説明

大気噴出凍結乾燥法による粉末形成

感熱性医薬品粉末を製造する方法について示した。元の医薬品物質は、溶解またはサスペンションに懸濁されている。これらは、アトマイズノズルを介して噴出され、冷却ガス相によって、または噴出凍結チャンバー室に直接噴出された液体窒素によって、あるいはこれらと(冷却用の)ガスの覆いによって、凍結される。粒子は、ほぼ大気圧下において、下向きの流体流束内でフィルタによって凍結乾燥され、これにより、凍結粒子表面または内部に取り込まれた水分が除去される。本システムは、他の粉末の形成に利用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、人に対する医薬品の投与のための粉末の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品は、しばしば不安定な化合物であり、医薬品を粉末状にする処理の間に急速に劣化する。医薬品化合物は、通常水溶液を用いて搬送されるが、粉末を形成するには水溶液を蒸発させる必要があるため、必要な乾燥化および乾燥処理は、医薬品に容易に劣化をもたらす。さらに、粉末形成処理に時間がかかる場合、あるいはこれに大きなエネルギーが必要となる場合、その処理は経済的ではない。
【0003】
従来より医薬品粉末の調合に使用されている凍結乾燥法は、保護処理および脱水処理の2段階のステップを有し、最初に生成物が凍結され、次に、凍結状態から水が蒸気として除去される。水は、固相から直接蒸気に至るため、蒸気圧および昇華ゾーン温度は、水の平衡状態図において、三重点よりも低く保持することが必要となる。低温度(<0℃)および凍結状態を維持するため、熱および物質移動の駆動力は、極めて低くなり、しばしば、乾燥速度は極めて遅く、乾燥時間は極めて長くなる。従って、凍結乾燥法には、極めて高品質の脱水生成物が提供されるという利点があるものの、この方法は、大量エネルギー消費型処理のため、極めて高コストな脱水処理法となっている。
【0004】
従来の凍結乾燥法は、真空下で実施されるが、大気圧または大気圧近傍で実施される場合もある。大気凍結乾燥法では、移動係数が大きくなるという利点を有することが示されており、凍結乾燥生成物の均一性を向上させることができる。例えば、メリーマン(Meryman、H. T.)の、真空を用いない昇華凍結乾燥法(Sublimation freeze-drying without vacuum)、サイエンス、130巻、p628-629、1959年には、大気凍結乾燥法が提案されている。この方法では、乾燥チャンバー室内の水の分圧が極めて低い値に維持される。また、彼は、そのような処理法は、対流凍結乾燥法の原理を基本とするべきであること、すなわち冷却蒸気は、モレキュラーシーブ乾燥剤による乾燥によって、または冷却コンデンサによって、循環するべきであることを提案している。最近、リューエンバーガー(Leuenberger、H.)の、噴出凍結乾燥法−難溶性薬品の選定方法、ジャーナルオブナノパーティクルリサーチ(J. of Nanoparticle Research)、4:p111-119、2002年には、噴出凍結乾燥法は、適当なマトリクスでの安定化によって、薬品の薬理活性を保護することに寄与することが示されている。
【0005】
大気凍結乾燥には、潜在的な利点はあるものの、未だ課題が残っている。経済的に低コストで、薬の生物活性を維持することができるという、医薬品粉末処理技術に対する産業上の要求に合致する、溶液/液体中のサスペンションの噴出凍結処理と、大気凍結乾燥処理との組み合わせを提供することは難しい。
【非特許文献1】リューエンバーガー(Leuenberger、H.)、噴出凍結乾燥法−難溶性薬品の選定方法、ジャーナルオブナノパーティクルリサーチ(J. of Nanoparticle Research)、4:p111-119、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、経済的に低コストで薬の生物活性を維持することができる医薬品粉末処理によって粉末を形成するため、医薬品を搬送する液体の大気噴出凍結乾燥法を提供することである。本発明では、医薬品物質の粉末または微粒子を製造する方法、およびそのような方法を実施する機器が提供される。本処理方法によって生成される粉末は、高い放出投与量を示し、噴出乾燥粒子およびミル処理粒子に比べて、生物活性を良好に維持することができる。また、粒子の多孔質性によって、迅速な溶解性が得られる。