説明

大気浄化装置

【課題】ガソリン車やディーゼル車の排ガスを含む汚染された大気を、簡易に浄化することのできる大気浄化装置を提供する。
【解決手段】上流側から大気導入路3と、第1処理帯10と、第2処理帯20と、第3処理帯30と、第4処理帯40と、浄化大気排出路4とをこの順で備えてなる本体1と、洗浄水を循環供給する洗浄水循環供給部60とを備えてなる大気浄化装置Aであって、処理帯10、20、30、40を通過させながら大気中の汚染物質を除去するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気浄化装置に関する。さらに詳しくは、自動車からの排ガスを含む大気を浄化する大気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、地球の温暖化防止策として大気中の二酸化炭素を減少させることが提案され、そして実行されつつある。
【0003】
また、大気汚染を防止するため、種々の排ガス規制もなされ、またその規制も強化されつつある。
【0004】
かかる状況に対応すべく自動車業界においては、いわゆるハイブリッドカーや燃料電池自動車の開発がなされている。
【0005】
しかしながら、ハイブリッドカーや燃料電池自動車は、たしかに将来における二酸化炭素の排出の削減や大気汚染の防止に寄与することはできるが、現状の多くのガソリン車やディーゼル車の排ガスを浄化することにはまったく寄与しない。
【0006】
そのため、現状のガソリン車やディーゼル車の排ガスを含む汚染された大気を、簡易に浄化することのできる大気浄化装置の出現が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、ガソリン車やディーゼル車の排ガスを含む汚染された大気を、簡易に浄化することのできる大気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の大気浄化装置は、収納体に上流側から大気導入部と、第1処理部と、第2処理部と、第3処理部と、第4処理部と、浄化大気排出部とをこの順で備えてなる本体と、前記大気導入部に洗浄水を循環供給する洗浄水循環供給部と、を備えてなる大気浄化装置であって、
前記大気導入部は、吸気手段と、洗浄水を散水する散水手段とを有し、前記第1処理部は、洗浄水の水滴に含有された粉塵を吸着する粉塵吸着材を、通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされ、前記第2処理部は、洗浄水の水滴に含有された粉塵を吸着する粉塵吸着材を通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされ、前記第3処理部は、光触媒と、該光触媒に所要光を照射する発光手段とを有するものとされ、前記第4処理部は、光触媒と、該光触媒に所要光を照射する発光手段とを有するものとされ、前記収納体の底部は散水された清浄水を貯留する貯留槽とされてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の大気浄化装置においては、粉塵吸着材が、ステンレスウールまたはニッケルウールとされてなるのが好ましい。
【0010】
また、本発明の大気浄化装置においては、光触媒が層状に形成されたものが所要数積層されるとともに、その間に発光手段が配設されてなるのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の大気浄化装置においては、光触媒の層が、酸化チタンの粒状物の層、発泡体珪素の層、発泡体アルミナ層または線状アルミナの層とされてなるのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の大気浄化装置においては、貯留槽に還元石が充填されてなるのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の大気浄化装置においては、貯留槽に電気分解装置が配設されてなるのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の大気浄化装置においては、第4処理部の下流側に第5処理部を備え、前記第5処理部は、残留汚染物質を吸着する吸着材を、通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされてなるのが好ましい。その場合、吸着材が、ゼオライトとされてなるのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大気中の汚染物質が分解除去されるとともに、殺菌がなされた清浄な大気が得られるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態に係る大気浄化装置を図1に概略図で示し、同装置のシステム系統を図2にシステム系統図で示す。
