説明

多重チャンネル受信機システムと多重チャンネル受信機監視方法

多重チャンネル受信機システム(10)は、第1の複数の受信回路(12、14)と、アップコンバージョンミキサー(38)とを備え、各受信回路は、第2の複数の入力ラインの対応する1つに接続された第1の入力と、局部発振信号を提供するように構成された局部発振器(28)に接続された第2の入力と、第4の複数の出力信号の対応する1つを提供するように構成された出力とを有し、各入力ラインは、第3の複数の受信信号の対応する1つを提供するように構成され、アップコンバージョンミキサーは、基準信号(42)を受信する第1のミキサー入力(40)と、局部発振器に接続された第2のミキサー入力(44)と、第5の複数の方向性結合器(48、50)にアップコンバートされた基準信号を提供するミキサー出力(46)とを有し、第5の複数の方向性結合器の各方向性結合器は、第2の複数の入力ラインの対応する1つに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には受信機に関し、より具体的には、多重チャンネル受信機システム、多重チャンネル受信機監視方法、レーダーシステム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
多重チャンネル受信機システムをアンテナアレイとの通信に用いて、例えばレーダーシステムにフェーズドアレイを形成することにより、レーダーシステム自体の機械可動部を備えることなくビームステアリングが可能となり、自動車用途に使用することができる。
【0003】
多重チャンネル受信機システムの各受信パスにより、受信アンテナで受信した特定の信号に異なる絶対位相シフトを適用することができ、専用時間スロット内で繰り返される較正段階に、あるいは、専用較正段階を実施しない通常受信動作時に求めた較正値によって補正することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、本願の特許請求の範囲に記載するように、多重チャンネル受信機システム、多重チャンネル受信機監視方法、レーダーシステム、車両及びコンピュータプログラム製品を提供する。
【0005】
本発明の特定の実施形態は、従属クレームに明記する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこれらの態様及びこのほかの態様は、以下に記載する実施形態によって明確に明らかとなる。
本発明のこのほかの詳細、態様及び実施形態に関しては、単なる一例として、図面を参照して記載する。図面の要素は、簡単かつ明確に示し、必ずしも原寸に比例して縮小していない。異なる図面で符号が同じとなるものは、構成要素が同一又は類似のものであることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】多重チャンネル受信機システムの実施形態の一例を示す概略ブロック図である。
【図2】基準信号に結合された受信信号の電力スペクトルの一例を示す概略図である。
【図3】位相差と側波帯抑圧比との関係の一例を示す概略図である。
【図4】多重チャンネル受信機監視方法の実施形態の一例を示す概略フローチャートである。
【図5】多重チャンネル受信機システムを有するレーダーシステムを含む車両の実施形態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、この図は、多重チャンネル受信機システム10の実施形態の一例の概略ブロック図を示している。多重チャンネル受信機システム10は、第1の複数の受信回路12、14を含む。このような受信回路12、14のそれぞれは、第2の複数の入力ライン20、22の対応する1つに接続される第1の入力16、18を有し、各入力ライン20、22は、第3の複数の受信信号の対応する1つを提供するように配置される。受信回路12、14はそれぞれ、局部発振信号を提供するように配置される局部発振器28に接続される第2の入力24、26と、第4の複数の出力信号34、36の対応する1つを提供するように配置される出力30、32とを含む。また、多重チャンネル受信機システム10は、基準信号42を受信するための第1のミキサー入力40と、局部発振器28に接続される第2のミキサー入力44と、第5の複数の方向性結合器48、50にアップコンバートされた基準信号を提供するミキサー出力46とを有するアップコンバージョンミキサー38を含み、各方向性結合器48、50は、第2の複数の入力ライン20、22の対応する1つに接続される。
