説明

多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ及びこの製造方法

本発明は、多重スポット(multi-spot)金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関し、より詳細には局所表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance,LSPR)光学特性を利用できる多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ及びこの製造方法と多種の角膜ジストロフィーを診断できるBIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関する。本発明によると、金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップと光源、検出器、分光光度計及びコンピュータを含む分析装置を結合することでLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーとして応用が可能なだけでなく、本発明にともなうBIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを利用すれば遺伝的眼科疾患の色々な種類の角膜ジストロフィーを一度に診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重スポット(multi-spot)金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関し、より詳細には局所表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance、LSPR)光学特性を利用できる多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ及びこの製造方法と、多種の角膜ジストロフィーを診断できるBIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
角膜ジストロフィーは、角膜の中心に混濁が発生して年を重ねるに伴って次第に混濁が多くなって視力が減少する常染色体優性遺伝疾患で、アベリノ角膜ジストロフィー(Avellino corneal dystrophy、ACD)、ラティスタイプI角膜ジストロフィー(lattice type I corneal dystrophy、LCD)及びレイス・バックラース角膜変性症(Reis-bucklers cornealdystrophy、RBCD)等があり、BIGH3蛋白質をコードする遺伝子の突然変異によって発生する。この中、アベリノ角膜ジストロフィー患者は、異型接合体(heterozygote)の場合は、年令と共に視力の相当な損失が生じ、同型接合体(homozygote)の場合には6才から失明する。アベリノ角膜ジストロフィーは従来顆粒型角膜ジストロフィーと称された疾患であったが、遺伝子の相違が発見されて1988年から分離して新しく命名された疾患である。アベリノ角膜ジストロフィーは、全世界で最も多い角膜ジストロフィーと知られ、遺伝子検査の結果、国内に1/340〜1/1,000の有病率(heterozygoteの場合)となっており、相当一般的な疾患といえる(Holland, E.J. et al., Ophthalmology, 99:1564, 1992; Kennedy, S.M. et al., Br. J. Ophthalmol., 80:489, 1996;Dolmetsch, A.M. et al., Can. J. Ophthalmol., 31:29, 1996; Afshari, N.A. et al., Arch. Ophthalmol., 119:16, 2001;Stewart, H.S. Hum. Mutat., 14:126, 1999)。
【0003】
異型接合体のアベリノ角膜ジストロフィー患者がレーシック手術を受けると約2年後から角膜混濁が急激に増加して失明することが発見された(Jun, RM et al., Ophthalmolgy, 111:463, 2004)。従って、レーシック手術の手術前にアベリノ角膜ジストロフィー患者に対する正確な診断を行ってレーシック手術による症状進行を防止しなければならない。しかしながら、従来、眼科では眼科医が顕微鏡で眼球混濁を検査することだけでアベリノ角膜ジストロフィーを診断し、症状が進行していない患者の場合にアベリノ角膜ジストロフィーを発見できず、レーシック手術を施行して、失明に発展する場合も生じ、正確かつ迅速な角膜ジストロフィーの診断方法が切に求められている。
【0004】
そこで、本発明者等は、BIGH3遺伝子の特定突然変異を速かに診断するために、アベリノ症を含む角膜ジストロフィーを診断するためのBIGH3遺伝子突然変異検出用ヌクレオチド及び前記ヌクレオチドが固定されていることを特徴とする角膜ジストロフィー診断用核酸チップを開発した(韓国公開特許第10−2007−0076532号)。しかし、この形態の核酸チップはターゲットDNAを検出するための標識作業の複雑化、測定時間の長さ、及び測定装置の大型化に伴って、簡易且つ容易に測定を行うことが困難である。
【0005】
従って、標識作業を基盤とする核酸チップの問題を解決するために、ナノ構造だけで発現する新しい光学特性のLSPR(localized surface plasmon resonance)を基盤とする新しい形態の非標識バイオチップが作製された。金属ナノ粒子のように局所的な表面が存在する材料に多様な波長を有する光を照射すると、バルク金属とは異なり金属ナノ粒子表面に分極が生じて電場の強度を増大する特異な性質を示す。分極によって形成された電子は集団(プラズモン、plasmon)を成し、金属ナノ粒子の表面で局所的に振動するが、このような現象をLSPRという。LSPR光学特性は、ナノ粒子付近で生じる誘電率変化、即ち、屈折率変化に敏感に反応するため、水晶振動子微小天秤法(quartz crystal microbalance:QCM)や電気化学法を利用した非標識バイオセンサーよりも高感度で簡便に生体分子相互作用の分析が可能である。また、LSPR光学特性は、可視領域で吸収ピークが得られるため、今まで開発されたSPR光学特性を利用した非標識バイオセンサーと比較してより簡単な光学計としてバイオ分子相互作用の分析が可能である。従って、LSPR光学特性を検出原理として単一バイオチップの上に多種のリガンドを固定化することにより、従来のバイオチップよりも多重検体を同時分析できるため、非標識バイオチップで求められたオンサイトモニターリング(on-site monitoring)も可能となる。
