説明

大気圧プラズマ生成方法および装置並びに表面処理方法

【課題】 ヘリウムガスなどの希ガスの使用量を大幅に減少することができ、且つ大気圧下でプラズマを容易に生成できるようにする。
【解決手段】 誘電体1、1によって形成したガス流路23に、酸素ガスボンベ34とヘリウムガスボンベ36とから酸素ガスとヘリウムガスとを供給するとともに、電極2a、2b間に高周波電源いよって高周波電圧を印加し、プラズマ生成領域22にプラズマを発生させる。その後、ヘリウムガスの供給を停止し、酸素ガスのみによるプラズマを生成し、それにより生ずる活性種を被処理体8に照射して被処理体のアッシング処理やエッチング処理などを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマを発生させるプラズマ生成方法に係り、特に被処理体の表面を処理するプラズマを大気圧下において発生させる大気圧プラズマ生成方法及び装置並びに表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、有機物の除去方法として、真空中において酸素プラズマを形成し、生成された酸素ラジカルにより半導体基板等に塗布した有機物すなわちレジストを酸化し、ガス化して除去するアッシング処理や、大気圧下においてコロナ放電などによって生成されたオゾンを用いて除去するアツシング処理、あるいはUV(紫外線)を用いて有機物を分解し、除去する処理が知られている。
【0003】ところが、真空プラズマを用いたアツシングによる有機物除去方法は、真空容器や排気ポンプ等を要するため、装置が大型化・複雑化し、しかも高価で処理コストが上昇するとともに、生産性においても、真空排気を行う必要が有り処理可能な数量が制限されるという課題を有する。
【0004】また、大気圧下でヘリウムを用いない放電処理として知られているコロナ放電処理や無声放電処理は、数十Hzから数十kHzの周波数で且つ十数kVまで昇圧された高電圧を印加して放電させオゾンを生成し、その酸化力により有機物を除去するものであるが、本方法では、酸素の活性種に比べオゾンの酸化力が小さいため、有機物の除去処理の高速化が困難である。
【0005】これに対し、こうした課題を解決するために、例えば特開平07一245192号公報で公開されているように、比較的安価で生産性を向上させる手段として大気圧またはその近傍の圧力で形成されるプラズマにより処理する方法が提案されている。そして、特開平07−245192号公報では、モールド樹脂封入前に被処理体のICとモールド樹脂との密着性を向上させるために、ICに付着している有機物を除去し、濡れ性を向上させる表面処理が開示されている。上述のアッシング処理及び表面処理で、大気圧プラズマを生成する際に用いられるプラズマ生成用ガスとしては、放電し易いガス、例えば放電開始電圧の低いヘリウムガスを用いる事が知られており、さらにはアツシングを行うためにプラズマ生成ガスと共に酸素を添加することが知られている。
【0006】大気圧プラズマによる表面処理の手法としては、被処理体を直接プラズマに晒す直接放電処理方式と、被処理体をプラズマに直接晒さず、プラズマにより生成された活性種等を被処理体に照射する間接放電処理方式がある。
【0007】直接放電型処理方式では、処理の高速化が望めるがプラズマダメージに起因した被処理体の破壊や特性シフト等が生じやすい。特に、被処理体の被処理面が金属であると、突起部に放電が集中しやすく被処理面が均一に処理できなくなる。これに対し間接放電処理方式では、被処理体が放電に晒されないため上述したプラズマダメージは生じない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、放電中で生成された活性種には寿命が有り、この寿命が比較的短いため、間接放電処理方式の場合、被処理体をプラズマ発生部より離れた位置に設置すると、被処理体に照射できる活性種の数が減少し処理効率が大幅に低下するという問題点を有する。
【0009】また、間接放電処理方式で、高速処理を行うためには、ヘリウムガスを大量に使用しなければならない。これは、ヘリウムガスが比較的容易に放電するガスであると共に、放電中に生成した活性種をより多く被処理体に輸送するための輸送ガスとしても働くためである。この場合には、ヘリウムガスは単位容量当たりのコストが高く、大量に使用することによりランニングコストが高くなるという問題点を有する。
【0010】一般的に、プラズマの密度が高いほど処理速度が向上することが知られている。放電中のプラズマ密度は印加される電圧の周波数にも依存し、周波数が高いほど高密度のプラズマが得られると言われている。これは、周波数が高いほど電子の振動が活発になり、気体との衝突確率が上がり電離頻度が高まるためと考えられる。しかしながら、大気圧下、ヘリウムガスを用いず、他の反応性ガスを数MHz以上の周波数を用いて放電を開始させることは極めて困難てある。これは、例えば窒素ガス、酸素ガスなどの反応性ガスの放電開始電圧が、パッシェンの放電理論から示されるように、ヘリウムガスに比べ大気圧下における火花電圧が極めて大きいことにも起因する。窒素ガスの場合、1mm程度の電極間距離においては、放電を開始させるには数kVから十数KV程度が必要である。このように、ヘリウムを使わず周波数の高い放電の開始が困難であることから、大気圧プラズマを生成する場合、プラズマ生成ガス(放電用ガス)の組成は、全体の90%以上を放電開始電圧の小さいヘリウムガス、残りの10%以下を酸素ガスなどの反応ガスとなっており、反応ガスのみを用いたアツシングや濡れ性の改善処理の高速化が困難であるという課題がある。このため、高価なヘリウムガスを大量に使用することになり、処理コストを低減することが困難となっている。
【0011】また、以上述べた表面処理方法における有機物除去に際しては、かならず酸素を用いている。このため、被処理体上の有機物の除去と同時に被処理体の表面が酸化されてしまうという課題がある。したがって、極度に表面酸化を問題とする被処理体においては、前述の処理方法を用いた有機物の除去は困難である。
【0012】また、酸素を用いているため、オゾン処理以外の処理方法においてもオゾンの生成は避けられない。周知のとおり、オゾンが人体に対して有害性をもつことから、特に高濃度のオゾン発生に対しては除害等の安全対策が必要となる。
【0013】また、大気圧プラズマ処理は、真空プラズマに比べ大気開放で使用できるため場所を選ばずに設置できるという利便性があるが、酸素を大量に使用する条件下では、処理室内に着火源となりやすいリレー等の電装系や可燃物が設置されていると酸素濃度が高くなり発火の危険性がある。したがって、オゾンと同様、安全対策が必要てあり、装置の設置場所の制約のみならず、装置コスト上昇といった課題を有する。
【0014】本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヘリウムガスなどの希ガスの使用量を大幅に減少することができ、且つ大気圧下でプラズマを容易に生成できるようにすることにある。
【0015】また、本発明の目的は、希ガスを使用することなく大気圧下でプラズマを生成できるようにすることにある。
【0016】さらに、本発明の目的は、プラズマ処理時の有機物除去処理速度、表面の濡れ性処理速度、エッチング速度などの表面処理速度の向上を目的としている。
【0017】さらに、本発明は、処理に用いるガスのランニングコストの低減、さらには酸素を用いない新たな有機物除去手段を提供することで新たなプロセスを提案できる表面処理方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、希ガスと表面処理用ガスとの混合ガスを前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生させ、その後、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする。
【0019】請求項2の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、希ガスを前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生させ、その後、表面処理用ガスを前記プラズマ生成領域に供給して表面処理用ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする。
【0020】請求項3の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、請求項1又は2において、前記表面処理用ガスは酸素ガス又は四フッ化炭素ガスのいずれかであり、前記トリガガスはヘリウムガスであることを特徴とする。
【0021】請求項4の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、少なくとも前記プラズマ生成領域での放電開始時に、前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を前記放電用ガスとともに供給してプラズマを発生させることを特徴とする。電子又は活性種は、加熱したフィラメントから放出される熱電子や電子銃から放射された電子、さらにはコロナ放電を発生させて生成した電子や活性種を用いてよい。
【0022】請求項5の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、請求項4において、前記放電用ガスは、酸素ガス、四フッ化炭素ガス又はこれらの1つと希ガスとの混合ガスであることを特徴とする。
【0023】請求項6の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、請求項4又は5において、前記プラズマの発生後に、前記電子又は活性種の供給を停止することを特徴とする。電子又は活性種は、プラズマの発生後も継続して供給してもよい。
