説明

多者通話機能を有する電話装置

【課題】通信中の相手との通話中に、簡単な操作で、近傍に存在する他の電話機を当該通信中の通話に参加させることができる電話装置を提供する。
【解決手段】ネットワーク3を介して相手端末4との通信中に特定操作が為された場合に、無線タグリーダ23は、近傍に存在する電話機5に装着された無線タグ51からタグ情報を読み取り、ローカル通信部20は、電話機5とローカル通信を開始し、電話機5からと送話回路18からの音声データをミキシングして相手端末4へ送信し、相手端末4からの受話音声データをローカル通信により電話機5へ転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信中の相手との通話中に、近傍に存在する他の電話機を当該通話に参加させることができる電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタン電話システムや構内電話システム(PBX)等の内線電話システム、又は電話会議システムにおいて、2台以上の電話機を使用して電話会議を行う技術がある(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、事前に電話会議を行うための設定やダイヤルを押下する等、設定や操作が煩雑で面倒であった。また、電話会議に係る専用の装置が必要になるため、設備コストも無視できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−44263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、通信中の相手との通話中に、簡単な操作で、近傍に存在する他の電話機を当該通信中の通話に参加させることができる電話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ネットワークを介して通信相手と音声信号を授受する電話装置において、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードから他電話装置を特定するタグ情報を読み取るタグ情報読取手段と、他電話装置と前記ネットワークを介さないで通信するローカル通信手段と、ネットワークを介して通信相手へ送信する音声信号を制御する送信制御手段を有し、ネットワークを介した通信中に予め定められた特定操作が為された場合に、前記タグ情報読取手段は、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードからタグ情報を読み取り、前記ローカル通信手段は、前記タグ情報読取手段が読み取ったタグ情報に対応する他電話装置とローカル通信を開始し、前記送信制御手段は、前記ローカル通信により受信する前記他電話装置からの音声信号と自電話装置からの音声信号をミキシングしてまたは切り替えて当該通信中の通信相手へ送信することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、ネットワークを介して通信相手と音声信号を授受する電話装置において、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードから他電話装置を特定するタグ情報を読み取るタグ情報読取手段と、他電話装置と前記ネットワークを介さないで通信するローカル通信手段と、ネットワークを介して通信相手から受信する音声信号を転送制御する転送制御手段を有し、ネットワークを介した通信中に予め定められた特定操作が為された場合に、前記タグ情報読取手段は、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードからタグ情報を読み取り、前記ローカル通信手段は、前記タグ情報読取手段が読み取ったタグ情報に対応する他電話装置とローカル通信を開始し、前記転送制御手段は、前記通信相手から受信する音声信号を前記ローカル通信により前記他電話装置へ転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通話中の通話に参加させたい近傍の電話機の無線タグ又はバーコードからタグ情報を読み込むので、ダイヤル操作を含む複雑なキー操作が不要となる利点がある。また、電話会議に係る専用の設備を使わないので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る全体構成図
【図2】本発明による電話装置1の動作フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る多者通話機能を有する電話装置(以下本装置)を含む全体構成図であって、1は本装置、2は電話回線、3は電話ネットワーク、4は通話中の相手端末、5は本装置の近傍に存在する携帯電話機、51は携帯電話機5に装着された無線タグである。ここで、携帯電話機5は例示であって、通常の固定電話機であってもよい。また無線タグ51は携帯電話機5の近傍に存在していればよく、携帯電話機5に装着されていなくてもよい。
【0011】
携帯電話機5は、携帯電話ネットワークや構内無線ネットワーク(図示せず)を介して無線通信する無線電話機であって、ネットワークを介した通信機能に加え、ネットワークを介さないで直接的に通信するローカル通信機能を具備する。例えば、携帯電話機における微弱無線や赤外線による近距離通信機能や、無線LAN端末におけるアドホックモードや、PHS端末におけるトランシーバモード等がこのローカル通信機能に相当する。