【0009】
入力ライン20、22は受信信号を伝送し得る。信号は、情報を保持する物理量の変化、例えば電磁波であってよい。信号は、例えば高周波信号でもよく、光信号でもよい。第2の複数の入力ライン20、22のそれぞれは、受信アンテナアレイの対応する受信アンテナ58、60に接続することができる。しかし、入力ライン20、22をアンテナの代わりに有線回線に接続してもよい。
【0010】
多重チャンネル受信機システムの実施形態を示す図1の実施例のシステムは、2チャンネル受信機システムであってよい。受信機システムが2より多い受信パスを含んでもよいことに留意する必要がある。
【0011】
受信信号は、高周波信号又はミリ波信号であってよく、例えば、キャリア信号で変調される。受信回路12、14は、信号変換器、例えば、ダウンコンバータ回路又はダウンコンバージョンミキサーであってよく、例えば、受信信号を復調して出力信号34、36を提供するためのものである。出力信号は、中間周波信号又はベースバンド低周波信号であってよい。アレイで受信した信号を変換するために、受信回路は、局部発振回路28から同じ局部発振信号を受信してもよい。
【0012】
例えば、図に示す多重チャンネル受信機システム10は、レーダー信号を使用してもよい。レーダーシステムの機械可動部の必要性を減らすためには、アンテナアレイにビームステアリングを適用してもよい。受信機システム10では、受信信号、例えば受信した高周波信号の相対位相を評価することによって、受信した放射パターンのメインローブの検出を達成することができる。例えば、角度分解能によって受信したレーダー信号の到来角(angle−of−arrival:AOA)の測定するために、アンテナアレイ58、60に接続される受信機システム10を使用してもよく、標的の角度位置が、アンテナにおける反射信号の到来時間から出力信号の相対位相差に変換され、ダウンコンバートされたベースバンド信号となりうる。
【0013】
受信信号間の相対位相差を測定してもよいが、全受信パス、すなわち、受信回路12、14と、アンテナ58、60に接続される入力ライン20、22とにより、位相シフトと振幅の変化とを特定の受信信号に適用してもよい。しかし、全受信パス又は全受信チャンネルに適用された位相シフトが既知である場合に、相対位相差を評価することが可能となる。例えばこれらの位相シフトは、例えば、製造ばらつき、ダイ組み立て又は使用期間にわたる経年変化によって生じる、使用される受信機ハードウェアの差に応じて変化する可能性がある。アップコンバージョンミキサーは、位相シフトを適用することもできるが、一様に受信パスに位相シフトを与えることもできることから、受信信号間の相対位相変化に影響を及ぼさない。また、基準信号に結合されたことによって引き起こされる可能性のある振幅変化に適用してもよい。
【0014】
位相差を正確に評価するために、特定のチャンネルに対する位相シフトの偏移を求めてもよく、これにより、受信機システム10の較正が可能となる。
アップコンバージョンミキサー38は、基準信号又は試験信号42を受信する変調回路であってよく、これらの信号は低周波超狭帯域信号であってよく、局部発振器28の信号は受信回路12、14と同じであってよい。アップコンバージョンミキサー38は、受信信号の周波数帯付近の周波数帯にアップコンバートされた基準信号を生成させるために、この両方の信号を混ぜることができる。しかし、アップコンバートされた基準信号の周波数が受信信号の周波数帯付近にある場合は、異なる局部発振信号を使用することができる。
【0015】
基準信号の周波数は、例えば、通常動作時にアンテナ58、60を介して受信した信号に干渉しないように選択することができる。
受信機システム10の入力ライン20、22の少なくともいくつかに接続される方向性結合器48、50は、アップコンバートされた基準信号を受信してもよく、この基準信号を特定の入力ライン20、22の受信信号に結合してもよい。そこで、結合され、アップコンバートされた基準信号を、アンテナ58、60で受信した信号とともにダウンコンバートしてもよく、あるいは、出力信号34、36に含まれるダウンコンバートされた基準信号の相対位相差を監視することによって、適用される位相シフトを精確に求めることが可能となることから、較正に使用可能な出力信号34、36の中に基準を付与することができる。出力信号の位相検出が可能となるように最小限の基準信号のエネルギーを選択してもよく、出力信号は、中間周波信号でありうる。