【0006】
日本RIKENのOkamotoのグループ(T. Okamoto et. al., Optics Letters, 25:374, 2000)が金ナノ粒子をガラス基板上に固定させて、液体試料の屈折率変化に応じたLSPR特性変化を観察した結果を発表したのが、金ナノ粒子配列バイオチップを利用したLSPRセンサーの始まりである。米国デューク大のNathとChilkotiのグループ(N. Nath and A. Chilkoti, Anal. Chem., 74:509, 2002)が同様な技術を応用して、金ナノ粒子配列バイオチップを利用したLSPRバイオセンサーを開発し、バイオ分子の相互作用をリアルタイムで観察した結果を発表した。彼等は、また金ナノ粒子の大きさに応じた測定感度の変化に関する結果を観察することによって、金属ナノ粒子配列バイオチップの最適化にも成功した。しかし、この形態のLSPRバイオチップは、金属ナノ粒子の作製工程の複雑化、作製期間の長期化、多様な大きさの金属ナノ粒子作製の困難、そしてナノ粒子の不規則的な固定による再現性確立の困難等の問題を有している。
【0007】
そこで、日本JAIST及び大阪大学のE.Tamiyaのグループ(日本公開特許第2006−250668号)は、このような問題を解決するために、2004年から新しい構造の金属ナノ粒子配列バイオチップを利用したLSPRバイオセンサー開発に対する研究を行っており、一定の大きさのシリカナノ粒子をガラス基板の上に固定させた後、配列されたナノ粒子の表面に多様な厚さの金属を蒸着させることによって、多様な大きさのナノ粒子を基板表面に配列させるような効果が得られる金属蒸着型ナノ粒子配列バイオチップを開発した。また、DNAを含み、RNA、ペプチド、蛋白質等の多様なバイオ分子の相互作用を検出できるLSPR光学特性基盤非標識光学センサーとして応用できることを証明した。しかし、この形態のLSPR基盤バイオセンサーも作製期間の長期化、多重検体バイオ分子の同時測定及び識別の困難等の問題が依然として残っている。
【0008】
そこで、本発明者は、前記従来技術の様々な特徴を利用して問題を改善しようと鋭意努力した結果、LSPR光学特性を利用して多重検体DNAを一つのチップで同時に検出できる多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを製造して、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップが複数のターゲット核酸を一度に検出できることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第一の目的は、LSPR光学特性を利用して、多重検体核酸を一つのチップで同時に検出できる多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップを提供することである。
【0010】
本発明の第二の目的は、前記核酸チップを利用して、視力矯正手術前に正確に診断されなければならないアベリノ症を含む角膜ジストロフィーを診断するためのBIGH3遺伝子突然変異DNAの多重検出及び定量が可能な多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを提供することである。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)基板(第一層)上に金属薄膜層(第二層)を形成する工程、(b)前記金属薄膜層(第二層)に多重スポットを形成して前記多重スポットの各スポット表面にナノ構造体を一定間隔で配列してナノ構造層(第三層)を形成させる工程、(c)前記ナノ構造層に金属薄膜層(第四層)を形成する工程、及び(d)前記金属薄膜層(第四層)にプローブ核酸を固定する工程を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、前記方法で製造され、(a)基板(第一層)、(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されていて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されているナノ構造層(第三層)、(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたプローブ核酸を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを提供する。
【0013】
また、本発明は、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップとターゲット核酸を反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを特徴とするターゲット核酸の検出方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、(a)基板(第一層)、(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されるナノ構造層(第三層)、(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたBIGH3遺伝子突然変異検出用プローブ核酸を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記BIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップと臨床サンプルを反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを含むBIGH3遺伝子突然変異の検出方法を提供する。
【0016】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップの一例を表示した概略図及び多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップの写真である。
【図2】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーの写真である。
【図3】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面にプローブDNAを固定化する方法及びターゲットDNAを反応させて、相補的な結合を誘導する過程の概略図である。
【図4】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常(Normal)、アベリノ角膜ジストロフィー(ACD)、レイス・バックラース角膜変性症(RBCD)及びラティスタイプI角膜ジストロフィー(LCD)の各ターゲットDNAの長さに応じた核酸チップの検出効率を測定した結果である。
