説明

夜間電力併用型太陽光発電システム

【課題】1)代替可能エネルギーの利用による二酸化炭素の削減、地球温暖化防止、2)緊急災害時の生活維持のための電気の確保、3)余剰夜間電力を利用した電力の平準化により節電し、電力不足を解消、4)余剰夜間電力以外の外部電力に頼らない自立型発電による地域貢献、5)10年以上の耐久性の確保および蓄電池の二次公害の防止、の課題を解決する「太陽光発電、余剰の夜間電力、緊急時の自家発電装置を組み合わせた自立型の発電システム」の提供。
【解決手段】太陽光発電装置と、夜間電力を蓄電し、該太陽光発電装置の電気供給不足を補う蓄電デバイス3と、内燃機関による自家発電装置とを備えた自立型発電システムからなり、前記蓄電デバイス3が、電解液に非イオン性分散剤を含有し、1秒間に4000〜7000回の電圧振幅±2〜±5Vの微弱パルス電流を印加する硫酸鉛皮膜除去装置を組み込んだ鉛蓄電池である、夜間電力併用型太陽光発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置と、余剰の夜間電力を蓄電する蓄電デバイスと、緊急災害時等の生活維持のための内燃機関による自家発電装置とを備えた自立型発電システムからなる夜間電力併用型太陽光発電システムに関するものであり、電機電子分野および電気化学分野に属する。
【背景技術】
【0002】
昨今代替可能エネルギーが注目され、中でも太陽光発電は各家庭、事務所および工場等で設置可能なため、急速に広まりつつある。
【0003】
一方、東北大震災による福島原子力発電所の事故から、電気エネルギー不足の問題が生じ、節電が叫ばれている。
【0004】
節電を目的とした、太陽光発電と余剰の夜間電力を用い、緊急時の自家発電装置を組み合わせた、自立型の発電システムはない。
【0005】
太陽光発電は、晴天時、家庭用で2〜4kW程度の能力であり、夜間、雨天では殆ど発電できないため、太陽光発電で一日の全ての電力消費を賄うのは困難と言われている。
【0006】
夜間電力使用率は50〜60%と低く、余剰であるため、現在夜間電力に関しては、契約すれば、一般電気料金の30〜40%程度の低料金で使用できる。
【0007】
夜間電力の蓄電技術に関しては、容量的にはリチウムイオン二次電池が有力であるが、コストと寿命の問題があり、殆ど実用に供されておらず、従来、有力な蓄電デバイスがない状況であった。
【0008】
本発明者は、従来3〜5年と言われていた鉛蓄電池の寿命を10年以上に延ばした無劣化鉛蓄電池を発明した。この発明は特許出願(特許番号:特願2010−158082)されている。
【0009】
この無劣化鉛蓄電池は、鉛蓄電池の最大の劣化原因とされている不活性な硫酸鉛皮膜の生成を、分散剤による溶解還元反応と微弱電流パルスによる分解還元反応を併用することにより、防止したものである。従来の鉛蓄電池における硫酸鉛皮膜の除去技術については、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3079212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、下記1)〜5)の課題を解決する「太陽光発電と余剰の夜間電力を用い、緊急時の自家発電装置を組み合わせた、自立型の発電システム」を提供することを目的とする。
1)代替可能エネルギーの利用による二酸化炭素の削減、地球温暖化防止
2)緊急災害時の生活維持のための電気の確保
3)余剰夜間電力を利用した電力の平準化により節電し、電力不足を解消
4)余剰夜間電力以外の外部電力に頼らない自立型発電による地域貢献
5)10年以上の耐久性の確保および蓄電池の二次公害の防止
