多軸削孔機、及び多軸削孔機における孔曲がり修正削孔方法
【課題】孔曲がり修正効果が顕著にあらわれるものとする。
【解決手段】前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸61及び第2掘削軸62それぞれは上方の基部軸61A、63Aと下方の本体軸61B、63Bとを有する多軸削孔機であり、各掘削軸の下部には平行に保つように連結する連結体20が設けられ、第1掘削軸61及び第2掘削軸63のそれぞれは、基部軸61A、63Aに対して本体軸61B、63Bが移動手段12A,12B、12C、12Dにより軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、この接続部と前記連結体20との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部30、30、30を有し、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させたとき、各連設部30より下方の部分が連結体20と一体的に第2掘削軸63側に曲がるように構成した。
【解決手段】前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸61及び第2掘削軸62それぞれは上方の基部軸61A、63Aと下方の本体軸61B、63Bとを有する多軸削孔機であり、各掘削軸の下部には平行に保つように連結する連結体20が設けられ、第1掘削軸61及び第2掘削軸63のそれぞれは、基部軸61A、63Aに対して本体軸61B、63Bが移動手段12A,12B、12C、12Dにより軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、この接続部と前記連結体20との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部30、30、30を有し、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させたとき、各連設部30より下方の部分が連結体20と一体的に第2掘削軸63側に曲がるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸削孔機及び多軸削孔機を使用し孔曲がりを修正しながら削孔する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、地中柱列式連続壁の造成などに多軸削孔機が使用されている。単軸削孔機のほか、多軸削孔機においても、地盤に性状などの要因によって、削孔時の孔曲がりが生じる。孔曲がりが生じると、削孔精度の低下によって、たとえば地中柱列式連続壁の造成精度(たとえばラップ施工を行う場合のラップ精度)の低下につながる。したがって、孔曲がりが生じることを検出し、これを修正する機構が必要になる。
孔曲がりの検出にはジャイロなどの孔曲がり検出器を搭載することが知られている。
他方で、孔曲がりの修正には、従来から種々の方法が提案されてきた。本発明と削孔軸を軸方向に移動させる点で関連するものとして特許文献1のものがある。
これは、掘削途中で複数本の掘削軸の先端部が複数本の掘削軸を並設した並設方向にずれた際に、ずれ方向と反対側の側端部に位置する掘削軸を他の掘削軸に対して相対的に下降または上昇させて掘削することで複数本の掘削軸をずれ方向とは逆方向に戻すものである。
しかし、この方法では、1本の掘削軸を相対的に移動させるものであるために、大きなまたは速やかな孔曲がり修正効果(掘削長当たりの修正量)を期待できないことが当然に予想される。
他の方法に関する提案も多いが、装置的に大掛かりまたは複雑なものとなり、実用性に疑問のあるケースもある。
【特許文献1】特許第3389558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、孔曲がり修正効果が顕著にあらわれるものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有し、
前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させたとき、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲がるように構成したことを特徴とする多軸削孔機。
【0005】
(作用効果)
両側の掘削軸においては、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構による回転駆動力が、基部軸を介して本体軸に与えられ、掘削が行われる。中間軸は外管と内管とを有し、前記回転駆動機構による回転駆動力が内管に直接的に与えられる。このように各掘削軸は上部駆動装置に設けられた回転駆動機構による回転駆動力が与えられるもの、いわゆるトップドライブ方式によるものであるので、たとえば多軸削孔機下部において駆動力を与えるものと比較して掘削力が強いものとなる。
第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸は連結体により実質的に平行に保つように保持されているので、掘削方向が揃ったものとなる。
しかるに地盤の性状の変化などの要因により掘削方向が正規の方向(設計の掘削方向)からずれて孔曲がりが生じたまたは生じるおそれがある場合に、移動手段により、第1掘削軸の本体軸を第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に移動させて位置させ(逆から言えば、第2掘削軸の本体軸を第1掘削軸の本体軸に対して相対的に上方に移動させて位置させ)ると、その移動力は前記各連設部より下方部分全体を、連結体と一体的に第2掘削軸側に曲がる力として作用する。各連設部より下方部分全体が第2掘削軸側に曲がった状態で掘削を進行させると、以後は第2掘削軸側に曲がりながら掘削が行われる。したがって、当初、第1掘削軸側に孔曲がりが生じている場合に、上記の操作を行うと、第1掘削軸側から第2掘削軸側への孔曲がりの修正を行うことができるものである。