【図5】プローブDNAと結合する各ターゲットDNAの長さに応じた二次構造を予測プログラム(GeneBee)でシュミレーションした試験の結果である。ターゲットDNAの長さに応じた二次構造の結果は、Greedy methodによって分析された構造で、各ターゲットDNAの長さに応じた二次構造の赤い楕円の部分は、プローブDNAの結合サイトと相補的な結合が可能なターゲットDNAの結合サイトの部分を表した。
【図6】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常、アベリノ角膜ジストロフィー(ACD)、レイス・バックラース角膜変性症(RBCD)及びラティスタイプI角膜ジストロフィー(LCD)の各ターゲットDNAの濃度に応じた核酸チップの検出効率を測定した結果である。
【図7】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常及び各々のホモ接合タイプ角膜ジストロフィーターゲットDNA(ACD、RBCD、LCD)に対する核酸チップの選択性検出効率を測定した結果である。
【図8】本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、各々のヘテロ接合タイプの角膜ジストロフィーターゲットDNA(ACD、RBCD、LCD)に対する核酸チップの選択性検出効率を測定した結果である。
【発明の詳細な説明】
【0018】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
一観点において、本発明は、(a)基板(第一層)上に金属薄膜層(第二層)を形成する工程、(b)前記金属薄膜層(第二層)に多重スポットを形成して前記多重スポットの各スポット表面にナノ構造体を一定間隔で配列してナノ構造層(第三層)を形成させる工程、(c)前記ナノ構造層に金属薄膜層(第四層)を形成する工程、及び(d)前記金属薄膜層(第四層)にプローブ核酸を固定する工程を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法、及び前記方法で製造され、(a)基板(第一層)、(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されていて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されているナノ構造層(第三層)、(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたプローブ核酸を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関する。
【0019】
本発明において、前記金属薄膜層(第四層)を真空蒸着器等を利用して、多重スポット形態のナノ構造層(第三層)上に薄膜させる工程を介して製造でき、前記ナノ構造層(第三層)は、多孔性マスク等を利用して金属薄膜層(第二層)上に固定して、多重スポットを形成できる。
【0020】
本発明において、前記ナノ構造層(第三層)は、単一構造を有してもよく、前記プローブ核酸は、複数のターゲットDNAを認識する複数のプローブDNAが固定化されていることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記基板はガラス、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、シリコン及び石英からなる群から選択される物質で作られてもよい。前記に挙げられた種の基板は、偏光に対して異方性を示すことなく、加工性が優れている効果がある。特に、前記ガラス、ポリスチレン、PET及びポリカーボネートは白色光に対して透明な特性を示す材料である。基板の表面が色を帯びるようになれば、入射した白色光が基板表面から反射して、LSPR特性のような光学特性に影響を及ぼす。従って、入射した白色光が反射せず透過する特性を有する透明な基板を使うことが好ましい。
【0022】
また、本発明において、前記基板の厚さは、0.1〜20mmであってもよく、これは前記各基板に対して現在まで作製されたり、導入可能な基板の中で本発明に使っても差し支えない最低の厚さと最高の厚さを表示した。
【0023】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する金属薄膜層(第二層及び第四層)では局所表面プラズモン共鳴が生じて得られるものであれば特に限定されない。例えば、使用可能な金属の種類としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びこれらの混合物からなる群から選択されたものが用いられる。また、一定間隔で配列されているナノ構造層(第三層)の表面に薄膜される金属膜の厚さに応じてLSPR光学特性によって発生する吸収スペクトラムピークの波長領域が異なる。従って、多様な可視光線波長領域で反応できる新しい形態の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップを製造することができる。
【0024】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する金属薄膜層(第二層及び第四層)の薄膜形成はスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気メッキ法、無電気メッキ法等によって行うことが可能である。第二層及び第四層の金属薄膜層の厚さは、第三層のナノ構造体の形、大きさ、配列状態によって任意に決められる。例えば、100nmのシリコン球状粒子の場合、第二層の厚さは30nm〜50nmであり、第四層の厚さは20nm〜40nmで作製することが好ましい。
【0025】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する第三層の「一定間隔で配列されているナノ構造層」は、ナノ大きさの構造体が一定間隔で配列されていることを意味し、LSPR光学特性に影響を及ぼさないため、特に限定されない。例えば、使用可能なナノ構造体の種類としては、ナノ粒子(nano-particle)、ナノドット(nano-dot)、ナノアイランド(nano-island)、ナノロッド(nano-rod)及びナノワイヤー(nano-wire)等からなる群から選択されてもよい。
