説明

多結晶シリコン原料のリチャージ方法

【課題】坩堝の損傷や破損を防止すると共に育成されるシリコン単結晶インゴットの単結晶化率や品質の低下を抑制しつつ、大きな塊の多結晶シリコンをリチャージすることができる多結晶シリコン原料のリチャージ方法を提供する。
【解決手段】多結晶シリコン塊のリチャージにおいて、最初にスモールサイズ多結晶シリコン塊又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2である緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbが投入され、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbが坩堝20内のシリコン融液40の表面41に積層されて緩衝層50を形成する。次いでこの緩衝層50上に大きな大きさのラージサイズ多結晶シリコン塊S3が投入されるので、緩衝層50が落下するラージサイズ多結晶シリコン塊S3の衝撃を緩衝する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコン原料のリチャージ方法に関し、特に、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)を用いたシリコン単結晶インゴット(以下、インゴットという)の製造方法において、坩堝内へ原料である多結晶シリコンの塊を再度供給するための多結晶シリコン原料のリチャージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造に使用される半導体基板は単結晶のシリコンウェハから製造されており、インゴットの育成にはCZ法が広く用いられている。CZ法においては、坩堝内に多結晶シリコンを充填し、この充填された多結晶シリコンを溶解してシリコン融液とする。次いで、このシリコン融液に種結晶を接触させ、これを引き上げることによりインゴットを育成する。
【0003】
一度使用された坩堝は再利用が困難であるため、インゴットの製造コストを低減するために、インゴットが引き上げられることにより減少したシリコン融液を補うために、坩堝内に再度原料である多結晶シリコンを供給することで坩堝を交換せずに繰り返しインゴットを引き上げるマルチプリング法が従来行われている。
【0004】
例えば、円筒状のリチャージ管を用いて多結晶シリコンをリチャージする方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このリチャージ管は、円筒状のチューブと、このチューブの下方端部に着脱可能な円錐バルブとを備える。このリチャージ管を使用したリチャージ方法においては、円錐バルブによってチューブを塞いだ状態において固形状の多結晶シリコンをチューブ内に充填し、インゴットを取り出した後に、リチャージ管を坩堝上に配置し、円錐バルブを外してチューブの下方端部を開放し、このチューブの下方端部から多結晶シリコンを坩堝内に供給する。
【0005】
この従来のリチャージ方法においては、坩堝内のシリコン融液内にリチャージ管から多結晶シリコンが投下されるため、坩堝内のシリコン融液が飛散する。シリコン融液が坩堝外に飛び出すと、インゴット製造装置へ大きな損傷を与えることになり、インゴットの育成を中止しなければならず、インゴットの育成に甚大な損害を与えることになる。また、シリコン融液内には予め決められた割合の不純物が混入されており、シリコン融液の飛散は、坩堝内のシリコン融液中の不純物濃度を変化させることになり、所望の品質を有していないインゴットが育成され、品質の低下を招く。
【0006】
このため、従来、リチャージに際して坩堝内のシリコン融液の飛散を防止するための方法が開示されている。
【0007】
例えば、多結晶シリコンの投入の前に、ヒータの出力を下げて坩堝内のシリコン融液の表面を固化させ、この後にヒータの出力を上げると共にリチャージ管から原料である固体状の多結晶シリコンを投入する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/068732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のリチャージ方法においては、大きな塊の多結晶シリコンを投入する場合、投入された多結晶シリコンの衝撃を緩衝することができず、固化されたシリコン融液の表面を投入された多結晶シリコンが突き破り、坩堝内のシリコン融液が飛散することがあり、インゴットの製造を中止することがあった。このため、従来のリチャージ方法においては、大きな塊の多結晶シリコンを投入することができなかった。大きな塊の多結晶シリコン原料は安価に製造でき、製造コストを低減することができるという利点がある。また、大きな塊の多結晶シリコン原料を使用した場合、同じ重量において、小さな塊の多結晶シリコンを使用した場合に比べて、多結晶シリコン原料の表面積の総和が小さくなり、多結晶シリコン表面のSiO2や金属等の不純物、及び雰囲気ガスの混入等を低減させることができる。このため大きな塊の多結晶シリコン原料を使用した場合、育成されるインゴットにおいて、単結晶化率の低下、不純物汚染やピンホールの形成等の品質の低下を抑制することができる。
【0010】
また、従来のリチャージ方法においては、坩堝内のシリコン融液の表面を固化させるので、シリコン融液の表面において容積が膨張し、坩堝の内壁を押圧する力が発生し、坩堝を破損させる危険があった。
【0011】