【0016】
記載した実施例に関して、方向性結合器48、50は、高周波方向性結合器(high−frequency directional coupler:HFC)であってよく、低損失方向性結合器と同様に受信機システムの通常受信動作を妨げないか、あるいは僅かに妨げる。例えば、低損失方向性結合器は、0.6dB以下の挿入損失を引き起こしうる。受信信号に基準信号を結合することによって、チャネル間分離は低下しない。
【0017】
信号混合によって、信号の上方側波帯スペクトル及び下方側波帯スペクトルを生成してもよい。アップコンバートされた両側波帯基準信号を受信信号に結合すると、受信パスによって適用される位相シフトに応じた振幅を有する受信機出力信号をダウンコンバートすることが可能となる。従って、アップコンバージョンミキサー38は単側波帯ミキサー、例えばハートレー変調回路でありうる。単側波帯(single−sideband:SSB)アップコンバージョンミキサー38は、上方側波帯又は下方側波帯を有するアップコンバートされた基準信号を生成することができる。
【0018】
例えば、出力信号又は中間周波信号xIF(t)は、xIF(t)=cos(ωLot)cos(ωreft)cos(ωLot+Φ)によって得ることができ、ωLoは、局部発振器の角振動数であり、ωrefは、基準信号周波数であり、tは、時間であり、Φは、受信回路又はダウンコンバージョンミキサー12、14によって適用される位相シフトである。例えば、下方側波帯を除去しない場合、この信号は、xIF(t)={(cos([ωLo+ωref]t)+cos([(ωLo−ωref]t)}cos(ωLot+Φ)によって得ることができる。SSBアップコンバージョンミキサー38は、片側の側波帯、例えば下方側波帯を除去することができ、xIF(t)=cos([2ωLo+ωref]t+Φ)+cos(ωreft−Φ)を与える。そこで、ローパスフィルタによって高周波スペクトル成分を除去してもよく、受信回路12、14は、出力信号xIF(t)=cos(ωreft−Φ)を与えることができ、位相シフトΦは、出力信号振幅を変調することなく出力信号の位相で保持される。
【0019】
また、図に示すように、アップコンバージョンミキサー38は、アップコンバートされた基準信号の局部発振信号を抑圧するように構成してもよい。すなわち、局部発振器28信号自体がアップコンバートされた基準信号の一部にならないように、自己混合を防ぐか、あるいは少なくとも減らしながら、局部発振信号は、基準信号を変調して周波数をシフトさせるために使用でき、これにより、ダウンコンバージョンして受信回路12、14の性能が低下した後に、受信回路12、14の出力信号の寄生成分を減らす。同じ理由から、受信回路12、14の第1の入力16、18におけるアップコンバートされた基準信号の信号電力は、受信回路12、14の1dB圧縮点(compression point)から最大10dB低下しうる。
【0020】
ここで、図2も参照すると、この図は、基準信号に結合された受信信号の電力スペクトルの一例の概略図を示している。この図は、dBm単位で測定した電力比P、すなわち、受信回路に関して、1ミリワットを基準として測定した電力と、出力中間周波数の周波数f(ヘルツで測定)とのデシベル(dB)単位の電力比を概略的に示している。アンテナで受信した信号に対応する信号のスペクトルは、最大帯域幅62を有しうる。アップコンバージョンミキサー38は、周波数値が第3の複数の受信信号の周波数範囲外となるアップコンバートされた基準信号を生成するように構成してもよい。これにより、アンテナ信号スペクトルに干渉することなく、アンテナ信号スペクトル付近に、出力信号の電力スペクトルの基準信号又は試験信号64を有することができる。
【0021】
例えば、アップコンバージョンミキサー38に印加される基準信号42は、外部で生成してもよい。あるいは、多重チャンネル受信機システム10は、局部発振器28に接続される周波数分割器入力と、第1のミキサー入力40に接続される周波数分割器出力とを有する周波数分割器回路(図示せず)を含んでもよい。周波数分割器は、例えば、周波数分割器チェーンとして実装してもよく、局部発振器28信号から低周波基準信号42を生成することができる。
【0022】
