各時点での流入側管底の温度との間の差が150℃以下、好ましくは100℃以下および特に好ましくは70℃以下である場合に有利である。
【0111】
管束の内部に置かれる少なくとも1本の熱管内の別の温度は軸線方向に測定することができる。
【0112】
反応管からの調温ガスの流出時の前記ガスの温度は、好ましくは直接測定される。
【0113】
ガス流入温度は、好ましくは全測定箇所の温度が上昇し始める場合に初めて上昇される。
【0114】
上記の全過程において過度の熱応力を回避するために重要であるのは、その際に非常に綿密に実施され、反応器システム内の温度が常時監視されることである。反応管からの調温ガスの流出時に前記ガスの温度の最大の所定の時間平均変化速度において、この変化速度が調温ガスの初回導入と共に始まる期間にわたって平均され、この変化速度を超えるとき、この変化速度はガススループット量および/またはガス温度の低減によって低減される。
【0115】
熱媒の循環は、最低温度が反応器主部で少なくとも熱媒の溶融温度を上回り、かつ反応器主部の平均温度が少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃および特に好ましくは少なくとも65℃熱媒の溶融温度を上回る場合に開始されなければならない。
【0116】
付随加熱装置
本発明の別の好ましい態様において、循環ポンプ、熱交換器またはE−加熱器のような多管式反応器に接続される全てのユニットならびに連結管、充填管および排出管、排気管ならびに絶縁された付随加熱装置を備える溢れ管のような全ての熱媒を給送しまたは熱媒側に接続される管束は、択一的な加熱方法が無い限りは加熱される。その際に付随加熱装置の温度は少なくとも160℃、好ましくは少なくとも180℃および非常に好ましくは少なくとも220℃、但し最高250℃にしなければならない。
【0117】
付随加熱装置は、好ましくは飽和蒸気で運転される。蒸気加熱の代わりに同様にその他の、たとえば電気付随加熱装置のような加熱システムも態様にすることができる。ここで防爆に関する規定に注意する必要がある。
【0118】
塩浴冷却器
塩浴冷却器として飽和蒸気発生器が使用されるとき、付随加熱装置と同時に飽和蒸気発生器の中へ圧力15および25baraの間の蒸気の導入によって該飽和蒸気発生器が加熱される。生成した凝縮物は底部短管を介して引き抜かれる。
【0119】
周辺装置
本発明の有利な実施態様において、反応器主部に固定して接続されるポンプハウジング、加熱器ハウジングおよび熱交換器のような周辺装置は、多管式反応器が入口と出口との間もしくは流入側および流出側の管底の間で、65℃および95℃の間、好ましくは70℃および90℃の間ならびに特に好ましくは75℃および85℃の間にある平均温度を有するとき直ちに加熱される。周辺装置の平均加熱速度に対して外力および熱応力の強度計算を留保して50℃/hまでの加熱速度が許容される。
【0120】
3 反応器システムへの塩の充填
本発明により第1に塩タンク内の塩が200℃の最低温度に達し、第2に調温ガスを用いる加熱による反応器の下部リングチャネルでの温度が少なくとも180℃の温度に達し、かつ第3に全ての周辺装置、特に循環装置、冷却器、加熱器、ならびに充填および排出用の付随加熱装置を備える全ての配管束が少なくとも180℃に加熱されると、直ちに塩タンクポンプが反応器システムの中への液体塩の供給を開始し、反応器への充填管/排出管の弁が開かれる。加熱および絶縁された多数の充填管/排出管を通して液体塩が反応器システムの複数の箇所で添加される。充填管/排出管は、好ましくは反応器ジャケット空間、循環ポンプ、塩浴冷却器およびE−加熱器の最深部の近傍に接続される。この接続は前記最深部に導通される連結管にも可能である。供給路は最低塩充填レベル(「low salt level」)に達するまでの間継続される。この全過程中、反応器を通る高温の調温ガスの供給ならびに熱媒を給送する配管用の付随加熱装置は運転されたままになる。レベル監視が最低充填レベルに達したことを通報すると、充填弁が閉じられ、かつ塩タンクポンプがオフにされる。択一的に充填はタンクポンプなしに塩タンク内のガス過圧によっても可能である。
【0121】
塩タンク内の塩の温度が供給過程の開始時に約200℃に指定されているのに対し、反応器内への入口での塩の温度は、充填管の付随加熱装置の温度と充填管進行中の熱損失とに左右される。従って、温度範囲は180℃および200℃の間で指示することができる。
【0122】
塩の充填後、塩上にある全ガス空間は窒素と重ね合わされる。
【0123】
塩充填中、飽和蒸気発生器が好ましくは加圧下にあり、流動しない。すなわち冷却器内のボイラー給水がない。
【0124】
4 試験温度への反応器システムの加熱
反応器が最低塩充填レベルまで液体塩で充填され、反応器の全箇所が180℃の最低温度を有し、充填管が遮断され、かつ塩タンクポンプが停止された後、塩循環ポンプおよび加熱器がオンにされる。反応器システムは目標温度に上昇加熱される。この目標温度は、高温試験時にほぼ反応器の設計温度を下回る試験温度である。この温度はしばしば370℃〜400℃の間の範囲にあるが、個別的な場合に450℃までなってもよい。
【0125】
E−加熱器の加熱要素は、通常、加熱出力を段階的に上げるために複数の加熱群に分割され、または該加熱要素は加熱出力を無段階に調整する出力分配器を装備する。
【0126】
E−加熱器は塩を非常に効率的に加熱できるので、調温ガスが空気ブロワーおよび空気予熱器の遮断によって停止される。調温ガス管の遮断弁が閉じられる。短管および塩溢れ管、特に非常排出管、排気管ならびにE−加熱器の塩流入管は引き続き加熱される。周辺装置のその他の付随加熱装置は調温ガスと同様に運転停止される。
【0127】
温度上昇と共に塩体積が増加する。過剰の塩は溢れ管を介して膨張容器から塩タンクへ流出する。加熱過程が終了すると、直ちに塩タンクが通常の生産運転中は不要になる。それにもかかわらず通常は塩タンク内に到達すると溢れた塩によって直ぐに固化しないように引き続き加熱される。さらに塩タンク内の塩は、水分を吸収できるのでそこで固化する場合に損傷を引き起こし得る。これは塩タンクの構造により考慮される。択一的に、予想される変動を塩レベルで問題なく吸収できる小型の常時加熱される塩タンクを中間接続することができる。
【0128】
飽和蒸気発生器
塩が約220℃の温度に達すると、直ちに飽和蒸気発生器が給水で満たされる。塩供給用の制御弁は初めに約2〜3%に調整される。冷却器がその運転温度に達すると、直ちに制御弁が最小流量に設定される。それによって一方で給水が加熱され、しかしまた他方では塩から熱を奪い取る蒸発も生じないことが保証される。運転による飽和蒸気圧力に達した後、制御弁を完全に閉じることができる。
【0129】
5 高温試験の実施
高温試験の目標温度に達した後、熱損失のみを保持時間中に補償するために加熱群の遮断によるE−加熱器出力が低減される。
【0130】
目標温度は少なくとも4時間保持されなければならない。この保持時間中、E−加熱器出力によって目標温度が制御され、反応器システムが機能および密閉性を点検される。
【0131】
6 塩排出温度への高温試験温度の冷却
保持段階の終了時に塩循環ポンプが運転され、加熱器は単に熱損失を補償し、塩溢れ管および排気管のみが蒸気加熱され、充填管の遮断弁が閉じられる。
【0132】