ここで、各連設部より下方部分全体は連結体により連結されているので、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸全体が曲がる(方向を変える)。したがって、前掲の特許文献1における一つの軸を移動させる方法に比較して、孔曲がり修正効果が大きいことは容易に推測できよう。また、たとえば移動手段として油圧シリンダを使用してこれを多軸削孔機の下部に設けて地中に挿入する場合には、地盤との接触により油圧系統のトラブルなどが生じるのに対し、本発明においては移動手段を多軸削孔機の上部に設け、地中に挿入するものではないので、そのようなトラブルの発生の危険性はなく、安定した機器の運転が可能となる。
なお、本発明における特許請求の範囲の記載として、第1掘削軸及び第2掘削軸なる用語は、両者を区別するために「第1」「第2」として使用しているのであって、後に説明する実施の形態の第1掘削軸及び第2掘削軸と同一視してはならない。すなわち、後の実施の形態における第2掘削軸を下方に移動させる場合には、その実施の形態での「第2掘削軸」が特許請求の範囲における「第1掘削軸」に該当するものである。
【0006】
〔請求項2記載の発明〕
前記上部駆動装置は地盤上に立設されたリーダに沿って昇降自在に設けられ、
前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられ、
前記リーダに沿いかつこれに保持される保持部と、前記外管との間に前記外管をその軸心回りに揺動回転させる油圧シリンダが設けられ、
前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されている請求項1記載の多軸削孔機。
【0007】
(作用効果)
多軸削孔機は孔曲がりのほか横方向に列に対して斜めに偏位するいわゆるネジレが生じるので、これを修正する機構が望まれる。
しかるに、前記油圧シリンダが動作させると、保持部及びリーダを反力体として、前記中間の掘削軸の外管がその軸心周りに揺動回転せられる。その際に、前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されているから、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸が中間の掘削軸の軸心周りに回転することにより、ネジレが解消される。
また、前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられているので、中間の掘削軸の内管を回転駆動機構により回転させて掘削することが可能となる。
【0008】
〔請求項3記載の発明〕
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、さらに、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有する多軸削孔機を使用し;
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第1掘削軸側に曲がるとき、前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲げ、
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第2掘削軸側に曲がるとき、前記第2掘削軸の本体軸を前記第1掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第1掘削軸側に曲げ、
ることにより孔曲がりを修正しながら削孔を行うことを特徴とする多軸削孔機使用孔曲がり修正削孔方法。
【0009】
(作用効果)
請求項1の項で述べた形態で曲がりを修正することができる。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
多軸削孔機に孔曲がり検出器を設け、その孔曲がり検出器による孔曲がりの度合いにより孔曲がりの修正を行う請求項4記載の多軸削孔機使用孔曲がり修正削孔方法。
【0011】
(作用効果)
多軸削孔機に孔曲がり検出器、たとえばジャイロや傾斜計を設けておけば、現実の孔曲がりの度合いを検出してこれを解消するように孔曲がりの修正を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上要すれば、本発明によれば、トップドライブ方式によるものであるので、掘削力が強いものとなる。孔曲がり修正効果が大きいものとなる。安定した機器の運転が可能となるなどの利点をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
<装置構成>
多軸削孔機1は、たとえば図1に示す全体構造を有するものである。すなわち、ベースマシン2の前方において支持され設置されたリーダ3はベースマシン2のリーダ受台4とバックステイ5により支えられる構造となっている。前記リーダ3には、複数本の単位掘削管を長手方向に連結して構成された長尺の掘削軸6が鉛直方向に移動可能なように設けられ、その掘削軸6の頭部には、上部駆動装置が設けられ、この上部駆動装置は、リーダ3に沿ってスライド可能とされ、各掘削軸とこれを回転させる動力源7A及び減速機7Bを搭載した回転駆動機構7と連結されている。
【0014】
動力源7Aとしては、油圧モータが用いられることもあるが、一般的には電動モータを用いるのが望ましい。この種の電動モータは一台に限られず、複数台用いることも可能である。これら電動モータからの動力は図示しない歯車列により一つにまとめられ、減速機7Bにより回転数が減速されて掘削軸6に伝達される。また、減速機7Bには、スイベル(図示せず)が搭載されており、このスイベルにより、後述する掘削軸6の中空部(図示せず)を介して掘削ヘッドから掘削液、エアー、固化液等を適宜切り替えて吐出させることができる。なお、リーダ3の下方には、掘削軸6をガイドすると共に、掘削軸6の回動に伴う振れを防止すための振れ止め装置9が取り付けられている。
【0015】