多重チャンネル受信機システム10は、モノリシック集積回路、例えば、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)として実装してもよい。製造ばらつきによる受信パスと、別個の回路の結合による信号干渉との間のハードウェアのばらつきを減らすことができることから、単一の多重チャンネル受信機金型を用いることによって受信パスによって適用される位相シフトを減少させることができる。
【0023】
基準信号の電力は、ミキサー38の圧縮点未満であってよく、ミキサーによって生じる歪みを防ぐ。ミキサー38の1dB圧縮点は、ミキサーのダイナミックレンジの上限閾値となりうる。ミキサーは、信号増幅器であってよい。例えば、基準信号の電力は、ミキサー38の1dB圧縮点から最大10dB低下しうる。
【0024】
ここで、図3を参照すると、この図は、位相差PDと側波帯抑圧比SSRとの関係の一例の概略図を示している。この図は、図1に示す2チャンネル受信機システムを対象としてもよく、例えば、受信回路12、14の双方が信号を受信することができ、それぞれが基準信号を含むものの、10°の差がある位相シフトを適用する。さらに、第1及び第2の受信回路12、14によって配信される第1及び第2の中間周波出力信号34、36の間の度単位の位相差PDは、アップコンバージョンミキサーによって得られるデシベル(dB)単位の側波帯抑圧比SSRの変化に対して示される。この図から、位相シフトが10°であれば、側波帯抑圧を40dBに回復できることがわかる。アップコンバージョンミキサーは、IQ位相変化、すなわち、基準信号の同相成分又は直角位相成分の位相変化を基準信号に適用するように構成してもよく、側波帯抑圧比SSRをさらに増大させることができる。
【0025】
再び図1を参照すると、図に示す多重チャンネル受信機システムは、ミキサー出力46に接続されるピーク検出回路52を含むことができる。ピーク検出回路52は、アップコンバートされた基準信号の最大出力を求めることができる。この基準電力を、受信回路12、14の出力信号34、36に含まれる基準信号の電力と比較する場合、特定の受信パスの利得は、特定の受信パスの利得と、自動利得較正との精密比較を考慮しながら求めることができる。すなわち、受信パス又はチャンネルに結合する前の基準信号の振幅を、受信パスの出力信号に含まれる基準信号の振幅に対応させることによって、変換利得の変化を取り除くか、あるいは少なくとも減らすことができる。
【0026】
位相監視は、例えば、多重チャンネル受信機システム10の外部処理装置、出力信号34、36を受信する処理装置によって実施してもよい。しかし、多重チャンネル受信機システム10は、第4の複数の出力信号34、36の少なくとも2つを受信し、少なくとも1つの位相差値を与えるように接続される位相監視モジュール54を含んでもよい。位相監視モジュール54は、受信パスによって適用される位相シフトを含む出力信号34、36の位相を求めることができる。しかし、基準信号、結果的には受信信号の相対位相シフトを求めることが可能となり、特定の受信パスの較正に使用することができる。この較正は、例えば、システム10の受信動作を中断したり、少なくとも妨げたりする可能性があり、監視プロセスとともに、較正モードのシステム10又は受信パスの切り換えることなく、通常動作時にインシチュで実施することができる。システム10の位相較正のために、システム10は、同じか、あるいは少なくとも極めて類似する位相シフトを受信信号に適用してもよく、これにより、異なる信号パスで受信した信号間の相対位相差又は位相変化の高分解能定量が可能となり、例えば、受信している信号のメインローブの到来角の精密測定が可能となる。
【0027】
多重チャンネル受信機システム10は、アップコンバートされた基準信号の電力に対応する値を受信するように、かつ、第4の複数の出力信号34、36の少なくとも1つを受信し、第4の複数の出力信号34、36の少なくとも1つの利得を提供するように接続される利得監視モジュール56を含んでもよい。利得監視モジュール56は、アップコンバートされた基準信号と受信機の出力信号34、36に含まれる基準信号部分との間の利得を求めるように構成してもよく、これにより、受信パスの利得変化と、受信パス間の利得変化とを検出して補正することができる。図1に示すように、システム10は、位相監視モジュール54と、利得監視モジュール56とを含んでもよく、これらは、位相利得監視モジュール又は回路54、56に組み込まれる。
【0028】
