説明

多関節型ロボット

【課題】占有空間の縮小を図りつつ、先端部を上下に直進運動させる多関節型ロボットを得ること。
【解決手段】多関節型ロボット50は、第1回転軸13aで回転可能とされた第1アーム21と、第1アームに沿って移動するスライド部6と、スライド部に第2回転軸13bで連結された第1リンク部3と、第1リンク部に第3回転軸13cで連結された第1先端部10と、第1アームと第4回転軸13dで連結され、第1リンク部に第5回転軸13eで連結された第2リンク部4と、を備え、第2回転軸は、第1回転軸および第1アームの延びる方向と略垂直に設けられ、第4回転軸は、第2回転軸と第3回転軸との略中央に設けられ、第5回転軸は、スライド部の移動する延長線上に位置し、第4回転軸と第5回転軸との距離は、第2回転軸と第3回転軸との距離の略半分の距離とされ、第3,4,5回転軸は、第2回転軸と略平行に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節型ロボットに関し、特にその先端の直動伸縮機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多関節型ロボットには、アームの先端部に設けられたメカニカルインターフェース(メカニカルI/F)を上下に直進運動させる機構を備えるものがある。例えば、アームに回転可能に設けられたボールネジナットと、ボールネジナットと組み合わされて上下に延びるボースネジスプラインシャフトとを備え、ボールネジナットを回転駆動させることで、ボースネジスプラインシャフトの先端に設けられたメカニカルI/Fを直動させる。また、特許文献1には、リンク構造とメカニカルI/Fとリンクとの間に直動案内機構を設けることにより、メカニカルI/Fとアームとの平行を保ちながら、上下運動を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−39758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の多関節型ロボットの直動伸縮機構では、メカニカルI/Fの位置を高くすると、ボールネジスプラインのシャフトの上端や直動案内機構の位置も高くなるため、ボールネジスプラインのシャフトの上端などが上方に突出してしまう場合がある。ボールネジスプラインのシャフトの上端などが上方に突出することで、多関節形ロボットの占有空間が大きくなる。そのため、周辺装置や建物構造との干渉を避けて多関節型ロボットを円滑に動作させるために大きなスペースが必要となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、占有空間の縮小を図りつつ、先端部を上下に直進運動させることのできる多関節型ロボットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1回転軸を中心に回転可能とされた第1アームと、第1アームに設けられて、第1アームの伸びる方向と略平行にスライド移動するスライド部と、スライド部に第2回転軸を中心として回転可能に一端側で連結された第1リンク部と、第1リンク部の他端側に第3回転軸を中心として回転可能に連結された第1先端部と、第1アームと第4回転軸を中心として回転可能に連結され、第1リンク部に第5回転軸を中心として回転可能に連結された第2リンク部と、を備え、第2回転軸は、第1回転軸および第1アームの延びる方向と略垂直な方向に延びるように設けられ、第3回転軸は、第2回転軸と略平行に設けられ、第4回転軸は、第2回転軸と略平行に設けられるとともに、第2回転軸と第3回転軸との略中央部分に設けられ、第5回転軸は、スライド部のスライド移動する延長線上に位置するとともに、第2回転軸と略平行に設けられ、第4回転軸と第5回転軸との距離は、第2回転軸と第3回転軸との距離の略半分の距離とされ、スライド部が第5回転軸に近接するように移動すると第1先端部が第1アーム側に直線移動し、スライド部が第5回転軸から離間するように移動すると第1先端部が第1アームから離間する側に直線移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、占有空間の縮小を図りつつ、先端部を上下に直進運動させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる多関節型ロボットの概略構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す多関節型ロボットにおいて、第1メカニカルI/Fおよび第2メカニカルI/Fを上方に移動させた状態を示す図である。
【図3】図3は、比較例としての多関節型ロボットの概略構成を示す図である。
【図4】図4は、図3に示す多関節型ロボットにおいて、先端部を上方に移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態にかかる多関節型ロボットを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる多関節型ロボットの概略構成を示す図である。多関節型ロボット50は、支持筐体20、第2アーム22、第1アーム21、第1リンク部3、第2リンク部4、第1メカニカルI/F(第1先端部)10、第2メカニカルI/F(第2先端部)11、補助リンク部12などの複数の機械的要素を備えて構成される。多関節型ロボット50は、これら複数の機械的要素が互いに回転可能に連結されて、先端部である第1メカニカルI/F10を上下に直進運動させる。
【0011】