【0018】
大気浄化装置Aは、図1に示すように、前方に設けられた大気導入路3と、後方に設けられた浄化大気排出路4と、大気導入路3の下方に配設された第1処理帯(第1処理部)10と、第2処理帯(第2処理部)20と、第3処理帯(第3処理部)30と、第4処理帯(第4処理部)40と、第5処理帯(第5処理部)50とをケーシング(収納体)2内を備える本体1と、図2に示すように、大気導入路3に洗浄水を循環供給する洗浄水循環供給部60と、機側盤70とを備えてなるものとされる。
【0019】
図1および図2に示すように、第1処理帯10と、第2処理帯20と、第3処理帯30と、第4処理帯40と、第5処理帯50とはこの順で隣接配置され、吸気された汚染大気がそれらを上下に蛇行して通過しながら浄化されるようにされている。また、各処理帯10、20、30、40、50の間は仕切壁により適宜仕切られている。
【0020】
ケーシング2は、図1に示すように、前部(図中左側)天井に大気導入路3の一部を構成する吸気ダクト2aを備え、後部天井に浄化大気排出路4の一部を構成する排気ダクト2bを備え、一方の側面に各処理帯10、20、30、40、50に対応させて開口(図示省略)を備えてなるものとされる。これらの開口には、メンテナンス用の着脱自在とされた蓋が設けられている。なお、図示はされていないが、ケーシング2にはその他メンテナンスに必要なマンホールなどが適宜設けられている。
【0021】
吸気ダクト2aは、図1に示すように、前方(図中の左側)に向けた汚染された大気を吸気する開口を有するとともに、適宜位置、例えば天井位置に配設された吸気ファンFIを有するものとされ、後端(基端)がケーシング2内の大気導入路3に接続されている。
【0022】
排気ダクト2bは、図1に示すように、後方(図中右側)に向けた浄化された清浄大気を排出する開口を有するとともに、適宜位置、例えば天井位置に配設された排気ファンFOを有するものとされ、前端(基端)がケーシング2内の浄化大気排出路4に接続されている。
【0023】
大気導入路3は、図1に示すように、主として大気中の粉塵を除去するための洗浄水を散水する散水管3aが、所要数千鳥配列で水平に設けられている。
【0024】
ケーシング2の底部は、散水された洗浄水を貯留する貯留槽5とされ、その貯留水が洗浄水循環供給部60により循環供給されるようにされている。
【0025】
貯留槽5は、図示はされていないが、還元石が充填されて水質の浄化がされるようにされている。また、貯留槽5は、図1に示すように、第2処理帯20と第3処理帯30とを仕切る仕切壁6、および第4処理帯40と第5処理帯50とを仕切る仕切壁7により分割されている。すなわち、貯留槽5は、第1貯留槽分割体5A、第2貯留槽分割体5Bおよび第3貯留槽分割体5Cとからなっている。
【0026】
第3貯留槽分割体5Cには、貯留水をろ過するフィルター5aが設けられ、その下流には、図2に示すように、ろ過された貯留水(塩素を含有)を電気分解して塩素酸を生成する電気分解装置8の電極8aが配設されている。電極8aは、セラミックにより被覆された2個のプラス電極8a1と、セラミックにより被覆された1個のマイナス電極8a2とを含むものとされる。生成された塩素酸により吸気された大気の殺菌がなされる。
【0027】
なお、図示はされていないが、各貯留槽分割体5A,5Bおよび5B,5Cを仕切る仕切壁6,7は、多孔板からなるものとされて各貯留槽分割体5A,5B,5Cは連通されている。
【0028】
第1処理帯10は、散水された洗浄水の水滴中の粉塵を吸着除去するとともに、汚染大気中の有害成分、例えばアンモニア、アルデヒド、酸化イオウなどを分解するものとされ、図3に示すように、ステンレスウールやニッケルウールなどの処理物質12をステンレスエキスパンドメッシュ箱13に収納してなる処理ブロック11を所要数積層してなるものとされる。この処理ブロック11は、メンテナンスを容易とするため、スライド自在な状態で第1処理帯10にセットされる。積層する段数は、処理する大気中の粉塵の量に応じて適宜選定されるが、一応の目安としては、3段ないし5段とされる。
【0029】
ここで、吸気された大気は、第1処理帯10を上方から下方に流れるようにされている。このため、散水された洗浄水のほとんどは、第1処理帯10の下方に形成された貯留槽5(5A)に自動的に落下してそこに貯留される。