【0024】請求項7の発明に係る大気圧プラズマ生成方法は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする。
【0025】上記の大気圧プラズマ生成方法を実施する請求項8の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に表面処理用ガスを供給する第1ガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に、希ガスを供給する第2ガス供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、前記プラズマ生成領域にプラズマが発生したことを検知するプラズマ検出手段と、このプラズマ検出手段の検出信号に基づいて前記第2ガス供給手段を制御し、前記プラズマ生成領域への前記希ガスの供給を停止する制御手段とを有することを特徴とする。
【0026】請求項9の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、請求項8において、前記制御手段は、前記希ガスによるプラズマの発生後に、前記第1ガス供給手段を制御して前記プラズマ生成領域に前記表面処理用ガスを供給することを特徴とする。請求項10の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に放電用ガスを供給するガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を供給するトリガ供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる高周波電源とを有することを特徴とする。
【0027】請求項11の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に放電用ガスを供給するガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を供給するトリガ供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる高周波電源と、前記プラズマ生成領域にプラズマが発生したことを検知するプラズマ検出手段と、このプラズマ検出手段の検出信号に基づいて、前記トリガ供給手段を制御して前記電子又は活性種の供給を停止する制御手段とを有することを特徴とする。
【0028】請求項12の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、請求項8乃至11のいずれかにおいて、前記高周波電源の出力する高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする。
【0029】請求項13の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、請求項8乃至12のいずれかにおいて、前記高周波電源に接続した前記電極を取り付けた前記誘電体には、前記高周波電源に接続した電極を覆ってカバーが設けてあり、このカバー内に空気より放電しにくい流体が注入してあることを特徴とする。
【0030】請求項14の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、請求項13において、前記空気より放電しにくい流体は四フッ化炭素ガスであり、前記誘電体には前記カバーの内部と前記プラズマ生成領域とを連通する孔が形成され、この孔を介して前記カバー内に注入された四フッ化炭素ガスを前記プラズマ生成領域に供給することを特徴とする。
【0031】請求項15の発明に係る大気圧プラズマ生成装置は、請求項13乃至14のいずれかにおいて、前記高周波電源に接続した電極と前記カバーの内面との距離は、前記プラズマ生成領域の放電ギャップより大きくしてあることを特徴とする。請求項16の発明に係る表面処理方法は、大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に高周波電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記放電用ガスは、窒素及び酸素を含むガスであり、窒素の酸素に対する混合率=(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100が99%以上であることを特徴とする。
【0032】請求項17の発明に係る表面処理方法は、大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に高周波電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理して前記被処理体の表面を親水化する表面処理方法において、前記放電用ガスは、窒素及び酸素を含むガスであり、窒素の酸素に対する混合率=(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100が99%以上であることを特徴とする。
【0033】請求項18の発明に係る表面処理方法は、請求項16又は17において、前記プラズマを継続的に生成する放電維持手段が1MHz〜100MHzの高周波電圧を印加することであることを特徴とする。
【0034】請求項19の発明に係る表面処理方法は、請求項18において、電極に前記放電維持手段と、50kHz以下の高電圧印加手段を併設し、前記高電圧印加手段を前記放電維持手段に重畳して印加し、放電開始後、前記放電維持手段単独または前記放電維持手段に前記高電圧印加手段を重畳して用いることを特徴とする。請求項20の発明に係る表面処理方法は、請求項18において、放電開始前に予め前記誘電体の放電面を加熱することを特徴とする。
【0035】請求項21の発明に係る表面処理方法は、大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理する表面処理方法において、少なくともプラズマ生成開始までの所定の期間、前記第1電極及び前記第2電極間に複数の異なる周波数を有する電圧を重畳して印加することを特徴とする。
【0036】請求項22の発明に係る表面処理方法は、請求項21において、前記複数の異なる周波数を有する電圧は、少なくとも、1MHz〜100MHzの第1電圧源及び50kHz以下の第2電圧源から供給されるものてあることを特徴とする。請求項23の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成したプラズマ生成領域に大気圧又はその近傍の圧力下で放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給してプラズマを発生させ、その後、希ガスの供給を停止して酸素ガスによるプラズマを生成することを特徴とする。
【0037】請求項24の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスを供給してプラズマを発生させたのち、前記プラズマ生成領域に酸素ガスを供給して酸素ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする。
【0038】請求項25の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、電子又はガス状の活性種を酸素ガス又は酸素ガスと希ガスとの混合ガスからなる放電用ガスとともに前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを生成させることを特徴とする。
【0039】請求項26の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成したプラズマ生成領域に大気圧又はその近傍の圧力下で放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスと四フッ化炭素ガスとの混合ガスを供給してプラズマを発生させ、その後、希ガスの供給を停止して四フッ化炭素ガスによるプラズマを生成することを特徴とする。
【0040】請求項27の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスを供給してプラズマを発生させたのち、前記プラズマ生成領域に四フッ化炭素ガスを供給して四フッ化炭素ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする。
【0041】請求項28の発明に係る表面処理方法は、誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、電子又はガス状の活性種を四フッ化炭素ガス又は四フッ化炭素ガスと希ガスとの混合ガスからなる放電用ガスとともに前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生することを特徴とする。
【0042】請求項29の発明に係る表面処理方法は、請求項25又は28において、前記プラズマの発生後に、前記電子又は活性種の前記プラズマ生成領域への供給を停止することを特徴とする。
【0043】請求項30の発明に係る表面処理方法は、請求項24乃至32のいずれかにおいて、前記高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする。
【0044】