【0026】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する第三層のナノ構造層を金属薄膜層(第二層)に多重スポット形態で形成させるためには、多孔性マスクを利用して行うことが可能である。前記多孔性マスクは、金属薄膜層に付着されて、マスク表面に形成された多孔の中でだけナノ構造体を一定間隔で配列されるようにし、金属薄膜層(第二層)表面に多重スポット形態を形成させる。使用可能な多孔性マスクの種類としては、ゴム平板、シリコン平板及びこれらの混合物等からなる群から選択されてもよい。多孔性マスクは、前記平板の表面に穿孔機等を利用して多孔を形成して調製される。
【0027】
また、本発明において、前記多孔性マスクの多孔数は1〜150個であってもよく、これは前記各多孔性マスクに対して現在まで作製されたり、導入可能な多孔性マスクの中で本発明に使っても差し支えない多孔数の最低値と最高値を示す。
【0028】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する第三層のナノ構造層を金属薄膜層(第二層)に一定間隔で配列させるためには、金属薄膜層(第二層)の表面に4,4'−ジチオ二酪酸(DDA)を利用してカルボキシル基を有する自己組織化単分子膜(SAM)を形成し、ナノ構造体表面に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APTES)を利用して、アミン基を固定した後、SAM膜と前記アミン基を共有結合させて行うことが可能である。
【0029】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップに対する多重スポット形態の金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの表面に光を照射することによって金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ内部に分極が生じ、この分極によって形成された電子はプラズモンを成し、金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの表面で局所的に振動して、LSPR光学特性現象を生じさせて行うことが可能である。
【0030】
本発明の前記一つ以上のプローブ核酸を固定化する方法は、当業界において核酸を固定化する時に通常使われる核酸固定化方法を利用することができる。プローブ核酸は、試料中のターゲット核酸または候補ターゲット核酸と特異的に結合するだけでなく金属膜に固定化できるならば制限されない。また、プローブ核酸を多重スポット金属薄膜層(第四層)に固定化する方法としては、物理的吸着や化学結合等によって行うことが好ましい。
【0031】
各種原核生物あるいは真核生物あるいはその細胞由来の遺伝子情報の検出用プローブ核酸を作製するためには、各検出しようとするターゲット核酸にだけ特異性を有するべきで、そのために先ず各標的遺伝子あるいは生物体に対する特異プローブ核酸候補群を選定する。
【0032】
プローブ核酸候補群は、ターゲット核酸が位置している遺伝子の部位内で決める。プローブ核酸候補群の特異性の有無は、先ずBLAST検索を介して各塩基配列間類似性を比較して確認して、実際ハイブリダイーゼーション反応に菌株を適用して、各標的遺伝子でだけ反応するプローブ核酸を候補群内で同定用に選別する。さらに、前記のように選別された同定用プローブ核酸は、多様な生物学的試料を対象にする臨床試験に適応して敏感性を確認する。
【0033】
本発明によって選別されたプローブ核酸は、13〜17merのオリゴヌクレオチドであり、好ましくは検出しようとする標的の完全な相補配列と70%、80%、90%または95%以上の相同性を有する。本発明に係る各菌の検出及び同定用核酸プローブのオリゴヌクレオチドの長さは、50個またはそれ以上も可能である。本発明に使われるヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド及びイノシンまたは変形グループを含有したヌクレオチドのような変形されたヌクレオチドも可能であるが、これらはハイブリダイーゼーションの特性に影響を及ぼしてはならない。
【0034】
他の観点において、本発明は、前記複数のプローブ核酸が固定化されている多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップと、複数のBIGH3遺伝子突然変異核酸を含んだターゲット核酸を接触させて、相互作用の多重検出及び/または定量分析する工程を含む多重診断方法に関する。
【0035】
本発明の前記ターゲット核酸は、プローブ核酸と特異的に結合可能な核酸を称する。候補ターゲット核酸というのは、プローブ核酸と特異的に結合することが予測可能な核酸であって、具体的な候補ターゲット核酸は、ターゲット核酸と同様である。試料は、ターゲット核酸または候補ターゲット核酸を含んだ溶液を示す。例えば、血液、唾液、小便、鼻血、涙、排せつ物、組織抽出液、培養液等が挙げられるが、これに限定しない。
【0036】
本発明の生物学的試料で病気を診断するのに使うための核酸基質を提供するために試料からターゲット核酸を抽出する。DNAは標準技術または市販されているキットを使って多様な試料から抽出することができる。例えば、組織試料からRNAまたはDNAを分離するために使うキットは、Qiagen,Inc.(米国)及びStratagene(米国)から購入できる。QIAAMPブラッドキットは、血液だけでなく、骨髄、体液または細胞懸濁液からDNAの分離を可能にする。QIAAMP組織キットは、筋肉及び器官からDNAの分離を可能にする。ターゲット核酸が二本鎖の場合には、検出過程を履行する以前に変成を実施することが好ましい。二本鎖とDNAの変成は、化学的、物理的または酵素的変成の公知方法、特に適切な温度、80℃以上の温度で加熱することによって行える。
【0037】
また、プローブ核酸とハイブリダイーゼーション反応するターゲット核酸は、通常二通りの方法で準備できる。第一は、サザンブロッティングまたはノーザンブロッティングが使われる方法で、ゲノムDNAあるいはプラスミドDNAを適当な制限酵素で切った後、アガロスゲル(agarose gel)上で電気泳動を行って、大きさ毎にDNA片を分離して使う。第二は、PCR方法を利用して所望部分のDNAを増幅させて用いる方法である。
【0038】