さらに図2〜図8も参照すると、図1の掘削機を右方から見た状態を正面としたときの掘削機本体を示した図2であり、掘削軸は3本又は5本の掘削軸であることが望ましいが、実施の形態の掘削軸は、3本の掘削軸であり、両側に位置する第1掘削軸61及び第2掘削軸63と、中間の掘削軸62を有する。
【0016】
第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸61A、63Aと下方の本体軸61B、63Bとを有する。中間の掘削軸62は、外管62Aと内管63Bとを有し、内管63Bが回転駆動機構7により外管62Aと独立に回転自在に設けられている。外管62Aは後述する連結体20にネジレを与えるものであり、内管63Bとの対比ではケーシング管としても呼べるものである。
【0017】
各掘削軸の下部には、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸61B、63B及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体20が設けられている。
【0018】
一方、各掘削軸の上部においては、第1掘削軸61、第2掘削軸63及び中間の掘削軸62を平行に保持するために、取り巻くように設けられた連結バンド10が設けられている。
【0019】
第1掘削軸61及び第2掘削軸63のそれぞれは、図4に明りょうに図示されているよういに、基部軸61A、63Aに対して本体軸61B、63Bが移動手段、好適には油圧シリンダにより軸方向移動可能でかつ回転可能に接続されている。実施の形態では、図5に示されているように、油圧シリンダ12A、12Bが、基部軸61Aを回転自在に保持する連結バンド10と本体軸61Bとの間に跨設され、油圧シリンダ12C、12Dが、基部軸63Aを回転自在に保持する連結バンド10と本体軸63Bとの間に跨設されている。
【0020】
連結バンド10は、詳細には、第1掘削軸61及び第2掘削軸63の基部軸61A、63A並びに中間の掘削軸62の外管62Aを回転可能に抱持している。
【0021】
また、連結バンド10と連結体20との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部30を有する。この例としては、図7の単位掘削管の雌雄嵌合継手部とすることができる。すなわち、たとえば横断面六角のオス継手部30Aとこれに対応するメス継手30Bの段差肩部31、及び接続ピン部32による嵌め合い面に予めたとえば1mm隙間を確保しておく。これによって、図7のように当該連設部30の下方が偏位すると、その曲がり方向に段差肩部31のスキマSが生じる形態で偏位を許容するようになる。この例に限らず、その他前後方向に軸支形態で連結するようなものでもよい。
【0022】
かかる連設部30を本体軸61B、63B及び中間の掘削軸62に設けてあるので、たとえば、油圧シリンダ12A、12Bの下降作動(そのストロークをSとする)により、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させたとき、図8に示すように、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20と一体的に第2掘削軸側63に曲がるように構成されている。反対に、油圧シリンダ12C、12Dの下降作動により、第2掘削軸63の本体軸63Bを第1掘削軸61の本体軸61Bに対して相対的に下方に位置させたとき、図示しないが、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20と一体的に第1掘削軸側61に曲がるように構成されている。
【0023】
なお、本体軸61B、63B及び中間の掘削軸62の内管62Bには、掘削ビット64、スクリュウ羽根65が適宜設けることができ、先端部には吐出口(図示せず)を設けて、この吐出口から、掘削液、エアー、固化液等を吐出させ、地中柱列壁を造成し、これらをラップ施工することで連続地中壁を造成できる。
【0024】
ところで、ネジレを防止する機構として次記の構造が用意されている。すなわち、図5及び図6に示されているように、リーダ3に沿って移動されかつこれに保持される保持部14が設けられ、この保持部14と外管62Aとの間に、軸心周りに外管62Aを揺動回転させる油圧シリンダ15L,15Rが設けられている。したがって、油圧シリンダ15L,15Rの伸縮作動により、外管62Aはその軸心周りに揺動回転する結果、外管62Aの揺動回転が連結体20の揺動回転として伝達される。
【0025】
結果として、連結体20により抱持された第1掘削軸61及び第2掘削軸63が掘削軸62の軸心周りに揺動回転するようになる。
【0026】
なお、油圧シリンダ15L,15Rによる揺動回転は、掘削軸62の外管62Aのみ与えられるのであって、連結バンド10には与えられず、よって第1掘削軸61及び第2掘削軸63の上部においてはネジレが生ぜず、下部においてネジレが生成されるものである。
【0027】
<曲がり及び捻れ修正>
図2を基準として、その紙面方向左右を「左右方向」X及び紙面を貫く方向を「前後方向」と呼ぶことにする。掘削孔の平面視は、各掘削ビット64の外周縁または各スクリュウ羽根65の外周縁がなす軌跡として、図9の符号Hで示されるものとなる。
【0028】
いま、正規の掘削孔Hが仮想線で示されるように、左方向に「−X」分だけズレル位置に偏位した場合、これを正規の位置に修正するために、油圧シリンダ12A、12B下降作動(ストロークをS)させ、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させる。その結果、図8に示すように、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20により抱持されている結果、連結体20と一体的に第2掘削軸側63に角度α分曲がる。この状態で掘削を進行させると、右方向に掘削方向が変更され、変更量が「−X」分となった時点で、油圧シリンダ12A、12B上昇作動させ、曲がり修正を完了させる。
【0029】
右方向(+X方向)にずれる位置に偏位した場合、油圧シリンダ12C、12D下降作動させて同様に修正すればよい。
【0030】