図4を参照すると、この図は、多重チャンネル受信機監視方法の実施形態の一例の概略フローチャートを示している。多重チャンネル受信機監視方法は、第3の複数の入力ラインの対応する1つに接続される第2の複数の受信回路の対応する1つに対応する第1の入力における第1の複数の受信信号のそれぞれを受信66し、アップコンバージョンミキサーの第1のミキサー入力で基準信号を受信68し、第2の複数の受信回路の対応する1つの対応する第2の入力と、アップコンバージョンミキサーの第2の入力とにおいて、局部発振信号を受信70し、アップコンバージョンミキサーの出力でアップコンバートされた基準信号を提供72し、第4の複数の方向性結合器を使用して、第1の複数の受信信号にアップコンバートされた基準信号を結合74し、第2の複数の受信回路の対応する1つの対応する出力で、第5の複数のダウンコンバートされた出力信号のそれぞれを提供76し、ダウンコンバートされた基準信号を含むダウンコンバートされた出力信号の少なくとも2つの位相差値を生成78し、位相差値間の位相変化を求める80ことを含んでもよい。
【0029】
記載する方法によって、多重チャンネル受信機監視方法の一部として記載する多重チャンネル受信機システムの利点及び特性を実装することができる。
多重チャンネル受信機監視方法は、位相利得監視方法であってよく、アップコンバートされた基準信号の電力に対応する値を受信し、第5の複数の出力信号の少なくとも1つを受信し、第5の複数の出力信号の少なくとも1つの利得値を生成することを含んでもよい。
【0030】
図5を参照すると、この図は、多重チャンネル受信機システム84を有するレーダーシステムを含む車両の実施形態の一例の概略図を示している。図に示すように、レーダーシステム84は、多重チャンネル受信機システム10を含んでもよく、上に記載する方法のステップを実行してもよい。レーダーシステム84は、例えば、77GHzレーダーチップセットによって実装してもよい。レーダーシステム84は、自動車レーダーシステムであってよい。例えば、レーダー技術は、適応走行制御(Adaptive Cruise Control:ACC)「長距離レーダー」などの道路安全用途に利用することができ、この長距離レーダーは、例えば、77GHzで動作することが可能である。これにより、車両は、前方の車体から車間距離を保つことができる。別の例として、レーダーは、例えば、24GHz、26GHz又は79GHzで動作する衝突防止「短距離レーダー」に使用してもよい。ここで、このレーダーは、運転者に差し迫る衝突を警告するためのシステムの一部となりうることから、回避行動を取ることが可能となる。衝突が避けられない場合には、同乗者などの負傷を抑えるために、例えば、ブレーキをかけたり、シートベルトにプリテンションをかけたりするなどによって、車両はその備えをする。記載するシステムは、その他の周波数範囲の用途、例えば他のミリ波(例えば、122GHzで動作)用途に、2〜3例挙げると、例えば60GHzで動作し、IEEE802.15規格を採用するワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)通信用途に、あるいは、車−車間アドホックネットワーク通信用途などに利用してもよいことに留意する必要がある。
【0031】
車両82は、上に記載するレーダーシステム84又は多重チャンネル受信機システム10を含んでもよい。車両82は、自動車であってよい、しかし、飛行機、ヘリコプター、船舶などの自動推進装置であってもよい。
【0032】
さらに、コンピュータプログラム製品は、プログラム可能な装置で動作する場合、方法のステップを実行するため、あるいは、上に記載する多重チャンネル受信機システムの部分を実装するためのコード部分を含んでもよい。例えば、本発明は、コンピュータシステムで動作するためのコンピュータプログラムに少なくとも部分的に実装してもよく、コンピュータシステムなどのプログラム可能な装置で動作する場合、本発明による方法のステップを実行するためのコード部分を少なくとも含むか、あるいは、プログラム可能な装置に本発明による装置又はシステムの機能を実行させることが可能である。例えば、コンピュータプログラムは、コンピュータシステムで実行するように設計されるサブルーチン、関数、プロシージャ、オブジェクト指向法、オブジェクト指向実装、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共有ライブラリ/ダイナミックロードライブラリ及び/又は他の命令シーケンスの1又は複数を含むことができる。コンピュータプログラムは、CD−ROM又はディスケットなどのデータ記憶媒体で提供してもよく、コンピュータシステムのメモリにロード可能なデータが格納され、データは、コンピュータプログラムを表現する。さらに、データ記憶媒体は、電話線接続又は無線接続などのデータ接続であってよい。
