説明

大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車

本発明は、大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車(1)であって、駆動装置を備えるものに関する。本発明の課題は、環境に優しい大型輸送車を提供することである。この課題は、駆動装置に動力を提供するための電池(7)を大型輸送車(1)に設けることで達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型輸送車に関し、特に、走行駆動装置を備えたISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第4203778号明細書には、マニピュレーターが搭載された自動式地上車が開示されている。マニピュレーターは、地上車の走行によって複数のワークステーション間を自動的に移動することができ、各所において組み立て作業を行うことができる。当該地上車は、交換可能なニッケルカドミウム電池によって駆動される。電池は充電が必要になると自動的に交換ステーションにおいて取り換えられる。このため、当該地上車の車両フレームには電池取り付け用のスペースが設けられており、このスペースには、地上車の長手方向と交差する方向に整列したガイドレールが設けられている。電池の下面にはローラーが設けられており、このローラーがガイドレール上で転動する。地上車の動作中に電池がガイドレール上で動くのを防ぐため、車両フレームにはピンが設けられている。このピンは、あらかじめ電池に対して弾性的に付勢されており、地上車の動作中は電池の凹部に係合している。電池を交換する際は、当該ピンを油圧機構によって下げる。このようにして取り外し可能となった電池は、交換装置によって、ガイドレールに沿って横方向に車両フレームから引き出すことができる。この交換作業を行うために地上車は自動的に交換ステーションまで走行する。
【0003】
独国特許出願公開第102007039778号明細書も、ISOコンテナ輸送用の自動運転式大型輸送車を開示している。この輸送車は、車両フレームを備えており、当該車両フレームには少なくとも1つの昇降プラットホームが搭載されている。当該昇降プラットホームは、少なくとも1つの昇降駆動装置によって、下方輸送位置と上方輸送位置との間で昇降可能である。通常、このような輸送車はディーゼルエンジンによって駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第4203778号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007039778号明細書
【発明の概要】
【0005】
上記従来技術を背景とし、本発明は、より環境に優しい大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車を提供することをその課題とする。
【0006】
上記課題は、請求項1の特徴を有する大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車によって達成される。本発明の好適な実施形態は従属項2〜12に記載されている。
【0007】
本発明によれば、大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車において、走行駆動装置を設け、当該走行駆動装置に動力を提供するための電池を大型輸送車に設けたことにより、より環境に優しい構成とすることができる。トラクション電池としての電池によって作動する当該大型輸送車には、環境汚染物質の局所放出を完全に防止し、騒音をかなり低減できるという大きな利点がある。従って、周囲環境に対する悪影響はかなり少ない。ドライブトレインの効率もかなり向上させることができる。その結果、車両を動作させるのに必要な総動力量を低減することができる。従って、環境適合性をさらに改善する一方で、運転費用を削減することができる。これまで電気駆動力を与えるために用いられてきたディーゼル発電機に比べると、電池はそれほどメンテナンスを必要としない。従って、メンテナンス費用を削減することができる。電池を充電するための電流は種々の電源から得ることができるので、ディーゼル燃料の入手場所やコストの心配をすることなく車両を動作させることができる。
【0008】