この場合、曲がり状態及びその量はたとえば、掘削軸61、62、63のいずれかあるいは全体に、実施の形態では中間の掘削軸62に傾斜計またはジャイロなどの曲がり検出器40を設け、その信号線は掘削軸62の内管62B及び減速機7Bを通して外部に導出すればよい。曲がり検出器40による曲がり量に対応して、角度αに一気に変更することも可能ではないが、経時的に徐々に変更することが可能である。また、油圧シリンダ12A、12B及び油圧シリンダ12C、12Dをそれらのストローク中間を基準位置として、たとえば油圧シリンダ12A、12Bを下降作動、油圧シリンダ12C、12Dを上昇作動させるなどの修正動作も可能である。さらに、各油圧シリンダの基準位置を最大伸長状態に設定すれば、曲がり修正をいずれかの油圧シリンダを収縮させる作動により行うことになる。以上の理由により、本発明では、第1掘削軸の本体軸と第2掘削軸の本体軸との「相対的な位置」を問題にして特許請求の範囲の記載を行っているのである。
【0031】
ここで、掘削軸61及び63について、図8の段差肩部31のスキマSに当接する差動検出器などのストローク検出器をそれぞれ設け、その検出したスキマS量は、掘削軸61及び63下部の曲がり量として捉えることができるので、曲がり検出器40として使用可能である。
【0032】
一方、図10のように、正規の掘削孔Hの列方向が仮想線で示されるように捻れる場合には、たとえば角度「+β」分捻れた場合には、右の油圧シリンダ15Rを伸長させ、外管62Aを掘削軸62の軸心周りに「−β」分回転させる。その結果、連結体20により抱持された第1掘削軸61及び第2掘削軸63の下部が掘削軸62の軸心周りに「−β」分回転させ、曲がり修正を行えばよい。その捻れによる具体的な曲がり修正方法はズレの場合と同様に適宜選択できる。
【0033】
<他の事項>
第1掘削軸61、中間の掘削軸62の内管62B及び第2掘削軸63の回転方向は、回転駆動機構7による歯車列の構成などによって適宜選択できるが、削孔の精度などの観点からは、図10に示すように平面視で2通りの中から選択するのが望ましい。
先の説明でも触れたように、掘削の進行に伴って、順次単位掘削管を継ぎ足して長手方向に連結する。この場合において、必要ならば、前記の連結バンド10と連結体20との間に剛性を高めるために補助連結バンドを設けることができる。この場合の補助連結バンドは、掘削軸の軸方向の移動を許容するものである必要がある。また、連結体20より下方に副連結体21を設けることもできる。
また、図12に示されているように、中間の掘削軸62の両側の第1掘削軸61及び第2掘削軸63に対し、さらに外方に、第1掘削軸61及び第2掘削軸63と実質的に同構成の他の第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sを設けて5本の掘削軸とすることができる。この場合、各掘削軸の下部はこれらを連結する連結体が設けられ、各掘削軸が回転駆動機構7により回転される。また、移動手段を第1掘削軸61、第2掘削軸63、第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sのそれぞれに設けてもよいが、第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sにも移動手段を設けるとすれば、上部にそれだけのスペースの確保が必要となり、構造的に複雑となるなどの問題があるために、移動手段は第1掘削軸61及び第2掘削軸63のみに設けるのが得策である。かかる構造によっても、各掘削軸は下部において連結体により一体的に移動するようになっているから、曲がり修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】多軸削孔機の側面図である。
【図2】多軸削孔機の掘削機本体の正面図である。
【図3】図2の要部正面図である。
【図4】図2の要部縦断面図である。
【図5】図3の半断面平面図である。
【図6】図2の側面図である。
【図7】連設部の例の縦断面図である。
【図8】掘削機本体の曲がり状態の正面図である。
【図9】掘削孔の曲がりの説明図である。
【図10】掘削孔の捻れの説明図である。
【図11】各掘削軸の回転方向例の説明図である。
【図12】5本の掘削軸の概要図である。
【符号の説明】
【0035】
1…多軸削孔機、2…ベースマシン、3…リーダ、6…掘削軸、7A…動力源、7B…減速機、7…回転駆動機構、12A,12B、12C、12D…油圧シリンダ、15L、15R…油圧シリンダ、20…連結体、30…連設部、61…第1掘削軸、62…中間の掘削軸、63…第2掘削軸、61A、63A…基部軸、61B、63B…本体軸、H…掘削孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸削孔機及び多軸削孔機を使用し孔曲がりを修正しながら削孔する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、地中柱列式連続壁の造成などに多軸削孔機が使用されている。単軸削孔機のほか、多軸削孔機においても、地盤に性状などの要因によって、削孔時の孔曲がりが生じる。孔曲がりが生じると、削孔精度の低下によって、たとえば地中柱列式連続壁の造成精度(たとえばラップ施工を行う場合のラップ精度)の低下につながる。したがって、孔曲がりが生じることを検出し、これを修正する機構が必要になる。
孔曲がりの検出にはジャイロなどの孔曲がり検出器を搭載することが知られている。
他方で、孔曲がりの修正には、従来から種々の方法が提案されてきた。本発明と削孔軸を軸方向に移動させる点で関連するものとして特許文献1のものがある。
これは、掘削途中で複数本の掘削軸の先端部が複数本の掘削軸を並設した並設方向にずれた際に、ずれ方向と反対側の側端部に位置する掘削軸を他の掘削軸に対して相対的に下降または上昇させて掘削することで複数本の掘削軸をずれ方向とは逆方向に戻すものである。
しかし、この方法では、1本の掘削軸を相対的に移動させるものであるために、大きなまたは速やかな孔曲がり修正効果(掘削長当たりの修正量)を期待できないことが当然に予想される。
他の方法に関する提案も多いが、装置的に大掛かりまたは複雑なものとなり、実用性に疑問のあるケースもある。
