説明

多重ホログラフィー

【課題】開口選択性によって重複するホログラムを識別する。
【解決手段】多重ホログラムの再生に使用される読出光線内に開口を使用することによって選択性が空間多重化によって実現可能な選択性を超えて増加され、重複する画像の識別が可能になる。この“開口方式”は、x−方向のブラッグ選択性に依存するシフトホログラフィーにおいて、y−方向識別のために利用するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィーに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィーは、1948年における開発の発端以来大きな魅惑を持ち続けている。参照光線との干渉による画像の記録および再生というホログラフィーの概念は、当初から、技術者の興味を刺激してきた。これが有する非常に大きな記憶容量のために、これはすぐにデジタルデータの蓄積用として考えられるようになった。両者は、実用的な高密度モノクロ光源として機能するレーザの導入によって勢いづけられることとなった。
【0003】
容量を大きくしたいという願望から、すぐに、多重化が考えられるようになった。媒体内に記録された、連続して位置されたホログラム間の識別を行なうための多くの手段が提供されている。角度多重化は、参照光線の入射角の差に基づいて識別する。これに関しては、D.L.Staebler、et al.、“Multiple storage and erasure of fiexed holograms in Fe-doped LiNbO”、Appl.Phys.Lett.、vol.26、no.4、p.183、(1975)を参照されたい。別の方法として、多重化されたホログラム間の識別は、波長に基づいて行なうこともできる。これに関しては、G.A.Rakuljic and V.Leyva、OPTICS LETTS.、vol.17、no.20、p.1471、(1992)を参照されたい。
【0004】
“ペリストロフィック多重化(peristrophic multiplexing)”においては、媒体が光線の交差によって定義される軸の回りを回転され、これによって同一ボリューム内に連続して位置されたホログラムの角度識別が達成される。ここでは、パッキング密度は信号の帯域幅に依存する。これに関しては、Optics Letters、vol.19、no.13、pp.993、994、July 1994を参照されたい。もう一つのプロセスにおいては、“フラクタルサンプリング”グリッドによって、ここでも同一ボリューム内の多重化が達成される。ここでは、ホログラムは縮退方向(degenerate direction)に格納され、角度間隔は信号の帯域幅に依存する。これに関しては、J.Appl.Phys.、vol.65、no.6、pp.2191-2194、March 1989を参照されたい。
【0005】
同一の媒体ボリュームを使用する代わりとしての“空間多重化”においては、連続したホログラムが媒体の異なる領域内に記録される。この方法においては、密度がホログラムのサイズと大きな重複を回避する必要性によって制限される。
【0006】
“ボリュームホログラフィー(volume holography)”は厚い記録媒体を使用する。厚い寸法が角度変化並びに波長変化を、ブラッグ選択性に翻訳するために必須である。 Opt Spectrosc.(USSR)vol.47、no.5、November 1979、 pp.530-535においてA.P.Yakimovichは、通常の平面波の代わりに、球状の参照光線を使用することに言及し、ブラッグ選択性について計算している。ここでも重複する画像を識別する問題が存在することは言うまでもない。
【0007】
“シフトホログラフィー(shift holography)”が、1995 OSA Conference on Optical ComputingにおけるA.Puらの議論の中に見られる。これに関しては、会議議事録、Technical Digest Series、vol.10、pp.219-221を参照されたい。これは、x−y配列の連続して位置されたホログラムのパッキング密度を向上させる。媒体を“x−方向”、つまり、グレーティング方向にシフトすることによって生成される重複するホログラムは、一次ブラッグ選択性によって識別される。グレーティングをこれが媒体に対して斜めの平面上に横たわるように傾斜させることによって、二次ブラッグ選択性をy−方向における選択のために使用することもできる。報告される密度は、素晴らしいものであるが、ただし、これは、薄い(8mm)記録媒体を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、記録媒体の進歩はそれほどでない。Puらによって報告される結果は支えなしに置かれた結晶を使用する。