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、種々検討した結果、太陽光発電装置と余剰の夜間電力を蓄電する蓄電デバイスと自家発電装置とを組み合わせた自立型の発電システムにおいて、蓄電デバイスとして、先に出願した特願2010−158082に係る無劣化鉛蓄電池を用いることにより、前記目的が達成されることを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、「太陽光発電装置と、夜間電力を蓄電し、該太陽光発電装置の電気供給不足を補う蓄電デバイスと、内燃機関による自家発電装置とを備えた自立型発電システムからなり、前記蓄電デバイスが、電解液に非イオン性分散剤を含有し、1秒間に4000〜7000回の電圧振幅±2〜±5Vの微弱パルス電流を印加する硫酸鉛皮膜除去装置を組み込んだ鉛蓄電池である、夜間電力併用型太陽光発電システム」を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の夜間電力併用型太陽光発電システムは、地球温暖化のための代替エネルギーとして太陽光発電を用い、緊急災害時の生活維持のために内燃機関による自家発電装置を装備し、電力不足解消のために余剰の夜間電力を蓄電する蓄電デバイスを有し、太陽光発電の電気供給不足を補う自立型発電システムであり、その余剰の電気は売電可能で、地域に貢献すること多大である。また、蓄電デバイスとして前記の無劣化鉛蓄電池を用いているため、10年以上の耐久性が確保され、長寿命であり、その結果、蓄電池の二次公害の防止も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の夜間電力併用型太陽光発電システムの好ましい一実施形態の概略図である。
【図2】本発明で使用される蓄電デバイスに組み込まれる硫酸鉛皮膜除去装置の好ましい一例の概略図である。
【図3】発振器からパルス電流発生器への信号波(出力電流)の一例を示すグラフである。
【図4】鉛蓄電池に印加するパルス電流の波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の夜間電力併用型太陽光発電システムを、図1に示す好ましい実施形態について説明する。図1は、本システムの概略図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の夜間電力併用型太陽光発電システムは、夜間電力利用タイマー1に直結する充電装置2を介して夜間電力を蓄電する蓄電デバイス3と、ソーラーパネル4およびMPPT方式のチャージコントローラー5からなる太陽光発電装置と、始動用リコイルスターター8を備えた発電機7からなる内燃機関による自家発電装置とを備えた自立型発電システムからなる。尚、図中、6はDC−ACインバーターである。
【0018】
蓄電デバイス3は、12Vバッテリー4個を直列に繋いだ48Vバッテリーを1セットとし、そのバッテリーは長期使用に適したディープサイクル仕様とするのが好ましい。
【0019】
システムの基本電圧を48Vにすることにより、バッテリー充電器、MPPT方式のチャージコントローラーおよびDC−ACインバーターに市販のものが使用でき、また48Vよりも小さい12Vや24Vのシステムに比べて細い配線が使用でき、システムコストを削減できる。基本電圧が48Vを超える場合は、感電の可能性があり、48Vより小さい場合は、コストが上がるだけでなく、DC−ACインバーターの効率が低下し、最新の薄型のソーラーパネルの使用に適さない等の弊害がある。
【0020】
バッテリーサイズは、12V100Ah以上が好ましく、これを4個を直列に繋いだ48Vバッテリーを1セットとし、これを4セット並列に繋いで出力を48V400Ahとしたものを蓄電デバイスとするのが好ましい。
夜間電力供給時間を一般的な午後10時〜翌朝8時までの時間とした場合、一日の平均電気使用量が平均12kWhに対して400Ahは19.2kWhで、その平均放電深度は62.5%となり、太陽光発電なしでは限界(放電深度:70%)に近く、400Ahより低いと、バッテリーの寿命が短くなる可能性がある。
【0021】
各バッテリーは、その電解液に非イオン性分散剤を含有し、1秒間に4000〜7000回の電圧振幅±2〜±5Vの微弱パルス電流を印加する硫酸鉛皮膜除去装置を組み込み、サルフェーションによる劣化を防止できるようにした鉛蓄電池である。
この鉛蓄電池としては、本発明者が発明し、本出願人が先に出願した特願2010−158082に開示した無劣化鉛蓄電池が用いられる。
この無劣化鉛蓄電池について以下に詳しく説明する。
【0022】