本発明は、栄養補給食品および食品の粉末を含む、他の粉末の形成に利用することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様では、粉末を形成する方法であって、液滴の流束を構成するため、粉末形成成分を含むキャリア液体を噴出するステップと、前記液滴を凍結させて凍結粒子にするのに十分な時間の間、前記流束を冷却剤と共搬送させるステップと、前記凍結粒子を乾燥させて、乾燥粉末を形成するステップと、を有する方法が提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、粉末を形成するため、成分搬送液体を大気圧噴出凍結乾燥処理する機器であって、一端にアトマイザを有するチャンバー室であって、前記アトマイザは、成分搬送液体のソース源に接続され、液滴の流束を生成するところのチャンバー室と、前記アトマイザによって噴出された噴出流体を共搬送する、冷却剤の流束を提供するノズル系と、前記ノズル系用の冷却剤のソース源と、前記アトマイザから隔離された収集器であって、前記アトマイザによって噴出された液滴が、前記収集器と接する前に、前記冷却剤の流束によって凍結される、収集器と、を有する機器が提供される。
【0009】
粉末形成成分は、キャリア液体中に懸濁または溶解される。共搬送流は、冷却剤の並流であっても良く、例えば、リングノズルから、または収容チャンバー室の多孔質側壁を通って噴出される。凍結粒子は、収容チャンバー室からの出口でフィルタに収集されることが好ましく、乾燥のほとんどは、フィルタで生じる。乾燥効率を高めるため、フィルタを通る流れは、凍結温度よりも高い温度にすることが望ましい。キャリア液体中には、2以上の粉末形成成分が含まれても良い。
【0010】
本発明の他の態様は、特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、一例としての図面を参照して、本発明の好適実施例について説明する。図面は、本願の実施例を正確に示すためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0012】
特許請求の範囲において、「有する」という用語は、含むという意味で使用され、他の部品の存在を排除するものではない。特許請求の範囲において、部品の前の「一つの」という言葉は、その部品が2つ以上存在することを排除するものではない。
【0013】
本発明は、微粒子材料の製作に広く利用することができ、水のような適当なキャリア液体に溶解または懸濁することが可能な、いかなる材料の噴出凍結乾燥法に使用することも可能である。粉末形成成分という用語は、医薬品、栄養補給食品、食品、または粉末状の単位を有する他の物質のうちの、1または2以上を表す際に使用される。本発明は、特にプロテイン、核酸、オリゴヌクレオチド、酵素、リポソーム、脂質、脂質錯体、抗ウィルス薬およびワクチン(例えば、非悪性のまたは弱毒化した病原体)、炭水化物、高分子、多糖ならびにペプチド等の、感熱性物質に対して有益である。ただし、本発明の使用は、大きな分子のみに限定されない。本方法は、水に溶解したまたは好適に懸濁された、いかなる材料からも、常に粉末を生成することができる。例えば、本発明は、粉末の抗感染剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗新生物剤、鎮痛剤、麻酔剤、コリン作用剤、アドレナリン作用剤、抗けいれん剤、鎮静剤、精神安定剤および鎮吐剤、免疫抑制剤および免疫賦活剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン剤、解毒剤および抗毒剤の生成に使用することができる。処理中の物質の劣化を抑制するため、抗凍結剤を加えても良い。成分搬送液体は、いくつかの異なる薬品、および賦形剤を含む。例えば、大部分の粒子が、少量の薬品を含む乳糖から形成されても良い。あるいは、成分搬送液体は、いくつかの薬品に、乳糖または他の充填剤/マトリクス/賦形剤化合物を含んでも良い。
【0014】
図1、2および3に示す実施例では、キャリア流体の流束または粉砕キャリア流体の噴霧は、冷却剤と共搬送されて、固体粒子粉末として凍結され、その後、粉末に乾燥気体流束を提供することによって乾燥される。冷却ガスとの共搬送によって、スプレー滴が拘束され、個々のスプレー滴が即剤に凍結されるため、液体スプレー滴は、処理が実施される処理チャンバー室の壁には衝突しない。
【0015】