本発明の目的は、坩堝の損傷や破損を防止すると共に育成されるインゴットの単結晶化率や品質の低下を抑制しつつ、大きな塊の多結晶シリコンをリチャージすることができる多結晶シリコン原料のリチャージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法は、坩堝内に多結晶シリコン原料を充填する充填工程と、前記坩堝内において前記充填された多結晶シリコンを溶解してシリコン融液にする溶融工程と、前記シリコン融液に種結晶を接触させ、該接触させられた種結晶を引き上げることによりインゴットを育成する引上工程とを有するインゴットの製造方法において、前記溶融工程又は前記引上工程の後に多結晶シリコン原料を前記坩堝内に供給する多結晶シリコン原料のリチャージ方法であって、前記坩堝内のシリコン融液の表面に緩衝領域を形成し、該形成された緩衝領域上に前記多結晶シリコン原料を供給し、前記緩衝領域は、大きさが小さな多結晶シリコンの塊を前記坩堝内のシリコン融液の表面に投入することにより形成され、前記緩衝領域上に供給される多結晶シリコン原料は、前記小さな多結晶シリコンの塊よりも大きさが大きな多結晶シリコンの塊から成ることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法において、前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが5mm以上50mm以下である。
【0014】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法において、前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが5mm以上であり20mmより小さい。
【0015】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法において、前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが20mm以上50mm以下である。
【0016】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法においては、貫通する通路を有する本体と、該本体の一端を開閉可能にする蓋体とを備えるリチャージ装置を用いて前記多結晶シリコン原料を前記坩堝内のシリコン融液に供給する。
【0017】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法において、前記大きな多結晶シリコンの塊はその大きさが前記本体の通路内を通過可能な大きさであって50mmより大きい。
【0018】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法においては、前記リチャージ装置の本体の一端を前記蓋体により閉鎖し、前記本体内に前記小さな多結晶シリコンの塊を充填し、該充填された小さな多結晶シリコンの塊の上に前記大きな多結晶シリコンの塊を充填し、前記蓋体を開放して前記多結晶シリコン原料を前記坩堝内のシリコン融液に供給する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法によれば、大きな塊の多結晶シリコン原料をリチャージしても、坩堝内のシリコン融液の表面に形成された緩衝領域が衝撃緩衝部材として機能して、坩堝内のシリコン融液が飛散することを防止し、また、坩堝の損傷や破損を防止することができる。さらに、大きな塊の多結晶シリコンをシリコン融液の飛散なしにリチャージすることができることにより、育成されるインゴットの単結晶化率や品質の低下をより防止することができ、さらに、大きな塊の多結晶シリコン原料は安価に製造できるため、インゴットの製造コストを低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を実施するためのリチャージ装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を示す図である。
【図3】リチャージ装置の本体の配置位置の一例を示す図である。
【図4】原料としての多結晶シリコン塊の種類を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を実施するためのリチャージ装置を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、リチャージ装置10は、図示しないインゴット製造装置の内部に配置された坩堝20の上方に配設されている。このインゴット製造装置においてはCZ法が実施される。CZ法においては、坩堝内に原材料である多結晶シリコンが充填され、不活性ガス、例えばArガスの雰囲気において、坩堝内に充填された多結晶シリコンが溶解されてシリコン融液とされ、このシリコン融液に種結晶が接触され、接触させられた種結晶を引き上げることによりインゴットが育成される。図1に示すように、坩堝20は外周においてヒータ30に囲まれており、ヒータ30は、坩堝20内を加熱し、坩堝内に充填された多結晶シリコンの塊(以下、多結晶シリコン塊ともいう)を溶融するために用いられる。坩堝20は例えば石英から製造された石英坩堝であり、ヒータ30は例えばグラファイトヒータである。
【0024】
リチャージ装置10は、両方の端部1a,1bが外部に開口する貫通する通路を有した中空円筒状の本体1と、この本体1の一方の端部1aを開閉可能にする蓋体2とを備える。本体1は、例えば石英から製造されている。蓋体2は、円錐面2aを備える円錐状の形状を有しており、円錐面2aが本体1の端部1aの周辺に密接可能になっている。蓋体2にはワイヤー3が取り付けられており、ワイヤー3は本体1の内部を端部1aから端部1bに向かって貫通しており、リチャージ装置10の図示しない開閉装置に接続されている。尚、本体1の形状は円筒状に限るものではなく、柱状等の他の形状であってもよい。また、蓋体2の形状も同様に角錐形等の他の形状であってもよい。
【0025】
リチャージ装置10において、本体1の端部1aの閉鎖及び開放は、図示しない開閉装置によってワイヤー3を繰り出したり、繰り寄せたりすることによって、蓋体2を上下動させることにより行われる。
【0026】
以下、上述のリチャージ装置10を用いた本発明の第1の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を説明する。図2(a)〜(f)は、本発明の第1の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を示す図である。
【0027】