【特許文献1】特許第3389558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、孔曲がり修正効果が顕著にあらわれるものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有し、
前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させたとき、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲がるように構成したことを特徴とする多軸削孔機。
【0005】
(作用効果)
両側の掘削軸においては、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構による回転駆動力が、基部軸を介して本体軸に与えられ、掘削が行われる。中間軸は外管と内管とを有し、前記回転駆動機構による回転駆動力が内管に直接的に与えられる。このように各掘削軸は上部駆動装置に設けられた回転駆動機構による回転駆動力が与えられるもの、いわゆるトップドライブ方式によるものであるので、たとえば多軸削孔機下部において駆動力を与えるものと比較して掘削力が強いものとなる。
第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸は連結体により実質的に平行に保つように保持されているので、掘削方向が揃ったものとなる。
しかるに地盤の性状の変化などの要因により掘削方向が正規の方向(設計の掘削方向)からずれて孔曲がりが生じたまたは生じるおそれがある場合に、移動手段により、第1掘削軸の本体軸を第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に移動させて位置させ(逆から言えば、第2掘削軸の本体軸を第1掘削軸の本体軸に対して相対的に上方に移動させて位置させ)ると、その移動力は前記各連設部より下方部分全体を、連結体と一体的に第2掘削軸側に曲がる力として作用する。各連設部より下方部分全体が第2掘削軸側に曲がった状態で掘削を進行させると、以後は第2掘削軸側に曲がりながら掘削が行われる。したがって、当初、第1掘削軸側に孔曲がりが生じている場合に、上記の操作を行うと、第1掘削軸側から第2掘削軸側への孔曲がりの修正を行うことができるものである。
ここで、各連設部より下方部分全体は連結体により連結されているので、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸全体が曲がる(方向を変える)。したがって、前掲の特許文献1における一つの軸を移動させる方法に比較して、孔曲がり修正効果が大きいことは容易に推測できよう。また、たとえば移動手段として油圧シリンダを使用してこれを多軸削孔機の下部に設けて地中に挿入する場合には、地盤との接触により油圧系統のトラブルなどが生じるのに対し、本発明においては移動手段を多軸削孔機の上部に設け、地中に挿入するものではないので、そのようなトラブルの発生の危険性はなく、安定した機器の運転が可能となる。
なお、本発明における特許請求の範囲の記載として、第1掘削軸及び第2掘削軸なる用語は、両者を区別するために「第1」「第2」として使用しているのであって、後に説明する実施の形態の第1掘削軸及び第2掘削軸と同一視してはならない。すなわち、後の実施の形態における第2掘削軸を下方に移動させる場合には、その実施の形態での「第2掘削軸」が特許請求の範囲における「第1掘削軸」に該当するものである。
【0006】
〔請求項2記載の発明〕
前記上部駆動装置は地盤上に立設されたリーダに沿って昇降自在に設けられ、
前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられ、
前記リーダに沿いかつこれに保持される保持部と、前記外管との間に前記外管をその軸心回りに揺動回転させる油圧シリンダが設けられ、
前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されている請求項1記載の多軸削孔機。
【0007】
(作用効果)
多軸削孔機は孔曲がりのほか横方向に列に対して斜めに偏位するいわゆるネジレが生じるので、これを修正する機構が望まれる。
しかるに、前記油圧シリンダが動作させると、保持部及びリーダを反力体として、前記中間の掘削軸の外管がその軸心周りに揺動回転せられる。その際に、前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されているから、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸が中間の掘削軸の軸心周りに回転することにより、ネジレが解消される。
また、前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられているので、中間の掘削軸の内管を回転駆動機構により回転させて掘削することが可能となる。
【0008】
〔請求項3記載の発明〕
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、さらに、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有する多軸削孔機を使用し;
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第1掘削軸側に曲がるとき、前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲げ、
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第2掘削軸側に曲がるとき、前記第2掘削軸の本体軸を前記第1掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第1掘削軸側に曲げ、
ることにより孔曲がりを修正しながら削孔を行うことを特徴とする多軸削孔機使用孔曲がり修正削孔方法。
【0009】
(作用効果)