コストおよび製造面から考えると、支持された有機材料層を代わりに使用する方が有利である。現時点では、許容できる層状媒体は、たかだか百ないし数百μmの厚さを持つのみである。要求される8mmあるいはそれ以上の層状媒体が入手できるようになるまでにはしばらく時間がかかることが見込まれる。さらに、実用的な厚い媒体の開発に向けられている研究は、有機ポリマー材料に集中している。これら材料は、記録ステップの際に収縮する傾向を持つ。収縮は媒体の平面内においては粘着性のサポートによって防ぐことができるが、厚さ方向においては重大である。これは、z−方向二次ブラッグ選択性が使用される場合、異なる信号位置との干渉によって生成されるグレーティングが異なる傾斜角を与え、結果としてx−成分が一様でなくなるという理由から、一つの大きな問題である。これに関しては、Optical Engin.vol.32、no.8、pps.1839-1847(1993)を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ブラッグ選択性が不十分であるような場合に、再生光線内に位置される“開口選択性(aperture selectivity)”を使用して、重複するホログラムを識別することが可能である。シフトホログラフィーに対して使用された場合、開口選択性(アパーチャライゼーション)は、ブラッグ選択性が縮退するあるいは不十分であるときの、y−方向識別のためのブラッグ選択性に対する補強手段となり得る。ブラッグ選択性が厚さによって制限されるような薄い記録媒体に対しては、開口選択性をブラッグ選択性の完全な代替として使用することが可能である。
【0010】
一例として、単一の開口が使用される。好ましくは、これは、画像ホログラフィーに対しては、フーリエ平面上に位置され、フーリエホログラフィーに対しては画像平面上に位置される。開口が使用される方向での再生光線のサイズおよび形状と同一の(サイズおよび形状の)開口が使用された場合、その方向における選択性が、空間多重化による選択性と比較して一桁改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<概要>
従来の技術によるシフトホログラフィーの説明において使用される用語が、可能な範囲で、本発明による改良された手続きの説明においても使用される。従来の技術によるシフトホログラフィーにおいては、入力信号と参照光線によって、記録媒体に対して直角である“入射平面(plane of incidence)”が定義される。第一のホログラムを記録した後に、媒体が、光線との関係で、ステップ方式にて、走査方向に沿ってシフトされる。ここで、走査方向は、入射平面と媒体表面が交差する線によって定義される。一連の重複するホログラムが記録された後に、媒体が、媒体の平面内の走査方向に対して直角な方向にステップされ、その後、この手続きが反復される。走査方向は、“x−方向”と呼ばれ:ステップ方向は、“y−方向”と呼ばれる。
【0012】
従来の技術によるシフトホログラフィーにおいては、y−方向の選択は、比較的弱い二次ブラッグ効果に基づいて行なわれる。y方向における弱い選択性は、厚い記録媒体を使用することによって補償される。報告されている研究においては、媒体は、支え無しで置かれた結晶であり、参照光線と信号光線が直交結晶表面内に導入される。公開の図面によると、平坦な表面の媒体や、層状の媒体も代替として使用できることが示唆されるが、これらも、バルク結晶の場合と同様に、引き続いて、斜角グレーティング(グレーティング内のz−軸成分)に依存する。
【0013】
本発明は、シフトホログラフィーの改良として説明すると理解しやすい。原理的には、一つの修正のみが必要とされる。本発明においては、開口(aperture)の使用によって、検出される再生画像を限定するために読み出し光線のサイズが制限される。参照光線がy−成分を持たない、つまり、球状ではなく、同一平面内の円柱波あるいは複数の平面波から成る場合は、y−成分を導入することが必要である。実験によって、入り参照光線内に制限のための開口を使用することによって、y−成分が十分に導入できることが発見された。
【0014】
本発明の命題、一般的に述べると、現時点で使用が見込まれる媒体の厚さに対しては、ブラッグ選択性が、y−方向においては不十分である、つまり、二次ブラッグ選択性が小さすぎて使用できないということである。このために、本発明による構造は、y−方向選択性を、ブラッグ選択性の代わりとして、開口の使用に依存する。上記の説明は、当初の原型構造:つまり、a)媒体に直角な入射平面の使用;およびb)参照光線と信号光線との間で定義されるx−z平面成分の角度を、媒体の所で、媒体に直角の線によって二分すること(θを二つの等しい半分の角度に分割すること)を、否定するものではないことに注意する。以下の説明においては、入射平面が媒体に対して直角であること、つまり、この方向における相対的に小さな二次ブラッグ選択性が、十分でないことを想定する。この想定は、薄い媒体、つまり、2mmあるいはそれ以下の厚さの媒体に対しては、事実、妥当なものである。二次ブラッグ選択性の大きさは、将来予想される形状を持つこれよりも厚い媒体が使用された場合でも、小さすぎると思われる。実験によると、同一の半分の角度が使用された場合、つまり、参照光線と信号光線が媒体表面から直角方向から測定されたとき同一の入射角を持つとき、良好なノイズ性能が達成され、従って、二次ブラッグ選択性に対して要求されるz−方向要件を小さくすることができることが示される。