【0033】
上の記載では、本発明の実施形態の特定の実施例を参照して、本発明を説明する。しかし、本願の特許請求の範囲に明記する本発明の広範な技術思想及び範囲から逸脱することなく、さまざま改変及び変更を行うことができることは明白であろう。例えば、接続は、例えば媒介装置を介して、個々のノード、装置又はデバイスから、あるいは、これらに信号を転送するのに適したあらゆる種類の接続であってよい。従って、他に示唆及び記載がないかぎり、例えば、接続は、直接接続又は間接接続となりうる。
【0034】
本発明を実施する装置が、ほとんどの場合、当業者に周知の電子部品及び回路で構成されることから、本発明に関する基本的概念を理解し、認識するために、かつ、本発明の教示から不明瞭とならないために、あるいは、逸脱しないために、回路の詳細は、上に示すように、必要であると考えられる以上に詳しく説明しないものとする。
【0035】
上記の実施形態のいくつかは、規定通りに、さまざまな異なるシステムを用いて実施することができる。例えば、図1及びその説明では、典型的なシステムに関して記載するが、この典型的なシステムは、本発明のさまざまな態様に関して検討する際の有用な参照を与えるために示すにすぎない。記載内容は、説明目的のために簡略化しており、本発明に従って用いることが可能な多くのさまざまな種類の適切な構成のうちの1つであるのは言うまでもない。当業者は、論理ブロック間の境界が説明目的にすぎず、別の実施形態によって論理ブロックを組み合わせるか、あるいは、さまざまな論理ブロックの機能を分割して別の組み合わせに再構成してもよいことを認識するであろう。
【0036】
従って、本願明細書に示す構成は、典型例にすぎず、実際には、同じ機能を達成する他の多くの構成を実施可能であることが理解される。抽象的であるものの明確な意味では、同じ機能を達成する構成部品のあらゆる配置を効果的に「関連付ける」ことによって、所望の機能が達成される。従って、構成又は中間構成要素にかかわらず、特定の機能を達成するように組み合わされる本願明細書に記載のあらゆる2つの構成部品を互いに「関連付ける」ことによって、所望の機能が達成されると言える。さらに、関連性の深いあらゆる2つの構成部品は、所望の機能を達成するために、互いに「動作可能に接続」又は「動作可能に結合」されると見なされる。
【0037】
さらに、当業者は、上に記載する動作間の機能的境界が説明目的にすぎないことを認識するであろう。複数動作の機能を単一動作に組み合わせてもよく、及び/又は、単一動作の機能を他の動作に割り振ってもよい。さらに、別の実施形態は、特定の動作の複数の例を含んでもよく、他のさまざまな実施形態では、動作の順序を変更してもよい。
【0038】
また、本発明は、非プログラム可能なハードウェアに実装される物理デバイス又は物理装置に限定されず、好適なプログラムコードに従って動作することによって、所望の装置の機能を実行できるプログラム可能なデバイス又は装置に適用することもできる。例えば、プログラム可能な装置は、マイクロプロセッサ、中央演算処理ユニット、グラフィックスプロセッサ、コプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、組み込みプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、ステートマシン実装装置、マイクロコントローラユニット(MCU)から成る群の1又は複数の処理デバイス又は処理装置を含んでもよい。
【0039】