請求項1の項で述べた形態で曲がりを修正することができる。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
多軸削孔機に孔曲がり検出器を設け、その孔曲がり検出器による孔曲がりの度合いにより孔曲がりの修正を行う請求項4記載の多軸削孔機使用孔曲がり修正削孔方法。
【0011】
(作用効果)
多軸削孔機に孔曲がり検出器、たとえばジャイロや傾斜計を設けておけば、現実の孔曲がりの度合いを検出してこれを解消するように孔曲がりの修正を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上要すれば、本発明によれば、トップドライブ方式によるものであるので、掘削力が強いものとなる。孔曲がり修正効果が大きいものとなる。安定した機器の運転が可能となるなどの利点をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
<装置構成>
多軸削孔機1は、たとえば図1に示す全体構造を有するものである。すなわち、ベースマシン2の前方において支持され設置されたリーダ3はベースマシン2のリーダ受台4とバックステイ5により支えられる構造となっている。前記リーダ3には、複数本の単位掘削管を長手方向に連結して構成された長尺の掘削軸6が鉛直方向に移動可能なように設けられ、その掘削軸6の頭部には、上部駆動装置が設けられ、この上部駆動装置は、リーダ3に沿ってスライド可能とされ、各掘削軸とこれを回転させる動力源7A及び減速機7Bを搭載した回転駆動機構7と連結されている。
【0014】
動力源7Aとしては、油圧モータが用いられることもあるが、一般的には電動モータを用いるのが望ましい。この種の電動モータは一台に限られず、複数台用いることも可能である。これら電動モータからの動力は図示しない歯車列により一つにまとめられ、減速機7Bにより回転数が減速されて掘削軸6に伝達される。また、減速機7Bには、スイベル(図示せず)が搭載されており、このスイベルにより、後述する掘削軸6の中空部(図示せず)を介して掘削ヘッドから掘削液、エアー、固化液等を適宜切り替えて吐出させることができる。なお、リーダ3の下方には、掘削軸6をガイドすると共に、掘削軸6の回動に伴う振れを防止すための振れ止め装置9が取り付けられている。
【0015】
さらに図2〜図8も参照すると、図1の掘削機を右方から見た状態を正面としたときの掘削機本体を示した図2であり、掘削軸は3本又は5本の掘削軸であることが望ましいが、実施の形態の掘削軸は、3本の掘削軸であり、両側に位置する第1掘削軸61及び第2掘削軸63と、中間の掘削軸62を有する。
【0016】
第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸61A、63Aと下方の本体軸61B、63Bとを有する。中間の掘削軸62は、外管62Aと内管63Bとを有し、内管63Bが回転駆動機構7により外管62Aと独立に回転自在に設けられている。外管62Aは後述する連結体20にネジレを与えるものであり、内管63Bとの対比ではケーシング管としても呼べるものである。
【0017】
各掘削軸の下部には、第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸61B、63B及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体20が設けられている。
【0018】
一方、各掘削軸の上部においては、第1掘削軸61、第2掘削軸63及び中間の掘削軸62を平行に保持するために、取り巻くように設けられた連結バンド10が設けられている。
【0019】
第1掘削軸61及び第2掘削軸63のそれぞれは、図4に明りょうに図示されているよういに、基部軸61A、63Aに対して本体軸61B、63Bが移動手段、好適には油圧シリンダにより軸方向移動可能でかつ回転可能に接続されている。実施の形態では、図5に示されているように、油圧シリンダ12A、12Bが、基部軸61Aを回転自在に保持する連結バンド10と本体軸61Bとの間に跨設され、油圧シリンダ12C、12Dが、基部軸63Aを回転自在に保持する連結バンド10と本体軸63Bとの間に跨設されている。
【0020】
連結バンド10は、詳細には、第1掘削軸61及び第2掘削軸63の基部軸61A、63A並びに中間の掘削軸62の外管62Aを回転可能に抱持している。
【0021】
また、連結バンド10と連結体20との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部30を有する。この例としては、図7の単位掘削管の雌雄嵌合継手部とすることができる。すなわち、たとえば横断面六角のオス継手部30Aとこれに対応するメス継手30Bの段差肩部31、及び接続ピン部32による嵌め合い面に予めたとえば1mm隙間を確保しておく。これによって、図7のように当該連設部30の下方が偏位すると、その曲がり方向に段差肩部31のスキマSが生じる形態で偏位を許容するようになる。この例に限らず、その他前後方向に軸支形態で連結するようなものでもよい。
【0022】
かかる連設部30を本体軸61B、63B及び中間の掘削軸62に設けてあるので、たとえば、油圧シリンダ12A、12Bの下降作動(そのストロークをSとする)により、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させたとき、図8に示すように、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20と一体的に第2掘削軸側63に曲がるように構成されている。反対に、油圧シリンダ12C、12Dの下降作動により、第2掘削軸63の本体軸63Bを第1掘削軸61の本体軸61Bに対して相対的に下方に位置させたとき、図示しないが、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20と一体的に第1掘削軸側61に曲がるように構成されている。
【0023】