【0030】
第2処理帯20は、第1処理帯10と同様、洗浄水が散水された大気中の水滴を吸着除去するとともに、大気中の有害成分、例えばアンモニア、アルデヒド、酸化イオウなどを分解するものとされ、図3に示すように、ステンレスウールやニッケルウールなどの処理物質12をステンレスエキスパンドメッシュ箱13に収納してなる処理ブロック11を所要数積層してなるものとされる。この処理ブロック11は、メンテナンスを容易とするため、スライド自在な状態で第2処理帯20にセットされる。積層する段数は、吸着する水滴の量に応じて適宜選定されるが、一応の目安としては、3段ないし5段とされる。
【0031】
ここで、吸気された大気は、第1処理帯10の下方から反転させられて第2処理帯20を下方から上方に反転して流れるようにされている。なお、この反転の際に吸気された大気中に浮遊している水滴の一部が貯水槽5(5A)に落下して吸気された大気中から除去される。
【0032】
第3処理帯30および第4処理帯40は、光触媒作用により汚染大気中の有害物質、例えば二酸化炭素、二酸化イオウ、窒素酸化物、を分解処理するものとされ。図4に示すように、触媒層31の間に紫外線発光層41を介在させたものを積層状に組み合わせてなるものとされる。紫外線発光層41を介在させるのは、触媒の活性化を図るためである。
【0033】
触媒層31は、触媒32をステンレスエキスパンドメッシュ箱33に収納してなるブロックとされ、メンテナンスを容易とするため、スライド自在な状態で第3処理帯30および第4処理帯40にセットされる。
【0034】
触媒32としては、例えば、酸化チタン粒状体(酸化チタンビーズ)、発泡体珪素(3次元珪素)、発泡体アルミナ(三次元アルミナ)や線状アルミナなどが用いられる。なお、アルミナは活性度が高い点から、高純度のアルミナとされるのが好ましい。
【0035】
紫外線発光層41を構成する紫外線発光体42としては、触媒32の活性化を図る機能が高い点から、UVライトとされるのが好ましい。図2中、符号44は発光装置を示す。
【0036】
積層の具体的な組合は、例えば、上から順に酸化チタンビーズ層、UVライト層、酸化チタンビーズ層、UVライト層、3次元珪素層、UVライト層、三次元アルミナ層、UVライト層および三次元アルミナ層とすることができる。
【0037】
ただし、構成はこれに限定されるものではなく、適宜の組み合わせとすることができる。例えば、第4処理帯40を下からこの順とすることもできる。
【0038】
第5処理帯50は人工ゼオライト52をステンレスエキスパンドメッシュ箱53に収納してなる処理ブロック51を積層してなるものとされ、第1処理帯10ないし第4処理帯40により処理できなかった有害物質などを吸着・除去するものとされる。処理ブロック51は、メンテナンスを容易とするため、スライド自在な状態で第5処理帯50にセットされる。
【0039】
洗浄水循環供給部60は、散水管3aに洗浄水を循環供給する循環ポンプ61と、それに付随する配管設備62を備えてなるものとされる。この配管設備62による洗浄水の取水は、第3貯留槽分割体5Cのフィルター5aの下流側からなされるようにされている。
【0040】
配管設備62には、洗浄水の水質を一定に維持するためのオーバーフロー設備63、およびオーバーフローにより失われた水量を補給するための補給水設備64も含まれている。このオーバーフロー設備63によるオーバーフローにより、貯留水の水質が一定に保持されるようにされている。
【0041】
機側盤70は、制御装置71と電源76とを備えてなるものとされる。
【0042】
制御装置71は、大気浄化装置Aを遠隔制御する遠隔制御部72と、吸気ファンFI、排気ファンFO、循環ポンプ61、発光装置44などの各機器の動作を制御する機器制御部73とを含むものとされる。
【0043】
電源76は、吸気ファンFIなどのモータMを駆動する電力を供給する動力電源77と、発光装置44などに電力を供給する低圧電源78と、電気分解装置8に直流電流を供給する直流電源79とを含むものとされる。
【0044】
しかして、吸気ファンFIにより本体1内に吸気された汚染大気は、第1処理帯10、第2処理帯20、第3処理帯30、第4処理帯40および第5処理帯50を通過する間に、有害成分が分解・除去されて清浄大気とされる。
【0045】
例えば、本実施形態の大気浄化装置Aにより、二酸化炭素を414ppm含む大気を処理したところ27ppmにまで低減された。すなわち、96%の削減効果が得られた。
【0046】