【作用】上記のごとく構成した請求項1又は2に係る発明においては、プラズマを立上げるときにだけ高価な希ガスを使用し、プラズマが立上がったのちは希ガスの供給を停止するようにしているため、希ガスの使用量を大幅に削減することができ、大気圧プラズマを安価に得ることができ、安価な大気圧プラズマを用いた表面処理を行うことができる。表面処理用ガスとしては、レジストなどの有機物を酸化除去する場合には酸素ガス、半導体基板のエッチングなどの場合には四フッ化炭素ガスを用いることができる。
【0045】請求項4に係る発明においては、プラズマ生成領域に電子又は活性種を供給してグロー放電を生じやすくしているため、希ガスに対する酸素ガスや四フッ化炭素ガスなどの混入量を多くしたり、希ガスを用いずに酸素ガスや四フッ化炭素ガスのみによりグロー放電を発生させてプラズマを生成することができ、希ガスの使用量を削減できて大気圧プラズマの生成コストを削減することができる。放電用ガスとしては、酸素ガス、四フッ化炭素ガス又はこれらの1つと希ガスとの混合ガスを用いることができる。また、プラズマが発生したのちは、適正な処理条件が得られるように、電子又は活性種の供給を停止してよし、継続して供給してもよい。
【0046】上記の大気圧プラズマ生成方法において、高周波電圧の周波数は、カットオフ周波数以上、400kHz〜100MHz、望ましくは400kHz〜40MHz程度以下にすると、プラズマ生成領域の電子が電極に衝突することによるコロナ放電(ストリーマ放電)への移行を防止することができる。周波数が400kHzより低くなると、電極に衝突する電子の数が多くなり、コロナ放電を生じやすい。また、周波数が100MHzを超えるような高周波になると、電子の移動距離が短くなって電界による充分なエネルギーが得られず、プラズマの発生、維持が困難になる。
【0047】そして、請求項8又は9に係る大気圧プラズマ生成装置によれば、プラズマの立上げるときだけ希ガスを使用し、その後は希ガスを用いずに大気圧プラズマを容易に生成することができる。
【0048】請求項10又は12に係る発明によれば、プラズマ生成領域に電子又は活性種を供給するため、希ガスに比較的多量の酸素ガスや四フッ化炭素ガスを混入して、もしくは希ガスを用いずに大気圧プラズマを生成することができる。
【0049】また、請求項13のように、高周波電源に接続した電極をカバーで覆って空気より放電しにくい流体を注入すると、希ガスを用いないためにより高い電圧する場合であっても、沿面放電を確実に防止することができる。そして、空気より放電しにくい流体を四フッ化炭素ガスとし、カバー内に注入した四フッ化炭素ガスを誘電体に設けた孔を介してプラズマ生成領域に供給してプラズマを発生させるようにすると、沿面放電を避けつつカバーを放電用ガスの供給路として利用することができ、装置の小型化、簡素化を図ることができる。さらに、カバーの内面と電極との間隔を放電ギャップより大きくすると、カバーと電極との放電を確実に防止することができる。
【0050】そして、請求項16乃至17の発明に係る表面処理方法によれば、窒素ガスを用いて有機物の除去高速化や表面の濡れ性改善処理の高速化が可能になるので、表面酸化が問題となる被処理体への処理や、酸素雰囲気中では発火等危険性の高い雰囲気での被処理体の有機物が除去可能となる。
【0051】請求項18の発明によれば、数MHz以上の放電を用いるため、高密度の窒素プラズマが形成でき、さらに有機物の除去あるいは濡れ性処理の高速化が可能となる。また、請求項18の発明によれば、数MHz以上の高周波電圧にて、ヘリウムガスを用いずとも大気圧下で、窒素ガス等の反応性ガス単体での放電が可能になる。これにより高密度の窒素プラズマが生成でき処理の高速化が図れるとともに、安価な窒素ガスを用いることができるので、ランニングコストが低減できる。
【0052】請求項19の発明によれば、放電開始と放電維持の機能が別れており、それぞれ独立して制御出来る。放電開始時の電圧は、放電維持時の電圧にくらべ高いことが知られており、放電開始時と放電維持時の機能が別れることで適正且つ効率のよい電圧をそれぞれ選択できる。ヘリウムガスを用いずに単体のガスのみでは、大気圧下において数十Hzから数十kHzの範囲で高電圧のみしか放電が開始でなかった窒素ガスでも、放電開始時のみ高電圧を用い、放電維持時には高周波電圧に切り替えることで、容易に、数MHz以上の高周波放電が開始でき、処理速度を高めることができる。
【0053】請求項20の発明に係る表面処理方法によれば、放電面を予め暖めておくことで、電極表面から二次電子の放出性を高めることができ、従来、大気圧下において数十Hzから数十kHzの範囲で高電圧のみしか放電が開始できなかった窒素ガスても、放電のトリガー時の二次電子または熱電子により放電が容易に得られるようになる。
【0054】また、請求項21の発明によれば、印加する電圧を放電開始機能及び放電維持機能との2つの役割に分割し、適切な電圧を選択でき、処理方法の最適化等を図ることが可能となる。
【0055】また、請求項22の発明によれば、放電開始電圧の高いガスに関しても、放電開始時に高電圧を印加し、放電維持時に高周波に切り替えることがことが可能となる。
【0056】さらに、請求項23又は24に係る表面処理方法によれば、プラズマの立上げ時にのみ希ガスを使用し、その後、酸素ガスのみによるプラズマを生成できるため、希ガスの使用量を大幅に削減することができ、酸素ガスを用いたアッシング処理のコストの低減と、処理速度の向上とを図ることができる。
【0057】そして、請求項25に係る表面処理方法においては、電子又はガス状の活性種を利用してプラズマを生成するようにしているため、希ガスをまったく用いることなく酸素ガスによるプラズマを生成でき、さらにコストの低減を図ることができる。また、希ガスを用いた場合でも、酸素ガスの混入量を大幅に増加させることができ、従来より大幅なコストの低減と処理速度の向上が図れる。
【0058】請求項26乃至28に係る表面処理方法においては、希ガスを用いずに四フッ化炭素ガス単独でのプラズマを生成でき、四フッ化炭素ガスによるエッチング処理コストの低減と、処理速度の向上とを図ることができる。
【0059】そして、請求項29に係る表面処理方法によれば、プラズマの立上げ後にプラズマ生成領域への電子又は活性種の供給を停止して適正な処理条件を設定することができる。さらに、請求項30の発明によれば、プラズマの生成を容易に行うことができ、しかも密度の高いプラズマが得られる。
【0060】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る大気圧プラズマ生成方法及び装置並びに表面処理方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0061】図1は、本発明の第1の実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の概略的な構成図である。
【0062】図1において、プラズマ生成装置は、下部が開口しているチャンバー21の内部にプラズマ発生部が設けてある。プラズマ発生部は、供給された放電用ガスの流路23を形成するため1mmから3mm程度のギャツプを形成した一対の板状の誘電体1と、一対の誘電体1を挟んで設けた第1電極、第2電極である一対の電極2a、2bから構成される。電極2a、2bは、ガス流路23内でグロー放電を発生させてプラズマを生成するためのもので、両電極間がプラズマ生成領域22となっている。そして、誘電体1は、実施例の場合、放電による温度上昇に起因する割れを防ぐため、石英ガラスを用いているが、セラミックなどを用いてもよい。
【0063】チャンバー21の下部が被処理体8の表面処理を行う処理部となっていて、処理部に被処理体8を設置するステージ7が設けてある。このステージ7は、図1の矢印24のように水平方向に移動可能であり、ステージ7を移動させることで被処理体8の上面全体を処理できるようにしてある。そして、誘電体1は、被処理体8に近い端面から被処理体8までの距離が1〜2mm程度に保たれている。また、ガス流路23は下端が開口し、下方を移動する被処理体8の表面にプラズマによって生成された活性種を照射できるようにしてある。
【0064】一方の電極2bは接地してあって、他方の電極2aにはインピーダンス整合器6を介して高周波電源25が接続してあり、両電極2a、2b間に所定周波数((400kHz〜100MHz)の高周波電圧を印加できるようにしてある。また、チャンバー21内の適宜の個所には、プラズマ検出手段である光センサ26が配設してあって、プラズマ発生時のグロー放電による光を検出して検出信号を制御手段であるコントローラ28に入力するようになっている。
【0065】チャンバー21の上部には、中間チャンバー12が設けてある。この中間チャンバー12には、管路30、32を介して放電用ガスである酸素ガスを充填してある酸素ガスボンベ34と、希ガスであるヘリウムガスを充填したヘリウムガスボンベ36とが接続してある。そして、中間チャンバー12とガス流路23とは、チャンバー21に形成したガス供給口13によって連通していて、中間チャンバー12に流入したヘリウムガスと酸素ガスとをガス流路23に供給できるようにしてある。また、管路30には、酸素ガスボンベ34とともに第1ガス供給手段を構成している流量制御弁38が設けてある。さらに、管路32には、ヘリウムガスボンベ36とともに第2ガス供給手段を構成している流量制御弁40が設けてある。これらの流量制御弁38、40は、コントローラ28によって開度が制御されるようにしてある。
【0066】このように構成したプラズマ生成装置による大気圧プラズマの生成は、次のごとくして行う。
【0067】ガス流路23は、減圧せずに大気圧に保持してある。そして、コントローラ28によって流量制御弁38、40を制御し、中間チャンバー12の所定量の酸素ガスとヘリウムガスとを流入させ、その混合ガスをガス流路23を介してプラズマ生成領域22に供給する。プラズマ生成領域22へのガスの供給量は、流量比で酸素ガスが20%以下、ヘリウムガスが80%以上であることが望ましい。具体的には、例えばガス流路23の幅(誘電体1、1間の間隙)が2.2mm、奥行き(図1の紙面に直交した方向)が38mmである場合、酸素ガスを100cc/min流したとすると、ヘリウムガスを400cc/min以上流す。その後、ガスを流した状態で電極2a、2b間に高周波電圧を印加する。