なお、本体軸61B、63B及び中間の掘削軸62の内管62Bには、掘削ビット64、スクリュウ羽根65が適宜設けることができ、先端部には吐出口(図示せず)を設けて、この吐出口から、掘削液、エアー、固化液等を吐出させ、地中柱列壁を造成し、これらをラップ施工することで連続地中壁を造成できる。
【0024】
ところで、ネジレを防止する機構として次記の構造が用意されている。すなわち、図5及び図6に示されているように、リーダ3に沿って移動されかつこれに保持される保持部14が設けられ、この保持部14と外管62Aとの間に、軸心周りに外管62Aを揺動回転させる油圧シリンダ15L,15Rが設けられている。したがって、油圧シリンダ15L,15Rの伸縮作動により、外管62Aはその軸心周りに揺動回転する結果、外管62Aの揺動回転が連結体20の揺動回転として伝達される。
【0025】
結果として、連結体20により抱持された第1掘削軸61及び第2掘削軸63が掘削軸62の軸心周りに揺動回転するようになる。
【0026】
なお、油圧シリンダ15L,15Rによる揺動回転は、掘削軸62の外管62Aのみ与えられるのであって、連結バンド10には与えられず、よって第1掘削軸61及び第2掘削軸63の上部においてはネジレが生ぜず、下部においてネジレが生成されるものである。
【0027】
<曲がり及び捻れ修正>
図2を基準として、その紙面方向左右を「左右方向」X及び紙面を貫く方向を「前後方向」と呼ぶことにする。掘削孔の平面視は、各掘削ビット64の外周縁または各スクリュウ羽根65の外周縁がなす軌跡として、図9の符号Hで示されるものとなる。
【0028】
いま、正規の掘削孔Hが仮想線で示されるように、左方向に「−X」分だけズレル位置に偏位した場合、これを正規の位置に修正するために、油圧シリンダ12A、12B下降作動(ストロークをS)させ、第1掘削軸61の本体軸61Bを第2掘削軸63の本体軸63Bに対して相対的に下方に位置させる。その結果、図8に示すように、各連設部30、30、30より下方の部分が連結体20により抱持されている結果、連結体20と一体的に第2掘削軸側63に角度α分曲がる。この状態で掘削を進行させると、右方向に掘削方向が変更され、変更量が「−X」分となった時点で、油圧シリンダ12A、12B上昇作動させ、曲がり修正を完了させる。
【0029】
右方向(+X方向)にずれる位置に偏位した場合、油圧シリンダ12C、12D下降作動させて同様に修正すればよい。
【0030】
この場合、曲がり状態及びその量はたとえば、掘削軸61、62、63のいずれかあるいは全体に、実施の形態では中間の掘削軸62に傾斜計またはジャイロなどの曲がり検出器40を設け、その信号線は掘削軸62の内管62B及び減速機7Bを通して外部に導出すればよい。曲がり検出器40による曲がり量に対応して、角度αに一気に変更することも可能ではないが、経時的に徐々に変更することが可能である。また、油圧シリンダ12A、12B及び油圧シリンダ12C、12Dをそれらのストローク中間を基準位置として、たとえば油圧シリンダ12A、12Bを下降作動、油圧シリンダ12C、12Dを上昇作動させるなどの修正動作も可能である。さらに、各油圧シリンダの基準位置を最大伸長状態に設定すれば、曲がり修正をいずれかの油圧シリンダを収縮させる作動により行うことになる。以上の理由により、本発明では、第1掘削軸の本体軸と第2掘削軸の本体軸との「相対的な位置」を問題にして特許請求の範囲の記載を行っているのである。
【0031】
ここで、掘削軸61及び63について、図8の段差肩部31のスキマSに当接する差動検出器などのストローク検出器をそれぞれ設け、その検出したスキマS量は、掘削軸61及び63下部の曲がり量として捉えることができるので、曲がり検出器40として使用可能である。
【0032】
一方、図10のように、正規の掘削孔Hの列方向が仮想線で示されるように捻れる場合には、たとえば角度「+β」分捻れた場合には、右の油圧シリンダ15Rを伸長させ、外管62Aを掘削軸62の軸心周りに「−β」分回転させる。その結果、連結体20により抱持された第1掘削軸61及び第2掘削軸63の下部が掘削軸62の軸心周りに「−β」分回転させ、曲がり修正を行えばよい。その捻れによる具体的な曲がり修正方法はズレの場合と同様に適宜選択できる。
【0033】
<他の事項>
第1掘削軸61、中間の掘削軸62の内管62B及び第2掘削軸63の回転方向は、回転駆動機構7による歯車列の構成などによって適宜選択できるが、削孔の精度などの観点からは、図10に示すように平面視で2通りの中から選択するのが望ましい。
先の説明でも触れたように、掘削の進行に伴って、順次単位掘削管を継ぎ足して長手方向に連結する。この場合において、必要ならば、前記の連結バンド10と連結体20との間に剛性を高めるために補助連結バンドを設けることができる。この場合の補助連結バンドは、掘削軸の軸方向の移動を許容するものである必要がある。また、連結体20より下方に副連結体21を設けることもできる。
また、図12に示されているように、中間の掘削軸62の両側の第1掘削軸61及び第2掘削軸63に対し、さらに外方に、第1掘削軸61及び第2掘削軸63と実質的に同構成の他の第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sを設けて5本の掘削軸とすることができる。この場合、各掘削軸の下部はこれらを連結する連結体が設けられ、各掘削軸が回転駆動機構7により回転される。また、移動手段を第1掘削軸61、第2掘削軸63、第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sのそれぞれに設けてもよいが、第1掘削軸61S及び第2掘削軸63Sにも移動手段を設けるとすれば、上部にそれだけのスペースの確保が必要となり、構造的に複雑となるなどの問題があるために、移動手段は第1掘削軸61及び第2掘削軸63のみに設けるのが得策である。かかる構造によっても、各掘削軸は下部において連結体により一体的に移動するようになっているから、曲がり修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】多軸削孔機の側面図である。
【図2】多軸削孔機の掘削機本体の正面図である。
【図3】図2の要部正面図である。
【図4】図2の要部縦断面図である。
【図5】図3の半断面平面図である。