本発明において、大型輸送車とは、少なくとも15トン、より好ましくは少なくとも20トンの積み荷を輸送することができる車両のことをいう。大型輸送車用の積み荷の例としては、ISOコンテナやスワップボディコンテナが挙げられる。荷積み状態のスワップボディコンテナは、一般的に最大約16トンである。荷積み状態で、ISOコンテナの重量は20〜80トンである。ISOコンテナの輸送がより好ましい。ここで、ISOコンテナとは、大型の規格化されたコンテナであり、荷受け部材用に規格化された昇降ポイント又は昇降コーナー部を有するもののことをいう。少なくとも15トン、好ましくは少なくとも20トンの積み荷を輸送できるものであれば、積み荷を積まずに走行する大型輸送車、あるいは空のISOコンテナ又はスワップボディコンテナを輸送する大型輸送車も本発明の範囲に含まれる。このような大型輸送車が複数の形態の輸送動作を行う場合もある。例えば、大型輸送車は、ISOコンテナやスワップボディコンテナだけでなく、セミトレーラー、スワップトレーラー、トレーラー、重量物運搬車、牽引用トラックなどの他の積み荷も輸送できる場合もある。
【0009】
電池は、交換ができるように大型輸送車に着脱可能に取り付けられているので、大型輸送車の利便性が向上する。電池の充電作業は大型輸送車から離れた所で行うことができ、大型輸送車は、充電済みの交換可能電池によって運転を継続することができる。
【0010】
大型輸送車の長手方向と交差する方向に出し入れすることによって電池を交換できるようになっているため、迅速な電池の交換が可能である。
【0011】
好ましい形態によれば、大型輸送車は、複数の前輪及び複数の後輪を備え、前輪は第1電気モータによって駆動可能である一方、後輪は第2電気モータによって駆動可能である。この場合、電池は前輪と後輪との間に設けられる。
【0012】
電池の交換をより簡単にするために、大型輸送車は、電池用の取り付けスペースを有する車両フレームを備えており、当該取り付けスペースは、大型輸送車の底部及び側部において開放している。
【0013】
構造に関しては、大型輸送車の長手方向において、キャリアレールが取り付け空間の前端及び後端に設けられ且つ大型輸送車の長手方向と交差する方向に延びており、当該キャリアレールに電池が支持されている。
【0014】
電池が実質的に直方体形状であり、大型輸送車の長手方向視における電池の前面及び後面には懸架部材が設けられており、懸架部材はそれぞれ上記前面及び後面から突出しており、電池は懸架部材を介してキャリアレールに支持されているという構成によれば、大型輸送車に対する電池の取り付けが特に便利になる。
【0015】
本発明の大型輸送車は、電池の交換に関して特別の操作を要しないように構成することができる。すなわち、懸架部材及びキャリアレールに対しセンタリング要素を設けることにより、電池を取り付けスペース内に入れ下降させてキャリアレールに支持させる際に、センタリング要素が懸架部材をキャリアレールに対して適切に配置する構成とすることができる。また、電池には電気接続要素が設けられている一方、キャリアレールにはこれに対応する対極接続要素が設けられており、電池を下降させてキャリアレールに支持させることによって、これらの接続要素同士を自動的に接続することができるようになっている。
【0016】
電池が鉛畜電池として構成され、好ましくは重量が6〜10トンであることによって、大型輸送車の高い信頼性が達成される。鉛畜電池は車において長年使用されてきたものである。
【0017】
本発明は、許容総重量が少なくとも40トンである大型輸送車に特に好適に適用される。
【0018】
以下、本発明を添付図面に示した実施形態に関して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車の上方からの斜視図である。
【図2】図1の大型輸送車の下方からの斜視図である。
【図3】図1の大型輸送車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ISOコンテナ5用の自動運転式大型輸送車1の上方からの斜視図である。大型輸送車1の自重は約35トンである。この輸送車の自重に対して、輸送対象であるISOコンテナ5の重量が加わるため、荷積み状態では総重量は約85トンとなる。大型輸送車1は、四輪車として構成されており、実質的に、車両フレーム2を有し、当該車両フレーム2に対して、2つの前輪4aが共通のフロントアクスル3a上に取り付けられ、且つ2つの後輪4bが共通のリアアクスル3b上に取り付けられた構成とされているが、これ以外の部材を含んでいてもよい。4つの車輪4a、4bはタイヤを備えている。車両フレーム2は、平坦なプラットホーム4を支持している。プラットホーム4は、輸送対象であるISOコンテナ5を載置するためのものである。
【0021】