【0068】本実施例の場合、印加した電圧の周波数は、40.68MHzであり、印加電圧がピークピーク(peak−to−peak)値で約2.3kVにおいてグロー放電が開始し、プラズマを発生することができた。
【0069】グロー放電が開始されると、放電に伴う光が光センサ26によって検出され、検出信号がコントローラ28に入力される。コントローラ28は、光センサ26の出力信号に基づいてグロー放電が開始され、プラズマが発生したことを検知すると、酸素ガスの流量を被処理体8の表面処理、例えば被処理体8の表面に存在しているレジストなど有機物の除去に必要な量に制御するとともに、ヘリウムガスの供給を停止する。これにより、酸素ガスのみでは生成しにくい酸素ガスのみによるプラズマを容易に生成することができる。これは、一度プラズマが発生すると、多量の電子がプラズマによって生成され、これらの電子が酸素ガスに衝突して酸素ガスの電離が容易に行われるようになるためと考えられる。
【0070】酸素ガスプラズマによる被処理体8の表面処理、例えば被処理体8の表面に存在する有機物を酸化して除去するアッシングの場合、上記のようにして発生させた酸素ガスプラズマにより生じる活性種を被処理体8の表面に照射する。
【0071】このように、本実施例においては、プラズマの発生時にのみヘリウムガスをトリガとして使用し、被処理体8の表面処理時には酸素ガスのみを使用したプラズマを生成できるため、高価なヘリウムガスの使用量を大幅に削減でき、アッシング処理のランニングコストの大幅な低減を図ることができる。しかも、酸素ガスのみによるプラズマであるため、活性種が大幅に増大してアッシング処理速度を大幅に向上することができる。例えば、従来、ヘリウムガスに流量比2%の酸素ガスを混入してプラズマを発生させてアッシングした場合、アッシング速度が数μm/minであったものが、酸素ガス100%のプラズマによるアッシング速度を約100μm/minにすることができる。
【0072】なお、上記の実施例においては、酸素ガスとヘリウムガスとを同時に流してプラズマを発生させる場合について説明したが、プラズマを立上げるときにヘリウムガスのみをプラズマ生成領域22に供給し、ヘリウムガスによるプラズマが発生したのちに酸素ガスの供給を開始するとともに、ヘリウムガスの供給を停止するようにしてもよい。
【0073】前記実施例においては、光センサ26をチャンバー21の内部に配置した場合について説明したが、チャンバー21にプラズマ生成領域22を観察可能な透光部を形成し、その透光部に対面させて光センサ26をチャンバー21の外部に配置してもよい。このように光センサ26をチャンバー21の外部に設けると、光センサ26が活性種に晒されることがなく、光センサ26が損傷することがない。そして、前記実施の形態においては、プラズマ検出手段が光センサ26である場合について説明したが、高周波電源25に接続した回路の電流を検出したり、整合器6のインピーダンスの整合状態を検出してプラズマの発生を検知するようにしてもよい。そして、前記実施例においては、ヘリウムガスを用いた場合について説明したが、ネオンガスやアルゴンガスなどを用いてもよい。
【0074】また、四フッ化炭素ガスのプラズマによる被処理体8のエッチング処理や、エアプラズマによる被処理体8の表面に存在する汚染物質(例えば、有機物)の除去によるハンダや樹脂等の濡れ性の改善を図る場合、上記の酸素ガスによるプラズマの生成と同様にして四フッ化炭素ガスプラズマ、エアプラズマを得ることができる。
【0075】図2は、大気圧プラズマ生成装置の第2実施例のを示したもので、(1)が斜視図、(2)が平面図、(3)が(2)のA−A線に沿った断面図である。
【0076】図2において、プラズマ生成装置42は、セル44が石英ガラスなどの誘電体から形成してあって、中心部に矩形状のガス流路46が設けてある。ガス流路46は、実施例の場合、放電ギャップ(高さ)dが2.2mm、幅Bが38mmに形成してある。そして、セル44の一端側上部には、第1ガス供給ヘッド48が固定してある。
【0077】第1ガス供給ヘッド48の内部とガス流路46とは、セル44に設けたガス流入口50を介して連通していて、管路52を介して第1ガス供給ヘッド48に導かれたトリガガスをガス流路46の一端側に供給できるようにしてある。そして、ガス流路46に供給されたトリガガスは、同図(3)の矢印54に示したように、反対側の吹出し口56に向けて流れるようになっている。
【0078】セル44の上面中央部には、トリガ供給手段を構成している低周波用電極58がガス流路46と直交させて設けてある。そして、低周波電極58には、ローパスフィルタを介して低周波電源が接続してある(いずれも図示せず)。さらに、セル44の上面には、第1電極である高周波電極60が配設してある。この高周波電極60は、プラズマを発生させるためのもので、低周波電極58よりガス流の下流側に低周波電極58と平行に配置してあって、インピーダンス整合器6を介して高周波電源25に接続してある。また、高周波電極60は、端部がセル44の縁よりD(実施例の場合、約10mm)だけ内側となるように配してあり、セル44の側面をつたわった放電が生じないようにしてある。
【0079】高周波電極60と低周波電極58との間には、第2ガス供給ヘッド62が設けてある。この第2ガス供給ヘッド62は、管路63を介して流入するヘリウムガスと酸素ガス又はヘリウムガスと四フッ化炭素ガスとの混合ガスからなる放電用ガスをガス流路46に供給するためのもので、ガス流入口64を介してガス流路46と連通している。また、セル44の下面には、少なくとも高周波電極60から低周波電極58にわたるように第2電極となる接地電極66が設けてある。そして、ガス流路46の高周波電極60と対応した部分がプラズマ生成領域22となっている。
【0080】このプラズマ生成装置によるプラズマの生成は、次のごとくして行う。
【0081】管路63、第2ガス供給ヘッド62を介して、ヘリウムガスと酸素ガス又はヘリウムガスと四フッ化炭素ガスとの混合ガスからなる放電用ガスをガス流路46に供給するとともに、管路52、第1ガス供給ヘッド48を介して、放電用ガスと同じ組成のトリガガスをガス流路46に供給する。そして、低周波電極58と接地電極66との間に低周波電圧(実施例の場合、9.76kHz、10kV((ピークピーク値))を印加するとともに、高周波電極60と接地電極66との間に高周波電圧(実施例の場合、周波数40.68MHz)を印加する。
【0082】これにより、低周波電極58に対応した部分のガス流路46内にコロナ放電が発生し、トリガガスの一部が電離して電子が生成されるとともに、トリガガスが活性化される。これらの電子と活性種は、トリガガスと放電用ガスとの流れに乗って、プラズマを立上げるトリガとしてプラズマ生成領域22に供給される。そして、電子は、プラズマ生成領域22において高周波電界によりエネルギーを受けて活性種又は放電用ガス分子に衝突し、これら電離して電子を増大させてグロー放電が発生し、プラズマを生成する。高周波電極60に印加する高周波電圧を下げることが可能であって、プラズマを容易に生成することができる。プラズマの発生によって生成された活性種は、吹出し口56から本図に図示しない被処理体に照射し、アッシングやエッチングなどの表面処理に供することができる。
【0083】なお、上記実施例においては、酸素ガスとヘリウムガスとの混合ガス、又は四フッ化炭素ガスとヘリウムガスとの混合ガスを放電用ガス及びトリガがすとして使用した場合について説明したが、酸素ガス又は四フッ化炭素ガスのみを放電用ガス、トリガガスとして使用してもよい。さらに、エア単独又はヘリウムガスにエアを混入したものを放電用ガス、トリガガスとして使用してもよい。また、放電用ガスとして酸素ガス、四フッ化炭素ガス、エア又はこれらの1つとヘリウムガスとの混合ガスを用い、トリガ用ガスとしてヘリウムガスを用いてもよい。そして、上記のいずれの場合においても、適正な処理条件を得るために、グロー放電が発生してプラズマが立上がったならば、トリガガスの供給を停止するとともに、低周波電圧の印加を停止してもよい。また、四フッ化炭素ガスを使用する場合、四フッ化炭素ガスをバブリング装置において水中を通し、水分(H2 O)を含ませて使用してもよい。
【0084】図3と図4には、第2実施例のプラズマ生成装置42を用いた大気圧プラズマの生成実験の結果が示してある。図3は、酸素ガス(O2 )の流量を100cc/minに固定し、ヘリウムガス(He)の流量を変えたときのグロー放電開始時とグロー放電OFF(消滅)時との高周波入力電力を示したものである。また、図4は、四フッ化炭素ガスの流量を50cc/minに固定し、ヘリウムガスの流量を変えたときのグロー放電開始時とグロー放電OFF時の高周波入力電力が示してある。
【0085】いずれの場合においても、ガス流路46の放電ギャップd=2.2mm、幅B=38mmである。また、低周波電極58に印加した低周波電圧は周波数が9.76kHz、電圧がピークピーク値で10kV、高周波電極60に印加した高周波電圧は周波数が40.68MHzであって、出力1kWの高周波電源を使用している。
【0086】そして、図3においては、○が高周波(RF)電圧のみを印加した場合の放電開始時の入力電力値であり、●が高周波電圧のみを印加した場合の放電がOFFしたときの入力電力値である。また、図中の×はグロー放電が発生しなかったこと示している。また、△は低周波電極58に低周波(LF)電圧を印加し、高周波電極60に高周波(RF)電圧を印加したときの、グロー放電開始時の高周波電極60に供給した電力であり、▲は同じくグロー放電がOFFするときの高周波電極60に供給された電力である。