リチャージは、インゴット製造の際に、多結晶シリコン塊の溶融工程後、又はインゴット引上工程後に行われる。先ず、リチャージ装置10の本体1の端部1aを蓋体2によって閉鎖する。次いで、本体1内に多結晶シリコン原料を充填する。この多結晶シリコン原料の充填の際、リチャージ装置10の姿勢は、例えば、本体1の軸方向が鉛直方向に向くような姿勢である。また、リチャージ装置10の姿勢は、図3に示すように、例えば支持体4を用いて、本体1の軸方向が鉛直方向に対して所定の角度、例えば45°をなすように本体1を傾けた姿勢であってもよい。
【0028】
ここで、多結晶シリコン原料である多結晶シリコン塊は、その大きさに基づいて、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2、及びラージサイズ多結晶シリコン塊S3の3つの種類に分類されている。図4に示すように、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1は、塊の大きさが小さな多結晶シリコン塊であり、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2は、塊の大きさが中くらいの多結晶シリコン塊であり、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3は、塊の大きさが大きな多結晶シリコン塊である。塊の大きさは、塊における最大幅hによって規定されており、最大幅hが20mmよりも小さい多結晶シリコン塊がスモールサイズ多結晶シリコン塊S1であり、最大幅hが20mm以上50mm以下の多結晶シリコン塊がミドルサイズ多結晶シリコン塊S2であり、最大幅hが50mmよりも大きい多結晶シリコン塊S3がラージサイズ多結晶シリコン塊である。
【0029】
図2(b)に示すように、本体1内への多結晶シリコン原料の充填は、先ず、後述する緩衝層を形成するための緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbから行われる。緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとしては、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が用いられる。つまり、多結晶シリコン原料が充填されていない本体1内へ所定量のスモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2を充填する。緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbの充填量は、坩堝20の直径等に基づいており、坩堝20内のシリコン融液40の表面41全体が緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbによって覆われるような量である。本実施の形態においては、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとしてミドルサイズ多結晶シリコン塊S2を用いる。
【0030】
次いで、図2(c)に示すように、本体1内へミドルサイズ多結晶シリコン塊S2より大きな多結晶シリコン塊が、つまりラージサイズ多結晶シリコン塊S3が充填される。これにより、本体1内において、下方の端部1a側からミドルサイズ多結晶シリコン塊S2、次いでミドルサイズ多結晶シリコン塊S2上にミドルサイズ多結晶シリコン塊S2より大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3が積載される。
【0031】
本体1内への多結晶シリコン塊の充填に際しては、上述のように、図3に示すように、本体1を鉛直方向に対して所定の角度傾斜させるようにしてもよい。これにより、多結晶シリコン塊の本体1内への充填の際に、多結晶シリコン塊が本体1へ与える衝撃を緩和することができる。特に、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3の充填に際しては、先行してミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が本体1の底部に積載されており、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が緩衝材としてラージサイズ多結晶シリコン塊S3の落下による衝撃を吸収する。
【0032】
本体1内への多結晶シリコン塊Sの充填が終了したら、リチャージ装置10を坩堝20の上方の所定の位置に配置する。リチャージ装置10の配置位置は、図2(a)に示すように、坩堝20の上方において、本体1の軸方向が鉛直方向と一致するような位置である。
【0033】
次いで、図2(d)に示すように、図示しない開閉装置により、ワイヤー3を繰り出して伸ばすことにより、蓋体2を下方に移動させて本体1の端部1aを開放する。これにより、先ず、本体1において下方に積載されていたミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が坩堝20内のシリコン融液40上に供給される。ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2は、大きさが小さいため、シリコン融液40の表面41に浮遊する。このため、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2は、シリコン融液40の表面41に積層され、表面41を覆う。次いで、図2(e)に示すように、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2より大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3が坩堝20の多結晶シリコン融液40上に供給される。この際、本体1の端部1aの開放幅を拡げるために蓋体2を更に下方に移動させてもよい。この時、シリコン融液40の表面41は、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2に覆われており、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3は、シリコン融液40の表面41上に浮遊するミドルサイズ多結晶シリコン塊S2の層上に落下するため、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3の落下による衝撃はこの浮遊するミドルサイズ多結晶シリコン塊S2層によって吸収される。つまり、最初に坩堝20内に供給されたミドルサイズ多結晶シリコン塊S2は、多結晶シリコン融液40の表面41に積層されて緩衝領域である緩衝層50を形成する。そして、図2(f)に示すように、リチャージ装置10の本体1内に充填された多結晶シリコン塊の全てが坩堝20内に供給され、リチャージが終了する。