冷却は加熱器の運転停止と、塩冷却器の運転開始とによって開始される。これが飽和蒸気発生器として構成される場合、その前にある制御弁がゆっくり開かれ、塩が飽和蒸気発生器のジャケット空間に流れ込む。そこの管内にある水が一部蒸発し、生成する水蒸気混合物が上昇し、蒸気分離装置で分離される。蒸気は蒸気システムへ送給され、水は再び蒸気発生器へ還流される。乾燥運転および過熱を防ぐために、蒸発した水の代用物として相当量のボイラー給水が補充されなければならない。
【0133】
冷却過程中に塩体積が減少する。塩レベルは常時充填状態測定部によって監視される。まだ最小レベルに達する前に塩タンクポンプが運転され、減少もしくは不足した塩体積は塩タンクからの液体塩の供給によって補充される。その際に充填管内の対応する弁が開かれる。冷却は、塩が約220℃の塩排出温度に達するまで継続される。冷却速度は塩循環による冷却中に制限されていない。
【0134】
7 塩タンク内の塩の排出
好ましくは約220℃の塩排出温度までの冷却過程の終了時に必要であれば空気ブロワーおよび空気予熱器は引き続き停止されている。塩循環ポンプおよび塩浴冷却器はまだ作動中である。
【0135】
塩排出は基本的に反応器に許容されるあらゆる温度で可能である。しかしながら、塩タンクはそれに対応して設計されていなければならない。
【0136】
塩浴冷却器と進行中の塩循環とによる冷却は、反応器から塩へ、また塩から塩浴冷却器へも循環する塩による熱伝達が最良であるので、反応器システムに対する最も速くかつ最も柔軟な方法である。
【0137】
排出開始前に、自由な流出を保証するため、排出管および排気管ならびに塩タンクの付随加熱装置が運転されているかが点検されなければならない。
【0138】
排出は塩循環ポンプの遮断によって開始される。その直後に反応器システムの塩排出弁の開によって排出が実施される。塩タンクの加熱装置は運転中である。それによって反応器内の塩の固化が回避される。
【0139】
8 周囲温度への反応器システムの冷却
周囲温度への反応器システムの冷却は、自然放射によって、または反応管内への調温ガスの吹付けによって行うことができる。冷却ガスの種類は触媒製造者によってまたは本方法の実施権許諾者によって規定される。
【0140】
周囲温度への冷却を開始するために、塩は完全に反応器から排出され、かつ反応器にある装置類が運転停止される。特に蒸気発生器は周囲圧力に弛緩される。その中にある水の蒸発によって約100℃に冷却され、それに続き水が排出もしくは吹出される。
【0141】
ところで、本来の冷却は冷却ガスによる冷却によって始まる。その際に本発明に係る方法の条件が順守され、それによって冷却が均一に行われ、かつ許容されない熱応力の危険を除外することができる。対応して調温ガスの初回導入と共に始まる期間にわたって、反応管からの調温ガスの流出時に前記ガスの温度の時間平均変化速度が30℃/hを超えないように、下方への停止時に反応管の中へ調温ガスの流入時に前記ガスの温度および/または上方への調温ガスの体積流量が制限されることに注意する必要がある。
【0142】
そのために必要であれば冷却ガスが空気加熱器で対応して加熱されなければならない。
【0143】
ガス温度は、好ましくは全測定箇所の温度が下がり始めるとき、初めて空気加熱器の加熱出力の低減によって下げられる。冷却速度は最大30℃/h、好ましくは最大20℃/hおよび非常に好ましくは最大10℃/hにするべきである。
【0144】
上記の全過程において、過度の熱応力を回避するために重要であるのは、その際に非常に綿密に実施され、反応器システム内の温度が常時監視されることである。反応管からの調温ガスの流出時に前記ガスの温度の最大限許容できる時間平均変化速度において、この変化速度が調温ガスの初回導入と共に始まる期間にわたって平均され、この変化速度を超えるとき、ガス温度が上昇し、場合によってはさらにガススループット量が減少する。
【0145】
冷却ガスによる反応器システムの冷却は、反応器システム内の温度が最低のブロワー流出温度に達するまでの間だけ実施することができる。その後ブロワーがオフにされる。
【0146】
その他の冷却は自然放熱によって可能である。加速するために両フード内の数本の短管を開くことができる。
【0147】
反応器システムが近似的に周囲温度に達した後、フードまたはフードのマンホールが開かれ、かつ管溶接部が管底での可能な漏れについて点検され、ならびにその他の検査が実施される。
【0148】
通常運転、塩タンク内のスタート前の塩
以下の方法ステップは、少なくとも1回高温試験が実施され、かつ熱媒として塩が塩タンクの中へ返送された後の多管式反応器の始動−および停止過程に関する。反応器の全構成要素はそのために接続され、かつ運転準備完了にされている。
【0149】
9 運転温度への反応器システムの加熱
目標温度までの通常運転の運転状態に対する反応器の加熱用の方法ステップは、高温試験の場合のそれと全く同じであるが、この場合目標温度が試験温度ではなく、プロセスの通常の運転温度である。目標温度に達した後、必要であれば全ての主フランジ連結ねじならびに熱電対のパッキン押えが締め直される。ここで反応器は始動準備完了となる。
【0150】
10 プロセスの始動および実施
始動温度に達した後、このプロセスは運転経験を基礎としてならびに実施権許諾者と取り決めて始動される。
【0151】
プロセス熱の排出のために塩浴冷却器が設けられている。それぞれのプロセスおよび周辺条件に応じて種々の構造型式を設けることができる。プロセス熱が比較的少ないときは、簡単な構造型式が、たとえば空気冷却器としての態様で提供される。これは、たとえば送り予熱に利用することができ、または排出された熱が周囲に引き渡される。
【0152】
反応器がより多い熱量を発生するとき、該熱量はしばしば生産施設の別の箇所で有意義に利用できる飽和蒸気を発生する飽和蒸気発生器で利用される。塩浴冷却器はまだ反応のスタート前に低いレベルで運転されなければならない。排出熱は同時に加熱器から熱媒へ取り込まれなければならない。この反応は、通常スループットおよび/または濃度の段階的上昇によって始動される。反応の開始時に、加熱器は反応がどのように熱を発生するかの規模に応じて運転停止される。反応が始まり、かつ加熱器が運転停止されたとき、増加する熱量に対応して制御弁により熱媒量が飽和蒸気発生器によって増加され、同様に蒸発した水量が給水として補充される。塩浴温度に対する目標値設定によって最終的に一定の運転条件が達成される。
【0153】
飽和蒸気発生器については反応器の場合と類似の考察が当てはまる。すなわち、該飽和蒸気発生器が運転される前に、該飽和蒸気発生器も加熱されなければならない。この方式はすでに上記項目「塩浴温度までの反応器の始動」で説明した。飽和蒸気発生器自体と同様に給水も予熱することができる。これは、たとえば給水予熱器で行うことができる。
【0154】
これは塩循環系に配置することができる。給水は少なくとも100℃に予熱されなければならない。
【0155】