支持筐体20は、建物構造などに固定されて、上述した各機械的要素を支持する。なお、以下の説明において、支持筐体20が水平な固定面に固定された状態を例に挙げて説明する。したがって、支持筐体20を鉛直な固定面に固定した場合など、固定面の状態に応じて、以下の説明で用いる「上」、「下」などの方向は変化する。支持筐体20の天面には、第9回転軸13iを中心として回転可能に第2アーム22が連結されている。第9回転軸13iは、鉛直方向に延びる軸である。
【0012】
第2アーム22は、支持筐体20との連結箇所から水平に延びる形状を呈している。第2アーム22のうち、支持筐体20に連結された一端側の反対側となる他端側には、第1回転軸13aを中心として回転可能に第1アーム21が連結されている。第1回転軸13aは、第9回転軸13iと平行、すなわち鉛直方向に延びる軸である。
【0013】
第1アーム21は、第2アーム22の下側に連結される。第1アーム21は、第2アーム22との連結箇所から水平に延びる形状を呈している。第1アーム21は、第1回転軸13aを中心に360度回転させても、支持筐体20に衝突しない長さに形成されている。第1アーム21には、自身の延びる方向と平行に延びるようにボールネジ軸5が設けられている。
【0014】
ボールネジ軸5は、第1アーム21に設けられたモータ8に駆動されることで回転する。ボールネジ軸5の一端に設けられたタイミングプーリ7aと、モータ8の回転軸に設けられたタイミングプーリ7bとがタイミングベルト7cを介して連結されることで、モータ8の駆動力をボールネジ軸5に伝えることができる。
【0015】
ボールネジ軸5には、ボールネジナット(スライド部)6が組み合わされている。ボールネジ軸5が回転することで、ボールネジナット6はボールネジ軸5に沿って水平に移動する。ボールネジナット6には、第2回転軸13bを中心として回転可能に第1リンク部3が連結される。
【0016】
第1リンク部3は、ボールネジナット6から下方に垂れ下がるように連結される。第2回転軸13bは、第1回転軸13aおよびボールネジ軸5の延びる方向と略垂直に延びる軸である。すなわち、図1において、第2回転軸13bは紙面に対して奥行き方向に延びる軸となっている。
【0017】
第1リンク部3のうち、ボールネジナット6に連結された一端側の反対側となる他端側には、第3回転軸13cを中心として回転可能に第1メカニカルI/F10が連結されている。第3回転軸13cは、第2回転軸13bと略平行に延びる軸である。
【0018】
第1リンク部3には、第4回転軸13dを中心として回転可能に第2リンク部4が連結される。第4回転軸13dは、第2回転軸13bと略平行に延びる軸である。第1リンク部3と第2リンク部4とを連結する第4回転軸13dは、第2回転軸13bと第3回転軸13cとの略中央部分に設けられる。
【0019】
第2リンク部4のうち、第1リンク部3に連結された一端側の反対側となる他端側は、第5回転軸13eを中心として回転可能に第1アーム21に連結される。第5回転軸13eは、第2回転軸13bと略平行に延びる軸である。第2リンク部4と第1アーム21とを連結する第5回転軸13eは、ボールネジナット6が移動する延長線上に設けられる。
【0020】
また、第4回転軸13dと第5回転軸13eとの間の距離が、第2回転軸13bと第3回転軸13cとの間の距離の略半分の距離となるように、第5回転軸13eの位置が定められる。これにより、第4回転軸13dと第5回転軸13eとの間の距離と、第4回転軸13dと第2回転軸13bとの距離とが等しくなる。
【0021】
第1メカニカルI/F10の上側にはモータ9が取り付けられる。また、第1メカニカルI/F10の下側には第2メカニカルI/F11が設けられる。モータ9の回転軸は、第2メカニカルI/F11に連結されている。モータ9が駆動することで、第8回転軸13hを中心として第2メカニカルI/F11が回転する。
【0022】
第1メカニカルI/Fや第2メカニカルI/Fには、多関節型ロボット50の作業目的に合わせて様々なアタッチメントを取り付けることが可能である。例えば、多関節型ロボット50に対象物を移動させる場合には、対象物を把持するためのハンドを取り付けることができる。第2メカニカルI/F11が回転可能に取り付けられているので、ハンドなどのアタッチメントも回転させることができる。
【0023】
さらに、第1メカニカルI/F10とボールネジナット6とを連結する補助リンク部12が設けられる。補助リンク部12は、第1リンク部3と略平行に設けられる。補助リンク部12は、第6回転軸13fを中心として回転可能にボールネジナット6に連結される。第6回転軸13fは、第2回転軸13bと略平行に延びる軸である。
【0024】
補助リンク部12は、第7回転軸13gを中心として回転可能に第1メカニカルI/F10に連結される。第7回転軸13gは、第2回転軸13bと略平行に延びる軸である。また、第6回転軸13fと第7回転軸13gとの間の距離は、第2回転軸13bと第3回転軸13cとの間の距離と略等しい。
【0025】
以上説明した多関節型ロボット50の構造によれば、モータ8を駆動してボールネジ軸5を回転させ、ボールネジナット6を第1アーム21の延びる方向に沿って移動させれば、第1メカニカルI/F10および第2メカニカルI/F11を上下に直進移動させることができる。
【0026】
図2は、図1に示す多関節型ロボット50において、第1メカニカルI/F10および第2メカニカルI/F11を上方に移動させた状態を示す図である。ボールネジナット6が第1アーム21の延びる方向に沿って移動すれば、第1メカニカルI/F10および第2メカニカルI/F11が上下に直進移動するので、図2に示すように、メカニカルI/F10,11を上方に移動させた場合であっても、第1アーム21より上方に機械要素を突出させずに済む。これにより、多関節型ロボット50の占有空間の縮小化を図ることができる。
【0027】