【0034】
リチャージされた多結晶シリコン塊は、ヒータ30により加熱されて溶融し、シリコン融液となる。これにより、所望の量のシリコン融液が坩堝20内に供給されることになる。
【0035】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を説明する。
【0036】
本発明の第2の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法は、上述の第1の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法に対して、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとして、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2ではなく、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1を用いる点においてのみ異なる。つまり、本発明の第2の実施の形態に係るリチャージ方法においては、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1が坩堝20のシリコン融液40の表面41において緩衝層50を形成し、この緩衝層50上にラージサイズ多結晶シリコン塊S3が供給される。本発明の第2の実施の形態に係るリチャージ方法は、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとしてスモールサイズ多結晶シリコン塊S1を用いる点においてのみ第1の実施の形態に係るリチャージ方法と異なり、その他の処理は同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、上述の本発明の第1及び第2の実施の形態に係る多結晶シリコン原料の、本体1から坩堝20への供給方法について説明する。ワイヤー3の長さを調整することにより、初めにスモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2である緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbが坩堝20内に供給され、全ての緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbが坩堝20内に供給されてシリコン融液40の表面41に緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbによる緩衝層50が形成された後に、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3が緩衝層50上に投入されるようにすることが好ましい。例えば、本体1から坩堝20への多結晶シリコン塊の供給において、先ず、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbが通過可能であり、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3が通過できない幅だけ本体1の端部1aを開放するように蓋体2を下降させ、充填された緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbの全てが坩堝20内に供給された後に、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3が通過できるように蓋体2を更に下方に移動させる。
【0038】
リチャージ装置10の本体1内に充填される多結晶シリコン塊の量は、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sb及びラージサイズ多結晶シリコン塊S3の合計がリチャージしたい多結晶シリコンの量に対応するようにすることが好ましい。
【0039】
上述のように、本発明の実施の形態に係るリチャージ方法によれば、多結晶シリコン塊のリチャージにおいて、最初に小さなスモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が投入され、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2が坩堝20内のシリコン融液40の表面41に積層されて緩衝層50を形成する。次いでこの緩衝層50上に大きな大きさのラージサイズ多結晶シリコン塊S3が投入されるので、緩衝層50が落下するラージサイズ多結晶シリコン塊S3の衝撃を吸収する。このため、落下する大きな多結晶シリコン塊の衝撃により坩堝20内のシリコン融液40が飛散することを防止することできる。
【0040】
また、緩衝層50が形成されることにより、従来リチャージすることができなかったより大きな大きさのラージサイズ多結晶シリコン塊S3をシリコン融液40の飛散なしにリチャージすることができる。
【0041】
また、緩衝層50はシリコン融液40上を浮遊するスモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2から形成されており、緩衝層50を形成することにより、坩堝20に力が掛かることがなく、坩堝20を損傷や破損させることはない。
【0042】