【0015】
以下の説明は、主として、直線状の配列(x−およびy−両方向に伸びる重複するホログラムと、重複するホログラムの重複する列を有する配列)に関してなされる。ここで使用される装置は、ホログラムの第一の列を記録するために、平坦な記録媒体を光線に対して直線的に、ステップ方式にて移動させ、記録が終了すると、次の列の位置にステップする。ただし、媒体とホログラム位置の相対移動を提供するための他の構成、例えば、異なる半径を持つ円形の列(媒体)と、回転を考えることも可能である。
【0016】
<発明の原理>
当初の用途としては、従来の技術によるシフトホログラフィーに対する補助として使用されることが見込まれる。この場合は、ブラッグ選択性が、引き続いて、シフト方向の識別に対する基礎とされる。x−方向は、同時に出願された合衆国特許出願第5,703,705号(1997年12月30日出願)(ケース3−7)において開示される“傾斜シフトホログラフィー(tilt shift holography )”においては、シフト方向と一致するものとして議論される。x−方向に対して開口を使用することも有効ではあるが、ここでの説明においては、このことには触れられない。つまり、x−方向に関しては、(傾斜を持つ場合も、持たない場合も)設計要件は同一である。
【0017】
開口の機能は、要求される再生に対して要求される光線のみが通過できるように通路を制限することにある。理想的には、オンプレーンホログラム(on-plane hologram )に対しては、開口は、光学平面上に位置され、再生信号光線の形状およびサイズと厳密に一致する形状およびサイズが使用される。フーリエ変換ホログラムに対しては、画像平面フィルタによってパッキング密度の最大の改善が得られる。画像ホログラフィーの場合は、フーリエ平面上の開口フィルタが最良の結果を与える。ブラッグ選択がx−方向における動作機構である場合は、開口のx−方向の寸法は、本発明に関しては重要ではない。原理的には、開口は、不定長のスリットであり得る。ただし、この方向に制限を加えることによって、これは望ましくない光をブロックすることもできる。
【0018】
<装置>
図1の装置が開口(方式)の基準を開発するために使用された。この特定の実施例においては、球状の参照光線が使用された。この光線は、y−成分を導入し、y−方向の開口フィルタリングを達成するのに十分な、多様な入射角を記録媒体13内に持つようにされた。完全に入射平面内に横たわる参照光線を使用するもう一つの実験的研究においては(ここでも同時に申請された特許出願の入射平面の外側のシフト方向は無視される)、y−成分が、制限開口30を使用して導入された(光線の制限および付随するエッジ回折が点線によって示される)。
【0019】
y−方向にモーメントを持つ(y−方向の成分を持つ)参照光線が球状のレンズ10によって生成された。レンズの焦点12が、記録媒体13から距離dの所に位置され、媒体内に参照光線のスポット14が生成された。スポットのサイズは、信号光線のスポットをカバーするのに十分な面積を持つようにされた。信号光線15は、空間光変調器26の照射によって生成された。この変調器によって、個々のホログラムが実験の目的が達成されるように制御された。透明陽画26のフーリエ変換がレンズ列17、18、19によってスポット14内に生成された。これらレンズは全て4F構成にされた(17−26および19−14の間隔は焦点距離に等しくされ、17−18および18−19の間隔はレンズペアの焦点距離の和に等しくされた)。4F構成されたレンズ20、21、22による読み出しの結果として、検出器23上に再生画像が得られた。
【0020】
開口方式は、開口を、再生光線、この例においては、検出器23上に現われる光線のサイズを制限するためのフィルタとして使用することに依存する。この方式は、開口のサイズ/形状並びに位置に関する実験を通じて確立される。たった一つの開口、つまり、開口29が、(それぞれ、画像ホログラフィー、あるいはフーリエ変換ホログラフィーに対して)フーリエ平面、あるいは画像平面の所に使用されたときに最適な結果が得られた。上のように位置される場合、開口のサイズは、関連する方向においてのみ、変換/画像光線の寸法と一致することが要求される。本明細書の様々な所で使用されている“開口”という用語は、必ずしも、1個の開口を持つ独立なプレートを意味するものではない。同等の制限を追加の要素、あるいは追加の要素との組合せにて含蓄的に達成することも可能である。一例として、検出器、例えば、CCD検出器23を、この目的に合致する小さなサイズに設計することも可能である。