この時用いるPCR方法を見ると、フォワードとリバースのプライマー対を同じ量を使って増幅させる最も普遍化しているPCRと、フォワードとリバースのプライマー対を非対称的に添加させて、二本鎖と一本鎖のバンドを同時に得ることができる非対称増幅方法(Asymmetric PCR)、多様なプライマー対を入れて一度に増幅させられる多重増幅方法(Multiplex PCR)、特異的な四個のプライマーとリガーゼ(Ligase)を利用して増幅した後、酵素免疫法で蛍光量を判定するリガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction、LCR)方法、この他にもホットスタートPCR、ネストPCR、変成オリゴヌクレオチドプライマーPCR、逆転写酵素PCR、半定量的(Semi-quantitative)逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR(Real time PCR)、SACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)、競争的PCR(Competitive PCR)、連鎖反復(short tandem repeats、STR)、一本鎖高次構造多型(Single Strand Conformation Polymorphism、SSCP)、in situ PCR、DDRT−PCR(Differential Display Reverse Transcriptase PCR)等の方法がある。
【0039】
本発明の好ましい態様は、分離した検体のDNAを鋳型として非対称増幅方法を行って、断片遺伝子を作製する。断片遺伝子は、フォワードプライマーとリバースプライマーの添加比を1:5で差別化することによって、一回の重合酵素連鎖反応で獲得する。
【0040】
本発明の好ましい態様としてPCR反応は、10×PCR緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8.3)、500mM KCl、15mM MgCl)5μL、dNTP混合物(dATP、dGTP、dCTP、dTTP各々2.5mM)4μL、10pmoleフォワードプライマー0.5μL、10pmoleリバースプライマー2.5μL、1/10に希釈した鋳型DNA(100ng)1μL、Taqポリメラーゼ(5unit/μL,Takara Shuzo Co.,Shiga,Japan)0.5μLを添加後に、合計体積が50μLになるように水を添加する。最初の変成は94℃で7分間、二回目の変成は94℃で1分間行う。アニーリング(annealing)は52℃で1分、伸長(extension)は72℃で1分間行い、これを10回繰り返す。その後、三回目の変成は94℃で1分、アニーリングは54℃で1分、伸長は72℃で1分間行い、これを30回繰り返す。以後、72℃で5分間最後の伸長を1回行う。PCR反応結果から生成された産物は、アガロスゲル電気泳動法(agarose gel electrophoresis)で確認する。
【0041】
他の観点において、本発明は、前記プローブ核酸を含んだ多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップとターゲット核酸を反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを特徴とするターゲット核酸の検出方法に関する。
【0042】
本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップは、光源、検出器、分光光度計及びコンピュータ等の分析装置と共に構成することで、チップ表面に付着した核酸の多重検出及び定量が可能なLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーとして応用可能である。
【0043】
また他の観点において、本発明は、(a)基板(第一層)、(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されるナノ構造層(第三層)、(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたBIGH3遺伝子突然変異検出用プローブ核酸を含む、BIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップに関する。
【0044】
本発明において、BIGH3遺伝子突然変異検出用プローブは、配列番号11〜46からなるグループから選択された一つ以上の塩基配列を含有することを特徴とする。
【0045】
本発明において、前記配列番号11〜46は、眼科疾患の原因となるBIGH3蛋白質の遺伝子突然変異多発領域中で特にアベリノ症、ラティスタイプI疾患及びレイス・バックラースI疾患を起こす突然変異領域の突然変異を確認できるプローブ核酸である。
【0046】
また他の観点において、本発明は、前記BIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップと臨床サンプルを反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを含むBIGH3遺伝子突然変異の検出方法に関する。
【0047】
本発明において、前記臨床サンプルとしては、血液、唾液、尿、鼻血、涙、排せつ物、組織抽出液、培養液等が挙げられるが、これに限定しない。
【0048】
本発明のBIGH3遺伝子突然変異診断用多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを使うと、全てのホモ接合タイプ及びヘテロ接合タイプの角膜ジストロフィーターゲット核酸に対して相補的な各ターゲット核酸とミスマッチする各ターゲット核酸が選別的に検出できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0050】
下記実施例の全実験は、韓国セブランス病院IRB委員会の承認下、ヘルシンキ協定によって全参加者に実験前に同意を得て行った。
【0051】
実施例1:多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップの作製
スライドガラス基板(第一層)表面(75mm×25mm×1mm)に真空蒸着装置(シンウエムエスティー、韓国)を利用して、クロムと金を各々真空蒸着して、金薄膜層(第二層)を薄膜した。具体的には、中間金属薄膜層としてクロムを5nmの厚さで蒸着し、金薄膜の膜厚は40nmで制御可能であった。次に、多孔性マスク(15、20、60、140スポット)を金薄膜層(第二層)表面に吸着して固定させる。引続き、多孔性マスクを吸着させた金薄膜層(第二層)表面に1mM 4,4'−ジチオ二酪酸(DDA)を利用して、SAM膜を形成した。次に、金薄膜層(第二層)表面に400mM EDCを添加して、この表面に導入されたカルボキシル基の活性化を行った後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APTES)で表面修飾を行った径100nmのシリカナノ構造体を金薄膜層(第二層)表面に共有結合を利用して配列させた。次に、径100nmのシリカナノ構造体が配列されたナノ構造層(第三層)表面にさらに金(30nm)の真空蒸着を行い、多様なスポット数を有する多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを製造した(図1)。