また、本実施形態の大気浄化装置Aにより、アンモニアを2000pppm含む大気を処理したところ50ppmにまで低減された。すなわち、97.5%の削減効果が得られた。
【0047】
また、本実施形態の大気浄化装置Aにより、ラッカーなどの揮発性物質を1500ppm含む大気を処理したところ40ppmにまで低減された。すなわち、97.3%の削減効果が得られた。
【0048】
以上、詳述したように、本発明によれば、大気中の汚染物質が分解除去されるとともに、殺菌がなされた清浄な大気が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、大気汚染防止に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る大気浄化装置の概略図である。
【図2】同装置のシステム系統図である。
【図3】同装置の第1および2処理帯の概略図である。
【図4】同装置の第3および4処理帯の概略図である。
【図5】同装置の第5処理帯の概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 本体
2 ケーシング
3 大気導入路
4 浄化大気排出路
5 貯留槽
5a フィルター
8 電気分解装置
10 第1処理帯
20 第2処理帯
30 第3処理帯
40 第4処理帯
50 第5処理帯
60 洗浄水循環供給部
61 循環ポンプ
62 配管設備
70 機側盤
71 制御装置
72 遠隔制御部
73 機器制御部
76 電源
77 動力電源
78 低圧電源
79 直流電源
A 大気浄化装置
FI 吸気ファン
FO 排気ファン
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納体に上流側から大気導入部と、第1処理部と、第2処理部と、第3処理部と、第4処理部と、浄化大気排出部とをこの順で備えてなる本体と、前記大気導入部に洗浄水を循環供給する洗浄水循環供給部と、を備えてなる大気浄化装置であって、
前記大気導入部は、吸気手段と、洗浄水を散水する散水手段とを有し、
前記第1処理部は、洗浄水の水滴に含有された粉塵を吸着する粉塵吸着材を、通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされ、
前記第2処理部は、洗浄水の水滴に含有された粉塵を吸着する粉塵吸着材を通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされ、
前記第3処理部は、光触媒と、該光触媒に所要光を照射する発光手段とを有するものとされ、
前記第4処理部は、光触媒と、該光触媒に所要光を照射する発光手段とを有するものとされ、
前記収納体の底部は散水された清浄水を貯留する貯留槽とされてなる
ことを特徴とする大気浄化装置。
【請求項2】
粉塵吸着材が、ステンレスウールまたはニッケルウールとされてなることを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項3】
光触媒が層状に形成されたものが所要数積層されるとともに、その間に発光手段が配設されてなることを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項4】
光触媒の層が、酸化チタンの粒状物の層、発泡体珪素の層、発泡体アルミナ層または線状アルミナの層とされてなることを特徴とする請求項3記載の大気浄化装置。
【請求項5】
貯留槽に還元石が充填されてなることを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項6】
貯留槽に電気分解装置が配設されてなることを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項7】
第4処理部の下流側に第5処理部を備え、
前記第5処理部は、残留汚染物質を吸着する吸着材を、通気性を有する容器に収納してなるブロックを所要数積層してなるものとされてなる
ことを特徴とする請求項1記載の大気浄化装置。
【請求項8】
吸着材が、ゼオライトとされてなることを特徴とする請求項7記載の大気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119318(P2009−119318A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292927(P2007−292927)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(505209522)有限会社日本空気 (2)
【Fターム(参考)】