このように、本発明の実施の形態に係るリチャージ方法によれば、大きな多結晶シリコン塊をリチャージする場合、大きな多結晶シリコン塊は原料が安価に製造できるという利点があるため、インゴットの製造コストを低減することができ、多結晶シリコン原料の表面積の総和が小さくなり、多結晶シリコン表面のSiO2や金属等の不純物、及び雰囲気ガスの混入等を低減させることができる。このため、育成されるインゴットにおいて単結晶化率の低下、不純物汚染、ピンホールの形成等の品質の悪化を抑制することができる。このため、リチャージされる多結晶シリコンは、従来のリチャージ方法においてはシリコン融液が飛散されることなく坩堝内にリチャージすることができなかった、大きさの大きいラージサイズ多結晶シリコン塊が好ましい。
【0043】
上述の緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとしてのスモールサイズ多結晶シリコン塊S1の大きさは、インゴットにおけるピンホールの形成等の不具合の発生を防止するために、5mm以上とすることが好ましい。
【0044】
また、坩堝20において形成された緩衝層50上に投入されるラージサイズ多結晶シリコン塊S3の最大の大きさは、リチャージ装置10の本体1の通路内を通過可能な大きさである。例えば、本体1の通路の直径が200mmである場合は、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3の最大の大きさは200mmである。但し、本体1への多結晶シリコン塊の投入の際は、衝撃による本体1の破損防止を考慮することが好ましく、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3の大きさは200mm以下であることが好ましい。但し、本体1の破損防止を考慮したラージサイズ多結晶シリコン塊S3の大きさの最大値は、本体1の材質や寸法等によるものであり、これに限るものではない。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0046】
上述の本発明の第1の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法を用いて、多結晶シリコン塊のリチャージを行った(実施例1〜4)。
【0047】
実施例1においては、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3として最大幅hが60mmの多結晶シリコン塊を使用し、実施例2においてはラージサイズ多結晶シリコン塊S3として最大幅hが100mmの多結晶シリコン塊を使用し、実施例3においては、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3として最大幅hが150mmの多結晶シリコン塊を使用し、実施例4においては、ラージサイズ多結晶シリコン塊S3として最大幅hが200mmの多結晶シリコン塊を使用した。また、実施例1〜4のいずれにおいても、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbであるミドルサイズ多結晶シリコン塊S2として、最大幅hが50mmの多結晶シリコン塊を使用した。また、リチャージ装置10は、本体1の通路の直径が200mmより若干大きいものとした。
【0048】
また、比較例として、従来の多結晶シリコン原料のリチャージ方法を用いて、多結晶シリコン塊のリチャージを行った(比較例1〜4)。従来のリチャージ方法は、本発明の実施の形態に係るリチャージ方法とは異なり、緩衝層を形成しないで多結晶シリコン塊をリチャージするものである。つまり、同一の大きさの多結晶シリコン塊をリチャージ装置10から坩堝20内に夫々投入した。
【0049】
比較例1においては、最大幅hが60mmのラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージし、比較例2においては、最大幅hが100mmのラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージし、比較例3においては、最大幅hが150mmのラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージし、比較例4においては、最大幅hが200mmのラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージした。
【0050】
また、参考例として、上記従来の多結晶シリコン原料のリチャージ方法を用いて、最大幅hが30mmのミドルサイズ多結晶シリコン塊S2をリチャージし(参考例1)、また、最大幅hが50mmのミドルサイズ多結晶シリコン塊S2をリチャージした(参考例2)。
【0051】
実施例1〜4、比較例1〜4、及び参考例1,2において、多結晶シリコン塊の投入の際のシリコン融液の飛散状況を観察した。その結果を以下の表に示す。
【0052】
【表1】

表1において、○記号は坩堝外への融液の飛散がなかったことを表し、△記号は坩堝外への融液の飛散はあったが坩堝の損傷や破損はなかったことを表し、×記号は坩堝外への融液の飛散があり坩堝の損傷や破損があったことを表している。
【0053】
表1から分かるように、本発明の実施の形態に係るリチャージ方法によれば、シリコン融液の飛散なしに大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージすることができる。しかしながら、従来のリチャージ方法においては、大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージする場合、シリコン融液が飛散してしまう。また、参考例から分かるように、ミドルサイズ多結晶シリコン塊S2のリチャージにおいては、従来のリチャージ方法であっても、シリコン融液が飛散することはない。
【0054】