【0052】
実施例2:多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーの構築
図2は、前記のように製造された多重スポット金属蒸着形ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップと結合して構成されたLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーの写真である。前記多重スポット金属蒸着形ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーは、タングステン−ハロゲン光源(波長360nm〜2000nm,Ocean Optics,Inc.,米国)、検出器(波長300nm〜1100nm,Ocean Optics,Inc.,米国)、検出器で検出された光を分光する分光光度計(波長200nm〜1100nm,Ocean Optics,Inc.,米国)と分光光度計で得られた結果を処理する分光高度計分析処理プログラム(Ocean Optics,Inc.,米国)で構成される。この時、前記タングステン−ハロゲン光源と検出器は、一つの光源プローブに備えられている。前記LSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーのタングステン−ハロゲン光源から放出される入射光を垂直方向に多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に入射させた後、反射する反射光を検出器を解して検出し、分光光度計を経て分光された反射光を分光光度計分析処理プログラムを解して分析して、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップの吸収スペクトラムを測定した。
【0053】
実施例3:BIGH3蛋白質突然変異タイプの決定
アベリノ症を含んだ眼科疾患の原因となる蛋白質のBIGH3遺伝子(National Center for Biotechnology Information, NCBI accession no. NM_000358)突然変異診断用プローブを作製するために、プローブ作製に使われるBIGH3遺伝子突然変異部位を決めた。BIGH3遺伝子突然変異部位は、NCBI遺伝子関連データベースであるGenBankとOMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)を利用してDNA塩基配列とアミノ酸配列を分析及び確保し、各疾患対立形質(allele)に対する情報も確保した。診断チップの有効性をテストするために検索する突然変異タイプを先に決めた。BIGH3遺伝子突然変異多発領域の中で特にアベリノ症、ラティスタイプI疾患及びレイス・バックラースI疾患等を引き起こす突然変異領域を選択した(表1)。
【0054】
【表1】


【0055】
実施例4:重合酵素連鎖反応(PCR)による検索領域の獲得
表1に示した突然変異を全て検索するために、エクソン4、エクソン11、エクソン12、及びエクソン14領域を含む、5組のPCRプライマーを作製した。この中からエクソン4領域の突然変異領域を増幅するために2組のプライマーを使った。この中で一組(プライマー1及びプライマー2)は、診断用DNAチップ実験に適していると判断されるプライマー組で、他の一組(プライマー3とプライマー4)は、診断用として直接塩基配列分析用に作製したものである。この時、検索するDNAプローブと相補的な鎖のプライマー(リバースプライマー)の5'末端部分ヒドロキシル基(Hydroxyl residue)には蛍光物質を結合させた。チップ上で効果的なプライマー組が区分して分かるように、プライマー2にはCy5を結合させ、プライマー4にはCy3を結合させた。PCRは、50μL全反応体積を基準にし、血液から採取した10〜100ng程度のDNAを鋳型として、非対称増幅方法を行って、断片遺伝子を作製した。断片遺伝子は、フォワードプライマーとリバースプライマーの添加比を1:5〜1:10で差別化することによって、一回の重合酵素連鎖反応で獲得した。最初の変成は、98℃で5分間1回行って以後、二回目の変成は、94℃で1分間、アニーリングは55℃で1分間、伸長は72℃で1分間行い、これを35回繰り返した後、72℃で7分間最後の伸長を1回行った。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例5:BIGH3遺伝子突然変異診断のためプローブDNAの製造
表1に示した角膜ジストロフィーの突然変異を検索するために、突然変異が起きた塩基配列を中心にして、両側に5〜8個、最も好ましくは両側に7個の塩基配列が並ぶようにして、プローブを作製した。健常者に対するプローブは、作製された塩基配列に対し突然変異にならない正常塩基配列が中心となるようにした。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例6:プローブDNAの多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面への固定
実施例5で選別された各プローブDNAを核酸チップに適用するために合成した。モノヌクレオチド(Proligo Biochemie GmbH Hamburg Co.)を自動化合成器(ExpediteTM 8900、PE Biosystems Co.)に入れて、目的とするプローブDNAの塩基配列とスケールを入力して、各々0.05μmoleの純粋な核酸プローブDNAを取得した。取得されたプローブDNAは電気泳動を行って合成の有無を確認した。
図3は、前記のようにデザインされたプローブDNAを多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ表面に固定化する方法及びターゲットDNAを反応させて、相補的な結合を誘導する過程の概略図である。
前記製造されたプローブDNAを多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に固定させるために、カルボキシル基−アミン基の間の結合を利用した。DNAプローブを固定化するために、全てのDNA断片プローブを合成する際、3−1位にアミノリンカーカラム(Aminolinker column、Cruachem,Glasgrow,Scotland)を利用して、アミン基(amino residue)を有した塩基を挿入した。そして、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面は、1mMの4,4'−ジチオ二酪酸(DDA)を利用してカルボキシル基を有するSAM膜を形成した。次に、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に400mM EDCを添加して、この表面に導入されたカルボキシル基の活性化を行った後、55%以上の湿度が維持される条件で1時間以上カルボキシル−アミン結合させてプローブDNAを固定化した。この時、各プローブDNAは、10〜100μMの濃度で固定化した。