【0087】図3に示されているように、酸素ガスを100cc/min流し、高周波電圧のみを印加した場合、流量比で酸素ガスが25%、ヘリウムガスが75%(300cc/min)ではグロー放電が発生せず、プラズマの生成が行われなかった。しかし、酸素ガス100cc/minに対してヘリウムガスを400cc/minを流した場合、印加電圧が約2.3kVでグロー放電が開始した。そして、酸素ガスに対するヘリウムガスの流量が多くなるのにしたがって、グロー放電の発生する電圧が低下するとともに、入力電力が低下する。また、グロー放電がOFFする電力もヘリウムガスの流量が増加するのにともなって低下する。
【0088】一方、低周波電圧と高周波電圧とを併用した場合、図3に示されているように、ヘリウムガスの流量が300cc/min、すなわち流量比で酸素ガスが25%、ヘリウムガスが75%であってもグロー放電が発生し、プラズマを生成することができる。したがって、ヘリウムガスの使用量を削減できてアッシングの処理コストを低減できる。しかも、酸素ガスの混入量を増大することができるため、アッシング処理の速度を高めることができる。さらに、プラズマの発生後も低周波電極58に低周波電圧を印加した状態で表面処理を行えば、グロー放電の維持電圧を下げることができるとともに、低周波電圧によって生成された活性種がプラズマによる活性種と重畳されるため、処理速度をさらに向上することができる。
【0089】図4においては、○が高周波(RF)電圧のみを印加したときのグロー放電開始時の入力電力値、●が高周波電圧のみを印加したときのグロー放電OFF時の入力電力値である。そして、×は放電しなかったことを示す。また、△は低周波電極58に低周波(LF)電圧を印加し、高周波電極60に高周波(RF)電圧を印加したときの、グロー放電開始時の高周波電極60に供給した電力であり、▲は同じくグロー放電がOFFするときの高周波電極60に供給された電力である。
【0090】図4に示されているように、四フッ化炭素ガスを50cc/min流した場合、ヘリウムガスの流量を400cc/minにすると放電しない。そして、ヘリウムガスの流量が500cc/minでは、高周波電圧の印加のみでもグロー放電を発生させることができ、ヘリウムガスの流量の増加に伴って入力電力が低下する。そして、低周波電圧と高周波電圧とを併用した場合、ヘリウムガスの流量が500cc/minであっても、高周波電圧単独の時よりもより低い入力電力でもグロー放電をさせることができる。なお、処理用のガス(反応ガス)として四フッ化炭素ガスを使用する場合、フッ素による腐食を避けるため、誘電体はセラミックを用いることが望ましい。
【0091】なお、前記実施例においては、トリガとして低周波電圧を印加して生成した電子又は活性種を用いた場合について説明したが、加熱したフィラメンとから放射された熱電子、電子銃などから出射された電子やそれにより生じた活性種などをトリガとして使用してもよい。
【0092】図5は、第3実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の断面図であって、図2に示したプラズマ生成装置42の変形例を示したものである。すなわち、このプラズマ生成装置70は、図2に示した第2ガス供給ヘッド62を省略したもので、他の構成は図2に示したものと同様となっている。
【0093】この実施例に係るプラズマ生成装置70は、ガス供給ヘッド48を介してヘリウムガスと酸素ガス、又はヘリウムガスと四フッ化炭素ガスとの混合ガスからなる放電用ガスをガス流路46に導入する。そして、放電用ガスを低周波電極58に印加した低周波電圧によって電離又は活性化して電子や活性種を生成し、これらを高周波電極60に対応したプラズマ生成領域22にトリガとして供給し、プラズマを発生させるものである。このように構成することにより、プラズマ生成装置の簡素化を図ることができる。ヘリウムガスにエアを混入したガスを用いた場合も、同様にプラズマを発生させることができる。
【0094】なお、ガス供給ヘッド48から酸素ガス、四フッ化炭素ガス又はエアを供給し、低周波電極58に低周波電圧を印加するとともに、高周波電極に高周波電圧を印加して酸素ガス、四フッ化炭素ガス又はエア単独によるプラズマを発生させてもよい。
【0095】図6は、第4実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の断面図である。この実施例のプラズマ生成装置72は、セル44がT字状に形成してあって、セル44の水平部74に第1ガス供給ヘッド48と連通しているガス流路46が設けてある。そして、セル44の鉛直部76には、ガス流路46に接続させた第2流路78が形成してある。また、鉛直部76の上端部には、第2ガス供給ヘッド62が取り付けてあって、第2ガス供給ヘッド62に流入したトリガガスをガス流路46に導けるようにしてある。さらに、鉛直部76には、第2ガス供給ヘッド62の下方の一側に低周波電極58が配設してあるとともに、反対側の低周波電極58と対応した位置に接地電極80が取り付けてある。
【0096】このように構成したプラズマ生成装置72によるプラズマの生成方法は、前記した第2実施例に係るプラズマ生成装置42とほぼ同様である。すなわち、第2ガス供給ヘッド62からトリガガスを導入するとともに、低周波電極58に低周波電圧を印加して電子と活性種とを生成してプラズマ生成領域22に供給する。また、放電用ガスは、第1ガス供給ヘッド48を介して第1ガス流路46に供給する。そして、高周波電極60に高周波電圧を印加してグロー放電を発生させてプラズマを生成する。なお、破線に示したように、低周波電極58とともに、水平部74にも低周波電極82を設けて第1ガス供給ヘッド48から供給された放電用ガスを電離または活性化させてもよい。
【0097】図7は、第5実施例であって、表面処理である有機物除去方法を実施する装置の概略構成図である。この装置は、プラズマ生成用ガスを供給するガス供給部と、プラズマを生成し活性なガスを形成するプラズマ発生部、及び活性化されたガスを吹き付け被処理体を処理する処理部から構成される。
【0098】ガス供給部は、極めて安価である圧縮空気より窒素を生成できる窒素生成器11を備えている。窒素生成器11のかわりに、市販の窒素ガスボンベ等から供給してもよい。窒素生成器11からは、純度99%以上の濃度の窒素ガスを数十l/min供給することが出来る。
【0099】プラズマ発生部は、供給されたガスの流路を形成するため1mmから3mm程度のギャツプを形成した一対の誘電体1と、一対の誘電体1で形成されたガスの流路内で放電を発生させるために設けられた、ガス流路を挟んだ一対の電極2a、2bから構成される。誘電体1は、放電による昇温に起因する割れを防ぐため、石英ガラスを用いている。
【0100】処理部は、被処理体8を設置するステージ7から構成され、ステージ7は水平方向に移動可能であり、ステージ7を移動させることで被処理体全体を処理することが可能である。誘電体1の被処理体に近い端面から被処理体8までの距離は、1〜2mm程度に保たれている。
【0101】ガス供給部から導入された窒素ガスは、プラズマ発生部上部に設置される中間チャンバー12に供給される。中間チャンバー12を設けることで、スリット状に開口されたガス供給口13から、一対の誘電体1で形成されたガス流路23を経由してガスが被処理体8にライン状に一様なガス流速分布をもって供給されるようになる。
【0102】電極2aには、2種類の周波数の電圧を同時に印加できるように2つの電源が接続されている。一つは、20kHz電源9であって、十数kVに昇圧するための昇圧トランス4と、更には13.56MHz高周波電源出力による20kHz電源9の過負荷防止のために設けられたフィルター回路3とを介して電極2aに接続されている。もう一つは、13.56MHz高周波電源10であって、インピーダンス整合器6と、20kHz電源9の出力による13.56MHz高周波電源10の過負荷を防止するため設けられたフイルター回路5とを介して電極2aに接続されている。これら2つの電源9、10は、それぞれ独立して制御されており、単独または重畳して電圧を印加することが可能である。対向する電極2bは、接地電極となっている。
【0103】次に、放電発生方法について説明する。13.56MHzの高周波電源10においては、周波数が高いために2〜3kV程度しか電圧を印加できないため、窒素ガス単体の雰囲気中では放電が開始されない。そこで、まず十数kVに昇圧された20kHzの高電圧を電源9により電極2aに印加してコロナ放電を開始させる。電源出力は、放電が開始させることが出来れば、大出力を必要としない。また、この時放電していなくても、電極間に十数kV以上の電圧が印加されていればよい。
【0104】コロナ放電が開始された後、電源10により13.56MHzの高周波電圧を20kHzの電圧が印加されている電極2aに重畳して印加する。
【0105】図8は、20kHzの出力を50Wと一定にし、重畳した13.56MHzの高周波出力を徐々に増加していったときの放電の発光強度の変化を示したものである。横軸が13.56MHz電源10の出力であり、縦軸が放電の発光強度である。放電の発光強度は、放電部を誘電体1のセルのガス吹き出し口から光ファイバーにより採光し、分光器によりスペクトル分解したものを光電子増倍管で検出したものてある。発光強度は、任意の強度であり、分光した波長は、336.9nmの窒素分子スペクトルである。