熱媒は循環装置によって循環される。それに対して、キャビテーションまたはコストのかかる構造上の措置を避けるために、循環装置は好ましくは下方へ供給する。主流が多管式反応器に供給され、より少ない副流は上述のようにガス冷却式または液冷式熱交換器として構成することができ、または蒸発冷却器として作動する冷却器に供給される。さらに別の態様も可能である。たとえば該冷却器は反応器内の熱発生がより少ない場合、給水予熱器として構成することができる。冷却器の通過後、熱媒は循環装置の入口領域に到達し、そこで該熱媒は多管式反応器から到来する熱媒の主流と一つにまとめられ、これと共に一緒に再び循環装置へ流れる。循環装置はその際同時に混合器の機能を引き受け、それによって均一化された温度特性を有する冷却された熱媒が反応器に到達する。しかしながら、反応の開始前に熱媒流が冷却器を通り初めにまだ制御弁によって遮断される。必要であればこの熱媒はさらに初めからバイパスを通して反応器を通過される。ここで、この準備された作業工程に従ってプロセスが実施される。熱媒冷却用の制御弁は反応器内で産生された熱量に応じて開放または閉鎖される。
【0156】
冷却器内の冷媒の温度は、大抵特に冷却器が蒸発器として構成される場合に設けられている。発生した蒸気の本質的な特徴はその圧力である。圧力の高さは本質的にその使用に影響する。さらに、この量は蒸気管システムの設計にとり重要である。そこから、圧力が本質的に規定され、かつ狭い限度内で変化できることになる。蒸気が飽和蒸気として存在するとき、そこから直接飽和蒸気温度が生じる。対応して飽和蒸気温度も同様に狭い限度内で変動する。
【0157】
冷却器に引き渡される熱量は反応器内の所定のプロセスによって規定されている。この熱量は冷却器の入口と出口との間の熱媒のエンタルピー差を規定する。このエンタルピーは密度、比熱容量、体積流量および温度の積として定義されている。密度および熱容量は運転領域内でわずかにのみ変動する物質値であり、他方、体積流量および温度はより大きい範囲で変化させることができる。引き渡される同一の熱量は、たとえば小さい体積流量および大きい温度差によってまたは大きい体積流量および小さい温度差によって達成することができる。実際上、熱媒温度が反応の推移に決定的な影響を有し、そのため狭い範囲に規定されているため、特に蒸気発生器としての態様において、冷却器の冷媒の上記の広範囲な規定による温度差と、反応器を通る熱媒の温度で制限が生じる。
【0158】
ところで、上記の周辺条件により、その熱伝達効率が熱媒および冷媒と熱伝導率および熱伝達面積との間の平均温度差によって決定された冷却器の設計が行われる。この場合、熱伝導率は、特に熱媒の体積流量にも依存する:体積流量が多くなるほど、さらに熱伝導率が良好になる。つまり、熱伝達面積および平均温度差から体積流量が、または体積流量の規定から熱伝達面積が生じる。
【0159】
類似の方法で反応管の熱伝達面積および反応器を通る熱媒の体積流量が算出される。ここで循環装置は、該循環装置が圧力損失を考慮して反応器と冷却器とを通る熱媒の体積流量の合計を供給することができる。
【0160】
上記の説明は、本発明に係る方法の適用を前提とする設計プロセスに関する一般的な概要を提供し、かつ本発明の良好な理解に役立てられる。個別的な依存関係は、実際上本質的により複雑であり、関連の設計規則集により詳しく記載されている。設計に対するその他の影響因子は、設計から生じる装置類および機械類の寸法の投資コストならびに運転コストである。反復プロセスにおいて、技術的および経済的量の好適な組合せを達成することが試行されている。
【0161】
この考察の結果は、各量がその他多数の物理的、技術的および経済的関係に依存するので、寸法および運転条件が特に有利である各個別の場合に依存していることである。
【0162】
反応器システムが一旦設計されると、このシステムを可能な限り少ないコストで確実に運転することが目指される。この関連性において重要な制御量は反応器の中に入る熱媒の温度である。この温度は向流管および分配チャネル内の温度測定箇所で測定され、分配チャネル内の温度に関する情報は本質的に情報としてだけの性格を有する。同様のことは収集チャネルもしくは流出チャネル内に配置された温度測定箇所にも当てはまる。その他の温度測定箇所は、同様に情報のみの性格を有し、温度制御には援用されない熱交換器の入口もしくは出口に配置することができる。該温度測定箇所は別の関連性において熱交換器の効率試験に使用することができる。
【0163】
単に熱媒温度が反応器の熱媒入口で測定され、かつ自動的に熱交換器を通る体積流量が制御弁によって制御される制御システムが特に有利であることが判明している。付加的に温度制御にも利用される熱交換器の出口での付加的な温度測定は不要であることが証明されている。
【0164】
この設計方法によっておよび運転のために、実際上反応器ジャケットを通る体積流量を基準として5および15%の間の範囲にある熱交換器を通る体積流量が生じる。
【0165】
11 反応器の反応の停止および暖機
反応の遮断のためにフィードガスがそれぞれのプロセス方式に応じて自発的に停止されるか、または非常にゆっくり低減される。一般的に、たとえば充填中の急速な変化が制御回路の過反応と、それに関連して塩温度変動とを引き起こし得、これが該回路側でプロセスまたは触媒に対して再び負の帰結を有し得、そのため回避されなければならないので、プロセスパラメータの大きい飛越状の変化は回避するべきである。
【0166】
フィードガスの遮断による短時間の運転遮断時に、新たな加熱の必要性を回避するために、熱媒塩は温度を保持しなければならない。
【0167】
初めにフィードガス供給が実施権許諾者の取扱説明書に従って停止され、および/または少量の不活性ガス流で補充される。それぞれの暖機の要求に応じてE−加熱器のより多いまたはより少ない加熱群がオンにされる。暖機過程中、塩循環ポンプは運転されたままになる。これが不可能である場合は、E−加熱器もオフにされなければならない。この場合に、固体塩によるチャネルの目詰まりを確実に防止するため、E−加熱器への塩流入チャネルは常時蒸気加熱されなければならない。蒸気システムは同様に運転されたままになる。
【0168】
12 反応器の停止
冷却ならびに排出および周囲温度への反応器システムの冷却は、高温試験についての上記説明に従って同様に実施される。
【0169】
通常運転、反応器内のスタート前の塩
反応器を始動および停止する上記方法に対する別法として、塩は冷却過程で反応器内に残留していてもよい。以下、前記方法との相違点のみを詳述する。
【0170】
熱媒塩がジャケット空間内に固体の形態で存在する反応器が加熱される場合、調温ガスは排他的に上方から下方にのみ反応管を通して導いてよく、それによって固体塩よりも大きい体積を占める溶融塩が妨害されずに上方へ膨張することができる。
【0171】
その他の点で同一の方法ステップが実施され、熱媒塩が開始時に塩タンク内にある反応器の前記始動の場合と同じ温度条件が順守される。同様に目標温度に達した後、必要であれば全ての主フランジ連結ねじならびに熱電対のパッキン押えが締め直される。プロセスの始動および実施については差異がない。
【0172】
反応器の停止は、塩が塩タンク内に排出されず、広範囲に反応器システム内に残留することを相違点として、上記方法ステップに従って実施される。しかしながら、固化温度に達する少し前に塩レベルは、必要であれば、さらに確実に排出により上部管底の下角部より下方に下げられる。冷却する調温ガスの方向はその際基本的に制限されていない。ガスが上方から下方へ導かれると、塩が上方から下方へ固化し、これは結果的に下方に引巣の形成を生ぜしめる。従って、好ましくは冷却する調温ガスが下方から上方へ反応管を通して供給される。ここで固化プロセス中に上部にある液体塩が反応器の下部で固化された減少する塩の体積に従うことができるので、引巣形成が明らかに低減される。
【0173】