また、補助リンク部12が、第1リンク部3と略平行に設けられ、第6回転軸13fと第7回転軸13gとの間の距離が、第2回転軸13bと第3回転軸13cとの間の距離と略等しくされているので、第1メカニカルI/F10および第2メカニカルI/F11の姿勢を変化させずに上下に直進移動させることができる。具体的には、第8回転軸13hと第1回転軸13aとの平行を保ったまま、メカニカルI/F10,11を上下に直進移動させることができる。
【0028】
また、メカニカルI/F10,11の位置に関わらず、第1リンク部3などの機械要素が第1アーム21よりも上方に突出しないので、本実施の形態のように第1アーム21を第2アーム22の下方に連結すれば、第1アーム21の回転位置に関わらず、機械要素と第2アーム22が接触するのを防ぐことができる。また、第1アーム21を支持筐体20に到達しない長さに形成すれば、メカニカルI/F10,11の位置に関わらず第1アーム21を360度回転させることができる。
【0029】
図3は、比較例としての多関節型ロボットの概略構成を示す図である。図4は、図3に示す多関節型ロボットにおいて、先端部を上方に移動させた状態を示す図である。比較例としての多関節型ロボット100は、図3に示すように、ボールネジ軸55を鉛直に延びるように設けている。そして、ボールネジ軸55に組み合わされたボールネジナット56を回転させることで、ボールネジ軸55の先端に設けた先端部60を上下させる構成となっている。
【0030】
比較例としての多関節型ロボット100では、図4に示すように、先端部60を上方に移動させた場合に、ボールネジ軸55が第1アーム71よりも上方に突出してしまい、多関節型ロボット100の占有面積の縮小化を図ることが難しい。
【0031】
また、第1アーム71を第2アーム72の下側に連結した場合であっても、上方に突出する可能性のある機械要素(ボールネジ軸55)と第2アーム72が衝突しないように、先端部60の位置を気にしながら第1アーム71を回転させなければならず、その制御が煩雑になってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる多関節型ロボットは、先端部を上下に直進移動させる多関節型ロボットに有用である。
【符号の説明】
【0033】
3 第1リンク部
4 第2リンク部
5 ボールネジ軸
6 ボールネジナット
7a タイミングプーリ
7b タイミングプーリ
7c タイミングベルト
8 モータ
9 モータ
10 第1メカニカルI/F(第1先端部)
11 第2メカニカルI/F(第2先端部)
12 補助リンク部
13a 第1回転軸
13b 第2回転軸
13c 第3回転軸
13d 第4回転軸
13e 第5回転軸
13f 第6回転軸
13g 第7回転軸
13h 第8回転軸
13i 第9回転軸
20 支持筐体
21 第1アーム
22 第2アーム
50 多関節型ロボット
55 ボールネジ軸
56 ボールネジナット
60 先端部
71 第1アーム
72 第2アーム
100 多関節型ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転可能とされた第1アームと、
前記第1アームに設けられて、前記第1アームの伸びる方向と略平行にスライド移動するスライド部と、
前記スライド部に第2回転軸を中心として回転可能に一端側で連結された第1リンク部と、
前記第1リンク部の他端側に第3回転軸を中心として回転可能に連結された第1先端部と、
前記第1アームと第4回転軸を中心として回転可能に連結され、前記第1リンク部に第5回転軸を中心として回転可能に連結された第2リンク部と、を備え、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸および前記第1アームの延びる方向と略垂直な方向に延びるように設けられ、
前記第3回転軸は、前記第2回転軸と略平行に設けられ、
前記第4回転軸は、前記第2回転軸と略平行に設けられるとともに、前記第2回転軸と前記第3回転軸との略中央部分に設けられ、
前記第5回転軸は、前記スライド部のスライド移動する延長線上に位置するとともに、前記第2回転軸と略平行に設けられ、
前記第4回転軸と前記第5回転軸との距離は、前記第2回転軸と前記第3回転軸との距離の略半分の距離とされ、
前記スライド部が前記第5回転軸に近接するように移動すると前記第1先端部が前記第1アーム側に直線移動し、前記スライド部が前記第5回転軸から離間するように移動すると前記第1先端部が前記第1アームから離間する側に直線移動することを特徴とする多関節型ロボット。
【請求項2】
一端側で前記スライド部に第6回転軸を中心として回転可能に連結され、他端側で前記第1先端部に第7回転軸を中心として回転可能に連結された補助リンク部をさらに備え、
前記第6回転軸は、前記第2回転軸と略平行に設けられ、
前記第7回転軸は、前記第2回転軸と略平行に設けられ、
前記第6回転軸と前記第7回転軸との距離は、前記第2回転軸と前記第3回転軸との距離と略等しい距離とされることを特徴とする請求項1に記載の多関節型ロボット。
【請求項3】
前記第1関節部に対して回転可能に設けられた第2先端部と、
前記第2先端部を回転させるモータと、をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の多関節型ロボット。
【請求項4】
前記第1アームを前記第1回転軸で回転可能に支持する第2アームをさらに備え、
前記第2アームは、前記第1アームに対して前記第1先端部が設けられた側の反対側に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の多関節型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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