【0012】
本装置1の内部ブロックにおいて、11は電話回線2を介して通信するための回線対応部、12は回線対応部11とローカル通信部20に係る通信制御部、13は端末全体を制御する端末制御部、14は受信した音声データを再生する受話回路、15はハンドセット(図示せず)または本体に実装されたスピーカ、16はLCDやLED等から成る表示部、17はハンドセット(図示せず)または本体に実装されたマイク、18はマイク17から入力した音声を音声データに変換して送出する送話回路、19は複数の音声データをミキシングするミキシング回路、20はネットワークを介さないローカル通信を実行するローカル通信部、21はテンキーやファンクションキーやタッチパネル等(図示せず)から成るキー操作部、22はキー操作部21から入力された特定のキー操作を検出する特定操作検出部、23は近傍に存在する無線タグに記憶されているタグ情報を読み取る無線タグリーダである。
【0013】
無線タグ51にはローカル通信を実行するのに必要な情報が記憶されている。例えば、携帯電話機5が無線LAN端末であって、ローカル通信機能としてアドホックモードを利用する場合、携帯電話機5のMACアドレス(Media Access Control address)がタグ情報に含まれて無線タグ51に記憶されている。
【0014】
なお、本実施例の無線タグリーダ23及び無線タグ51はバーコードリーダ及びバーコードであってもよい。また、電話回線2は、通常のアナログ電話回線やISDN回線だけでなく、IP(Internet Protocol)回線であってもよい。
【0015】
図2は本装置1の動作フローチャートである。以下、図1と図2を併用して、本発明における、通話中の相手端末4と本装置1との間の通信中に、他の電話装置として携帯電話機5を参加させる処理について説明する。
【0016】
本フローは通話中の状態からスタートする(S200)。本装置1の操作者が通話中にキー操作部21を特定操作すると(例えば“#○○”を押下)、特定操作検出部22がその特定操作を検出し(S201,YES)、端末制御部13内のタイマ(図示せず)を起動する(S202)と共に、無線タグリーダ23をONにする(S203)。
【0017】
無線タグリーダ23が近傍に存在する無線タグ51からタグ情報を読込むと(S210,YES)、端末制御部13は無線タグリーダ23をOFFにし(S211)、多者通話モードに係る情報を表示部16に表示する(S212)。例えば、読込んだタグ情報から電話機を特定し、「○○氏の電話機を本通話に参加させますか?」のようなメッセージを表示する。そして、操作者から多者通話モード開始要求操作(例えば“#”押下)があると(S220,YES)、読込んだタグ情報を使用してローカル通信を起動する(S221)。
【0018】
なお、無線タグリーダ23の読み取り範囲が狭い場合(例えば数センチ)、無線タグ51を本装置1の無線タグリーダ23が装着された部位に近接またはタッチする必要があり、この近接またはタッチの動作自体で多者通話モードへの移行意思OKと判断しS220の判断を省略してもよい。または、無線タグリーダ23の読み取り範囲が広く(例えば数m)、複数の無線タグからのタグ情報を読み込んでしまった場合に、S220で特定のデータを指定するようにしてもよい。
【0019】
タグ情報を読取れない場合(S210,NO)、一定期間(例えば1分程度)が経過するタイムアウト前(S230,NO)であればS210に戻り、タイムアウト後(S230,YES)であれば、タグリーダをOFFして(S231)、S250に進む。
【0020】
S221で、端末制御部13がローカル通信の起動を通信制御部12に指示すると、通信制御部12は回線対応部11を介した現通信を維持したまま、ローカル通信部20を起動する。起動されたローカル通信部20は無線タグリーダ23が読み取ったタグ情報に含まれるローカル通信を実行するのに必要なデータ(例えば、無線LANアドホックモードに必要なMACアドレス)を通信制御部12または端末制御部13から取得し、ローカル通信を開始する。そして、本装置1と携帯電話機5とのローカル通信が開始され、ローカル通信が成立すると(S240,YES)、多者通話モードに移行する(S241)。ローカル通信が不成立であれば(S240,NO)、ローカル通信を停止して(S242)、S250に進む。
【0021】
S241で、多者通話モードに移行すると、ローカル通信部20は携帯電話機5からの音声データをミキシング回路19に送り、ミキシング回路19は本装置の送話回路18からの音声データと携帯電話機5からの音声データをミキシングして、通信制御部12と回線対応部11を介して、送話音声データを通話中の相手端末4に送信する。
【0022】
逆に、通話中の相手端末4からの受話音声データは、通信制御部12により、本装置1のスピーカ15で再生するために受話回路14に転送されると共に、ローカル通信部20にもコピー転送される。そして、ローカル通信部20は通話中の相手端末4からの受話音声データをローカル通信により携帯電話機5へ転送する。この結果、通話中の相手端末4から見て、本装置1と携帯電話機5はブランチ接続された状態となり、3者通話が可能となる。
【0023】
なお、詳細な説明は省略するが、S200の通話中の状態が、3者通話の状態で図2のフローを繰り返せば、3者以上の通話モードを実現できる。また、多者通話モードにおいて、本装置1とブランチの関係となる携帯電話機5は相手端末4からの音声データを受話するだけのモードとしてもよい(モニタモード)。逆に、携帯電話機5からの送話音声データのみをミキシングして相手端末4に送信するだけのモードとしてもよい(被モニタモード)。さらに、ミキシング回路19を送話切り替えスイッチに置き換えて、特定操作(例えば“*”押下)毎に送話音声データを切り替えるようにしてもよい(図示せず)。