本発明は、以下、図面を利用して例としてより詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0174】
図1は本発明に係る方法の反応器システムの第1の実施形態を示す。この反応器システムは発熱性気相反応用として設計されている。熱媒として塩が使用される。ここに例示した反応器システムの主構成要素は、本質的に1ゾーン型反応器1、循環装置2、加熱器3、冷却器4、補償容器5、塩タンク6ならびに調温ガスもしくは反応ガス混合物が製造されるガス処理装置7である。
【0175】
図示した実施形態において反応器1は多管式反応器として構成されている。該反応器は管束9を形成する多数の触媒充填された反応管8を有する。反応管8は密閉して上部管底10および下部管底11で終端する。管束9は、上部管底10と下部管底11とに接続された絶縁ジャケット12によって取り囲まれている。必要であればジャケット12はここに図示しない熱応力の吸収用の補償器を使用する。上部管底10は、ガス流入短管14を備える上部フード13によって、下部管底11はガス流出短管16を備える下部フード15によって包括もしくは覆われる。反応器1のジャケット空間は熱媒として液体塩17によって環流される。その際に好ましくはリング状のバッフル18と、該バッフルと共に交互に配設されたディスク状のバッフル19とによって、図示した実施例においてはバッフル19のみが反応器1を通して導かれる。管束9の外部とジャケット12との間の管束内部20も外部ジャケット空間21も非配管状態にとどまる。
【0176】
液体塩17は循環装置2によって反応器システムにより供給される。循環装置2は下方へのキャビテーションを回避するため熱媒17を供給する羽根車22を備える、モータMによって駆動される少なくとも1つのポンプである。熱媒17の主流は短い下部反応器供給管23を介して反応器1へ供給される。下部分配チャネル24を介して該主流が反応器1で分配される。対応して形成された下部ジャケット開口部25によって熱媒17が均一に反応器全周に分配される。反応器が円形断面を有し、熱媒17は上述のように均一に全周にわたって外部から内部へ、かつ再び内部から外部へ導かれ、熱媒17が全周にわたり均一に反応器1の外部のジャケット空間21を介して導かれるように、ジャケット開口部25が流れ圧力に対応して寸法指定されている。反応器の通過後、液体塩は上部ジャケット開口部26を通る反応器から反応器内の流入時と同様の方法で上部分配チャネル27へ流出する。上部反応器排出管28を介して液体塩は再び循環装置2の入口領域へ到達する。
【0177】
下部分配チャネル24および上部分配チャネル27に、さらに熱媒用の加熱器3が短い加熱器供給管29および上部加熱器排出管30を介して接続されている。必要であれば塩流はさらに加熱器制御弁31を介して調整できる。加熱器3は、好ましくは電気的に駆動(E−加熱器)されるが、別の方式も可能である。
【0178】
反応器1の中で発生した反応熱は冷却器4によって排出される。図示した実施形態において、この冷却器は蒸気発生器として構成されており、循環装置2に短い冷却器向流管32および短い冷却器排出管33−と共に反応器1−にも接続されている。冷却器4はその両端で管束によって密閉して閉鎖される蒸発器管束34を有する。上部冷却器管底35は、上部冷却器フード36によって、下部冷却器管底37は下部冷却器フード38によって取り囲まれもしくは覆われる。上部冷却器管底35は連結ハウジング39によって固定して補償容器5に連結されており、下部冷却器管底37は軸線方向に冷却器ハウジング40の中で自由に移動する。給水41は給水管42を介して供給される。該給水管は上部冷却器管底35を通して導き、下部冷却器フード38の中へ入る。熱媒は(ここに図示しない)好適なバッフルによって蒸発器管束34を循環し、蒸発器管内にある水を一部蒸発させる。このように得た蒸気水混合物は上昇管43を介して(ここに図示しない)蒸気分離器に到達し、そこで蒸気が分離され、蒸気システムに供給され、分離された水が給水の一部として再び冷却器に供給される。
【0179】
反応器システム内を循環する熱媒17は少なくとも1箇所で連結箇所44を通して補償容器5に接続されている。その他の連結は上位箇所でまたは反応器1内の熱媒ジャケット空間の別の箇所でも補償容器5のガス空間と脱ガス箇所との間の絶縁された付随加熱装置を装備した排気管45によって形成されている。全反応器システムの熱媒空間は不活性ガスとして窒素Nを用いて窒素管46を介して洗浄される。補償容器5の収容能に達したとき、熱媒は溢れ管47を介して充分な収容能を有する確実な箇所でまたは直接塩タンク6の中へ再び還流する。補償容器内で液体レベルが充填状態測定部48により測定される。一定の液体レベルで対応する措置が解除される。特性的な液体レベルは図3により詳しく示されている。補償容器が溢れると、レベル「HL」に達し、かつアラームが解除される。液体が流出するよりも速く上昇し、かつこの液体がレベル「HHL」に達すると、設備は自動的に減速される。液体レベルが値「LL」以下に下がる別の場合では、塩タンク6からの必要な後供給に注意を促すためアラームが解除される。最低許容レベルが「LLL」に達すると、設備が自動的に減速される。レベル「LLL」は反応器の上部管底10の下角部の上方にある。
【0180】
熱媒塩は塩タンク6の中にある。塩は初回充填時に固体の状態である。反応器システムの始動時に内部加熱装置49によってまたは絶縁付き外部加熱装置50によって溶解される。この時点までに、その他の反応器システムはまだ塩を含まない。塩が溶解されかつポンピング可能である時点から、溶融過程を均一化し、かつ加速するために還流管52を介して循環系内で塩タンク51によって運転することができる。塩タンク6は複数の塩連結管53a、53b、53c、53dを介して反応器システムの個々の構成要素と連結されている。塩連結管はそれぞれ遮断弁54a、54b、54cおよび54dを有する。
【0181】
始動時にガス処理装置7の中で最初にブロワー56により好適な調温ガス55が、絶縁されたガス主管58に至る絶縁されたバイパスの中にあるガス加熱器57に供給される。ガス誘導は対応するガス遮断管継手59、60、61によって行われる。調温ガス55の温度はガス混合器62の中で均一化される。反応器が後の時点で運転温度になるとき、ガス加熱器57が運転停止され、転換される反応ガス成分が供給管63を介してガス流に添加され、1台または複数台のガス混合器62の中で該ガス流と共に均一化される。しかしながら、最初に調温ガスが加熱過程中に反応器1のガス空間を貫流する。加熱はその際に反応管8からの調温ガス55の出口で前記ガスの温度の時間平均変化速度に関する本発明に係る条件によって行われる。この変化速度は、調温ガスの初回導入と共に始まる期間にわたって平均され、かつ30℃/hを超えてはならない。反応器1が一定の温度に達すると、ポンプハウジング64、加熱器65、冷却器ハウジング66で絶縁された付随加熱装置が、かつ連結管67a、67b、67c相互におよび塩タンクへの連結管68a、68b、68c、68dでここに全く図示しない絶縁された付随加熱装置が運転される。
【0182】