図から明らかなように、車両フレーム2は、電池7の取り付けスペース6を有している。取り付けスペース6は、車両フレーム2のプラットホーム5の下方に延びており、底部が地面8に向かって開放し、且つ、大型輸送車1の側部1aにおいても開放している。取り付けスペース6は、大型輸送車1の前輪4aと後輪4bとの間に設けられている。取り付けスペース6が大型輸送車1の長手方向L視において右及び左側1aに向かって開放しているため、大型輸送車1から離れた所において電池7を充電する際に、大型輸送車1の長手方向と交差する着脱方向Eに移動させることによって、電池7を容易に交換することができる。さらに、取り付けスペース6の底部が開放しているため、フォークリフトトラックのような操作装置によって電池7の取り外しを行うことができる。当該電池7は鉛蓄電池として構成され、重量は約8〜9トンである。この電池7を用いることによって、大型輸送車1を約6〜8時間作動させることができる。
【0022】
図2は、図1の大型輸送車の下方からの斜視図である。図1を参照して既に述べた要素に加えて、図2には大型輸送車1の走行駆動装置が示されている。当該走行駆動装置は、実質的に、フロント電気モータ9a、フロントトランスファーギアボックス10a、リア電気モータ9b、及びリアトランスファーギアボックス10bによって構成されるが、これ以外の要素を含んでいてもよい。フロント電気モータ9aは、車両フレーム2の下方のフロントアクスル3aの近傍に取り付けられており、大型輸送車1の長手方向L視において中央に取り付けられている。リア電気モータ9bは、車両フレーム2の下方のリアアクスル3bの近傍に取り付けられており、大型輸送車1の長手方向L視において中央に取り付けられている。フロント電気モータ9aは、フロントトランスファーギアボックス10を介して2つの前輪4aを駆動し、リア電気モータ9bは、リアトランスファーギアボックス10bを介して2つの後輪4bを駆動する。このように、大型輸送車1は、四輪駆動装置を備えている。
【0023】
図から明らかなように、電池7とフロントアクスル3aとの間には、制御部品を収容するためのスイッチキャビネット11を車両フレーム2の下方に取り付けるための空間が設けられている。
【0024】
図3は、大型輸送車の側面図である。同図から明らかなように、電池7はキャリアレール2aを介して大型輸送車2の車両フレーム2に取り付けられている。具体的には、2つのキャリアレール2aが互いに離間し且つ水平方向に整列して設けられており、それぞれが、ブラケット2bを介して所定の高さ位置で車両フレーム2に取り付けられている。これらのキャリアレール2aは、車両の長手方向Lにおいて、取り付けスペース6の前縁及び後縁を画定している。キャリアレール2aに電池7を取り付けることができるように、直方体形状の電池1における前面7bおよび後面7cそれぞれの角部近傍には、横方向に突出する懸架部材7aが設けられている。これら懸架部材7aは、電池7の作動中は大型輸送車1のキャリアレール2aに支持されている。このように車両フレーム2内の上部に電池7を取り付けることによって、フォークリフトトラック又はその他の昇降装置を、電池7の下方に容易に進入させることができ、好都合である。また、フォークリフトトラック又はその他の昇降装置を垂直昇降方向Sに作動させることによって懸架部材7aを持ち上げてキャリアレール2aから外し、大型輸送車1から着脱方向Eに電池7を取り外すことができる。これに関し、電池7は、図示しないセンタリング要素によって、キャリアレール2aに対し整列させられるともに横滑りしない構成とされているが、昇降方向Sへの垂直移動によって、センタリング要素によるロックから解除される。また、電池7を走行駆動装置に対して電気的に接続するために、電池7には電気接続要素が、キャリアレール2aには同接続要素に対応する対極接続要素が設けられているが、電池7を昇降方向へ移動させることにより、電気接続要素と対極接続要素との電気的接触状態を解除することができる。このように、大型輸送車1は、ロックの解除及び電気的接触状態の解除に際し、特別の操作を要しないという利点を有する。
【0025】
上記大型輸送車及びこれに関連する電池交換システムは、波止場周辺地域及び道路と鉄道との間の協同一貫輸送におけるISOコンテナの輸送にも適用可能である。
【0026】
本発明をISOコンテナ輸送用の大型輸送車について上述したが、原則として、例えば冶金、鉄鋼、圧延などにおいて、板状あるいはコイル状の金属材などの、ISOコンテナ以外の重荷を輸送することもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 大型輸送車
1a 側部
2 車両フレーム
2a キャリアレール
2b ブラケット
3a フロントアクスル
3b リアアクスル
4a 前輪
