説明

多重化装置

【課題】通信事業者回線側で障害が発生した場合に、自営網回線側に伝えることができ、通信事業者回線と自営網回線とが混在したシステムを構築した場合に、網同期装置を使用可能な多重化装置を提供する。
【解決手段】通信事業者回線と自営網回線とに接続され、通信事業者回線から回線障害を示す信号1を受信すると、アラーム情報を出力する監視部4と、監視部からアラーム情報を受信すると、自営網回線に接続されたインタフェース部9にアラーム情報を転送するアラーム情報転送部13と、アラーム情報転送部からアラーム情報を受信して、自営網回線に接続されたインタフェース部のフレーマー7に出力信号を閉塞するように制御するアラーム制御部15とを備える多重化装置100。TTC標準JT−I.431aに準拠した通信事業者回線、及びITV−TG.703に準拠した自営網回線に対応可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重化装置に関し、特に、通信事業者回線と自営網回線との間に配置され、自営網回線側に網同期装置を備えたシステム等に用いられる多重化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多重化装置は、各チャンネルからの信号を多重化し、伝送路インタフェースのフレーマーでフレームを付加して伝送路に送出する。一方、伝送路から受信した信号は、伝送路インタフェースのフレーマーでフレームを外し、各チャンネル(以下、適宜「CH]という)に分離する。
【0003】
従来の多重化装置は、例えば、図3に示すように、多重化装置16Aの伝送路インタフェース17Aが受信信号に異常があることを検出すると「受信断」を表示し、前段の装置からの回線障害を示すAIS(Alarm indication signal)信号(オール“1”)を検出すると「AIS受信」を表示する。伝送路の障害情報は、伝送路インタフェース17Aで終端され、アラーム表示するとともに、各CHのデータをAIS信号(オール“1”)に変換して送出する。アラーム監視部4Aは、伝送路アラーム監視区間21で発生した異常をアラームとして表示する。
【0004】
また、通信事業者回線と自営網回線とを中継接続する場合には、図4に示すように、通信事業者回線22(「TTC標準JT−I.431a」に準拠等)の伝送路インタフェース17Aを有する多重化装置16Aと、自営網回線23(「ITV−TG.703」に準拠等)の伝送路インタフェース17Bを有する多重化装置16Bとを、各チャンネル20を挟んで相対向させて接続してインタフェース変換をする必要がある。
【0005】
ここで、伝送路の障害情報は、伝送路インタフェース17Aで終端されるため、通信事業者回線22の伝送路アラーム監視区間21で障害が発生した場合には、単にオール“1”の信号として各CH20で中継される。従って、自営網回線23にはオール“1”の信号が送出されるため、自営網回線23側で通信事業者回線22側の障害を知ることはできない。
【0006】
さらに、通信事業者回線22側の伝送路で回線断が発生した場合には、図4及び図5に示すように、伝送路インタフェース17Bでは、信号がオール“0”として認識される。また、前段からの障害発生を示すAIS信号を受信すると、伝送路インタフェース17Bでは信号がオール“1”として認識される。このように、いずれの場合もフレームビット“F”が異常となるため、伝送路インタフェース17Bは、回線異常を検知することができる。しかし、自営網回線23側には、フレームビット“F”は正常で、データがオール“1”となる信号が送出されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術においては、図4に示す通信事業者回線22側で障害が発生した場合には、伝送路インタフェース部17Aで終端してアラームを表示し、自営網回線23側は、新たにフレームの組まれた正常な信号のみを中継するため、自営網回線23側に、回線異常等の障害が発生したことを通知することができないという問題があった。
【0008】
また、通信事業者回線22と自営網回線23とが混在したシステムを構築し、自営網回線23側に網同期装置を設置して通信事業者回線22からのクロックに自営網を従属させる構成の場合には、本来であれば、通信事業者回線22側に障害が発生したことを検知して網同期装置を自走させなければならないが、従来の多重化装置では、自営網回線23側に障害が転送されないため、網同期装置が自走せず、そのまま不安定な多重化装置に従属し続けてしまうため、網同期装置を使用することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、通信事業者回線側で障害が発生した場合に、その旨自営網回線側に伝達することができるとともに、通信事業者回線と自営網回線とが混在したシステムを構築した場合に、網同期装置を使用することができる多重化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、通信事業者回線と自営網回線とに接続される多重化装置であって、前記通信事業者回線から回線障害を示す信号を受信すると、アラーム情報を出力する監視部と、該監視部からアラーム情報を受信すると、前記自営網回線に接続されたインタフェース部に該アラーム情報を転送するアラーム情報転送部と、該アラーム情報転送部から該アラーム情報を受信して、前記自営網回線に接続されたインタフェース部のフレーマーに出力信号を閉塞するように制御するアラーム制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、通信事業者回線から回線障害を示す信号を受信した場合に、自営網回線に接続されたインタフェース部のフレーマーからの出力信号を閉塞するようにしたため、通信事業者回線側で障害が発生したことを自営網回線に伝えることができる。これに加え、通信事業者回線側に障害が発生した場合、自営網回線側の出力を閉塞させるため、その配下の通信装置が回線異常を検知することが可能となり、通信事業者回線と自営網回線が混在したシステムを構築した場合に、確実に網同期装置を自走させることができるため、網同期装置を使用して自営網の同期を通信事業者回線に従属させることができる。
【0012】