図1に示す第1の実施例を参照すると、固体絶縁壁で構成されたハウジング100は、アトマイザ102を導入端部で支持し、このアトマイザには、ソース源106からの圧縮ガスと、ソース源108からの適当なキャリア液体とが、ライン104を介して供給される。ハウジング100の内部には、多孔質壁を有する流体室110が存在する。流体室110は、円錐部分116によって連結された、異なる径の円筒状部分112、114で構成される。ハウジング100には、ノズル系の複数のノズル118が通されており、これらのノズルは、ハウジング100と流体室110の間の空間に、冷却剤源120からの冷却剤の低温流体を供給する。一方、ハウジング100のアトマイザ102とは反対の他方の出口端部では、流体室110がフィルタ122で封止されており、このフィルタは、ボルトまたはクランプ126とOリング128によりハウジング100に固定された板124によって、ハウジング100の開口を横断するように設置される。ハウジング100の出口端部からのガス流は、冷却剤源120の一部を構成する冷却コンデンサに戻される。冷却コンデンサは、冷却ガスを再利用するため、冷却ガスから水分を分離する。
【0016】
図2に示す第2の実施例を参照すると、固体絶縁壁で構成されるハウジング200は、導入端部で、アトマイザ202を支持し、このアトマイザには、ソース源206からの圧縮ガスと、ソース源208からの適当なキャリア液体が、ライン204を介して供給される。ハウジング200の内部には、ハウジング200の内側を覆う固体壁によって定形された流体室210が設けられる。流体室210は、円錐部分216によって連結された、径の異なる円筒状部分212、214によって形成される。アトマイザ202の周囲には、ノズル系があり、このノズル系は、開口219を有するリングノズル218で構成されており、この開口は、リングノズル218からの流れを、アトマイザ202と平行な流れに整える。リングノズル218は、例えば圧縮ガスによって駆動される、液体窒素筒等の冷却剤源220からの冷却剤の低温流体を供給し、この低温流体は、噴出凍結ステップにおいては、アトマイザ202からの流束を取り囲み、後続の乾燥ステップにおいては、冷却コンデンサとなる。アトマイザ202とは反対側のハウジング200の他の出口端部では、流体室210がフィルタ222で封止されており、このフィルタは、ボルトまたはクランプ226とOリング228によりハウジング200のフランジ225に固定された板224によって、ハウジング200の開口を横断するように設置される。
【0017】
図3に示す第3の実施例を参照すると、固体絶縁壁で構成されるハウジング300は、アトマイザ32を導入端部で支持し、このアトマイザには、ライン304を介して、ソース源306からの圧縮ガスと、ソース源308からの好適なキャリア液体とが供給される。ハウジング300の内部には、ハウジング300の内側を被覆する固体壁によって定形された、円筒状流体室310が設けられている。アトマイザ302の周囲には、開口319を有するリングノズル318があり、この開口は、リングノズル318からの流束を、アトマイザ302の流束と平行となるように調整する。リングノズル318は、例えば圧縮ガスによって駆動される、液体窒素筒等の冷却剤源320からの冷却剤の低温流体を供給し、この低温流体は、噴出凍結ステップにおいては、アトマイザ302からの流束を取り囲み、後続の乾燥ステップにおいては、冷却コンデンサとなる。アトマイザ302とは反対側のハウジング300の他の出口端部では、流体室310がフィルタ322で封止されており、このフィルタは、ボルトまたはクランプ326とOリング328によりハウジング300のフランジ325に固定された板324によって、ハウジング300の開口を横断するように設置される。
【0018】
冷却剤源120、220または320は、粉末を汚染したり劣化させたりしなければ、いかなる冷却剤源であっても良い。特に、図1の実施例では、冷却窒素等の冷却ガスを使用しても良い。図2および3の実施例の場合、窒素は、圧縮ガスによって駆動される液体窒素筒から提供されても良い。液体窒素筒あるいは他の低温窒素源から生じる、例えば冷却液体窒素もしくは冷却気体窒素等の冷却ガスまたは液体は、ノズル118、218および318から放出された噴出液滴を共搬送し、噴出液滴を凍結する。凍結後の乾燥のため、液体窒素源と冷却ユニットの両方が使用される。図2、3の実施例に示すように、凍結処理は、液体窒素源を用いて行われ、その後冷却ユニットを用いて、より高い温度で乾燥処理が行われる。
【0019】