【図6】図2の側面図である。
【図7】連設部の例の縦断面図である。
【図8】掘削機本体の曲がり状態の正面図である。
【図9】掘削孔の曲がりの説明図である。
【図10】掘削孔の捻れの説明図である。
【図11】各掘削軸の回転方向例の説明図である。
【図12】5本の掘削軸の概要図である。
【符号の説明】
【0035】
1…多軸削孔機、2…ベースマシン、3…リーダ、6…掘削軸、7A…動力源、7B…減速機、7…回転駆動機構、12A,12B、12C、12D…油圧シリンダ、15L、15R…油圧シリンダ、20…連結体、30…連設部、61…第1掘削軸、62…中間の掘削軸、63…第2掘削軸、61A、63A…基部軸、61B、63B…本体軸、H…掘削孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有し、
前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させたとき、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲がるように構成したことを特徴とする多軸削孔機。
【請求項2】
前記上部駆動装置は地盤上に立設されたリーダに沿って昇降自在に設けられ、
前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられ、
前記リーダに沿いかつこれに保持される保持部と、前記外管との間に前記外管をその軸心回りに揺動回転させる油圧シリンダが設けられ、
前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されている請求項1記載の多軸削孔機。
【請求項3】
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、さらに、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有する多軸削孔機を使用し;
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第1掘削軸側に曲がるとき、前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲げ、
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第2掘削軸側に曲がるとき、前記第2掘削軸の本体軸を前記第1掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第1掘削軸側に曲げ、
ることにより孔曲がりを修正しながら削孔を行うことを特徴とする多軸削孔機における孔曲がり修正削孔方法。
【請求項4】
多軸削孔機に孔曲がり検出器を設け、その孔曲がり検出器による孔曲がりの度合いにより孔曲がりの修正を行う請求項4記載の多軸削孔機における孔曲がり修正削孔方法。
【請求項1】
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有し、
前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させたとき、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲がるように構成したことを特徴とする多軸削孔機。
【請求項2】
前記上部駆動装置は地盤上に立設されたリーダに沿って昇降自在に設けられ、
前記中間の掘削軸は外管と内管とを有し、前記内管が前記回転駆動機構により前記外管と独立に回転自在に設けられ、
前記リーダに沿いかつこれに保持される保持部と、前記外管との間に前記外管をその軸心回りに揺動回転させる油圧シリンダが設けられ、
前記外管と前記連結体とは、前記外管の揺動回転が前記連結体の揺動回転として伝達されるように構成されている請求項1記載の多軸削孔機。
【請求項3】
横方向に列をなして並設された少なくとも3本の掘削軸を有し、上部駆動装置に設けられた回転駆動機構により、各掘削軸それぞれを軸心周りに回転させて地盤を掘削する多軸削孔機であって、さらに、
前記3本の掘削軸のうち、両側の第1掘削軸及び第2掘削軸それぞれは上方の基部軸と下方の本体軸とを有し、
各掘削軸の下部には、前記第1掘削軸及び第2掘削軸の本体軸及び中間の掘削軸を実質的に平行に保つように連結する連結体が設けられ、
前記第1掘削軸及び第2掘削軸のそれぞれは、前記基部軸に対して前記本体軸が移動手段により軸方向移動可能でかつ回転可能に接続され、
この接続部と前記連結体との間において、各掘削軸は上下方向に少なくとも一つの正規の軸方向に対して曲がり可能な連設部を有する多軸削孔機を使用し;
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第1掘削軸側に曲がるとき、前記第1掘削軸の本体軸を前記第2掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第2掘削軸側に曲げ、
前記正規の軸方向に対して削孔方向が第2掘削軸側に曲がるとき、前記第2掘削軸の本体軸を前記第1掘削軸の本体軸に対して相対的に下方に位置させて、前記各連設部より下方の部分が前記連結体と一体的に前記第1掘削軸側に曲げ、
ることにより孔曲がりを修正しながら削孔を行うことを特徴とする多軸削孔機における孔曲がり修正削孔方法。
【請求項4】
多軸削孔機に孔曲がり検出器を設け、その孔曲がり検出器による孔曲がりの度合いにより孔曲がりの修正を行う請求項4記載の多軸削孔機における孔曲がり修正削孔方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−115599(P2008−115599A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299573(P2006−299573)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】
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