さらに、デバイスは、多くの装置に物理的に分散させてもよいが、単一のデバイスとして機能的に動作する。例えば、一実施形態では、多重チャンネル受信機システム10は、局部発振器モジュールを含んでもよい。別の実施形態では、受信機システム10に接続されている発振器から局部発振信号を受信してもよい。別の実施例としては、監視モジュール54、56は、システム10の一部であってよく、例えばコンピュータシステムであるプログラム可能な装置に少なくとも部分的に含めてもよい。コンピュータシステムは、独立した計算能力を1又は複数のユーザーに与えるように設計可能な情報処理システムである。コンピュータシステムは、メインフレーム、ミニコンピュータ、サーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、電子手帳、携帯情報端末、コンピュータゲーム、自動推進システム及び他の組み込みシステム、携帯電話及び他のさまざまなワイヤレス機器を含む多くの形態で存在してもよいが、これらに限定されない。例えば、システム10又はその部分は、物理回路のソフト表現もしくはコード表現又は物理回路に変換可能な論理表現のソフト表現もしくはコード表現であってよい。同じように、システム10は、あらゆる適切な種類のハードウェア記述言語に組み込んでもよい。
【0040】
しかし、ほかに改変、変形及び代替を行うことも可能である。従って、本願明細書及び添付の図面は、制限的意味よりむしろ説明目的であると見なされる。
請求項で示す括弧内の符号はいずれも、特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。「備える」という用語は、本願の特許請求の範囲にも記載され、他の要素やステップの存在を除外しない。さらに、本願明細書に使用される不定冠詞は、1又は1より多いと定義する。また、請求項に記載する「少なくとも1つ」及び「1又は複数」などの導入表現を使用することは、同じ請求項に「1又は複数」又は「少なくとも1つ」の導入表現及び不定冠詞を含んでいる場合でも、不定冠詞で別の請求項要素を導入することによって、このように導入された請求項要素を含むあらゆる特定の請求項を、このような要素を1つのみ含む発明に限定するという意味であるとは解釈するべきでない。定冠詞の使用にも同じことが言える。他に記載がないかぎり、「第1」及び「第2」などの用語は、このような用語が示す要素を任意に区別するために使用する。従って、これらの用語は、このような要素の時間優先順位又は他の優先順位を示すことを必ずしも意図していない。特定の測定値が互いに異なる請求項に記載されるというのみでは、これらの測定値の組み合わせを有利に利用できないことを示すものではない。
【0041】
本発明の原理を、特定の装置との接続において上に記載しているが、この記載は、一例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして示すものではないことが明確に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重チャンネル受信機システム(10)であって、
第1の複数の受信回路(12、14)と、アップコンバージョンミキサー(38)とを備え、
前記第1の複数の受信回路(12、14)の各受信回路は、
第2の複数の入力ライン(20、22)の対応する1つに接続された第1の入力(16、18)であって、前記第2の複数の入力ラインの各入力ラインは、第3の複数の受信信号の対応する1つを提供するように構成されている、前記第1の入力と、
局部発振信号を提供するように構成された局部発振器(28)に接続された第2の入力(24、26)と、
第4の複数の出力信号(34、36)の対応する1つを提供するように構成された出力(30、32)と
を有し、
前記アップコンバージョンミキサー(38)は、
基準信号(42)を受信する第1のミキサー入力(40)と、
前記局部発振器に接続された第2のミキサー入力(44)と、
第5の複数の方向性結合器(48、50)にアップコンバートされた基準信号を提供するミキサー出力(46)であって、第5の複数の方向性結合器の各方向性結合器は、前記第2の複数の入力ラインの対応する1つに接続されている、前記ミキサー出力と
を有する、多重チャンネル受信機システム(10)。
【請求項2】
前記アップコンバージョンミキサーは、単側波帯ミキサーである、請求項1に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項3】
前記アップコンバージョンミキサーは、前記アップコンバートされた基準信号中の前記局部発振信号を抑圧するように構成されている、請求項1又は2に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項4】
前記アップコンバージョンミキサーは、前記第3の複数の受信信号の周波数範囲外の周波数値を有する前記アップコンバートされた基準信号を生成するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項5】