【0060】
実施例7:ターゲットDNAの長さに応じた核酸チップの機能性検査
実施例2で作製された多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常、アベリノ角膜ジストロフィー(ACD)、レイス・バックラース角膜変性症(RBCD)及びラティスタイプI角膜ジストロフィー(LCD)の各ターゲットDNAの長さに応じた核酸チップの検出効率を測定した。各プローブDNAは、15merを使って、核酸チップ表面に固定させ、各ターゲットDNAは、30、50、100、147、190、225merを使って、55%以上の湿度が維持される条件で6時間以上プローブDNAとターゲットDNAを反応させて、相補的な結合を誘導した。30merの各ターゲットDNAは合成して得られ、その他の各ターゲットDNAはPCR反応を介して得られた。
その結果、図4に示したように、各ターゲットDNAは、いずれも147merの時最も高い効率を示した。プローブDNAと結合する各ターゲットDNAの長さに応じた二次構造を予測プログラム(GeneBee,http://www.genebee.msu.su/services/rna2_reduced.html)でシュミレーションした試験の結果を図5に示した。ターゲットDNAの長さに応じた二次構造結果は、Greedy methodによって分析された構造である。その結果、図5に示したように、ターゲットDNAの長さが147merまでは、ターゲットDNA結合サイト(赤い楕円の部分)がプローブDNAの結合サイトと相補的な結合ができるが、190mer以上である時は相補的な結合が困難なことが分かる。従って、次の工程の実験では147mer長さの各ターゲットDNAを利用して行った。
【0061】
実施例8:ターゲットDNAの濃度に応じた核酸チップの機能性検査
実施例7と同様に実施例2によって作製された多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常、アベリノ角膜ジストロフィー(ACD)、レイス・バックラース角膜変性症(RBCD)及びラティスタイプI角膜ジストロフィー(LCD)の各ターゲットDNAの濃度に応じた核酸チップの検出効率を測定した。各ターゲットDNAの濃度は、1fM〜1μMの範囲で測定された。各プローブDNAは15merを使って、核酸チップ表面に固定させ、各ターゲットDNAは147merを使って、55%以上の湿度が維持される条件で6時間以上プローブDNAとターゲットDNAを反応させて、相補的な結合を誘導した。その結果、図6に示した実験結果のように、各ターゲットDNAはいずれも1pMという高感度分析が可能であることが確認され、1pM〜1μMの範囲内で直線関係が示された。従って、本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップは、低濃度の定量分析が可能であることが分かった。
【0062】
実施例9:患者診断への適用のための核酸チップのハイブリダイーゼーション結果
一つの点突然変異を選別的に検出できる効率的な角膜ジストロフィー診断用核酸チップを製造するために、実施例7及び実施例8と同様に、実施例2によって作製された多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常、ホモ接合タイプ及びヘテロ接合タイプの角膜ジストロフィーターゲットDNA(ACD、RBCD、LCD)に対する核酸チップの選択性検出効率を測定した。各ターゲットDNAの濃度は1μMにした。各プローブDNAは15merを使って、核酸チップ表面の各スポット地点に固定させ、各ターゲットDNAは147merを使って、55%以上の湿度が維持される条件で6時間以上反応させて、相補的な各ターゲットDNAとミスマッチする各ターゲットDNAの特異的な結合を測定した。
多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップを含むLSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーを利用して、正常及び各々のホモ接合タイプとヘテロ接合タイプの角膜ジストロフィーターゲットDNA(ACD、RBCD、LCD)に対する核酸チップの選択性検出効率を測定した結果を図7及び図8に示した。その結果、図7及び図8に示したように、全てのホモ接合タイプ及びヘテロ接合タイプの角膜ジストロフィーターゲットDNAに対して相補的な各ターゲットDNAとミスマッチする各ターゲットDNAが選別的に検出できた。従って、本発明の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップは、一つの核酸チップで多重検出及び選択的分析が可能であることが確認され、適用された全ての患者サンプルの場合、正確な診断が可能であることが分かった。
【産業上の利用の可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明の核酸チップによると、既存の金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップが有する長所を同様に有しているだけでなく、LSPR光学特性を利用して、視力矯正手術前に正確に診断されなければならないアベリノ症を含む角膜ジストロフィーを診断するためのBIGH3遺伝子突然変異の多重検出及び定量分析を提供できる。また、本発明の核酸チップは光源、検出器、分光光度計及びコンピュータ等の分析装置と共に構成することによって、LSPR光学特性基盤非標識光学バイオセンサーとして応用でき、オン−サイトモニターリングにも適用できる。
【0064】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法:
(a)基板(第一層)上に金属薄膜層(第二層)を形成する工程、
(b)前記金属薄膜層(第二層)に多重スポットを形成して前記多重スポットの各スポット表面にナノ構造体を一定間隔で配列してナノ構造層(第三層)を形成させる工程、
(c)前記ナノ構造層()に金属薄膜層を形成する工程、及び
(d)前記金属薄膜層(第四層)にプローブ核酸を固定する工程。
【請求項2】