鉛蓄電池の電解液に添加する非イオン性分散剤としては、希硫酸からなる電解液に対して溶解し易いものが好ましく、例えば、淡黄色固体の高密度ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、淡黄色粘稠液体のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、白色固体の高密度ポリビニルアルコール(以下PVA という)、PEG −4ステアミド等が挙げられる。
【0023】
非イオン性分散剤の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、電解液に対して、重量比で、0.5〜1.5%程度加えるのが好ましく、1〜1.2%程度加えるのがより好ましい。
【0024】
微弱パルス電流の印加は、図2に示す発振器およびパルス電流発生器からなる硫酸鉛皮膜除去装置を用いることが好ましい。
この硫酸鉛除去装置における発振器は、タイマIC等を発信回路に用い、パルス電流発生器への信号波(出力電流)を、図3に示すような方形波でその動作範囲(Duty)は3〜5%となるようにし、信号波を受けるパルス電流発生器においてパルスを急峻に立ち上がらせ、パルス電流の出力を確保するようにしてある。
【0025】
硫酸鉛皮膜除去装置におけるパルス電流発生器は、発振器から出力された信号波により、MOSFET等の電子スイッチを駆動させ、鉛蓄電池に印加するパルス電流の波形を例えば図4に示す波形になるようにする。
【0026】
微弱パルス電流のパルス数を多くすることで硫酸鉛皮膜の分解の効率が上がると考えられるが、熱発生があり、実際には上限がある。パルス数は、再生効率とのバランスで適宜設定される。具体的には、1秒間に4000〜7000回程度であり、好ましくは、1秒間に5000〜6000回である。
【0027】
微弱パルス電流のパルス電圧の振幅は、±2〜±5V の範囲内、好ましくは±2.5〜±4V の範囲内であり、また、その電流値は20〜100mAの範囲内、好ましくは50〜80mAの範囲内にあるものが、硫酸鉛皮膜の剥離脱落を防ぎ、電極へのダメージを与えず、好ましい。
【0028】
上記のようにして微弱パルス電流を印加することにより、パルスの衝撃でサルフェーションにより生じた硫酸鉛皮膜を分解還元することができる。
【0029】
蓄電デバイス3への充電装置2は、入力は三相交流200Vで、出力はDC48V400Ah程度のものが好ましく、バッテリー保護のため、全自動でフローティング充電できるものが好ましい。
充電装置2は、夜間電力利用タイマー1に直結させ、契約時間のみ作動するようになしてある。
【0030】
本実施形態のシステムで用いられている太陽光発電装置は、ソーラーパネル4およびチャージコントローラー5からなる。
チャージコントローラー5は、高効率タイプのMPPT方式で、その出力は48Vとし、その容量はソーラーパネル容量より大きくするのが好ましい。MPPT方式の方式の場合、その効率は99%に達し、従来のPWM方式に比べ、10〜30%の効率アップが見込める。
【0031】
一般家庭の平均電気消費量は12kWh/日と言われており、太陽光発電に用いるソーラーパネル4の総発電容量は2kW以上が好ましく、2kWより低いと一般的な生活維持に支障をきたす可能性がある。
【0032】
本実施形態のシステムで用いられている内燃機関による自家発電装置は、始動用リコイルスターター8を備えた発電機7からなる。
この発電機7は、緊急災害時等に用いるもので、始動用リコイルスターター8により手動で始動できるようになしてあり、その出力は、ソーラーパネル4の場合と同様に、生活維持のため、2kW以上であることが好ましい。
【0033】
DC−ACインバーター6は、48V→100Vのインバーターで、そのAC出力を3kw程度とし、瞬間最大出力は倍の6kwを確保することが好ましい。AC出力が3kwより小さいと、電気機器のスイッチを入れた時、瞬間的に過電流が流れ、ブレーカーを落とす可能性がある。
【0034】
DC−ACインバーターの波形は、正弦波とし、充電のため、地域で供給されている系統電圧とインバーターの電圧に位相差がないようにする。
【0035】