前記多重化装置において、前記通信事業者回線を、TTC標準JT−I.431aに準拠するものとすることができ、前記自営網回線を、ITV−TG.703に準拠するものとすることができる。また、前記フレーマーから出力される信号を、2進オール1信号とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、通信事業者回線側で障害が発生した場合に、自営網回線側に伝達することができ、通信事業者回線と自営網回線とが混在したシステムにおいて、網同期装置を使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかる多重化装置の一実施の形態を示し、この多重化装置100は、通信事業者回線からの入出力信号1を終端するI.431aフレーマー2と、I.431aフレーマー2で受信した信号からクロックを抽出して内部クロックとするクロック受信部3と、I.431aフレーマー2で回線障害を検知した場合にアラームを送出するアラーム監視部4とで構成されるI.431aインタフェース部5と、自営網回線からの入出力信号6を終端するG.703フレーマー7と、自営網回線への出力信号を内部クロックに同期させるクロック変換部8により構成されるG.703インタフェース部9と、I.431aインタフェース部5及びG.703インタフェース部9を接続して、チャンネルの組み換えなどを行うクロスコネクト部10と、各部を監視制御する共通部11と、各部に電源を供給する電源部12とを備え、さらに、アラーム監視部4において通信事業者回線の障害をG.703インタフェース部9に伝えるアラーム情報転送部13と、アラーム情報転送部13から回線障害情報を受けて自営網に対する出力を閉塞する機能を有するアラーム制御部15とを備え、図3に示した従来の多重化装置に、アラーム情報転送部13とアラーム制御部15とを追加したことを特徴とする。
【0016】
次に、上記構成を有する多重化装置100の動作について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
この多重化装置100は、通信事業者回線と自営網回線に接続され、通信事業者回線から自営網回線に信号を変換するために使用される。通信事業者回線からオール“1”又はオール“0”の信号1、あるいはフレームビットの異常等の回線障害を示す信号1を受信した場合には、I.431aフレーマー2でこれを検知して、アラーム監視部4でアラーム信号を発する。
【0018】
アラーム監視部4は、アラーム信号を発すると同時に、アラーム情報転送部13にもアラーム情報を出力する。アラーム情報転送部13は、自営網に接続されたG.703インタフェース部9のアラーム制御部15にアラーム情報を転送する。アラーム制御部15は、アラーム情報の転送を受けると、G.703フレーマー7に出力信号を閉塞(オール“1”)するように制御する。これにより、G.703フレーマー7は、信号の伝送を停止し、出力信号を閉塞(オール“1”)する。
【0019】
図2に、自営網回線への出力信号6のフレーム構成を示す。I.431aインタフェース部5で回線障害を検知し、G.703インタフェース部9の出力信号を閉塞する場合には、すべてのビットがオール“1”となり、自営網へ回線障害を通知する。
【0020】
通信事業者回線からの入力信号1が正常に戻った場合には、I.431aフレーマー2で検知していたアラームが解消され、アラーム監視部4からのアラーム信号も停止する。これに伴い、アラーム情報転送部13経由でG.703インタフェース部9のアラーム制御部15に転送されていたアラーム情報も停止する。
【0021】
尚、アラーム制御部15は、手動スイッチにより、制御を受けた時に出力信号を閉塞(オール“1”)するか否かを選択できるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明にかかる多重化装置は、自営網と通信事業者網とが混在した通信システムに利用することができる。特に、自営網内に網同期装置を有し、通信事業者網からクロックを抽出してこれに網同期装置を従属させるシステムにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる多重化装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の多重化装置のG.703フレームの構成図である。
【図3】従来の多重化装置の一例を示す全体構成図である。
【図4】従来の多重化装置によって通信事業者回線と自営網回線とを中継接続する場合の一例を示す構成図である。
【図5】伝送路で障害が発生した場合に従来の多重化装置で送受される信号の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
100 多重化装置
1 通信事業者回線からの入出力信号
2 I.431aフレーマー
3 クロック受信部
4 アラーム監視部
5 I.431aインタフェース部
6 自営網回線からの入出力信号
7 G.703フレーマー
8 クロック変換部
9 G.703インタフェース部
10 クロスコネクト部
11 共通部
12 電源部
13 アラーム情報転送部
14 回線障害情報
15 アラーム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信事業者回線と自営網回線とに接続される多重化装置であって、
前記通信事業者回線から回線障害を示す信号を受信すると、アラーム情報を出力する監視部と、
該監視部からアラーム情報を受信すると、前記自営網回線に接続されたインタフェース部に該アラーム情報を転送するアラーム情報転送部と、
該アラーム情報転送部から該アラーム情報を受信して、前記自営網回線に接続されたインタフェース部のフレーマーに出力信号を閉塞するように制御するアラーム制御部とを備えることを特徴とする多重化装置。
【請求項2】
前記通信事業者回線は、TTC標準JT−I.431aに準拠することを特徴とする請求項1に記載の多重化装置。
【請求項3】
前記自営網回線は、ITV−TG.703に準拠することを特徴とする請求項1又は2に記載の多重化装置。
【請求項4】
前記フレーマーから出力される信号は、2進オール1信号であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多重化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−318603(P2007−318603A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147931(P2006−147931)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】