【0106】図中の領域aにおいては、13.56MHzの高周波出力を徐々に増加させていっても殆ど発光強度が変わらない。この条件下では、20kHzの高電圧を切ると放電は停止してしまい、13.56MHzの高周波電圧単体では放電を維持することはできない。領域bになると、局部的に発光強度が強くなる部分が現れる。この放電状態では、20kHzの高電圧を切っても、13.56MHzの高周波電圧のみで放電を持続できるようになる。これは、一旦、放電によって発生した電子が、20kHzの高電圧を利用しなくとも高周波電圧から得られるエネルギーにより電子が気体の電離持続を行えるようになったためと考えられる。
【0107】領域cは、電極全面に高周波放電が形成された状態であり、領域b同様、20kHzの高電圧を切っても、高周波電圧単独で放電を維持できる。発光強度の強い放電が、ほぼ電極全面に形成されているため、被処理体8の処理を均一に行うのに最も適した条件である。このようにして得られた放電中を通過させ、活性化した窒素ガスを、被処理体に吹きつけることて、被処理体をプラズマに晒す事なく被処理体8の表面処理が可能となる。
【0108】次に、図7のプラズマ生成装置による表面処理における有機物除去に関する実験結果について説明する。
【0109】
【表1】


【0110】表1は、シリコン基板上に塗布したレジストを除去した時の除去速度である。処理条件は、13.56MHz出力400W、窒素ガス流量10l/min、ワークと放電部の距離は、約6mmに設定した。誘電体1端面からワークまでの距離は約1mm程度である。この時のレジスト除去速度は、レジスト深さ方向でガスの吹き出し直下において、150nm/minが得られた。
【0111】比較のため、同一装置を用いて酸素ガスによりレジストをアッシングした結果を表1に示した。処理条件は、ガス種が異なる以外、窒素ガス処理と同一条件としている。酸素ガスによる除去速度は、180nm/min程度であり、窒素ガスによるレジストン除去は、酸素のアッシング処理速度とほとんど差異が無いことがわかる。また、酸素ガスによるアッシングは放電部と被処理体の距離が離れるにつれて、アッシング速度が減少する割合がおおきく、窒素ガスを用いた場合には、比較的距離が離れても有機物の除去処理がされた。これは、放電中で生成される窒素の活性種の寿命が酸素の活性種より長いため、より拡散して処理反応が起きるためと推定される。
【0112】また、周波数条件が異なる処理についての比較も行った。一般的に、図7のような間接放電方式の場合、有機物除去速度を向上させるには、放電部を被処理体に接近させるか印加出力を増加させるとよい。放電部を被処理体に接近させるのは、放電部で生成された活性種が被処理体に輸送される過程で、輸送距離が短いほど活性種の減衰が小さいため被処理体に多くの活性種が到達できるからであり、印加出力を増加させることにより、放電中に生成する活性種の絶対数が増加するからである。しかしながら、20kHzの高電圧を用いた場合、印加される電圧が高いため、ある出力以上になると一対の電極間で放電が維持されるだけでなく、被処理体との間で放電が発生し、場合によっては被処理体が損傷してしまう。本実施例での20kHzの低周波高圧電源を用いた比較実験では、被処理体と電極の距離は、印加出力が200Wの時、約25mm以上離さなければならない。これを処理条件とした時の20kHzの低周波電源によるプラズマ処理では、窒素ガスのみならず酸素ガスを用いた場合においてもレジスト除去速度は極めて遅く、5nm/min以下であった。
【0113】以上の結果から、周波数の高い13.56MHz高周波放電では、被処理基板を放電に晒すことなく、プラズマをより被処理体に接近させる事ができ、且つ印加可能な出力を増加させる事ができるため高密度のプラズマが形成できる。その結果、生成された高密度の活性種が被処理体に到達する事ができ、処理の高速化が図れた。
【0114】ところで、本実施例において、空気を用いて同一条件にてレジストの除去を試みてみたが、レジストは全く除去されなかった。そこで窒素の酸素に対する混合率を(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100%と定義し、いくつかの混合率にて確認してみた結果、図9R>9に示す様に、混合率99%以上及び20%以下においてレジスト除去効果を有し、その間の混合率のガス条件では、全くレジストが除去されない事がわかった。
【0115】この理由については、以下の様に考えられる。まず、混合率20%以下での反応は、従来の酸素アッシングと同様、酸化による有機物除去現象と推定される。これに対し、混合率99%以上における反応は、プラズマ中で形成された窒素の活性種とレジストの反応で、レジストの酸化反応ではなく、窒化反応またはエネルギーの比較的高い粒子により有機物が分解されると考えられる。
【0116】しかしながら、放電中、酸素がある一定以上混入すると、窒素の活性種と酸素の活性種が反応し、比較的安定な窒素酸化物が形成される。この安定な窒素酸化物は、有機物と反応することなく排気され、有機物反応は起きない。空気の窒素の酸素に対する混合率は約80%程度であるため、窒素酸化物の影響により有機物の除去ができなかったと推定される。
【0117】図10は、本発明に関する第6の実施例であり、有機物除去方法を実施する装置の概略的な構成図てある。第5の実施例と共通部分については同一符号て示し、詳細な説明は省略する。
【0118】すなわち本実施例においては、誘電体1を挟んで、接地された電極2bと電極2aが設置されている。電極2aには13.56MHzの電源10がインピーダンス整合器6を介して接続されている。電極2a及び電極2bには、内部にヒータが設置されており、所定の温度まて電極を加熟し一定に保つことが出来る。
【0119】次に、放電手順を説明する。まず、電極2a及び電極2bをヒーターにより加熱し、間接的に誘電体1の放電面を暖める。誘電体1の放電面を暖めるのは、表面からの二次電子又は熱電子の放出性を高めるためのものであり、この二次電子又は熱電子の放出が多いほど放電開始がし易くなる。したがって、誘電体1の放電面の表面温度が高いほど放電がし易い。誘電体1表面が暖まった後、誘電体1のセル内(ガス流路23)に窒素ガスを導入し、13.56MHzの電圧を電極2aに印加する。本実施例では、電極2a、2bの加熱温度を200℃に設定したところ、13.56MHzの高周波電圧で窒素ガス単体で放電が開始することが出来た。すなわち、第5の実施例同様、窒素ガスを用いて高速のレジスト除去ができた。
【0120】電極を加熱する手段は、電極2a又は電極2bの内部に設置したヒーターでなくとも、誘電体1の放電面を外部から赤外線等を用いて加熱する手段であってもかまわない。さらには、放電面の材料が二次電子放出の高いもの、もしくは熱電子放出の高いものであることが望ましい。例えば、SrO、CaO、BaO等は仕事関数が小さく、比較的表面の温度が高くなくても熱電子が放出しやすいので電極表面材料に適している。これら材料は、誘電体表面に薄膜として構成されていても構わない。
【0121】次に、本発明による窒素ガスを用いた被処理体の表面処理による濡れ性改善の実施例について説明する。
【0122】本実施例に用いた表面処理装置は、第5及び第6の実施例と同一処理装置であり、詳細な説明は省略する。
【0123】すなわち被処理体8としてガラス基板を用いて、本発明による表面処理方法によりガラス基板に活性な窒素ガス吹き付け処理を行い、純水の接触角により基板表面の濡れ性について評価を行った。評価用に用いたガラスは、OA−2。処理前のガラス表面の純水の接触角は、平均70度であった。
【0124】図11は、ガラス基板の処理時間による接触角の変化を示す。比較のため、周波数の異なる条件について評価した結果についても示した。20kHzの周波数を用いた処理の場合、第1の実施例において既に説明したとおり、高電圧を用いるため、条件に制約があり、表1に示した有機物除去条件と同一条件にて比較評価している。図11からも解るように、本発明による13.56MHzを用いた窒素ガス放電処理は、20kHzの放電処理に比ベ、濡れ性が明らかに短時間で飽和する。
【0125】ところで、本実施例において、空気を用いた濡れ性の改善に処理について試みてみたが、ガラス基板表面の濡れ性の改善は極めて遅く、接触角が飽和するまでに5分以上かかった。そこで窒素の酸素に対する混合率を(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100%と定義し、処理時間30秒における接触角について混合率を変化させ確認してみた結果、図12に示す様に、混合率99%以上及び20%以下においては濡れ性の改善処理の速い条件があることが判明した。
【0126】濡れ性の場合、幾つかの要因が考えられるが、現在のところ、濡れ性の処理速度改善効果の高い条件が、窒素ガスプラズマでも述べた有機物除去条件とほぼ一致していることから、基板表面に付着している有機物の汚れが除去された事による基板表面のクリーニング効果が大きいと推定される。但し、窒素ガスを用いた場合には、基板表面にNH基等の親水基が生成してることが推定される。したがって、需れ性の改善のために用いるガスとしては、窒素ガスが望ましい。
【0127】図13は、第7実施例の斜視図と断面図である。この実施例は、局部的な表面処理を容易に行えるようにしたもので、例えば石英などの誘電体から形成したパイプ82によってガス流路23が形成してある。また、パイプ82の直径方向両側には、第1電極2aと第2電極2bとが配設してあり、これらの電極間でプラズマを生成するようになっている。そして、パイプ82には、ガス導入管84が接続してあって、同図(2)の矢印に示したように、ガス導入管84を介して放電用ガス86をガス流路23に供給できるようにしてある。この第7実施例によるプラズマの生成は、第1実施例と同様に行うことができる。