【0021】
装置のバリエーションとして、報告されている実験的研究において使用されているものを含めて色々なものが考えられるが、これらは、従来の技術に従う。例えば、各シリーズのレンズ17−19および20−22内の一つのレンズを除去し、残りのレンズを4F構成に配列し、これを画像を記録するための代替として使用した場合でも、引き続いて、検出器上に再生画像を得ることが可能である。フーリエ平面に置かれた開口マスクから成るフィルタ25は、O次回折の通過のみを許す。空間光変調器26の後ろ、あるいは信号光線の画像平面27の所にランダム位相拡散器を配置することにより、フーリエ変換をにじませ、結果として記録の忠実度を向上させることも可能である。他のレンズ構成も、画像の記録と、フーリエ記録の両方に対して周知である。
【0022】
<X−方向の選択性>
本発明によるプロセスは、引き続いて、シフト方向においては、ブラッグ選択性に依存する。以下においては、この値が、シフト方向、x−方向の一致(x-direction coinciding)、および垂直入射平面に対して考察された。全てが入射平面内に横たわる有限数の平面波から成る参照光線を使用して、ブラッグ選択性がx−方向に制限された。(ここでは、二次ブラッグ選択性に関する複雑な考慮は無視し、参照光線と信号光線が媒体に直角な線に対して同一の角度を作るものと想定される。この単純化は、媒体が、十分な二次ブラッグ選択性を期待するには薄すぎる場合、例えば、この例において使用されるような条件、例えば、500μm以下の厚さを持つ場合には、正当化できるものである)。重複するホログラムの列をy−方向に識別ことはできなかった。円柱状の光線は、無限の平面波から成る光線と等価であり、この場合でも、引き続いて、y−選択性に欠けることが示された。この説明の目的に対しては、x−方向選択性は、本質的に、変動されなかった。この特定の例において使用された球状の参照光線に対するブラッグ選択性は、近似的に以下のように定義できる:
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、全ての量は、参照光線に関するものであり、これらは以下のように定義される:
λ=記録媒体の外側の波長(真空波長として近似される)
d=焦点から記録媒体までの距離
L=記録媒体の厚さ
θ=媒体の表面の所で測定されたときの参照光線と信号光線との間の全角
NA=レンズの開口数
【0025】
例1
記録媒体はx−カットされた2mmの厚さのFeドープされたLiNbO から製造された。図1のレンズ構成が使用され、記録されるホログラムとして、フーリエ変換が試みられた。式1と関連して以下の値が用いられた:
θ=75゜
λ=514nm
L=2mm
d 4mm
レンズ20−F/2.0、200mm焦点長
レンズ10−F/2.83、80mm焦点長
【0026】
空間光変調器26は640×480の画素から構成された。信号光線がフーリエ平面にてフィルタ25によってフィルタされ、0次の回折のみがパスされた。再生光線内に開口制限は使用されなかった。x−方向選択性は、約4μmであった。
y−方向選択は、約3mmの記録スポットサイズに等しい空間多重化によった。
【0027】
図2は、例1において記録された単一ホログラムに対する回折強度を示し、開口なしに生成されたホログラムを表す(ここでも、二次ブラッグ選択性は無視できるものと想定された)。強度がx−方向およびy−方向内の位置に従って、μmの単位にてプロットされた。原点(x=0、y=0)は、ホログラムが記録された位置を示す。y−方向における半最大値の所の全幅は約4μmであった。y−方向には選択性が存在しないことがわかった。
【0028】
<開口選択を使用してのy−方向選択性の改善>
例1においては、媒体を(光線に対して)y−方向にスポットサイズに等しい距離だけ十分にステップ(“空間的に多重化”)するために、シフトすることが必要である。本発明は、開口方式によって望ましくない再生をブロックすることを教示する。球状波参照光線と、フーリエ変換ホログラフィーとの組合せに対しては、これは、画像平面フィルタによって達成することができる。画像平面における信号光線と同一のサイズおよび形状の最適フィルタが使用された場合のy−選択性は概ね以下によって定義される:
【数2】

ここで、
p=y−方向における画像サイズ
=レンズ20(再生光線内の記録媒体の次に来るレンズ)の焦点長
d=記録媒体からの参照光線焦点の距離
【0029】
例2