反応器システムが充分に塩17の溶融温度以上に予熱され、かつ塩タンク6の中の塩の温度が塩充填温度にあるとき、塩タンク内の塩の循環供給が運転停止され、遮断弁54a、54b、54cおよび54dが開かれ、液体塩の反応器システムへの充填が開始される。塩タンク内のガス体積の変化は溢れ管47および通気管および排気管69によって補償される。充填過程中に熱媒の液体レベルが充填状態測定部48で測定される。該充填状態測定部が最低充填レベルを表示するとき、塩供給が遮断弁54a、54b、54cおよび54dの閉鎖によって終了され、かつ塩タンクポンプ51がオフにされる。同時にまたは時間的にずらして調温ガス55の供給が調整され、同様に排出管および溢れ管の運転を除き蒸気付随加熱装置の運転が開始される。循環装置2および加熱器3が運転される。任意選択の遮断管継手31の先行する解除によって反応器1への加熱器3によって加熱された熱媒の経路が解除される。測定原理として好ましくは同時に液面が作動ガスとしての窒素で覆われかつ保護されるガス気泡法が使用される。さらに窒素はもう1つの窒素管46を介して供給することができる。
【0183】
図2aおよび2bは、その主構成要素と、その温度測定箇所とを備える反応器1を示す。反応器主部Aには、反応器ジャケット12、管束9、下部管底11、上部管底10および本例でリングチャネルとして構成されたジャケット12に接続される下部分配チャネル24および27が含まれる。反応器主部Aの上端部に、上部フード13と、ガス流入短管14とを備えるガス流入部Bが接続され、下端部に下部フード15およびガス流出短管16を備えるガス流出部Cが接続される。
【0184】
調温ガスの温度Tとしてガス流入短管14内のガス流入温度TG0ならびにガス流出短管16内のガス流出温度TG1が測定される。ガス流入側での反応器温度Tとして上部のガス流入側の管底10の温度TR0が測定され、かつガス流出側の反応器温度Tとして下部のガス流出側の管底11の温度TR1が測定される。さらに反応器1内の最低温箇所の温度として下部分配チャネル24での温度Tが測定される。
【0185】
G0およびTG1は調温ガス55の反応管8への流入時もしくは反応管8からの流出時の前記ガスの温度に相当し、またはこの温度の検出を可能にする。この温度は必要であれば直接測定される。反応器1に沿って反応器温度Tは管束9の中に配置された少なくとも1つの熱管70の中で複数の温度測定箇所で測定され、図示した実施例において4つの温度測定箇所71a、71b、71c、71dで測定される。
【0186】
ガス流入短管14に対立する分配チャネル24は、加熱過程中に最低温の反応器部分の相Iにある。なんとなれば反応器1の温度は、軸線方向だけでなく半径方向にも調温ガス55の流入箇所から出発して前記ガスによって変化され、露出している下部分配チャネル24との距離が最大であり、その結果、ここに反応器1の最低温の箇所があるからである。
【0187】
図2bは、時間位相Iの内部で始動の開始時(図4参照)に反応器全長Lにわたる調温ガスの温度Tおよび反応器温度Tの典型的な推移を示す。調温ガス55の温度Tの上昇は構造上の理由から大抵段階的に行われる。図2bおよび4に示した例において、対応する温度TG0、Ia、TG0、IbおよびTG0、Icによる3つのステップもしくは部分位相Ia、Ib、Icで温度上昇が生ずる。
【0188】
図2bの下の両曲線は部分位相Iaにおける典型的な温度推移を表す。
【0189】
部分位相Iaで反応器の主要部はさらに周囲温度Tを有する。ゾーンA1(図2b)の開始領域で調温ガス55の流入温度TG0、Iaを有する前記ガスがその熱を反応管8に伝達する。この熱伝達プロセスは、ゾーンA2およびA3にまで及ぶ。ゾーンA3の終端部から調温ガス55は本質的に反応管8の温度を想定している。すなわち周囲温度Tに冷却され、その結果、反応器出口までそれ以上温度変化は生じない。ゾーンA1の開始まで反応器1はすでにほぼ調温ガス55の流入温度TG0、Iaに加熱され、それに対してゾーンA1の終端部で反応器1はまだ周囲温度Tを有する。つまり反応器1への熱伝達は明らかな時間的遅延を生じる。熱伝達ゾーンもしくはローラは、矢印Wで暗示したように、最初から最後までゆるやかに反応器1を通り移動する。その際に温度測定箇所を利用して71a、71b、71cおよび71dで反応器1内の温度および温度差がコントロールされる。
【0190】
図2bの上の両曲線は部分位相Icの典型的な温度推移を表す。
【0191】
図示した時点で、反応器1はゾーンA3の終わりまでほぼ調温ガス55の流入温度TG0、Icに加熱された。最後のゾーンA4で調温ガス55と反応器1との間にもう1つの温度勾配があり、その温度Tもしくは調温ガス55の温度TはゾーンA4の終端部で図示した時点で先行する部分位相Ibの対応する温度レベルTG0、Ibにある。それによって、ゾーンA4の部分位相Icで熱伝達が行われ、これは類似の仕方で事前にゾーンA1の部分位相Iaで生じている。
【0192】
図3に、図1に示した冷却器もしくは蒸気発生器4の変形態様が示されている。この場合、一連の軸線方向に連続するバッフル80を備える熱媒17が蒸発器管束34に対して横方向へ誘導される。バッフル80は本例においてそれぞれ1つのその端部に流出部を形成し、隣接するバッフル80の流出部は対向する端部にある。しかしながら、バッフル80は同様に良好にリング状およびディスク状に反応器1と同様に構成することができる。蒸気発生器4の通過後、冷却された熱媒17は循環装置2の入口へ還流する。熱媒17のその他の誘導は図1に示したものに相当し、そこですでに詳しく説明されている。
【0193】
蒸気発生器4の蒸発器部分は、蒸発器管束34、冷却器管底35、37および下部冷却器フード38に関して図1に示したものと同一である。それと異なり、図3記載の実施形態において上昇する水蒸気混合物はまだ蒸気発生器4自体の中で分離される。そのために上部冷却器管底35に円筒形の冷却器ハウジング81が設置される。該ハウジングに蒸気流出短管83を備える上部冷却器フード82が接続される。この構造において蒸発器管束34の中で生成された水蒸気混合物は、初めに上方へ向けて分離板85によって閉鎖された収集空間84の中へ流れる。給水41は給水管42を介して液体空間86の中へ分離板85を介して導かれ、そこから冷却器連結管87を介して下部冷却器フード38の空間へ流れる。給水管42は部分的に直接前記空間の中へ引き続き導くことができる。同様に、この連結管87を通して必要に応じて堆積物を下部冷却器フード38の底部で吸引する槽引抜管88が導通される。表面排泥管89を介して取り込まれた浮遊物質が除去される。
【0194】
収集空間84の中にある水蒸気混合物は分離板85の中の開口部を介して遠心分離機90の中で上昇する。分離された蒸気91は、微細分離器92で微滴から解放され、蒸気流出短管83を介して冷却器4を離れる。液相は液体空間86へ還流する。液体レベルは測定短管93および94を介して測定され、供給された給水41の量によって制御される。分離板85上にある遠心分離機90の台数は本質的に分離される蒸気量に依存する。
【0195】
図4および5は、定性的に相I〜VIIIに分割して、予熱、塩充填、加熱、冷却および塩排出による、一式のサイクル始動/停止による反応器での時間tにわたる温度TG0、TG1、TR0、T(図2a参照)およびT(塩温度)の推移を示す。表示した温度は熱媒としての「HTS」−塩による反応器の運転に関係する。温度TR1は広範囲に温度TG1に相当する;偏差は無視できる。
【0196】