【0024】
通話中の相手端末4との通話が終了すると(S250,YES)、電話回線2との回線接続および携帯電話機5とのローカル通信接続を切断して(S251)、本フローは終了する(S260)。
【0025】
ところで、図1において、本装置1が固定電話機で、本装置1とローカル接続される他電話機が携帯電話機であった場合を例に説明したが、本装置1および本装置1とローカル接続される他電話機は、机上に設置された固定電話機または携帯電話機のいずれであってもよい。本装置1とローカル接続される他電話機のいずれかが携帯電話機であった場合は、携帯電話機側を他方の電話機に近づければ、無線タグリーダ23は無線タグ51からタグ情報を読み取れる。
【0026】
本装置1が机上に設置された固定電話機であった場合は、無線タグリーダ23を伸縮可能なカールコードで接続されたハンドセット(図示せず)に装着すれば、近傍の電話機の傍へハンドセットを近づけて無線タグ51のタグ情報を読み取ることが可能となる。
【0027】
また、本装置1とローカル接続される他電話機が机上に設置された固定電話機であった場合は、伸縮可能なカールコードで接続されたハンドセット(図示せず)に無線タグ51を装着すれば、本装置1の所定の部位に実装された無線タグリーダ23に他電話機のハンドセットを近づければ、無線タグ51のタグ情報を読み取ることが可能となる。
【0028】
以上説明した通り、本発明によれば、通話中に特定操作して他電話機に装着された無線タグと無線タグリーダを近接させるまたはタッチするという簡単な操作で、他電話機と本装置1をブランチ接続した3者通話または3者以上の多者通話を実行できるので、操作性に優れていると共に、ダイヤル操作等の押し間違いもない。
【0029】
ところで、本発明の実施形態として図1に示すような電話ネットワーク3に繋がる電話装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回線対応部11と接続される回線は、構内交換装置(PBX)やボタン電話主装置の内線であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・・本発明に係る多者通話機能を有する電話装置
11・・・回線対応部
12・・・通信制御部
13・・・端末制御部
14・・・受話回路
15・・・スピーカ
16・・・表示部
17・・・マイク
18・・・送話回路
19・・・ミキシング回路
20・・・ローカル通信部
21・・・キー操作部
22・・・特定操作検出部
23・・・無線タグリーダ
2・・・電話回線
3・・・電話ネットワーク
4・・・通話中の相手端末
5・・・本装置の近傍に存在する携帯電話機
51・・・携帯電話機5に装着された無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して通信相手と音声信号を授受する電話装置において、
自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードから他電話装置を特定するタグ情報を読み取るタグ情報読取手段と、他電話装置と前記ネットワークを介さないで通信するローカル通信手段と、ネットワークを介して通信相手へ送信する音声信号を制御する送信制御手段を有し、
ネットワークを介した通信中に予め定められた特定操作が為された場合に、前記タグ情報読取手段は、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードからタグ情報を読み取り、前記ローカル通信手段は、前記タグ情報読取手段が読み取ったタグ情報に対応する他電話装置とローカル通信を開始し、前記送信制御手段は、前記ローカル通信により受信する前記他電話装置からの音声信号と自電話装置からの音声信号をミキシングしてまたは切り替えて当該通信中の通信相手へ送信することを特徴とする多者通話機能を有する電話装置。
【請求項2】
ネットワークを介して通信相手と音声信号を授受する電話装置において、
自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードから他電話装置を特定するタグ情報を読み取るタグ情報読取手段と、他電話装置と前記ネットワークを介さないで通信するローカル通信手段と、ネットワークを介して通信相手から受信する音声信号を転送制御する転送制御手段を有し、
ネットワークを介した通信中に予め定められた特定操作が為された場合に、前記タグ情報読取手段は、自電話装置の近傍に存在する無線タグ又はバーコードからタグ情報を読み取り、前記ローカル通信手段は、前記タグ情報読取手段が読み取ったタグ情報に対応する他電話装置とローカル通信を開始し、前記転送制御手段は、前記通信相手から受信する音声信号を前記ローカル通信により前記他電話装置へ転送することを特徴とする多者通話機能を有する電話装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−200028(P2010−200028A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43058(P2009−43058)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】