4b 後輪
5 ISOコンテナ
6 取り付けスペース
7 電池
7a 懸架部材
7b 前面
7c 後面
8 地面
9a フロント電気モータ
9b リア電気モータ
10a フロントトランスファーギアボックス
10b リアトランスファーギアボックス
11 スイッチキャビネット
E 着脱方向
L 長手方向
S 昇降方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型輸送車、特に、ISOコンテナ用の自動運転式大型輸送車(1)であって、走行駆動装置を備え、前記走行駆動装置に動力を提供するための電池(7)が前記大型輸送車(1)に設けられている、大型輸送車。
【請求項2】
前記電池(7)は交換ができるように前記大型輸送車(1)に着脱可能に取り付けられている、請求項1に記載の大型輸送車。
【請求項3】
前記電池(7)は、前記大型輸送車(1)の長手方向(L)と交差する方向に出し入れすることによって交換できるようになっている、請求項2に記載の大型輸送車。
【請求項4】
前記大型輸送車(1)は複数の前輪(4a)及び複数の後輪(4b)を備えており、前記前輪(4a)は第1電気モータ(9a)によって駆動可能であり、前記後輪(4b)は第2電気モータ(9b)によって駆動可能である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の大型輸送車。
【請求項5】
前記電池(7)は、前記前輪(4a)と前記後輪(4b)との間に設けられている、請求項4に記載の大型輸送車。
【請求項6】
前記大型輸送車(1)は、前記電池(7)用の取り付けスペース(6)を有する車両フレーム(2)を備えており、前記取り付けスペースは、前記大型輸送車(1)の底部及び側部(2a)において開放している、請求項1〜5のいずれか1つに記載の大型輸送車。
【請求項7】
前記大型輸送車(1)の長手方向(L)視において、前記取り付け空間(6)の前端及び後端には前記大型輸送車(1)の長手方向(L)と交差する方向に延びるキャリアレール(2a)が設けられており、前記電池(7)は前記キャリアレールに支持されている、請求項6に記載の大型輸送車。
【請求項8】
前記電池(1)は実質的に直方体形状であり、前記大型輸送車(1)の前記長手方向(L)における前記電池(7)の前面及び後面(7b、7c)には懸架部材(7a)が設けられており、前記懸架部材はそれぞれ前記前面及び前記後面(7b、7c)から突出しており、前記電池(7)は前記懸架部材(7a)を介して前記キャリアレール(2a)に支持されている、請求項7に記載の大型輸送車。
【請求項9】
前記懸架部材(7a)及び前記キャリアレール(2a)にはセンタリング要素が設けられており、前記電池(7)を取り付けスペース(6)内に入れ下降させてキャリアレール(2a)に支持させた際に、前記センタリング要素が前記懸架部材(7a)をキャリアレール(2a)に対して整列させる、請求項8に記載の大型輸送車。
【請求項10】
前記電池(7)には電気接続要素が設けられている一方、前記キャリアレール(2a)にはこれに対応する対極接続要素が設けられており、前記電池(7)を下降させて前記キャリアレール(2a)に支持させることによって、前記電気接続要素および対極接続要素を自動的に接続することができる、請求項8又は9に記載の大型輸送車。
【請求項11】
前記電池(7)は鉛畜電池として構成され、好ましくは重量が6〜10トンである、請求項1〜10のいずれか1つに記載の大型輸送車。
【請求項12】
前記大型輸送車(1)の許容総重量は少なくとも40トンである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の大型輸送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529400(P2012−529400A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514449(P2012−514449)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058020
【国際公開番号】WO2010/142687
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(504346570)ゴットヴァルト ポート テクノロジー ゲーエムベーハー (14)
【氏名又は名称原語表記】GOTTWALD PORT TECHNOLOGY GMBH
【住所又は居所原語表記】Forststrasse 16,40597 Dusseldorf,Germany
【Fターム(参考)】