その中で位相Iは、時点tI、0での、この場合はT=20℃と仮定する周囲温度以上でのスタート時の反応管8を通る調温ガス55の導通による塩充填温度への反応器システムの予熱を示す。偏差±5℃を有する温度T=80℃でポンプハウジング、冷却器ハウジング40、加熱器ハウジング、充填管/排出管の付随加熱装置64、65、66、67、68および溢れ管は始動蒸気で給送される。位相Iの終了時の時点tIIまでのT=210℃で塩充填温度に達している。
【0197】
すでに上述したように、図示した実施例において調温ガス55の温度Tは、位相I中に段階的に上昇される。まず部分位相Iaで始動の開始以降時点tI、0で温度TG0、Ia=120℃すなわち周囲温度100℃をT=20℃以上で反応管8の中に導入される。第2ステップで調温ガス温度がTG0、Ib=180℃に上昇され(位相Ib)および第3ステップでTG0、Ic=240℃に上昇される(位相Ic)。
【0198】
位相Iの温度推移TR0、TG1およびTから読み取れるように、反応器1はそのガス流入領域10、13、14で供給された調温ガス55の温度TG0へ比較的速く加熱され、他方、ガス流出領域11、15、16での加熱は著しく遅延して実施され、それに対して反応器1の最低温箇所の加熱はさらにもう1度明らかに遅延されている。
【0199】
しかしながら、位相Iの終了時にガス流出温度TG1の反応器1の最低温箇所の温度Tが補償される。しかしながら、調温ガス55の流入温度TG0の段階的上昇に続く段階状の推移が3つ全ての温度TR0、TG1、Tに対して識別できる。
【0200】
さらに、この線図はtI、0で縦座標がTで交差し、縦座標と曲線TG1との間でそれらの最外側点に当接する直線ΔTaV/Δtを含む。この直線ΔTaV/Δtは反応管8からの調温ガス55の出口で前記ガスの温度TG1の本発明による時間平均変化速度の最大値を表し、各時間は調温ガス55の初回導入と共に、すなわち時点tI、0で開始する。この時間平均変化速度は、本発明により30℃/hを超えてはならず、図示した実施例において、この速度は10℃/h以下になる
【0201】
ところで位相IIで、tII〜tIII以降、最小レベル「LLL」(図3参照)に達するまで液体塩17が反応器システムの中への塩充填温度T=210℃で充填される。塩17の充填後、反応器1内の塩充填が窒素と重ね合わされる。調温ガス55はこの位相ですでに運転停止することができ、または加熱プロセスをさらに引き続き支援することができる。
【0202】
それに続きtIII以降から位相IIIが目標温度T=360℃への反応器システムの加熱を開始する。この位相は循環装置2および加熱の運転開始と共に始まる。調温ガス55および蒸気加熱は、短管および配管、塩溢流、加熱器3の排気ならびに塩流入管を例外として運転停止される。加熱過程中、過剰のHTS−塩が排出される。加熱は目標温度T(時点tIV)に達すると直ちに終了される。高温試験の場合、目標温度Tは高温試験温度であり、通常運転では反応が触媒充填された反応管8によって始まる運転温度である。
【0203】
位相IIIにおいて温度TR0、TR1、Tはすでに広範囲に塩温度Tに相当する。すなわち、全反応器1が塩温度Tに加熱される。位相IIIの中心で目標温度T=360℃に達している。
【0204】
IV以降から定常位相IVが続き(図4および5)、その中で高温試験において熱損失を補償するために、高温試験温度が約4時間にわたり保持され、加熱器3のみが始動するか、または温度が目標温度Tに従って通常運転に対して調整および保持される。
【0205】
図5に定常位相IVの終了の停止過程が示されている。
【0206】
この停止過程は、本事例において220℃である塩排出温度Tへの運転温度Tの液体塩17の冷却と共に始まる。時点t以降からの位相Vにおける塩排出温度Tへの冷却時に、塩17は循環装置2によって引き続き循環され、冷却器4を備える反応器システムが塩排出温度Tに冷却される。塩循環による冷却中、冷却速度は制限されていない。冷却過程中に縮小する塩体積は常時補充される。
【0207】
位相Vにおける塩温度Tの縮小と共に本質的に時間遅延なしに反応器1の温度TR0、TR1、Tも反応管8への入口でかつ反応管8からの出口でならびに下部分配チャネル24で低下する。これはガス流入領域に対して最大の間隔を有し、それによって調温ガスによる温度変化時に最大の時間遅延を有する。つまり全反応器1は本質的に均一に塩17の冷却に従って冷却される。
【0208】
位相VIの開始(tVI)時に塩排出温度Tに達したとき、循環装置2が運転停止される。配管および塩タンク6が加熱され、それによって塩17が流出中に固化されず、妨害されずに排出することができる。この排出過程は、塩タンク6が対応する温度に設計されていることを前提にして、より高い温度レベルでも開始することができる。択一的に塩17は反応器1の中に残留していてもよい。
【0209】
位相VIIにおいて、時点tVII以降から反応器システムが周囲温度Tに冷却される。これは自然放射または反応管8の中への冷却空気の吹付けによって行われる。その際に循環装置2は運転停止されている。冷却空気または窒素による反応器システムの冷却は、温度が反応器システム内でブロワー流出温度に達するまでの間だけ行うことができ、その後ブロワーを遮断することができる。
【0210】
図示した実施例において位相VIIの開始時に低温の調温ガス55が上方から反応管8の中へ導入される。これは反応器1のガス流入領域の迅速な冷却を生ぜしめ、それに対してガス流出領域が比較的大きい時間遅延によってのみ冷却され、これは様々な温度推移TR0およびTG1から明らかである。ところで始動時の反応器1の最低温箇所は、停止時に反応器1の最高温箇所である。ここで低温の調温ガス55に対する比較的大きい間隔によって冷却は初めて著しい時間遅延で行われ、その結果、対応する温度Tは明らかに調温ガス55のガス流出温度TG1を超えている。位相VIIの終了時にガス流入およびガス流出ならびに反応器1の最高温箇所の温度TR0、Ta1、Tが再び互いに近似されている。尚、調温ガスもしくは冷却ガス55の供給は時点tVIIIで停止される。
【0211】
反応管8の中への流入時の調温ガス55の温度TG0はこの実施例において120℃で一定になる。
【0212】
線図に直線ΔTaV/Δtが記載されており、この直線は時点tVII、調温ガス供給の開始時に(まだ)共通のTR0、TG1およびTの温度曲線と交差し、次に下方から温度曲線TG1に接する。直線ΔTaV/Δtは図示した実施例において反応管8からの調温ガス55の流出時の前記ガスの温度TG1の本発明による時間平均変化速度の最大値を表し、この時間は反応管8の中への調温ガス55の導入と共に始まる。温度TG1の本発明による時間平均変化速度は、図4に示した始動と比較して、温度変化たとえば60℃に必要な時間が本質的に大きいので、本質的により小さくなることは明白である。この温度TG1の時間平均変化速度は本質的に最大30℃/hになる。
【0213】
位相VIIIにおけるさらなる冷却は、時点tVIII以降から、自然放熱によって行われる。さらに加速するために幾つかの短管を開放することができる。
【0214】
始動および/または停止中の反応器1の主部Aにおける温度差の付加的な均一化は、位相IもしくはVIIおよび/またはVIII中、塩循環装置2、2’が少なくとも時々運転開始される場合に達成できる。
【0215】
図6は、本発明に係る方法の適用に対する第2の実施例として図1に示した反応器システムの変形態様を示す。図1の反応器システムが1ゾーン型反応器1を有し、他方、図6に示した反応器システムは2ゾーン型反応器1’を有し、両ゾーン100、100’は分離板101によって互いに分離されている。繰り返しを避けるために、以下、図1の反応器システムに対する変化した部分のみを記載する。その他の点については図1の説明を参照されたい。