製造の間、医薬品製剤(PA)または他の粉末形成成分は、アトマイザ102、202、302から噴出される前に、キャリア液体と混合される。PAとキャリア液体との混合によって得られる噴出流体は、例えば、溶液、サスペンションまたはコロイドである。アトマイザ102、202、302は、2流体式ノズル、超音波噴霧器、振動式噴霧発生器(VOAG)または他の噴霧装置である。液滴を形成する噴出流体は、適当な温度の冷却流体である冷却剤との接触により、急速に凍結される。噴出凍結処理のステップでは、冷却流体をいくつかの方法で供給することが考えられる。一つの方法は、図2、3に示すように、リングノズル218、318を用いて、液体窒素のような冷却液体を、チャンバー室内に直接噴出することである。リングノズル218、318の周囲より内側のアトマイザ202、302からの噴出液滴は、液体窒素の周囲カーテンとの接触により、速やかに凍結され、その後、ハウジング200、300の出口端部の出口フィルタ222、322の方に搬送される。別の方法では、図1に示すように、冷却ガスをアトマイザ102を取り囲む多孔質壁112、114、116を介して導入する。ハウジング100とチャンバー室110の間の空間に供給されたガスは、ガスの覆いを形成し、その温度は、液体窒素と混合することによって、あるいは透過な冷却体を異なる割合で混合することによって調整される。
【0020】
図2および3の実施例では、液体窒素の噴出カーテンを用いて、噴出液滴が凍結され、側壁210、310への凍結粉末の凝集が回避される。液体窒素の噴出速度と噴出量は、噴出凍結処理による冷却と、凍結粉末の出口フィルタ222、322への搬送と、に関する要求事項に合致するように制御される。図1の例では、凍結チャンバー室110の多孔質側壁を通過する流束は、液体窒素の噴出カーテンと同じ機能を有する。すなわち、粒子の凝集を抑制して、冷却流体のチャンバー室110への半径方向の特徴的な流束によって、液滴を凍結させ、液滴/凍結粒子が壁表面に接触することを防止するという機能を有する。特定の粉末を処理する場合、多孔質側壁110の厚さ、および100への冷却ガスの流速によって制御されるガス覆いの内部の圧力が調節される。その後、噴出凍結処理において、アトマイザ102の噴出方向によって、下向きの搬送が自動的に生じ、全ての凍結粉末がチャンバー室100の出口端部に搬送される。
【0021】
噴出凍結処理の実施後、乾燥ステップにおいて、低温冷却剤または冷却システムからの流速を調整することにより、適当な乾燥温度が選定される。その間に、ハウジングの出口端部(底部)の出口フィルタ122、222、322に収集された、初期の凍結粉末は、大気圧下の乾燥冷気流中で昇華することによって乾燥される。従って、米国特許第4,608,764号のような他の処理方法において使用される、従来の上気流流動床の噴出凍結乾燥法とは異なり、粉末が凝集粉末か遊離流動粉末かに関わらず、壁に付着した粉末を再搬送する外力が存在しなくても、全ての凍結粉末は、出口フィルタの方に落下し、または下向きの気流によって出口フィルタの方に搬送される。
【0022】
また、本発明を使用して、チャンバー室110、210、310の側壁に接触する凍結粉末をふるい分けることにより、従来の技術に比べて、汚染を少なくすることが可能となる。昇華が生じるため、凍結粒子は、軽くなり、空力的な挙動が変化する。一部の乾燥粒子は、出口フィルタ122、222、322に、低結合性のケーキを形成し、乾燥冷気流を用いたこのケーキからの大気下での昇華によって、残りの水分が除去され、微細な遊離流動粉末が残留する。噴出凍結大気乾燥処理の後、最初の凍結滴と大まかに同等の寸法で同等の形状の、乾燥多孔質粒子が得られる。
【0023】
この方法によって生成される噴出凍結大気乾燥粒子は、呼吸器の供給装置に使用される、呼吸器向けの薬品の投与に適した形態を有し、これは、例えば、2003年11月27日に出願された米国特許第60430085号に示されている。一般に、この処理方法によって形成される粒子の多孔質性は、ダウケミカル社のバイオアクオス(BioAqueous)技術に見られるような急速溶解、および米国特許第6,635,283号等に示されているような、他の目的に適している。
(操作手順)
機器は、液体窒素を直接噴出させるか、冷却システムからの冷却流体を多孔質壁を介してチャンバー室110に流通させることにより、チャンバー室110、210、310が所望の温度に到達するまで、約5〜30分間動かした。次に、被乾燥物質の水溶液またはサスペンションをアトマイザ102、202、302を用いて噴出させ、選定温度においてこれを、リングノズル218、318から生じる液体窒素の周囲カーテンによって、またはチャンバー室110の多孔質側壁を介したノズル118からの低温流束等によって、in-situで一斉に凍結させた。凍結粉末は、同時に生じる下向きの流束によって、下側の出口フィルタ122、222、322にまで搬送される。噴出凍結処理の完了後、低温(−50℃乃至−196℃の低温)流体の流束を止め、冷却システムよりも幾分高い温度(−10℃乃至−30℃)の冷却ガスに切り替えた。次に、底部の出口フィルタ122、222、322に収集された凍結粉末を、大気圧下で昇華させることにより、凍結粒子の残留水分が乾燥冷気流によって除去されるまで、連続的に乾燥した。噴出凍結大気乾燥処理の後、出口フィルタ122、222、322上には、低結合性のケーキが生じた。これは、極めて脆く、自由流通時に容易に崩壊し、元々の凍結滴とほぼ同寸法で同形状の乾燥多孔質粒子が得られた。冷却粒子表面での水分の凝集を抑制するため、チャンバー室100、200、300から試料が収集される前に、乾燥冷却ガスの温度を徐々に室温まで上昇させた。