【0128】図14は、第8実施例を示したものであって、被処理体のバッチ処理用のプラズマ生成装置である。本実施例においては、チャンバー90内にガス流路23を形成しているパイプ状の誘電体92が配設してある。そして、誘電体92の一端には、ガス導入管94が接続してあって、ガス流路23に放電用ガス86を導入できるようにしてある。また、誘電体92の他端には、フレキシブルパイプなどからなるプラズマ供給管96が接続してある。このプラズマ供給管96は、先端が処理ボックス98に接続してある。処理ボックス98の内部には、多数の被処理体8がラック100などに配置した状態で収納してある。
【0129】このように構成した第8実施例においては、誘電体92の上下に配置した電極2a、2b間に高周波電圧を印加し、第1実施例と同様にしてプラズマを発生させる。そして、プラズマの発生に伴い生成された活性種をプラズマ供給管96を介して処理ボックス98に導入して被処理体8に照射し、一度に多数の被処理体8のアッシングやエッチングなどを行う。
【0130】図15は、第9実施例の断面図と斜視図であって、エッチングなどに適した直接放電処理用のものである。このプラズマ生成装置102は、一方の誘電体104がコ字状に形成してあって、接地電極106の凸部を跨いで配置させるようになっている。そして、誘電体104と接地電極106とは、長手方向に相対移動できるようにしてある。
【0131】誘電体104の上部には、高周波電極108が設けてあるとともに、ガス供給ヘッド110が取り付けてある。また、接地電極106の凸部上面には、被処理体8が配置される板状の誘電体112が設けてあり、この誘電体112と誘電体104とでガス流路23が形成される。このように構成した第9実施例においては、被処理体8を直接放電に晒すことができるため、迅速なエッチングなどの表面処理を行うことができる。
【0132】図16は、さらに他の実施例を示したものである。図16において、プラズマ生成装置114は、ガス流路23が上下の誘電体116、118によって形成してある。また、プラズマ生成装置114は、高周波電極120と接地電極122とが誘電体116、118を挟んで対向するように設けてある。そして、誘電体116の上部には、高周波電極120を覆ってカバー124が取り付けてある。このカバー124の内面と高周波電極120との距離Lは、誘電体120、122間の距離(放電ギャップ)dより大きくしてある。また、このカバー124の内部には、空気より放電しにくい流体、例えば四フッ化炭素ガスが封入してある。
【0133】このように構成したことにより、高周波電極120に高周波電圧を印加することによる沿面放電を防止することができる。すなわち、ヘリウムガスなどの希ガスを混入せずにプラズマを発生させる場合、希ガスを混入した場合よりも高電圧を必要とする。特に、四フッ化炭素ガスなどの空気より放電しずらいガスを使用する場合は、沿面放電が発生するおそれがあり、沿面放電が発生すると電圧が低下して放電の維持が困難となってプラズマを生成することができない。そこで、カバー124内に空気より放電しにく四フッ化炭素ガスなどを封入して沿面放電を防止する。
【0134】なお、四フッ化炭素ガスに代えて絶縁油などを封入してもよい。また、図16の破線に示したように、誘電体116にカバー124内とガス流路23とを連通する連通孔126を形成し、カバー124内に流入させた四フッ化炭素ガスを連通孔126を介してガス流路23に供給するようにしてもよい。このように、カバー124を介して四フッ化炭素ガスをガス流路23に供給するようにすると、沿面放電の防止が図れるとともに、装置を小型化することができる。
【0135】なお、沿面放電の防止を図るために、電極の近傍には何も配置せず、電極のみにすることが望ましい。そして、電極の近くに何かを配置する場合には、望ましくは2mm/v以上の距離をおくとよい。また、誘電体は、ガス流路を形成する面ができるだけ凹凸の少ない平なものを使用することが望ましく、平均粗さが0.02μm以下にすることが望ましい。これは、凹部が存在すると、その部分に電界が集中し、部分放電が生じて望ましくないことによる。
【0136】さらに、図2に示したような場合、高周波電極60は、セル(誘電体)44からはみださないようにすることが望ましく、セル44の端部より1cm以上内側に配置することが望ましい。これは、電極がセルの端からはみだすと、セル44の側面をつたわった沿面放電を生じやすいことによる。
【0137】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、希ガスを使用せずに、又は希ガスに対する酸素ガスや四フッ化炭素ガスなどの割合を多くしたガスを用いて容易に大気圧プラズマを生成することができ、高価な希ガスの使用量の大幅な削減を図れて、表面処理に利用した場合に、表面処理のコスト低減と処理速度の向上を図ることができる。
【0138】また、本発明によれば、大気圧下、ヘリウムを用いず安価な窒素ガスを使用して放電できるのでランニングコストが低減できる。さらには、ヘリウムを用いなくとも、窒素ガスや酸素ガスのような反応性ガスにより数MHz以上の高周波電圧を用いて大気圧下放電が容易にでき、処理の高速化が可能である。また、大気圧下、窒素ガスを用いた高周波放電の実現により、酸素ガスを用いる事なく、酸素処理同様、有機物を除去や基板表面の濡れ性の改善ができるので、酸化を問題とする被処理体又は発火等の危険性がある雰囲気においてる被処理体の処理に適用でき、新たなプロセスが提言できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施例の説明図であって、(1)は斜視図であり、(2)は平面図であり、(3)は(2)のA−A線の沿った断面図である。
【図3】第2実施の形態に係るプラズマ生成装置による一定の酸素ガス流量に対するヘリウムガス流量と、グロー放電を開始時およびグロー放電OFF時における高周波入力電力との関係を示し図である。
【図4】第2実施の形態に係るプラズマ生成装置による一定の四フッ化炭素ガス流量に対するヘリウムガス流量と、グロー放電を開始時およびグロー放電OFF時における高周波入力電力との関係を示し図である。
【図5】第3実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の断面図である。
【図6】第4実施例に係る大気圧プラズマ生成装置の断面図である。
【図7】第5実施例の概略構成図である。
【図8】低周波放電に高周波出力を重畳することによって得られる放電の発光強度を示す特性図である。
【図9】窒素ガスの酸素ガスに対する混合率による有機物除去速度を示す特性図である。
【図10】第6実施例の概略的な装置構成図である。
【図11】窒素ガスの周波数によるガラス基板表面の処理時間による接触角を示す特性図である。
【図12】窒素ガスの酸素がすに対する混合率によるガラス基板表面の処理時間による接触角を示す特性図である。
【図13】第7実施例の斜視図と断面図である。
【図14】第8実施例の断面図である。
【図15】第9実施例の断面図と斜視図である。
【図16】さらに他の実施例の説明図である。
【符号の説明】
1 誘電体
2a、2b 電極
3、5 フィルター回路
4 昇圧トランス
6 インピーダンス整合器
7 ステージ
8 被処理体
9 低周波電源(20kHz電源)
10 高周波電源(13.56MHz電源)
11 窒素生成器
12 中間チャンバー
13 ガス供給スリット
20 ヒーター
21 チャンバー
22 プラズマ生成領域
23、46 ガス流路
25 高周波電源
26 プラズマ検出手段(光センサ)
28 制御手段(コントローラ)
34、38 第1ガス供給手段(酸素ガスボンベ、流量制御弁)
36、40 第2ガス供給手段(ヘリウムガスボンベ、流量制御弁)
42 プラズマ生成装置
44 セル(誘電体)
58 低周波電極
60 高周波電極
66 接地電極
70、72 プラズマ生成装置
82 パイプ
86 放電用ガス
98 処理ボックス
108、120 高周波電極
106、122 接地電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、希ガスと表面処理用ガスとの混合ガスを前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生させ、その後、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項2】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、希ガスを前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生させ、その後、表面処理用ガスを前記プラズマ生成領域に供給して表面処理用ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記表面処理用ガスは、酸素ガス又は四フッ化炭素ガスであることを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項4】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる大気圧プラズマ生成方法において、少なくとも前記プラズマ生成領域での放電開始時に、前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を前記放電用ガスとともに供給してプラズマを発生させることを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項5】 請求項4において、前記放電用ガスは、酸素ガス、四フッ化炭素ガス又はこれらの1つと希ガスとの混合ガスであることを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項6】 請求項4又は5において、前記プラズマの発生後に、前記電子又は活性種の供給を停止することを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする大気圧プラズマ生成方法。