【0216】
付随加熱装置および絶縁部は図6に示していない。しかしながら、これらは図1記載の反応器システムの場合と同様に構成される。
【0217】
図6に示した反応器システムの場合、ゾーン100、100’の各々は循環装置2、2’/冷却器4、4’/任意選択のバイパスの専用の装置群を有する。連結管102は、異なる圧力箇所での両ゾーンの熱媒空間、図示した実施例においてゾーン100’のポンプの吸引側とゾーン100のポンプの圧力側とを連結する。連結管102は異なる圧力の別の箇所も相互に連結できる。または複数の連結管束102も様々な箇所に接続することができる。連結管102(群)を介して温度差を補償する始動または停止過程において塩を一方のゾーンから他方へ送ることができる。さらに補償容器5、5’は、開放された連結管102の場合に循環する塩量を再び還流し、それによってレベル状態を補償容器5、5’内で補償するために、直接塩補償管103と互いに連結されている。補償容器5、5’は好ましくは密閉して反応器1’に配置されている。しばしば直接的な塩補償管103を直接上部分配チャネル27上に置いて提供されている。次に絶縁は反応器1’を介してかつ前記塩補償管103を介して設けられており、それによって前記塩補償管103に対して独立に絶縁された付随加熱装置が節約される。補償容器5、5’のガス空間104、104’はガス補償管105と互いに連結されている。反応器1’の排気管106は、一方または両方の補償容器5、5’のガス空間104、104’に接続されるか、または図6に例示しているように、両方の補償容器5、5’のガス補償管105にのみ接続されている。
【0218】
図6に示した実施例において(ここに図示しない)反応管8は連続的に両ゾーン100、100’を超えて上部管底10から下部管底11まで延伸し、その中で反応管8の各端部が密閉して溶接されている。
【0219】
多ゾーン型反応器の始動および停止用の本発明に係る方法は、1ゾーン型反応器の場合と同様に実施される。すなわち調温ガス55の初回導入と共に始まる各期間にわたり調温ガス55の温度の時間平均変化速度が下部管底11での反応管8からの前記ガスの流出時に−たとえば下部の第2ゾーン100’からの流出時でも−30℃/hを超えないように、上方への始動時および下方への停止時に上部管底10での反応管8への調温ガス55の流入時に−たとえば上部の第1ゾーン100への流入時でも−前記ガスの温度および/または上方への調温ガス55の体積流量が制限されている。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】1ゾーン型多管式反応器と、循環装置と、冷却器とを有し、かつ本発明に係る方法が第1の実施例に適用される発熱反応に対する反応器システムの縦断面図の模式図である。
【図2a】温度測定箇所を含む図1の多管式反応器の縦断面図である。
【図2b】反応器全長にわたる温度推移を含む線図である。
【図3】冷却器のもう1つの実施形態による図1の循環装置の縦断面図である。
【図4】反応器への入口もしくは反応器からの出口での調温ガス、熱媒、流入側管底および反応器の最低温箇所の温度の定性的時間的推移を含む始動の線図である。
【図5】図4の温度の定性的時間的推移を含む停止の線図である。
【図6】多ゾーン型反応器を有し、かつ本発明に係る方法が第2の実施例に適用される図1に類似の反応器システムの模式図である。
【符号の説明】
【0221】
1、1’ 反応器
2、2’ 循環装置
3、3’ 加熱器
4、4’ 冷却器
5、5’ 補償容器
6 塩タンク
7 ガス処理装置
8 反応管
9 管束
10 上部管底
11 下部管底
12 ジャケット
13 上部フード
14 ガス流入短管
15 下部フード
16 ガス流出短管
17 塩
18 リング状のバッフル
19 ディスク状のバッフル
20 管束内部
21 外部ジャケット空間
22 羽根車
23 下部反応器供給管
24、24’ 下部分配チャネル
25 下部ジャケット開口部
26 上部ジャケット開口部
27、27’ 上部分配チャネル
28 上部反応器排出管
29 加熱器供給管
30 上部加熱器排出管
31 加熱器制御弁
32 冷却器向流管
33 冷却器排出管
34 蒸発器管
35 上部冷却器管底
36 上部冷却器フード
37 下部冷却器管底
38 下部冷却器フード
39 連結ハウジング
40 冷却器ハウジング
41 給水
42 給水管
43 上昇管
44 連結箇所
45 排気管
46 窒素管
47 溢れ管
48 充填状態測定部
49 内部加熱装置塩タンク
50 外部加熱装置塩タンク
51 塩タンクポンプ
52 還流管
53 塩連結管
54 遮断弁
55 調温ガス
56 ブロワー
57 ガス加熱器
58 ガス主管
59 ガス遮断管継手
60 ガス遮断管継手
61 ガス遮断管継手
62 ガス混合器
63 供給管
64 ポンプハウジングで絶縁された付随加熱装置
65 加熱器で絶縁された付随加熱装置
66 冷却器ハウジングで絶縁された付随加熱装置
67 周辺装置と反応器との間の連結管で絶縁された付随加熱装置
68 塩タンクへの連結管で絶縁された付随加熱装置
69 通気−および排気管
70 熱管
71 熱管内の温度測定箇所
80 蒸気発生器内のバッフル
81 冷却器ハウジング
82 冷却器フード
83 蒸気流出短管
84 収集空間
85 分離板
86 液体空間
87 連結管
88 槽引抜管
89 表面排泥管
90 遠心分離機
91 蒸気
92 微細分離器
93 下部レベル測定短管
94 上部レベル測定短管
100、100’ ゾーン
101 分離板
102 連結管
103 塩補償管
104、104’ ガス空間
105 ガス補償管
106 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動および停止時の触媒気相反応に対する多管式反応器の温度変化方法において、多管式反応器が、管束に垂直に配置された反応管と、反応管の上端部もしくは下端部に密接して連結された上部および下部管底と、管束を取り囲む反応器ジャケットとを備える反応器主部を有し、かつ反応管の外側が通常運転で100℃〜450℃の範囲の溶融温度を有し、かつ少なくとも1つの循環系内で反応器主部を通過して循環される熱媒によって洗浄され、
a)熱媒の循環時に熱交換器を通る熱媒温度を変化させるステップと、
b)少なくとも熱媒がまだ循環されずもしくはそれ以上循環されない場合に反応管を通る調温ガスを導通させるステップと
を有する方法であって、
調温ガス(55)の初回導入と共に始まる各期間にわたり調温ガス(55)の温度の時間平均変化速度が反応管(8)からの前記ガスの流出時に30℃/hを超えないように、上方への始動時および下方への停止時に調温ガス(55)の反応管(8)への流入時の前記ガスの温度および/または上方への調温ガス(55)の体積流量が制限されることを特徴とする方法。
【請求項2】
調温ガス(55)の温度の時間平均変化速度が反応管(8)からの前記ガスの流出時に20℃/hを超えないことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
調温ガス(55)の温度の時間平均変化速度が反応管(8)からの前記ガスの流出時に10℃/hを超えないことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