前記局部発振器に接続された周波数分割器入力と、前記第1のミキサー入力に接続された周波数分割器出力とを有する周波数分割器回路を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項6】
前記基準信号の電力が、前記ミキサーの圧縮点未満である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項7】
前記多重チャンネル受信機システムは、モノリシック集積回路として実装される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項8】
前記ミキサー出力に接続されたピーク検出回路(52)を備える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項9】
前記第4の複数の出力信号のうちの少なくとも2つを受信し、少なくとも1つの位相差値を提供するように接続された位相監視モジュール(54)を備える、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項10】
前記アップコンバートされた基準信号の電力に対応する値を受信し、前記第4の複数の出力信号のうちの少なくとも1つを受信し、前記第4の複数の出力信号の前記少なくとも1つの利得値を提供するように接続された利得監視モジュール(56)を備える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム。
【請求項11】
多重チャンネル受信機監視方法であって、
第3の複数の入力ラインの対応する1つに接続された第2の複数の受信回路の対応する1つの対応する第1の入力における第1の複数の受信信号の各々を受信すること(66)、
アップコンバージョンミキサーの第1のミキサー入力で基準信号を受信すること(68)、
前記第2の複数の受信回路の対応する1つの対応する第2の入力と、前記アップコンバージョンミキサーの第2の入力とにおいて、局部発振信号を受信すること(70)、
前記アップコンバージョンミキサーの出力において、アップコンバートされた基準信号を提供すること(72)、
第4の複数の方向性結合器を使用して、前記第1の複数の受信信号に前記アップコンバートされた基準信号を結合すること(74)、
前記第2の複数の受信回路の対応する1つの対応する出力で、第5の複数のダウンコンバートされた出力信号の各々を提供すること(76)、
前記ダウンコンバートされた基準信号を含むダウンコンバートされた出力信号のうちの少なくとも2つの位相差値を生成すること(78)、
前記位相差値間の位相変化を求めること(80)
を含む、多重チャンネル受信機監視方法。
【請求項12】
前記アップコンバートされた基準信号の電力に対応する値を受信すること、
前記第5の複数の出力信号のうちの少なくとも1つを受信すること、
前記第5の複数の出力信号の前記少なくとも1つの利得値を生成すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム(10)を備えるか、又は請求項11もしくは12に記載の方法のステップを実行するレーダーシステム(84)。
【請求項14】
請求項13に記載のレーダーシステム(84)か、又は請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システム(10)を備える車両(82)。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の方法のステップを実行するか、又はプログラム可能な装置で実行する場合に請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多重チャンネル受信機システムの部分を実装するためのコード部分を含む、コンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−532311(P2012−532311A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516876(P2012−516876)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052803
【国際公開番号】WO2011/001206
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】