本発明の夜間電力併用型太陽光発電システムは、上述の図1に示す実施形態に制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0037】
実施例1
図1に示す本発明の夜間電力併用型太陽光発電システムを次のようにして構築した。
充電装置2は、電動フォークリフト用の出力48V400Ahのもので、全自動フローティング仕様であり、三相交流200Vに夜間電力契約による夜間電力利用タイマー1に直結しており、蓄電デバイス3にタイマー1が作動している時にのみ電気を供給している。
【0038】
蓄電デバイス3は、ディープサイクルバッテリーであるEB100型鉛蓄電池を16個用いており、その出力は48V400Ahである。
【0039】
EB100型鉛蓄電池には、それぞれ、パルス数:5400回/秒、電圧:±2V、および電流:20mAの微弱パルス電流発生器が取り付けられ、また、各セルには、非イオン性分散剤の高密度ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルを3CC添加している。
【0040】
ソーラーパネル4は、一般的な出力160Wのものを16枚連結し、総発電容量を2.56kWとしている。
【0041】
MPPT方式のチャージコントローラー5は、出力は48Vで、最大入力電流60A、最大入力電圧150V、最大入力電力3.2kWのものを用い、その最大効率は99%である。
【0042】
DC−ACインバーター6は、入力48V、出力100Vで、波形は正弦波で、充電のため、地域で供給されている系統電圧とインバーターの電圧に位相差がないものを用いている。
【0043】
売電は、蓄電デバイス3が満充電状態での時、余剰の太陽光発電で生じた電気を売るようになっている。
【0044】
内燃機関による発電機7は、無鉛ガソリンで排気量171ml、出力2kVAのもので、始動はリコイルスターター8による手動のものである。
この発電機7は、緊急災害時等に用いるもので、太陽光発電装置と蓄電デバイスとからなる発電システムに代替し、電気を供給するようになっている。
【符号の説明】
【0045】
1 夜間電力利用タイマー
2 充電装置
3 蓄電デバイス
4 ソーラーパネル
5 MPPT方式のチャージコントローラー
6 DC−ACインバーター
7 内燃機関による発電機
8 始動用リコイルスターター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置と、夜間電力を蓄電し、該太陽光発電装置の電気供給不足を補う蓄電デバイスと、内燃機関による自家発電装置とを備えた自立型発電システムからなり、前記蓄電デバイスが、電解液に非イオン性分散剤を含有し、1秒間に4000〜7000回の電圧振幅±2〜±5Vの微弱パルス電流を印加する硫酸鉛皮膜除去装置を組み込んだ鉛蓄電池である、夜間電力併用型太陽光発電システム。
【請求項2】
前記蓄電デバイスが、12Vバッテリー4個を直列に繋いだ48Vバッテリーを1セットとし、これを4セット並列に繋いで出力を48V400Ahとしたものである、請求項1記載の夜間電力併用型太陽光発電システム。
【請求項3】
前記硫酸鉛皮膜除去装置が、発振器およびパルス電流発生器からなる、請求項1または2記載の夜間電力併用型太陽光発電システム。
【請求項4】
前記太陽光発電装置が、ソーラーパネルおよびMPPT方式のチャージコントローラーからなり、該チャージコントローラーの容量がソーラーパネル容量より大きい、請求項1〜3の何れか1項に記載の夜間電力併用型太陽光発電システム。
【請求項5】
前記自家発電装置が、始動用リコイルスターターを備えた発電機である、請求項1〜4の何れか1項に記載の夜間電力併用型太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31246(P2013−31246A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164000(P2011−164000)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(502333068)株式会社マステック (10)
【Fターム(参考)】