固体熱媒が反応器ジャケット(12)の内部にあるとき、調温ガス(55)が反応管(8)を通り上から下へ導かれることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
反応管(8)の中への調温ガス(55)の流入時の前記ガスの温度と、各時点での流入側管底(10)の温度との間の差が150℃以下、好ましくは100℃以下および特に好ましくは70℃以下であることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
反応管(8)からの調温ガス(55)の流出時の前記ガスの温度が直接測定されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
管束(9)の内部でその長手方向に少なくとも1本の熱管(70)が延伸し、かつ温度が熱管(70)の内部の少なくとも1つの温度測定箇所(71a、71b、71c、71d)で測定されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
さらに反応器主部が、反応器ジャケットの外側に固定され、反応器ジャケットの中へ流入する熱媒の分配もしくは該反応器ジャケットから流出する熱媒の収集に利用される少なくとも1つの上部および下部分配チャネルもしくは収集チャネルを有する方法であって、
始動時に反応器主部Aでの最低温度が少なくとも熱媒(17)の溶融温度を上回り、かつ反応器主部Aの平均温度が少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃、かつ特に好ましくは少なくとも65℃熱媒(17)の溶融温度を上回るときから、熱媒(17)が循環されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
循環ポンプ(22)、熱交換器(4)またはE−加熱器(3)のような多管式反応器(1)に接続される全てのユニットならびに連結管、充填管および排出管、排気管、全ての熱媒(17)を給送し、または熱媒側に接続される管束ならびに溢れ管のような、択一的な加熱方法が無い限り、絶縁された付随加熱装置(64、65、66、67、68)によって加熱されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
付随加熱装置(64、65、66、67、68)の温度が少なくとも160℃、好ましくは少なくとも180℃および非常に好ましくは少なくとも220℃、但し最高250℃になることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
付随加熱装置(64、65、66、67、68)が飽和蒸気で運転されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
反応器主部Aに固定して接続されるポンプハウジング、加熱器ハウジングおよび熱交換器のような周辺装置が、入口と出口との間で多管式反応器(1)が65℃および95℃の間、好ましくは70℃および90℃の間、かつ特に好ましくは75℃および85℃の間にある平均温度を有するとき、直ちに加熱されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
熱媒(17)が、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの二塩または三塩からなる混合物であることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
熱媒(17)が炭酸塩からなる混合物であることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
方法が酸化−、水和−、脱水−、ニトロ化−、アルキル化プロセス等において使用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ケトン、メチルイソブチルケトン、メルカプタン、イソプレン、アントラキノン、o−クレゾール、エチレンヘキサン、フルフロール、アセチレン、酢酸ビニル、塩化イソプロピル、無水ナフタル酸、塩化ビニル、オキソアルコール、ピロトール、スチロール、メタン酸ニトリル、酸化ポリフェニレン、ジメチルフェノール、ピリジンアルデヒド、テルバン、α−オレフィン、ビタミンB6、青酸、アニリン、メタン酸ニトラール、ジフルオロメタン、4−メチル−2−ペンタノンおよびテトラヒドロフランの製造ならびに特にジメチルベンゼン(m、o、p)から対応するモノ−およびジアルデヒドへの酸化、ジメチルベンゼン(m、o、p)から対応するモノ−およびジカルボン酸もしくはそれらの無水物への酸化、トリメチルベンゼンから対応するモノ−、ジ−およびトリアルデヒドへの酸化、トリメチルベンゼンから対応するモノ−、ジ−およびトリカルボン酸もしくはそれらの無水物への酸化、ジュロールから無水ピロメリット酸への酸化、γ−もしくはβ−ピコリンからγ−もしくはβ−ピコリンカルボアルデヒドへの酸化、γ−もしくはβ−ピコリンからイソニコチン酸もしくはニコチン酸への酸化、エチレンから酸化エチレンへの酸化、プロペンからアクロレインへの酸化、アクロレインからアクリル酸への酸化、プロパンからアクロレインへの酸化、プロパンからアクリル酸への酸化、ブタン、ベンゼン、ブチレンまたはブタジエンから無水マレイン酸(MSA)への酸化、ラフィネートからMSAへの酸化、i−ブテンからメタクロレインへの酸化、メタクロレインからメタクリル酸への酸化、メタクロレインからメチルメタクリレートへの酸化、i−ブタンからメタクロレインへの酸化、i−ブタンからメタクリル酸への酸化、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素からベンゾニトリル、フタロニトリルまたは類似物のような芳香族窒化物への加安酸化、ジメチルベンゼン(m、o、p)から対応するモノ−およびジニトリルへの加安酸化、トリメチルベンゼンから対応するモノ−、ジ−もしくはトリニトリルへの加安酸化、プロパンからアクリルニトリルへの加安酸化、プロペンからアクリルニトリルへの加安酸化、β−ピコリンから3−シアノピリジンへの加安酸化、γ−ピコリンから4−シアノピリジンへの加安酸化、メタノールからホルムアルデヒドへの酸化、ナフタリンおよび/またはO−キシレン、必要であれば混合運転で、無水フタル酸への酸化、エタンから酢酸への酸化、エタノールから酢酸への酸化、ゲラニオールからシトラールへの酸化、エテンから酸化エチレンへの酸化、プロペンから酸化プロピレンへの酸化、塩化水素から塩素への酸化、グリコールからグリオキサールへの酸化およびMSAからブタンジオールへの水和のために使用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−30033(P2008−30033A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193358(P2007−193358)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(505121523)マン、デーヴェーエー、ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】