【請求項8】 プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に表面処理用ガスを供給する第1ガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に、希ガスを供給する第2ガス供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、前記プラズマ生成領域にプラズマが発生したことを検知するプラズマ検出手段と、このプラズマ検出手段の検出信号に基づいて前記第2ガス供給手段を制御し、前記プラズマ生成領域への前記希ガスの供給を停止する制御手段とを有することを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項9】 請求項8において、前記制御手段は、前記希ガスによるプラズマの発生後に、前記第1ガス供給手段を制御して前記プラズマ生成領域に前記表面処理用ガスを供給することを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項10】 プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に放電用ガスを供給するガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を供給するトリガ供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる高周波電源とを有することを特徴とする大気圧プラズマ発生装置。
【請求項11】 プラズマ生成領域を形成する誘電体と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に放電用ガスを供給するガス供給手段と、大気圧又はその近傍の圧力下にある前記プラズマ生成領域に電子又はガス状の活性種を供給するトリガ供給手段と、前記誘電体を挟んで設けた第1電極及び第2電極と、この第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる高周波電源と、前記プラズマ生成領域にプラズマが発生したことを検知するプラズマ検出手段と、このプラズマ検出手段の検出信号に基づいて、前記トリガ供給手段を制御して前記電子又は活性種の供給を停止する制御手段とを有することを特徴とする大気圧プラズマ発生装置。
【請求項12】 請求項8乃至11のいずれかにおいて、前記高周波電源の出力する高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項13】 請求項8乃至12のいずれかにおいて、前記高周波電源に接続した前記電極を取り付けた前記誘電体には、前記高周波電源に接続した電極を覆ってカバーが設けてあり、このカバー内に空気より放電しにくい流体が注入してあることを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項14】 請求項13において、前記空気より放電しにくい流体は四フッ化炭素ガスであり、前記誘電体には前記カバーの内部と前記プラズマ生成領域とを連通する孔が形成され、この孔を介して前記カバー内に注入された四フッ化炭素ガスを前記プラズマ生成領域に供給することを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項15】 請求項13乃至14のいずれかにおいて、前記高周波電源に接続した電極と前記カバーの内面との距離は、前記プラズマ生成領域の放電ギャップより大きくしてあることを特徴とする大気圧プラズマ生成装置。
【請求項16】 大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に高周波電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記放電用ガスは、窒素及び酸素を含むガスであり、窒素の酸素に対する混合率=(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100が99%以上であることを特徴とする表面処理方法。
【請求項17】 大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に高周波電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理して前記被処理体の表面を親水化する表面処理方法において、前記放電用ガスは、窒素及び酸素を含むガスであり、窒素の酸素に対する混合率=(窒素流量/(窒素流量十酸素流量))×100が99%以上であることを特徴とする表面処理方法。
【請求項18】 請求項16又は17において、前記プラズマを継続的に生成する放電維持手段が1MHz〜100MHzの高周波電圧を印加することであることを特徴とする表面処理方法。
【請求項19】 請求項18において、電極に前記放電維持手段と、50kHz以下の高電圧印加手段を併設し、前記高電圧印加手段を前記放電維持手段に重畳して印加し、放電開始後、前記放電維持手段単独または前記放電維持手段に前記高電圧印加手段を重畳して用いることを特徴とする表面処理方法。
【請求項20】 請求項18において、放電開始前に予め前記誘電体の放電面を加熱することを特徴とする表面処理方法。
【請求項21】 大気圧又はその近傍の圧力下で、一対の誘電体により形成されたセルと、前記誘電体を挟んだ第1電極及び第2電極から構成され、前記セル内に放電用ガスを導入し、前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加することでプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射処理する表面処理方法において、少なくともプラズマ生成開始までの所定の期間、前記第1電極及び前記第2電極間に複数の異なる周波数を有する電圧を重畳して印加することを特徴とする表面処理方法。
【請求項22】 請求項21において、前記複数の異なる周波数を有する電圧は、少なくとも、1MHz〜100MHzの第1電圧源及び50kHz以下の第2電圧源から供給されるものてあることを特徴とする表面処理方法。
【請求項23】 誘電体により形成したプラズマ生成領域に大気圧又はその近傍の圧力下で放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給してプラズマを発生させ、その後、希ガスの供給を停止して酸素ガスによるプラズマを生成することを特徴とする表面処理方法。
【請求項24】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスを供給してプラズマを発生させたのち、前記プラズマ生成領域に酸素ガスを供給して酸素ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする表面処理方法。
【請求項25】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面の有機物を除去する表面処理方法において、電子又はガス状の活性種を酸素ガス又は酸素ガスと希ガスとの混合ガスからなる放電用ガスとともに前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを生成させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項26】 誘電体により形成したプラズマ生成領域に大気圧又はその近傍の圧力下で放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスと四フッ化炭素ガスとの混合ガスを供給してプラズマを発生させ、その後、希ガスの供給を停止して四フッ化炭素ガスによるプラズマを生成することを特徴とする表面処理方法。
【請求項27】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、前記プラズマ生成領域に希ガスを供給してプラズマを発生させたのち、前記プラズマ生成領域に四フッ化炭素ガスを供給して四フッ化炭素ガスによるプラズマを生成するとともに、前記希ガスの供給を停止することを特徴とする表面処理方法。
【請求項28】 誘電体により形成した大気圧又はその近傍の圧力下にあるプラズマ生成領域に放電用ガスを導入し、前記誘電体を挟んで設けた第1電極と第2電極とに高周波電圧を印加してプラズマを生成し、プラズマによって生成された活性種を被処理体に照射して前記被処理体の表面をエッチングする表面処理方法において、電子又はガス状の活性種を四フッ化炭素ガス又は四フッ化炭素ガスと希ガスとの混合ガスからなる放電用ガスとともに前記プラズマ生成領域に供給してプラズマを発生することを特徴とする表面処理方法。
【請求項29】 請求項25又は28において、前記プラズマの発生後に、前記電子又は活性種の前記プラズマ生成領域への供給を停止することを特徴とする表面処理方法。
【請求項30】 請求項23乃至29のいずれかにおいて、前記高周波電圧は、周波数が400kHz〜100MHzであることを特徴とする表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図16】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開平10−275698
【公開日】平成10年(1998)10月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−169010
【出願日】平成9年(1997)6月25日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)