例1が、今回は、画像平面上に開口フィルタが用いられたことを除いて、反復された。この開口は、1cmのスリット幅を持つスリット形状にされ、概ね長方形の画像のy−寸法pと整合された。x−選択性は、変化なく約4μmであった。y−選択性は約200μmであった。従って、再生画像を(開口方式にて)フィルタリングすることによって、y−選択性の一桁の改善が達成されたこととなる。
【0030】
図3は、開口が使用されたときの測定回折効率を示す。x−方向選択性は、半最大値の所で約3.9μmに維持された。一方、y−方向選択性は、今回は、約200μmとなり、これは、図2からの計算と一致するものである。
【0031】
例3
例1の条件がホログラムの配列(アレイ)を記録するために使用された。各々が100個の重複するホログラムから成る11個の列が、δx 35μmだけ離された。列間の間隔は、δy 250μmとされた。x−間隔は、僅かなx−間隔であっても発生するノイズをできるだけ押さえるために、小数以下第9桁までゼロ(ninth null)となるようにされた。y−方向の間隔は、望ましくない再生の回避を保証するのに十分な値にされた。結果として、開口方式は、パッキング密度を約一桁改善させた。
【0032】
<x−方向における開口選択性>
厚い記録媒体を使用する殆どの条件下においては、ブラッグ選択性がx−方向における選択動作のために使用される。薄い媒体、つまり、上の例で想定される100μm以下の媒体に対しては、光線と整合するサイズおよび形状を持つ平面上の開口(beam-conforming on-plane apertur)の使用によって幾らかの改善が得られる。この態様は、概ね一様の厚い媒体が入手できるようになるまでは、大きな意味を持つ。ここで使用されるx−方向における開口選択性は、式2に従う値を持つ(ここで、pはx−方向の画像サイズである)。
【0033】
<複製>
多くの見込まれる用途は、ホログラフィック配列の“マスタ”のコピーを作成することを必要とする。この問題は、非多重ホログラムに対しては既に解決されている。Handbook of Optical Holography、Academic Press 1979、at pp.373-377において、様々な技法が説明されている。“再生によるコピー(copying by reconstruction)”と呼ばれる一つの方法においては、まず最初に画像が再生され、続いて、新たなホログラムが記録される。この方法は、厚いホログラムにも薄いホログラムにも使用することができ、また、多重ホログラムに対しても使用されている。多重ホログラムに対しては、通常の単一の照射源が使用される場合は、“一度に1つづつ”、再生、コピーすることが必要である。ただし、この制約は、複数の互いにコヒーレントな光源を使用して克服することができる。これに関しては、Optics Letters、vol.17、no.9、pp.676-678、1992を参照されたい。
【0034】
この再生によるコピー方式は、本発明においても使用することができる。この方式が使用される場合は、この新規の手続きの後に、個々のホログラム複製ステップとは独立して、多重ステッピングが使用される。つまり、媒体および/あるいは光線が、逐次記録の間に、ステッピングされる。
【0035】
x−、y−両方向に開口が使用される手続き上のバリエーション、つまり、“x−y開口方式多重化”は、ユニークな機会を提供する。ここでは、選択がブラッグ選択性に依存しないために、厚い媒体に対する要件は存在しない。この結果として得られる二次元配列は、これら全体を単一のステップ(あるいは一連のステップ)にて複製することができる。この場合は、非多重二次元リリーフ位相ホログラムに対して以前から使用されているスタンピングおよびエンボシングが可能になる。この形式のホログラムは、情報が、単一のフリー表面上のトポロジーの変動の形式にて表され、開口シフト多重化を使用することが可能である。複製はマスタの形成とは独立されるため、最初のホログラフィックフィルム画像をこのステップの際に表面ホログラムに変換することが可能である。
【0036】
x−y開口多重化によって生成される二次元ホログラム配列は、非ホログラフィック画像再生に対して使用される任意の手続きを使用して複製することができる。これらには、写真技術において使用される手続きも含まれる。一般的に、写真媒体と類似する媒体を使用するホログラフィック処理は、ブリーチングという追加のステップを伴う。これに関しては、Holography Handbook、Ross Books、 Berkeley、CA、pp.56,57、1993を参照されたい。ブリーチングは、振幅画像を位相画像、例えば、現像されたフィルム画像に変換することであるとみなすことができる。この位相画像は、マトリックス上の元素状の銀の粒子から構成され、強度の変動をその存在の唯一の記録として留め、あとは無色にされる。多重複製の形式が、非変換の、ブリーチングされてないマスタを使用して遂行され、多重振幅ホログラムの記録の後に、最終的なブリーチングステップが導入される。