上述のように、本発明に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法によれば、大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3をリチャージする場合であっても、シリコン融液が飛散することがない。このため、従来リチャージすることができなかった大きなラージサイズ多結晶シリコン塊S3をシリコン融液の飛散なしにリチャージすることができる。また、リチャージによる坩堝の損傷や破損を防止することができ、加えて、育成されるインゴットの単結晶化率や品質の低下をより防止することができる。さらに、大きな塊の多結晶シリコン原料は安価に製造でき、インゴットの製造コストを低減することができるという利点がある。
【0055】
尚、本発明の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法においては、リチャージ装置10を用いて多結晶シリコン塊を坩堝20に投入するものとしたが、多結晶シリコン塊の投入の方法は、これに限られるものではない。多結晶シリコン塊の投入方法は、上述のように緩衝層が形成されるようなものであればよく、例えば異なる形態のリチャージ装置を用いてもよく、また、リチャージ装置を用いずに多結晶シリコン塊を投入してもよい。
【0056】
また、本発明の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法においては、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとして、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1又はミドルサイズ多結晶シリコン塊S2を使用するものとしたが、緩衝層形成多結晶シリコン塊Sbとしては、スモールサイズ多結晶シリコン塊S1とミドルサイズ多結晶シリコン塊S2とを混合した多結晶シリコン塊を使用してもよい。
【0057】
さらに、本発明の実施の形態に係る多結晶シリコン原料のリチャージ方法はCZ法に適用可能であるとしたが、CZ法は上述のものに限らず、例えば、磁界を用いたMCZ法やシリコン以外の材料への適用も可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 本体
1a,1b 端部
2 蓋体
2a 円錐面
3 ワイヤー
4 支持体
10 リチャージ装置
20 坩堝
30 ヒータ
40 シリコン融液
41 表面
50 緩衝層
S1 スモールサイズ多結晶シリコン塊
S2 ミドルサイズ多結晶シリコン塊
S3 ラージサイズ多結晶シリコン塊
Sb 緩衝層形成多結晶シリコン塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝内に多結晶シリコン原料を充填する充填工程と、前記坩堝内において前記充填された多結晶シリコンを溶解してシリコン融液にする溶融工程と、前記シリコン融液に種結晶を接触させ、該接触させられた種結晶を引き上げることによりシリコン単結晶インゴットを育成する引上工程とを有するシリコン単結晶インゴットの製造方法において、前記溶融工程又は前記引上工程の後に多結晶シリコン原料を前記坩堝内に供給する多結晶シリコン原料のリチャージ方法であって、
前記坩堝内のシリコン融液の表面に緩衝領域を形成し、該形成された緩衝領域上に前記多結晶シリコン原料を供給し、
前記緩衝領域は、大きさが小さな多結晶シリコンの塊を前記坩堝内のシリコン融液の表面に投入することにより形成され、前記緩衝領域上に供給される多結晶シリコン原料は、前記小さな多結晶シリコンの塊よりも大きさが大きな多結晶シリコンの塊から成ることを特徴とする多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項2】
前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが5mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項3】
前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが5mm以上であり20mmより小さいことを特徴とする請求項2記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項4】
前記小さな多結晶シリコンの塊はその大きさが20mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項2記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項5】
貫通する通路を有する本体と、該本体の一端を開閉可能にする蓋体とを備えるリチャージ装置を用いて前記多結晶シリコン原料を前記坩堝内のシリコン融液に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項6】
前記大きな多結晶シリコンの塊はその大きさが前記本体の通路内を通過可能な大きさであって50mmより大きいことを特徴とする請求項5記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。
【請求項7】
前記リチャージ装置の本体の一端を前記蓋体により閉鎖し、前記本体内に前記小さな多結晶シリコンの塊を充填し、該充填された小さな多結晶シリコンの塊の上に前記大きな多結晶シリコンの塊を充填し、前記蓋体を開放して前記多結晶シリコン原料を前記坩堝内のシリコン融液に供給することを特徴とする請求項5又は6記載の多結晶シリコン原料のリチャージ方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140291(P2012−140291A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294170(P2010−294170)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000111096)シルトロニック・ジャパン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】