【0024】
ある実施例では、粉末は、前述の方法を用いて形成した。15wt%のマンニトール溶液を、図1に示す機器を用いて、噴出凍結乾燥した。15%のマンニトール(Mannitol USP粉末、フィッシャー(Fisher Scientific)社)水溶液を用いて、本方法を検証した。噴出の前に、噴出凍結乾燥のチャンバー室110を、所望の温度(−65℃)に到達するまで、約20分間稼働させた。20分の間、チャンバー室110には、多孔質側壁を介して、2つの平行なドライアイス冷却列を通過した冷却ユニットからの冷却流体が流通される。Chem-Tech Pump(モデルCTPA4LSA-PAP1-XXXX、ビッキング(Viking pump of Canada)社、カナダ、オンタリオウィンザー)を用い、0.6SCFMの流速の圧縮駆動気体(窒素)を利用して、20mlの15%のマンニトール溶液をアトマイザ噴出ノズル102(スプレーイング(Spraying System)社、米国イリノイ州ホイートン)に送り込み、上方からチャンバー室に向けて噴出した。噴出凍結処理は、4分以内に完了した。その間、チャンバー室110の温度は、混合冷却ガス(窒素)によって、−50℃乃至−70℃に保持されていた。この場合、チャンバー室内の圧力は、ほぼ大気圧であった(約1.02atm)。噴出凍結処理の後、ポンプと噴出用の駆動ガスを止め、乾燥用の冷却ガスを、60L/分の流速で流通させた。チャンバー室の温度は、冷却列のドライアイスの高さを調節することにより、約−15℃(−5℃乃至−20℃)に保持した。1時間の乾燥の後、さらに30分以下の時間、30L/分の流速で冷却ガスを流通させることにより、チャンバー室の温度は、徐々に室温まで上昇した。その後、冷却ガスを止め、フィルタ122上の乾燥粉末ケーキを回収した。このケーキは、容易に崩壊して自由流通粒子となり、得られた粒子は、極めて多孔質でほぼ球形であることがわかった。測定された水分量は、0.9%に過ぎなかった。出口フィルタから回収された一つの試料粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像写真から、粉末粒子は、しばしば真空での噴出凍結乾燥法において見られるものと同様に、比較的球形で、著しく多孔質であることがわかった。
【0025】
マンニトールの結晶化を回避するため、マンニトールは、−50℃乃至−70℃で噴出凍結され、−5℃乃至−20℃の温度で乾燥される(マンニトール水和物は、約38℃で生じる)。実用上の要求に基づいて(各生物物質は、望ましい噴出凍結および乾燥温度を有する)、噴出凍結乾燥条件は、混合冷却ガスの温度および流速を変化させることにより、調整することができる。バッチスケールに応じて、これらのパラメータは、変えても良い。
【0026】
乾燥空気を用いた大気圧凍結乾燥法の場合、材料が完全に凍結乾燥される温度は、その融点によって定まる。氷の蒸気圧は、融点によって実質的に固定されるため、凍結乾燥処理の速度は、材料内の水蒸気の拡散抵抗によって制御される。この抵抗は、拡散経路長および材料の透過率に比例する。従って、大気圧凍結乾燥処理法は、開放構造において材料内の拡散距離が極めて小さな、広い範囲の材料に適用することができる。
【0027】
本発明から逸脱しないで、本願に示した本発明の軽微な修正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による大気噴出凍結乾燥法を実施する装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明による大気噴出凍結乾燥法を実施する装置の第2の実施例を示す図である。
【図3】本発明による大気噴出凍結乾燥法を実施する装置の第3の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を形成する方法であって、
液滴の流束を構成するため、粉末形成成分を含むキャリア液体を噴出するステップと、
前記液滴を凍結させて凍結粒子にするのに十分な時間の間、前記流束を冷却剤と共搬送させるステップと、