前記金属薄膜層(第二層)は、真空蒸着器を利用して前記基板(第一層)上に薄膜形成されることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項3】
前記ナノ構造層(第三層)の多重スポットは、多孔性マスクを前記金属薄膜層(第二層)上に固定して形成させることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項4】
前記プローブ核酸は、複数のターゲット核酸を認識する複数のプローブ核酸であることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項5】
前記基板(第一層)は、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、シリコン及び石英からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項6】
前記基板(第一層)の厚さは、0.1〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項7】
前記金属薄膜層(第二層)及び前記金属薄膜層(第四層)は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項8】
前記金属薄膜層(第二層)及び前記金属薄膜層(第四層)の薄膜形成はスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気メッキ法、無電気メッキ法からなる群から選択される方法によって行うことを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項9】
前記ナノ構造体は、ナノ粒子、ナノドット、ナノアイランド、ナノロッド及びナノワイヤーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項10】
前記多孔性マスクの種類としては、ゴム平板、シリコン平板及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項11】
前記ナノ構造層を一定間隔で配列することは、金属薄膜層(第二層)の表面に4,4'−ジチオ二酪酸(DDA)を利用してカルボキシル基を有する自己組織化単分子膜(SAM)を形成し、ナノ構造体表面に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APTES)を利用して、アミン基を固定した後、SAM膜と前記アミン基を共有結合させて行うことを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項12】
前記プローブ核酸は、物理的吸着または化学結合によって固定化されることを特徴とする請求項1に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法で製造され、
(a)基板(第一層)、
(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、
(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されていて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されているナノ構造層(第三層)、
(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び
(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたプローブ核酸、
を含む多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ。
【請求項14】
前記プローブ核酸は、複数のターゲッ核酸を認識する複数のプローブ核酸であることを特徴とする請求項13に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列核酸チップ。
【請求項15】
請求項13に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップとターゲット核酸とを反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを特徴とするターゲット核酸の検出方法。
【請求項16】
(a)基板(第一層)、
(b)前記基板上に形成された金属薄膜層(第二層)、
(c)前記金属薄膜層上に多重スポットが形成されて、前記多重スポットの各スポット表面に一定間隔でナノ構造が配列されるナノ構造層(第三層)、
(d)前記ナノ構造層の表面に形成された金属薄膜層(第四層)、及び
(e)前記金属薄膜層(第四層)に固定されたBIGH3遺伝子突然変異検出用プローブ核酸、
を含む、多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ。
【請求項17】
BIGH3遺伝子突然変異検出用プローブは、配列番号11〜46からなるグループから選択された一つ以上の塩基配列を含有することを特徴とする請求項16に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ。
【請求項18】
請求項16に記載の多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップと臨床サンプルとを反応させた後、前記多重スポット金属蒸着型ナノ構造配列角膜ジストロフィー診断用核酸チップ表面に光を照射して、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の変化を分析することを含むBIGH3遺伝子突然変異の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−502215(P2013−502215A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525483(P2012−525483)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005452
【国際公開番号】WO2011/021846
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(502318478)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ (27)
【出願人】(511250242)アベリノ カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AVELLINO CO., LTD
【Fターム(参考)】