【0037】
二次元配列の複製には、他の可能性も考えられる。ここでは、選択並びに再生のために必要とされる情報を含む全ての関連する情報が厚さに独立であるために、複製は、波長に致命的に依存することがない。アレイの全体あるいは一部分を新たな媒体の化学線特性に合致する波長を使用して再生することができる。通常は、マスタリングおよび再生の際に使用されるよりも短い波長が使用される。
【0038】
<用途>
本発明による進歩は、大きなサービス機会を提供する。現在ユーザの所有するホログラフィック配列は、料金を払って、選択的にアクセスできるようにすることができる。類似する従来の技術による例としてCD ROMがある。つまり、ここでは、内容が幾つかの部分に分割され、個々の区分が、指定されたソフトウエアあるいはデータを含み、特定の部分へのアクセスは、対応するアクセスコードによって承諾される。これに関しては、CD-ROM Librarian、vol7、no.4、pp.16-21、April 1992を参照されたい。幾つかの状況においては、ホログラムの配列がローカルユーザの所に維持され、全体へのアクセスが、初期販売の部分として、無料あるいは加入によって承諾される。
【0039】
殆どの用途において、ホログラム/多重記録は、初期の供給の役割のみを持つ。本発明による方法は、このような“読み出し専用”の用途に対しても有効である。他の用途として、持続するデータベースの生成の場合のように、“一度の書込(write once)”として使用することも考えられる。さらに、“読み出し−書込み(read-write)に対する設備も二次元媒体にて動作する実現によって進展される。
【0040】
<バリエーション>
実施者は、上に明示された条件に従うことを選択することもできる。開口方式においては、説明されたように、信号光線と形状およびサイズが合致する平面上の開口(on-plane aperture)の使用によって最適な結果が得られる。画像ホログラフィーが使用される場合は、整合開口(comforming aperture)にて選択性上の同等の結果が達成できる。平面から外れる開口(off-plane aperturing)は、有効ではあるが、(平面開口ホログラムに対する選択性と)同一の選択性を達成することはできない。つまり、選択性を一つあるいはそれ以上の追加の開口によって保証することが要求される。オフ平面ホログラフィーに対する最適条件は、決定されなかったが、これも実験的に決定することが可能である。
【0041】
従来の技術によるシフトホログラフィーと同様に、媒体に対する光線の移動、あるいは光線および媒体両者の移動は、媒体の移動と等価である。“相対的な”移動という言及は、これら全てのバリエーションを包含することを意図する。
【0042】
上記の説明は、記録媒体と光線の相対的な移動との関連で行なわれたが、説明の特定の装置は、媒体を機械的に移動されるものであった。ただし、多くの見込まれる用途に於いては、固定された媒体と移動する光線との組合せが効果的であり、より迅速なアクセスが達成される。このような光線の舵取りによって、固定光線と移動媒体に対する条件を再現することが可能である。このような装置、単純な線形ステッピングに対する代替を促進することを期待される。
【0043】
A.P.Yakimovichは、Opt Spectrosc.(USSR)vol.47、no.5、November 1979、pp.530-533において、球状の参照光線および厚い媒体に対するz−方向選択性に対するモデルを提唱する。実験では、このメカニズムに基づいてz−方向における多重化が可能であることが示された。ただし、現時点では、パッキング密度は、たかだ一桁である。この方法は、x−、およびx−方向多重化の代替としては不十分であるが、ただし、本発明の手続きと組合せて使用することは可能である。
【0044】
この方法は、非平坦な媒体、つまり、円柱その他の幾何学的形状の媒体に適用することができる。x−y開口方式にて生成される二次元配列に対しては、マスタおよび/あるいは複製にフレキシブルな媒体を使用することが有利である。この配列の二次元特性のために、巻かれたフィルムおよびテープ上への記録が可能となる。
【0045】
本発明の多重化方法は、これら特定の形式に限られるものではなく、記録は、反射ホログラフィーに基づくことも、信号を媒体上に画像としてとどめることも、あるいは、ホログラムを信号のフーリエ平面と画像平面の中間の平面上に記録することも可能である。
【0046】
<相対的な移動>
従来の技術によるシフトホログラフィーは、連続するホログラムを部分的に重複して記録するという概念に依存する。一般的に、連続するホログラムの大部分は、同一のボリュームを占拠し、新鮮なボリュームを占拠する部分が“シフト”によって定義される。同一の概念が本発明の少なくとも一つの好ましい実施例において用いられる。記録動作においてこれを達成するためには、参照領域付近の光線の入射位置が再生の際に媒体と相対的に移動されることが必要である。これと類似する相対的な移動が信号読み出し光線に対しても行なわれ、この場合は、入射位置がアクセスされるべきホログラムの位置によって決定される。