前記凍結粒子を乾燥させて、乾燥粉末を形成するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記粉末形成成分は、前記キャリア液体中に懸濁または溶解していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液滴の流束は、冷却剤の並流内に共搬送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却剤の並流は、リングノズルから噴出されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記流束は、チャンバー室に流入され、該チャンバー室の多孔質壁を介して流入された冷却剤によって、共搬送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記凍結粒子は、フィルタに収集されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結粒子は、前記フィルタに収集される間に、実質的に乾燥されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却剤は、液体粒子の凍結の間、第1の温度範囲を有し、凍結粒子の乾燥の間、第1の温度範囲よりも高い第2の温度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア液体は、2以上の粉末形成成分を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
チャンバー室内で粉末を形成する方法であって、
液滴の流束を形成するため、粉末形成成分を含む液滴の流束を提供するステップと、
前記チャンバー室内において、前記液滴を処理するステップであって、冷却剤の流束によって、析出の前に前記液滴が凍結し、さらに析出した凍結粒子が乾燥され、粉末が形成されるステップと、
を有する方法。
【請求項11】
冷却剤の流束は、液滴の流束と並流化されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
凍結粒子を乾燥させる冷却剤の流束は、重力方向と平行な方向であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却剤の流束によって、液滴が前記チャンバー室の壁に付着することが抑制されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記液滴の流束は、2以上の粉末形成成分を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
粉末を形成するため、成分搬送液体を大気圧噴出凍結乾燥処理する機器であって、
一端にアトマイザを有するチャンバー室であって、前記アトマイザは、成分搬送液体のソース源に接続され、液滴の流束を生成するところのチャンバー室と、
前記アトマイザによって噴出された噴出流体を共搬送する、冷却剤の流束を提供するノズル系と、
前記ノズル系用の冷却剤のソース源と、
前記アトマイザから隔離された収集器であって、前記アトマイザによって噴出された液滴が、前記収集器と接する前に、前記冷却剤の流束によって凍結される、収集器と、
を有する機器。
【請求項16】
前記ノズル系およびアトマイザは、冷却剤と液滴の並流を提供するように配向されていることを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項17】
前記ノズル系は、前記アトマイザを取り囲むリングノズルを有することを特徴とする請求項16に記載の機器。
【請求項18】
前記ノズル系は、流体室を定形する多孔質壁の周囲に配置され、液滴の流束は、前記多孔質壁を透過できることを特徴とする請求項17に記載の機器。
【請求項19】
前記収集器は、前記チャンバー室の出口にあるフィルタであることを特徴とする請求項15に記載の機器。
【請求項20】
前記アトマイザおよび収集器は、前記チャンバー室の反対側の端部にあることを特徴とする請求項19に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−521136(P2007−521136A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545859(P2006−545859)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002160
【国際公開番号】WO2005/061088
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506213717)
【出願人】(506213739)
【Fターム(参考)】