【0047】
相対的な移動は、媒体の移動によって、あるいは光線の移動によって達成することができる。(光源および全光学要素の移動による)光線全体の移動の代わりに、光線の移動は、様々な形式の“光線舵取り(beam steering)”の様式を取ることが可能であり、この場合は、舵取りされる光線と関連する光学トレインの一部分のみが、物理的な移動、追加の要素の導入などによって変化される。特許請求の範囲の中で使用される“媒体と光線を互いに相対的に移動させる”という表現は、これら全てのバリエーションを含むことを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施に適当な装置の線図である。
【図2】開口を使用しない場合の単一ホログラムの回折密度を示す図である。
【図3】単一の最適な開口を使用した場合の単一ホログラムの回折密度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極めて薄い媒体に記録された部分的に重複する個々のホログラムの配列内に含まれる個々のホログラムを再生する処理を含むシフトホログラフィー用のプロセスであって、該配列がx方向に横たわるものとして規定される部分的に重複するホログラムの列から成り、これらの列がy方向に配列され、該プロセスは読み出し光線による照射処理を含む、各個々のホログラムを位置決めするために、読み出し光線と媒体とを互いに相対的に移動させることによりこの読み出し光線を次々と位置づけるようになっており、これによって次々と位置づけられる再生画像光線が生成され、該読み出し光線と該再生画像光線とが“読み出し平面”を規定するようになっているシフトホログラフィー用のプロセスにおいて、
該読み出し光線は、y方向成分を持っており、そこで、該y方向において該光線サイズに概ね等しい開口を有する要素が該再生画像光線中に挿入されて、該再生画像光線の通路を制限するようにし、これにより該y方向における選択性を改善するとともに、x方向の選択性をブラッグ選択性に依存させるようにしたことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該開口が光学平面上に位置するプロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスにおいて、
該光学平面が画像平面であり、また該ホログラムがフーリエ変換であるプロセス。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該媒体の厚さが100μm以下であるプロセス。
【請求項5】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該配列が、円形であり、該配列が、ホログラムが列内および列と列の間の双方と重複しているような複数の同心円形から成るものであるプロセス。
【請求項6】
部分的に重複するホログラムから成るホログラフィー配列を複製するためのプロセスであって、
該配列内のホログラムが、請求項4に記載のプロセスによって再生され、および該配列がホログラフィーで用いられるスタンピング、エンボシングおよび他の手段からなるグループから選択される手段により複製されるようになっているプロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該読み出し光線が球形光線であるプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該要素が、開口が設けられた分離したプレートであるプロセス。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
該y方向成分が、該読み出し光線の通路を制限するための開口を有する要素を該読み出し光線中に挿入することによって導入されるものであるプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−77109(P2008−77109A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307288(P2007−307288)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【分割の表示】特願平8−111042の分割
【原出願日】平成8年5月2日(1996.5.2)
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【Fターム(参考)】